「と」漢方処方



桃花円《備急千金要方》
「桃花湯-粳米」蜜丸
◎下冷、臍腹攪痛するを治す。

 

#桃花丸《和剤局方》
「桃花湯」の粳米を麺糊に代える。
◎寒瀉腹中痛み、諸熱薬を服用して以て温中す、並びに効を見ず、登を迭ぎざるに(便所に行く前に)、穢物随って出ずる、これ下焦に属す。宜しく桃花丸を以て之を温渋すべし。《雑病翼方》

#桃花散《医宗金鑑》
「白石灰8両・大黄片2両」石灰に水をかけて細かくし、大黄とともに炒り、石灰が紅色に変わるのを限度とする。大黄を取り去り、石灰を細かく砕き、 凉水で患部に貼る。

 

#桃花散《外台秘要方》
「桃花」
◎脚気及び腰腎膀胱の宿水を療す。
◎按んずるに《本草綱目》に云う、痰飲宿水、桃花散、桃花を収めて陰干し、作末、温酒にて1合を服し利を取る。虚を覚ゆれば、少粥を食すと。転下の薬に似ず。《脚気提要》

 

#桃花煎《本朝経験》
「桃花3銭、大黄2分」水煎。
◎瀉下傾くが如く、腫脹即ち消える。下後、大煩渇する者は「麻子赤小豆湯」を服すれば則ち止む。《雑病翼方》

 

#桃花大黄湯
「桃花8.0、大黄4.0」
右二味、水一合二勺を以て、先ず桃花を煮て八勺を取り、桃花を去り、後、大黄を入れ、再び煮て六勺と為し、滓を去り一回に服用。
◎水気有りて停滞し、小便利せず、身腫痛する者を治す。《古方兼用丸散方》
◎今、此方に甘草を加う。酒醒を解すること甚だ速かなり《浅田宗伯》


#桃花湯[1-1]《傷寒論》
「赤石脂(半全用・半篩末)1斤、乾姜1両、粳米1升」
右三味、以水七升、煮米令熟、去滓。温服七合、内赤石脂末方寸匕、日三服。若一服愈、餘勿服。
◎少陰病、下利便膿血者、桃花湯主之。


桃花湯[1-2]《傷寒論》《東醫寶鑑》
「赤石脂(半生半炒)5銭、乾姜2銭、糯米1合」作水煎し、半分ぐらいになったら、滓を去り、別に赤石脂末1銭を入れて1日2回調服する。
◎少陰病に下痢し、膿血が出る者を治す。

 

#桃花湯[1-3]《傷寒論》《中薬臨床応用》
「赤石脂18g、乾姜6g、粳米(or高梁米)60g」8杯の水で先に粳米を煮て4杯にし、米を去って乾姜・赤石脂9gを入れて3杯になるまで煎じ、3回に分服。毎回赤石脂3gを沖服する。
◎慢性赤痢(虚寒痢)で、
◎膿血便があり
◎腹部を押さえると痛みが軽減する。

 

#桃花湯[1-4]《傷寒論》《漢方治療の実際》
「赤石脂6、粳米8、乾姜1.5」
先ず初めに赤石脂3を入れ、煎じ、煎じ上がってから、あとの3を入れる。


#桃花湯[1-5]《傷寒論》《龍野ー漢方処方集》
「赤石脂16.0g(半分は砕かず、残り半分は粉末にして後から入れる)、乾姜 1.0g、玄米14.0g」水280ccを以て砕かぬ赤石脂と乾姜玄米を煮て玄米を熟させ滓を去り30.0gに対し赤石脂末2.0gを加え1回分とす。1日3回服用。
◎按ずるに、乾姜の分量甚だ少なきは、疑う可し。《外台秘要方》に阮氏桃花湯を載するに、赤石脂八両、粳米一升、乾姜四両に作る。余は多く此方を用いる《類聚方広義》
◎《呉儀洛》曰く、服するの時、又末方寸匕を加える者は、留滞せしめて、以て腸胃を固むる也と《類聚方広義》
◎腹痛下利し、便膿血なる者を治す《吉益東洞》
◎此方は《備急千金要方》には丸として用いる。至極便利なり。
◎此れ裏寒にして血熱を挟む者なり。《傷寒翼方》
◎痢病、膿血を便する者、極めて効あり。けだし初起之を与え益なし。その期は熱気やや解し、膿血止まざるに在り。論に曰く、二三日より四五日に至ると、その旨深し。《先哲医話》

★適応症及び病名(桃花湯)
[1]顔色悪い

[2]潰瘍性大腸

[3]過敏性大腸症候群

[4]乾嘔

[5]下痢<粘液便><自覚症状なし>
☆熱候なく、腹虚満して痛み、手足温にして渇すと雖も舌苔なく、下痢頻々、或いは血便を下し、その脈沈にして遅なる証《奥田謙蔵》
☆病下焦に専らにして腸滑とも称すべきは:赤石脂禹余粮湯に宜し。
☆熱痢を治す:「粳米黄連当帰」《崔氏》
☆余常に桃花湯を散と為して用い、白湯にて送下し効を得。もし少陰病形悉く具わり、膿血を便する者は、「真武湯」を以て桃花散を服するも亦可なり。《和田東郭》
☆虚寒性の下利便膿血。
☆少陰病、下利して膿血を便する証。
☆久痢を治す《類聚方集覧》
☆粘液や血便を下す者に用いるが、発病後、日を経て、炎症は大部分とれて、ただ直腸の締まりが悪く、長い間、下痢の止まらない者に用いる。だから、裏急後重はなく熱もなく、腹部は軟弱である《大塚敬節》
☆血痢で、熱は大半解し、下部の締まりが悪く、なかなか治らない者によい。40歳余りの尼が血痢に罹り、日を経ても治らず、昼夜7、8行も下痢し、腸が虚脱状になった者に用いて奇効を得た。《百々漢陰》

[6]肛門周囲炎

[7]痔(ぢ)
☆痔出血等にして、熱候なく、漸く衰弱加わらんとする証《奥田謙蔵》

[8]赤痢
☆赤痢様疾患にして、屡ば血便を下し、下腹部疼痛し、熱候なき証《奥田謙蔵》 (屡=ル、しばしば)

[9]帯下<膿血>

[10]大腸カタル

[11]直腸潰瘍

[12]手足冷たい

[13]尿道炎

[14]粘液便
☆口渇があり、便に臭気が強い。

[15]膿血便
☆膿血下痢、此方に非らざれば治せず。
☆痢疾累日の後、熱気已に退き、脈遅弱、或いは微細にして腹痛、下利止まず、膿血を便する者は、此方に宜し。若し身熱し、脈実にして渇、裏急後重等の症、なお存する者は、当に先ずその症に随い、疏利の剤を以て、熱毒を駆逐し、腸胃を蕩滌すべし。《類聚方広義》
☆便膿血は、腸垢と血を同じく出ずる者にして、《諸病源候論》の痢候中に所謂膿涕のみ。腸癰の下利真膿血と同じからず。《類聚方広義》

[16]疲労倦怠

[17]フィステル(漏孔)

[18]腹痛
☆後重して大腹痛あるに用いれば害を為すなり。《勿誤薬室方函口訣》
☆《許叔微》曰く、下部冷極、臍下及び少腹痛み忍ぶべからざる者一服にして効を取ると。

[19]腹満<虚満>

[20]膀胱炎

[21]裏急後重なし
☆後重あれば此方の主にあらず。「白頭翁湯」を用いるべし。



#桃花湯[2-1]《松原一閑斎》
「桃花2銭、大黄1銭」
◎腹満水多き者を治す。
◎酒酲を解す、甚だ速やかなり。《高階枳園》
◎此方は《外台秘要方》桃花一味より出て、腹水を去るに即効あり《勿誤薬室方函口訣》
(→桃花煎《本朝経験》

 

#桃花湯[2-2]《東洞家塾方》
「桃花2銭、大黄1銭」
右2味、水2合を以て先ず桃花を煮て1合2勺を取り、大黄を内れ、更に煮て6勺を取り頓服す。
◎浮腫し大小便通ぜざる者を治す。
 

#桃花湯[3]《本朝経験》
「桃花2銭、大黄1銭、甘草5分」
◎諸蓄水逆満。《雑病翼方》


#桃核承気湯[1-1]《傷寒論》
「桃仁(去皮尖)50箇、大黄4両、桂枝(去皮)2両、甘草(炙)2両、芒硝2両」
右五味、以水七升、煮取二升半、去滓、内芒消、更上火微沸、下火。先食温服五合、日三服、當微利。
◎太陽病不解、熱結膀胱、其人如狂、血自下、下者愈。其外不解者、尚未可攻、當先解其外。外解已、胆少腹急結者、乃可攻之、宜桃核承気湯。
《傷寒論》辨太陽病脉證并治中第六。




#桃核承気湯[1-2]《傷寒論》《漢方治療の実際》
=「桃仁承気湯」
「桃仁5、桂枝4、芒硝2、大黄3、甘草1.5」
○証(少腹急結)《薬徴》
◎血証、少腹急結し、上衝する者を治す。《方極》
◎按ずるに「血証」の2字はまさに之を刪るべし。上衝の下によろしく「及び血あり」の3字をあるべし。《方極刪定》
◎《方機》
桃仁50個、桂枝、芒硝、甘草各2両、大黄4両
右5味、水7升を以て煮て3升半を取り滓を去り、芒硝を内れ、更に火の上せ、微に沸して火より下し食に先て5合を温服す。日に3服す。まさに微利すべし。
少腹急結して狂の如き者。
胞衣下らず、気急息迫する者。
産後、小腹堅痛し悪露盡きず或いは、大便せずして、煩躁、或いは譫語する者。
痢病、小腹急痛する者。
◎「大黄甘草湯桃仁・桂枝・芒硝」《建珠録》
◎「調胃承気湯桃仁・桂枝」《勿誤薬室方函口訣》
処方中の「桂枝」は桂枝茯苓丸や土瓜根中の桂枝と同じくこれを血分排達の意に取るなり。《傷寒論識》
◎此方は傷寒蓄血、少腹急結を治するは勿論にして、諸血証に運用すべし。《勿誤薬室方函口訣》
◎「桂枝茯苓丸牡丹皮・茯苓・芍薬大黄・芒硝・甘草」《大塚敬節》

◎目標:《龍野ー漢方処方集》
実証ののぼせ・足冷、或いは下腹痛、或いは腰痛、或いは下半身の化膿。

◎目標:《大塚敬節》
<1>腹診上、瘀血の腹証がある。(参照→桂枝茯苓丸・大黄牡丹皮湯)
<2>便秘と少腹急結がある。

◎鑑別:
桃核承気湯証も、「大黄牡丹皮湯」を用いる場合によく似ているが、急迫性の疼痛を目標とする。《大塚敬節》
桃核承気湯は急迫の傾向があって、便秘の徴候があり、少腹急結の証がある。《大塚敬節》

◎鑑別:「抵当湯」との比較《方輿輗》
桃核承気湯は血が下る者に、抵当湯は血の下らぬ者に用いる。
腹は急結しても、桃核承気湯の方は柔らかで、抵当湯の方は硬い。しかしこれはおおよそのことである。抵当の腹でも血の下る者ならば桃核承気湯を用いなければならないことがある。桃核承気湯の腹でも血の下らない者は抵当を用いなければならないことがある。腹よりも血の方を主に目的にしなければならない。
桃核承気湯は動く者、抵当湯は動かない者である。
軽重でいえば、抵当湯は重く、桃核承気湯は軽い様だが、数年の経閉で重い様なものに桃核承気湯の証があり、1年やそこれの軽く見えるものに抵当の証があるから、2方の別は新久ではいえないものである。

◎鑑別:「大承気湯」との比較《建珠録》
滝鶴台から東洞への質問
“1婦人がおり、年齢は30歳ぐらい。腹の脹る病気になり7~8年も経っております。産み月の腹の2倍くらいも突出して青筋が出て、押すと石のように堅いのです。最初の1年ほどは、食欲はなくて食べられず、気力も沈み勝ちでありましたが、2~3年ほどからは正常な人と同じように食べられるようになり、起居、動作も、ほとんそ正常の人と変わりません。遠方に出歩くとか大動作というものが、やや難しい状態です。大小便も平常と変わっているわけではありません。病気になってからは月経が無くなっております。桃核承気湯、抵当湯、甘遂大黄湯、赤丸、鷓胡湯、鉄砂大黄丸、双紫円、平水丸の類を用いると、すこし瀉下するのですが腹は全く減少しない”
東洞先生の回答
“腹脹の患者についてですが、腹満というものは、枳実、厚朴の主どるものであるのです。薬方では大承気湯がこれを主どっているといえましょう。(中略)桃核承気湯という処方は、大承気湯から変化してできた薬方ではないのです。実は大黄甘草湯を主体として出来た薬方なのです。したがってその主治は、少腹急結ということになる分けです。”

*東洞は[枳実、厚朴]をもって腹満を治すべきとし、同じ承気湯類でも、桃核承気湯は、大黄、芒硝、甘草のほかに、桃仁と桂枝を加えたものであるから、同類ではないと指摘。つまり毒のある位置が違うから効果が無いという。
*大承気湯は腹満、燥屎を目標としており、桃核承気湯は、少腹急結を治する目標としている」

大承気湯(大黄2、芒硝2、厚朴5、枳実2)
桃核承気湯(大黄3、芒硝2、桃仁5、桂枝4、甘草1.5)


★適応症及び病名(桃核承気湯
[1]アレルギー性鼻炎

[2]赤ら顔
☆栄養の良い婦人で赤ら顔をしていて、毛細血管が網の目のように透けて見える者には桃核承気湯、桂枝茯苓丸を用いることが多い。

[3]あざ

[4]朝のこわばり

[5]胃潰瘍

[6]意識障害
☆全く意識の混濁しているような場合にも用いる《大塚敬節》

☆患者は亡友鮎川静氏の親戚にあたる医師某氏の妻君で、年齢は26℃である。
初診は昭和12年8/15。患者はそれより4日前に某病院で分娩したが、その後、脳膜炎らしい病気を起こして、医師より絶望の宣告を受けたという。
病室に通されたが、患者は全く意識が混濁していて、いっさいの問診は不可能である。脈を診る事もできないほどに力を入れて乱暴する。腹診を試みても、しきりに腹に手の触れるのを嫌がって、落ち着いて診察も出来ないが、下腹部には圧痛があるらしく、左下腹部の腸骨のところは、軽く指頭でこすっても、顔をしかめて、私の手をはねのけようとする。項部の強直はない。
体温は38℃から39℃の間を往来している。大便は分娩後1回もない。小便はカテーテルで導尿している。水や重湯は少しずつ呑む。
なるほど意識は混濁しているが、脳膜炎らしいところはない。私は「瘀血の上衝」によるものと考え、おそらく治るであろうことを告げて、桃核承気湯を与えた。
これを2回呑むと、4、5回の下痢があり、体温が39.8℃に上った。驚いたのは付き添いの看護婦である。産後の下痢は恐ろしいものだと聞かされているのに、あの漢方医の野郎は、そんなことにおかまいなく下剤を使用した。けしからん奴だと考えたのであろう。呑み残したあとの1回分は看護婦がどこかへ隠してしまったという電話である。ところが、その翌日は、体温が37℃に下がって、意識が明瞭になった。これには周囲の者も驚いたらしい。いま一度診てくれという。
そこで再び往診したが、患者の意識が常態に復し、小便も自然に出るようになり、食欲も出てきた。まだ体温は37、5℃ある。そこで 更に1剤の桃核承気湯を投じて、十分に瀉下させめたところ、体温も平常になった。
25日には、使いの者がきて、ほとんど良くなったという。そこで桂枝茯苓丸を2日分与える。
それから2、3日たって、膀胱炎を起こして排尿時に不快感があって、尿の出が悪いから、薬をくれという。診察はしなかったが、意識が混濁していた間、カテーテルで導尿したために起こったのであろう と考え、「八味丸」を与えたところ、数日でよくなった。《大塚敬節》

☆28歳女性。淋を患い、排尿後疼痛がひどく、時に血尿がある。大便は秘結し、からだは痩せ、熱の出入りがあり、咳が出て「盗汗」がある。脈は細数で肺結核状になった。
医者が治療したが、日に日に悪くなり、余が招かれた。
診ると、患者は罵詈雑言し、或いは激怒し、或いは笑い、或いは泣き、親疎を弁でず、まったく狂人と同じである。
そこで「甘麦大棗湯」を与えたところ、諸症状がますます悪化したので、これはきっと瘀血のせいであろうと考え、「桃核承気湯」を与えた。3日ほど呑むと、大便が2、3行あり、狂状が急に衰えた。そこでさらに2日与えたら、累々として豆粒のような生臭く汚い瘀血がたくさん下り、近寄れないほどであった。次いで桂枝茯苓丸を与えると、諸症状が去り、数句で全治した。(阿部桂・和漢医林新誌第131号)

[7]痿弱
☆脚気痿弱を治す《枳園方譜》

[8]陰門腫痛
☆1婦人。陰門腫痛してえぐるが如く、上衝頭痛、日夜号泣して癒えざること数日、余診するに腹鞕満(腹が硬くて膨満している)、小腹急結(桃核承気湯の腹証)す。桃核承気湯を用いること3剤にして、その夜痛み益々甚だし(瞑眩のため)。暁天に及びて忽然として膿血を出し、疾頓に癒えたり《古方便覧》

[9]鬱血・充血
☆熱のある病人で瘀血のある者は、「よく食べる」。精神はもうろうとして狂人のようで、唇は少し黒味を帯び、脈は結滞したり、沈濇になる、おおくは桃核承気湯を用いる目標である。

[10]打ち身:(打撲)
☆本朝経験、墜打損傷し、大腫痛する者を治す。按んずるに、大いに腰背を打って瘀血凝滞し、痛み屈伸し得ざる者、急に桃核承気湯を用い、芫菁膏を綿方34寸にゆるめ、以て患処に貼れば則ち痛み失する如し。《雑病翼方》

☆会陰部を強く打って、尿閉を起こしている者に著効あり《大塚敬節》
☆先年、1男子、火の見やぐらで見張りをしていて、足を踏み外し、したたか会陰部を打ち、尿道に凝血が溜まって、尿が出ず、困却している者に、この方を与えたところ、1時間もたたないうちに、自然に排尿して治ってしまった。この時は1日分を1回に頓服せしめ、[大黄・芒硝各6g]を用いた。《大塚敬節》

☆打撲のため皮下溢血を生じて、腫れ痛む者に用いる。《大塚敬節》
☆1男子がたまたま魚夫のケンカを止めようとしたところ、その1人がもっている石で、その人の眼を打ったので、眼が腫れあがり、その痛みは耐え難く、眼瞼の周りは紫黒色となり、結膜は朱を注いだようになった。先生はこれを診察して、これを一度誤治すれば必ず黒内障になるであろうと、余に命じて先ず刺絡を施し、桃核承気湯を与え、なお点眼をしたところ、10日もたたないのに全治した。
打撲眼は痛まない。そのままに捨て置き、あとで黒内障になって治らなくなることがある。それ故、打撲を受けたらすぐ、瘀血を去ることが大切である。早く瘀血を去っておけば後患がない。《眼科一家言》

☆80余歳男性。斧で薪を折っていたところ、木の屑が眼に飛び込み、たちまち眼は腫れ、疼痛が激しく堪えがたいほどであったが。3日後、突然、めまいがしてたおれてしまった。そこで家人が驚いて余に治を乞うた。診てみると、眼球が破裂し、3液と血がともに鼻の端から迸出している。先生がいうのに、早く治を施さないと、この病気は恐ろしいもので、すぐに他のよい眼にも波及して、めくら(盲目)になると。そこで突出した眼球を截断し、乳汁で洗ってから「甘草湯」を与え、ホータイで縛ってからイスに寄りかからしめ、桃核承気湯を与えた。これを飲むこと20日余りで全治することが出来た。《眼科一家言》

[11]瘀血痛
☆(刺痛)
☆瘀血の目的は必ず昼軽くして夜重き者なり。

[12]悪露残留
☆産後悪露下ること少なく腹痛する者:此湯を煮上げて清酒を入れ、飲み按配宜しくして、徐々に与えるべし《勿誤薬室方函口訣》

[13]黄疸

[14]カルブンケル(癰)
☆癰疽及び痘瘡、紫黒色にして内陥せんと欲する者、此の方に快下するときは、思いの外揮発する者なり。《勿誤薬室方函口訣》

[15]かゆみ:<激しい掻痒感>

[16]外痔核

[17]顔色悪い<赤黒く脂ぎっている>

[18]下腿静脈の怒張

[19]下腿静脈瘤

[20]下肢の冷え

[21]角膜炎
☆1婦人、20歳余り、角膜が濁って、これにスダレを下げたような雲がかかり、結膜にも帯のように赤い筋があり、これを何人もの医師が治療したが効がないと云う。その病状を問うてみるに、月経が不順であると云う。腹をみると、下腹に硬結があり、これを按ずると痛む。そこで桃核承気湯を与え、点眼を施したが、瘀血が下がるとともに、硬結も取れ、2ヶ月ばかりで治った。《眼科一家言》

☆経水不調、上衝甚だしく、眼中厚膜を生じ、あるいは赤脈怒起、瞼胞赤爛、あるいは齲歯疼痛、少腹急結の者を直す。また打撲損傷眼を直す《類聚方広義》

[22]喀血:
☆鶴牧侯臣井上桂蔵、年50許。1日吐血升余湧が如し。余に治を乞う。之を診するに、口鼻満紅、薬汁を下す由なし。因て代赭石1味研末し井華水を以て灌入すること3銭余、湧吐少し減ず、乃ち桜寧生の説に拠り、桃核承気湯を与ふ。2日を経て吐紅全く止む。のち咳嗽・短気・微熱あり、麦門冬湯地黄黄連阿膠を与ふ。数旬にして全く癒ゆ。《橘窓書影》

[23]肩こり症:
①実証。
②のぼせ。
③足冷。
④下腹部痛。「少腹急結」がある。
☆瘀血上衝して、頭痛、肩凝りを訴える者に用いる《大塚敬節》

[24]過長月経

[25]下腹部(左が多い)に硬結圧痛がある

[26]下腹部の膨満感
☆下腹部に痛みや圧痛或いは抵抗がある。《中医処方解説》

[27]下腹部痛

[28]肝斑

[29]乾癬

[30]頑癬

[31]眼瞼炎:
☆1婦人、眼にただれが出来、雲がかかったので某医の治を受けたが治らないので、余に治を乞うた。診察してみると、めまいがあって、下腹が痛む。そこで桃核承気湯を与え、点眼を施し、刺絡を行った。すると瘀血が少し下り、下腹痛とめまいは共に忘れた様に無くなった。しかし1年たっても、まだ雲は全く消え去らず残っていたので、点眼薬を与えて、家に帰らしめたが、まもなく全治した。《眼科一家言》

[32]眼出血

[33]眼底出血

[34]気の上衝 :

[35]急性大腸炎

[36]痙病(ケイレンを伴う病気)
☆瘀血発痙:「荊芥」《勿誤薬室方函口訣》

[37]下血

[38]下焦の血瘀《中医処方解説》

[39]下痢(膿血痢)
☆色紫黒に腹痛常に異なる者、これ瘀血となす。その人、形気盛なる者、宜しく此湯を服すべし。《雑病翼方》

☆《呉昆》曰く、痢疾初起の質実なる者を治すと。

☆《陳念祖》曰く、血を行らせば則ち膿血自ら癒え、気を調うれば後重自ら除くと。《雑病翼方》

☆下痢、腹痛し、紫血を下し、下腹部緊満し、脈沈実なる証《奥田謙蔵》

☆痢疾、身熱し、腹中拘急し、口乾き咽燥き、舌色殷紅にして、膿血を便する者を治す。《類聚方広義》

☆痢疾、初起にて質実の者を治す《医方考》

[40]月経異常
☆経水不調、上衝甚だしく、眼中に厚膜を生じ、或いは赤脈怒起し、或いは齲歯疼痛し、小腹急結する者を治す。又打撲損傷傷眼を治す。《類聚方広義》

[41]月経過多

[42]月経過少
☆月ごとに月経はあるが、その量が至って少なくてしぶる者に効がある《大塚敬節》

☆月経不調で1日あっては1日無いというような者に良い《大塚敬節》

[43]月経困難症:
☆月経があっても少ないと云う物は、腹~腰へかけて痛むものである。その甚だしい場合には腰腹の痛むためにうわごと(譫語)を言う者がある。毎月の月経のたびに、腰腹がちぎれる様に痛み、今月の月経が終われば来月の月経の事を心配し、その下る血も僅かばかりで、紫黒色の血を下して月々悩ます者がある。これに桃核承気湯を2、3貼用いると、痛みも譫語(うわごと)も止むものである。大抵は2貼用いると、血が下らなくても痛みは緩むものである。

そろそろ腰腹が痛みかけて、月経の通じかけてきたならこの方を用いるがよい。4、5貼を呑まないうちに、必ず効がある。また、来月の月経の時もこのようにする。その間、月経が終わって、次の月経までの間は、《普済本事方》の琥珀散を呑み、月経が始まったら桃核承気湯にする。このようにすれば、軽い者は半年、重い者は1年ほどの間に、必ず効がある。《方輿輗》

☆琥珀散の代わりに桂枝茯苓丸でもよい。《大塚敬節》

☆少腹急結の状があって、便秘し、疼痛激甚の者《大塚敬節》

[44]月経前緊張症

[45]月経不順:
☆稀発月経
☆過少月経

☆30歳女性。約10ヶ月前に流産したが、その後、月経が止まっている。それから間もなく、外陰部に湿疹が出来た。頭が重く、肩が凝り、手足がだるく、足の裏がほてるという。大便は1日1回あるが、快通しないという。
腹診すると、右側季肋下に抵抗と圧痛が著明で、胸脇苦満を証明する。また左下腹で腸骨の部に表在性の索状物を触れ、軽く按圧しても疼痛を訴える。これは《傷寒論》にいう少腹急結で、「瘀血の腹証」である。
そこで胸脇苦満と少腹急結を目標にして大柴胡湯桃核承気湯を与えた。これを3ヶ月ほど飲むと、胸脇苦満が減じ、たった1日だけ僅かに月経があった。其の次の月も1日だけあった。そしてその次の月は3日ほどあった。その頃から少腹急結も減じ、湿疹もだんだん軽快した。こんな状態で1年あまりも前方を続け、月経が正規に来るようになり、湿疹も治り、それから間もなくして妊娠した。そして無事分娩した。《大塚敬節》

☆月経が1日あっては1日は無いというような者によい。《大塚敬節》

☆月経が一向にない月も不調と考えてこれを用いる《大塚敬節》

[46]血腫

[47]血尿

[48]血便

[49]血淋(=出血性尿道炎)《勿誤薬室方函口訣》

 

[50]狂躁症

[51]胸痛

[52]蟯虫

[53]口の乾き(口燥)

 

 

[54]結膜炎:
☆《類聚方広義》には“経水不調、上焦甚だしく、眼中厚膜を生じ、或いは赤脈怒起、瞼胞赤爛、或いは齲歯疼痛、小腹急結の者を治す。また打撲損傷眼を治す”とあり、この方は、結膜、角膜の諸疾患で、充血、疼痛が甚だしく、大便が秘結し、少腹急結の状あるものに効があるばかりでなく、虹彩炎、毛様体炎、鞏膜炎などにも応用せられる。       また、月経閉止期の婦人の眼疾患に適応症がある。《大塚敬節》

[55]結膜出血

[56]血瀝腰痛(=性器出血があって腰痛がある。)
☆「附子」《勿誤薬室方函口訣》

[57]肩背強急

[58]健忘症

[59]眩暈

[60]高血圧症

[61]交換性眼炎

[62]交接後の腹痛     

[63]更年期障害 

[64]紅斑

[65]興奮

[66]肛門周囲炎

[67]肛門出血

[68]肛門掻痒

[69]黒色便

[70]黒内障

[71]五十肩

[72]骨盤内炎症

[73]骨盤内血腫

[74]骨盤腹膜炎

[75]砂眼

[76]坐骨神経痛

 

[77]痤瘡 acne

[78]産後の出血:
☆《大塚敬節》
“知人の妻、32歳。妊娠8ヶ月で早産し、子宮出血が数日続くので、産婦人科医の診察を受けたところ、胎盤がまだ残っているので、子宮掻爬手術をしなければならないと言われた。この婦人は非常に小心で臆病で、手術と聞くだけでも脳貧血を起こしそうだという。漢方で、手術をせずに、胎盤を出す方法はあるまいかと云われ、《尾台榕堂》が桃核承気湯を用いて、死んだ胎児を分娩せしめた例にヒントを得て、この方を用いたところ、3日の服薬で胎盤が勢多。そのあと桂枝茯苓丸を2週間服用して、出血・帯下も止まり、そのまま治ってしまった。この時の桃核承気湯の大黄は3.0、芒硝は5.0を1日量として。これで1日3、4回下痢したという。”

[79]産後の精神異常

[80]産後の胎盤残留:
☆産後、悪露下らず、小腹凝結して上衝、急迫し、心胸安からざる者を治す。凡そ産後の諸患は、多くは悪露尽きざるの致す所也。早く此方を用いるを佳となす《類聚方広義》
☆産後の腹痛で、悪露の下るたびに、締め付けられるように痛む者に、この方を用いることがある。もし疼痛がいつまでも、ジワジワと続き、痛むところで手で按圧して、反って気持ちよく感ずるものは虚痛と古人が呼んだもので、当帰建中湯の証である。もし按圧して反って疼痛の強くなる者は、桂枝茯苓丸又は桃核承気湯の証である。《大塚敬節》

[81]しもやけ

[82]痔:
☆痔疾患等《奥田謙蔵》
☆桂枝茯苓丸よりもさらに瘀血が顕著で便秘の緊迫感が強く、肛門部が腫脹し、硬結状となり、疼痛がはなはだしく、尿閉を起こすほどに緊迫した痔核には、本方の大黄、芒硝を6.0~10.0gの大量にして、思い切って下すと脱然として緊迫感が軽快するものである。
私自身の体験であるが、数年前、痔核脱肛を起こし、便意を催して上(せい)((せい)=便所)するも通せず、あたかも肛門部に密栓をつめたように緊迫し、張り裂けんばかりの苦痛であった。かろうじて排便すると脱肛し、これを納入するときの苦しみは言語に絶するほどで冷汗を流してやっと納まる。すると直ちに肛門が痛み、再び脱肛しそうになる。臍傍に拘攣を触れ、左右下腹部に抵抗と圧痛が認められる。よって本方の証として大黄、芒硝を各6.0gとし、これを1回に服用した。すると翌朝快便があり、肛門に堅く密栓をつめたようなものが一時に飛び出したという感じで、脱然爽快を覚え、この激しい痔核脱肛の苦痛から解放された。
その後、快便の無いときは桂枝茯苓丸料と桃核承気湯と大黄牡丹皮の3方合わせた製剤をときどき服用している。(漢方診療医典)

[83]自汗

[84]歯根出血

[85]歯槽膿漏
☆歯肉の壊疽(疽=ギンソ)、出血止まざる者、此の方に非ざれば治すること能わず。《勿誤薬室方函口訣》

[86]歯痛
☆数年歯痛止まざる者、此の方を丸として服すれば験あり。《勿誤薬室方函口訣》
☆歯痛堪え難き者、桃核承気湯に宜し。けだし血気衝逆に属する者多き の故なり。《先哲医話》

[87]四十肩(腕)

[88]死胎・胎盤を母胎から娩出できない時
☆32歳女性。妊娠8ヶ月で流産し、その後子宮出血が数日続くので、産婦人科の診察を受けたところ、胎盤がまだ残っているので、至急掻爬手術をしなければならないと言われた。この婦人は非常に小心で、手術と聞くだけでも脳貧血を起こしそうだという。
漢方で、手術をせずに、胎盤を出す方法はあるまいかと言われ、《尾台榕堂》が桃核承気湯を用いて、死んだ胎児を分娩せしめた例にヒントを得て、この方を用いたところ、3日の服薬で胎盤を排出した。その後、桂枝茯苓丸を2週間服用して、出血も帯下もとまり、そのまま治ってしまった。《大塚敬節》
☆1婦人診を乞う。妊娠すでに6ヶ月なり、先月首より瘀血下りて、衆治效無く、30日ばかりにて産せしに、温熱故か死胎糜爛し、逆産にて、首よりちぎれ、体ばかり出でたり。その後種々すれども、首は出ず。ここに難儀千万也。何とぞ出し玉はれと申すにぞ、之を診するに、その人身体血色無く、柴痩して、唇口乾燥、脈微弱なり、腹を按撫するに、首がごろごろと遊移遷転して、あたかも水中にスイカを浮かしたるが如し。余家人に謂て曰く、強て出さんとて、余り腹部を按撫せば、血暈を発すまじともいわれぬ故、薬にて下す可しと云ひ、其の夜1宿して、桃核承気湯3貼用ひければ、翌朝快利して、首は忽ち出でぬ。病者も家人も、再生の思ひをなしぬ。余も此の如き症は始めて視たり。古方の妙なること誠に感截に堪えず、此余が13より70まで。 ひたすら古方を信仰して、他念を起こさざりし、しるしならんと思へり《方技雑誌》

[89]子宮出血

[90]子宮付属器

[91]子宮内膜炎

[92]衂血

[93]湿疹

①患部は分泌物が出て、痒みがひどい。      

②「+薏苡仁」
☆26歳未婚の婦人。5年前より全身に湿疹が出て、いろいろ手を尽くしが治らないという。また突然に激しい心悸亢進が起こるくせがある。狭心症と診断されたこともあったという。体格は中肉中背であるが、筋肉の締まりの良いがっちりした骨格をしている。湿疹は、顔面項部がひどく、のぼせる傾向がある。発疹はところどころ痂皮で被われている。カユミは夜間がひどく、そのやめ安眠できない。大便は秘結し、3日に1回ぐらいである。月経は順調で、腹診上、胸脇苦満を認める。
私はこれに、温清飲を与えようか、大柴胡湯を与えようかと迷った。そしてまず温清飲を与えた。痂皮を作る者や分泌物の多いものに、温清飲の良くないことを知っていながら、敢えて、これを与えたのである。すると、果たして病状はかえって増悪した。そこで10日後に、大柴胡湯に転じた。これを飲むと、便通はあるが、指の先端の皮膚が破れて痛むようになり、手足が冷え、ときどき身震いが起きるようになった。それに、のぼせて一夜、突然心悸亢進が起こったと言う。そこで指の荒れたところには、紫雲膏を塗るようにし、大柴胡湯に桃核承気湯を合方して与えた。これを用いるようになってから、湿疹は眼に見えて良くなり、5ヶ月後には9分通りよくなった。しかも、発作性の心悸亢進は起きなかった。この患者は、月経は順調にあるし、少腹急結も証明できなかった。《大塚敬節》
☆頑固な湿疹に:「+大柴胡湯+大黄牡丹皮湯+薏苡仁石膏」《湯本求真》

[94]紫斑・出血斑

[95]しびれ感

[96]しぶり腹

 

[97]重舌:
☆《井觀醫言》より
「ある若者が重舌を患った。硬い腫物が突起して、その形が拇指よりもやや大きいものであった。舌もまた膨張して上顎に粘着し、咽喉は熱発して腫れ上がり、言葉が出なかった。悪寒がして発熱し、脈は洪数で、心下から少腹にるまで引き連れて攣急し、自分では咽喉が腫れたものと思っていたが、余《尾台榕堂》が診ると明らかに重舌の症である。
そこでがい鈹針を以て舌下につけて縦横にこれを割いた。暗紫色の血が迸り出で、舌の尖がやや回るようになって、言葉が分かるようになった。それで桃核承気湯を与えた。
ところが半日ばかりすると、舌下の腫物は再び大きくなり、全く前のように腫れ上がって、言葉も出なくなってしまった。
よって又割截して悪血を放出し、氷硼散を刷り込んだ。次日再び往診してみると、その妻君がきまり悪げに申し訳を述べ、主人はお薬を服んでから、下痢数行をし、悪寒や発熱が直ちに緩解して、口舌の腫痛も脱然として去ってしまったので、今日はもう外出して未だ家に帰らぬのであるといったので、余は一笑して去るより他はなかった。」《荒木正胤》

[98]出血:
☆出血性メトロパシー
☆走馬疳(頬部の壊疽、Noma)の出血止まざる者。《勿誤薬室方函口訣》
☆癰疽(歯肉の壊疽)の出血止まざる者。

[99]猩紅熱

[100]手術後(開腹後)の腸管癒着:

[101]常習便秘(習慣性便秘)

[102]小便淋瀝:
☆淋家(尿の淋瀝する人の意味で、今日の淋病ではない)小腹急結、痛み腰腿につらなり、茎中疼痛し、小便涓滴も通ぜざる者は、利水剤の能く治し得る所にあらざるなり、此方を用ゆれば則ち二便快通し、苦痛、たちどころに除く、小便癃閉し、小腹急結して痛む者、打撲疼痛し、転側すること能わず、二便閉濇する者も亦良し。会陰の打撲は速やかに瘀滞を駆逐し、血熱を洗滌せざれば、則ち瘀血凝滞焮熱腫脹し必ず小便不通をなすなり。もし尿道癃閉、陰茎腫痛甚だしきに至り、導尿管を用ゆること能はざれば徒に立ってその死を見るのみ。故にもしこの症に遭えば、二便の利、不利を問わず、早く此方を用いて瘀滞を駆り、熱閉を解すれば則ち凝腫、溺閉に至らず《類聚方広義》

[103]少腹急結=左腸骨の抵抗・圧痛。
☆桃核承気湯に特有の腹証。左腸骨に表在性の索条物をふれ、これを指頭をもって迅速にこするように圧すると、伸ばしていた脚をかがめてアッと顔をしかめるように痛む。《大塚敬節》

[104]静脈怒張

[105]静脈瘤

[106]耳鳴

[107]食道狭窄

[108]自律神経失調症

[109]心悸亢進:
☆陽証で実証の心悸亢進に用い、陽証で虚証には炙甘草湯を用いる《湯本求真》
☆慢性湿疹の患者で、便秘症があり、夜間、突然激しい心悸亢進を起こす婦人に桃核承気湯を用いて著効を得た《大塚敬節》

[110]心痛

[111]神経衰弱

[112]神経痛:
☆瘀血によるものに「附子」《浅田宗伯》
☆打撲の後遺症として、手足の神経質用の疼痛に用いる《大塚敬節》

[113]人工流産後の悪露残留:
☆本朝経験、草薬を以て堕胎し、毒気上攻し、心胸急迫、項背強直、牙関緊急、悪露下らず、便溺秘閉、憎寒壮熱、大渇引飲、腰腹絞痛する者を治す:「荊桃承気湯」
☆甚だしければ則ち角弓反張す。此方之を主る。採毒散を兼用亦佳なり。

[114]人工流産後の腸管癒着

[115]腎臓結核

[116]ジンマシン

[117]頭痛症
☆月経不順、月経過少、月経閉止などがあって、体格は良く、肉のしまりがよく、便秘のくせのある婦人の頭痛に用いることがある《大塚敬節》
☆ほとんど毎日痛み、ときどき発作的痛む呉茱萸湯証の頭痛とは違う《大塚敬節》
☆日によって激しいときと軽いときがあり、肩や頸が凝ると訴える者が多い。《大塚敬節》
☆頭痛は片頭痛の状態でくることがあれば、頭のてっぺんが痛むこともある。《大塚敬節》
☆月経時におこる頭痛。
☆月経閉止で起きる片頭痛。
☆30歳女性。田圃で仕事中に、突然激しい頭痛を訴え、2、3回吐いた。それとともに体温は39℃にのぼった。私が診察したのは、発病7日目で、体温は37℃に下っていたが、意識は混濁して朦朧としている。後頭部は、劇しく痛む様子で、この部の筋肉は強く緊張している。ケールニヒ氏徴候は陰性である。腹診すると、腹壁は 一般に緊張し、少腹急結を証明する。7日前、発病してから1回も 大便が出ない。家人の云うところではいつも月経が不順であるという。瘀血の上衝による頭痛と診断し、桃核承気湯を与えたところ、 その夜から数回の便通があり、次第に意識も明瞭になり、頭痛も軽快し、1ヶ月で全治した。《大塚敬節》
[ケールニヒ氏徴候]
「患者の下肢を伸ばしたまま上にあげて腿幹に近づけると、痛みのために反射的に、下肢が膝関節で屈折する現象」

[118]精神異常:
☆精神錯乱
☆月経時に精神異常を呈する者《大塚敬節》
☆精神不安(興奮しやすい)
☆瘀血が原因で精神異常を呈する者に用いられる《大塚敬節》

[119]精神分裂病

[120]生理痛:
☆月経不通で腰痛がある。:「附子」
☆月信痛:「桃核承気湯附子」を用いて効あり。《先哲医話》
☆月経痛等。《奥田謙蔵》

[121]赤痢

[122]舌出血

[123]舌質: <暗赤色~紫>

[124]舌苔: <乾燥した黄苔>
☆時に無苔。
☆舌面暗黒色、汗出でて少しく渇し、精神明瞭を欠き、時に腹痛し、或いは腰股部攣急し、その脈微浮なる証《奥田謙蔵》
☆舌が暗紫色のものor青色のもの、or舌の辺縁に斑点おあるものは瘀血の舌証である。
☆黒舌・・・大承気湯で下して良いものと、四逆湯や眞武湯で温補しなければいけないものがある。

[125]譫語

[126]喘息

[127]全身灼熱感

[128]前立腺炎

[129]前立腺肥大

[130]そばかす

[131]躁病

[132]鼠径リンパ腺炎

[133]タムシ

[134]帯下:
☆赤白帯下は、之を主どる。並に痢疾、打撲、瘀血の者、小腹急結して塊ある者は、男子もまた此方に宜し《類聚方集覧》
☆帯下があって、便秘し、少腹急結の状がある者《大塚敬節》

[135]大腸炎

[136]打撲
☆打撲後の腫脹と疼痛が激しく、または皮下に出血を起こし、便秘の傾向があって興奮しているものに用いるとよい。ことに会陰部の打撲によって尿閉を起こしているものにはよく効く。これも実熱の瘀血症であって体力の衰えていない者によい。本方は左臍下腸骨窩部に瘀血があって、少腹急結の証を現すことが多い(漢方診療医典)

[137]丹毒=溶血性レンサ球菌による真皮の炎症

[138]血の道症:
☆月経時に気が荒くなって、イライラしたり、怒こったりする者にも用いる。又、月経時に気が狂ったのではないかと思うほど乱暴する者にもよい。《大塚敬節》

[139]知覚麻痺

[140]蓄膿症

[141]虫垂炎

[142]窒息

[143]腸出血

[144]腸チフス

[145]腸閉塞症(初期)

[146]直腸炎

[147]テンカン(癲癇)

[148]登校拒否
☆思春期後期になると女子では下焦の瘀血症状を呈するものがある。体力があり右、のぼせ、不安、興奮などの精神神経症状、便秘のある場合に用いる。左下腹部には抵抗・圧痛を認める(漢方診療医典)

[149]トラコーマ

[150]凍傷

[151]痘瘡=天然痘
☆紫黒色にして内陥せんと欲する者、此方にて快下するときは思いの外揮発するなり《勿誤薬室方函口訣》

[152]動脈硬化症

[153]吐血:
☆吐血にて、胸中の気塞がるを覚え、上りて紫血を吐すを治す《寿世保元》
☆本朝経験、吐血紫黒に、胸中気塞を覚ゆる者ならびに下血に瘀有る者を直す。《寿世保元》に云う、吐血、胸中気塞を覚え、上って紫血を吐くを治すと。按んずるに、止血して瘀を去らざれば、則ち瘀血停滞して咳となり、発熱、咳嗽、皮肉甲錯、遂に乾血労とならん。  《雑病翼方》

「乾血労」=虚労証候の1つ
☆血盛大なる者は、先ず瘀血を消し、次ぎに止血凉血すと。《雑病翼方》  
☆瘀血にして吐するは、必ず先ず胸痛み、血色必ず紫~黒くして塊を成し、脈必ず滞濇なり。此湯に宜し。もし紫黒ことごとく鮮血見るれば即ち「理中湯当帰」之を調う。《雑病翼方》
☆吐血等にして、胸内圧迫の感あり、脈実なる証《奥田謙蔵》

[154]軟性下疳:
☆種々の花柳病、特に軟性下疳等《奥田謙蔵》

[155]にきび

[156]乳腺炎:<化膿性>
【EBM】乳腺症に対する効果
“乳腺症の乳房痛・乳腺腫瘤の有効率は、それぞれ74%、43%で、桂枝茯苓丸(それぞれ75%、31%)の有効率と有意差はなかった”

[157]尿道炎

[158]尿閉:
☆会陰部を強く打撲したため、尿道が腫脹し、または尿道内に出血して血塊が尿道を塞ぎ、そのために尿閉を起こした者に用いて著効がある。《大塚敬節》
☆52歳男性。梯子より落ち、そのはずみに強く会陰部を打ち、一時失神状態となった。その後、尿閉を起こし、ブージーを入れて導尿せんとしたが、僅かに滴々と、したたるばかりで、その苦痛に堪えがたいという。よってこの方の大黄・芒硝各5.0を1日量としてこれを与えたところ、僅かに40分後尿が快通し、次いで下痢が起こり、数日で、何の後遺症も残すことなく全治した。《大塚敬節》
☆腎膀胱結核のある40歳の男性。平素は四物湯猪苓湯露蜂房末で、排尿痛・血尿ともなくなり、自覚的には何の苦痛もなかったが、2、3日不眠不休で活動したところ、突然尿閉を起こした。診察したところ腹部膨満し、ことに下腹部は緊満している。それに左腰部に鈍痛あり、2、3日便秘しているという。よって桃核承気湯を頓服として与え、下腹部に温湿布をしたところ、下痢とともに、血塊を交えた尿が出てきた。《大塚敬節》

[159]熱性病:
☆熱性病、譫語を発すること狂人の如く、或いは下血し、或いは下腹部急結して痛む証《奥田謙蔵》

[160]捻挫

[161]ノイローゼ

[162]のぼせ:
☆筋肉のしまりが良く、栄養血色共に良く、便秘気味で、月経が少なかったり、月経困難があったりする婦人で、のぼせて、頭痛・肩こりを訴える者《大塚敬節》

[163]膿血痢

[164]脳炎

[165]脳充血

[166]脳出血

[167]脳膜炎

[168]発狂:<錯乱状態>
☆「+荊芥」《勿誤薬室方函口訣》
☆《傷寒論》では桃核承気湯と抵当丸の条に“狂の如し”とあり、抵当湯の条に“狂を発す”とあり、その腹証について、桃核承気湯では“小腹急結”といい、抵当丸では“小腹満”といい、抵当湯では“小腹鞕満”とある。《大塚敬節》
☆桃核承気湯は瘀血の発狂に用いる。普通の癇ではない。その狂が瘀血によるものかどうかを探すには、ここに云う少腹急結などの腹候を考えて、婦人であれば、月経を尋ねる。男子ならば、血毒あるいは打撲などから、内に血を蓄えて、たまたま狂をなす者がある。
これの重い者は抵当湯で、抵当湯の軽い者が抵当丸である。
また本方に柴胡剤を用い、兼用に、破血の丸剤、例えば抵当丸などを用いることもある。これはもちろん柴胡剤の証がある場合の手段である。
また発狂に吐血などを兼ねることがある。その時は腹に瘀血があっても、三黄瀉心湯を用いなければならない。
桃核承気湯と抵当湯の症は、狂癇にままある。男女ともにあるものである。この方のゆくべき狂症は、将軍湯などと大いに違っているので、弁別しなけれなならない。桃核承気湯と抵当湯とは、健忘にも用いるけれども、発狂には最も多く用いる。腹候によって新旧を弁じて、この2方を区別している。
桃核承気湯と血と抵当湯との別は軽重である。抵当湯は小腹鞕満で、桃核承気湯は鞕満にならない者である。《方輿輗》

[169]バリックス=下肢静脈瘤

[170]バルトリン腺炎

[171]パンヌス。・・パンヌスとは慢性関節リウマチに見られるもので、炎症を生じた滑膜の表層細胞が増殖して、それが絨毯状に広がって軟骨や骨に浸潤している状態をいいます。パンヌスはコラゲナーゼといったたんぱく質分解酵素や活性酵素、プロスタグランジンを分泌することで、軟骨や骨を破壊します。その結果、軟骨が無くなり、関節の変形などのリウマチの症状を引き起こします。

[172]肺炎

[173]肺結核

[174]白内障:
☆この方は瘀血の上逆による眼疾患を治す《大塚敬節》
☆桃核承気湯は、少腹急結というと特異な腹証を認めた場合は、その眼疾患がどんなものであろうと用いて良い。しかし時には、この腹証がはっきりしない時でも、この方を用いて良い場合が有る《大塚敬節》
☆35歳女性。色白で筋肉のよくしまった肥満した主婦。いままで著患に罹ったことはないが、頑固な便秘と片頭痛がある。こんどの病気は、3ヶ月程前に、視力が悪くなったので、眼科で診てもらったところ、左0.7右0.6で、老人性白内障と云われた。驚いて転医したところ、そこでは点状白内障と云われたという。そして内服薬とカタリンの点眼をしている。
初診昭和36年9/28。視力障害の外に、多汗、動悸、不眠があり、足が軽く宙に浮いた感じがするという。冷え症で、夏でも足袋がほしいという。便秘しているので、いつもセンナを飲んでいる。月経は毎月あるが、量が少なく、始まる前に良く頭痛が起こり、気分がイライラする。脈は沈んで小さい。血圧は92-60。腹診すると、下腹部の筋肉が強く緊張し、左腸骨窩の部分は、指頭を軽く触れるだけで、激しい疼痛を訴え、腹診が困難である。すなわち少腹急結が著明に証明されるわけである。また背部で、肝兪から腎兪あたりにかけて左右とも圧痛が著明である。
そこで桃核承気湯を用いたが、これを飲むと、非常に気分がよく、からだの重いのがとれたという。10日間の服用で4kgも体重が 減じた。ところが10/6にあるはずの月経がなく、10/11にひどい片 頭痛が起こった。そこで頓服として呉茱萸湯を与えた。これで頭痛はよくなったが、10/20の診察でも、月経がない。腹診すると少腹急結が軽快したいる。また眼科医は白内障が急速によくなったといって喜んでくれたと云う。10/31に月経があった。11/28に月経があり、今までになく量が多い。12/31のぼせ、頭重があり、右肩が凝り、血が頭にのぼる感じで、憂鬱になるという。また、左季肋下が重いというので、よく診ると、胸脇苦満がある。そこで大柴胡湯に桃核承気湯を合方して与える。
これで1日5、6行の下痢があり、月経量も多くなり、白内障も進行が止まり、軽快してきた。ただ両腕がシビレ、背がだるく、眼が押し出されるような感じがあるという。
病気が軽快したので、郷里に帰っていたが、4/14に来院。患者の語るところによると、3/25に、夜中、突然吐血した。そのあとで、食物も吐き、胸から、みずおちが痛んだ。医師は胃ガンだと診断したが、他の医師は胃ガンではないが、どうして吐血したか分からないと云った。気分が重く、みずおちも重く、めまいがする。そこで三黄瀉心湯を与えたところ、気分がとても良いという。目下、息切れ、動悸があり、柴胡加竜骨牡蛎湯を服用中である。
この患者の吐血は、おそらく瘀血が出たものであろう《大塚敬節》

[175]肌荒れ

[176]発熱

[177]半身不随

[178]煩熱

[179]ヒステリー

[180]鼻出血

[181]冷え症

[182]冷えのぼえ

[183]鼻炎・鼻カタル

[184]皮下出血

[185]皮下膿瘍

[186]皮膚炎

[187]皮膚甲錯

[188]肥満

[189]フリクテン=角膜(黒眼)や結膜に丸い隆起のできる病気です

[190]フルンケル=癤(せつ)のこと

[191]吹き出物

[192]ふけ

[193]腹痛:
☆本朝経験、経毎に腰腹疼痛忍ぶべからず、劇しきは譫語、人事不省の者、此湯を与う23貼にして、瘀血下り、疼痛失する如し。来月経期後に此の法を用い、その間「逐瘀丸」を服するを佳と為す。およそ45月善く此の法を行えば則ち数年の滞患全治を得。《雑病翼方》
☆《参黄子》曰く、初めまま下を失し、反って固渋の薬を用い、以て邪熱内蓄を致し、血行ぐるを得ず、腹痛し、死せんとする者、急に此方を以て之を主ると。
☆脈少しく浮にして熱候あり、時に譫語を発し、下腹部急結し、尿利異常なき証《奥田謙蔵》
☆産後、腹痛を発し、或いは下腹部より心下部に上衝し、或いは眩暈を発する証《奥田謙蔵》
☆42歳の婦人、色のやや浅黒い肉のしまりの良い体格である。主訴は、腰痛で、発病以来約2年を経過して、あらゆる手当をうけたが治らないばかりか、この頃ではびっこをひいてやっと歩いているという。それに仰臥しても、左側を下にして寝ても、腰が痛むので、いつも右側を下にして寝ているという。腹診してみると腹部の筋肉は一体に緊張しているが、特に胸脇苦満はなく、少腹急結も証明できない。大便は便秘して快通せず、月経は近年になって量が減少し、月経の前には特に腰痛が甚だしいという。腰部をみると、腰椎の左側が掌をあてたくらいの広さにわたって、隆起しており、この部を按圧すると痛むという。この部位はちょうど少腹急結の現れる左腸骨窩の裏側に当たる。そこでこれを桃核承気湯の腹証である少腹急結の変形と考えて、桃核承気湯を与えたところ、大便は開通し、月経の量も多くなり、1ヶ月後には仰臥できるようになり、3ヶ月後には腰部の隆起も無くなり、起居動作が楽に出来るようになった。《大塚敬節》

[194]腹部(左腹部)大動脈搏動

[195]不正性器出血

[196]不妊症

[197]不眠症:
☆輸精管結紮の手術を受けたあと、下腹から両側の鼠径部にひどく腫脹、疼痛し、眠ることが出来ないという男子を往診した。診るとこの部は一体に溢血して黒く腫れ、指を少し触れても痛むという。そこで、少腹急結の証を診断して、桃核承気湯を与えたところ、その翌日から安眠できるようになり、1ヶ月たたないうちに全快した。《大塚敬節》

[198]浮腫

[199]閉経:
☆閉経腹疼を治す。
☆婦人月経通ぜず、下腹部満痛する証《奥田謙蔵》
☆経閉、上逆、発狂し、或いは吐血、衂血、及び赤白帯下、小腹急結し、腰腿攣痛する者を治す。《類聚方広義》
☆桃核承気湯は抵当湯とはり合わせで用い分けるがよい。その証の別は桃核承気湯は血が下るもの、抵当湯は血の下らないものである。腹は急結しても、桃核承気湯方は柔らかで、抵当の方は硬い。しかしこれはおおよそのことである。抵当の腹でも血の下る者なら桃核承気を用いねばならないことがある。桃核の腹でも血の下らない者は抵当を用いねばならないことがある。腹よりは血の方を主に目的にしなければならない。《方輿輗》

[200]偏頭痛

[201]便秘(慢性便秘)
☆少腹急結の状態があって、便秘する者に用いる《大塚敬節》

[202]膀胱炎

[203]膀胱結石

[204]膀胱出血

[205]慢性関節リウマチ:
 ☆<激痛する者>

[206]慢性副鼻腔炎

[207]慢性腹膜炎

[208]耳鳴り

[209]無月経  
☆無月経に用いることがある《大塚敬節》

[210]虫歯(齲歯の疼痛)

[211]ムチ打ち症

[212]めまい

[213]目の打撲
☆1男子が漁夫のケンカを止めようとしたところ、その1人が手に持っている石で、眼を打ったので、眼が腫れ上がり、その痛みは耐え難く、眼瞼のまわりは紫黒色となり、結膜は朱をそそいだようにあった。先生はこれを診察して、これをひとたび誤治すれば必ず黒内障になるであろうと。余に命じて先ず刺絡を施し、桃核承気湯を与え、なお眼点をしたところ、10日もたたないのに全治した。《眼科一家言》

[214]面疱

[215]妄想

[216]盲腸炎

[217]網膜炎
☆桃核承気湯は、結膜、角膜の諸疾患で、充血、疼痛が甚だしく、大便が秘結し、少腹急結の状あるものに候があるばかりでなく、虹彩炎、毛様体炎、鞏膜炎などにも応用せられる。《大塚敬節》

[218]目眩

[219]やけど

[220]癒着(ゆちゃく)
☆開腹手術や人工流産後の、腸管癒着に用いる。

[221]癰疽:
☆紫黒色にして内陥せんと欲する者、此方にて快下するときは思いの外揮発するなり《勿誤薬室方函口訣》

[222]腰痛症:
☆<激しい痛み>
☆血瀝腰痛:「+附子」
☆《張氏医通》に曰く、両腰僂廃(僂=せむし)するは、熱邪深く血脈に入り、久しく之を閉す、故に本方中に多く桂枝を用い、少しく附子(熟)を加え、経を行らず。もし痛む者は治すべし。按んずるに《喩氏》《寓章草》、此方を以て傷寒後の腰痛を治すと、亦同趣旨なり。《傷寒翼方》
☆腰痛等にして、便秘の傾向有り、その脈実なる証《奥田謙蔵》
☆かって打撲等を受け、後年腰痛を発し、癒えざる証《奥田謙蔵》
☆42歳女性。色のやや浅黒い肉のしまりの良い体格である。主訴は腰痛で、この頃ではびっこを引いてやっと歩いているという。それに仰臥しても、左側を下にして寝ても、腰が痛むので、いつも右側を下にして寝ているという。腹診してみると、腹部の筋肉は一体に緊張しているが、特に胸脇苦満はなく、小腹急結も証明できない。大便は便秘して快通せず、月経は近年になって量が減少し、月経の前には特に腰痛が甚だしいという。腰部をみると、腰椎の左側が掌をあてたくらいの広さにわたって、隆起しており、この部を按圧すると痛むという。    この部位はちょうど少腹急結の現れる左腸骨の裏側に当たる。そこでこれを桃核承気湯の腹証である少腹急結の変形を考えて、桃核承気湯を与えたところ、大便は快通し、月経もまた量が多くなり、1ヶ月後には仰臥出来るようになり、3ヶ月後には腰部の隆起もなくなり、起居動作が楽に出来るようになった。《大塚敬節》

[223]翼状片

[224]卵巣炎

[225]卵巣機能不全

[226]流産:
☆流産の後で、急に心下に突き上げてくるように痛み、息もしにくいという者には、桃核承気湯を与えるが良い。産後や流産後にはよく桃核承気湯の証が出るものである《大塚敬節》     
[227]流産癖
[228]リウマチ:
☆ロイマチス性疾患にして、その痛夜に入れば特に甚だしき証《奥田謙蔵》
[229]緑内障
☆虹彩炎、毛様体炎、強膜炎などを併発し、刺激症状も強く、炎症充血が甚だしく、便秘して瘀血が認められるものや、婦人の月経閉止期に発現したっものには本方で瘀血を去るとよい。便秘しないときは桂枝茯苓丸でよい(漢方診療医典)
[230]メトロパチー Metropathie(慢性子宮症)  
「メトロパチー症」=子宮すべての疾患又は異常。
    


桃渓気宝丸《東醫寶鑑》
「黒丑頭末2両、大黄1両半、檳榔・青皮各1両、羗活・川芎・陳皮・茴香(炒)・木香・当帰各5銭」作末して、皀角(熬)膏で丸め、姜湯で50~70丸呑む。
◎積聚と癥瘕で腹や脇に、何か盆のようなものを抱えているようで痩せる者。
◎一切の気積・食積と大便の秘渋を治す。
◎寒熱の往来する者を治す。


桃紅四物湯《医宗金鑑》
「四物湯桃仁・紅花」

桃紅四物湯《医宗金鑑》《中薬臨床応用》
「桃仁9g(打砕)、紅花6g、川芎5g、当帰9g、白芍薬9g、熟地黄12g」水煎服。
◎月経痛
◎無月経で、下腹部が脹って痛む。
◎月経血がすっきり出ない
◎血塊が混じる
◎月経血が漆黒色
◎月経量が少ない
◎数ヶ月、生理がない

 

桃仁散《医学入門》《古今方彙》
「桃仁・甘草・半夏・沢蘭葉・牛膝・当帰・桂心・牡丹皮・人参・蒲黄・川芎各5分、赤芍薬・生地黄各1銭、生姜」煎服。
◎月水調わず、或いは淋瀝して断たず、断ちたる後に復来ること状は瀉水に如く、或いは前に、或いは後に、或いは閉じて来たらず、四肢沈重し、眠らんと欲し、飲食する能わず、腹中堅痛し、多く酸物を思うを治す。



桃仁承気湯
⇒桃核承気湯《傷寒論》のこと。
       《脈経》《玉函》《方意弁義》《古方選》に作る。

桃仁承気湯《温疫論》
「大黄、芒硝、桃仁、当帰、芍薬、牡丹」
◎昼日熱減じ、夜に至って熱甚だしき者は瘀血なり。
◎此方は《傷寒論》の変方にして、その証一等緩なる処に用いる。作者の趣意は、胃実の症にして、下剤を与えず、夜に至って発熱する者は、熱血分に留まる者なり。下剤を与えざれば瘀血となる。此方を用ゆべしと云へども、此の如き証はやはり本論(傷寒論)の方が宜しきなり。《勿誤薬室方函口訣》
◎既に下して後、昼日熱減じ、夜に至って熱甚だしき者、瘀血めぐらざる故なり。此の場合にて此方及び「犀角地黄湯」を用いるべきなり。
◎此の症、下を失刺、自ら下血する者は甚だ危篤に至る。或いは暴に下血して、手足厥冷し、絶汗出て、一夜を経ずして死す。故に血を見ざる前に、此方及び犀角地黄湯を斟酌して用ゆべし。
◎吾門にては「大黄牡丹皮湯」の一等軽き処を「腸癰湯」「騰竜湯」とし、桃核承気湯の一等軽き処を「桂枝桃仁湯」及び「桃仁承気湯」とするなり。《勿誤薬室方函口訣》
◎《丹渓》曰く、傷寒血症、吃逆止まず、舌強短なる者、桃人承気湯之を主る。《雑病翼方》
◎心痛、湯水を飲み下し吃逆となる作る者は、是れ死血中に在り。

 

桃仁承気湯《東醫寶鑑》
「大黄3銭、桂心・芒硝各2銭、甘草1銭、桃仁(留尖)10枚」剉作1貼し水煎し「芒硝」を入れて温服する。
◎血が膀胱につもって小腹が詰まり、便が黒く譫語し、漱水するのを治す。


桃仁煎《東醫寶鑑》
「桃仁・大黄各1両、虻虫(炒)5銭、朴硝1両」作末し先に純醋1升合を銀石器で弱火で煎じ、7合ぐらいになったら桃仁・大黄・虻虫末を入れ、次に朴硝を入れて再煎しかき混ぜ梧子大の丸剤。前日に夕食を取らずに夜中に起きて、温酒で5丸を飲み下すと、悪物が豆汁か鶏の肝のようなものになって降りるが、万一降りなかったら又服用し、出ると服用を中止する。
◎婦人の血蠱・血瘕・血積・月経不順を治す。

桃仁湯《備急千金要方》
「桃仁5個・沢蘭・甘草・川芎・人参各2両・牛膝・桂心・牡丹皮・当帰各3両・芍薬・生姜・半夏各4両・地黄8両・蒲黄7合」の14味を粉砕し、水3升を1.5升まで煮詰める。6回に分けて服用。

桃仁湯《温疫論》
「桃仁3匁、牡丹皮1匁、当帰1匁、芍薬・阿膠各2匁、滑石1匁」
◎邪、血分を干す者、之に宜し。
◎此方《呉》氏邪血分を干す者に用ゆれども、吾門にては水分、血分、二道に渉る者に用いる。故に猪苓湯の証にして邪血分に波及する者は此方を用いる。
◎又、水、血を結んで血室に在る者、「大黄甘遂湯」を以て攻下の後、此方を与える時は具合至って宜しきなり。《勿誤薬室方函口訣》

 

桃仁当帰湯《証治準縄》《古今方彙》
「桃仁、当帰尾、延胡索、生地黄、川芎、赤芍薬、呉茱萸、青皮、牡丹皮」水煎。
◎疝にて瘀血により痛みを作すを治す。

 

桃人湯《本朝経験》
「桃仁3銭、阿膠2銭、牡丹皮・当帰・滑石各1銭」水煎。
◎邪、下焦血分をおかし、溺血、蓄血するを治す。
◎小腹痛み、これを按んじて硬痛し、小便自調するは、蓄血あるなり:「大黄3銭」




桃奴湯《東醫寶鑑》
「桃奴・豭鼠糞・延胡索・肉桂・香附子・五霊脂・縮砂・桃仁」各等分に作末し毎回3銭を温酒で調下する。
◎血脹と婦人の月経不順による脹満が、ちょうど男の血蠱病と同じ症を治す。

桃奴元《東醫寶鑑》
「桃奴7箇(別研)、玳瑁鎊(細末)1両、安息香(去滓)1両」3味を銀石器に入れ、炒って膏を作り、「辰砂・犀角各5銭、琥珀・雄黄各3銭、竜脳・麝香・牛黄各2銭、桃仁(麩炒)14個」を作末して安息香膏に入れ、芡大に丸め、陰干しにし、密封して秘蔵し、人参湯で1丸づつ飲む。
◎邪祟・尸疰・客忤を治す。
◎言語錯乱・恍惚失常を治す。

桃奴散《東醫寶鑑》
「桃奴・豭鼠糞・延胡索・肉桂・五霊脂・香附子(炒)・縮・桃仁」各等分に作末し、毎回3銭を温酒で調下する。
◎血蠱と痰血が停積して、経水が通じない者を治す。

当帰郁李仁湯《東醫寶鑑》
「郁李仁・皀角仁(焼)各1銭、枳実7分、秦芁・麻子仁・当帰梢・地黄(生)・蒼朮各5分、大黄(煨)・沢瀉各3分」剉作し煎じて滓を去り、両仁を混ぜて服用。
◎痔瘻で大便が硬く、努肉が出、腸頭に出血して痛む者を治す。

当帰飲《東醫寶鑑》
「大黄・蘇木・生乾地黄・当帰・赤芍薬」各等分に作末し、毎回3銭を温酒で調服する。
◎打撲により肺気が損傷して咳をする者を治す。
◎黒血を吐く者を治す。

当帰飲《万病回春》《古今方彙》
「当帰1銭2分、芍薬・生地黄・牡丹皮・麦門冬各1銭、黄連(酒)・黄芩(酒)・地骨皮各7分、柴胡・梔子各6分、川芎5分、甘草3分」水煎。食遠に服す。
◎心を労して熱を生じ、五心煩熱、或いは血症を見るを治す。


当帰飲子[1-1]《厳氏済生方》《漢方後世要方解説》
「当帰5、芍薬・川芎・蒺藜子・防風各3、地黄4、荊芥・黄蓍各1.5、何首烏2、甘草1」
◎瘡疥、風癬、湿毒、燥痒等の瘡を治す。
◎心血、凝滞、内瘟の風熱、皮膚に発見し、遍身の瘡疥を治す。
◎此方は四物湯が原方で、血燥を治し、他薬を加味して風熱を治する剤である。血燥によって皮膚枯燥し、風熱によって皮膚に種々の変化を生じ、発疹掻痒を訴える者に用いられる。
浪人、虚人にて皮膚枯燥し、分泌物少なくして掻痒を主訴とする者に用いてよく奏功する。
「蒺藜子」=瘡掻痒を療し、白癜頭瘡を治す。
「荊芥」=風を去る、瘡を治し、痰を消す
「何首烏」=滋養強壮の能あり
「防風」=表を発し、風湿を去る
「黄蓍」=肌表の水毒を去り、表を固む
「四物湯」=血燥を治す。


当帰飲子[1-2]《癘瘍機要》《漢方医学概論》
「当帰・川芎・防風・荊芥各1銭半、甘草(生)1銭、白芍薬・地黄(生)・白蒺藜各1銭半、黄蓍(炒)・何首烏各1銭」水煎服。



当帰飲子[1-3]《厳氏済生方》《古今方彙》
「当帰・川芎・白芍薬・生地黄・蒺藜子・防風・荊芥各1両、何首烏・黄蓍・甘草各半両」水煎。末と為すも亦可なり。
◎瘡疥、風癬、湿毒燥痒等の瘡を治す。


当帰飲子[1-4]《厳氏済生方》《中医処方解説》
「当帰・白芍薬・川芎・熟地黄・白蒺藜・防風・荊芥・何首烏各5.0g、黄蓍・甘草(炙)各3.0g」



当帰飲子[1-5]《厳氏済生方》《漢方治療の実際》
「当帰5、芍薬・川芎・蒺藜子・防風各3、地黄4、荊芥・黄蓍各1.5、何首烏2、甘草1」
◎心血凝滞し、内に風熱を蘊(ふさがる)し、発して皮膚にあらわれ、遍身瘡疥あるを治す。《東醫寶鑑》
◎此方は老人血燥よりして瘡疥を生じる者に用いる。もし血熱あれば「温清飲」に宜し。《勿誤薬室方函口訣》
◎此方を服して効無き者は「四物湯荊芥・浮萍」を長服せしめて効あり。
◎目標:《大塚敬節》
消風散や温清飲とは逆で、熱状がなく、虚証で、老人や虚弱な人に用いられる。

★適応症及び病名(当帰飲子)
[1]炎症はない
[2]かきむしって血痂・血がにじむ。
[3]かゆみ:
☆(遊走性)
☆激しい掻痒感。
☆血燥すれば皮膚癢をなす。本方に宜し。《先哲医話》
☆風熱瘡疹の癢痛を治す。
[4]乾燥性皮膚疾患:
☆血燥による者を治す。血熱には温清飲。
[5]乾癬
☆尋常性乾癬
☆78歳男性。半年前より乾癬があり、毎朝頭痛がするという。血圧は210-88。私はこれに当帰飲子を用いたが、頭痛も軽くなり、乾癬も全治して、大変喜ばれた。血圧も190-82まで下がった。《大塚敬節》
[6]頑癬:
☆余、老人の頑癬を治する数十人、その痒痛甚だしく熱無き者は当帰飲子或いは十全大補湯+附子を用い、血燥甚だしく熱ある者、温清飲を用い、水気あって実する者は、済生赤小豆湯を用い、虚する者は済生赤小豆湯附子及び真武湯反鼻を用いて多く効を奏す《橘窓書影》
[7]筋肉がケイレン
[8]月経異常
[9]湿疹:
☆皮膚がカサカサ乾燥して分泌物が少なく、かゆみのひどい湿疹、皮膚炎。
☆逆に、分泌物がジワジワ出て乾かず、乾くかと思えばまたジワジワ出て、かゆみが強いもの。
☆体力虚弱で、冬に増悪することが多い。
☆デューリング疱疹状皮膚炎に有効。《大塚敬節》
☆発疹は、灼熱感なく、皮膚面よりの隆起も少ない。《大塚敬節》
☆40歳男性。幼少の頃からたびたび湿疹が出る。その湿疹は冬になるとひどくなる。ところが、戦争中、南方戦線で活躍中の3年間は、すっかり良くなっていた。
帰国すると、その翌年から、また湿疹が出始めた。
患者は中肉中背で、頸部・手の肘関節・股関節・膝関節あたりに、やや黒ずんだ発疹が群がって出ていて、表面は扁平である。夜間は特にカユミが強くなる。分泌物は少ない。足が冷える。大便は1日1行。臍上で振水音を聴く。口渇や熱感は無い。
私はこれに当帰飲子を与えた。飲むと尿量が増加し、カユミが減じ、1ヶ月後には7分通り良くなり。3ヶ月ほどで全く綺麗になった。《大塚敬節》
[10]しびれ:(四肢の末端がしびれる)
[11]心悸亢進
[12]滲出物:<なし~少ない>
☆黒田曰く、瘡疥、その他一切無名の小さき出来物。半年、1年の久しきを経て癒えぬもの。その形平搨にして尖らず、且つ脂水ジトジトと出て燥かず、或いは燥くかと思えば又シトシトと出たり、カユミ甚だしきもの。この方を用ゆべし。形・平搨(=平坦)にして尖らず、ジトジトと脂水出て乾きかねるを標準とすべし。勿論、脈も緊盛、または数疾なるものは、毒未だ尽きざるなり。毒気尽きざるものに用ゆれば、黄蓍も方中にある故、皮膚を閉毒、洩るることを得ず。内陥して水腫をなす。慎むべし。敗毒、浮萍散など用いて癒えず、纏綿、年を歴て治せぬ症、並びに虚人、老人、この方の応ずる症多し。熱に属するカユミと虚に属するカユミと、カユミの模様に心を用ゆべし。《纂方規範》
[13]舌質 :<暗紅>
[14]舌苔:<微白苔><湿潤>
[15]手足が冷える
[16]手がふるえる(手指振顫)
[17]発疹:<黒ずんでいる>
[18]発赤:<なし~少ない>
[19]粃糠疹:
<落屑>
☆ヘブラ紅色粃糠疹《大塚敬節》
[20]皮膚がかさかさ・艶なし(皮膚枯燥)
[21]皮膚掻痒症
[22]貧血症
[23]浮腫はない
[24]慢性湿疹:(分泌物少ない)  
[25]目が乾燥する
[26]夜間(or冬)に増悪
[27]老人性皮膚掻痒症



当帰鶴虱散《外台秘要方》
「当帰8分、鶴虱10分、橘皮6分、人参6分、檳榔12分、枳実6分、芍薬6分、桂枝6分、生姜、大棗」
◎九種の心痛、回虫、冷気先ず両肋より胸背に撮痛し、吐に変ぜんと欲するを療する。
◎此方は回虫にて心痛止まざる者を治す。《勿誤薬室方函口訣》
◎「鶴虱」倭産効なし。
◎もし此方を用いて回虫去るの後、心痛止まざる者:「甘草粉蜜湯」特効あり。

 

当帰活血潤膈湯《寿世保元》《古今方彙》
「当帰1銭半、桃仁・厚朴各1銭、黄連(呉茱萸1銭湯炒)、陳皮8分、大腹皮(甘草湯洗)8分、白朮7分、紅花(塩水炒)7分、甘草(炙)、酒をよくする者は葛根を加える」水煎。
◎膈に十般の病在り。其の実は同じく一源より出づ、皆動性に因り発洩する能わず則ち肝に欝す。人の膈膜は肝木に属し、しからざれば土に乗ず、木に位するを曲直といい、酸をなす。然して酸は則ち能く胃脘を収塞し之に因りて小窒碍を収む。乃ち膈を作す症には此湯に宜し。
◎五噎の名は五原があると雖もその要は気弱にあり、血枯の人、思慮慾を労して成る者なり。宜しく慾を絶し以て血を復精し、須らく志を節順して以て心脾を和す。:「白朮人参・白豆蔲・黄柏・知母・山梔子・括楼仁・遠志」




当帰活血湯[1]《張氏医通》
「当帰12g、赤芍(酒洗)・生地黄(酒浸)・桂心各6g、桃仁20粒、茯苓・枳穀・柴胡各3.2g、甘草2g、乾姜(炮)1.6g、紅花0.8g」

 

当帰活血湯《寿世保元》《古今方彙》
「当帰・赤芍薬・甘草・紅花・桂枝・乾姜(炒)・枳殻・柴胡・人参・生地黄・桃仁・生姜」水煎し、酒を入れ同じく服す。
◎頭疼なく、悪寒止発無く、大渇して小便利し、大便黒く、口に無倫の語を出す。此れ内傷・血欝・肝脾の症なり。人をして昏迷・沈重・錯誤す。故に夾血と名付け鬼祟(幻覚)を見る。
◎別法:桃仁・紅花・乾姜・桂枝、白朮・茯苓。



当帰活血湯[2-1]《万病回春》《東醫寶鑑》
「当帰・赤芍薬・川芎・桃仁各1銭、牡丹皮・香附子・烏薬・枳殻・青皮各8分、紅花5分、桂皮・乾姜(炮)・甘草各3分」剉作1貼し、姜3片入れて 水煎服。
◎血欝を治す。

 

当帰活血湯[2-2]《万病回春《古今方彙》
「紅花5分、牡丹皮・香附子・烏薬・枳殻・青皮・官桂・乾姜(炒黒)・甘草各2分、当帰・芍薬・川芎・桃仁(去皮尖)各1銭、生姜」水煎。
◎血欝症を治す。凡そ血欝の者は能く食し、便紅く或いは暴に紫血を吐し、痛み処を移さず脉数なり。

当帰活血湯[2-3]《万病回春《古今方彙》
「当帰活血湯[2-2]官桂・青皮・牡丹皮木香・沈香・小茴香・乳香・牛膝」
◎腰痛で日中は軽く夜は重き者は瘀血なり。此方に宜し。

当帰丸《東醫寶鑑》
「当帰5銭、甘草2銭半、黄連・大黄各1銭半」作末し、当帰を炒って膏を作り3味を入れて混ぜ、緑豆大の丸剤。米飲で5~7丸呑む。
◎痘瘡で大便が出ない者を治す。

当帰寄生湯《東醫寶鑑》
「人参・桑寄生・熟地黄・続断各1銭半、当帰・川芎・白朮・艾葉各7分半」水煎服。
◎胎漏の下血を治す。


当帰建中湯[1-1]『千金』《金匱要略》
「当帰4両、桂枝3両、芍薬6両、生姜3両、甘草2両、大棗12枚」右六味、以水一斗、煮取三升、分温三服、一日令盡。若大虚、加飴糖六両、 湯成内之、於火上煖令飴消。若去血過多、崩傷内衂不止、加地黄六両、阿 膠二両、合八味、湯成内阿膠。若無当帰、以芎藭代之、若無生姜、以乾姜 代之。
◎治婦人産後、虚羸不足、腹中刺痛不止、吸吸少氣、或苦少腹中急、摩痛引腰背、不能食飲。産後一月、日得服四五剤為善、令人強壮宜。



当帰建中湯[1-2]『千金』《金匱要略》《漢方治療の実際》
「当帰・桂枝・生姜・大棗各4、芍薬5、甘草2」
◎此方、産後の調理の主方と為す。故にその用最も多し。
◎虚証、或いは腹痛して息が切れ、或いは下腹から腰背に牽引して痛み、或いは下血する者。《龍野ー漢方処方集》
◎「小建中湯膠飴当帰」《大塚敬節》

◎目標:《大塚敬節》
患者が疲労していること。
貧血の傾向があること。
腹痛が下腹部を中心として、腰、背などにも波及すること。

★適応症及び病名(当帰建中湯)
[1]咽喉不利:
☆虚損短気、咽喉凝唾出でず、膠の喉を塞ぐが如きを治す:「人参・前胡・乾地黄」《雑病翼方》
[2]栄養不良状態
[3]顔色が悪い
[4]下腹部痛(ひきつれ)
[5]虚弱体質
[6]月経過多
[7]月経困難症:
☆月経困難症には桂枝茯苓丸を用いて良い場合多く、当帰建中湯の証は少ない《大塚敬節》 
☆31歳の経産婦。出産後3年してから月経痛が起こるようになった。その疼痛は非常に強く、2日間は、一切飲食をせずに床に就くと云う。しかも月経の量は非常に少ないという。私はこれに桂枝茯苓丸を与え、3ヶ月ほど呑んだが少しも効が無いので、そのうち来院しなくなった。ところが、それから3ヶ月ほどして、また来院して、ある大学病院の婦人科で診てもらったところ、子宮が萎縮しているたけだと云われ、ホルモン剤の注射をずっと続けているが、ちっとも良くならないから、またお願いしますと云う。この婦人は、その頃まだ授乳を続けていた。これが原因の1つだと、私は考えた。
そこで、今度は当帰建中湯を常用し、月経の始まる2、3日前から、月経がすむまでの間、桃核承気湯を呑むようにした。ところが、その月から疼痛がずっと楽になり、3ヶ月の服用で、忘れたように治ってしまった。急迫性の強い痛みには当帰建中湯や桃核承気湯が良いと古人も述べているが、この患者にも良く効いた。《大塚敬節》
[8]月経痛
[9]月経不順による腰痛:
☆下腹部ばかりでなく、腰にまで疼痛の波及するものによい《大塚敬節》
[10]結核性腹膜炎
[11]血便
[12]血尿
[13]呼吸困難
[14]骨盤腹膜炎:
[15]坐骨神経痛
[16]産後の衰弱:
☆産後虚損、飲食を逆害するを治す:「地黄・人参」《雑病翼方》
[17]産後の腹痛
[18]子宮出血:
☆「地黄・阿膠」は去血過多の症に用いて十全大補湯などよりは確当する。故に余、上部の失血過多に肺傷湯《備急千金要方》を用い、下部の失血過多に此方を用いる。《勿誤薬室方函口訣》
☆処女の子宮出血に「地黄3.0・阿膠3.0」《大塚敬節》
“患者は16歳で、すでに1ヶ月余り月経が止まらず、いろいろ手を尽くしたがどうしても止まらない。止まりかけては又出るという、私は腹直筋の攣急と軽微の腹痛と下腹部の膨満および盗汗を目標にしてこの方を与えたところ、1週間の服用ですっかりよくなった”
[19]痔核
[20]痔出血
[21]衂血:
☆もし血と涕(なみだ)とともに出ずる、之を鼽衂と謂う。和栄降下に宜し。「当帰建中湯香豉童便」最も捷なり。後、「六味丸生脈散」を以て之を調うと。これ衂血の虚候の治法に係る。《雑病翼方》
[22]歯痛:
☆当帰建中湯を内服し、外黒砂糖を擦す。即効あり。《方読便覧》
[23]しびれ(貧血、食欲不振、虚弱体質、腹痛、腰痛<牽引痛>、
[24]静脈瘤:
☆筋瘤悪脈を治す。《方読便覧》
[25]食欲不振
[26]腎臓結核
[27]腎臓結石
[28]頭痛:
☆月経前後に起きる頭痛・片頭痛。
☆体力なく冷え症で、腹直筋が緊張している者。
[29]脊椎カリエス:
☆《続建珠録》
  “一老婦、脚足疼痛すること10余年、遂に攣急して痿癖となる。身体羸痩、腹中拘攣、胸張りて亀背の如く、仰臥して転側する事能はず、ただ飲食常の如し。故を以て気力衰えず、先生当帰建中湯及び消石丸を与ふ。月をこえて歩行することを得たり。”
[30]背中が痛い(牽引痛)
[31]疝気
[32]大腸カタル
[33]体力低下
[34]脱肛
☆虚証で貧血気味の人で、脱肛を起こして激しい疼痛をうったえると時。
35歳の男性が脱肛を起こして数日間還納せず、痛みのために座ることもできず、食事も入らずに困っていた。診ると肛門は赤いドーナツをつけたように脱肛して反転し、いくら納めようとしても痛みばかりで入らない。甘草煎を以て温湿布させ、軟らかくなったところへ紫雲膏をつけて外側部より圧迫させたところ、容易に還納することができた。胃腸の弱い虚証の貧血している人であったで、当帰建中湯を服用させたところ、それきり脱肛しなくなった(漢方診療医典)
[35]腸出血
[36]疲れやすい:
☆虚労を療し、気力を補益する:「麦門冬・茯苓」《古今録験》
[37]手足の冷え
[38]凍瘡:
☆当帰建中湯及び加味逍遥散《方読便覧》
[39]尿路結石:
☆膀胱尿道結石による激しい痛みに用いる:「蜀椒」《大塚敬節》
[40]皮膚につやがない
[41]貧血
[42]腹痛:
☆経後の腹痛、或いは去血過多は、血虚なり。「当帰建中湯」に宜し。
☆経前の腹痛㽲痛は、血気凝滞なり。「桂枝桃仁湯[1]《婦人大全良方》」に宜し。
[43]腹部軟弱
[44]腹直筋<両側>攣急:
☆腹直筋が軟弱無力のこともある《大塚敬節》
[45]歩行困難:
☆小建中湯、当帰建中湯、黄蓍建中湯、蓍帰建中湯などは腹直筋の拘急がひどくて、歩行困難、または歩行不能の者に用いて時に著効を得ることがある。その際疼痛のある場合があり、知覚麻痺を伴うこともある。《大塚敬節》
[45]母乳が出ない:
☆《張氏医通》曰く、もし寒熱せず乳汁なきは、これ栄衛不調に、総て苦しむ所無し。急に当帰建中湯頻りに与え、之を調うるに宜し。しからざれば則ち月にわたって後、漸く寒熱骨蒸を見わして蓐労の患を為すなり。《雑病翼方》
[46]慢性虫垂炎
[47]慢性腹膜炎:
☆掻爬後の腹膜炎に用いて著効を得たことがある《大塚敬節》
[48]メトロパチー(Metropathie)
[49]腰痛(牽引痛)
☆腰背部の牽引痛。
☆急迫性の強い痛み
☆貧血気味で疲労しやすく、腹直筋の緊張を認める者。
☆原因不明の腰痛、婦人科疾患による腰痛。
☆夜臥床すると腰が痛い。これは腹力がない為である。婦人に多い。本方or「+乾姜」《済世薬室》
☆若い女性。1年余り腰痛があり、身体を前屈は出来るが、後屈が困難で、種々の治療も無効で、原因もまた不明であるという。色は白く栄養は中等度で、腹診してみると、腹直筋の拘急があり、それが下腹部で著明に見られる。大小便とも異常がない。こんな状態であるから、当帰建中湯を与えたところ、徐々にではあるが、後屈が出来るようになり、3ヶ月ほどで完全に治った。《大塚敬節》
[50]遊走腎


当帰建中湯《千金翼方》《中薬臨床応用》
「当帰12g、桂枝6g、白芍薬12g、粉甘草9g、生姜3g、紅棗15g、膠飴30(溶解)」水煎服。
◎産後の腹痛。

当帰膏《東醫寶鑑》
「枸杞子・当帰各5両、生乾地黄・白朮・白芍薬各4両、白茯苓3両、薏苡仁2両、山薬・麦門冬各1両2銭半、地骨皮・蓮肉・人参各1両、熟地黄・貝母・甘草各7銭半、天門冬5銭、五味子2銭半、琥珀6分」水5升に薬を入れ、弱火で煎じ、再び水5升を入れること7回、濾過して滓を去り強火で煎じ、毎回1升に熟蜜4両と炒って膏を作り、空腹時に白湯で、2匙調下する。
◎五労・七傷を治す。
◎諸虚・百損を治す。
◎脾胃を補養し、筋骨を滋養する。



当帰散[1-1]《金匱要略》
「当帰・黄芩・芍薬・芎藭各1斤、白朮半斤」
右五味、杵為散、酒飲服方寸匕、日再服。妊娠常服、即易産、胎無苦疾、産後百病悉主之。
◎婦人妊娠、宜常服当帰散主之。

 

当帰散[1-2]《東醫寶鑑》
「当帰・白芍薬(炒)・川芎・黄芩(炒)各1両、白朮5銭」作末し毎回2銭を空腹時に、1日2回酒で調服する。
◎婦人の天癸がすでに時期が過ぎ、経脈が順調でなく、又は3~4ヶ月無かったり、又は2ヶ月ぐらいあったりして腰腹が痛むのを治す。

 

当帰散[1-3]《婦人大全良方》《古今方彙》
「当帰・白芍薬(炒)・川芎・黄芩(炒)各1両、白朮5銭」細末にし、童便(温)にて2銭を調下す。
◎産後気血虚弱にて悪露内に停り、憎寒発熱するを治す。


当帰散[1-4]《金匱要略》《龍野ー漢方処方集》
「当帰・黄芩・芍薬・川芎各2、白朮1」
右の割合で散剤とし日本酒で1回量2.0gを服す。1日2回。



当帰散[1-5]《金匱要略》《漢方治療の実際》
「当帰・芍薬・川芎・黄芩各3、朮1.5」
◎妊娠中、産後の養生、不妊症。
◎「当帰芍薬散-茯苓・朮・沢瀉黄芩」《大塚敬節》
◎伏見に1婦人あり。30歳ばかり。この人はいつも難産で苦しむクセがある。ある年、妊娠した時、余に治を乞うた。余はこれに3月目から当帰散を与えたところ、月が満ちて安産した。
およそ毎度、堕胎するクセの有る者には、従来は芎帰膠艾湯を妊娠中常に用いることにしていたが、当帰散の方が手軽で良い。芎帰膠艾湯はちと手重い処方である。しかし出血などのある時は、必ず芎帰膠艾湯を用いたほうが良い。止血と共に、安胎の効があるものである。
妊娠中に、咳をするたびに小便の漏れる者がある。これも安胎が必要で、当帰散が良い。」《方輿輗》



当帰散[2]《東醫寶鑑》
「防風・当帰・藁本・独活・荊芥穂・頑荊葉各1両」粗末にし、1両を塩4両と炒って熱いときに熨烙し、冷めたら換える。頑荊葉の代わりに椒葉でも良い。
◎寒湿痛風を治す。

 

当帰散[3]《東醫寶鑑》
「地黄(生)2銭半、小薊葉2銭、当帰・羚羊角(屑)・赤芍薬各1銭半」水煎服。
◎婦人の尿血を治す。


当帰散[4]《指迷方》
「当帰・荊芥穂」等分を細末とし、毎回8g、水1盃・酒半盃を用い1盃まで煎じる。もし歯を固く食いしばっていれば、こじ開けて少しずつ注ぎ込む。のどを通れば生き返る。



当帰散瘀湯《傷科補要》
「当帰尾・延胡索・紅花・五霊脂・赤芍・桃仁・甘草・穿山甲・乳香・没薬」煎服。


当帰地黄散《東醫寶鑑》
「当帰・地黄・芍薬・川芎・藁本・防風・白芷各1銭、細辛5分」剉作1貼し水煎服。
◎亡血過多で、破傷風になった者を治す。

当帰地黄湯[1]《東醫寶鑑》
「熟地黄4銭、当帰2銭」水煎し、空腹時に服用。
◎胎痛を治す。

 

当帰地黄湯[2]《万病回春》《東醫寶鑑》
「当帰・熟地黄・地黄(生)・白芍薬(酒炒)・白朮・白茯苓・黄蓍(蜜炒)各1銭、黄柏(蜜炒)・知母(蜜炒)・陳皮各8分、人参5分、甘草3分、棗1枚、浮小麦一握り」水煎服。
◎盗汗・気血に使う。
◎盗汗にて気血両虚に属する者を治す。《古今方彙》
◎《寿世保元》には「滋陰益陽湯」


当帰四逆湯[1-1]《傷寒論》
「当帰3両、桂枝(去皮)3両、芍薬3両、細辛3両、甘草(炙)2両、通草2 両、大棗(擘)25枚」
右七味、以水八升、煮取三升、去滓、温服一升、日三服。
◎手足厥寒、脉細欲絶者、当帰四逆湯主之。
  《傷寒論》辨厥陰病脉證并治第十二。
◎下利、脉大者、虚也、以強下之故也。設脉浮革、因爾腸鳴者、当帰四逆湯。
  《傷寒論》辨不可下病脉證并治第二十。

 

当帰四逆湯[1-2]《傷寒論》《龍野ー漢方処方集》
「当帰・桂枝・芍薬・細辛各3.0g、甘草・木通各2.0g、大棗6.5g」
水320ccを以て煮て120ccに煮詰め3回に分服。


当帰四逆湯[1-3]《東醫寶鑑》
「当帰・白芍薬各2銭、桂枝1銭半、細辛・通草・甘草各1銭」剉作1貼して「棗2枚」入れて水煎服用。
◎厥陰症に手足が厥冷、脈が細くて切れるような症。


当帰四逆湯[1-4]《傷寒論》《漢方治療の実際》
「当帰・桂枝・芍薬・木通各3、細辛・甘草各2、大棗5」
◎脱血家、心下に停飲有りて頭痛し、或いは身痛む者は、当帰四逆湯之を主る。《医聖方格》
◎此方は厥陰表寒の厥冷を治する薬なれども、もと桂枝湯の変方なれば、桂枝湯の症にして血分の閉塞する者に用いて効あり。故に先哲は、厥陰病のみに非ず、寒熱勝復して手足冷に用ゆ可しと云う。《勿誤薬室方函口訣》
◎手足冷え脉微細、或いは腹痛。

★適応症及び病名(当帰四逆湯)
[1]胃十二指腸潰瘍
[2]遺精:
☆遺精の傾向ある等の証。《奥田謙蔵》
[3]陰㿉(インタイ):
☆陰嚢ヘルニア・子宮脱などを指す、少腹に連なって痛む病気。
☆陰の軽きは此方なり。重き場合には「兎功散」を兼用すべし。《勿誤薬室方函口訣》
[4]悪寒(背の悪寒)
[5]悪風 
[7]気鬱:
☆気鬱、心煩を発し、或いは腹痛し、尿利頻数にして四肢に麻痺感あり、脈沈細なる証、《奥田謙蔵》
[8]月経困難症
[9]月経痛
[10]ケイレン:
☆小児、血虚体弱、寒邪栄を傷め、以て眼目飜上し、身体反張するに到るを治す。これ痙病陰位に属するなり。《雑病翼方》
[11]血栓性静脈炎
[12]下痢<冷症下痢>
☆休息痢、疝に属する者に宜し。《先哲医話》
「休息痢」=下痢を発したり又止まったりし、発するとしばらく続く。
[13]五更瀉
[14]座骨神経痛
[15]子宮下垂
[16]神経痛
[17]四肢のしびれ
☆栄養状態が悪い為にしびれる。
[18]四肢の疼痛:
☆四肢疼重、言語、動作懶惼なるも、食欲、二便には尚著しき変常なく、脈数にして弱なる証。《奥田謙蔵》
[19]紫斑
[20]手掌角皮症
[21]出血:
☆下血には、証に由り人参を加味す。《奥田謙蔵》
[22]頭重
[23]頭痛:
☆背から項にかけて悪寒し、頭のてっぺんが冷え痛む者に用いた《加藤謙斎》
[24]舌質<淡白>
[25]舌苔<湿潤・無苔><白苔>
[26]疝積:
☆疝家、発熱、悪寒し、脇腹攣痛し、腰腹拘急し、手足冷え、小便不利の者を治す。消塊丸を兼用す。《類聚方広義》
☆寒冷によって腹腔内に塊を生じ、腹痛・痙攣を引き起こす病気。
☆後世のいわゆる疝積の套剤なすべし:「呉茱萸・生姜」
[27]脱力感
[28]脱疽
[29]チアノーゼ
[30]知覚異常
[31]虫垂炎
[32]腸疝痛
[33]椎間板ヘルニア
[34]手足冷える<厥寒>
☆尿利渋滞し、時に微熱を発するも、手足に寒冷を覚え、食欲に著変なき証。《奥田謙蔵》
[35]凍傷
[37]乳癌:
☆脈沈数に、発熱振慄し、瘧の如き者:「荊芥」《方読便覧》
[38]冷えのぼえ
[39]疲労倦怠
[40]腹痛:<下腹部痛><下腹部のしびれ>
☆腰腹部の攣急
☆経水不調、腹中攣急し、四肢硬痛し、或いは一身習習として虫が行くが如く、日々に頭痛する者を治す。《類聚方広義》
☆色の白い痩せた女性。下腹部の膨満感と腹痛を主訴として来院。脈をみると沈小で、下腹部が軽く膨満し、臍の右側から右鼠径部にかけて、引きつれるような痛みがある。この部は按圧しても痛む。腹部の弾力に乏しい。それに腰も痛むという。大便は1日1行あり、尿は近い。冷え症で冷えると以上の症状は増悪する。月経は不順で、遅れたり、早かったりする。それに半月も月経が止まらないこともある。なお、よく尋ねると、子宮脱があり、朝は良いが、午後になると、子宮が下がって、膣口まで出てくるという。私はこれに当帰四逆湯を与えたが、これを飲むと、腹部の膨満感がとれ、腹痛も腰痛も軽減した。しかも子宮脱の方も良くなり、夕方疲れた時でも、膣口まで下がってくることはなくなった。《大塚敬節》
[41]腹直筋拘急
[42]腹部の冷感
[43]腹満:<虚満>(軟弱、無力)
☆胃部少しく膨満を感じ、尿利渋滞し、気鬱を発し、脈やや数なる証。《奥田謙蔵》
[44]腹鳴(ガスが溜まる)
[45]慢性関節炎
[46]慢性関節リウマチ
[47]慢性腹膜炎
[48]腰脚拘急
[49]腰痛:
☆婦人の血気痛にして、腰腹拘攣する者を治す。《類聚方広義》
☆下腹痛もあり、腰痛もあるというような場合に用いる《大塚敬節》
[50]腰背~臀部の冷感
[51]レイノー病




当帰四逆湯[2-1]《衛生宝鑑》《龍野ー漢方処方集》
「当帰6.0g、桂枝・柴胡各4.0g、芍薬3.0g、延胡索・川楝子・茯苓・沢瀉各2.0g、白川附子1.0g」



当帰四逆湯[2-2]《東醫寶鑑》
「当帰1銭2分、附子・肉桂・茴香各1銭、白芍薬・柴胡各9分、延胡索・川楝子・茯苓各7分、沢瀉5分」剉作1貼し、水煎し空腹時に服用。
◎寒疝と臍下冷痛を治す。

 

当帰四逆湯[2-3]《医宗必読》《古今方彙》
「当帰尾7分、附子(炮)・官桂・小茴香・柴胡各5分、芍薬4分、延胡索・川楝子・茯苓・沢瀉各2分」水2鐘煎じて1鐘とし空心に服す。
◎10年疝を患い、形容枯稿し、左脇に形あり、その大きさ臂の如く、熱手を以て之を握れば瀝瀝として声あり。甚だしくは上に至りて心を攻め悶絶する者を治す。之を久しくすれば熱、醋、熏、炙して方(まさ)に甦るべし。

当帰四逆湯[2-4]《衛生宝鑑》《漢方治療の実際》
「当帰・桂枝・小茴香各3、附子0.6、柴胡・芍薬各4、茯苓・延胡索・川楝子・沢瀉各2」
◎臍腹冷痛し腰股に牽引して痛む者。
◎此方、柴胡・附子と伍すること古方の意に非ざれども、しばらく四逆湯の変方とみなし、腹中2行通りに拘急あり、腰胯に引きて冷痛する者を治す。《勿誤薬室方函口訣》
「2行通りとは、左右の腹直筋のことである。」《大塚敬節》
◎此方の一等甚だしく腰脚冷痛する者を「止痛附子湯」とするなり《勿誤薬室方函口訣》
◎腹直筋緊張して痛み、腰に放散して冷痛する者。
◎鑑別:「当帰四逆湯」《傷寒論》
「この方は季肋下が中心で、それより上に向かって攻め上げるか、又は、腰や股の方に引きつれるものである。之に反して、《傷寒論》の当帰四逆湯は下腹部より上攻する。これが大きな鑑別点である。」《大塚敬節》

【腹証】《大塚敬節》
“四逆散に似ている”
    

★適応症及び病名(当帰四逆湯)
[1]寒疝:
☆これは寒疝の薬である。これは、いつも章門穴のあたりが強ばり、内に棒状のものがあって、時々それが左の脇腹から心下に向かって差し込み、呼吸が苦しくなって、臥することも出来ず、手足は冷たくなって、悶絶する。これを「衝疝」と呼ぶ。このような症に世医はたいてい解急蜀椒湯を用いるが、これには当帰四逆湯の方が至って良く効くものである。腹痛が主である。当帰四逆湯の効く症は、痛はあるが、上攻悶絶が主である。また上攻の症がなくても左脇下に塊があって、下腹から腰に引いて痛む者などにすべて良く効くものである。
先年、西陣の織物屋の主人が平素から疝の気味があったが、娘の病気の回復を祈願して毎朝、水を浴びて、ある日、突然左の脇下から差し込悶絶し、夜着を積み重ねたものにもたれれかかって、やっと息をしている状態である。何人かの医者が手を尽くしたが治らない。ある医者は、肩の凝りがひどいのを診て、ランセットで瀉血したが、良くならないので余に治を乞うた。これを診るに衝疝である。    そこでこの方を与えたところ、1、2貼で小便が快通して、上攻がようやく収まり、数貼の服用で全治した。《百々漢陰》
[2]骨盤腹膜炎
[3]座骨神経痛
[4]婦人病
[5]腹痛:
☆この方の効く腹痛は、解急蜀椒湯を用いる腹痛に似ている。《大塚敬節》
[6]腰痛





当帰四逆加呉茱萸生姜湯[1-1]《傷寒論》
「当帰3両、芍薬3両、甘草(炙)2両、通草2両、桂枝(去皮)3両、細辛3両、生姜(切)半斤、呉茱萸2升、大棗(擘)25枚」
右九味、以水六升、清酒六升和、煮取五升、去滓、温分五服。
◎若其人内有久寒者、宜当帰四逆加呉茱萸生姜湯。
   《傷寒論》辨厥陰病脉證并治第十二。

 

当帰四逆加呉茱萸生姜湯[1-2]《傷寒論》《龍野ー漢方処方集》
「当帰・桂枝・芍薬・細辛各3.0g、甘草・木通各2.0g、大棗6.5、呉茱萸6.0g、生姜(必ずひね生姜)8.0g」
水・日本酒各240ccで200cc煮に詰め5回に分服。


当帰四逆加呉茱萸生姜湯[1-3]《傷寒論》《漢方治療の実際》
「当帰四逆湯《傷寒論》呉茱萸2、生姜4」
「当帰四逆湯」=当帰・桂枝・芍薬・木通各3、細辛・甘草各2、大棗5
◎当帰四逆湯症にして、胸満、嘔吐し、腹痛劇しき者を治す。《類聚方広義》
◎手足冷え、或いは腰腹痛で冷えの久しい者或いは深い者。

【腹証】《大塚敬節》
“下腹部で筋の引きつれる状があり、それが臍傍から季肋部にまで及ぶものがある。私の経験では左側よりも右側の下腹で、筋の攣急や自発痛、圧痛などを証明するものが多い。”

    


当帰四逆加呉茱萸生姜湯[1-4]《傷寒論》
★適応症及び病名(五十音順)
[1]足が冷たい:
☆腹痛・腰痛・下肢痛などを訴える者が多く、これらの症状が寒冷で増悪する。《大塚敬節》
[2]アレルギー性鼻炎
☆冷え症で風邪をひきやすく、凍瘡などのできやすい人で、アレルギー性鼻炎といわれているものには他の処方よりも本方で体質が改善され、クシャミ頻発が治ることがある(漢方診療医典)
[3]インフルエンザ<厳冬期の>
☆流感
[3]胃酸過多症
[4]陰㿉(いんたい):
☆陰嚢ヘルニア・子宮脱などを指す、少腹に連なって痛む病気。
☆斗の如く、諸薬無効に宜し。《雑病翼方》
[5]壊疽:(対称性)
[6]嘔吐
[7]悪寒
[8]咳嗽
[9]回虫
[10]下腹部痛
[11]間欠性跛行症
☆本方を服用していると、1ヵ月もたつと、だんだん長距離の歩行が可能になるが、軽快しても服用を続けることが必要である(漢方診療医典)
[11]感情不安定
[12]眼精疲労
[13]寒疝:
☆古人が寒疝と呼んだ腹痛に用いられるもので、其の疼痛は下腹部に始まり、それより上に攻め上げるのが特徴です。鼠径部のあたりから始まり、或いは恥骨のあたりから起こり、或いは腰からくることあり、それが胸脇にまで攻め上り、或いは肩背にまで波及し、或いは頭痛となって現れることがある。《大塚敬節》
☆1男子、右腰部より右側腹にかけて、名状しがたい不快感と軽い疼痛を訴え、右項部にも、たえず不快感があり、すでに数年、あらゆる治療を受けたが、少しも奏効せず、神経症として、ついに相手になってくれる医師もないという。その患者がひどい冷え症であることと、症状が上下にわたって現れている点に注目して寒疝と診断し、この方を用いたところ、数年の苦痛が拭うが如くに消失した。《大塚敬節》
[14]寒冷ジンマシン
[15]気管支喘息
[16]基礎体温が低い
[17]胸中煩満
[18]胸痛
[19]胸満:
☆身体怠惰にして、神思欝塞し、脈小にして尿不利、胸満、動悸を感ずる証。《奥田謙蔵》
[20]強皮症
☆冷え症でレイノー症状があるものに用い、冷えの強い者には加工ブシ。(漢方診療医典)
[21]筋肉痛:
☆27歳男性。3年前に結核に罹ったが、これは全快している。主訴は、からだのあちこちに移動する疼痛で、多発性神経炎とか、筋肉リウマチとか筋肉炎とか、種々の病名がつけられたが、すでに1年あまり治らない。
現在、痛むところは、右の上腕と右の側腹から腰にかけて、ちょうど洋服のバンドの通る部位で、疼痛は右側だけである。夜も疼痛のためによく眠れず、疼痛のために眼が覚める。腹診すると臍上で振水音を証明し、全体に軟くて膨満感がある。大便は1日1行。
なお患者はひどく疲れて、元気がなく、気分が悪くてたまらないと云う。しかし一見したところ、病人らしいところはない。
私はこれに次に上げるような処方を用いてみたが、どれを用いても、良くならず、悪くもならないとう状態で、そのうちに1年がたってしまった。
次にその処方を列記してみる。
清湿化痰湯、五積散、疎経活血湯、分心気飲、桂枝加竜骨牡蛎湯半夏厚朴湯、烏苓通気湯、神効湯、当帰四逆湯《衛生宝鑑》、不換金正気散、柴胡桂枝湯
そして最後に、当帰四逆加呉茱萸生姜湯を用いたところ、始めて薬効が現れ、これを飲むようになってから、夜間眠れないような疼痛はなくなり、仕事が忙しい時には、時々前のような症状になるが、病の8分通りは良くなり、目下服薬中である。《大塚敬節》
[22]首筋が凝る:
☆下腹部が触診できないほどに腹診にさいして不快感を訴え、下腹部も按圧すると胸までも苦しく、また項部がひきつれ、常に頭痛を訴え、3年間にわたって種々の治療を受けても治らなかった者に、この方を用いて、始めて奏効し、多年の痼疾を治った。《大塚敬節》
[23]血尿
[24]下痢(冷えると)
☆冷えで誘発される下痢。
☆夜明け近くになると、腹が痛んで下痢するという者に効く場合がある。《大塚敬節》
[25]呼吸困難
[26]五更瀉
[27]骨盤腹膜炎
[28]座骨神経痛:
☆色白で筋肉の緊張が弱く、冷え症で貧血気味の者の坐骨神経痛。
☆附子剤の効かない痛み。
[29]子宮下垂
[30]子宮付属器の疼痛
[31]四肢の感覚(知覚)異常:
☆63歳男性。平素より健康にすぐれず、冷え症で、陰嚢ヘルニヤがあり、時々腹痛を訴えていたが、友人の葬式に参列して雨に濡れてから、左の脚に疼痛を覚えるようになった。それが日毎に増劇して夜も安眠出来なくなった。脈は沈小でやや弦、腹部は一体に筋肉が弾力を欠き、腹直筋が臍下で少し突っ張っている。脚は寒冷を覚え、いくら温めても冷たいという。私はこれに当帰四逆加呉茱萸生姜湯に更に附子0.5を加えて用いたが、急速には軽快せず。3週間目頃より安眠出来るようになり、2ヶ月後には平素の通り仕事も出来るようになったが、脚のシビレが完全にとれるには5ヶ月ほどかかった。《大塚敬節》
[32]四肢の冷え:<+++>
☆《陳念祖》曰く、病初起、先に厥する者、後必ず発熱し、手足いよいよ冷え、肝胆発熱す、故に曰く、厥深き者、熱も亦深きなり。姜附妄りに投ずべからず。
☆患部がほてって赤くなる者á不適《矢野》
☆“手足厥寒、脈細にして絶せんと欲する者は、当帰四逆湯これを主る。もしその人、内に久寒ある者は、当帰四逆加呉茱萸生姜湯によろし”
[33]手掌角皮症
[34]児枕痛:
「児沈痛」=産後の瘀血による腹痛。
☆本朝経験、腰腹拘急し、臍下塊あり、時に陣痛をなす者、これ胞宮未だ斂まらず、寒疝を挟むなり。此方主る。《雑病翼方》
☆産婦、悪露綿延として止まず、身熱、頭痛し、腹中冷痛し、嘔して微利し、腰部酸麻し、或いは微腫する者を治す。《類聚方広義》
[35]歯痛:
☆本県下の高坐群澤谷村の北村氏、50歳は、左の臼歯が痛んで、色々の治療をしたがどうしても治らないといて診を乞うた。そこでどうしたはずみで痛むようになったかと尋ねたところ、、寒い風にあたって皮膚に鳥肌ができ、それから痛くなったと云う。診察してみるに、熱候はなく、別に異常がない。ただ痞根を按圧すると、ひきつれて痛む。そこで寒疝と診断して、当帰四逆加呉茱萸生姜湯を与えたところ2服で治ってしまった。自分はかって聞いたことがある。山田業精君が歯痛にかかり、諸薬効無く、五積散を呑んで治ったということを、その方剤は違うけれども、その温散、通経の理は同じことである。(和田奏庵・和漢医林新誌第129号)
[36]しもやけ
[37]紫斑(皮膚に瘀血紫斑が発現)
[38]上腹部振水音
[39]自律神経失調症
[40]神経症:
☆27歳女教員。いかにも不快そうな顔をしている。患者の云うところによると、約3ヶ月前に胎児が死亡したので、掻爬手術を受けた。       その後、めまい・悪心・腰痛が起こり、肩凝りがひどく、背も痛み、いつも頭が重いと云う。
腹診すると、腹部は一体に軟弱であるが、回盲部のやや内下方の部位に、かなり強い圧痛を証明する。
そこで私は先ず当帰芍薬散を与えたが効無く、加味逍遥散にしたところ、めまいは取れた。しかし頭痛はますます激しくなり、時には嘔吐を伴うこともあり、腰痛もとれず、足がとても冷えるという。  それにとても気分が悪くて、勤務出来ないと言う。よって当帰四逆加呉茱萸生姜湯にしたところ、急速に快方に向かい。1ヶ月ほどで全快した。
これらの経験から、私は呉茱萸が重大な働きをしているように思う。浅田宗伯はかって、難治の気鬱病に四逆散呉茱萸茯苓や、沈香降気湯呉茱萸黄連を用いて著効を得た例を報告している《大塚敬節》
[41]神経痛:
☆附子剤の効かない神経痛・腰痛・座骨神経痛。
[42]尋常性痤瘡
[43]身体疼痛
[44]髄膜炎に伴う精神異常。
[45]頭重
[46]頭痛:
☆色白の筋肉の緊張が弱いタイプで、手足が冷え、腹にガスが充満し、腹痛を訴える者。
☆のぼせて、頭痛を訴える者《大塚敬節》
☆浅田宗伯はこの方に半硫丸を兼用して、常習頭痛を猶している《大塚敬節》
☆この方にも呉茱萸が入っているので、呉茱萸湯との区別がむつかしい《大塚敬節》
☆1男子。数年前から頭痛を病み、この頭痛は発作性に起こり、発作の時は、苦い青い水を吐き、薬も食物もノドを下らず、3、4日続くと、自然に頭痛が止んで、食事も平生と変わりなく食べられるようになる。このような症状が1ヶ月に2、3回は起こる。宗伯はこれを診て濁飲の上逆による頭痛と診断し、胃に濁った水がたまると発作が起こり、それを吐出してしまうと発作もまた止むと考えて、この方を用いたところ、全治した。「半硫丸」は半夏と硫黄を丸にしたもので、大便を軟くして快通せしめる効が有る《大塚敬節》
☆41歳女性。背が高く痩せて血色がすぐれない。今まで4回流産。一度も正規の分娩をしたことがない。食欲は少なく、食べると胸にもたれる。疲れやすく、冷え症である。主訴は毎月の月経前の、ひどい頭痛で、その時には吐く。月経は順調で、大便は1日1行。
腹診すると、心下部に振水音を証明し臍上で動悸が亢進している。腹部は一体に弾力に乏しい。
私はこれに六君子湯、半夏白朮天麻湯、真武湯などを用い、食は進み、気分は良くなったが、月経前の頭痛がどうしてもよくならいと云う。詳しい病状を聞くに、時々背がゾクゾク寒くなり、鳥肌のようになる。食べ過ぎると夜中、尿に起きて眠れない。また顔に浮腫がくる。毎年凍傷が出来るという。
そこで当帰四逆加呉茱萸生姜湯にしたところ、それきり月経前の頭痛がなくなった。それに月経の量が多くなって、気分が良いという。2ヶ月ほどたつと腹に弾力がつき、疲れなくなった。体重も4kgほど増加した。《大塚敬節》
[47]性交不能:
☆右卵巣の辺りに疼痛を訴え、性交不能の女性に、この方を与えて著効を得た事がある《大塚敬節》
[48]疝気:
☆古人が「疝」と呼んだ病気には、下半身に寒があって、上半身に熱のあるものがあり、これに、この方を用いる《大塚敬節》
[49]喘急
[50]全身性エリテマトーデス
レイノー症状のみられるものによい(漢方診療医典)
[50]譫妄
[51]脱疽
[52]脱腸
[53]帯下
[54]チアノーゼ
[55]虫垂炎
[56]腸疝痛
[57]腸チフス
[58]椎間板ヘルニア
昔、くっきり疝気と呼んだ病気に、この処方がよく効くことがあり、このくっきり疝気はたぶん、椎間板ヘルニアであろうと考え、椎間板ヘルニアの重症に本方を用いて著効を得た。この患者は、歩行はもちろん、寝返りも困難で、腰から右の下肢にかけてひどい疼痛があり、冷え症で、冷えると疼痛が激しくなる。それに腹筋が緊張し、ことに下腹部で突っ張っている。これらを目的にしてこの方を用いたところ、10日目ごろから急に軽快し、2ヶ月後には勤務ができるまでになった。その後、冷え症の患者の椎間板ヘルニアで、腰痛や坐骨神経痛のある者に、本方を用いて効があった(漢方診療医典)
[59]手足厥冷:<+++>      
☆《傷寒論》の厥陰病篇に“凡そ厥する者は、陰陽の気、相順接せず、便(すなわ)ち厥をなす。厥は手足厥冷の者是なり”となり、《傷寒論》でいう厥陰病は、上熱下冷で、上半身が熱して下半身が冷える病気である。《大塚敬節》
[60]凍傷:    
☆凍傷には、証により附子を加う。《奥田謙蔵》
☆この方は凍傷を治するばかりでなく、予防の効もあるので、凍傷の出来る時期をみはからって2、3週間飲んでおくと良い。また凍傷が出来始めてすぐに飲んでも、ひどくならないで治す効がある。大抵の凍傷はこれで治る《大塚敬節》
☆患部に紫雲膏を塗ると一層よい。《大塚敬節》
☆凍風は俗に“しもやけ”という。《外科正宗》に凍風は肌肉がひどく冷えたために、血の巡りがわるくなって、肌の死ぬ病気であるという。凍傷には諸家に色々の治方があって、効がないわけではないが、これぞという神方があることを聞かない。余が壮年の頃、西遊して、遠州見付駅の古田玄道翁を訪ねたことがある。翁は厚く張仲景の方法を尊信して、《傷寒論類弁》という著述を残しているが、傷寒はもちろんのこと、その他の雑病に至るまで、すべて、《金匱要略》と《傷寒論》によって治療せられた。翁の凍風の治療をみてみるに、当帰四逆湯を用いていつも速やかに治癒せしめる。そこでその訳を尋ねたところ、翁が云うのに、《傷寒論》の厥陰篇に“手足厥寒、脈細にして絶せんとする者は当帰四逆湯之を主る”とあるではないかと。そこで自分は大いに得るところがあり、その後、30年余り、凍風にはいつもこの方を用いているが、必ず奏効する。
庚辰2年のことである。数寄屋町、呉服商、上総屋吉兵衛の妻は年が30ばかりであるが、左の足の拇指と中指が紫黒色になって、くずれ、足の甲から膝まで色が変わって、悪寒したり、発熱したりして、ひどく痛み、昼夜苦しみ、眠ることも、食べることも出来ない。ある医者は、これを脱疽の類だと誤診して、いろいろ治療を加えたが一向に効がない。そこで主人がうろたえて、私を招いた。私はこれを診て、前に凍風にかかったことはないかと尋ねた。すると多年これにかかったという返事。私は言った。これは決して脱疽の類ではない。凍風だ。誤治を重ねてこんなになったのですと。
そこで当帰四逆湯を与え、患部に破敵膏と中黄膏を塗ったところ、1ヶ月あまりで全治した。これは凍風の最も重いものである。平坦で、紫斑があって、痒痛のある程度なら4、5貼も飲むと効がある。  まことに神効と云うべきである。《織田貫》
☆凍傷及びその類症に対して、多数卓効を収めた例が多く、体質的傾向が様々であるが、同様によく効く《大塚敬節》
[62]ニキビ     
[63]尿自利
[64]尿不利:
☆手足寒冷、言語懶く、腹部拘痛し、尿利頻数にして脈細沈なる証。《奥田謙蔵》
[65]バージャー病(閉塞性血栓性血管炎)
[65]煩躁
[66]冷え症:
☆多寒、手足厥冷、脈絶ゆるを治す。
[67]冷えのぼせ:
☆手足がひどく冷えるのに、顔は上気してのぼせる者《大塚敬節》
[68]冷や汗(冷汗)
[69]ヒステリー:
☆この方をヒステリー・血の道症などに用いることがある。この方は元来、疝によって起こる疼痛、ことに下腹痛、腰痛、足痛などに用いられるが、これらの疼痛が神経症やヒステリーなどから来るものに、この方を用いる機会がある。《大塚敬節》
☆S婦人は、5年間以下のような症状に悩まされて続けてきた。年齢37。色は黒く、栄養も良い。5年間も悩み続けたにしては、病人らしくない。ところが病状を話すのを聞いている中に、これはヒステリーだと私は思うようになった。
この病気は12年前の分娩の後から発病したという。しかしひどくなったのは、5年前の産後、下痢をし、それをひどく心配してからだと云う。
現在の主訴は、排尿後、尿道から下腹部にかけて、何とも云えない不快な気持で、疲れると尿が濁って出なくなると云う。(私は以前にも、ヒステリーの婦人で、時々尿が止まって出なくなるという患者を診た事がある。膀胱・尿道には全く異常を認めないのに、長い間、この訴えで、医者を悩ましていた。)また、左右の下腹部に疼痛があり、両側の小腹の部位に軽い触診によって、唸るほどの劇痛を訴える。更にみずおちにも圧痛がある。首が凝るというので、この部分に手をやると、ああ、気分が悪いと苦しげに唸る。ガスが多くたまり、よく腹が鳴る。便秘する。冷え症で、頭が重い。食欲は少ない。月経は遅れがちである。脈は沈でやや小さいが、弱くは無い。夫婦関係をすると、下腹が痛むのでイヤだという。なお患者は、右下腹がシビレるとか、悪寒がするとか、悪心が来るとか、乳房が痛むとか、呼吸をすると息が下腹まで落ちるとか、右下腹を圧すと、足の先まで痛むとか、種々の訴えをする。
私はこれを疝と診断して当帰四逆加呉茱萸生姜湯を与えたところ、これらの症状が次第に軽快し、半年後にはまったく健康を取り戻した。《大塚敬節》
[70]皮膚潰瘍
[71]皮膚病:
☆(鬱血・紫斑)
[72]瘭疽(ひょうそ)
[73]疲労倦怠:
☆<激しい疲れ>
[74]腹痛:
☆ケイレン痛。
☆寒冷で増悪する腹痛。
☆婦人、臍腹部冷痛し、脈細沈の証。《奥田謙蔵》
☆原因不明の腹痛があって、しかも患者が冷え症で、多年にわたって病苦を訴えているにも拘わらず、栄養も衰えず、、血色もさほど悪くない者があったら、「疝」として、この方を用いてみるが良い。意外 に著効を奏することがある。病気が下腹にあって、それが上にも現れるというのが目標である。更に言えば、肝経・腎経に沿って、病気が上って行くというのが特徴である。《大塚敬節》
[75]腹部冷感
[76]腹満
[77]腹鳴
[78]不妊症
[79]不眠
[80]ヘルニア
[81]閉経:
☆婦人の閉経等にして、身体倦怠、四肢厥冷し、脈微弱なる証。《奥田謙蔵》
[82]片頭痛:
☆血の道症の片頭痛。
[83]麻痺感
[84]慢性虫垂炎
[85]慢性腸炎:
☆慢性下痢等にして、脈沈細の証。《奥田謙蔵》
[86]水虫
[87]盲腸炎
[88]抑鬱気分
[89]腰痛症:
☆腹痛・腰痛・下肢痛などを訴える者が多く、これらの症状が寒冷で増悪する。《大塚敬節》
[90]レイノー病(対称性壊疽)
[91]冷房病
[92]狼瘡(lupus):
☆凍瘡状狼瘡《矢数道明》
“25歳主婦。結婚後3年になるがまだ子宝に恵まれない。結婚した年の10月頃、鼻の頭や耳朶、手足の先端が赤くなり、ついで紫色に変じ、特に右手に指は赤くなって、皮膚は硬化して木の皮のようにこわばり、指が曲がらないようになった。5月頃からこれらの症状が軽快するが、完全には治らない。
この3年間、病院の皮膚科で治療を受け注射や光線療法などしたがよくならない。
初診。頸のところに発疹が残り、皮膚が荒れて瘙痒を訴え、背中もポツポツと赤い発疹があって、暑さのひどい時はカユミも著しい。          体格、身長は普通。栄養はやや衰えて美人型。皮膚筋肉は弛緩性である。脈も腹の軟弱、左臍傍に抵抗と圧痛があるが特にひどい瘀血というほどのことはないようである。
私は初め不仁の虚労、血虚による手掌角化症の類証として、加味逍遥散地骨皮荊芥を与えたところ、頸や背中の発疹はきれいに消失した。しかし服薬1ヶ月後に、膝関節に痛みが現れ、下肢がシビレ、両足が腫れて靴がはけなくなってしまった。そこで九味檳榔湯呉茱萸不茯苓に変方したが両下肢の痛みはなかなか取れず、かかりつけの内科ではリウマチといって注射をしてくれたが、そのうち秋冷の侯になってしまった。来院して訴える、下肢の痛みが少なくなったが、例年の如く手の荒れが始まり、鼻尖や手指の関節のところが発赤し、痛みとカユミが起こり、皮膚が硬く強ばってきたというのである。詳しく診ると指の末端は紫色となり、その外見は凍傷とほとんど変わりはない。そこで初めて当帰四逆加呉茱萸生姜湯に転方した。20日間の服薬で発赤、紫色、硬化がすべて好転し、効果顕著で、1月の厳寒にもかかわらず発病前と少しも変わりなく。家事の手伝いが出来、全身の調子が良くなり、こんなうれしいことはないといって喜んで服薬を続けている。”
☆36歳男性。栄養は普通、左の顔面神経麻痺と痙攣があるので顔貌は仮面状で、皮膚は特異の光沢を示している。
さらに数年来の慢性鼻炎で鼻塞し、毎日30~50数回鼻をかむ。そして、発病以来4年間、10月下旬より翌年4月までの6ヶ月間、手足の先端に紫色の斑点ができ皮膚が硬化し、指が曲がらなくなり、乾いて皮膚が剥げてきて、物を握ることも出来なくなる。両手指はまるで不具者のように、人前に出すことが恥ずかしい、冬の寒いときはそれらの症状がひどく、夏は軽くなるが、決して治ることがない。冬は寒いときはそれらの症状がひどく、夏は軽くなるが、決して治ることがない。冬は手袋をはめてかくしていられるが、夏はそれが出来ないので困ると訴えるほどである。
診ると脈は別段沈微ということもなく普通である。腹は両腹直筋が緊張しているが、胸脇苦満というほどのことは認められない。4年間治療したが効無し。
初診は2月16日で、まだまだ症状は烈しい盛りであった。私はこれを凍傷の変型とみてやはり当帰四逆加呉茱萸生姜湯を与え、紫雲膏を外用させてみた。この場合卓効を奏し、服薬10日にして再来したが、硬化していた指の皮膚が軟かとなり、紫色がとれて普通の色に近くなってきた。
本方を続服すること6ヶ月後には、ほとんど普通の指となり、発病以来このように良くなったのは初めてであるといって喜んでくれた。そればかりでなく、顔面神経麻痺もやや好転し、鼻閉塞も少なくなり、鼻をかむ回数が20回位でずむようになった。《大塚敬節》




    

当帰芍薬加附子湯
★適応症及び病名
[1]足腰が冷える<++>
[2]顔色が悪い
[3]月経痛
[4]甲状腺機能低下症
[5]更年期障害
[6]産後の肥立ちが不良
[7]頭重
[8]頭痛
[9]体力低下
[10]動悸
[11]妊娠中の腹痛
[12]冷え症
[13]頻尿
[14]慢性腎炎
[15]めまい
[16]耳鳴り
    


当帰芍薬散[1-1]《金匱要略》
「当帰3両、芍薬1斤、茯苓4両、白朮4両、沢瀉半斤、芎藭半斤」
右六味、杵為散、取方寸匕、酒和、日三服。
◎婦人懐妊腹中㽲痛、当帰芍薬散主之。
《金匱要略》婦人妊娠病脉證并治第二十。



帰芍薬散[1-2]《金匱要略》《漢方治療の実際》
「当帰・川芎各3、芍薬6、茯苓・朮各4、沢瀉5」
◎此方は《吉益南涯》得意にて諸病に活用す。その治験《続建殊録》に悉し。
◎全体は婦人の腹中㽲痛を治するが本なれども、和血に利水を兼ねたる方故、建中湯の症に水気を兼ねる者か、逍遥散の症に痛を帯ぶる者か、何れにも広く用いるべし。《勿誤薬室方函口訣》
◎《華岡青州》は「+呉茱萸」として多く用いた。
◎《三因極一病証方論》に曰く、妊娠、腹中絞痛、心下急満、及び産後の血暈、内虚気乏、崩中、久痢を治す。常服すれば血脈を通暢し、癰瘍を生せず、痰を消し、胃を養い、目を明らかに、津を益すと。能く此方を運用すと謂うべし。 《雑病論識》
◎貧血冷え性、疲れやすく。或いは、月経不順或いは神経症状、或いは腹痛腰痛する者。《龍野ー漢方処方集》
◎常に服すれば 血脈を通暢し、癰瘍を生せず、痰を消し、胃を養い、津を益す《三因極一病証方論》
◎《湯本求真》は総ての慢性病には、必ず桂枝茯苓丸か当帰芍薬散を用いた。慢性病は総て瘀血に関係があるから、これを治するには瘀血を治する方剤を必ず用い(or合方して)用いなければならないとした。

◎鑑別:「桂枝茯苓丸」
「桂枝茯苓丸は筋肉のしまりの良い血色のよい人に用い、当帰芍薬散は筋肉が軟弱で、しまりが悪く、血色のすぐれない貧血の傾向がある者に用いる。当帰芍薬散は貧血性瘀血を治する効がある。美人には当帰芍薬散の証が多い」  《湯本求真》

◎目標:《大塚敬節》
「当帰芍薬散の目標は、男女老弱を問わず、貧血の傾向があり、腰脚が冷え易く、頭冒・頭重、小便頻数を訴え、時にめまい・肩凝り・耳鳴り・動悸のあることがある。筋肉は一体に軟弱で、女性的であり、疲労しやすく、腹痛は下腹部に起こり、腰部或いは心下に波及することがあるが、腹痛がなくても本方を用いて良い。」

★当帰芍薬散(貧血、冷え性、疲れやすい、月経不順、神経症状)


★適応症及び病名(当帰芍薬散)
[1]IgA腎症
☆体力、腹力低下し、貧血、浮腫の傾向があり、冷え症の者に用いる。胸脇苦満はない。(漢方診療医典)
[2]アルツハイマー
[2]アレルギー性鼻炎
[3]あかぎれ
[4]足に力が入らない
[5]足が冷たい
[6]頭がボーッとする
[8]胃アトニー
[9]胃液分泌過多症
[10]胃下垂
[11]胃酸過多症
[12]胃痛:
☆胃弱の患者には、煎服させる方が、胃もたれや胃痛が起こりにくい。
[13]萎縮腎
[14]萎縮性鼻炎
[15]イボ
[16]嚥下困難
[17]顔色悪い<蒼白>
[18]角結膜炎
[19]下肢麻痺
[20]下腹部痛
[21]下腹部の腫瘍
[22]肩こり
    ①貧血。
    ②冷え性。
    ③疲れやすい。
    ④月経不順。
    ⑤神経症状。
[23]脚気 Beriberi
☆軽症脚気《奥田謙蔵》
[24]脚弱
[25]肝硬変
[26]肝斑
[27]感情不安定
[28]眼精疲労
[29]関節炎
[30]顔面神経マヒ
[31]気鬱
[32]期外収縮
[33]基礎体温が低い
[34]機能性出血:=腫瘍のような器質的変化を伴わない子宮出血の総称。
[35]強皮症:
=膠原病の一種。
[36]筋肉攣縮=筋肉のひきつり
[37]頸管カタル
[38]頸腕症候群
[39]経閉
[40]月経異常
[41]月経が遅れる   
[42]月経寡少
[43]月経過多
[44]月経困難
[45]月経不順 
[46]月経量(少ない)
[47]下血
[48]下痢:
☆(泥状~水様便、冷え性、疲れやすい、月経不順、神経症状)
[49]血栓症
[50]眩暈
[51]肩背強急
[52]高血圧症
[53]甲状腺機能低下症
[54]甲状腺腫
[55]更年期障害
[56]声に力がない(低音・声が細い)
[57]五十肩
[58]鼓腸
[59]骨粗鬆症
☆冷え症で、貧血の傾向があり、筋肉は軟弱ぎみで、女性的であり、疲労しやすいものに用いる(漢方診療医典)
[60]骨盤内の鬱血症候群
[61]骨盤腹膜炎
[62]寒がり
[63]座骨神経痛
[64]痤瘡:
☆ピンク色のにきび。
[65]産後の疾患:
☆産褥熱
☆産後に眩暈を発し、顔面蒼白、四肢厥冷し、尿量減少する証《奥田謙蔵》
☆産後の血暈、内虚し、気乏しく、崩中、久痢を治す《三因極一病証方論》
☆妊婦、産後、下利、腹痛し、小便利せず、腰脚麻痺して力無く、或いは眼目赤痛する者。若し下利止まず、悪寒する者は、附子を加う。若し下利せず、大便秘する者は、大黄を加う。《類聚方広義》
[66]しびれ感
[67]しもやけ
[68]ジンマシン
[69]痔核
[70]痔出血:
  痔疾患ありて時々出血し、疼痛激甚なる証《奥田謙蔵》
[71]子癇
[72]子宮下垂
[73]子宮筋腫
[74]子宮後屈  
[75]子宮内膜炎 
[76]子宮出血
[77]子宮脱  
[78]子宮付属器炎
[79]子嗽:
☆子嗽は胎気生長に因って、水心下に停ってを為す也、当帰芍薬散に宜し《荻野台州》
[80]視神経炎
[81]姿勢が悪い<前屈姿勢>
[82]歯槽膿漏
[83]四十肩(腕)
[84]湿疹
[85]嗜眠
[86]耳管狭窄症
[87]耳鳴
[88]耳聾
[89]しもやけ
[90]習慣性流産    
[91]十二指腸潰瘍
[92]シェーグレン症候群=膠原病の一種。
[93]少腹硬満
[94]上腹部振水音
[95]静脈炎
[96]静脈瘤
[97]食欲不振
[98]自律神経失調症状
[99]心悸亢進
[100]心下振水音 
[101]心臓性喘息
[102]心臓弁膜症
[103]心臓不全(心不全)
[104]神経質 
[105]神経衰弱
☆「人参当芍散」として使う
(=当帰芍薬散+人参・甘草・桂枝)=「当芍参」
[106]神経痛:
☆29歳主婦。
「今から4~5年前に盲腸の手術をしてから腰が痛くなり、昨年、骨盤腹膜炎を患って手術した。2~3年前から、腰痛のせいか、膝の下がだるく、土踏まずの下の外側の筋が痛い。いろいろな薬を飲み、神経痛の注射もしてみたが、いっこうに効かない。時々立ちくらみや頭痛も覚えるという。もともと冷え性で生理不順の傾向もあったので、当帰芍薬散を飲み続けたところ、今ではすっかり元気になり、畑仕事に励んでいる」《山田光胤》
[107]腎炎:
☆産後の腎炎、妊娠腎。
☆色白で貧血冷え症、肩こり、動悸、腰痛がある者。
☆軽症腎炎等《奥田謙蔵》
[108]腎臓結核
[109]進行性手掌角皮症
[110]ジンマシン
[111]水ガン
[112]頭重:
☆平常、頭重を感じ、手足に冷感あり、時に子宮出血を現す証《奥田謙蔵》
[113]頭痛:
☆当帰芍薬散を用いる患者は、血色すぐれず、冷え症で、めまいがあり、肩凝りを訴えることもある。そこで半夏白朮天麻湯と区別しなければならない《大塚敬節》
「当帰芍薬散」:血症を主とし、産婦人科疾患、腎疾患などから来る者に
「半夏白朮天麻湯」:水証を主として胃腸虚弱の者に用いる。《大塚敬節》
☆31歳女性。6ヶ月ほど前分娩し、その後いつも、頭に何かかぶっているように重い。食欲、大小便に変わりなく、夜は夢が多くて安眠が出来ない。足が冷える。これには当帰芍薬散を用いて全治した。《大塚敬節》
☆私の亡母は36歳頃より腎臓炎があり、めまいと頭痛のくせがあった。頭は気分悪く重いと云っていた。冷え症で、血圧も高く、朝起きる時、急に飛び起きると、めまいがすると云う症状があった。
処方はいろいろ用いたが、当帰芍薬散を飲むと、頭が軽くなって、気分が良いと云っていた。《大塚敬節》
☆27歳女性。妊娠腎炎を発し、症状が増悪するばかりなので、人工中絶した。しかしその後も頭痛と尿タンパクが1ヶ月以上もとれずにいると云うので診にいった。
患者は体格の良い一見丈夫そうである。頭痛は朝起きた時から起こり、そのため起きるのが嫌で、仕事をする元気もない。また頭痛は午後になると強くなると言う。口渇があるためか、たびたび水を飲むという。食欲正常、便通は3日に1回くらい。血圧172-90。脈沈細、腹は肉付き良く柔軟で左季肋下と臍の左側及び左下腹部に軽度の圧痛を認めた。
この患者には口渇、頭痛を目標に五苓散を7日分与えたが、少しも効果が無かった。そこで腹部の圧痛を瘀血と考えて当帰芍薬散を10日分を与えた。ところが今度は頭痛も完全にとれ、尿のタンパクも消失し、便通も毎日あって、非常に調子が良いと云ってきた《山田光胤》
☆53歳女性。虚弱な体質で、少しの労働でも疲れてしまう。しばしば頭痛が起こり、疲れると増強する。中肉中背で色が白い。脈は沈細やや弦。腹部は一般に極めて軟弱で、しばしばガスや燥屎を触知し、心下に軽度の痞硬があり、その上、時として振水音を認める。常習便秘を訴え、胃下垂がある。この患者には初め水毒による頭痛と考えて、半夏白朮天麻湯を与えたが、2ヶ月飲んでも少しも効かないので、“頭痛は項部より後頭部にかけて筋肉が張ったように痛む”という点に対して、芍薬の筋の攣急を緩めたらどうかと考え、且つ冷え症であることを考慮して当帰芍薬散に転方した。すると4、5日の服用で頭がすっきりした。《山田光胤》
[114]頭冒感:
☆何か重いものをかぶっているようで重い感じがするのを頭冒という。当帰芍薬散はこの頭冒を目標とする。
[115]性器出血
[116]精神分裂病
[117]赤痢
[118]舌質 <淡紅><胖大>
[119]舌苔<湿潤して無苔~白苔>
☆口舌無皮状の如き者:「+五味子」。もし応ぜざる者は「+附子」《方読便覧》
[120]接触性皮膚炎
[121]切迫流産
[122]腺病質
[123]全身倦怠
[124]全身性エリテマトーデス(SLE)
☆冷え症で貧血の傾向があり、疲労しやすく、めまいや動悸などを伴うものに用いる(漢方診療医典)
[125]喘息
[126]前立腺肥大
[127]早期破水
[128]早産の予防に
[129]そばかす
[130]帯下(白色)
☆竜胆瀉肝湯の患者よりも、虚証で、冷え症で、貧血の傾向のある者に用いる《大塚敬節》
☆30歳の女性。半年ほど前に左乳房が硬くなり、乳腺症と診断せられ、ガンになるかも知れないと云われた。最近になって左腕が痛み、左肩が凝る、月経は不順である。
私はこれに十六味流気飲青皮を与えた。すると3ヶ月ほどたつと、妊娠した。ところが妊娠5ヶ月になると、帯下がひどく下りて、外陰部がただれるようになった。
そこで当帰芍薬散にしたところ、1ヶ月もたたないうちに、帯下が少なくなり、ただれも良くなった。出産後、乳腺炎となり、十味敗毒湯を与え、手術せずに全快した。《大塚敬節》
☆59歳の婦人。帯下を主訴として来院した。医師は子宮内膜炎と診断したと云う。腹診すると、腹部は一体に緊張に乏しく、右下腹部に突っ張るような感じがあり、これが腰にひびいて痛む。大便は下痢しやすく、足が冷える、脈は弱い。
私はこれに当帰芍薬散を与えたが、2ヶ月たらずで、帯下を忘れた。《大塚敬節》
[131]立ちくらみ
[132]脱肛:
☆脱肛、腫痛し、水を吐して止まざる者に、奇効あり《類聚方広義》
☆1男子、常に脱肛を患ふ。或いは時々糸の如く血て下る。後、卒倒す。その後引き続きて腹痛す。先生当帰芍薬散を投ず。追々に癒ゆ。当帰芍薬散の用ひ場は、当帰建中湯の腹の如くにて大腹へかからず、小腹に拘攣の気味あり、痛は真の拘攣より反って甚だしきなり。この痛は全く瘀血の腹痛とみえたり、此方を用ふれば、塊などゆるむなり。《百疢一貫》大腹は上腹部のこと。《大塚敬節》
[133]脱力感
[134]打撲(打ち身)
[135]胆石症
[136]タンパク尿
☆無症候性タンパク尿で、体力の低下した、冷え症のものによい(漢方診療医典)
[137]チック
[138]知覚麻痺
[139]蓄膿症
[140]血の道症
[141]痴呆症:
[142]中耳炎
[143]虫垂炎
[144]疲れやすい
[145]つわり
[146]手足が冷たい
[147]手足のしびれ
[148]低血圧症
[149]動悸
[150]凍傷:
☆冷え症で、時々少しずつ子宮出血のある、未婚の婦人にこの方を与えたところ、たった1週間で手の凍傷が治って喜ばれた。この婦人は毎年凍傷に苦しめられていたが、その冬はとうとう凍傷にならなかった。《大塚敬節》
☆当帰と芍薬が凍傷に効くのではないかと思う《大塚敬節》
[151]糖尿病
[152]糖尿病性腎症
☆体力、腹力低下し、貧血、浮腫の傾向があり、冷え症の者に用いる。胸脇苦満はない。(漢方診療医典)
[153]動脈硬化症
[154]にきび    
☆冷え症で、貧血傾向があり、婦人の場合は、月経不順、月経直前の増悪が見られることが多い。《大塚敬節》
 ☆21歳の女子学生。数年前から顔一面に面疱が出来ている。この面疱は月経の前にひどくなる。足が冷えるし、血色はすぐれない。大便は1日1行。月経は順調であるが、月経初日に腹痛がある。項部が凝る。3ヶ月前に腎盂膀胱炎に罹ったが、今は治っている。面疱は黒味を帯びて、赤味は少ない。
私はこれに当帰芍薬散+薏苡仁を用いた。2ヶ月でほとんど全治した。《大塚敬節》
[155]乳ガン
[156]乳腺炎
[157]乳腺腫瘍
[158]尿自利<頻尿>
[159]尿量減少(尿不利)
☆尿利の異常
☆婦人血気痛にして、小便不利の者、此方に宜しき者あり《類聚方広義》
[160]妊娠腎
[161]妊娠中毒症:
☆妊娠するたびに、腎臓炎を起こす患者に、妊娠と判明すると同時に、この方を内服せしめて腎臓炎を予防して分娩を終わった例がある《大塚敬節》
[162]妊娠中の下痢
[163]妊娠中の咳:
☆子嗽なる者は、胎気生長し、水心下に停るに因って欬を為なり。当帰芍薬散に宜し。《先哲医話》
[164]妊娠中の腹痛:
☆妊娠、腹中㽲痛し、心下急満及び下利尿渋る者を治す。《女科堤要》
☆《景岳全書》妊娠、心腹急痛、或いは去血過多にして眩暈する者を治す。《雑病翼方》
☆婦人、懐妊し、腹中㽲痛し、その人心下に支飲ありて小便少なく、或いは冒する者は、当帰芍薬散之を主どる《医聖方格》
☆妊婦の腹痛等にして、下腹部攣急し、尿利減少する証《奥田謙蔵》
☆婦人経断ちて、已でに三四月、之を診するに、腹中攣急し、胎、手に応ぜず、或いは腹中㽲痛し、血瘕に類し、姙否を決し難き者有り。当帰芍薬散大黄を用いるときは、則ち二便快利し、十日を過ぎずして腹中鬆輭し、もし懐妊せる者は、胎気速かに張る。又懐妊すること已に累月、胎萎縮して長ぜす、腹中拘急する者も、亦此方に宜し《類聚方広義》
[165]妊娠浮腫:
☆(タンパク尿)
☆婦人妊娠7ヶ月以上は当に当帰芍薬散を与え、水を逐い血を理むべし。しからざれば則ち分娩後多く下利を患う。《先哲医話》
[166]ネフローゼ
☆体力、腹力低下し、貧血、浮腫の傾向があり、冷え症の者に用いる。胸脇苦満はない。(漢方診療医典)
[167]寝小便(夜尿症)
[168]ノイローゼ
[169]バージャー病《閉塞性血栓血管炎》
[170]バセドウ病
[171]肺結核
[172]白癬症
[173]白内障
[174]麦粒腫
[175]半身不随
[176]ヒステリー
[177]ひび
[178]冷え症:
☆冷え症で、血色がすぐれず、頭重、めまい、動悸、肩凝りなどを訴える者に用いる。男女共に良い。《大塚敬節》
☆冷え症で貧血性の者。
[179]鼻炎・鼻カタル
[180]鼻ガン
[181]ひざ(膝)関節痛
[182]引っ込み思案
[183]皮膚が白色
[184]皮膚がブヨブヨ(皮膚筋肉弛緩)
[185]皮膚に艶がない
[186]疲労倦怠
[187]貧血:
☆産後の貧血に《大塚敬節》
[188]ブドウ膜炎
[190]ふるえ
[191]腹水
[192]腹直筋攣急:
☆当帰芍薬散は、腹候、臍傍に拘攣ありて痛み、右に按せば左へ移り、左を按せば右に移り、その痛み心下或いは背の七八椎に徹するなり。         《勿誤薬室方函口訣》
[193]腹痛:
☆胎動腹痛に当帰芍薬散は㽲痛とあり、芎帰膠艾湯にはただ腹痛とありて軽きに似たれども、しからず。当帰芍薬散は痛甚だしくして大腹にあるなり、「芎帰膠艾湯」は小腹にあって腰にかかる故、早く治せざれば将に堕胎の兆となるなり。《勿誤薬室方函口訣》
☆男子の腹痛等にして、腹筋攣急し、四肢に冷感有り、尿利頻数、或いは尿量減少する証《奥田謙蔵》
[194]腹壁軟弱
[195]肥厚性鼻炎
[195]浮腫:(顔・手足)
☆妊娠中の浮腫や慢性腎炎の浮腫に用いたことがある《大塚敬節》
[196]腹部膨満感
[197]不随運動
[198]不定愁訴
[199]不妊症:
☆この方を用いて1、2ヶ月で妊娠する者が多く。10ヶ月間、連用ても妊娠しない場合は、妊娠の見込みが非常に薄いとみるべきである。       この際は温経湯、加味逍遥散、折衝飲などに変方してみるのもよい。《大塚敬節》
☆使用する目標は、冷え症で、血色がすぐれす、疲れやすいという点にある。月経は必ずしも不順であるを要せず、また量の多少も問題にしなくてよい。《大塚敬節》
☆28歳の婦人。14歳の時、虫垂炎の手術をした。21歳の時、胆嚢の手術をしたところ、其の跡が癒着した。4年前に結婚したが、妊娠しない。足が冷え肩が凝る、月経は遅れ勝ちで、少し腰が痛む。下痢しやすく、豆類を食べると下痢する。色は白く中肉である。
私はこれに当帰芍薬散を与えた。その月から月経時の腰痛が減じ、4ヶ月目から月経がとまり、妊娠した。しかも悪阻の状がまったくなく、妊娠中もずっと当帰芍薬散を服用した。出産の少し前に、舌が荒れて、下痢するいうので、当帰芍薬散黄芩としたところ、下痢が止み、舌も良くなった。産後、乳汁の分泌が少ないというので、醸乳丸を与えた。《大塚敬節》
[200]不眠症
[201]偏頭痛
[202]膀胱炎
[203]麻痺(マヒ)
[204]慢性肝炎
[205]慢性下痢
[206]慢性腎炎
[207]慢性頭痛
[208]慢性腹膜炎
[209]耳だれ
[210]耳鳴り
[211]無気力
[212]無月経
[213]めまい:
☆頭重や頭冒感とともにめまいが有る者に用いる《大塚敬節》
☆当帰芍薬散証のめまいは、激しいものではなく、半夏厚朴湯のときのような不安感を伴うこともない。《大塚敬節》
☆妊娠中のめまい、産後のめまいなどに用いる機会がある。腎炎にくるめまいにも用いる。頭に何かかぶっているように重くてめまいを訴えるものを目標とする。患者は冷え症で、血色のすぐれないものが多い(漢方診療医典)
[214]目の充血:
☆眼目赤痛の症、その人心下に支飲有り、頭眩、涕涙し、腹拘攣する者、此方に宜し《類聚方広義》
[215]メトロパチー(Metropathie)
[216]メニエール
[217]盲腸炎
[218]目眩
[219]腰痛症:
☆貧血気味で足腰が冷え排尿回数が多い者。
☆子宮後屈などの婦人科疾患による腰痛。
[220]腰冷
[221]卵巣機能不全
[222]卵巣嚢腫
[223]流産
☆流産癖を治す。
☆流産の予防に用いる。妊娠中続服させる。
☆早期破水を予防する。
☆35歳女性。主訴は流産癖で、すでに3回、6ヶ月と7ヶ月で自然流産してしまった。婦人科で黄体ホルモンの注射もしたがダメであったと言う。其の都度体力衰え、心痛のため疲労困憊の有様であった。甚だしく衰えた栄養、全身筋肉の弛緩、胃下垂等で、なるほどこの身体ではとても臨月まで保たすことは無理と思われる。そこで当帰芍薬散を与えて、生まれるまで続けるように約束した。毎月患者とご主人から熱心な手紙の報告があった。時々腹痛、下腹部の張りを訴え、前の流産の時の前兆と同じだなと心配の手紙をよこしてきた。しかし従来の厄月であった、5ヶ月も、6ヶ月も、7ヶ月も無事に過ぎ、めでたく男児を分娩した。《矢数道明》
[224]リウマチ 
[225]緑内障
[226]羸痩
[227]老人性痴呆症
[228]肋膜炎


 
当帰芍薬散加味《中薬臨床応用》
「白芍薬12g、当帰・川芎・白朮・茯苓・沢瀉各9g、香附子・延胡索各6g」水煎服。
◎膿血性の下痢
◎腹痛を伴う赤痢
◎婦人の便秘、腹痛。

 

当帰芍薬湯《東醫寶鑑》
「蒼朮・白朮・当帰・白芍薬各1銭半、黄蓍1銭、陳皮・熟地黄各5分、甘草(炙)・地黄(生)各3分、柴胡2分」水煎服。
◎経漏が止まらず、気が弱く困憊した者。




当帰生姜羊肉湯《金匱要略》《中薬臨床応用》
「羊肉250g、当帰30g、生姜15g」膈水清蒸して温服。
◎産後の腹痛

 

当帰承気湯[1]《東醫寶鑑》
「当帰・大黄各2銭、芒硝7分、甘草5分」作1貼し、水煎して芒硝を入れて服用。
◎燥を治す。

当帰承気湯[2]《東醫寶鑑》
「当帰2銭、厚朴・枳実・大黄各8分、芒硝7分」水煎服。
◎熱い血便を治す。


当帰承気湯[3]《東醫寶鑑》
「当帰・大黄各1両、芒硝7銭、甘草5銭」細切りにし毎回1両に、「姜5片、棗10枚」水1椀と煎じ、半分まで煎じたら滓を去り、温服。
◎陽狂・奔走・罵倒する者を治す。


当帰承気湯[4]《治病百法》


当帰承気湯《玉機微義》《古今方彙》
「当帰、大黄、芒硝、甘草(生)、生姜」水煎。
◎大熱(体表の熱、皮膚の表面の熱)内欝して皮膚枯燥、大便秘結する者を治す。



当帰潤燥湯《東醫寶鑑》
=「潤燥湯」
「当帰・大黄・桃仁・麻子仁・甘草(生)各1銭、地黄(生)・升麻各7分」紅花2分を先に煮て、半分になったら桃仁・升麻を入れ、又半分になったら、空腹時に服用。
◎血燥と大便秘渋を治す。

当帰鬚散《医学入門》《東醫寶鑑》
「当帰尾1銭半、赤芍薬・烏薬・香附子・蘇木各1銭、紅花8分、桃仁7分、桂皮6分、甘草5分」酒・水半々で煎じて服用。
◎打撲と損傷で気が凝し、血が溜まって胸・肋骨・腹部が痛む者を治す。
◎打撲にて気凝り、血結ぶを致すを以て、胸腹脇痛し、或いは寒熱するを治す。《古今方彙》
◎挫閃(挫傷と閃傷を一つにした名称)して気血順らず、
 ①腰脇痛む者は:「青皮・木香」
 ②脇痛には:「柴胡・川芎」



当帰大黄湯[1]《外台秘要方》
「当帰3両、芍薬8分、桂枝3分、乾姜6分、呉茱萸6分、人参1両、大黄1両、甘草2両」
「+枳実茯苓」=「十味当帰湯」《備急千金要方》
◎冷気腰背を牽引し、肋下腹内痛むを療す。
◎《外台》《千金》に「冷気」とは、上は痰飲を指し、下は疝気を云う。
《仲景》は

「痰飲」を「寒飲」と云い、「疝気」を「久寒」と云う。 
◎此方は「桂枝加芍薬湯」の変方にて、温下の剤なり。《勿誤薬室方函口訣》
◎疝積にて腰背より肋下へ差し込み痛む者、此方の目的なり。疝にて腹や腰に回るものは多くあれども背に回る者は少なし。

◎鑑別:
「十味当帰湯」:背に回って痛む
「当帰大黄湯」:心下痞硬し、背まで徹する疼痛。
「大柴胡湯」:心下痞硬して堅癖あるとき。
「当帰湯」《備急千金要方》:疝積あって腸胃ともに痛み腰部の鈍痛。


当帰大黄湯[2]《丹渓附録》
「大承気湯当帰」
「大黄、枳実、芒硝、厚朴、当帰」
◎尿血実なる者を治す。

当帰大黄湯[3]《秘伝方》
「大承気湯当帰・甘草」
◎男婦、痰、心竅に迷い、垣根を越え、壁を越え、胡言乱語するを治す。

当帰湯[1]《備急千金要方》《漢方治療の実際》
    =「千金当帰湯」
「当帰・半夏各5、芍薬・厚朴・桂枝・人参各3、乾姜・黄蓍・蜀椒各1.5、甘草1」
◎心腹絞痛、諸虚、冷気、満痛を治す《備急千金要方》
  

★適応症及び病名(当帰湯)
[1]狭心症
血色すぐれない冷え性。胸が締め付けられる痛み。痛みが背中・肩に放散。
真性の狭心症より、仮性の狭心症によく効く。本方は、千金方にでていて、心腹絞痛、諸虚の冷気、満痛を治すとあって、腹から胸に差し込むように痛み、その痛みが、胸、背、腕などに放散するものおにもよく、冷え症で、特に上腹部、胸、背などに冷気を覚えるものによい。(漢方診療医典)
[2]心臓神経症
狭心症様の症状を呈し、胸が締めつけられるように痛み、その痛みが背に徹するものに用いる。この場合、腹から左脇部に何者かが衝き上がるように感じ、呼吸が苦しく、腹、胸、背などに冷感を訴える傾向がある。上腹部は膨満しているが、軟弱で強い抵抗がなく、ガスの充満を認める(漢方診療医典)


当帰湯[2]《聖済総録》
    =「四順清凉飲」。
「当帰・芍薬・山梔子・防風・連翹・羗活・大黄・甘草」
◎痔瘻を治し、腫疼を消す。


当帰湯[3]《勿誤薬室方函》
「当帰5銭、川芎・紅花・桃仁・牡丹皮各3銭、蘇木2銭」酒水煎。
◎瘀を散じ、活血す。
◎已に気絶する者も亦治すべし。《雑病翼方》

当帰湯[4]《産宝》
「当帰4、阿膠(炒)4、甘草4、人参6、葱白1握り」

 

当帰湯[5]《東醫寶鑑》
「柴胡2銭、地黄(生)1銭半、当帰・白芍薬各1銭、黄芩(酒浸)・黄連(酒浸)各7分半、甘草(炙)5分」水煎服。
◎肝腎と瞳子の補強薬。

当帰導滞散《傷科補要》
「大黄40g、当帰40g、麝香0.4g」いっしょに細末とし、毎服4~12g服用。


当帰拈痛湯[1-1]《蘭室秘蔵》《東醫寶鑑》
「羗活・茵蔯蒿(酒炒)・黄芩(酒炒)・甘草(炙)各1銭、知母・沢瀉・赤茯苓・猪苓・白朮・防已各6分、人参・苦参・升麻・乾葛・当帰・蒼朮各4分剉作し水2杯に浸して煎じ、半分になったら就寝時に服用。
◎湿熱脚気で腫痛する者を治す。



当帰拈痛湯[1-2]《蘭室秘蔵》
「白朮・知母(酒)・沢瀉・茯苓・黄芩(酒)・当帰・甘草・茵蔯蒿(酒洗)・羗活5分、人参・苦参・升麻・葛根・蒼朮・防風各4分」水煎し空心に服す
◎湿熱の病たる、肩背沈重、肢節疼痛し、胸膈不利なり。
◎湿熱脚気病を為志、梔子骨節煩疼し、肩背沈重し、胸脇利せず、通身疼痛し、下に注ぎて足脛腫痛し瘡を生じて赤く腫れ、膿水絶えざる者を治す《古今方彙》
◎湿熱下注し、足脛腫痛、瘡を生じ、赤腫し、膿水絶えざる者、之に宜し。《高階枳園》
◎此方は湿熱血分に沈淪して肢節疼痛する者に用いる。《勿誤薬室方函口訣》
◎皮膚黒の人、又は黒光りある人、多くは内に湿熱ある故なり。此の如き病人     に遇はば、淋病又は陰癬(陰部の皮膚疾患)の類はなきやと問うべし。必ずある     ものなり。《勿誤薬室方函口訣》
◎本方は風毒・歴節・脚気の類の桂・麻・石膏・犀角更に効なく、烏頭・附子、反って激動し、流注荏苒として癒えざる者を治す《橘窓書影》



当帰拈痛湯[1-3]《蘭室秘蔵》《漢方治療の実際》
「羗活・当帰・猪苓・知母・朮・沢瀉・茵蔯・黄芩・甘草各2.5、人参・苦参・升麻・葛根・防風・白朮各2」
★適応症及び病名(当帰拈痛湯)
[1]脚気:
☆これは至って良方で、世には、この方の証が多くあるものである。ここに脚気といってあるが、この脚気というのは、《備急千金要方》や《外台秘要方》にいう脚気とは別のもので、元明以降、次の様な症状に名付けたものである。
それは足に出来物が出来て赤く腫れるものである。これは元来湿熱よりくるもので、膏梁家(美食家)で、脾胃の湿熱の盛んな人に多くあるものである。不案内な外科医は赤く腫れているのを診て、口を開けたがるものである。余程、病のスジを知らないと、口を開けたらよかろうと考えるのは無理がない。
しかしよく見ると、常の腫物とは違って、根脚がはっきりしない、境界がはっきりせずに自然と山の形になったもので、口を開けると、きっと悪いものである。一旦口を開けると、口が塞がらず、この方を持ちいていると治るには治るがひまどるものである。そこでこの症を診たら、別に局所をいじることをせず、この方を用いると自然に消散して良くなるものである。主治に膿水断たずとあるが、これは自然と日を経て口の開いたものを云ったものである。このことは、世の医者がとんと知らないので、治を誤るものである。
ただ伊良子氏の家では先代より良く使い覚えて、相伝えたれたものである。
前年、1男子がこの症を患った。右の足の拇指と次指の2本が赤く腫れて熱をもって痛みが耐え難く、その腫が次第に足の甲の方まで、波及し、痛みが膝にまで及んで、膝から下が少し腫れるようになった。諸医は手を尽くしたが効なく、或いは脱疽の症だといって、治療したが少しも効無く、ただ昼夜、コタツの櫓にもたれかかって、うなり止めない。そこで伊良子将監に治を乞うた。これは湿熱脚気と呼ぶ一種のもので、決して脱疽ではない。脱疽というものは、《外科正宗》にある通り、烏々黒々といって、黒くなるものである。このように赤く腫れるものではないと云って、この方を与えたところ、わずかに数貼で、その痛みは忘れたように治ってしまった。《百々漢陰》
☆湿熱家の脚気、腰股あるいは足脛少しづつ痛を感じ、歩行に妨げあって難儀する者に必験あり。《勿誤薬室方函口訣》
[2]関節痛:
☆病名も原因もよく分からない関節の疼痛に用いて著効を得た。
患者は22歳男性。約2年前から突発的に関節に発赤・腫脹が現れ、この部に熱感と、かなり激しい疼痛を訴えた。その間今日まで、醜女の病名がつけられ、あらゆる手当が加えられたが治らないという。この疼痛の場所は一定の個所とは限らず、発作毎に部位が移動する。しかもその発赤腫脹の部位は関節というよりも関節付近の筋肉で、関節炎ではない。発作は多くは3日間位で、一旦は治まるが、またすぐ他の場所が腫れて痛む。その時悪寒と軽度の発熱を伴うことある。ある医師はリウマチといい。ある医師はアレルギー性のものといい、ある医師は丹毒といい、ある医師は滑液嚢炎だといったという。
患者は一見したところ、健康の様に見える。脈は浮大で、右膝関節部位に近く発赤があり、ここに熱感がある。しかし腫脹というほどのものではない。圧痛はあるが、皮膚をつまんでは痛まない。両便は普通。舌には少し黄苔があり、食は進まない。腹診上、腹筋の緊張は中等度で、臍上で少し動悸の亢進がある。これに対して、前医が葛根湯を与えたが、効がないので、私に治を求めた。私はこれに防已黄蓍湯麻黄を与え、1ヶ月ほど連用したが効がない。その間、疼痛は、手腕関節の付近に来たり、足関節の付近に来たりして、移動した。そこで十味敗毒湯にしたが、これも効がないので、当帰拈痛湯にしたところ、初めて著効があり、これを服用し始めてから、約4ヶ月間、全く発作を忘れている。《大塚敬節》
[3]痼疾:
☆皮色紫黒なる者を治す。《方読便覧》
[4]湿熱流注:
☆土州候の臣、吉岡某は、両方の足の指の甲が腫れて、その痛は堪えがたい。夜になると熱が高くなって、疼痛はますますひどくなり、脚を抱いて泣く。藩の医者が4、5人いろいろを治を尽くしたが寸効もないという。自分がこれを診るに、風毒でもない、脱疽でもない、1奇証である。そこでその発病の初起の状を聞いたところ、その人は道中で、疥癬にかかり、瘙痒がひどいので、薬湯に浴したところ、瘡疥はたちまり治って、ほどなくこの証になったという。自分は湿熱の流注と診断して、当帰拈痛湯を作り大黄を加えて与えたところ、2日分でその痛は半減し、10日もたたないうちに全治した。《橘窓書影》
[5]神経痛:
☆《華岡青州》は附子剤を用いて、反って劇痛する者に用いる。
☆その初め、麻黄加朮湯、麻杏薏甘湯などを用いて発刊後、反って発熱あるいは浮腫する者に宜し。《勿誤薬室方函口訣》
☆皮膚が黒光りして湿熱があり、脚気と称する歩行困難な足の神経痛に用いる。《寺師睦宗》
[6]痛風
☆これを痛風に用いるのは、百々漢陰のつぎの説によった。“それは足にできた物ができて、赤く腫れるものである。これは元来、湿熱よりくるもので、美食家で、脾胃の湿熱の盛んな人に多くあるものである。不案内な外科医は赤く腫れているのを見て、口を開けたがるものである。よほど、病のすじを知らないと、口を開けたたよかろうかと考えるのは、無理もない”





当帰白朮湯[1-1]《三因極一病証方論》
「白朮1銭、茯苓1束、甘草6分、当帰3分半、茵蔯蒿5分半、猪苓・枳実・前胡・杏仁各6分、半夏8分」
◎酒疸発黄、心下痃癖、堅満あり、身体沈重、飲食を妨害死、小便赤渋なる者を治す。
◎此方は心下及び脇下に痃癖ありて発黄し、大柴胡湯茵蔯、或いは八神湯、延年半夏湯の諸挫堅の剤、攻撃の品を施せども寸効無く、胃気振るわず、飲食減少、黄色依然たる者に用いて往々効を奏す。《勿誤薬室方函口訣》
◎《三因極一病証方論》には酒疸とあれども、諸疸に運用して飲癖を主とすべし。
★適応症及び病名(当帰白朮湯)
黄疸:
☆黄疸がこじれて治りにくい者《大塚敬節》

当帰白朮散《医学正伝》
⇒「当帰白朮湯《三因極一病証方論》猪苓半夏黄芩生姜」


当帰白朮散 《漢方治療の実際》
「白朮・茯苓・当帰・杏仁・半夏各4,猪苓2.5、茵蔯・枳実各1.5、前胡3、甘草1」
◎《内科秘録》
“吐方や下痢に用いても寸効無く、塊癖いよいよ大になり、顔色が烟(えん)薫色となり、黒疸となったものには《医学正伝》の当帰白朮散が神験がある。此方は予の家で歴験することすでに8世に及び、今も此方で奇験を得る事が多い”



当帰白朮湯[1-1]《医学正伝》《古今方彙》
「白朮・茯苓各1銭、当帰・黄芩・茵蔯各3分半、前胡・枳実・杏仁・甘草(炙)各6分、半夏8分、生姜」水煎。
◎酒疸にて発黄し、心下に痃癖ありて堅満し、身体沈重、飲食を妨害し、小便赤渋する者を治す。
   
当帰白朮湯[1-2]《東醫寶鑑》
「茯苓1銭半、蒼朮・枳実・杏仁・前胡・葛根・甘草各7銭、半夏7分半、当帰・黄芩・茵蔯蒿各5分」剉作1貼し、姜3を入れて水煎服。
◎酒疸に飲癖があり、心・胸が堅満で食べられず、小便が赤い者を治す。





当帰白朮湯[2]《医学入門》《古今方彙》
「当帰・附子各2銭、生姜1銭、白朮・桂枝・甘草・人参・黄蓍・芍薬各5分」水煎温服。食頃再び一服を進む。微しく汗して便ち癒える。
◎男婦、病未だ平復せずして房事を犯すに因り、小腹急痛して、腰胯に連なり、梔子挙げ任うる能わず、身に熱無き者を治す。



当帰補血湯[1-1]《備急千金要方》
「当帰8g、黄蓍40g」
◎補血湯《東垣試効方》に同じ。
◎男女、肌熱・燥熱・目赤・面紅・煩渇引飲・脈洪大にして虚。

当帰補血湯[1-2]《東醫寶鑑》
「黄蓍5銭、当帰(酒洗)2銭」剉作1貼し水煎して飲む。
◎過度の労役などで、顔・目が赤く、熱があって、脈は洪大・虚で押すと無くなる(=血虚発熱症)を治す。

当帰補血湯[1-3]《内外傷弁惑論》《古今方彙》
「黄蓍(蜜炙)1両、当帰2銭」水煎。
◎気厥虚損し或いは妄りに峻剤を服して気血いよいよ虚に致りて肌熱し大喝引飲し、目赤く面紅く、脉洪大にして虚し、重く按じて全く無きを治す。
◎この病は多く飢飽、労役せる者に得る。
◎男婦の肌熱燥熱、目赤く面紅、煩渇引飲、昼夜息せず、その脉洪大にして虚し、重く按じて全く無き者を治す。

当帰補血湯[1-4]《内外傷弁惑論》《中薬臨床応用》
「当帰6g、黄蓍30g」水煎服。
◎動悸、健忘
◎不眠、精神不安


当帰補血湯[2]《東醫寶鑑》
「白芍薬・当帰・地黄(生)・熟地黄各1銭、白朮・白茯苓・麦門冬・梔子(炒)・陳皮各8分、甘草3分」剉作し、1貼に「米(炒)100粒、棗2枚、梅1箇」を入れて煎じて、滓を去り、「辰砂(水飛)末3分」を入れて混ぜて食べる。
◎心血が少なく、嘈雑する者を治す。

当帰補血湯[3-1]《万病回春》《古今方彙》
「当帰・香附子(酒)・白芍薬・黄芩(酒)・生地黄・川芎各1銭、防風・蔓荊子・柴胡各5分、荊芥・藁本各4分」水煎温服。
◎頭痛にて左に偏する者は風と血虚に属するなり。

当帰補血湯[3-2]《東醫寶鑑》
「生乾地黄(酒炒)・白芍薬・川芎・当帰・黄芩(酒炒)各2銭、防風・柴胡・蔓荊子各5分、荊芥・藁本各4分」水煎服。
◎血虚頭痛を治す。
◎魚尾から上へ痛みが来る。魚尾=眉先と耳のそばの髪際の間。

当帰補血湯[4]《医学正伝》《古今方彙》
「当帰、黄蓍、葱白」水煎、
◎産後乳なき者。

当帰養血湯[1-1]《万病回春》《古今方彙》
「白芍薬(煨)・熟地黄・茯苓・当帰各1銭、貝母・括楼仁・枳実・陳皮・厚朴・香附子・蕪荑・紫蘇子(炒)各7分、沈香5分、黄連(呉茱萸炒)8分、生姜、大棗」水煎し、竹瀝、沈香を磨し調服。
◎年老の人、陰血枯燥し痰火気結し升りて降らずして飲食下らざる者乃ち膈噎となり、之を主る。


当帰養血湯[1-2]《東醫寶鑑》
「当帰・白芍薬(炒)・熟地黄・白茯苓各1銭、黄連・呉茱萸(同時に炒り茱萸を去る)8分、貝母(炒)・瓜蔞仁・枳実・陳皮・厚朴・香附子・川芎・蘇子各7分、沈香5分」の汁を取って剉作し、1貼に「姜1、棗2」を入れ水煎し「沈香汁・竹瀝」を入れ調服する。
◎老人の痰結・血枯を治す。

当帰養血湯[1-3]《万病回春》《漢方治療の実際》
「芍薬・当帰・地黄・茯苓・生姜・大棗各3、貝母・括呂仁・枳実・陳皮・厚朴・香附子・川芎・蘇子各1.5、沈香・黄連各1」
◎この方と生津補血湯は、皮膚と粘膜が枯燥して潤沢を失い、飲食が下らない者に用いる。《大塚敬節》

★適応症及び病名 (当帰養血湯)
[1]嚥下困難:
☆当帰養血湯と生津補血湯の2方は、内容が類似で、食道に狭窄があって嚥下困難、嘔吐を訴えるものに用いる。本方を用いる患者は皮膚と粘膜が枯燥している点に着目する。
私はかって、自殺の目的で大量のシュウ酸を飲んで、食道に瘢痕性狭窄を起こしたものに、生津補血湯を用いて著効を得たことがある(漢方診療医典)
[2]嘔吐:
☆皮膚・粘膜が枯燥すて飲食物が下らず、嘔吐する者に用いる。《大塚敬節》




当帰養心湯《済世全書》《古今方彙》
「人参、当帰、生地黄、麦門冬、升麻、甘草、燈心草」水煎。
◎起発、貫漿に経水適々来り、忽ち口瘖(唖のこと)して言う能わざる者は乃ち血が少陰に入りて上る能わず口に栄えるなり。

当帰六黄湯[1-1]《太平聖恵方》《古今方彙》
「当帰・黄蓍各1銭、黄柏・黄芩・生地黄・熟地黄各7分」水煎し、口を通して服す(一口に一度に呑むことで撞き破りて裏の深処まで届く意)。

当帰六黄湯[1-2]《太平聖恵方》《漢方治療の実際》
「当帰・生地黄・熟地黄各4、黄柏・黄芩・黄連・黄蓍各2.5」
◎盗汗を治すの聖薬なり。
☆私の経験では、これの効く盗汗は少ないように思う。この方はあまり虚証になった者には向かない。《老医口訣》に“盗汗の病は大抵虚病と心得るなり。勿論後には虚もあれどその他は腹を探て病毒のあるものは飲食も相応にて盗汗あるは六黄湯を用ゆべし”とある《大塚敬節》


当帰六黄湯[1-3]《太平聖恵方》
「当帰・黄蓍各8g、生地黄・熟地黄・黄芩・黄連・黄柏各4g」
◎盗汗を治するの聖薬なり。
◎陰虚すれば火有り、盗汗発熱す《徐霊胎》
◎此方は陰虚火動の盗汗を治する方なれども、総て血分に熱ありて自汗盗汗する者に効あり。《勿誤薬室方函口訣》
◎眼中翳膜を生じ膿水淋漓、俗にいわゆる膿眼に効あり。
◎血虚眼の熱ある者に宜し。《勿誤薬室方函口訣》
◎血虚で盗汗あり、内熱して潮熱する。

当帰六黄湯[1-4]《東醫寶鑑》
「黄蓍2銭、地黄(生)・熟地黄・当帰各1銭、黄芩・黄連・黄柏各7分」水煎服。
◎盗汗を治す。

当帰六黄湯[1-5]《蘭室秘蔵》《中薬臨床応用》
「生地黄15g、熟地黄15g、黄連6g、黄芩9g、黄柏6g、黄蓍18g、当帰6g」水煎服。
◎熱感、盗汗、口唇乾燥。
◎滋陰清熱、固表止汗。

当帰竜薈丸《東醫寶鑑》
「当帰・草竜胆・山梔子・黄連・黄柏・黄各1両、大黄・蘆薈・青黛各5銭、木香2銭半、麝香半銭」作末し小豆大に蜜丸。姜湯で20~30丸服用。
◎肝臓の実熱で脇痛する者を治す。
◎寒熱を発し、脇痛し、積塊がある。


当帰竜薈丸《宣明論》《中薬臨床応用》
「当帰・竜胆・黄柏・黄芩・黄連・山梔子各30g、大黄・大青葉・蘆薈各15g、木香6g、麝香1.5g」小豆大の丸剤。1回20~30丸づつ生姜湯で服用
    ◎右上腹部の疼痛
    ◎頭がふらつく
    ◎頭痛、
    ◎難聴、耳鳴り
    ◎精神不安
    ◎怒りっぽい

当帰竜胆散《東醫寶鑑》
「升麻・麻黄・草竜胆・黄連・草豆蔲各1銭、地黄(生)・白芷・当帰梢・羊脛骨(灰)各5分」作末し、すりつける。
◎寒熱歯痛を治す。

当帰連翹飲《万病回春》《東醫寶鑑》
「当帰・地黄(生)・川芎・連翹・防風・荊芥・白芷・羗活・黄芩・梔子・甘草各7分、細辛3分」水煎服。
◎歯痛で風に当たるとひどく痛み、口を開けると臭う者を治す。
◎口を開きて風を呷(コウ、す)えれば則ち痛み甚だしく、及び臭気を聞ぐばからざる者を治す。《古今方彙》
◎是れ腸胃の中に風邪、積熱あるなり。
◎走馬牙関(頬部壊疽)を治す。《古今方彙》

当帰連翹湯《万病回春》《古今方彙》
「当帰・連翹・防風・黄芩・荊芥・白芷・芍薬・生地黄・山梔子・白朮・人参・阿膠・地楡各等分、烏梅1個、甘草半減、大棗1枚」水煎し食前に服す。
「痔瘻」を治す。

凡そ痔の者は瘣(コブコブ)を成して破れざるなり。
☆痔瘻を病む患者は多くの場合、一定の体質的傾向がある。皮膚が浅黒く、枯燥して渋紙の如くなり、光沢に乏しく、いかにも悪液質ににて茶褐色を呈している。そのような痔瘻の患者に、本方を長期にわたって服用させるとよい(漢方診療医典)

当帰和血散《東醫寶鑑》
=「槐花散」
「当帰・升麻各1銭半、槐花(炒)・青皮・荊芥・白朮・熟地黄各7分、川芎5分」作末し毎回2銭を空腹時に米飲で調下する。
◎腸風射血と湿毒下血を治す。

冬葵散《寿世保元》《古今方彙》
「葵子5銭、梔子5銭、滑石5銭、木通3銭」水煎。
◎転胞(妊娠、産褥時の排尿障碍)の者は妊娠して卒かに小便するを得ざるなり、之を治す。


冬葵子散《金匱要略》
「冬葵子、木通」

冬葵子湯《中薬臨床応用》
「冬葵子12g、滑石9g、香薷3g、藿香5g」水煎服。
◎尿量減少
◎便秘を伴う水腫。

冬葵子湯《医方考》《古今方彙》
「冬葵子、柴胡、桑白皮、赤茯苓、赤芍薬、当帰」水煎。
◎子淋の良方なり。


冬虫夏湯《中薬臨床応用》
「冬虫夏草12g、杏仁9g、川貝母9g、麦門冬9g、阿膠珠15g、白芨9g、百部12g」水煎服。
◎肺陰虚による咳嗽、喀血、胸痛
◎咳嗽が強い時:+蛤蚧末3g(沖服)。
◎喀血がひどい:+三七末3g(沖服)


党参膏
「党参、氷糖」


陶氏茵蔯湯《東醫寶鑑》
「茵蔯2銭、大黄・梔子仁・厚朴・枳実・黄・甘草各1銭」剉作1貼し、「姜2片、燈心一握り」を入れ水煎服。
◎黄疸に熱があって、大便が不通を治す。

陶氏益元湯《傷寒六書》《東醫寶鑑》
「甘草(炙)2銭、附子(炮)・乾姜(炮)・人参各1銭、五味子20粒、麦門冬・黄連・知母各7分、熟艾3分」剉作1貼し、「姜5片、棗2枚、葱白3茎」入れ、水煎して熱いときの童尿3匙入れ滓を去り、冷服する。
◎傷寒の戴陽症を治す。
◎頭疼無く、身熱あり、躁悶、面赤、飲水口に入るを得ず、乃ち気弱、無根の虚火上に泛(ウカ)ぶを治す。名付けて戴陽症 という。《古今方彙》


陶氏黄竜湯[1-1]《傷寒六書》
「大黄・芒硝・枳実・厚朴・甘草・人参・当帰」年老いて気血の虚した者には芒硝を除く。水2杯に生姜3片・棗子2枚を入れて煎じてから、さらに桔梗を加え煮沸して熱いうちに服用。


陶氏黄竜湯[1-2]《東醫寶鑑》
「大黄2銭、芒硝1銭半、枳実・厚朴各1銭、人参・当帰・甘草各5分」剉作1貼し「姜3、棗2」を入れて水煎し温服。
◎熱邪が中に伝わって、胃中に燥糞が詰まって硬痛し、清水を下す者を治す。

陶氏桂枝大黄湯《傷寒六書》《古今方彙》
「桂枝3銭、芍薬4銭、大黄2銭、柴胡・枳実・甘草各2銭半、生姜、大棗」水煎し、服するに臨み檳榔子を入れ、水を磨して熱服する。
◎足の太陰脾経が病を受け腹満して痛み、咽乾き而して渇し、手足温、脉来ること沈にして力あるを治す。


陶氏再造散《東醫寶鑑》
「人参・黄蓍・桂枝・附子(炮)・細辛・羗活・防風・川芎・甘草(炙)各1銭」剉作1貼し「姜()3、棗2」入れて煎じ、半分になったら「芍薬(炒)1銭」を入れ再び2~3沸して温服する。
◎陽が虚して、汗をかかない者(=亡陽症)を治す。

陶氏柴胡百合湯《東醫寶鑑》
「鼈甲(醋煮)2銭、柴胡・百合・知母・地黄(生)・陳皮・人参・黄芩・甘草各1銭」剉作1貼して「姜3、棗2」を入れ水煎服。
◎百合病と労復を治す。

陶氏生地芩連湯《傷寒六書》《東醫寶鑑》
「地黄(生)・黄芩・黄連・梔子・川芎・赤芍薬・柴胡・桔梗・犀角鎊・甘草各1銭、大棗1枚」水煎し蓮根汁に墨汁を混ぜて飲む。
◎鼻血不止、失血過多。
◎虚言・失礼に。
◎鼻衂流れをなし、一切の血を去ること過多、譫語失神、撮空閉目、人事を知らざるを治す。《古今方彙》

陶氏升陽散火湯《東醫寶鑑》
「人参・当帰・芍薬・柴胡・黄芩・白朮・麦門冬・陳皮・茯神・甘草各1銭」剉作1貼し、「姜3、棗2」を入れ煎服。
◎撮空症を治す。
「撮空症」=肝熱が肺を傷つけ、虚弱して、うわごとを言い、精神が昏冒し、冒心を抱きかかえ、or空中をまさぐる症状。

陶氏冲和湯《東醫寶鑑》
「羗活・蒼朮・防風・地黄(生)・川芎・黄芩・乾葛・白芷・柴胡・石膏各1銭、細辛・甘草各3分」剉作1貼し「姜3、棗2、黒豆37粒」入れ煎服。
◎両感傷寒で、陰陽が分かれていない者に使う。
(両感=二つの病気に共に犯されること)


陶氏導赤各半湯《東醫寶鑑》
=「瀉心導赤散」
「黄芩・黄連・梔子・知母・麦門冬・茯神・犀角・人参・滑石各1銭、甘草5分」剉作1貼し「姜1、棗2、燈心草一掴み」入れて煎じ、「地黄(生)汁3匙」を入れて飲む。
◎傷寒が治った後、昏沈する者を治す。

陶氏導痰湯《東醫寶鑑》
「半夏1銭、赤茯苓・胆南星・枳実各8分、陳皮・黄芩・黄連・白朮・瓜蔞仁各5分、桔梗4分、人参・甘草2分、姜3、棗2」水煎し、就寝時に竹瀝・姜汁を少し飲んで先に痰を吐いた後、これを飲む。
◎痰が心竅をふさぐとき。先ず姜塩湯を多く飲ませて吐かせ、or竹瀝・香油で灌腸し、次に本方を飲ませる。


陶氏平胃散《東醫寶鑑》
「蒼朮1銭半、厚朴・陳皮・白朮各1銭、黄連・枳実各7分、草果6分、神麹・山楂肉・乾姜・木香・甘草各5分、姜3」水煎服。
◎食積で発熱・頭痛する。

陶氏補中益気湯《東醫寶鑑》
「人参・地黄(生)・黄蓍・当帰・川芎・柴胡・陳皮・羗活・白朮・防風各7分、細辛・甘草各5分」剉作1貼し、「姜3、棗2、葱白2茎」を入れ水煎服。元気が出ないときには、升麻3分を加える。
◎内へ気血を傷つけ、外に風寒に当たって、頭痛身熱して悪寒し、無力な者を治す。

唐侍中一方[1-1]《外台秘要方》
「檳榔3銭、生姜2銭、橘皮・呉茱萸・蘇葉・木瓜各1銭」


唐侍中一方[1-2]《外台秘要方》《漢方治療の実際》
「檳榔4、(少許)・橘皮・木瓜各3、呉茱萸・蘇葉各2」
◎脚気攻心を苦しむを療す。
◎此方甚だしく腫気を散じ、極めて験あり。

★適応症及び病名(唐侍中一方)
脚気衝心:
☆虚症には効なし。《勿誤薬室方函口訣》
☆実症:「大黄」《有持桂里》
☆胸満気急し、その気上衝せんと欲する者に効あり。
☆此方を用いてその腫ますます盛んになる者:「木茱湯」
☆遍身洪腫する者:「越婢湯」
☆婦人脚気、衝心悶乱、人を識らず:「松節童便」

東垣瀉白散《医学発明》《古今方彙》
「桑白皮1両、地骨皮7銭、人参・青皮・陳皮・五味子・甘草各半両、粳米1~30粒」水煎。
◎陰気下にあり、陽気上にあり、咳喘嘔吐する者を治す。

東垣鼠粘子湯《東醫寶鑑》
「桔梗1銭半、黄蓍・柴胡各7分、鼠粘子・連翹・生乾地黄(酒炒)・当帰尾・黄芩・甘草(生)各5分、昆布・蘇木・黄連・蒲黄・草竜胆各3分、桃仁3箇、紅花1分」水煎し食後服用。
◎耳の中が痛み、瘡の出る者を治す。

榻気丸《東醫寶鑑》
「胡椒・全蝎各49個」作末し、麴糊で栗米大の丸剤。米飲で5~7丸飲む。
◎小児の腹の虚脹を治す。

豆豉橘紅散《東醫寶鑑》
「木香・丁香各1銭、白豆蔲・人参・厚朴・白朮・神麹・乾生姜・半夏(麺)・橘紅・藿香甘草(炙)各5分」剉作し、1貼に姜3、棗2を入れて水煎服。
◎宿食を消化させ、脾胃を温める。



豆豉姜湯《中薬臨床応用》
「豆豉姜30g、骨砕補30g、半楓荷30g、当帰9g、鶏血藤15g」水煎服。
◎風寒湿による痺痛
◎関節リウマチの慢性期
◎腰痛
◎下肢の脱力感


豆参散《東醫寶鑑》
「赤小豆・苦参」酸漿水で調服し、羽根で探吐する。
◎吐剤。


豆淋酒《勿誤薬室方函口訣》
「大豆3合」を煙が出るまで熬る。熱いうちに酒5合を加える」
一日置いて、絞って用いる。《済世薬室》
◎角弓反張は豆淋酒に調す、極めて妙なり。《雑病翼方》

豆淋酒
「黒豆を炒って熱くして酒に入れ、1日3回飲む。」
◎中風の口噤不語と喎斜・癱瘓に。



透膈散
「雪白硝石を細かく刻んで毎回2銭を、労淋には葵子湯で調服し、血淋・熱淋には冷水で、気淋には木通湯で、石淋には隔紙を炒って温水で、小便不通には小麦の煎じ湯で空腹時に服用。名を透膈散という。」
◎五淋と小便不通を治す。



透膈湯《東醫寶鑑》
「木香・白豆蔲・檳榔・縮砂・枳殻・厚朴・半夏・青皮・陳皮・甘草・大黄・芒硝各8分」剉作し、1貼に姜3、棗2を入れ食後水煎服。
◎中脘の気滞・噫気・呑酸・嘔逆・痰涎を治す。 
◎脾胃和せず、中脘気滞、胸膈満悶、噎塞通ぜず、噫気呑酸、脇肋刺痛、嘔逆痰涎、飲水下らざるを治す。《古今方彙》


透肌散《医学入門》《古今方彙》
「紫草1銭、升麻・甘草各5分、糯米50粒」水煎。
◎痘已に発し快からざるを治す。
◎解毒清熱には:「蝉退・地骨皮・黄(酒)」


透耳筒《東醫寶鑑》
「椒目・巴豆肉・石菖蒲・松脂各半銭」作末しを熔化し筒と同じように作り、綿にくるんで耳に1日1回入れる。
◎腎気が弱く耳鳴りする者。

透鉄関法《東醫寶鑑》
「磁石2塊」棗核大に切り、麝香を少し磁石の尖先に塗り、2つの耳孔の中をふさぎ、口に鉄1塊をくわえて、しばらくすると両耳に気運が通じる。
◎耳聾を治す。

透膿散《外科正宗》《古今方彙》

「黄蓍4銭、川芎3銭、当帰2銭、皀角刺1銭半、穿山甲1銭」水煎し服するに臨んで(酒)を入れるも亦好し。
◎臀癰及び諸瘡、内に膿已に成りて穿破せざる者を治す。


透膿散《外科正宗》
「生黄蓍・穿山甲・川芎・当帰・皀角針」
◎癰疽諸毒、内に膿已に成り、穿破せざる者を治す。宜しく之を服すべく、たちどころに破れん。
◎癰疽諸毒で、膿となっていて、破れていないもの。
◎案ずるに、内に膿已に成る穿破せざる者は気虚なり。
◎癰疽が化膿しても破裂する気のないものに用いる。
◎内托散《備急千金要方》より優なり。《勿誤薬室方函口訣》
◎痘瘡内攻せんと欲する者:「反鼻」


透氷丹《東醫寶鑑》
「川烏2両を江水に半月間浸すが、3日の間に1回づつ水を取り替えてから、切って焙乾し、塩1両で炒黄し塩は入れないで、大黄・梔子・茯神・威霊仙・蔓荊子・益智仁・白茯苓・仙霊脾・天麻・白芷各5銭、香墨(焼醋淬)・麝香各1銭1字」作末し、煉蜜に混ぜて杵で砕いて、芡実大に丸め、薄荷汁と温酒で2~3丸化下する。
◎大小便の秘渋を治す。
◎痰涎の壅塞、腰脚に流注した腫痛を治す。
◎癱瘓風を治す。

湯実大黄湯《東醫寶鑑》
「大黄(酒煨)3銭、羗活1銭半、当帰1銭、枳実5分」水煎し空腹時に服用。
◎湿熱脚気の腫痛を治す。

蕩疝丸《東醫寶鑑》
「黒丑頭末・破故紙・茴香(炒)・川楝子(炒)各1両、莪朮・木香各4両、青皮・陳皮各3銭」作末し酒で梧子大の丸剤。空腹時に50~70丸飲む。
◎気疝を治す。

兜鈴丸《東醫寶鑑》
「馬兜鈴・杏仁・蝉退各1銭、信砒()3銭」作末し棗肉で葵子大の丸剤。就寝時に6~7丸を、冷葱茶湯で飲む。
◎喘促でいびきをかき、眠れない者を治す。

罩胎散(トウタイサン)《東醫寶鑑》
「荷葉(焙)1両、蛤粉5銭」作末し2銭を蜜水で調服する。
◎妊婦が傷寒で大熱を出し、又は痘疹を発して胎を傷つけ、憂いのある者を治す。


倒倉法《東醫寶鑑》
「黄牡牛肥肉15~20斤」を長流水を熱くした中に入れて煮詰める。肉が綿毛のように柔らかくなったら濾過し、その汁を鍋に入れてさらに煮詰める。  琥珀色ののり状になったら出来上がり。これを小さなコップ1杯づつ毎日飲む。or20~30分おきに飲んで吐いたら止める。吐いた後には重湯or自分の小便を少し飲めばよい。
お腹が空いたら淡い粥を飲んで、3日後に他の食物を食べる。
◎疝病と黄病が長引く者。


倒掲散《東醫寶鑑》
大便が不通⇒「大黄1両、杏仁3銭」
小便が不通⇒「大黄3銭、杏仁1両」
◎大小便の不通を治す。


燈心散《東醫寶鑑》
「燈火3~4顆を細研して燈心を煎じた湯で調合して口中に塗り、乳       

◎小児の心臓が乾燥して、夜泣きする者を治す。

燈心竹葉湯《中薬臨床応用》
    =「灯心竹葉湯」
「燈心草3束、淡竹葉9g」水煎服。
◎小児の煩躁

◎夜泣き

騰竜湯[1-1]《本朝経験》
    =「騰龍湯」
「大黄牡丹皮湯蒼朮・薏苡仁・甘草」
◎痔を消し、腫を散ず。
◎此方は《竹中文輔》の家方にて、痔毒を消し、焮痛を治す。
◎睾丸炎に卓効あり。
◎子宮ガンの疼痛。《済世薬室》


騰竜湯[1-2]《本朝経験》《漢方治療の実際》
「大黄1.5、牡丹皮・桃仁・朮各4、芒硝・冬瓜子各5、薏苡仁10、甘草1」


騰竜湯[1-3]《本朝経験》《漢方後世要方解説》
「牡丹皮・桃仁・瓜子仁・蒼朮各4、薏苡仁8、甘草1、大黄1、芒硝2」
       (大黄芒硝は増減する)
◎此方は大黄牡丹皮湯の加減方であるから、熱毒下焦に焮逼して諸症を発するに用いられ、痔毒を消散し、痔痛の甚だしき急迫症状あるときに屡々使用される。
◎その他、下焦の熱毒を目標として痔疾の外、盲腸炎、横痃、肛門周囲炎、睾丸炎、前立腺炎、骨盤腹膜炎等の実証で炎症充血の状ある者に用いる。

「牡丹皮」=消炎性駆瘀血剤、血を和し堅を破る
「桃仁」=消炎性駆瘀血剤、血を破り燥を潤す
「瓜子」=腸を潤し、瘀蓄を破る
「薏苡仁」=癰膿を治し、瘀血を排す。

★適応症及び病名
[1] 睾丸炎
[2]肛門周囲炎
☆本方は大黄牡丹皮湯に薏苡仁、朮、甘草を加えたもので、だいたい同じような場合に使われるが、やや病状が緩慢で、あるいは日数を経過して、慢性に移行する徴候がある場合によい。便通のぐあいによっては、大黄、芒硝を加減する(漢方診療医典)
[3]骨盤腹膜炎
[4]痔核
[5]子宮ガンの初期
[6]前立腺炎
[7]盲腸炎
[8]横痃


 
燙傷散《中薬臨床応用》
「寒水石30g、石膏30g、炉甘石30g」水飛によって細末にし、竜脳3gを加えた微細末を局所に散布する。
◎火傷。

道人開障散《東醫寶鑑》
「蛇退(洗焙)・蝉退・黄連各5銭、甘草2銭、緑豆皮1両」粗末にし毎回2銭を水煎服。
◎障瞖を治す。

導気枳殻丸《東醫寶鑑》
「枳殻(麩炒)・木通(炒)・陳皮・青皮・桑白皮(炙)・蘿葡子(炒)・白丑頭末・黒丑頭末・莪朮()・三稜()・茴香(炒)」各等分に作末し、姜汁糊で梧子大の丸剤。毎回30~50丸を橘皮湯で服用。
◎逆気が高まり、心胸に充満して疼痛を覚える者。

導気除燥湯[1-1]《蘭室秘蔵》《古今方彙》
「茯苓・滑石(炒黄)各2銭、知母(酒洗)・沢瀉各3銭、黄柏(酒洗)4銭」咀嚼し、毎服5銭、水3盞より1盞に至り渣を去りやや熱し、空心に服す。       急閉には時に拘わらず服す。
◎小便閉塞して通ぜざるを治す。乃ち血渋り、気通ぜざるを致し而して竅渋るなり。


導気除燥湯[1-2]《東醫寶鑑》
「赤茯苓1銭半、黄柏1銭2分、滑石・知母・沢瀉各1銭、燈心1銭」水煎し空腹時に服用。
◎小便の不通を治す。


導気湯[1]《東醫寶鑑》
「当帰2銭半、大黄・黄芩・白芍薬各1銭、黄連・木香・檳榔各5分」水煎服。
    ◎下痢・膿血を治す。

導気湯[2]《中薬臨床応用》
「川楝子9g、小茴香5g、呉茱萸5g、木香3g(後下)」水煎服。
    ◎疝痛
    ◎陰嚢水腫
    ◎副睾丸炎
    ◎小腸ヘルニア
    ◎局部の疼痛
    ◎臍部への放散痛

導気湯《医学入門》《古今方彙》
「黄蓍2銭、甘草1銭、青皮1銭、升麻・柴胡・沢瀉・陳皮各5分、五味子20粒、紅花(少許)」水煎温服。
◎「清燥湯」加減なり。
◎両腿麻痺するを治す。

導経丸《東醫寶鑑》
「大黄2両、当帰・川芎・白芍薬・官桂・桃仁・甘草各1両、血竭2銭半、紅花1銭、斑猫・糯米同炒20」作末し、蜜で梧子大の丸剤。酒で30丸飲む。
◎月経が止まり、腰腹が痛む者を治す。

導水丸《東醫寶鑑》
=「蔵用丸」「顕仁丸」
「黒丑頭末・滑石各4両、大黄・黄各2両」作末し水で小豆大に丸め、温水で10~15丸調下。
◎実熱で小便不通。
◎一切の湿営・欝滞を治し、気血を宣通する。

《加減》

*湿熱腰痛・・甘遂(梅雨期)・朴硝(乾期)
*遍身走注して腫痛・・・白芥子、
*気血が閉じて腸胃が秘渋郁李仁
*腰腿が沈重・・・・・・商陸を加える。

導水散《寿世保元》《古今方彙》
「当帰。瞿麦・車前子・滑石・赤茯苓・沢瀉・猪苓・木通・蓮肉・山梔子・黄連・知母・黄柏・甘草・燈心草」水煎。
◎膀胱熱あり、小便閉じて通ぜざる者を治す。

導水湯《本朝経験》
「蒼朮、茯苓、檳榔、木瓜、茅根、猪苓、沢瀉、厚朴」
或いは附子。
◎此方は「導水茯苓湯」の軽症を治す。《勿誤薬室方函口訣》
◎和方に導水、疏水、禹水と称するもの数方あれども、此方最も簡便にして古方に近し。

導水茯苓湯[1-1]《奇効良方》
「茯苓・麦門冬・沢瀉・蒼朮各3両、桑白皮・蘇葉・檳榔・木瓜各1両、大腹皮・橘皮・縮砂・木香各7銭5分、燈心草30枚」
◎水腫遍身爛瓜の如し、喘満し、転側する能わず、溺出ずるに割るが如く絶えて少なし、有りと雖も而も黒豆汁の如きを治す。《勿誤薬室方函口訣》
◎此方は大剤にして濃煎せざれば効なし。《勿誤薬室方函口訣》
◎凡そ水腫を治するに導水茯苓湯は心下悸を以て主となす。もし心下に専ら水気有る者は「実脾飲」に宜し。《先哲医話》


導水茯苓湯[1-2]《奇効良方》《漢方治療の実際》
「茯苓・沢瀉・白朮各3、麦門冬6、桑白皮・蘇葉・大腹皮・縮砂・木香・燈心草各1、檳榔・木瓜各2、陳皮1.5」



導水茯苓湯[1-3]《奇効良方》《漢方後世要方解説》
「茯苓・沢瀉・白朮各3、麦門冬5、桑白皮・蘇葉・大腹皮・縮砂・木香・燈心草各1、檳榔・木瓜各2、陳皮1.5」
◎遍身水腫喘満、小便秘渋、諸薬効無き者これを用うれば即ち癒ゆ。
◎此方は気を順らし、利尿を図り、兼ねて喘満を治する剤で、全身浮腫のネフローゼ、その他水腫に喘を併発せるものに用いて効がある。著しく虚した者には効かない。
 《勿誤薬室方函口訣》に、此方は大剤となして、濃煎せざれば効無しとある。虚実の中間にして日を経て癒えざる水腫爛瓜の如きものに用うという。余はネフローゼにて他方効無く尿量僅少、浮腫貧血甚だしき者に屡々用いて奏功した。《方輿輗》に功を旦夕にもとめず、徐々に用いて癒ゆれば復た発せずとある。
「茯苓・白朮・沢瀉」=陽の利水
「燈心草」=小水を通利し、湿腫を治す。
「檳榔」=気を破り水を逐う。
「蘇葉」=気を下し、腫満を除く
「麦門冬」=水を逐う神品なり。
「大腹皮」=脾を健にし、浮腫を去る。

★適応症及び病名(五十音順)
[1]脚気
[2]水腫:
   ☆腫満
[3]ネフローゼ:
☆全身に浮腫があり、尿量減少する者
☆体力中等度の者。
☆体を転がすことが出来ないほどむくみがひどい者。
[4]腹水
[5]浮腫:
☆心臓弁膜症による浮腫《矢数道明》
☆虚証と実証の中間型の浮腫に用いる漢方で、浮腫がひどいものに用いる。しかし毛孔から水が自然ににじみ出るようなものは虚証であるから、これを用いても効がない。(漢方診療医典)
[6]慢性腎炎:
☆全身に浮腫があり、尿量減少する者





導赤元《東醫寶鑑》
「大黄(炒)1両半、梔子1両2銭、木通・生乾地黄各8分、赤芍薬・赤茯苓・滑石各4銭」作末し蜜で梧子大の丸剤。導赤散の煎じ湯で、空腹時に30~50丸飲む。
◎膀胱に熱があり、小便の不通を治す。

導赤散[1]《万病回春》
「地黄・滑石・木通各8g、甘草4g、灯心草」
◎麻疹すでに出て、譫語・小便閉する者を治す。
◎此方は、心経実熱有りて、或いは声音発せず、言語すること能わず、或いは口眼喎斜、半身不遂する者を治す。
◎此の症、肝風を混じ易し。


導赤散[2]《銀海精微》
「生地黄・木通・山梔子・黄柏・知母・甘草」各等分。粉末にして、毎服16gに竹葉・灯心草を入れて一緒に煎じて、食後服用。

導赤散[3]《東醫寶鑑》
「黄連・黄芩・麦門冬・半夏・地骨皮・茯神・赤芍・木通・生地黄・甘草各5分、生姜5片」
◎心熱を治す。十味導赤散に同じ。     

導赤散[4]《小児薬証直訣》《中薬臨床応用》
「淡竹葉12g、木通12g、生地黄18g、甘草梢6g」水煎服。
◎日射病、熱射病
◎発熱、脱水


導赤湯《東醫寶鑑》
「木通・滑石・黄柏・赤茯苓・地黄(生)・梔子仁・甘草梢各1銭、枳殻・白朮各5分」剉作し、空腹時に水煎服。
◎小便の濁ったのを治す。

導赤飯《東醫寶鑑》
「地黄(生)・木通・甘草各1銭、青竹葉7枚」煎服。
◎小腸熱と小便不利を治す。


導赤地楡散《東醫寶鑑》
「地楡・当帰身(酒洗)各1銭半、赤芍薬(炒)・黄連(酒炒)・黄芩(酒炒)・槐 花(炒)各1銭、阿膠珠・荊芥穂各8分、甘草(炙)5分」水煎し空腹時に服 用。
◎赤痢と血痢を治す。


導滞散《太平聖恵方》
「鶏鳴散[1]《備急千金要方》」に同じ。
◎重物の圧迫、或いは高きより墜下し、熱を作し、吐血、下血止まらず、或いは瘀血内に在り、胸腹脹満し、喘粗気短を治す。兼ねて能く悪血を打去す。《太平聖恵方》


導滞散《東醫寶鑑》
「大黄1両、当帰2銭半、麝香少々を末にし、それぞれ3銭を熱酒で服用。
◎傷損によって内が瘀血し、大便が通ぜず死境に至る者を治す。

導滞通経湯[1]《済世抜粋方》
「木香・白朮・桑白皮・橘皮各5銭、茯苓1両」
◎脾湿餘有り、及び気宣通ぜず、面目手足浮腫するを治す。
◎此方は気閉より来る水気に効あり。《勿誤薬室方函口訣》
◎数日浮腫する者、又久病の者一旦に浮腫する者は、皆気不宣通に係る。此方に宜し。
◎老人や衰弱した人の浮腫にこの症がある《済世薬室》


導滞通経湯[2]《東醫寶鑑》
「赤茯苓・沢瀉各2銭、陳皮・桑白皮・木香・白朮各1銭」水煎服。
◎雨湿による浮腫を治す。


導滞湯《東醫寶鑑》
「白芍薬2銭、当帰・黄芩・黄連各1銭、大黄7分、桂心・木香・檳榔・甘 草各3分」空腹時に水煎服用。
◎下痢・膿血・腹痛を治す。


導痰湯[1-1]《厳氏済生方》《古今方彙》
「半夏4両、天南星・陳皮・茯苓・枳実各1両、甘草半両、生姜」煎服。
◎痰飲にて語渋り、頭目眩暈、或いは胸膈留飲痞塞して通ぜざるを治す。
◎生理不順:
☆湿痰が粘着して経がふさがる:「当帰・川芎・黄連」
【加減方】
「滌痰湯」=「+人参・竹茹・石菖蒲」
「順気導痰湯」=「+香附子・烏薬・沈香・木香」
「袪風導痰湯」=「+羗活・防風・白朮」
「寧神導痰湯」=「+遠志・菖蒲根・黄芩・黄連・朱砂」


導痰湯[1-2]《東醫寶鑑》
「半夏(姜製)2銭、南星(炮)・橘紅・枳殻・赤茯苓・甘草各1銭、姜5片」 水煎服。
◎中風で痰が盛んで言語が渋く、眩暈する者を治す。
◎風痰を治す。

導痰湯《厳氏済生方》《古今方彙》
「半夏2銭、天南星・枳殻・赤茯苓・甘草各1銭、生姜」水煎。
◎風痰湿痰を治す。
◎久嗽にて肺燥熱ある者は:「半夏五味子・杏仁」


導痰湯[2]《済世方》《中医処方解説》
「製半夏9g、製南星9g、陳皮6g、茯苓6g、甘草(炙)3g」水煎服。
◎脳動脈硬化症・脳栓塞・脳梗塞・脳軟化症・精神分裂症・テンカン・痰迷心竅する者。

洞当飲《賀川玄悦=産論》
「柴胡・黄芩・黄連・茯苓・半夏各5分、芍薬1銭、青皮5分、甘草1分、生姜5分」
「小柴胡湯人参大棗黄連・茯苓・芍薬・青皮」
◎吐血、衂血、あるいは卒然として胸痛する者を主治す。
◎此方は賀川子玄の創意のて、血気暴逆を治する方なれども、畢竟は小柴胡湯の症にして、肝気暴逆、あるいは吐血、胸膈拒痛する者を治す。
◎傷寒挟熱下利に用いても宜し。

銅録散《東醫寶鑑》
「五倍子5銭、白礬1銭、乳香・銅緑各5分、軽粉2分半」作末して塗る。
◎男女の陰湿瘡・虫蝕瘡を治す。

撞気阿魏元《東醫寶鑑》
「莪朮(炒)・丁香皮(炒)・陳皮・青皮・川芎・茴香(炒)・甘草各1両、縮砂・桂心・白芷各5銭、阿魏(酒浸一晩)・胡椒各2銭半、生姜4両」を1両入れて一晩置き、炒褐して阿魏の糊で芡実大に丸め朱砂で衣を付ける。3丸づつ姜塩湯で空腹時に服用。
◎一切の気痛を治す。

撞関飲子《東醫寶鑑》
「香附子2銭、烏薬1銭2分、厚朴1銭、縮砂8分、三稜・白豆蔲・甘草各5分、丁香・沈香各3分、姜3」水煎服用。又紫蘇湯に末2銭を入れて調下する。
◎脹満を治す。

都気丸《医宗已任編》《中薬臨床応用》
=「六味丸五味子」
「熟地黄、山茱萸、山薬、沢瀉、牡丹皮、茯苓、五味子」
◎腎虚による呼吸困難、喘息。


都気丸《医方考》
=「加味地黄丸」《丹台玉案》
「六味丸+黄柏・知母・五味子」
◎下消を治す。
◎上中下を分かつなかれ、先ず腎を治むるを以て急となすと。《雑病翼方》


吐血一方[1]《寿世保元》《古今方彙》
「当帰2銭、川芎1銭半、官桂3銭」水煎。
◎吐血止まず、発熱面赤く、胸膈脹満、手足厥冷、煩躁寧からざる者を治す。

吐血一方[2]《済世全書》《古今方彙》
「当帰・芍薬・川芎・生地黄各1銭半、山梔子・貝母・括楼根各1銭、牡丹皮8分、麦門冬8分」水煎。
◎吐血した後に痰を見るを治す。

 

吐血一方[3]《済世全書》《古今方彙》
「知母・貝母・括楼仁・生地黄・麦門冬・芍薬各1銭、山梔子1銭2分、括楼根1銭半」水煎。
◎先に痰を吐し、而して後に血を見るを治す。


土牛膝飲《中薬臨床応用》
「土牛膝根60g」適量つきくだき、等量の湯を加え24時間漬けた後に濾過する。
◎ジフテリア:喉部に噴霧。2時間ごとに20‹内服。


独活葛根湯[1-1]《外台秘要方》
「葛根湯地黄・独活」
◎柔中風、身体疼痛し、四肢緩弱、不随ならんと欲するを療す。
◎産後の柔中風にも用いる。
◎此方は肩背強急して柔中風の証をなす者。
◎痺痛、攣急、悪風、寒ある者に宜し。
◎十味挫散に彷彿として、血虚の候、血熱を挟む者に宜し。《勿誤薬室方函口訣》
◎柔痙、表にある者の治方なり。《雑病翼方》


独活葛根湯[1-2]《外台秘要方》《漢方治療の実際》
「葛根・地黄各5、麻黄・大棗・生姜・独活・甘草各2、桂枝3、芍薬3」


独活葛根湯[1-3]《外台秘要方》《漢方後世要方解説》
「葛根5、桂枝・芍薬各3、麻黄・独活・生姜各2、地黄4、大棗・甘草各1」

「柔風」とは、

血気ともに虚し、風邪並に入り、四肢収ることあたわず、裏急して仰ぐこと能わざるなり《諸病源候論》
◎此方は葛根湯に地黄と独活を加えたものであるが、柔中風の症、血虚に外感を兼ね、肩背強急し、身体疼痛、四肢不随する者に用いられる。
又、臂痛攣急して悪風寒ある場合にも効がある。四十腕、五十肩と称するものに転じて頻用される。
十味挫散は血虚寒の場合に用い、此方は血虚に血熱を挟むものによい。
「地黄」=血を生じ、湿熱を清くす。
「独活」=諸風を除き、両脚の湿痺を治し、頭頂舒び難きを療す。

四十肩
     五十肩
     脳溢血:肩背拘急する者
四肢疼痛する者



独活寄生湯[1-1]《備急千金要方》
「独活・桑寄生・秦芁・防風・細辛・当帰・芍薬・川芎・熟地・杜仲・牛膝・人参・茯苓・甘草・桂心」

独活寄生湯[1-2]《備急千金要方》《中薬臨床応用》
「独活6g、桑寄生12g、防風6g、秦芁9g、杜仲9g、細辛3g、当帰9g、党参12g、熟地黄15g、茯苓9g、白芍薬12g、牛膝9g、川芎6g、肉桂末1.5g(沖服)、甘草3g」水煎服。
◎風湿による痺痛
◎項背部の筋肉が痺痛
◎背部~腰部~臀部がだる痛い
◎両足のしびれ(遊走性のシビレと痛み)
     めまい
 

独活寄生湯[1-3]《和剤局方》《古今方彙》
「独活3両、桑寄生・牛膝・杜仲(酒)・秦芁・細辛・桂心・川芎・白芍薬(酒)・茯苓・人参・当帰・防風・熟地黄・甘草各2両、生姜」水煎、空心に温服。
◎腎気虚弱、湿地に冷臥し、腰背拘急、筋攣骨痛、風に当たり、涼を過度に取り、風邪が脚膝に流入して偏枯となり、冷痺緩弱、疼痛牽引、脚重く行歩難し並びに白虎歴節風の痛みを治す。


独活寄生湯[1-4]《東醫寶鑑》
「独活・当帰・白芍薬・桑寄生各7分、熟地黄・川芎・人参・白茯苓・牛膝・杜仲・秦芁・細辛・防風・肉桂各5分、甘草3分、姜3」水煎し空腹に服用。
◎肝腎が虚弱し、筋骨がケイレンして痛み、脚膝が緩弱する者を治す。

独活散[1]《袖珍方》《東醫寶鑑》
「独活・羗活・川芎・防風各1銭6分、地黄(生)・荊芥・薄荷各1銭、細辛7 分」水煎服。
◎陽明風熱のために歯根が浮いて痛む者を治す。
◎風毒(風邪を熱の内に包み含みて発散せざること出物の毒のこもる)攻め注ぎ、     牙腫痛するを治す。


独活散[2]《東醫寶鑑》
「当帰・連翹各1銭半、羗活・独活・防風・沢瀉・肉桂各1銭、防已・黄柏・大黄・甘草各5分、桃仁(留尖)9粒」酒水各半分づつで煎じて、空腹時に服用。
◎労役腰痛を治す。


独活湯[1-1]《医学入門》《古今方彙》
「独活・羗活・防風・肉桂・大黄・沢瀉各9分、当帰・桃仁・連翹各1銭半、防已・黄柏各3銭、甘草(炙)6分」酒水煎服。
◎労役して腰痛し折れるが如く沈重山の如きを治す。

独活湯[1-2]《医学入門》《漢方治療の実際》
「独活・羗活・防風・桂枝・大黄・沢瀉各2、当帰・桃仁・連翹各3、防已・黄柏各5、甘草1.5」


独活湯[2]《東醫寶鑑》
「独活・羗活・人参・前胡・細辛・半夏・沙参・五味子・白茯苓・酸棗仁(炒)・甘草各7分、棗3片、烏梅1箇」水煎服。
◎神魂の不安・驚悸不安・不眠症。


独脚金糖冬瓜湯《中薬臨床応用》
「独脚金9g、糖冬瓜12g」2杯の水で1杯まで煎じ、2回に分服。
◎小児の疳積
◎いらいら、怒りっぽい、よく泣く、夜間に安眠しない、食欲がない、下痢する、微熱、やせる。
    

独虎散《東醫寶鑑》
「五倍子半両、水3杯で半分まで煎じ、「焔硝・荊芥各1銭」を入れ熱いうちに洗って五倍子末を塗る。
◎脱肛を治す。

独勝丸《東醫寶鑑》
=「大補丸」
「黄柏8両」切って人乳にかき混ぜて晒し乾燥、又は、塩水で炒褐作末し、水で梧子大の丸剤。空腹時に塩湯で100丸飲む。
◎耳鳴りでつんぼになる者を治す。

独勝散[1]《東醫寶鑑》
「甘草(大節)黄油につける。日がたてば立つほど良い。囓って呑み込むor水煎服。◎蠱毒・薬毒・虫蛇の諸毒を治す。

 

独勝散[2]《東醫寶鑑》
「五倍子・白礬枯」各等分。ツバで臍に塗り込み、包帯しておくと、すぐ治る。
◎自汗・盗汗を治す。

独参湯[1-1]《景岳全書》
「人参」を清水で濃煎して頓服。
(分量は人により、証により定める)

 

独参湯[1-2]《景岳全書》《中薬臨床応用》
「吉林参30g」随時に煎じて頻回に服用。
◎出血が止まらない為に末梢循環不全をきたし、顔面蒼白、呼吸が早く微弱。

独参湯[1-3]《東醫寶鑑》
「人参(大)2両」剉作1貼し、「棗5枚」を入れ煎服。
◎虚労による吐血を治す。
◎痩せて弱い者を治す。

独参湯[1-4]《景岳全書》《漢方治療の実際》
      「人参8」


独参湯[1-5]《東醫寶鑑》
=「奪命散」
「人参1両」水2升を銀石器で煎じ、1升ぐらいになったら滓を去り、新水に漬けて放置して、冷ました後、全部1回に飲むと鼻梁より汗が出ながら治る。
◎傷寒壊症で、昏睡して死にかかる者。
◎陰陽二経がはっきりしない症。    
◎誤治による症。
◎一切の危急な者。


独参湯[1-6]《丹渓心法》《古今方彙》
「人参」多少に拘わらず濃煎し以て進む。
◎卒中には急いで此の湯を用いて元気を扶く可し。
【加減方】
<1>手足冷え、脉沈伏する者:「附子」=「参附湯」
<2>痰を挟めば:「竹瀝・姜汁」。

独参湯[1-7]《薛立斎十六種》《古今方彙》
「人参2両」水煎。
蓋し人参は性寒なるが故に姜が之を佐く。如し応ぜざれば急に「参附湯」を用う。
◎元気虚弱、悪寒発熱、或いは渇をなし、煩躁、痰喘気促、或いは気虚卒中、語らず口禁し、或いは痰涎上湧くし、手足逆冷し、或いは婦人難産して産後醒めずに喘急する等の症を治す。《済世全書》
◎一切の失血にて悪寒発熱、渇を作して煩躁し、或いは口禁痰鳴、自汗盗汗、或いは気虚し、脉沈、手足逆冷するを治す《済世全書》

独参湯[1-8]《済世全書》《古今方彙》
「人参1両」水煎。
◎産後、血暈にて人事を省みざる者を治す。
◎身熱し気急の者:「童便」
◎身寒え気弱い者:「附子」

独醒湯
「柑子皮を焙って末にし、塩を少し入れて作末して沸湯で1銭を点服する。独醒湯という。」
◎酒毒と酒渇を治し、酔いを醒ます。

独聖散《医方集解》
「白」
◎長年咳嗽する肺痿・喀血紅痰。

独聖散《東醫寶鑑》
「縮砂」弱火で炒って皮を去り、作末し毎回2銭を熱酒で調下する。
◎墜落によって胎が動き、頭痛する者を治す。

独聖散[3-1]《東醫寶鑑》
「風蔕(炒黄)」作末し、5分づつ服用。病の重い者には1銭を熟水に調下し、もし吐かなければ再び飲めば吐く。
◎吐剤。
◎全ての風、すべての癇疾と痰涎が溢出する症を治す。

独聖散[3-2]《東醫寶鑑》
「薬末2銭と茶末1銭を酸薺汁で調下し、吐くのを限度とする。
◎吐剤。
◎全ての風、すべての癇疾と痰涎が溢出する症を治す。


独聖散《東醫寶鑑》
「風蔕・欝金」各等分、作末し、毎1銭~2銭を酸薺汁で調下し、羽で探吐する。
◎吐剤。
◎痰涎が胸につかえたとき。

独聖散
「五味子」赤砂糖で服用。
◎産後の瘀血、後陣痛に。

独歩丸【中成薬】=独活寄生湯《備急千金要方》
      

禿鶏散《洞玄子》
「肉蓯蓉・五味子・兎絲子・遠志各3分、蛇床子4分」をついて篩いにかけ、粉末にする。空腹時に、酒で1寸大の匙に1杯を飲む。


禿癬散《漢方治療の実際》
「雄黄2、硫黄4、胆礬1、大黄3」
以上を作末し、酢で泥状にして患部に擦り込む。


杜続丸《東醫寶鑑》
「杜仲(炒)・続断各2両」作末し棗肉で梧子大の丸剤。米飲で50~70丸飲む。
◎胎動不安に。


杜仲丸《証治準縄》
「杜仲・続断・棗肉」
◎腎虚による胎動不安に。


杜中湯《百々漢陰》
「杜仲、独活、生地黄、川芎、当帰、丹参、五加皮、木通、木香」
◎腰脚髀膝の酸疼を治す。



菟絲子丸《厳氏済生方》
「菟絲子、五味子、牡蛎、肉蓯蓉、附子、鶏内金、鹿茸、桑螵蛸、益智仁、烏薬、山薬」


菟絲子丸《中薬臨床応用》
「菟絲子・五味子・細辛・沢瀉各30g、茺蔚子・熟地黄各60g、山薬45g」丸剤として毎回6g服用。
◎腎虚で衰弱
◎遺精、早漏
◎背中がだるい

屠蘇飲《東醫寶鑑》
「白朮1両8銭、大黄・桔梗・川椒・桂心各1両半、虎杖根1両2銭、川烏6銭」切って絳嚢に入れ、12月晦日に井戸に入れておいて、正月朔日の早朝に引き出して、清酒2升、と二度ぐらい煎じ、老若男女を問わず、東を向いて1杯ずつ飲んで、滓は井戸に入れて、毎日その井戸水を汲んで飲む。
◎瘟気を予防し、伝染しない。


兎脳丸《東醫寶鑑》
「兎脳髄(朧月の)1枚、鼠内腎1部、母丁香・益母草各1銭、乳香2銭半、麝香2部半」作末し兎脳髄で芡実大の丸剤。朱砂で衣を付け油紙でくるみ、陰干しにして毎回1丸を醋湯で飲む。
◎難産で血が乾く者。

塗臍膏《東醫寶鑑》
「地竜(生研)・猪苓・甘遂・鍼砂各5銭」作末して葱涎を搗いて膏を作り、臍に1寸ぐらい貼って絹帙でまき、小便が出るのを限度とする。
◎水腫により小便が少ない者を治す。


怒傷散
「香附子・甘草各1両」作末し、毎回3銭づつ白湯で温服。
◎怒りを治す。

土骨皮湯[1]《本朝経験》
「土骨皮・忍冬各2銭、防風・大黄各8銭、羗活・桂枝各3銭、甘草2分」
◎諸毒肌表に在り、将に発せんとするを治す。

土骨皮湯[2]《本朝経験》
「土骨皮・忍冬各2銭、防風・大黄各8銭、川芎、荊芥、甘草2分」
◎瘡表に在り、将に発せんとし、骨節疼痛する者
◎小児手足の瘡を治す。


土骨皮湯[3]《本朝経験》
「土骨皮・紅花・甘草・柴胡・莪朮」
◎頭瘡を治す。
◎此方は、頭瘡の証、諸下剤を用いて効なき者を治す。
◎土骨皮、一名撲樕能く発表す。故に頭瘡、骨痛を治す。
◎頑瘡起発の勢いなき者に宜し。《勿誤薬室方函口訣》
◎頭瘡、発熱、悪寒の表症あれば葛根湯反鼻にて発汗すべし。


土茯苓湯《張景岳》
「土茯苓80~90g」清水3杯を2杯になるまで煎じ、随時、徐々に服用。

 

豚胃丸《東醫寶鑑》
「槐花2両、黄連・牡丹皮核両、猬皮7銭、羗活6銭」剉作し猪肚内に入れてくくり、煮た後、薬を去り肚を食べる。
◎痔瘻・諸痔を治す。

呑酸一方《万病回春》《古今方彙》
「蒼朮(壁土炒)・白朮・陳皮・茯苓・滑石(炒)」水煎温服。
◎清水を吐するを治す。


撑里湯《聖済総録》
「乳香、真緑豆粉」


頓嗽湯《漢方治療の実際》
「柴胡5、桔梗・黄芩・桑白皮各2.5、梔子・甘草各1、石膏5」
◎百日咳