「は」漢方処方


肺疳方《提耳談》
「通草、半夏、檳榔、桔梗、木香、丁香、防已、猪苓、沢瀉」
◎胸水を治す。
◎此方は北尾春甫の経験に出で、小児疳水、肺部に属する者を治す。これより運用して、大人肺部に属する水気を治す。
◎支飲の候あれば「苓甘姜味辛夏仁黄湯」を主とす。もし虚候あれば此方が宜しきなり。《勿誤薬室方函口訣》
◎肺疳、咳嗽、面目浮腫、小便数に鳩尾の右傍に塊ある者。《方読便覧》


#肺傷湯《千金翼方》
「人参・炮姜・桂枝各2両、阿膠・紫各1両、地黄4両、葱白・飴糖各1斤」
◎此方は肺痿の主方にて、炙甘草湯桔梗のゆく所とよく似たり。ただし、此方は、咳嗽甚だしく咳血止まず、臥するを得ざる者を主とする。
◎炙甘草湯+桔梗は、動悸甚だしく、労嗽行動すること能はざる者を主とする。


#肺熱咳血方《中薬臨床応用》
「藕節30g、生地黄5g、茜草炭9g、阿膠9g(溶解)、川貝母9g、杏仁9g、甘草3g」水煎服。
◎鼻出血


#肺風丸《東醫寶鑑》
「細辛・旋覆花・羗活各2両、晩蚕蛾(炙)、苦参各1銭を作末して、やわらかい飯で梧子大の丸剤、食後茶清で50~70丸服用する。
◎面鼻の風とを治す。


#排風湯《和剤局方》《古今方彙》
「白朮・肉桂・白鮮皮・川芎・虚任・芍薬・甘草・防風・当帰各2両、茯苓・麻黄・独活各3両、生姜」煎服。
◎男婦、中風及び風虚冷湿にて邪気は五臓に入り人をして狂言妄語、精神錯乱以て手足不仁、痰涎壅盛せしむ。
◎此湯は心を安んじ、志を定め、耳を聡くし、目を明らかにし、大いに栄血を理し、肝邪を去る。服せば微汗あり。妨げず。



肺廱湯《原南陽》《勿誤薬室方函口訣》
「桔梗6分、杏仁4分、栝楼根5分、白芥子3分、貝母5分、黄芩・甘草各6分」
《医事小言》には、黄芩なく、生姜2分あり。
◎咳唾腥臭、口膿を吐き、あるいは米粒の如く、脇肋間隠痛し、あるいは背に徹し、声枯れ、気急し、臥す能わざる者を治す。
◎此方は《原南陽》の創意にして、肺癰初起に用いて特効あり。
◎もし寒熱胸痛甚だしい者は、柴胡枳桔湯子を用いて清解の後、此方を与えるべし。臭膿多き者は獺肝散を兼用すべし。
◎新産蓐婦、停食する者、ややもすれば肺廱湯の証を発す。又、肺癰も多くが半産乳後に発す。その人停食ある者、尤も此湯の宜ぎき所なり。


#肺廱湯《原南陽》《龍野ー漢方処方集》
「桔梗・黄芩各3.0g、杏仁・貝母・栝楼根各4.0g、白芥子・甘草各2.0g」
◎肺壊疽、肺膿瘍等で咳唾腥臭、膿或いは米粒の如きものを吐し、脇肋間隠痛し、或いは背に放散し、声枯れ息せわしく臥すことができぬ者。




#肺廱神湯《医宗必読》
「桔梗・金銀花・黄蓍・白芨・薏苡仁・甘草・橘皮・貝母・子・生姜」
◎未だ成らざれば即ち消し、已に成うは即ち潰え、已に潰えるは即ち癒える。
◎此方は肺癰湯を用いて効無く、虚憊咳血止まざる者に用いる。
◎もし一等虚脱すれば→「桔梗湯《外台秘要方》」or「八宝散《丹台玉案》」


#排雲湯《山脇東洋》
「黄連・黄芩・細辛・大黄・甘草各2分、車前子2匁」
◎風眼(流行性結膜炎)を治す。
◎逆気上衝し、眼中血熱あり、あるいは翳を生じる。
◎此方はもと風眼の薬なれども、風眼には、先ず「大青竜湯車前子」にて発汗し、後に、「紫円」を用いて峻下すべし。それ以後は、熱の軽重を詳細にし、「加減涼膈散」もしくは「排雲湯」を与える。《勿誤薬室方函口訣》


#排石湯《遵義医学院方》《中薬臨床応用》
「金銭草30g、黄芩9g、大黄6g、枳殻9g、川楝子9g、木香9g」水煎服。
◎尿路結石。

 


#排風湯《和剤局方》
「白朮・肉桂・鮮皮・川芎・杏仁・芍薬・甘草・防風・当帰各2両、茯苓・麻黄・独活各3両、生姜」煎じ温服。
◎男婦中風及び風虚冷湿にて邪気は五臓に入り人をして狂言妄語、精神錯乱以て手足不仁、痰涎壅盛せしむ、此湯は心を安んじ、志を定め、耳を聡くし、目を明らかにし、大いに栄血を理し、肝邪を去る。服でば微汗あり、妨げず。


#排膿散[1-1]《金匱要略》
「枳実16枚、芍薬6分、桔梗2分」
右三味、杵為散、取子黄一枚、以薬散與黄相等、揉和令相得、飲和服之、日一服。


#排膿散[1-2]《金匱要略》《龍野ー漢方処方集》
「枳実10、芍薬6、桔梗2」
右の割合で散剤とし1回量2.0gを鶏卵黄に混和し温湯で1日1回服用。


#排膿散[1-3]《金匱要略》《漢方治療の実際》
「枳実・芍薬各3、桔梗1.5」
以上を細末とし、1回3.0に卵黄1個を加えて、よくかき混ぜて飲む。1日2回。
◎瘡家、胸腹拘満し、あるいは粘痰を吐し、あるいは便膿血なるを治す。《吉益東洞》
◎フルンケル、カルブンケル、皮下膿瘍等の化膿症のしこって痛み排膿し難き者。
◎排膿を主とする。この方は、排膿にもっぱらにして、その効が迅速である。、乳房炎、リンパ腺炎などで、膿を排除する目的に頓服する《大塚敬節》
◎排膿後は、千金内托散などを用い、また紫雲膏を外用する《大塚敬節》
◎煎じて呑んでも良いが、散として卵黄で飲むと良く効く《大塚敬節》


#排膿散[2]《外科正宗》《古今方彙》
「黄蓍・当帰・金銀花・白・穿山甲・防風・川・括楼仁各1銭」水煎、食前に服用。
◎腸癰にて小腹脹痛し、脉滑数、裏急後重時々膿を下すを治す。


#排膿湯[1-1]《金匱要略》
「甘草2両、桔梗3両、生姜1両、大棗10枚」
右四味、以水三升、煮取一升、温服五合、日再服。
◎排膿散は証闕く。桔梗を以て君薬とするもの、名づけて排膿とす。排膿湯の証闕くと雖も、しかも桔梗湯之を観れば、則ちその主治明らかなり。桔梗湯証に曰く、濁唾・腥臭・を出し、久久にして膿を吐すと。仲景曰く、咽痛の者は[甘草湯]を与ふべし。差えざる者は桔梗湯を与ふと。是れ乃ち甘草は、その毒の急迫を緩むなり。しかして濁唾・吐膿は甘草の主るところにあらず。故にその差えざる者は、乃ち桔梗を加ふるなり。是れに由って之を観るに、腫痛急迫すれば則ち[桔梗湯]。濁唾・吐膿多ければ則ち[排膿湯]《薬徴》


排膿湯[1-2]《金匱要略》《龍野ー漢方処方集》
「甘草2.0g、桔梗3.0g、生姜1.0g、大棗2.5g」
水120ccを以て煮て40ccに煮詰め2回に分服。


排膿湯[1-3]《金匱要略》《漢方治療の実際》
「甘草・桔梗・生姜各3、大棗6」
◎カルブンケル、フルンケル、潰瘍、中耳炎、蓄膿症、痔瘻等で痛み激しき者。
◎既に口が開き膿が出ている者。
◎腫れて軟らかく或いは中央が凹んでいる者。
◎諸瘍膿血あり、あるいは粘痰を吐きて急迫する者を治す《吉益東洞》
◎“排膿湯、排膿散の二方はその証闕(ケツ、かける)くと雖も桔梗白散、桔梗湯の二方を以て之を参観する時はその主治断然として晰(あきら)かなり、桔梗白散の証に時に濁唾腥臭を出し久々として吐膿し、寒米粥の如き者は肺癰と為すと曰う。桔梗湯の証に咽痛する者は甘草湯を与うべし。差えざる者は桔梗湯を与うと曰う。是れ甘草湯は唯毒の急迫して痛むを緩めるのみ、若しその差えざる者は已に膿成るなり、故に桔梗湯を用う。是に由って之を観れば、膿血粘痰を吐し、胸膈攣痛急迫する者は排膿湯之を主り、胸腹拘満して痛み或いは膿血を下す者は排膿湯之を主る。《金匱要略》肺癰門に、咳して胸満、振寒脈数、咽乾き渇せず、時に濁唾腥臭を出し、久々として濃痰を吐し、寒(ひやや)かにして米粥の如き者は肺癰と為し桔梗湯之を主ると曰う”《重校薬徴》
◎排膿散を用いる前に、これを使用する機会がある《大塚敬節》
排膿散では患部が半球状に隆起して硬くなっているのを目標とするが、排膿湯は、まだ著しい隆起が起こらない初期に用いる。《大塚敬節》


#排膿散及湯《華岡青州》《龍野ー漢方処方集》
「桔梗4.0g、甘草・大棗・芍薬・生姜・枳実各3.0g」
◎局所症状だけで全身症状なき化膿症。
◎此方は諸瘡瘍を排撻する効尤も捷なり。《勿誤薬室方函口訣》
◎《吉益東洞》浅田宗伯等は排膿散に排膿湯を合して用いたが、私は合して用いたことはない《大塚敬節》

★適応症及び病名(排膿散及湯)
[2]アレルギー性鼻炎
[3]アンギナ
[4]咽痛
[5]悪露残留
[6]カルブンケル
[7]咳嗽
[8]潰瘍
[9]化膿症
☆慢性の化膿症→「十味敗毒湯」《矢野》
☆少し弱った者→「托裏消毒飲」《矢野》
☆さらに虚弱で薄い膿が出て治らない→「千金内托散」
[10]筋炎
[11]口臭
[12]肛門周囲炎
[13]歯周炎
[14]歯槽膿漏
[15]上顎洞化膿症
[16]痔瘻
[17]蓄膿症
[18]中耳炎
[19]乳腺炎
[20]肺壊疽
[21]肺膿瘍
☆「桔梗白散」《方読便覧》
[22]furunculus (フルンケル)
[23]皮下膿瘍
[24]扁桃炎
[25]面疔
[26]ものもらい
   



#敗毒散《香川修徳》
「柴胡5分、独活5分、桔梗3分、茯苓3分、生姜3分、川芎2分、枳実2 分、甘草1分」
◎痛痺、風毒、瘟疫の類、一切の眼疾、咽痛、一切の瘡腫、疥癬を治す。
◎此方は香川秀菴子、人参敗毒散《和剤局方》を刪訂したるものにて、人参敗毒 散の場合へ用ゆべし。後の十味敗毒湯は後世の荊防敗毒散の場合なり。
◎風毒、痛常処ありて、赤腫熱し、あるいは渾身壮熱ありて、膿未だ成らざる 者。
◎痛痺:「桂枝、石膏(大)」《雑病翼方》
◎鼠毒:「黄山梔子」《方読便覧》


#髪灰丸《東醫寶鑑》
「髪灰・側柏葉汁・糯米粉各等分」梧子大の丸剤。白湯で50丸服用。
◎尿血を治す。


#髪灰散《東醫寶鑑》
「髪を焼いて作末したもの毎2銭を醋2合に湯を少しまぜて服用する。
◎尿血を治す。



佩蘭芩朴湯《中薬臨床応用》
「佩蘭9g、黄芩6g、厚朴6g、野菊花9g、白朮9g、葛根12g、秦芁5g、桔 梗6g」水煎服。
◎夏期の感冒

◎発熱、頭痛

◎全身関節痛

◎両眼の刺痛

◎胸が苦しい

◎大便がすっきり出ない。


#貝母栝楼散《医学心悟》《中薬臨床応用》
「浙貝母5g、栝楼皮9g、天花粉2.5g、茯苓9g、橘紅2.5g、桔梗3g」水煎服。
◎風熱による咳嗽
◎粘稠な痰
◎咽乾
◎痰が出そうで出なくすっきりしない。

#貝母栝楼湯《古今医鑑》《古今方彙》
「貝母・栝楼仁・天南星・荊芥・防風・羗活・威霊仙・黄柏・黄芩・黄連・ 白朮・陳皮・肉桂・半夏・括楼根・甘草各等分、生姜」水煎し夜に至りて 服す。
◎肥人の中風にて、口眼喎斜・麻木するを治す。


#貝母散[1]《東醫寶鑑》
「知母・貝母各1両、巴豆10粒」作末し、姜3片を囓って白湯で飲み下し て寝ると嗽が収まり、咳が止まる。      
◎熱嗽と痰喘を治す。


#貝母散[2]《東醫寶鑑》
「杏仁3銭、款冬花2銭、知母1銭半、貝母・桑白皮・五味子・甘草各1銭、 姜3片」水煎服。
◎火嗽と久嗽を治す。

貝母散《証治準縄》
「杏仁、貝母、麦門冬、款冬花、紫苑」


#《東醫寶鑑》
「貝母(姜製)・乾生姜・五味子・陳皮・半夏(製)・柴胡・桂心各5銭、黄芩 ・桑白皮各2銭半、木香・甘草各1銭2分半」粗末にし、毎回5銭に、「杏 仁(製)7個、生姜7片」を入れて水煎服。
◎諸般の咳を治す。

貝母瓜蒂散
「貝母・瓜蒂・花粉・茯苓・橘紅・桔梗」


梅花丸


梅花湯《東醫寶鑑》
「糯殻(糯=ダ、もちごめ)を炒って作暴し・桑根白皮の厚いのを細切り各5銭」水煎し、渇くごとに飲む。
◎三消渇を治す特効薬。


梅肉丸《吉益東洞》
「梅肉(焼存性)・梔子(焼存性)各1銭半、巴豆・軽粉各7分」4味。細末にし混和し搗いて、千下す。
◎諸悪瘡毒、疳瘡、その他の無名の頑固な瘡、悉く之を療す。
◎黴毒、便毒、疥癬、沈痼の内攻の証を治す。
◎「+滑石」=「竜門丸」《華岡青州》

梅肉散《古方兼用丸散方》
「軽粉・巴豆各4.0、乾梅肉(黒焼)・山梔子(黒焼)各8.0」
右四味、各別に細末し、合して散となす。若し散服する能はざる者は、糊丸に為すも亦佳なり。通常、1回、0.4~0.8を温湯にて服用。
◎悪毒解し難き者を治す。
◎一方を見るに、曰く、諸々の悪瘡、結毒、及び下疳瘡の者を治す。云々


梅肉霜散《東洞家塾方》
「梅甜霜(塩蔵)・梔子霜各5分5厘、巴豆・軽粉各2分5厘」
右4味、別に研り巴豆の泥をつくり3味を内れ散と為して、毎服2分、或いは3分、病重き者は服して1銭に至る。熱湯にて之を送下す。
◎諸悪瘡、結毒及び下疳瘡を治す。

破欝丹《東醫寶鑑》
「香附子(醋煮)・梔子仁(炒)各4両、黄連(姜汁炒)2両、枳殻・檳榔・莪朮 ・青皮・瓜蔞仁・紫蘇子各1両」作末し水で梧子大の丸剤。30~50丸飲 む。
◎婦人の噫気で胸が緊迫し、連発しても噫気がすっきり出ず、心臓のあたりが苦 しくなる者を治す。


破棺湯[1]《本朝経験》
「桃仁、杏仁、桑白皮」
◎膈噎を治す。
◎膈噎よりは、痰飲家咳喘して咽痛する者に効あり。《勿誤薬室方函口訣》
◎破棺は、咽喉を透達する意味なり。
◎瘡瘍の破棺湯は調胃承気湯のことなり。《勿誤薬室方函口訣》
◎胃、血燥し潤わず、便閉塞して食下らざる者:此方を服し、瘀血を吐して治癒する。
◎纒喉風、あるいは咽腐爛する者を治す。《生々堂》
◎膈噎を治す、案ずるに瘀血に属する者効あり。《方読便覧》
◎膈症、吐血して癒ゆること、たまにある。

破棺湯[2]《東醫寶鑑》
「人糞」乾燥したものを(焼存性)して水に漬け、汁1~2盞を飲めばすぐ甦生する。野人乾水とも言う。
<別法>人糞を細研して、新汲水3銭で調下する。
◎傷寒熱病で、発狂・言語不定・人事不省を治す。

破血散疼湯《東醫寶鑑》
「水蛭(炒)3銭煙が無くなるまで、連翹・当帰・柴胡各2銭、蘇木1銭半、羗活・防風・桂心各1銭、麝香5分」細研し作2貼し、酒2杯・水1杯で煎じて1杯になったら滓を去り、水蛭・麝香末で調合して、空腹時に服用。
◎墜落損傷で腰脊から悪血が脇下にとまり、痛んで寝返りもうてない。

破血消痛湯《東醫寶鑑》
「水蛭(炒末)3銭、柴胡・連翹・当帰梢各2銭、蘇木1銭半、羗活・防風・桂皮各1銭、麝香少し」水蛭と麝香を除いて、切って1貼にし、酒と水を半々に煎じて滓を去り、蛭と麝香の末を入れて空腹時に服用。
◎墜落による傷損で、悪血が内臓に流入して、疼痛に堪えられない者。

破血丹《東醫寶鑑》
「天花粉3両、赤芍薬2両、薑黄・白各1両」作末し少しずつ粉を塗る。or蜜で調合して貼る。
◎刀で舌を切ったとき、卵の中の白軟皮を舌の傷ついたところをくるんで、[破血丹]を蜜で調合して舌根に塗ると出血が止まる。
    

破結丹《東醫寶鑑》
「辰砂・青礞石・子・肉豆蔲・木香・桂心・附子・巴豆・黒丑頭末各5銭、軽粉半分、麝香5分、金箔5片」作末し「米醋半杯に辰砂・附子・黒丑」3味を入れて、煮て膏を作り、余った葉を入れて角子大の丸剤。軽粉で衣をつけ、毎回2丸を蜜湯で飲む。
◎陰陽毒の結胸に使う。

破積導飲丸《東醫寶鑑》
「木香・檳榔・陳皮・青皮・枳実・枳殻・莪朮・三稜・半夏・神麹・麦芽・茯苓・乾姜・沢瀉・甘草各5銭、白丑頭末6銭、巴豆(皮心膜油を去る)30粒」作末し姜汁糊で梧子大の丸剤。姜湯で30~50丸飲む。
◎水積・痰飲積を治す。

破痰消飲元《東醫寶鑑》
「青皮・陳皮・三稜(炮)・莪朮(炮)・良姜()・乾姜(炮)・草果()・各1両」作末し水麺糊で梧子大の丸剤。陰干しにし姜湯で50丸飲む。
◎一切の痰飲を治す。


破敵膏《漢方治療の実際》
「青蛇膏左突膏」各等分に混和したもの。


白雲膏《漢方治療の実際》
「ゴマ油1000‹、白380g、鉛白300g、ヤシ油7.5g、軽粉7.5g、樟脳7.5g」
先ず、ゴマ油を煮て水分を蒸発させ、次に白を入れ、全く溶解させて布で濾し、熱い中にヤシ油・軽粉・樟脳を入れて良くかき混ぜ、少し冷ましてから鉛白を徐々に膏内に投入し、たえずかき混ぜ、やや凝固して白壁の色を程度とする。

 

白鳳膏《東醫寶鑑》
「白鴨(黒嘴)1、大棗3升、参苓平胃散末1升」陳煮酒を患者の酒量によって鴨の頭頂を割って血を酒に垂らし、かき混ぜて飲むと良く、すぐ鴨の毛を抜いて、内臓を取り出して中を乾かした後、棗の実を抜いてその中に、参苓平胃散末を入れてそれを鴨の腹中に入れて、麻の紐で結び、酒と缶に入れて煮ると、酒が煮詰まり、乾いたら又酒を入れること3回、煮詰まったら鴨肉を食べ、棗子は別に陰干しにして任意に食べるが、参湯で調服し、つづけて補髄丹を食べる。
◎虚労の肺痿と嗽血を治す。



白黄散《東醫寶鑑》
「白礬・雄黄・細辛・瓜蒂」各等分。作末し雄犬胆汁で丸め、綿で包んで鼻の中に入れる。
◎鼻齆・肉・鼻痔を治す。(齆=オウ、鼻づまり)

 

白芥子散《東醫寶鑑》
「白芥子・木鱉子各1両、木香・玩薬・桂心各2銭半」作末し毎回1銭を、温酒で調服。
◎七情が欝結して栄衛が凝滞し、肩・臂・背・胛がつっぱり痛む者。

白果定喘湯
「白果・黄芩・杏仁・桑白皮・紫蘇子・甘草・麻黄・半夏・款冬花」

白花蛇酒《中薬臨床応用》
「白花蛇(乾燥)90g、羗活30g、防風30g、秦芁30g、当帰30g、五加皮30g天麻24g」1.5~4.5の焼酎の1ヶ月ぐらい浸けて、毎夕食後15~30ccづつ服用。
◎風湿による関節痛
◎筋肉の麻痺
◎運動障害


白芨散《臨床常用中薬手冊》
「三七、白芨」

白芨湯《高階枳園》
「桔梗、甘草、白芨、桑白皮」
◎久咳止まず、唾血赤線を引き、或いは点斑をなす者は、肺損に属す。外候軽きに似たりと雖も最も難治となす《先哲医話》

白芨湯《臨床常用中薬手冊》
「白芨、貝母、百合、薏苡仁、茯苓」


白芨枇杷丸《証治準縄》
「白芨、枇杷葉、蛤蚧、阿膠、生地黄」



白金丸《成方便読》
「明礬・欝金・薄荷」
◎気狂い・失神・痰の怪症。

白金丸《医方考》
「欝金、明礬」


白金丸《古験方》《中薬臨床応用》
「明礬30g、欝金30g」細末にし小麦粉で丸剤。1日3回、9gづつ湯で服用。
菖蒲9gの煎湯に生姜汁数滴加えたもので服用しても良い。
◎精神分裂症の狂躁状態
◎テンカンで、胸苦しい、よだれが多い。

白金丸加味《中薬臨床応用》
「白金丸《古験方》+菖蒲、天南星、朱砂、丹参」
◎白金丸に同じ。


白降丸《東醫寶鑑》
「酸棗仁(炒)・白朮・人参・白茯苓・破故紙・益智仁・茴香・牡蠣()」各等分。作末し塩少々入れて梧子大の丸剤。空腹時に温酒or米飲で30丸づつ服用。


白降雪散《医宗金鑑》
「石膏15・硼砂10・焔硝5・胆礬5・芒硝3・ 冰片2」


白降丹《医宗金鑑》
「明礬・皀礬・硝石・食塩各15、水銀10、硼砂5、朱砂・雄黄(水飛)各2」


白散《傷寒論》
「桔梗3分、巴豆(去皮心)(熬黒研如脂)1分、貝母3分」
右三味、為散、内巴豆、更於臼中杵之、以白飲和服。強人半銭匕、羸者減之。病在膈上必吐、在膈下必利。不利、進粥一杯。身熱、皮栗不解、欲引衣自覆。若以水之洗之、令熱劫不得出、當汗而不汗則煩。假令汗出已、腹中痛、與芍薬三両如上法。

白芍薬散《証治準縄》
「白芍薬、熟地黄、乾姜、桂心、牡蛎、黄蓍、鹿角膠、竜骨」


白芍薬散《東醫寶鑑》
「白芍薬2両、乾姜5銭」それぞれ黄色くなるまで炒って作末し、1日2回2銭づつ米飲で調服する。
◎赤・白帯の長い者を治す。


白車湯《中薬臨床応用》
「白花蛇舌草15g、車前子15g、山梔子9g、茅根30g、紫蘇葉6g」水煎服。
◎小児の腎炎。

白神散《衛生宝鑑》
「白・豆豉・葱白・甘草・生姜・大棗」


白前湯《備急千金要方》
「白前、紫菀、半夏、大戟」


白雪糕 (はくせつこう)《東醫寶鑑》
「山薬・仁・蓮肉各4両、粳米・糯米各1升」作末し、砂糖1斤を入れて こね、蒸して糕を作り服用。
◎内傷を治し、脾胃を補養する。


白葱散《医学入門》《古今方彙》
「川芎・当帰・生地黄・芍薬・枳殻・厚朴・莪朮・三稜・茯苓・官桂・乾姜・人参・川楝子(肉)・神麹・麦芽・青皮・小茴香・木香各等分、葱白、食塩」煎服。
◎一切の冷気が膀胱に入り、疝痛の大なるを治す。
◎産前産後の腹痛、肢体怯弱、労傷にて癖(腹中の硬結)を帯びるを治す。
◎大便利すれば:「訶子」
◎大便秘すれば:「塩・大黄」


白帯丸《東醫寶鑑》
「単葉紅蜀葵根2両、白丸1両、白芍薬・白礬枯各5銭」作末しで梧子 大の丸剤。空腹時に15丸調服し、膿が出たあと再び他の薬で補う。
◎吐下による白帯に、

白通湯《東醫寶鑑》
「乾姜3銭、附子(生)半個、葱白3茎」水煎服。
◎少陰病で下痢・脈細の者を治す。


白通湯《傷寒論》《龍野ー漢方処方集》
「葱(白い部分)4茎、乾姜1.0g、附子(炮)1.0g」
水120ccを以て煮て40ccに煮詰め2回に分服。
「四逆湯-甘草+葱白」
◎下痢腹痛、厥して頭痛する者を治す《吉益東洞》
◎此方は四逆湯と伯仲の薬にて、葱白は陽気を通ずるを主とし、人尿は陰物を仮りて、その真寒の陰邪と一和せしむるの手段にて、西洋舎密学(化学のこと)の組み合わせとははるかに異なり。《勿誤薬室方函口訣》
◎按ずるに、乾嘔し、下利し、而して頭痛する者を治す《雉間煥》

★適応症及び病名(白通湯)
[1]過敏性大腸症候群
[2]乾嘔
[3]下痢<激しい>
☆少陰病、下利する証。
☆此方の証は、四逆湯症に比べれば、下痢やや緩かで、且つ清穀、大汗、四肢拘急等の急迫の症なし。故に甘草を用いない。《類聚方広義》
☆冷え性の急性慢性の下痢。《龍野》
☆四逆湯を与ふべき疾患にして、之を与フルも、下痢なお止まず、尿利なく、手足温暖となれるも、その脈微弱なる証《奥田謙蔵》
☆四逆湯を服して後、脈却って浮弱を現し、手足温暖となるも、下痢甚だしく、全身に熱候なき証《奥田謙蔵》
☆下痢性疾患にして、衰弱の極に達し、熱候無き証《奥田謙蔵》
[4]精神不安
☆精神錯乱してぶつぶつ小声でつぶやく。
☆病人に譫語有り、鄭声あり。鄭声は虚と為す。白通湯之を主どる、譫語は実と為す。当に調胃承気湯を須ひて之を主とすべし。《活人書》
[5]手足厥逆
[6]尿不利
[7]煩躁(はんそう)
[8]腹中雷鳴
☆発汗し、或いは下して後、その脈数にして弱、腹中雷鳴を発し、下痢頻発する証《奥田謙蔵》
[9]ほてり
[10]無気力



白通加猪胆汁湯《傷寒論》《龍野ー漢方処方集》
「葱(白い部分)4本、乾姜1.0g、附子(炮)0.3g、人尿10.0g、猪胆汁1.0g」
水120ccを以て人尿胆汁以外の薬を煮て40ccに煮詰め滓を去り人尿と胆汁を加え2回に分服。
◎白通湯の証にして厥逆、乾嘔、煩躁する者を治す。《吉益東洞》
◎此方は「通脈四逆湯+猪胆汁」に同じ。《勿誤薬室方函口訣》
◎葱白は倍用して可也。《類聚方集覧》
◎《本邦老医伝》に云う、此方はただ吐瀉のみならず、中風卒倒、小児慢驚、その他一切暴卒の病、脱陽の症し、奇効を建つることあり。心下が目的なり。

★適応症及び病名(白通加猪胆汁湯)

[1]下痢
☆下痢乾嘔煩、手足冷え込み脉触れ難き者。《龍野》
[2]小便不利:《雑病翼方》
[3]煩躁
☆白通湯を応用すべき諸証にして、更に煩躁増劇し、若しくは虚脱に陥れる者《奥田謙蔵》
[4]ひきつけ
☆卒中、小児ひきつけその他、暴卒の病で脱陽無脉の者。

白桃花湯《奥田家方》
「白桃花6.0、黒丑2.0、大黄2.0、甘草0.8」4味を1包とし、水300ccを以て150ccに取り、滓を去り頓服。
◎脚気水腫、
◎水腫を発する諸疾患。


白頭翁加甘草阿膠湯《金匱要略》
「白頭翁・甘草・阿膠各2両、秦皮・黄連・蘗皮各3両」右六味、以水七升、煮取二升半、内膠令消盡、分温三服。
◎産後下利、虚極、白頭翁加甘草阿膠湯主之。



白頭翁加甘草阿膠湯《金匱要略》《漢方治療の実際》
「白頭翁湯甘草・阿膠各2」

★適応症及び病名(白頭翁加甘草阿膠湯)
[1]下痢
☆百疢一貫に、この方は産後の下痢に限らず、常の下痢にも用いる。熱利、下重、便膿血を目標にして用いると奇妙に効くとある。熱利は熱性下痢の意、下重は裏急後重の意である。また同書に承気湯との区別を述べ、承気湯の証は一段重くて、口渇がなく、逼迫感が強い。腹痛も強い。白頭翁湯は渇があって腹痛は強くないとある。《大塚敬節》

[2]産後の下痢
☆産後の下痢にまことに良く効く。出産後の下利は、古来“さわら”と呼んで、大変恐れられたもので、重篤、危篤に陥る危険がある。《大塚敬節》
☆35歳女性。妊娠末期に腸炎にかかり、下痢しているうちに分娩が始まり、分娩後、下痢はますますひどく、1日10回に及ぶ。便は悪臭を放ち、大部分は粘液である。体温は38℃内外。腹痛はあまり強くない。患者はひどく憔悴し、眼はくぼみ、脈浮弱である。私は始め真武湯を用いたが、効無く、白頭翁加甘草阿膠湯を与えたところ、下痢は次第に減じ、数日にして、体温も37℃代となり、食欲も出て、1ヶ月後には床をあげることが出来た。《大塚敬節》

[3]便秘:àá大黄牡丹皮湯



白頭翁湯[1-1]《傷寒論》
「白頭翁2両、黄柏3両、黄連3両、秦皮3両」
右三味、以水七升、煮取二升、去滓、温服一升。不愈。更服一升。
◎熱利下重者、白頭翁愈主之。
《傷寒論》辨厥陰病脉證并治第十二。

・夫れ仲景の白頭翁を用ふるや、特に熱利を治し、他に見るところなし。
・為則按ずるに、若し熱利、渇して心悸すれば、則ち白頭翁湯を用ふるなり。
・之に加ふるに血証及び急迫の証あらば、則ち加甘草阿膠湯を用ふべし。


白頭翁湯[1-2]《傷寒論》《龍野ー漢方処方集》
「白頭翁2.0g、黄柏・黄連・秦皮各3.0g」
水280ccを以て煮て80ccに煮詰め2回に分服。


白頭翁湯[1-3]《傷寒論》《漢方治療の実際》
「白頭翁・黄連・黄柏・秦皮各3」
◎此症、もし虚弱甚だしき者は阿膠、甘草を加えて用いるべし。
◎《金匱要略》に産後とあれども一慨に拘わるべからず。
◎心中悸し、熱して利し、下重し、或いは渇して水を飲まんと欲する者を治す《方極附言》    

★適応症及び病名(白頭翁湯)
[1]アメーバ赤痢
☆赤痢、及びその類証にして、裏急後重ことに甚だしき者には、証に由り大黄を加味す《奥田謙蔵》

[2]急性大腸炎
☆激症の大腸炎

[3]血尿

[4]結膜炎
☆眼目欝熱し、赤腫、陣痛し、風涙止まざる者を治す《類聚方広義》

[5]下痢
☆(下痢・粘液便・膿血便・裏急後重・灼熱感)
☆熱利下重して心悸ある者を治す《吉益東洞》
☆熱痢下重し、渇して水を飲まんと欲し、心悸し、腹痛する者は、之方の主治なり。《類聚方広義》
☆此方は陰部の熱痢を主とす。熱痢とは、外證は真武湯などの如くぺったりとしておれども、裏に熱ありて咽乾き渇甚だしく、便、臭気ありて後重し、舌上はかえって胎なし。《勿誤薬室方函口訣》
☆此方、傷寒時疫など、渇甚だしくして水飲咽に下るときは直ちに利する者に宜し。《勿誤薬室方函口訣》
☆下利、後重し、水を飲まんと欲して煩し、小便赤くして能く利するは、白頭翁湯之を主どる《医聖方格》
☆赤痢様下痢して、腹痛し、脈微浮にして、渇する証《奥田謙蔵》
☆下部に熱を帯び下利後重、出血、或いは熱性出血する者。
☆下痢して口渇が甚だしく水を呑むことを欲する者に用いる《大塚敬節》
☆肛門に灼熱感があって、裏急後重のある者に用いる《大塚敬節》

[6]口渇
☆白頭翁は熱痢にも渇を主として用いるなり。痢疾の渇は難治なり。石膏などにても他薬にても功無きものなり。また痢疾にても渇を治する薬は後世にも無なり。幸いに此方のみあり。此方軽き者に功あり。《百疢一貫》
☆裏急後重の傾向のある下痢で、口渇のある者によい《大塚敬節》
☆疫痢の患者で、粘血便を出して、口渇の甚だしい者に用いる《大塚敬節》

[7]高熱
☆5歳の男児。突然高熱が出て下痢し、大便は黒い泥のようで、口渇がとてもひどい。脈は細数で、呼吸促迫があり、煩躁する。私はこれに白虎加人参湯を用いたが、全く効無く、口渇は甚だしく水を求めて止まない。そこで、《金匱要略》に“下痢して水を飲まんと欲する者は熱があるからである”という条文によって、白頭翁湯を用いたところ渇やみ、下痢減じ、発汗して熱も下り、3日後にはほとんど全快した。《大塚敬節》

[8]肛門周囲炎
☆肛門周囲膿瘍

[9]肛門出血
☆腸風、下血を治す《先哲医話》
☆腸風(腸から出血する病気)下血の百治効無きに山松の白頭翁湯を用いて奇効を奏せしことしばしばなり。《時還読我書》

[10]肛門の灼熱感
☆肛門に灼熱感があって、裏急後重のある者に用いる《大塚敬節》

[11]肛門が腫れた感じ

[12]細菌性下痢

[13]痔出血

[14]食欲減退:
☆熱やや去ると雖も、食欲漸次減少し、大便渋痢し、脈なお数なる証《奥田謙蔵》

[15]心中煩悸:
☆発熱あるも、渇甚だしからず、心煩し、精神やや明瞭を欠き、下痢頻数なる証《奥田謙蔵》

[16]舌質<紅>

[17]舌苔<黄膩>

[18]直腸炎

[19]直腸潰瘍

[20]尿色<赤濁>

[21]膿血便
☆血便を下す下痢《大塚敬節》

[22]粘液便

[23]腹痛

[24]腹満
☆身体に微熱あり、腹満して痛み、尿利減少し、大便渋痢する証《奥田謙蔵》

[25]微熱

[26]膀胱炎

[27]裏急後重


白頭翁湯[1-4]《傷寒論》《東醫寶鑑》
「白頭翁・黄柏・秦皮・黄連各1銭半」剉作1貼し水煎服。
◎少陰病の下痢に水を飲む症。
◎熱をもって下痢した後、渇く者。


白頭翁湯[1-5]《傷寒論》《中薬臨床応用》
「白頭翁9g、黄連3g、黄柏6g、秦皮6g」水煎服。
アメーバ赤痢

膿血便

血便腹痛

肛門部灼熱感

裏急後重

細菌性下痢


白頭翁加甘草阿膠湯《金匱要略》
「白頭翁・甘草・阿膠各2両、秦皮・黄連・黄柏皮各3両」
右六味、以水七升、煮取二升半、内膠令消盡、分温三服。
◎産後下利虚極、白頭翁加甘草阿膠湯主之。


白頭翁加甘草阿膠湯《金匱要略》《龍野ー漢方処方集》
「白頭翁・甘草・阿膠各2.0g、秦皮・黄連・黄柏各3.0g」水280ccを以て阿膠以外の薬を煮て100ccに煮詰め、阿膠を入れて加熱溶解し3回に分服。

◎産後の下利虚極の者。
◎白頭翁証で痛み、或いは出血強き者。
◎虚候を帯びた者。
◎白頭翁の証にして血証急迫する者を治す。《吉益東洞》
◎白頭翁湯証にして、便血し、急迫する者を治す《方極附言》
◎此方は、ただ虚極と云う者は、極字は六極の極と同義にて、虚憊甚だしきを云 う。《勿誤薬室方函口訣》

◎婦人赤白を下利し、腹痛するは、みな寒熱の邪を受け、臓腑に積するに因る。故に此証あり。まさに先ず熱を去り、しかる後に脾胃を調うべし。《雑病翼方》


★適応症及び病名(白頭翁加甘草阿膠湯)
[1]下痢
☆阿膠は下利を止めるのを主とす。甘草は中気を助けるなり。《外台秘要方》厚朴湯、安石榴皮湯などの阿膠も同意なり。《勿誤薬室方函口訣》
☆産後の下痢性疾患《奥田謙蔵》
☆産後の血虚に伴う下痢《中薬臨床応用》
☆鮮血を解奔し、口渇便短、裏急後重し、脈盛んなる者は、火症となす。此湯に宜し。虚人及び産後は阿膠甘草を加うと。《雑病翼方》

[2](痔):
☆痔疾、肛中熱、疼痛し、或いは便血する者、もしくは大便燥結する者は、大黄を加う《類聚方広義》
[3]赤痢:
☆赤痢、及びその類証にして、腹痛ことに甚だしく、或いは漸く疲憊に就かんとする証《奥田謙蔵》
☆重症赤痢、及びその類証にして、腹痛、粘液血便等甚だしく、日数を重ねるも治癒に赴かざる証《奥田謙蔵》

 


白丁散《東醫寶鑑》
「白丁香」作末し毎回2銭を温酒で調服。
◎吹妳(すいだい)が起き始めたら、この剤を飲むと、乳が出、血脈が通じておのずと消える。

「吹第」=乳腺炎



白灰散《東醫寶鑑》
「白布を燈心の様に作って、指の大きさにして、斧の刃の上に置いて曳くと、汁が少し出る。それを唇にこすりつける。
◎緊唇(=繭唇)を治す。


白壁散《狗傷考》《原南陽》
「天靈葢一味」
◎伝尸・労瘵・久瘧。


白偏豆散《東醫寶鑑》
「白扁豆(生)」作末し、水で2~3銭を調下する。
◎毒薬が胎を打ち、心を突いて口がゆがみ、自汗して人事不省に陥る者。


白礬散《東醫寶鑑》
「白礬3銭、巴豆3箇」それぞれ銚器で炒って、礬が乾いたら豆は捨て、礬を作末して水で調合して灌下し、又は喉中に拭き入れ、又は卵の白身で調合して喉中に注ぎ入れる。
◎纒喉風と急喉閉を治す。


白茅湯《東醫寶鑑》
「白茅根5銭、瞿麦・白茯苓各2銭半、葵子・人参各1銭2分半、蒲黄・桃膠・滑石各7分、甘草5分、紫貝2、石首魚(頭中骨)4」を剉作2貼し、姜3、燈心20茎を入れ、空腹時に水煎服。
◎婦人の産後諸淋を治す。

白木耳湯《中薬臨床応用》
「白木耳6g、霊芝6g、冬15g、大棗30g、生姜3g」水で服。
◎慢性疾患で陰虚の者。

白竜丸[1]《東醫寶鑑》
「鹿角霜・牡蠣(煨)各2両、竜骨(生)1両」作末し酒麺糊で梧子大の丸剤。空腹時に温酒or塩湯で30~50丸づつ服用。
◎虚労・腎損・白淫・滑泄に効く。

白竜丸[2]《東醫寶鑑》
「川芎・藁本・細辛・白芷・甘草」各等分に作末し、4両に石膏()末1斤を入れて水で弾子大の丸剤。毎日顔を洗う。
◎酒渣鼻で顔一杯に黒紫になる者を治す。


白竜散《東醫寶鑑》
「寒水石()4両、烏賊骨・滑石各1両、硼砂3銭、軽粉1銭」作末し香油と糊でかためて耳に入れる。
◎耳の中が急に痛む者。

白竜湯《万病回春》《古今方彙》
「桂枝・白芍薬(酒)・竜骨・牡蛎各2銭、甘草(炙)2銭、大棗」水煎。
◎《金匱要略》「桂枝加竜骨牡蛎湯」と同じなり。
◎男子失精、女人夢交、自汗盗汗する者を治す。


伯州散[1-1]《東洞家塾方》
=「大同類聚方の伯耆薬」
「腹蛇・蟹(河江中の生ずるもの)・鹿角各等分」
右3味、各々焼きて霜と為し合して治め毎に酒にて9分を服す。
◎毒腫又、膿あるものを治す。



#伯州散[1-2]《本朝経験》《奥田謙蔵》
「反鼻(黒焼)・津蟹(黒焼)・角石(黒焼)各等分」
右三味、各別に細末し、混和して散と為し、1回2.0~4.0を酒服する。もし酒服する能はざる者は、白湯にて服用するも亦佳なり。
◎津蟹:鼹鼡(エンソ)の(黒焼)を以て之に代う。
◎角石:鹿角の(黒焼)を以て之に代う。
◎此方、もと伯蓍の民間より出づ。故に後世、之を伯州散と名くと。

#伯州散[1-3]《本朝経験》《龍野ー漢方処方集》
「反鼻・津蟹・鹿角」 

津蟹=もぐらもちでも良い。
別々に黒焼きにし等分に混和し3.0gを1日3回に分服。



伯州散[1-4]《本朝経験》《漢方治療の実際》
「反鼻・鹿角・津蟹(ムグラを用いてもよい)」
以上をそれぞれ黒焼きにし、混和して、1日3回、1回1服用。
◎カルブンケル<虚証の>、フルンケル、皮下膿瘍、歯槽膿漏、肛囲炎、痔瘻等の化膿症で膿が出難く、或いは膿が出て肉の上がりが悪く口が塞がり難い者。
◎これは、“外科倒し”と呼ばれたほどの偉効のある黒焼きである。この方は、反鼻を主薬とするもので、これに津蟹と鹿角を加えたもの、また津蟹の代わりにもぐらを用いたものなどあり、又、これに沈香を加えることもあるが、私は反鼻、津蟹、鹿角の3味を用いてる。《大塚敬節》
◎濫用に注意《大塚敬節》
「伯州散の主治として、従来成書に挙げられているところは、亜急性または慢性の化膿性疾患で、排膿する力の弱い者。又は肉芽発生の悪い者に内服・外用ともに用いて排膿促進、肉芽新生、強壮興奮の効ありとされている。そして禁忌として、急性炎症症状の激しい時期、活動性の結核患者には用いないこととされている。従って伯州散は汚染のない新鮮な創面に止血と化膿防止の目的で外用する時のほかは、急性期を過ぎて醸膿が十分となった時期以降に用いなければならない。ことに慢性の経過をとって潰瘍化した創面やフィステルには主方の他に必ず兼用すべき方剤である。
著者はガンの末期患者に用いて、しばしばガンの進行を促すことを経験した。対症療法的にやむを得ない場合はともかく、活動性の結核患者に禁忌であると同様、悪性腫瘍の疑いのある患者にあっては伯州散を兼用することなく、他の方剤で処理するにしくはないと考える。
なお注意しなければならぬことは、化膿性炎症で伯州散使用の適応時期と考えられる場合でも、指先や顔面の炎症にあっては、常識的に考える時期よりも2~3日遅らせた方がよい。面疔・麦粒腫・疽などに伯州散を兼用するには炎症が限局して排膿が開始される頃に使用すべきである。そうでないと排膿していても、それらの部位の解剖学的関係から、充血しやすくなり、排膿する前に疼痛腫脹が加わって、患者に苦痛を与えることとなる。
また、患者によっては伯州散投与で胃腸障害などを訴える者が稀にあるが、それらの場合には主方を考えるか、又は平胃散or安中散の原末を半量ほど加えると良い」《石原明》
「私の経験で、伯州散を呑むと便秘したり、口内が荒れて食事がしみると訴える者がある。また不眠を訴える者もある。《大塚敬節》

★適応症及び病名(伯州散)
[1]悪毒
☆発出し難き者を治す。《古方兼用丸散方》

[2]打ち身
☆一切の打ち身、瘧疾、瘡毒疼痛し、或いは諸瘡内攻する者を治す《古方兼用丸散方》

[3]下腿潰瘍
☆栄養の良くない潰瘍に内服せしめて効がある《大塚敬節》
[4]化膿性疾患
☆凡そ諸般の化膿性炎症にして、著しき熱発を伴わず、或いは疼痛し、或いは既に膿潰する者に、本方を用ふれば、能く速かに治癒せしむべし。《奥田謙蔵》
☆私の妻が麦粒腫になった時、この方を内服せしめたところ、忽ち眼瞼が腫れて、眼をあけることが出来なくて、発熱し、疼痛激しく、ついに眼科医に切開してもらったことがある。《大塚敬節》
☆肺結核に用いて、急に病勢が悪化して、7日目に死亡した例をみたことがある。《大塚敬節》

[5]ガン
☆70歳男子。上顎癌に伴う混合感染。この患者は手術不能で末期症状を呈し、局所は悪臭を発し、連鎖球菌の感染があって、疼痛と膿汁に悩まされていた。全身衰弱著しく、現代医学的には補液など単なる対症療法を行うに過ぎない。化学療法や抗生物質も使用したが局所の排膿と悪臭は去らず、鎮痛剤の注射により、僅かに苦痛を抑えて死を待つばかりの状態である。そこで十全大補湯を主剤とし、伯州散内服1日4.5g、局所には伯州散を散布した。3日目で排膿は少なくなり、悪臭も幾分少なくなった。1週間ほどで悪臭はほとんどとれ、排膿も無くなり、化膿は停止し、局所の所見は好転し、全身症状もかなり回復したが、ガンの進行はにわかに活発となり、一時小康状態を保ちながらも16日目に死亡した。(石原明・日本東洋医学会誌第12巻第3号)

[6]切り傷(切創):
☆清潔な切創には、伯州散を散布して包帯をするだけで、止血し、化膿せず、2、3日で治る。しかし黒焼きが入れ墨のように残ることがあるので要注意。《大塚敬節》

[7]肛門周囲炎

[8]歯槽膿漏

[9]痔瘻

[10](フルンケル)

[11]瘡腫
☆毒腫し、又は膿有る者を治す《古方兼用丸散方》
☆諸瘡、悪腫は、之を服すれば膿潰せしむ。《春林軒丸散方》

[12]トゲ抜き
☆トゲが抜けない時に、伯州散を呑むと、トゲが抜けること奇妙である。《大塚敬節》

[13]肉芽形成不全
☆17歳男子。右下腿潰瘍。1年前の夏。キャンプで毒虫に刺され、瘙痒のため掻いた後が化膿しフレグモーネとなり、抗生物質の使用で一時軽快したが、ネクローゼに陥った上皮が剥落したあと潰瘍となり、カメレオン液洗浄、クロロフィル貼用などをおこなったが、依然として肉芽発生悪く、分泌物多く汚黄白色のベラーグがあり、歩行時痛みを感じ、また長時間起立していると充血と灼熱感を発した。患者は学生で他に著しい全身症状はなく、右下腿潰瘍以外何等の変化を認めない健康体である。そこで自家製伯州散を1回1g1日3回投与。局所は紫雲膏を貼用したところ、7日で分泌物はほとんどなくなり、2週間目には良好な肉芽の発生が見られ、服薬3週間にして中止、なお局所のみ紫雲膏を塗った上から軽くマッサージを続け1ヶ月にしてやや瘢痕化した皮膚ではあるがほぼ全治した。この患者は前に治療した医師からは植皮手術を勧められていたそうである。《石原明》

[14]皮下膿瘍

[15]疲労倦怠

[16]癰(カルブンケル):
☆高輪泉岳寺の主僧、年は70歳余りであるが、上腹部に癰が出来て、ひどく痛み、悪寒、発熱があり、食欲が無くて、のどが渇く。1洋医がこれに湿布を施し、水薬と散薬を与えたが、炎症が衰えず、自潰もせず、毒が内攻して煩悶する。余はこれに伯州散を温酒で呑ましめ、次に千金内托散を与えた。すると、2、3日で癰腫が自潰して排膿が始まり、険悪の症状がだんだん去った。思うに菜食を主としている人には、伯州散のような蠕動の品を用いると極めて速効のあるもので、これは知っていなければならない《橘窓書影》

[17]冷膿瘍
☆寒性膿瘍の患者の用いて喀血を誘発せしめることがある《湯本求真》

[18]瘻孔
☆栄養の良くない瘻孔に、内服せしめて効がある《大塚敬節》


柏子仁丸[1]《婦人大全良方》
「柏子仁・牛膝・巻柏・沢蘭・続断・熟地黄」


柏子仁丸[2]《東醫寶鑑》
「沢蘭3両、柏子仁(炒)を別に研いで、牛膝の酒で焙ったもの巻柏各1両を作末して梧子大に蜜で丸め、空腹時に米飯で50~70丸呑み下す。
◎心労で月経のないとき使う。
◎処女の心労による血閉。


柏子仁丸[3]《普済本事方》
「柏子仁、半夏、牡蛎、人参、麻黄、白朮、五味子、浄麩、大棗」

柏子寧心湯《中薬臨床応用》
「柏子仁、酸棗仁、遠志、麦門冬、当帰、白芍薬、生地黄、黄連、茯神、党参、甘草、黄蓍」水煎服。
◎不眠。


柏子養心丸
「柏子仁・白茯苓・酸棗仁・生黄蓍・当帰身各20、五味子・朱砂・犀角尖各5、甘草4」


柏墨散《東醫寶鑑》
「黄柏・釜下墨・乱髪灰」各等分に作末し、乾燥or油で調合して貼る。
◎臍風と臍腫で泣き、乳を吸えない者を治す。


柏葉湯[1-1]《金匱要略》
「柏葉・乾姜各3両、艾3把」
右三味、以水五升、取馬通汁一升合煮、取一升、分温再服。
◎吐血不止者、柏葉湯主之。


柏葉湯[1-2]《金匱要略》
「柏葉・乾姜・艾葉 各1」
以上を水1000ml・馬糞汁(or童便)20mlに入れて煮て、60mlとし、頓服する。
◎此方は止血の専薬なり。馬糞水を用いて化開し、布を以て汁を濾し澄清するを馬通汁と云う。馬通汁を童便に換えても宜し。《勿誤薬室方函口訣》


柏葉湯[1-3]《金匱要略》《龍野ー漢方処方集》
「柏葉・乾姜・艾葉」各3.0g
水200ccと馬糞汁40ccを以て煮て40ccに煮詰め2回に分服。
◎虚寒性の吐血喀血。
   

★適応症及び病名(柏葉湯)
[1]出血:
☆是は主治の通り、吐血の止まない者で、瀉心湯や黄連解毒湯を用いても止まない者に用いる。この方は早期に用いると悪い薬である。遅いほどよい。是に用いる馬通汁(新鮮な馬糞の汁)は飲みにくい薬である。この方は衂血にも用いる。また子宮出血にも用いる。これもなかなか止まない者に用いる。しかし四逆加人参湯を用いる場合より病勢は緩慢である《有持桂里》
☆血を吐いて止まない者に用いるが、大抵熱は無い、もし熱があって、咳が激しくて吐血(喀血)の止まない者は、この方の証ではない《荒木正胤》



柏葉湯[2-1]《東醫寶鑑》
「側柏葉・当帰・生乾地黄・黄連・荊芥穂・枳殻・槐花(炒)・地楡各1銭、甘草(炙)5分、姜3、烏梅1」煎服。
◎腸風を治す。


柏葉湯[2-2]《万病回春》《古今方彙》
「側柏葉・当帰・生地黄・黄連・枳殻・槐花・地楡・荊芥・川芎各等分、甘草減半」左に烏梅・生姜を入れ、水煎空心に服す。
◎腸風下血を治す。

柏連散《東醫寶鑑》
「黄柏(炙)・黄連・胡粉(炒)」各等分に細末し、猪脂で調合して、たびたび塗る。
◎面上の熱毒悪瘡を治す。


薄荷蜜《東醫寶鑑》
「薄荷の自然汁、白蜜」各等分に「竜脳」は半分に減らし作末、蜜で梧子大の丸剤。呑み込む。
◎舌の上の瘡と、白胎が乾いて、しゃべれない者を治す。


破痰消飲元《東醫寶鑑》
「青皮・陳皮・三稜(炮)・莪朮(炮)・良姜(煨)・乾姜(炮)・草果(煨)各1両を作末して水麺糊で梧子大の丸剤、かげ干しにして姜湯で50丸呑み下す。
◎一切の痰飲を治す。


八解散《和剤局方》《漢方後世要方解説》
「人参・白朮・茯苓・陳皮・半夏・藿香各2.5、厚朴3.0、甘草1.0、大棗・生姜各1.5」



八解散《和剤局方》《古今方彙》
「人参・白朮・茯苓・陳皮・半夏・藿香各1両、厚朴2両、甘草1両、生姜、大棗肉」水煎。
◎四時感冒、傷風、傷寒にて大熱多汗或いは吐を兼ね、瀉を兼ね飲食味無く、面色萎黄、怠惰少力の者を治す。
◎汗無き者:「葱白」
◎暴瀉を治す:「香薷」

 


八神湯《備急千金要方》
「柴胡8分、芍薬10分、別甲・大黄・人参各4分、茯苓6分、乾姜・甘草各2分」
◎小児疳労(実する者)の主薬とする。《勿誤薬室方函口訣》
◎心腹痞満と萎黄、手足繚戻が目的なり。
◎虚憊の者→「黄蓍湯《医宗金鑑》」:感熱、黄痩、腹満が目的なり。
◎虚実の間にある者→「解労散」


八正散[1-1]《和剤局方》
「大黄・甘草・車前子・瞿麦・滑石・木通・山梔子・篇蓄」
◎治心経邪熱・一切蘊毒・小便赤渋。


八正散[1-2]《東醫寶鑑》
「大黄・木通・瞿麦・篇蓄・滑石・梔子・車前子・甘草各1銭、燈心1銭を入れ空腹時に服する。
◎膀胱の積熱で小便が癃閉し不通のときに使う。


八正散[1-3]《万病回春》《古今方彙》
「大黄・瞿麦・木通・滑石・萹蓄・山梔子・車前子・甘草各等分、燈心草」水煎。
◎心経蘊熱し、臓腑閉結し、小便赤渋し、癃閉(尿閉のこと)して通ぜず、及び熱淋、血淋を治す。

#八正散[1-4]《漢方治療の実際》
「大黄1、瞿麦・木通各3、滑石5、萹蓄・梔子各3、車前子・甘草各1.5、燈心草2」


八正散[1-5]《和剤局方》《中薬臨床応用》
「萹蓄・瞿麦・山梔子各9g、木通・甘草梢各6g、滑石12g、車前子9g(包煎)、大黄3g(後下)、燈心草3g」水煎服。
◎尿道炎、尿道結石、
◎排尿困難、排尿痛、便秘。


八仙飲子《勿誤薬室方函口訣》
「治酒査鼻方《本朝経験》-黄連黄芩・葛根」
「大黄、黄芩、梔子、芍薬、地黄、葛根、紅花、甘草」
=「三黄梔子湯」に同じ。



八仙丸【中成薬】
「六味丸麦門冬・五味子」
◎アトピー性皮膚炎・鼻炎・喘息・糖尿病。


八仙糕《東醫寶鑑》
「枳実(麩炒)・白朮(土炒)・山薬各4両、山肉3両、白茯苓・陳皮(炒)・蓮肉各2両、人参1両」作末し粳米5升、糯米1升半を砕いて蜜3斤を入れて薬末で混ぜて搗き、焙乾し湯水で飲む。
◎脾胃が虚損し、下痢が止まらない者。
(脾胃が虚損し、下痢が止まらない老人・小児)


八仙膏《東醫寶鑑》
「藕汁(生)・生姜汁・梨汁(生)・蘿葡汁・甘蔗汁・白果汁・竹瀝・蜂蜜各1杯」混ぜて飲む。
◎噎食を治す。


八仙散《東醫寶鑑》
「天麻・白附子・白花蛇肉・防風・南星・半夏(麹)・冬瓜仁・全蝎各2分半、川烏1分、姜2、棗1、白果2葉」水煎服。
◎慢驚の虚風を治す。


八仙長寿丸《雑病翼方》
「六味地黄丸知母・黄柏・麦門冬」
◎咳嗽を治す。


八柱散《東醫寶鑑》
「人参・白朮・肉豆蔲(煨)・乾姜(炒)・訶子(炮)・附子(炮)・罌栗殻(蜜炒)・甘草(炙)各1銭、姜2、烏梅1、燈心1」空腹時に服用。
◎滑泄が止まらないとき。
◎昼夜を問わず下痢し、胃腸が滑泄して止まらず、脈が細沈。


八珍湯[1-1]《証治準縄》
「当帰・川芎・白芍・熟地黄・人参・白朮・茯苓各10・甘草5、生姜3片、大棗2個」食前に煎服。

八珍湯[1-2]《正体類腰》《中薬臨床応用》
「党参12g、白朮6g、茯苓9g、甘草(炙)3g、川芎6g、熟地黄12g、生姜2g、当帰9g、大棗5g、白芍薬9g」
◎気血両虚。


八珍湯[1-3]《薛立斎十六種》《古今方彙》
「人参・白朮・茯苓・当帰・川芎・熟地黄・白芍薬各1銭、甘草(炙)5分、生姜、大棗」水煎。
◎肝脾傷損して、血気虚弱、悪寒発熱し、或いは煩躁して渇を作し、或いは寒熱昏瞶し、或いは胸膈利せず、大便実せず、或いは飲食少しく思い、小腹脹痛する等の症を治す。
◎古方の「八物湯」は即ち此方なり。《古今方彙》
◎《機要》の「八物湯」は黄蓍ありて甘草なし。古方の「八物湯」は縮砂ありて白朮なし。《古今方彙》
◎陰血不足して月水通ぜざるを治す
◎血崩にて肚腹痞悶し、飲食入らず、発熱煩躁し、脉洪大にして虚するを治す:「+炮姜」

◎気厥共に虚するを治す。「補中益気湯」は陽気下陥するを治す。或いは半夏茯苓黄柏を加えて湿痰下に注ぐを治す。

◎「四七湯」で「六味丸」を送下するは気虚、痰飲下に注ぐを治す。或いは「四七湯」にて「青州白丸子」を送下する。

◎欝久しく乳内の結核年余消えざるを治す:「+貝母・遠志・香附子。柴胡・青皮・桔梗」

◎潰瘍の諸症を治す。栄衛を調和じ、滋養気血を順理し、飲食をうまく進め、表裡を和し、虚熱を退け、気血倶に虚する治す。


#八珍湯[1-4]《漢方治療の実際》
=「八物湯」
「人参・白朮・茯苓・当帰・川芎・地黄・芍薬各3、甘草・大棗・生姜各1」


八珍湯[1-5]《瑞竹堂経験方》
「四物湯+四君子湯」
◎肝脾傷損し、血気虚弱、悪寒発熱し、あるいは煩躁渇を作し、あるいは寒熱昏瞶、あるいは胸膈不利し、大便不実し、あるいは飲食少思、少腹脹満の証を治す。
◎気血両虚を目的とす。何病にても気血振るわざる者、対症の薬を加味して用いるべし。
◎老人、陰血乾枯し、大便結燥し、便溺前より出る。これ血液涸渇の徴候、気血衰敗の候なり。《方読便覧》


★適応症及び病名(八珍湯)
[1]委中毒
☆諸痛あり、附子の用い難き者:「鹿茸犀角」

[2]月経不順:
☆元気衰えて月経が延期する《矢数道明》

[3]産後
☆疲労回復の遅いもの《矢数道明》
☆血虚、舌赤爛し痛む:「鹿胎霜」
☆下血止まざる者:「鹿胎霜」

[4]帯下
☆虚憊の者:「牛皮消」《方読便覧》

[5]中風
☆気血ともに虚して中風で左右の手足が不仁:「釣藤鈎・竹瀝・姜汁」(薛立斎ー十六種)

[6]病後
☆疲労が回復しないとき《矢数道明》
☆食欲を進め、貧血を治す《矢数道明》
☆瘧疾後、疲労衰弱の者《矢数道明》

[7]附骨疽
☆虚脱する者:「鹿茸」

[8]腰痛
☆少し熱有り、瘀血の者《矢数道明》

[9]癰疽
☆潰えて後元気回復しない者《矢数道明》

 


八珍散[2]《東醫寶鑑》
「人参・白朮・黄蓍(蜜炙)・白茯苓・山薬・栗米(微炒)・甘草(炙)・白扁豆(姜汁炒)」各等分に粗末にし、毎回3銭に「姜3、棗2」を入れて煎服。
◎補脾・食欲増進。
◎開胃・養気に。



八毒赤散《東醫寶鑑》
「雄黄・礬石・朱砂・牡丹皮・附子(炮)・藜蘆・巴豆霜各1両、蜈蚣1条」作末し蜜で小豆大の丸剤。冷水で10丸飲む。
◎伝染して鬼疰病になった者を治す。


八宝回春湯《東醫寶鑑》
「白芍薬1銭2分、黄蓍8分、白朮・茯神・半夏各5分、附子・人参・麻黄・防已・香附子・杏仁・川芎・当帰・陳皮・防風・肉桂・乾姜・熟地黄・生乾地黄・甘草各4分、沈香・烏薬・川芎各3分」剉作1貼し「姜3、棗2」を入れ煎服。
◎虚証の中風。


八宝紅霊丹
「朱砂10、牙硝10、雄黄(水飛)6、硼砂6、石4、冰片3、麝香3、飛金20枚」


八宝生肌丹《薬簽啓秘》
「熟石膏10、軽粉⇒水銀粉10、鉛丹3、亀骨3、 赤石脂10、乳香3、没薬3」


八宝散《丹台玉案》
「茯苓・桔梗・貝母・人参・五味子・天門冬・胡黄連・地黄各等分」
◎肺癰、咳嗽、日久しく、痰は腥臭を帯び、身熱虚羸するを治す。《雑病翼方》


八宝丹《瘍医大全》《中薬臨床応用》
「軽粉5g、象皮5g、竜骨5g、琥珀5g、真珠3g、炉甘石9g、牛黄1.5g、竜脳1g」微細末にし、患部に散布する。
◎化膿性の皮膚感染症。
◎癒合が悪い潰瘍。


八宝湯《寿世保元》《古今方彙》
「黄連・黄芩・黄柏・山梔子・連翹・槐花各1銭半、細辛・甘草各4分」水煎。
◎臓毒の下血を治す。必ず糞後にあり。


八味還晴散《東醫寶鑑》
「草決明1両、白蒺藜・防風・木賊・梔子仁・甘草各5分、蝉退・青葙子各2銭半」作末し、毎回2銭を麦門冬湯で服用。
◎内障。
◎諸般の障・昏花を治す。


八味款冬花散《東醫寶鑑》
「桑白皮・紫蘇葉・杏仁・麻黄各1銭半、款冬花・紫菀茸・五味子・甘草各1銭」剉作1貼し、水煎し滓は捨て、「黄・皀角刺 」を入れ再び煎じて服用。
◎肺経の寒熱が不順で喘嗽が止まらない。


八味丸[1-1]『崔(さい)氏』《金匱要略》
=「八味地黄丸」「八味腎気丸」「金匱腎気丸」「附桂八味丸」「桂附八味丸」「崔氏八味丸」「腎気丸」
「乾地黄8両、山茱萸・薯蕷各4両、沢瀉・茯苓・牡丹皮各3両、桂枝・附子(炮)各1両」
右八味、末之、煉蜜和丸梧子大、酒下十五丸、日再服。
◎治脚氣上入、少腹不仁。
《金匱要略》中風節病脉證并治第五。
○問曰く、婦人病、飲食如故、煩熱不得臥、而反倚息者、何也。師曰、此名転胞、不得溺也。以胞系了戻、故致此病、但利小便則愈、宜腎氣丸主之。《金匱要略雑病脉證并治第22,19》
○男子消渇、小便反多、以飮1斗、小便1斗、腎氣丸主之《金匱要略消渇小便利淋病脉證并治第13、3》
○夫短気有微飮、當従小便去之、苓桂朮甘湯主之、腎氣丸亦主之《金匱要略痰飲咳嗽病脉證并治第12、17》


八味丸[1-2]《東醫寶鑑》
「熟地黄8両、山薬・山茱萸各4両、牡丹皮・白茯苓・沢瀉各3両、肉桂・附子炮各1両を作末して梧子大に蜜で丸め、空腹時に温酒または塩酒で50~70丸づつ呑み下す。五味子を加えると腎気丸となる。
◎命門の火不足と陽虚を治す。

 

八味丸料[1-3]《龍野ー漢方処方集》
「乾地黄6.0g、山薬・沢瀉・茯苓各4.0g、山茱萸・牡丹皮・桂枝各2.0g、白川附子1.0g」
◎煎剤の場合。



八味丸料[1-4]《傷寒論》《漢方治療の実際》
「地黄5、山茱萸・山薬・沢瀉・茯苓・牡丹皮各3、桂枝・附子各1」
◎煎剤の場合。

★処方解説(八味丸料)
A[方剤分類]・・・補益剤
B[八綱弁証]・・・裏寒虚症
C[六経弁証]・・・少陰病
D[衛気営血弁証]・営分
E[臓腑弁証]・・・腎陽虚
F[方剤帰経]・・・腎
G[効能・効果]・・温補腎陽

夫れ水と血とは、その素(もと)同類なり。亦唯赤ければ則ち之を血と謂ひ、白ければ則ち之を水と謂ふのみ。余嘗て内経を読むに曰く、汗は血の余なりと。問うて曰く、血の余にして汗の白きは何ぞや。答えて曰く、肺は皮毛を主るなり。肺は色白し。故に汗は白しと。此れ陰陽五行に本づく。しかして疾医の道に害あり。疾医の道、殆ど亡ぶは、職として之れ斯れに由る。悲しむべきなり。夫れ汗の曰く、血の赤き、その然る所以は得て知るべからざるなり。刃の触るるところ、その創浅しと雖も。血必ず出づるなり。暑熱の酷(はなはだ)しきに、衣被の厚きは汗必ず出づるなり。壱に是れ皆皮毛を歴て出づるもの、或いは汗となり、或いは血となる故に知るべからざるを以て知るべからずとなし、置いて論ぜず。唯その毒の在るところに治を致す。斯れ疾医の道なり。
後世の医者は、八味丸を以て、補腎剤となす。何ぞその妄なるや。張仲景曰く、脚気上って少腹に入り不仁する者は、八味丸之れを主ると。又曰く、小便不利の者、又曰く、転胞病、小便を利すれば則ち愈ゆと。又曰く、短気・微飮あり、当に小便より之れを去るべしと。壱に是れ皆小便を利すると以て、その功となす。
[補腎剤]=腎の力を強くする剤。このさいの腎は現代医学の腎よりも指すところが広く生殖器も含まれている
[脚気]=中国古代にいう脚気はいまの脚気を指すばかりでなく、下肢の知覚マヒ、疼痛、歩行困難などの症状のあるものに名づけた。
[少腹]=小腹に同じ。下腹をさす。
[不仁]=麻痺
[転胞病]=尿のつまって出ない病気。
[短気]=呼吸促迫
[微飮]=かくれている水毒。飮は水。微は幽微の微。


八味丸[1-5]《傷寒論》《龍野ー漢方処方集》
「乾地黄8.0g、山薬・山茱萸各4.0g、沢瀉・茯苓・牡丹皮各3.0g、桂枝・附子(炮)各1.0g」粉末とし蜂蜜で0.3の丸剤に作り、日本酒少量を以て1回 に15丸を服用。1日2回、漸次増量して25丸に至る。
◎不仁は是れ水の病なり。故に少腹不仁して小便不利する者に、八味丸を用ひて小便を利すれば、則ち不仁は自ら治す。《薬徴》
八味丸証=少腹不仁。又曰く、小便不利。《薬徴》
[少腹不仁]=下腹部の知覚鈍麻または下腹部の脱力。
◎後世の医は八味丸を以て補腎の剤と為す、何ぞ其の妄なる。張仲景曰く、脚気上入、少腹不仁するは、八味丸之を主ると、又曰く虚労腰痛、少腹拘急、小便不利する者と、又曰く、転胞、病小便利すれば則ち癒ゆと、又曰く、短気微飲有り当に小便従り之を去るべしと、壱に是れ小便を理するを以て、其の功と為す。書に云う。古訓を学ぶときは乃ち獲るあり。嗚呼古訓を学ぶときは斯れ薬功を獲る有り。《重校薬徴》
◎口渇、尿利減少又は増加、腰痛、下腹部弛緩又は緊張、或いは煩熱、或いは短 気。
◎此方は専ら下焦を治す。
◎後藤敏曰く、此方は下焦を和調する要薬なり。後人以て補火益腎の剤となすは笑うべしと。《雑病論識》

◎《本朝老医伝》に云う、もし利水の薬を多服し、下焦の陰気これがために虚し、日久しく癒えず、血分の熱邪なお解せざる者は、「腎気丸芒硝牛膝車前子」の類に宜し。《雑病論識》

◎腎積、胸中支満し、腹裏急縮し、両脇に連なって痛む者を治す:「益智・縮砂・陳皮・呉茱萸」《方読便覧》

◎脾胃虚寒、脈沈にして細、身冷え、自汗し、瀉痢し、溺白し。此を陰黄と名づ く。凡そ黄疸、脈弱、口中和し、小便濁り、困憊殊に甚だしき者、効あり。

◎臍下不仁にして、小便利さざる者を治す《方極》
◎少腹不仁にして小便難に、必ず大便微溏し、或いは身体麻痺し、或いは腰脚疼み、或いは虚腫し、その人舌和し、喜んで衣被を厚うする者を治す《医聖方格》

【目標】:《大塚敬節》
臍下不仁or小腹拘急
足の裏がほてるという症状。これが煩熱である。この煩熱と冷感が交互にくるくることもある。煩熱は地黄を用いる目標である。
口渇。
老人など、夜中に、のどが渇いて水を呑む。
ちょっと眼が覚めると、口の中に水を入れないと舌が乾燥して、物が言えない状態になる。
腰から下の力が弱い。
胃腸障害がない者。食欲不振・嘔吐・悪心・下痢・腹痛などの症状が無い者に用いる。

【腹証】
《腹診配剤録》
“臍下拘急して、之を撫するも知らず。此れ所謂不仁也”
《皇漢医学》
“地黄は臍下不仁、煩熱を治する傍ら強心作用を呈し、地黄・沢瀉・茯苓・附子は利尿作用を発し、薯蕷・山茱萸は滋養強壮作用を現し、牡丹皮は地黄を扶けて煩熱を治すると同時に血を和し、桂枝は水毒の上衝を抑制し、附子は新陳代謝を刺激して臍下不仁等の組織弛緩を復旧せしむると共に、下体部の冷感及び知覚運動の不全、或いは全麻痺を治するを以て之等諸薬を包含する本方は臍下不仁を主目的とし、尿利の減少或いは頻数及び全身の煩熱或いは手掌・足蹠に更互的に出没する煩熱と冷感を副目的とする”《大塚敬節》
“「臍下不仁」は、臍下が脱力して軟弱無力で、甚だしい場合は、この部分が陥没している。古人が腎虚と呼んだ場合に見られる腹証で八味丸を用いる目標である。ところで八味丸の腹証は、この臍下不仁だけでなく、小腹拘急がある。小腹拘急は、臍下不仁と異なり、下腹部が硬く突っ張っているのである。腹直筋が最下部で緊張している。之も又八味丸の腹証である。”
《老医口訣》
“八味丸は小腹不仁を目的とする。その状は左右臍傍の直筋拘攣して、臍下虚張し、これを按ずるに力弱く、静血脈見はれ、或いは臍下任脈のあたり陥りたるが如く、或いは腹陥て背につき、或いは腹に宿水あり、或いは小腹和せず羸痩する者あり”



八味丸[1-6]《傷寒論》《漢方治療の実際》
「地黄8、山茱萸・山薬各4、沢瀉・茯苓・牡丹皮各3、桂枝・附子各1」
以上を煉蜜で丸とし、1回2~3、1日3回服用。

★適応症及び病名 (はちみがん)

[1]IgA腎症
☆慢性化し軽度の浮腫やタンパク尿、高血圧を伴う者に用いる。
老化に伴う腎機能低下のある者に用いられる。
浮腫が無くて、タンパク尿と高血圧を主訴とする者には「釣藤鈎3.0黄柏1.5」がよい(漢方診療医典)

[2]足に力が入らない(脚弱)

[3]安静時に腰が重い

[4]インポテンツ

[5]息切れ

[6]意識がもうろうとする

[7]遺精
☆遺精等にして、下肢に冷感有り、手掌に煩熱を覚える証《奥田謙蔵》

[8]遺尿
☆小児の遺尿症にして、下肢寒冷なる者《奥田謙蔵》

[9]萎縮腎
☆萎縮腎の多尿《大塚敬節》
☆萎縮腎では糖尿病のような口渇を訴える者は少ないが、夜間に眼が覚めると、口が乾いて、舌がうまく回らないという者の用いる《大塚敬節》

[10]胃痛

[11]陰痿
☆陰痿にして振はざるを治す《証治大還》
☆陰痿、及び白濁症、小腹不仁にして力無く、腰脚酸軟、或いは痺痛し、小便頻数なる者を治す《類聚方広義》

[12]陰茎硬直症

[13]陰茎の掻痒・疼痛

[14]陰症発斑
=胸背・手足に発斑する、蚊や蚤に刺された様な形で、微紅色。
[15]陰部掻痒症

[16]陰冷
☆=前陰部に寒冷感を感じ、触れると冷たい。
☆血弱く、臓腑を栄養する能わず、津液枯燥し、寒子臓に客し、陰冷なる者を治し、甚だ効あり。《雑病翼方》

[17]鬱血性心不全

[18]運動障害

[19]黄疸
☆脾胃虚寒、脈沈にして細、身冷え、自汗し、瀉利し、溺白し。これを陰黄と名づく。凡そ黄疸、脈弱、口中和し、小便濁り、困憊ことに甚だしき者、効あり。《勿誤薬室方函口訣》

[20]顔のむくみ
☆SEXの翌日に顔がむくむ。

[21]かかとの痛み

[22]回虫

[23]角膜炎

[24]角膜潰瘍

[25]角膜ヘルペス

[26]鶴膝風

[27]下肢の筋萎縮

[28]下肢の麻痺
☆《金匱要略》に“崔氏八味丸は脚気上って小腹に入り、不仁するを治す”とあり、この脚気は近代医学の脚気を指すばかりでなく、足の麻痺するもの一般を指している《大塚敬節》
☆《大塚敬節》
“昭和23年の秋、埼玉県のある医師の家に往診に行ったところ、隣村からリヤカーに乗せてつれてきて、ぜひ診てくれという。
患者は体格のよい浅黒い顔をした農夫で、約1年ほど前から両下肢が麻痺して歩けないという。医師は脊髄性の疾患だと診断して、ペニシリンを注射しているが、よくならないという。食欲に異常なく、膀胱直腸障害はないが、臍下に力がない。
私はこの患者に八味丸を与えたが、1ヶ月ほどたつと、1人で立てるようになり、5ヶ月目には自転車に乗れるようになった。
ある日、この患者は自転車で通行中、前の主治医に出逢った。その医師は、彼の元気な姿に驚いて、どうして治ったかと尋ねたので、これこれの医師にかかって、漢方薬を飲んだら、こんなによくなったと話したという。そのためか、ある日のこと、この患者を治療していたという若い医師が、私を訪ねてきて彼にどんな薬を用いたかを聞いた。
その後、何年かたってから、この患者の隣村から、この患者と同じ容態だから、薬をくれといってきたので、八味丸を与えておいた。すると2ヶ月ほどで歩行が出来るようになった。”

[29]下腹部の麻痺感

[30]下半身の冷え

[31]肩こり
①腎陽虚。
②口渇。
③尿利減少or増加。
④腰痛。
⑤下腹部軟弱・無力。
⑥(臍下)腹直筋拘攣。
⑦舌湿潤無苔。

[32]脚気
☆軽症脚気等にして、下腹部軟弱、麻痺特に著しき証《奥田謙蔵》
☆此に脚気上り入り、少腹不仁と云ふは、その初、脚部麻痺し、或いは痿弱、微腫し、小便利せざる者等の症、遂に少腹不仁と作るにして、本と陰症に非ず。故に治も亦難からざる也。若し腹中に毒充満し、ひいて四肢に及び、遂に水気を見はす者に至っては、少腹不仁、小便不利等の症有りと雖も、此方を能く功を立つる所に非ざる也。急に大承気湯を与えて、以て之を下す可し。若し疑殆して決せず、姑息の治を為すときは、則ち短気、煩躁し、衝心して死せん《類聚方広義》
☆脚気で下半身がシビレて、歩行に困難している老婦人を1ヶ月足らずで、八味丸で全治せしめたことがある。30歳の婦人が10ヶ月目にお産をして、その後、脚気になり、ビタミンB剤の注射を続けているが、全く効がないという。
症状は下肢と下腹部のシビレ感で、それに脚がだるく、力がぬけたようで歩行困難である。食欲や大小便には異常はない。多少息切れがあるが、動悸は感じない。
八味丸を与えて、ビタミン剤を止める。これで次第に足に力がつき、シビレ感も去り、8週間の服薬で全治した。《大塚敬節》

[33]喀血

[34]体がだるい・重い

[35]眼瞼炎

[36]眼瞼湿疹

[37]眼底出血

[38]眼精疲労
☆かすみ目、羞明、手足の冷え、口渇、腹証で小腹不仁(腎虚)があるもの(漢方診療医典)

[39]間欠性跛行症
☆本方を服用していると、1ヵ月もたつと、だんだん長距離の歩行が可能になるが、軽快しても服用を続けることが必要である(漢方診療医典)

[40]乾癬(psoriasis)

[41]頑癬(=インキンタムシ)

[42]ギックリ腰

[43]気管支喘息

[44]脚弱

[45]急性膀胱炎

[46]ギランバレー症候群
☆脊髄炎で、歩行不能のものが、これで治った例が報告されており、筆者もこれで著効を得たことがある。効果があるときは1~2ヵ月で好転の兆候がある(漢方診療医典)

[47]狭心症

[48]虚労

[49]筋肉疼痛

[50]口の渇き(口渇)
☆糖尿病や尿崩症では激しい口渇とともに、多尿がある。このような者に八味丸証が多い《大塚敬節》
☆糖尿病には口渇と多尿を目標にして八味丸を用いるが、糖尿病の初期で口渇があり、体力の旺盛な者には、白虎加人参湯、竹葉石膏湯を用いることがある。《大塚敬節》
☆口渇があり、疲労感・腰痛等があれば、外見上強壮にみえても、八味丸を用いるべきである《大塚敬節》
☆老人には地黄剤の証が多いから、何病であれ、口渇or口乾を訴える者があれば、先ず地黄剤である八味丸・炙甘草湯・滋陰降火湯などの証でないかを考えてみる必要がある。《大塚敬節》

[51]血尿

[52]下痢:         
☆八味地黄丸は胃腸の弱い下痢する傾向の者に使ってはいけない。
☆八味丸の効く下痢はまれである。むしろ八味丸を用いたために下痢を起こす者すらある。事に悪心・嘔吐・心下痞硬などの胃の症状を伴う下痢には禁忌である。《大塚敬節》
☆糖尿病や腎臓炎などからくる下痢には、八味丸でなければならないものがある。このような代償性の下痢と思われるものには五苓散を用いて良い場合もある《大塚敬節》

[53]健忘症

[54]コルサコフ症候群

[55]高血圧症
☆慢性腎炎、萎縮腎、糖尿病などがあって貧血・息切れ・腰の痛み・ 排尿異常・夜間多尿・むくみ・精力減退などを訴える腎性高血圧。
☆内分泌性高血圧
☆腎臓炎があって、血圧が高い者。《大塚敬節》
☆高血圧症で、すでに腎硬化症を起こしている者《大塚敬節》

[56]声がれ

[57]更年期障害

[58]腰がだるい(腰・膝がだるく力がない)

[59]五更瀉

[60]呼吸促迫

[61]骨粗鬆症
☆下半身の疲労脱力、多尿、頻尿、尿利減少、腰痛などを目標に用いる。地黄が胃にさわることがあり、胃腸が丈夫なものに用いられる。四肢のしびれを伴うときは牛膝、車前子を加えて牛車腎気丸として用いる(漢方診療医典)

[62]跟痛(かかとの痛み)

[63]臍下不仁(臍下軟弱無力)

[64]さむけ(寒気)がする

[65]坐骨神経痛
☆糖尿病に続発するもの。
☆腰から足にかけてだるく、夜間に1~2回、小水に起きる者。
☆坐骨神経痛に用いられる。ことに糖尿病からくる者によい《大塚敬節》

[66]寒がり

[67]痔核(内痔核)

[68]痔出血

[69]痔瘻

[70]四肢が冷える

[71]湿疹
☆冷え症で口が渇き、小水の出が悪い老人。
☆患部は乾燥、またはやや湿潤。
☆萎縮腎がある老婦人で、夜間温まると、腰の周りが痒くて困ると訴える者《大塚敬節》
☆43歳の男性。3年前よりカユミのある発疹に悩まされている。某大学病院で神経性皮膚炎と診断されて、治療を受けているが、少しもよくならない。
患者は背が低く、色は浅黒い、発疹は胸部、頸部、上膊の内則、肩より肩胛骨間、臀部、下腹部より大腿部にかけて広範囲にわたり、その色が黒く墨を塗ってようである。時々あちこちにフルンケルが出来る。大便は1日1行、小便は出にくい。食欲はある。
私は発疹の色が黒くて乾燥していることと、尿の出にくいことを目標にして八味丸を与えたが、尿の出が良くなり、カユミを減じ、発疹の色の黒いのもとれてきた。服薬2ヶ月で8分通り全快している。《大塚敬節》

[72]嗜眠

[73]消化正常

[74]硝子体溷濁

[75]小児の五軟

[76]小児の頭蓋骨門の閉鎖不全

[77]小便失禁
☆咳をするたびに小便がもれる者がある。老婦人および妊婦にみられることがある。熱もなく気分も対して悪くないはが、セキをすると少しずつ小便が漏れて困る。これには苓甘姜味辛夏仁湯の証が多い。口渇があって、尿量の多い者には八味丸の証がる。足が冷え、顔色のすぐれない者で、脈の弱いものには真武湯の証がある。また咳をする時に大便のもれる者には、芍薬甘草湯の証がある。《大塚敬節》

[78]小便頻数

[79]小便不利:
☆腎虚、小便通ぜず、あるいは涼薬を過服して、閉渋いよいよ甚だし き者、及び、虚人下元冷え、転胞小便するを得ず、膨急切痛、45日を経て、死せんと欲する者を治す。《雑病論識》
☆地黄が不適の者→「括瞿麦丸」《金匱要略》等を考える。

[80]小便淋滴:
☆淋家、小便昼夜数十行、便し了あれば微痛し、居常、便心断えず、或いは厠に上らんと欲すれば則ち已に遺死、咽乾、口渇する者は、気淋と称す。老婦人に斯の症多し。此方に宜し。《類聚方広義》

[81]自律神経失調症

[82]視力減退

[83]視力障害:
☆この方は体力・気力ともに衰えた患者で、古人が内障眼と呼んだものに用いる《大塚敬節》

[84]ジンマシン:
☆腎炎患者に併発したジンマシン《大塚敬節》
☆28歳男性。慢性蕁麻疹。生来胃腸が弱い。1年前の夕食に鰯のなます(膾)を食べたところ、手指の股に痒い発斑が出た。翌日は腹部、翌々日は四肢の内側にでて、痒くてほとんど眠れなくなった。近所の医師から注射と内服薬で6ヶ月治療を受けたが、治らない。
T大学病院で慢性蕁麻疹と診断され、以来6ヶ月間、いろいろの治療を受けたが治らなかった。
 現症、患者はひどく憔悴している。体格は中等度である。顔色が蒼黒く、ツヤもハリもない。まるで死人の顔色のようである。私が黙って見つめると、「レスタミンを飲んでいると、こういう顔色になるんです」と患者は自身の顔を指す。私の見ている前で、患者が自身の左腕を掻いてみせる。みるみる白い膨斑が出てくる。「とてもかゆい」と顔をしかめる。ジンマシンの3症状(発斑、瘙痒、人工表記症)の存在を患者が実演してみせてくれたわけである。
食欲は不振、大便は便秘傾向で、2日乃至3日に1回、而も固くて出にくい。小便は約1時間おきに出るが、1回の量は極めて少ない。いつも後に残っているような感じがある。就床後は朝まで出ない。つまり、尿意頻数残尿感ー要するに、小便不利がある。
食後、心部が重苦しく何かがつかえた感じが、なかなかとれない(心下痞)、朝の寝起きに、口が苦くねばる(口乾)、下肢がだるい、夜中に足の裏がほてりフトンの外へ出す(足蹠煩熱)。
脈は浮弱。舌は乾燥し、一面に黄苔がある。腹は全般に軟弱無力で腹直筋の緊張が特に右側に著明である。
心部の振水音は強度(有微飲)、自覚的に腹鳴もある。臍上の動はかなり強い。右臍部にいわゆる血の圧点があり、下腹部には右側に知覚過敏がある(小腹不仁)。なお強度の肩凝りが両側にある。
患者は一見して虚証。診察の結果もまた同じである。すなわち、小便不利、口渇、足蹠煩熱、小腹不仁とうの病状群により、一応八味丸証と考えたが、次の3点でその診断を躊躇した。その1は脈状、八味丸証の部位は、少陰であるから、原則として脈は沈でなけらばならない。その2は舌状、原則として附子のゆく舌は湿って苔なく、いわゆるぬんめりとしていなければならない。その3は食欲ないし胃症状である。
そもそも八味丸は《金匱要略》の薬方で、その条文は次の5点である。○脚気上入小腹不仁○虚労腰痛小腹拘急小便不利者○夫短気有微飲当従小便去之苓桂朮甘湯主之腎気丸亦主之○男子消渇小便反多以欲飲一斗小便一斗○問曰婦人病飲食如故煩熱不能臥而反倚息者何也師曰此名転胞不得溺也以胞系了戻故至此病但利小便則癒
この条文の最後に“飲食如故”の4字がある。その意は、中焦に病変無しである。すなわち八味丸証の食欲は原則として普通でなければならない。
八味地黄湯5日分を投与した。なお心部に強度の振水音が存在することから、胃アトニー、胃下垂の疑いで胃のレ線診断を専門家に依頼したところ撮影の結果、強度の胃下垂が証明された。更に低血圧の疑いで測ったところ、初診時、血圧は仰臥位で、右側で110-70mmであった。
5日後、患者は生き生きした表情で来院した。服薬2日目から発斑が無くなったという。掻いても発斑が出ず、全然痒くないといって掻いてみせる。何ともない。食欲が大いに亢まり、丁度いい固さの大便が1日1回宛気持ちよく出る。小便の回数が減ると共に1回量が多くなり、澄んだ色の小水が実に気持ちよく出ると云う。持参した早朝採取の尿を検したが、タンパクはズルサリチル酸ソーダおよび煮沸により共に陰性である。
初診以来、約60日間、八味地黄湯を持重し、治った。(館野健 ・日本東洋医学会誌第6巻第3号)

[85]腎炎(急性・慢性):
☆腎炎で尿利の減少している者《大塚敬節》

[86]腎盂炎:
☆急性・慢性の腎盂炎。
☆サルファ剤や抗生物質でどうにもならない者に有効。
☆排尿後の不快感、残尿感、排尿回数の増加、腰痛がある者で、胃腸障害が無い者。(→五淋散)
☆婦人科手術後に起きる腎盂炎に有効。

[87]腎臓結核

[88]腎臓結石

[89]心悸亢進

[90]心臓性喘息

[91]神経衰弱

[92]腎癰の癰疽:
☆京門穴付近の肌肉が腫れ、京門穴から腎臓のほうに痛みが響き、膀胱の付近まで痞満・疼痛する。

[93]ストロフルス

[94]水腫:
☆陰茎、陰嚢よりする者もまた虚腫なり。《先哲医話》
☆産後の水腫、腰脚冷痛し、小腹不仁にして、小便利せざる者を治す。水煮して服す。《類聚方広義》

[95]頭痛:
☆北尾春甫は、激しい頭痛に八味丸を用いている。その患者は、眼が赤く充血し、頭から汗が出て、頭がひどく痛むので、頭をかかえていた。脈をみると緩で、足が冷えている。そこで命門の火が衰えたためと診断して八味丸を用いたところ、2回飲んださけで全治した。《大塚敬節》

[96]精神分裂病

[97]性的神経衰弱

[98]精力減退

[99]脊髄炎
☆《大塚敬節》
“患者は18歳の女。約40日ほど前に、左の項部が痛み、間もなく右の手がシビレた。1人の医師は神経痛といったが、他の医師はリウマチと診断した。そのうちに、右の手足、からだ中がシビレて動かなくなった。そこで医師を更えたところ脊髄の病気と云われ、某病院に入院し、脊髄炎と診断さられた。そして大小便も出なくなった。
私が診た時は、体温38℃、右半身が麻痺して、動かない。左半身にも麻痺があるが軽い。
私はこれに八味丸を与えたが、10日ほどで、尿が自然に出るようになったが、その前に尿が出なかったため、たびたび導尿をしたため膀胱炎の症状が残っていた。しかし2ヶ月足らずで、尿も快通するようになり、シビレもほとんどとれ、歩行も出来るようになった。”
☆武藤文雄氏、日本東洋医学会第17回
“72歳男性。患者は生来健康にして著患を知らない。昭和34年4月から手足にシビレ感があり、それから以後時々物を握ると手がくっついて手指が開きにくくなるという現象があったが、四肢の運動には異常がなかった。昭和34年10月下旬に至り、手足の運動が不自由となり、遂に歩行不能になり、排尿困難及び便秘がちとなり臥床するに至った。以来1ヶ月医治をうけたが効果がなかった。
体格良好、栄養やや衰う、脈浮、緊張良好、60、胸部打聴上著変はない。頸部以下知覚鈍麻し、特に右半身は左半身よりも強い。上肢及び化しは痙攣性麻痺の状態にあり、筋肉は軽度の萎縮を認める。
二頭膊筋腱反射()、三頭膊筋腱反射()、腹壁反射(ー)、堤睾筋反射(ー)、膝蓋腱反射()、アキレス腱反射()、膝搦(ー)、足搦()、バピンスキー氏現象(ー)、オッペンハイム氏現象(ー)
腹部は胸脇苦満高度にして心下部の充実抵抗著明。下腹部はやや軟である。四肢の運動麻痺及び膀胱直腸障害により八味丸の投与、10日にして足搦消失し、20に日にして膀胱障害は消失し、他人の介助により歩行可能となった。患者はこれで服薬を中止してしまった。
5月後、再診する機会を得、脊髄液を検査することが出来たが、ワ氏及び村田氏反応は(ー)であった。四肢の運動は全く健康人と変わりないが、手掌及び足蹠に極度の知覚麻痺を残しており、腹壁反射及び堤睾筋反射は依然として陰性であったが、日常生活には何等支障がない状況であった。”
[100]脊椎症:

[101]舌質 <淡白><湿潤>>

[102]舌苔 <無苔><白滑>

[103]前陰部が冷たい

[104]前立腺肥大症:
65歳の頑丈な体格をした男性。前立腺肥大がひどくなって、10日ほど前から尿道にカテーテルを入れっぱなしで、それでやっと排尿を図っているが入院室が塞がっているので、まだ5、6日には、このままでいなけれならず、カテーテルを入れなくて尿の出る方法はあるまいかと云う。そこで八味丸料を用いた。すると服薬3日目にカテーテルを外したが、自然に排尿があり、ついに手術をやめて、2ヶ月ほど呑んだ。《大塚敬節》

[105]早漏

[106]喘息:
☆三陰、寒を受け、湿脚上に著き、枯痩色淡なり。小腹不仁、腹急疼痛し、上気喘急す:「沈香」《張氏医通》
☆少年哮喘、その性、善く怒り、病、寒天に発す:「生鉄落」

[107]前立腺肥大:
☆前立腺肥大の頻尿と排尿困難または尿閉。《大塚敬節》

[108]だるい

[109]帯下:
☆婦人の白沃甚だしき者も、亦此方に宜し《類聚方広義》    (沃=ヨク、そそぐ)(白沃=白帯下)
☆知人の細君で、29歳、妊娠の経験はない。色は浅黒く、一見丈夫そうに見える。約1ヶ月前より排尿時に尿道より下腹部に放散する疼痛を訴え、下腹部より右足にかけて疼痛がある。下腹部には圧痛もあり、月経の量が多い。下腹部には膨満感があるが、軟弱である。腰脚は冷えやすく、肩凝りがあり、大便はときどき秘結する。以上の症状によって、子宮内膜炎に膀胱炎を兼ねるものと診断して、竜胆瀉肝湯を与えたが、10日間飲んでも、排尿時の疼痛が去らないばかりか、却って激しくなる。そこで八味丸に転方したところ、だんだん軽快し、48日間の服用で、自覚的な苦痛が取れたので、一旦服薬を中止した。しかし完全に治っていなかったので、その後、2回ほど再発し、その時も八味丸で良くなった。
色の浅黒いこと、帯下のあることなどを目標にして竜胆瀉肝湯を用いたが効無く、八味丸の効いた例である《大塚敬節》

[110]苔癬(lichen)     

[111]脱力感

[112]脱肛

[113]多痰

[114]多尿(尿量多い)

[115]タムシ

[116]タンパク尿

[117]痴呆症

[118]知力減退(あたまが働かない)

[119]椎間板ヘルニア
☆58歳女性。子宮脱があり、腰痛を訴えていた。私はこの婦人に先ず桂枝茯苓丸を与えたところ、1ヶ月もたたないのに子宮脱が治ってしまった。ところで子宮脱のための腰痛ではなかったらしく、腰痛はよくならない。そこで患者が某大学病院で診てもらったところ、椎間板ヘルニアと診断せられて、コルセットをつけることになった。コルセットをつけていると楽であるが、止めると元のように痛むという。そこで八味丸を与えた。これを3週間ほど飲むと、腰が楽だという。ところがこの婦人は職業が美容師で、少し良いと1日中立って仕事をするので、また元通りになり。そこで仕事を休んで2ヶ月ほど続けて八味丸を飲んだところ、コルセットをつけなくても、腰が痛まないようになった。子宮脱の方も、その後、再発しないでいる。《大塚敬節》

[120]疲れやすい:
☆老人などで、腰から下の力が抜けて、足が疲れやすく、歩行に困難する者《大塚敬節》

[121]つばを吐く:
☆西八代の村野某、51歳は、昨年の冬の初めに、感冒にかかり、それが治った後で、ツバを吐いて止まず、何人もも医師にかかったが治らない。
診ると、顔色は惨憺として暗く、皮膚は光沢を失ってガサガサし、動作がいかにも大儀そうである。しかし食欲も大小便も平素と変わらない。そこでツバは素問にいうところの腎液である。すなわち病は腎にあるのだとして、八味丸料を与えた。これを2週間ほど飲むと、すっかり治ってしまった。(和漢医林新誌弟57号)

[122]手足のほてり

[123]手足が冷たい(冬期)

[124]低血圧症

[125]動作が緩慢

[126]糖尿病:(消渇)
☆疲労倦怠感は強いが、胃腸は丈夫で下痢・嘔吐はなく、便秘がちで、小便が出にくい者と頻尿・多尿の者がある。
☆手足が冷え、口渇する者で、下腹部が軟弱でふわふわの者と、突っ張って苦しい者がある。
☆地黄が不適の者→括楼瞿麦丸《金匱要略》
☆糖尿病、及び尿崩症等にして、その脈微なる者《奥田謙蔵》
☆糖尿病で口渇多尿の者《大塚敬節》
☆金匱要略に“男子の消渇は小便反って多く、一斗を飲むを以て、小便一斗なるは、腎気丸之を主る”とあり、腎気丸と八味丸は同体異名である。これによって、八味丸を糖尿病に用いる。(漢方診療医典)
☆八味丸は、元来、口渇、多尿、疲労倦怠、腰痛、性欲減退などを目標にして用いているから、糖尿病に用いることが多い。ただし胃腸障害があって食欲不振、嘔吐、下痢などがみられる場合には用いない方がよい(漢方診療医典)
☆52歳の男性。
「2ヶ月前から全身倦怠感がある。体中がかゆく、頭痛がして、のどが渇いて水を飲みたがる。動悸・脱力感・下腹と背中の締め付けられるような感じを訴える。病院で検査し、糖尿病と診断された。
体格はでっぷりとして肥満タイプ。顔色は赤い。腹診すると、胸脇苦満が認められる。血圧は(130-90)で、検尿してみると、糖はプラスであった。
柴胡加竜骨牡蛎湯+八味地黄丸を与えたところ、2週間後の検査で血糖の低下が認められた。自覚症状も徐々に良くなったので、以後は八味地黄丸を丸薬で服用させたところ、経過は良好である。」《矢数圭堂》

[127]糖尿病性腎症
☆慢性化し軽度の浮腫やタンパク尿、高血圧を伴う者に用いる。老化に伴う腎機能低下のある者に用いられる。浮腫が無くて、タンパク尿と高血圧を主訴とするももには「釣藤鈎3.0黄柏1.5」がよい(漢方診療医典)

[128]糖尿病性掻痒症

[129]吐血

[130]動脈硬化症
☆腎硬化症で、倦怠、疲労感がひどく、夜間の多尿、腰痛、下肢の脱力痿弱感のあるものに用いる。また、間欠性跛行症にも用いる。(漢方診療医典)
☆腎機能を調整して、血液循環をスムーズにさせる。

[131]夏まけ・夏バテ

[132]難聴:
☆神経性難聴に用いる《大塚敬節》
☆老人性難聴。
☆62歳男性。耳鳴り・難聴を主訴として来院した。筋骨質のよい体格で、色が浅黒く、大小便、食欲に異常はないが、夜間2~3回の排尿があるという。この患者に八味丸を与え、一旦は電話で通話出来るほどに回復したが、また元の通りに悪くなった。噂によると、八味丸で性欲が旺盛になり、疎遠になっていた妾の家に、しげしげと通っていたというから、悪化の原因がそんなところにあったかも知れない。そこで腎虚による耳鳴り、耳聾を治すと《衆方規矩》に出ている滋腎通耳湯に転方し、やや快方に向かうようにみえたが、ついに全治せず今日に至っている《大塚敬節》
☆老人性感音性難聴に用いられている。腎虚、腹証ではとくに臍下不仁を目標に用いられる(漢方診療医典)

[133]尿失禁(尿もれ):
☆子宮ガン手術後の失禁《大塚敬節》
☆産後の尿失禁《大塚敬節》
☆54歳女性。子宮ガンを手術し経過は良好であるが、時折、知らない間に尿がもれるもで、外出が不安で当惑しているという。それに左の鼠径部~大腿の内側部にかけてひきつれるような感じがある。口渇はあるが、なるべく呑まないようにしている。食欲は旺盛で、大便はやや硬く、便秘の傾向がある。
私はこれに八味丸料を与えたが、10日目頃から、尿がもれなくなったので、休薬していたところ、疲れると、また失禁するという。そこで5ヶ月ほど。これを飲み続け、最近はすっかり良くなった。《大塚敬節》

[134]尿の白濁:
☆小便混濁して膏淋の如く然り。《雑病論識》
☆此症、小便泡を生ずるを的と為す《先哲医話》
☆「六味丸犀角」を以て効を収むと。これ八味地黄丸と一陰一陽相表裏を為して皆神方なり。《雑病論識》

[135]尿閉(=転胞):
☆転胞の套剤となす。而れども服法逐次分量を増すに非ざれば則ち効無し。此れ即ち水源を益すの意なり。宜しく3銭より8銭に至るべきを妙とす。《先哲医話》
☆尿閉等にして、脚部特に寒冷を覚ゆる証《奥田謙蔵》
☆妊娠末期の尿閉《大塚敬節》
☆子宮ガン手術後の尿閉《大塚敬節》
☆72歳男性。前立腺肥大があって、時々尿閉を起こすことがあったが、其の都度カテーテルで導尿していた。ところが数日前、ひどく寒い晩にやむを得ない要件で外出して、夜遅くなり、帰ってから尿意をしきりにもよおし、10~15分おきに便所に通うようになった。しかも1回の量は数滴である。そこで翌朝医者を呼んで、導尿してもらった。そして、いよいよ手術ということになった。ところで、この患者には古い肺結核があって、これも全治しておらず、白内障もあり、体力がかなり衰えているので、手術をしたくないというので、私に往診を乞うた。
患者は背が高くて痩せ、血色も良くない。少し動くと息切れがする。脈は大弱である。大便は1日1行あるが、尿は導尿しなければ出ない。食欲はあるが、控えているという。足がひどく冷えると言う。
以上の症状から、私は八味丸料を与えた。すると翌日の夕方になて、自然に排尿があった。その後30分から40分おきに、少しずつ尿が出るようになった。1ヶ月ほどたつと、1時間くらい尿を我慢することが出来るようになった。ただガスが溜まるのが苦になり、ときにめまいがあり、心臓が悪いよな気がするという。それに天気が悪いと尿が近くなる。しかし2ヶ月後には舞台に出ることが出来るほどに良くなった。それから3年になる。患者は薬を呑んだり、しばらく休んだりしているが、この頃は尿閉を起こす事もないし、尿が近くて眠れないということもない。《大塚敬節》

[136]尿崩症:
☆(小便自利して口渇する)

[137]尿量多い

[138]尿量回数が多く、1回の尿量少ない

[139]尿路結石

[140]妊娠中の子宮の位置異常(前屈・後屈)

[141]妊娠中の排尿障害:
☆妊婦の尿閉症等《奥田謙蔵》

[142]ネフローゼ
☆慢性化し軽度の浮腫やタンパク尿、高血圧を伴う者に用いる。老化に伴う腎機能低下のある者に用いられる。浮腫が無くて、タンパク尿と高血圧を主訴とするももには「釣藤鈎3.0黄柏1.5」がよい(漢方診療医典)

[143]寝小便

[144]脳水腫

[145]脳出血:
☆脳出血による歩行困難に用いたことがある。初診は昭和12年5月16日。患者は71歳の婦人で、数年前、軽い脳出血にかかり、右の足の運びが悪い、そのため時々転倒する。患者は小便が快通しないことを気にして腎臓が悪るくはないかという。食事は多く摂ると、尿の出が悪くなって、下腹部が脹って苦しいという。大便は1日1行であるが、快通しない。食欲はある。口は乾く、血圧はいつも200から210くらいあるという。脈は弦で力がある。
腹診すると、左右の腹直筋が拘攣し、ことに右の下腹部に圧痛がある。足の運びが悪いこと、尿の出が悪いこと、下腹部が脹って腹直筋が拘攣していることを目標にして八味丸を与える。これを飲み始めて、3週間目には、1人で電車に乗ってくるほど足に力がついた。尿も大便も快通するようになった。《大塚敬節》

[146]脳塞栓

[147]脳卒中後遺症

[148]ノイローゼ

[149]肺気腫

[150]排尿困難:
☆排尿異常に、最も広く、最もしばしば用いられる方剤《大塚敬節》
☆冷淋、小便秘渋し、数起きて通ぜざるを治す。《世医得効方》

[151]排尿時に灼熱感・疼痛:
☆淋を患う数年、痛み錐刀の如く、諸薬応ぜざるを治す:「車前子沈香人参」《雑病論識》

[152]排尿に時間がかかる

[153]白内障:
☆白内障に有効《藤平健》

[154]白帯下

[155]冷える

[156]膝に力が入らない

[157]皮膚疾患

[158]貧血:
☆諸種の貧血性疾患にして、脈微弱、尿溷濁を呈する証《奥田謙蔵》

[159]頻尿

[160]ふらつき

[161]ふるえ

[162]腹直筋(下腹部の)拘攣

[163]浮腫:
☆虚腫の浮腫に用いる《大塚敬節》
☆中年以後の人で、午後になると足が腫れて、朝は足に浮腫がないと程度のものに用いて効がある《大塚敬節》
☆腎炎やネフローゼなどの浮腫。ことにやや慢性になったものには、用いる場合が多い。《大塚敬節》
☆腎の機能が悪くなって、尿利が減少し、腰から下が腫れる者に用いる。また、産後の水腫に用いる。虚弱な婦人の産前からの水腫が産後日がたっても、腰から下に浮腫が残り月を越し、年を経ても治らない者に、加味腎気丸を用いる《百々漢陰》
☆壮原湯も、腎の機能が衰えた場合の浮腫に用いる。主に下半身に浮腫があって、尿利が減少し、その浮腫が上の方にも及んで、上気して喘息の状のある者に用いる。下半身を目標とする点では腎気丸に似ているが、上気、喘息があれば壮原湯を用いる。《百々漢陰》
☆豊後、光西寺の主僧某上人は、一身脹腫し、小便不利し、心中煩悶して、気息絶せんと欲す。脚殊に儒弱。一醫、越婢加朮湯をつくりて之を飲むこと数日、その效なし。《吉益東洞》先生之を診す。按じて小腹に至り、その不仁の状を得る。乃って八味丸をつくりて之を飲む。一服にして心中やや安し。   再び服して小便快利す。いまだ10剤を盡くさずして全く癒ゆ。《建珠録》

[164]不整脈

[165]不妊症

[166]不眠症

[167]ヘルペス

[168]変形性膝関節症

[169]変形性脊椎症

[170]片頭痛:
☆三好修一氏は、片頭痛に八味丸を用いて著効を得た。その患者は、いつも頭がはっきりせず、足の裏が火照って熱し、ノドが渇き、左半分の頭と頬と肩が痛むという。診察すると、下腹が冷えて、この部は綿のように軟弱である。そこで八味丸の証と診断して、この方を用いたところ、3日分の服薬で全治した。《大塚敬節》

[171]便秘:<兎糞状>

[172]膀胱萎縮

[173]膀胱炎:
☆膀胱炎による頻尿と排尿痛または尿意の促迫、残尿感《大塚敬節》
☆24歳女性。主訴は尿意の頻数と排尿後の尿道口の疼痛で、激しい時は2~3分間の間隔で便所に通うが、尿は少ししか通ぜず、その後の気持が実に名状できないほど苦しいという。その時、下腹部を温湿布すると、ややしのぎやすいが、乗り物などには、とても長く乗っておれないと言う。夜もそのために殆ど安眠せず、専門医に治療を受けること1ヶ月になるが、ますます症状は悪化する一方であるという。食欲は平生どおりで、発熱や悪寒はない。大便は3日に1行ぐらいで、月経は整調である。その他の症状としては右の肩が 凝るのと、痔からの出血がある。
診察してみると、患者は栄養、血色ともに普通で、下腹部は硬くて、圧によって不快感を感じ、左の腸骨の部分には指のようにタテに硬いものを触れ、この部分を軽くこするように按すと、ビクッとするように痛む。これは古人は小腹急結と呼んだもので、瘀血の腹証である。尿はひどく混濁しているが、肉眼的には血液らしいものは見えない。
さてこの患者は八味丸の証と桃核承気湯の証との2つがあるように思われる。尿意の頻数と排尿痛、それに下腹部の圧による不快感は、八味丸でよくなるであろう。便秘と痔出血と左腸骨の疼痛は、桃核承気湯でよくなるであろう。この場合、どちらを先に用いたらよいか、或いは2つの処方を1つに合わせて用いたらよいか。
私はまず八味丸を先に用いた、すると5日目で患者の苦痛の大半は去って、尿が快通するようになった。この八味丸は1ヶ月服用し、次に桃核承気湯を用いた、その頃には、膀胱や尿道方からの症状はすっかりよくなり、大便が秘結し、排便時にに痔が痛んで出血するという症状が残っていた。桃核承気湯は1週間飲んだ。これで痔の症状が軽快したので一旦服薬を中止した。《大塚敬節》

[175]膀胱結核

[176]膀胱括約筋麻痺

[177]膀胱直腸障害 

[178]ボケ(思考力・記憶力減退)

[179]歩行困難:
☆八味丸は下肢に力がなくて歩行に難渋する者、または下肢が麻痺して歩行不能の者、または下肢の知覚鈍麻や麻痺のある者などによく用いられる《大塚敬節》

[180]発疹:
☆胸背・手足に、蚊や蚤に刺されたような発疹。

[181]慢性関節炎

[182]慢性腎炎:
☆腰から足にかけてだるく、夜しばしば小水に起き、タンパク尿と高血圧の顕著な者に用いる。
☆浮腫はあってもなくてもよい。
☆症状によって[牛膝・車前子]or[釣藤鈎・黄柏]

[183]慢性頭痛

[184]慢性淋病

[185]耳鳴り:
☆老人の耳鳴りは、いわゆる腎虚に属する者が多いから、八味丸、滋腎通耳湯などを用いることが多い《大塚敬節》

[186]無月経

[187]夢精

[188]もうろう感

[189]網膜炎

[190]網膜出血

[191]網膜剥離:
☆私の中学校の先輩H氏は、網膜剥離にかかり、故黒沢先生の診療を受け、八味丸によって全治した。《大塚敬節》

[192]夜間多尿(夜間排尿2回以上)
☆夜間、5、6回の排尿が有る者《大塚敬節》
☆58歳男性。高血圧症で来院した。主訴は夜間の多尿で、昼間は尿量が少なく、夜間は2000‹にも達するという。そのため安眠を得ず、頭が重い。軽い耳鳴りとめまいもある。大便は1日1行。食欲も普通である。腹診してみると、臍部で動悸が亢進している。この臍部の動悸は、地黄剤を用いる1つの目標である。尿中にわずかにタンパクが認められ、既往症に腎炎もあるから、慢性腎炎から萎縮腎となて夜間の多尿が現れるようになったものであろうと考え、八味丸料を与えた。これを飲み始めると、夜間の排尿が減じ、2、3回起きるだけとなり、昼間の尿が多く出るようになった。血圧は初診時180-100内外のものが、2ヶ月後には160-95内外となっている。《大塚敬節》

[193]夜尿症(おねしょ)
☆筋肉の緊張は良くないが、肥えている。血色はあまりよくなく土色をしている。食欲はある。口渇もある。運動神経が鈍くて、動作が活発でない、このような患者の夜尿症に効がある。このような患者で昼間にも尿のもれるものがある(漢方診療医典)

[194]遊走腎

[195]腰脚麻痺

[196]癰疽:
☆既発未発にして、渇する者を治す。「附子五味子」=加味八味丸《精要》

[197]腰痛症:
☆(活動時よりも、安静時が多く、鈍痛、長引く)
☆腰神経痛、及びその類証にして、下腹部拘急し、尿利減少する者《奥田謙蔵》
☆腎臓虚弱、面色黎黒、足冷足腫、耳鳴耳聾、肢体羸痩、足膝軟弱、小便不利、或いは多く或いは少なく、腰背疼痛するを治す:「鹿茸五味子」
☆この方は糖尿病、腎疾患、高血圧症などから来る腰痛や、いわゆる老人性腰痛などによく用いられる。《大塚敬節》
☆無理を重ねて疲れて起こった腰痛には、とくに良く効く。この際、下腹部で腹直筋が突っ張っていることが多い。小便は不利することもあり、淋瀝することもあり、出過ぎる場合もあって、一定しない。《大塚敬節》
☆老人性亀背にみられる腰痛にも用いられる。この病気は老婦人に特に多く、背が円く曲がって、腹をみると、臍部で上下に腹が折れるようになり、腹直筋が棒のように突っ張っている。《大塚敬節》
☆67歳、某家の女中。其の家の主人が風邪を引き、私に往診を頼んできたので、いつものように奥に通ると、平素はまめまめしく働いている女中さんが、火鉢のそばに坐ったまま動かない。「どうした?」と尋ねると、5、6日、前から腰が痛くて便所に行くにも這って行く始末だという。仰臥させて、腹を診る。左右の腹直筋が棒のように突っ張っている。伸ばそうとしても腰が伸びない。痛む部位は、俗に細腰といっている部位で、じっとしておれば痛まないが、立とうとしたり、寝返りをしようとすると、ビックリするほど痛むという。脊椎には圧痛は無い。私はこれに八味丸を与えたが、7日分で歩行が出来るようになり、3週間の服用で全快した。《大塚敬節》
☆72歳老人。
「2年前から腰痛に悩まされるようになった。特に歩くと、杞子の左の方が痛く、いろいろな注射を打ったり、飲み薬をもらったり、とには灸をすえてみたが、いずれも全く効かなかった。年のせいもあって、手足が冷え、のどが渇くという。そこで八味地黄丸を試みたところ、すっかり腰痛の消えて、体調も良くなった」《山田光胤》
☆中年以降の腰痛に八味丸がよく用いられる。口渇、口乾があり、舌は苔なく乾燥していて小腹不仁を認める。胃腸虚弱のものには不適(漢方診療医典)

[198]緑内障:
☆この方を緑内障に用いて、効力にみるべきものがあった。《小倉重成》

[199]老人性掻痒症

[200]老人性痴呆症

[201]老人性膀胱萎縮



八味疝気方[1-1]《福井楓亭》《龍野ー漢方処方集》
「桃仁4.0g、桂枝・延胡索・木通・烏薬・牡丹皮各3.0g、牽牛子末0.2g、大黄1.0g」牽牛子は煎じて滓を去ってから加える。



#八味疝気方[1-2]《福井楓亭》《漢方治療の実際》
「桂枝・延胡索・木通・烏薬・牡丹皮・牽牛子各3、桃仁6、大黄1」
◎《観聚方》烏薬を烏頭に作る、誤りなり。《勿誤薬室方函口訣》
「腹痛ある者は大黄」=七味疝気方。
◎寒疝、ヘソをめぐって痛み、及び脚の攣急、あるいは陰丸の腫痛、あるいは婦人瘀血、血塊の作痛、あるいは陰戸の突出、腸癰などを治す。

◎凡そ小腹以下の諸疾患、水閉瘀血に属する者並びに治す。
◎此方は、戦記血分に属する者を主とする。当帰四逆加呉茱萸生姜湯は和血の功あり。此方は攻血の能があって虚実の分とす。《勿誤薬室方函口訣》
◎婦人血気刺痛を治す。
◎楓亭の識見では、疝気は本水気と瘀血の2つに因って痛を作す者の病名とする。故に大黄牡丹皮湯、牡丹五等散、無憂散、四烏湯、烏沈湯などの薬品を採択して一方となすなり。此の意を体認して用いるべし。
◎疝はもと、水気と瘀血とに因って痛を為すの病なり。余、故に大黄牡丹皮湯において牡丹皮・大黄・桃仁を取り、牡丹五等散において桂枝を取り、無憂散において牽牛子・木通を取り、四烏湯、烏沈湯において烏薬を取り、又延胡索一味を加え立てて一方と為す。以て臍下および脚攣急、陰嚢腫あるいは瘍、あるいは婦人腰に引いて痛み、而して痛みあるいは陰門に引き、あるいは陰戸突出する者を治す。《先哲医話》
◎冷え腹で痛む者。
◎脚攣急、或いは陰嚢睾丸腫、或いは婦人月経不順血塊痛みをなす者。
◎子宮脱。


八味順気散[1-1]《厳氏済生方》《古今方彙》
      「白朮・茯苓・青皮・白・陳皮・烏薬・人参各1銭、甘草2分、生姜」水       煎温服。
◎中風にて正気は虚し、痰涎壅盛する者を治す。

八味順気散[1-2]《厳氏済生方》《漢方治療の実際》
      「白朮・茯苓・青皮・白・陳皮・烏薬・人参各3、甘草1」

八味順気散[1-3]《厳氏済生方》《東醫寶鑑》
「人参・白朮・白茯苓・青皮・白・陳皮・烏薬各7分、甘草3分」を煎服。
  ◎中気の特効薬
◎中風にて正気は虚し、痰涎壅盛する者を治す。
    ◎「四君子湯烏薬・青皮・陳皮」《大塚敬節》
    ◎平素から胃腸が弱くて、気鬱の傾向がある者を目標とする《大塚敬節》
    ◎《衆方規矩》には“中風を治すには先づこの薬を服してその気を順らして、次     に風を治する薬を用ゆ”といい、“にわかに倒れて人事を知らず、痰が多くて     ノドを塞ぎ体がすくんで動かず、シビレ、舌が強ばり、物を言うことの出来な     い者には、この湯を与えて効験がある”とも云っている。しかし“すべて気が     欝して起こった病で気の弱い者に妙である”という点に注目しなければならな     い。《大塚敬節》
    ★適応症及び病名
顔面神経麻痺:
        ☆気のめぐりが悪く、胃腸が弱い者《大塚敬節》
        ☆《医事小言》
        “1人の士が夏、殺生に出掛けたところ、あんまり厚いので、人家に入         って酒を飲んで涼んでいるうちに、うたた寝をした。眼が覚めてみる         と、お供の者たちは、主人の口がゆがんでいるのを見て驚いたが、と         ころが本人は別に苦しいところはないから、殺生に行こうと云ったが、         これを無理にとどめて家に帰り、余に治を乞うた。
          診察してみたところ、脈は和して異常などどこも煩しい所はない。         これは中風の一種だと診断して、八味順気散を与えたところ、10日         ばかりで口も眼も、元のようになった”




 八味帯下方[1-1]《山田元倫撰=名家方選》
      「山帰来6.0g、当帰・川・木通・茯苓各3.0g、陳皮・金銀花各2.0g、大黄1.0      ~2.0g」《龍野ー漢方処方集》
    ◎湿熱薀結し、臭物の類を下すを治す。
    ◎小児の頭瘡、胎毒として之を治し無効の者は、母に帯下あり、その乳を哺する     に因りて発するなり。すみやかに乳母を換えれば則ち癒える。
◎婦人の頭瘡もまた帯下に因る者あり。さらに八味帯下方を与え、座薬を兼用す     れば則ち癒える。《先哲医話》



八味帯下方[1-2]《名家方選》《漢方治療の実際》
      「当帰5、川・茯苓・木通各3、陳皮2、山帰来6、金銀花3、大黄1」

八味帯下方[1-3]《名家方選》《漢方後世要方解説》
      「当帰5、川・茯苓・木通各3、山帰来4、橘皮2、金銀花1、大黄0.3~1」
    ◎此方は、《本朝経験》の方で湿熱帯下を治する妙剤とされている。
    ◎淋毒性の帯下、膣炎、子宮内膜炎等により有色有臭性のものを多く下すによい     といわれている。
◎筆者の経験によれば、帯下の症、腹筋肝経に沿うて緊張し皮膚浅黒く、実証の     ものは「竜胆瀉肝湯」、更に壮実炎症充血甚だしく便秘するものが「大黄牡丹     皮湯」、此方はやや虚状を呈する腹状のものに効がある。虚状にして腹筋緊張     せるは「加味逍遥散」、白淫の症は「清心蓮子飲」である。
    ◎山帰来=風熱を去り、瘡毒を治す。
金銀花=熱を散じ、毒を解し、瘡瘍を治す。
     当帰=血を補い、燥を潤し、諸瘡瘍を治す。
     川=血を補い、燥を潤す、風湿を去る
     茯苓=脾を益し、湿を除く、水毒を去る
     木通=湿熱を除き、小便を通利す
     橘皮=気を利し、湿を乾かす。
    ★適応症及び病名
[1]帯下:
        ☆膿性悪臭性の帯下。
        ☆此方は婦人帯下黴毒を兼ねる者に用いて効あり。もし陰中糜爛、疼痛         甚だしく、臭気鼻をおおう者は「甘汞丸」が兼用すべし。《勿誤薬室         方函口訣》   
        ☆梅毒性のものでない帯下にも良く効く。《大塚敬節》
        ☆淋毒性子宮内膜炎からくる白帯下に使用する。
        ☆32歳女性。かって肺結核に罹ったことがある。7年前より黄色の帯         下があり、どうしても治らないという。月経は不順で、遅れ勝ちであ         る。大便は3日に1行で硬い。
腹診上、腹力は中等度にあり、右下腹部は強く按圧すると鈍痛があ         る。私はこれに八味帯下方を用いたが、これを服用すると、大便が快         通し、1ヶ月後には帯下も半減した。そこでしばらく休薬していたら、         またもとの通り悪くなった。そこでまた服薬を始め、2ヶ月たつと、         帯下がほとんど出なくなったばかりか、前々からあった蓄膿症までも         軽快した。《大塚敬節》



八味大黄湯《勿誤薬室方函口訣》
「謝道人大黄湯《外台秘要方》滑石・木通」


八味湯《福井楓亭》
      「捜風解毒湯《本草綱目》遺糧(土茯苓)」
    ◎楊梅瘡已後、奇良を用いて頭痛する者を治す。


八味補腎丸《東醫寶鑑》
      「熟地黄・菟絲子各8両、当帰身3両半、肉蓉5両、山茱萸2両半、黄柏       ・知母(並酒炒)各1両、破故紙(酒炒)5銭」作末し酒糊で梧子大の丸剤。       温酒or塩湯で50~70丸飲む。
    ◎虚労を治し、腎を補う。


 八味李根湯《医学入門》《古今方彙》
      「当帰・芍薬・茯苓・黄各2銭、桂枝3銭、甘草・半夏各1銭、甘李根白       皮1両」水煎温服。
    ◎動気上に在り、汗を発すれば気上りて心を衝き息するを得ざるを治す。

八味理中丸《東醫寶鑑》
      「白朮2両、甘草1両半、人参・乾姜・縮砂・白茯苓・神麹・麦芽各1両」       作末し蜜で丸め1両を8丸に分作し、毎回1丸を姜湯で飲む。
    ◎脾胃が冷え、飲食が消化されない。
    ◎腹脹・嘔吐・下痢を治す。

八味類款花散《東醫寶鑑》
      「桑白皮・紫蘇葉・杏仁・麻黄各1銭半、款冬花・紫茸・五味子・甘草各1       銭」作1貼し、水煎し滓を去り、「黄・角子」を入れて再煎服用。
    ◎肺経の寒熱げ不順で涎嗽が止まらない者を治す。


八物散《三因極一病証方論》《古今方彙》
      「桂枝・当帰・川・前胡・防風各3分、芍薬1銭半、甘草・茯苓各5分、       生姜、大棗」水煎。
◎足の厥陰が風に傷れ、悪風、而して自汗を倦み、小腹急痛し、寒熱瘧の如く、     骨節煩疼、脉尺寸倶に微にして遅なるを治す。

 八物湯《氏》 《龍野ー漢方処方集》
=八珍湯
      「人参・白朮・茯苓・当帰・川・熟地黄・芍薬各3.5g、甘草2.5g、大棗        2.0g、干姜1.0g」
    ◎血気虚弱、或いは悪寒発熱、或いは煩躁口渇、或いは寒熱昏迷、或いは胸膈平     かならず大便実せず、或いは食欲不振、下腹脹満などする者。
    ◎小児の解顱を治す。
    ◎熱あれば:「黄(酒)・黄連・甘草」
    ◎女人出痘、正に起発、貫漿の時に当たり、適々径行に遇い、3日止まざる者は     瘡必ず応に起発すべくして起発せず、応に貫漿すべくして貫漿(腫れがつぶれ     て漿液が出る)せずして頂平が形し或いは灰白色或いは黒く陥る者は:「     地黄黄蓍・木香・附子」《済世全書》
    ◎下疳、腫痛腐潰し気血虚して火あるを治す:「山梔子・柴胡」《薛立斎十六     種》


 八物湯《東醫寶鑑》
    (一名八珍湯)
      「人参・白朮・白茯苓・甘草・熟地黄・白芍薬・川・当帰各1銭2分」       作し、煎服。
    ◎虚労の気血両虚を治し、陰陽を調和させる。
    ◎脇下の一点がいつも痛んで止まらない(木香・青皮・桂心)

 八物湯《三因極一病証方論》
      「桂枝・当帰・川・前胡・防風各3分、芍薬1銭半、甘草、茯苓各5分、       生姜、大棗」水煎す。
    ◎足の厥陰が風に傷れ、悪風、而して自汗を倦み、少腹急結し、寒熱瘧の如く、     骨節煩疼、脉尺寸倶に微にして遅なるを治す。

 八物附子湯[1]《備急千金要方》《龍野ー漢方処方集》
      「白川附子1.0g、茯苓・蒼朮・芍薬・桂枝・当帰・人参・乾姜各3.0g」
    ◎湿風、体痛折らんと欲し、肉は錐刀の刺す所の如きを治す。
    ◎此方は附子湯《傷寒論》の症にして、その痛みが一等激しく、精気虚乏の者に     用いる。《勿誤薬室方函口訣》
    ◎冷え性で関節痛が激しい者。
     関節リウマチ

八物附子湯[2]《三因極一病証方論》
      「附子2枚、芍薬・肉桂・甘草・茯苓・人参各3両、白朮4両、乾姜、桂心」
    ◎風歴節四肢疼痛し、鍛の如く、忍ぶべからざるを治す。

八物定志元《東醫寶鑑》
「人参1両半、石菖蒲・遠志・茯神・白茯苓各1両、白朮・麦門冬5銭、牛       黄3銭、朱砂3銭を作末して梧子大に蜜で丸め米飯で50丸服用する。
◎心神を補い、魂魄を安定させ治痰、去熱、驚悸とを治す。


 八厘散《医宗金鑑》
      「蘇木・乳香・没薬・血竭・紅花・自然銅・番木鼈・丁香・麝香」

 麦滑散《陳氏》《古今方彙》
      「麻黄・大黄・知母・活・人参・滑石・地骨皮・子各1分、甘草半分、       小麦」水煎。
◎小児の水痘を治す。

 麦煎散《医方考》《古今方彙》
      「鼈甲(酥炙)・柴胡・大黄()・生地黄・常山・当帰・赤茯苓・乾漆(炒黒)       ・石膏・白朮・甘草・小麦・生姜・大棗」煎服。
◎少男(年少の男)、室女(処女)、孀婦(未亡人)の欝労にて骨蒸内熱、風血四肢に     攻め注ぐ者を治す。


麦煎散《蘇沈内翰良方》
「別甲・大黄・常山・柴胡・茯苓・当帰・乾漆・白朮・石膏・地黄各1両、       甘草半両、小麦50粒」
    ◎少男室女、骨蒸、婦人血風、四肢に攻し、心胸煩壅するを治す。
    ◎此方は乾血労の主薬とする。
    ◎熱甚だしく、口中臭気あるか、二便臭気甚だしき者に用いて効あり。
    ◎婦人、血流注して寒熱甚だしき者に効あり。
    ◎熱なくして羸痩腹満の者→「桃核承気湯大黄虫丸」or「桂枝茯苓丸大黄     虫丸」《勿誤薬室方函口訣》
    ◎此方、鬱労を攻める処方。女子鬱労、口臭、二便秘渋する者。


 麦煎散《東醫寶鑑》
      「赤茯苓・当帰・乾漆・鼈甲(醋炙)・常山・大黄()・柴胡・白朮・地黄        (生)・石膏各1両、甘草半両」粗末にし、毎回3銭を小麦50粒と煎じて       服用。
    ◎骨蒸で顔色が黄色く痩せ、口臭を放ち、肌に熱があって寝汗をかく者を治す。

麦天湯《東醫寶鑑》
      「麦門冬1銭半、天麻1銭3分、白朮・白茯苓・半夏・神麹・陳皮各1銭、       姜5片」煎服。
    ◎風邪が脾胃に積もり、痰があって悪心・吐き気を治す。

麦斗散《東醫寶鑑》
      「土鼈(瓦焙)・巴豆1個、半夏1、乳香(生)・没薬各半分、自然銅(7回焼)」       細末にし、清酒を温めて1厘を調服。
    ◎骨節のくじいた者。

 麦門冬飲[1-1]《明医雑著附》《古今方彙》
      「生脉散黄蓍・当帰・生地黄」
    ◎吐血久しく癒えず、或いは肺気虚して短気不足し、在り右派腎虚発熱し、痰を     唾き、皮毛枯燥するを治す。

 麦門冬飲[1-2]《病機暈編》
「生脈散 黄蓍、当帰、地黄」
◎吐血、久しく癒えざる者を治す《雑病翼方》


 麦門冬飲[2]《寿世保元》《古今方彙》
      「麦門冬4分、黄・人参・玄参各3分、金銀花・甘草各5分」水煎。
    ◎痘毒にて発熱し、渇を作し咽痛むを治す。



麦門冬飲子[1-1]《宣明論》《漢方後世要方解説》
「麦門冬7、人参・楼根各2、知母・葛根各3、生地黄4、茯苓6、五味子・甘草・竹葉各1」
◎心熱肺に移り、膈消胸満、心煩津燥き引飲するを治す。
◎消渇の3症:
上焦渇:熱上焦心肺に在り、煩躁、舌赤く唇紅、食なく飲引小便数なる者
中焦渇:熱中焦脾胃に在り、穀を消し善肌甚だ渇せず、小便数大便硬。
腎消渇:熱下焦腎分に伏して精竭(つ)き水を引いて自ら救う、小便混濁膏淋の如し、耳焦れ形疲る。
◎此方は麦門冬湯に似て更に滋潤剤を加味したものである。血燥を潤すもので、糖尿病(消渇の病)の上焦渇、多尿、身体羸痩し、皮膚枯燥し、脱力せるもの、或いは糖尿病に肺結核を合併して咳嗽する者によく用いられる。
又、老人等感冒後津液枯燥し、血熱を兼ねて、乾咳長引き、殊に夜床に入れば咳甚だしき者に用いてよく奏効する。
◎《朱丹渓》曰く、「三消は多く血虚に属す。津液を生ぜず、総て宜しく四物湯主治すべし」

「楼根」=燥を潤し、痰を開き渇を止む。
「知母」=渇を止め、骨蒸痰飲を治す
「五味子」=津を生じ、渇を止め、嗽を治す
「竹葉」=痰を化し、喘を定め、渇を止む
「麦門冬」=渇を治し、心を補い、肺を清うす
「葛根」=表を発し、渇を止む
「人参」=大に元気を補い、渇を止め津を生ず。



麦門冬飲子[1-2]《東醫寶鑑》
「麦門冬2銭、知母・天花粉・人参・五味子・葛根・茯神・地黄(生)・甘草各1銭、竹葉10片」水煎服。
◎膈消を治す。


麦門冬飲子[1-3]《宣明論》《漢方治療の実際》
「麦門冬7、人参・括呂根各2、知母・葛根各3、地黄4、茯苓6、五味子・甘草・竹葉各2」


麦門冬飲子[1-4]《宣明論》《龍野ー漢方処方集》
「麦門冬・人参・知母各3.5g、乾地黄3.0g、茯苓2.5g、五味子・瓜根・葛根各2.0g、甘草・竹葉各1.0g」
◎消渇心煩。

★適応症及び病名 (麦門冬飲子)
[1]口渇:
☆麦門冬湯を用いたいような患者で、口渇のある者に用いる《大塚敬節》
[1]せき:
☆老人で夜になると咳が出て眠れないと言う者がある。寒くなるとコタツに入る。香蘇散たるにあたると咳がひどくなる。のどが渇くでしょうと聞くと、一眠りして眼が覚めると口が乾いて唾液が無くなっていることがあると云う。そんなときひどく咳く。痰は濃い粘ったものが出る。皮膚は枯燥してガサガサしている者が多い。このような患者は夜間小便がよく出るが大便は下痢せず、むしろ便秘気味である。このような時、私は麦門冬飲子を用いているが、実に良く効く。老人の糖尿病で肺結核を併発している者に用いたのが最初で、これで用法を覚えて用いるようになった。麦門冬飲子でなくても、「滋陰降火湯」も、このような咳に効くと思う。地黄は一種の滋潤剤であり、これの麦門冬・人参・知母・括呂根のような滋潤剤が配合された麦門冬飲子の目標は、皮膚に光沢が無く、潤いが無く、ガサガサしていること。口舌が乾涸していることである。     乾涸というのは、口渇とは別で、必ずしも水を呑むことを欲しなくてもよい。俗に口がはしゃぐというのがこれである。このような患者に鎮咳の目的で麻薬の配剤された処方(新薬)を用いたり、小青竜湯のような湿を乾かす方剤を与えると、却って咽喉の乾燥がひどくなって、咳が強くなる。《大塚敬節》
☆麦門冬飲子に似た証で、動悸・息切れを訴える者には炙甘草湯を与える。《大塚敬節》
[2]糖尿病:
☆糖尿病に結核を併発した者。津液少なく、栄養不良、力が抜け、のどが渇いて、多尿。夜、床にはいると咳が出る者。
☆糖尿病で肺結核を併発し、栄養が衰え、皮膚が枯燥し、口渇、多尿があって、咳嗽のある者に用いる(漢方診療医典)
[3]肺結核
[4]慢性気管支炎


麦門冬散《東醫寶鑑》
「麦門冬3銭、半夏2銭、人参1銭、甘草5分、粳米1合、大棗3枚」剉作して1貼し、1日2回水煎服。
◎火喘を治す。


麦門冬湯[1-1]《金匱要略》
「麦門冬7升、半夏1升、人参3両、甘草2両、粳米3合、大棗12枚」
右六味、以水一斗二升、煮取六升、温服一升、日三、夜一服。
◎大逆上氣、咽喉不利、止逆下氣者、麦門冬湯主之。


麦門冬湯[1-2]《金匱要略》《龍野ー漢方処方集》
「麦門冬15.0g、半夏10.0g、人参・甘草各2.0g、大棗3.0g、玄米4.5g」
水480ccを以て240ccまで煮詰め日中3回夜1回に分服。
◎心下痞して嘔吐せんと欲し、逆し、咽喉乾燥、不利なるは、麦門冬湯之を主どる《医聖方格》
◎此方は《肘後備急方》に云う通り、肺痿、咳唾、涎沫不止、咽燥而渇する者に用いるのが的治なり。《金匱要略》に大逆上気と計りありては漫然なれども、けだし肺痿にても頓嗽にても労嗽にても妊娠咳逆にても、大逆上気の意味ある処へ使えば大いに効ある故、この4字簡古にて深旨ありと見ゆ。《勿誤薬室方函口訣》
◎案ずるに、この方は滋液を主とし、兼ねて虚熱を制する者なり。《雑病翼方》
◎上気(=呼吸促迫)、咽喉不利、或いは咳き込み、或いはのぼせ。
◎麦門冬湯には滋潤強壮の効があって、からだに潤をつける効があり、これに人参と粳米が協力してこの作用を強化し、半夏は痰を溶かして気ののぼるのを下す作用があるから、咽喉に潤をつけて痰をとかすことによって、咳嗽をしずめる。さらに大棗と甘草は緩和剤で急迫をゆるめて咳嗽発作を止める力がある。《大塚敬節》



麦門冬湯[1-3]《金匱要略》《漢方治療の実際》
「麦門冬10、半夏・粳米各5、大棗3、人参・甘草各2」
◎麦門冬湯=「竹葉石膏湯竹葉石膏、大棗」
★麦門冬湯(咳嗽<ケイレン性>、顔面紅潮、咽喉不利、痰出しにくい、皮膚枯燥、心下痞、脈浮弱)



麦門冬湯[1-4]《金匱要略》《中薬臨床応用》
「麦門冬15g、法半夏5g、党参9g、甘草3g、粳米15g、大棗6g」水煎服。



★適応症及び病名(麦門冬湯)
[1]アレルギー性鼻炎:
☆29歳女性。妊娠3ヶ月。しきりにクシャミが出る。ことに早朝が ひどくて、そのために腹の中の胎児にまで悪い影響がありはしないかと心配であると云う。
私はこれに葛根湯を与えたが、全然効果が見られない。そこで、よくよくクシャミの状況を診ていると、下の方から何か上がってくるような、クシャミである。そこで、“大逆上気、咽喉不利”に用いる麦門冬湯を用いてみた。鼻を咽喉に置き換えたのである。すると、2、3日でクシャミが軽快し、2週間ですっかり良くなった。《大塚敬節》
[2]息切れ
[3]萎縮性胃炎
[4]咽喉炎
[5]咽喉不利:(咽喉の乾燥感)
☆のどの乾燥感、ムズムズ感。
☆老人津液枯稿し、食物咽につまり、膈症に似たる者に用いる。《勿誤薬室方函口訣》
☆大病後、薬を飲むことを嫌い、咽に喘気あって、竹葉石膏湯の如く虚煩なき者に用いる。《勿誤薬室方函口訣》
☆麦門冬湯の証は咳もなく涎沫も吐せず、下に力なくて逆上の強きにより、咽喉口舌、倶に乾燥して滋潤なく、口中より咽喉の辺まで粘液のあるように思われて、咽喉の心持ち悪しき証なり《古訓医伝》
☆ただのどが乾いて、何となく気持が悪く、しめりを欲するような場合に用いる《大塚敬節》
【EBM】咳過敏症(喘息・非喘息)患者に対する麦門冬湯の効果
(evidence)
1件の比較臨床試験において、麦門冬湯は咳過敏症患者の咳閾値を有意に改善した。
[6]咽頭結核     
[7]咳嗽(ケイレン性):
☆久咳、労嗽、喘満、短気し、咽喉不利、時に悪心、嘔吐する者を治す《類聚方広義》
☆咳の出ないときは半時間も1時間も全く出ないが、出始めると後から後からひっきりなしに出て顔が赤くなるほど咳き込み、へどが出そうになる。場合によっては吐く。そして痰らしいものは出ない。このような咳が続いて声が枯れている事もある《大塚敬節》
☆咳逆甚だしい者:「五味子桑白皮」《勿誤薬室方函口訣》
☆麻疹、咳嗽で虚する者:「桔梗杏仁人参」《麻疹心得続録》
☆これ方で無効であれば、á麦門冬飲子・炙甘草湯を考える。
「麦門冬湯」:麦門冬10、半夏5、粳米5、大棗3、人参2、甘草2
「炙甘草湯」:麦門冬6、大棗3、人参3、炙甘草3、桂枝3、生姜3、麻子仁3、生地黄6、阿膠2
「麦門冬飲子」:麦門冬7、人参2、甘草1、生地黄4、葛根3、括楼根2、茯苓6、竹葉1、知母3、五味子1

【EBM】かぜ症候群後慢性咳嗽に対する麦門冬の効果:臭化水素酸デキストロメトルファンとの比較

[8]喀血:
☆喀血の後、逆上し、或いは渇する証《奥田謙蔵》
☆咳き込み喀血:「黄連・阿膠各2.0g、乾地黄4.0g」《浅田家方》
☆肺結核で咳嗽とともに血を吐く者に:「地黄阿膠黄連」《大塚敬節》
[9]喀痰:
☆<濃厚な少量の痰~無痰>
☆痰のしきりに出る者、或いは気管支拡張症などのため痰の喀出の多い者に、麦門冬湯を与えると、反って咳がひどくなり、痰の量も多くなり、夜も眠れないほど苦しむことがある。だから痰の多い者には、麦門冬湯はよろしくない《大塚敬節》
[10]乾性の咳:
☆<激しい咳>
☆燥熱の咳嗽
☆肺陰虚の慢性咳嗽。
☆肺結核の燥咳
☆慢性気管支炎で燥咳
☆慢性咽喉炎で燥咳。
[11]顔面紅潮:
☆咳が激しく連続して咳き込み、顔がのぼせる。
[12]気の上衝:<+>
[13]気管支炎
[14]気管支拡張症
[15]気管支喘息
【EBM】気管支喘息に対する麦門冬湯の効果
乾性咳嗽を伴う成人気管支喘息患者49例(♂14例♀35例、平均年齢46.5±16.2歳)
著効4例を含む34例(69.4%)に鎮咳効果を認めた。
[16]吃逆
[17]逆上感
[18]ケイレン性の咳嗽:
☆痰がのどの奥にへばりついたようで、発作性に強く咳き込む者に用いる《大塚敬節》
[19]下痢
[20]元気がない
[21]口渇:
☆骨蒸、唇乾、口燥を療し、飲を得て渇を止むる:「竹葉生姜」《外台秘要方》
[22]口舌乾燥:
☆虚労煩熱、口乾血燥し、飲を得んとするを治す:「人参、竹葉生姜」《聖済総録》
【EBM】向精神病薬による口渇に対する効果
(evidence)
1件の症例集積研究において、向精神薬内服時の口乾に対する改善度は59.1%であった。
[23]高血圧
[24]喉頭結核:
☆喉頭結核、及びその類証《奥田謙蔵》
☆「桔梗玄参山豆根」《済世薬室》
[25]声がれ(嗄声)
☆声楽家の声がれ。
☆感冒後の嗄声に良く効く《大塚敬節》
☆咳が永く続き、声が枯れてよく出ないという者によい《大塚敬節》
☆咽頭炎で嗄声を訴える者にも良い《大塚敬節》
☆刺激性の化学薬品を使用する仕事に多年従事していたという老人が、嗄声を主訴として来院したので、この方を与え、これを2週間飲んで軽快しなければ、専門医について詳細の検査を受けるよう申し渡した。ところが、これを飲み始めて7、8日目頃から、声に湿りがついて、2ヶ月ほどで平常の発声になった《大塚敬節》
[26]呼吸困難
[27]呼吸促迫
[28]産後の喘息
[29]衂血:
☆婦人の返経、上逆、吐衂を治す。
「返経」=代償月経による鼻口からの出)
[30]シェーグレン症候群
☆眼乾燥症状、口腔乾燥症状に用いる(漢方診療医典)
【EBM】シェーグレン症候群に対する麦門冬湯の効果
(対象患者)
厚生省の診断基準に基づくシェーグレン症候群27例。♂3例♀24例。年齢は平均54.7歳。

【EBM】シェーグレン症候群に対する麦門冬湯の効果:補中益気湯との比較臨床試験

[31]上気道炎:
☆<咽喉の乾燥感が強い>
[32]小児の久咳:
☆「石膏」《勿誤薬室方函口訣》
[33]食欲不振
[34]心下痞
[35]精神分裂病
[36]舌質 :
☆<紅><紅・乾燥>
[37]舌苔<微白苔~黄苔>
[38]喘息
[39]大逆上気
[40]痰が切れない 
[41]疲れやすい
[42]糖尿病:
☆八味地黄丸を使用して胃腸をこわしやすい者に。《矢野》
☆消渇、身熱し、喘して咽喉利せざる者は、天瓜粉を加う。大便燥結し、腹微満する者は、「「調胃承気湯」を兼用す《類聚方広義》
[43]動脈硬化症
[44]妊娠中の咳嗽:
☆妊娠咳には麦門冬湯の証が多く、これで強い頑固な妊娠咳を治したことが数例ある。《有持桂里》は妊娠咳に当帰散が効ありと述べているが、私の経験では麦門冬湯の証が多いように思う。《大塚敬節》
☆麦門冬湯で効がなければ「当帰散」を用いてみるとよい《大塚敬節》  

☆27歳の女性。昨年、流産ののち、膀胱炎を起こし、竜胆瀉肝湯で治ったことがある。今度は、目下、妊娠4ヶ月目であるが、咳がひどく出て、お腹にひびくから、、あた流産しても困るといって来院した。その咳は、こみ上げてくるような強い咳で、それが後から後から頻発する。痰はほとんど出ない。のどの奥が乾いている感じだという。私はこれに麦門冬湯を与えたが、10日分の服薬で軽快し、20日分ですっかりよくなり、無事に分娩した。《大塚敬節》  
[45]脳出血
[46]脳充血
[47]のぼせ:
☆肺結核の患者などによく見られるが、頬が紅をさしたような色になり、のぼせを訴える者。《大塚敬節》
☆色の白い婦人などに見られ、恥ずかしいときに、頬を赤らめた様な色になる《大塚敬節》
[48]肺炎 
[49]肺気腫
[50]肺結核:
☆咳血に石膏を加えるのが先輩の経験なれど、肺痿に変ぜんとする者、石膏を長期間用いると不食になり、脈力減じる故に地黄・阿膠・黄連を加えて用いれば具合良く効を奏す。《勿誤薬室方函口訣》
☆肺結核、及びその類証にして、身体羸痩、皮膚枯燥し、逆上感あり、咽喉乾燥して渇する証《奥田謙蔵》
☆咳血あれば:「地黄阿膠黄連」
☆肺痿、小便数の者:「半夏、五味子款冬花桂枝桑白皮」
《雑病論識》
[51]発熱
[52]鼻づまり:
☆補中益気湯麦門冬・梔子から、麦門冬と鼻の関係を考え、色の白い頬に赤味をさした1少女で、午後になると、上気して、鼻がつまるという者に、麦門冬湯石膏を用いて、著効を得た。大逆上気を鼻に応用して用いた。《大塚敬節》
[53]煩熱
[54]皮膚枯燥:
☆口舌乾燥する者、or乾燥してビランする者:「地黄」《方読便覧》
[55]百日咳:
☆激しい咳・咽痛を伴う:「桔梗石膏」《矢野》
☆「橘皮竹茹」
☆「石膏」浅田宗伯
[56]偏枯:
☆偏枯、言語蹇渋する者:「石膏」を与える。ただ偏枯する者には「続命湯」を与える。《先哲医話》
[57]慢性胃炎
[58]慢性咽喉炎
[59]慢性気管支炎:
 ☆強くせき込む咳。
 ☆タンは少なく切れにくい、のどの奥が乾き、せき込むと顔が赤くなる。
☆タンが多く出る時は不可。
[60]慢性の咳嗽:
☆咳き込んでなかなか止まらず顔が紅潮することが多い。《中医処解説》
☆咳の無い時は全く症状がないのが普通。《矢野》
[61]脈細数
[62]めまい:
☆「石膏」《大塚敬節》




麦門冬湯[2]《内科適要》《古今方彙》
「麦門冬・防風・茯苓各2銭、人参1銭」水煎
◎火熱肺に乗じするを治す。唾に血あり。



麦門冬湯[3]《東醫寶鑑》
「麦門冬2銭、甘草(炙)3銭、粳米1合」水2杯で、先に粳米を煎じた後、米は捨て、2薬と「棗2枚、青竹葉15片」を入れ、1杯に成るように煎じて温服。人参を加えるとさらに良い。
◎労復で気が切れようとする者を治す。


麦門冬湯[4-1]《東醫寶鑑》
=「九君子湯」
「麦門冬2銭、陳皮・半夏・白朮・白茯苓各1銭、小麦半合、人参・甘草各5分」作し、1貼に姜3片、烏梅1個」を入れ煎服◎霍乱後の煩渇を治す。


麦門冬湯[4-2]《寿世保元》《古今方彙》
「人参、白朮、茯苓、陳皮、半夏、甘草、小麦、烏梅、麦門冬、生姜」水煎。
◎霍乱已に癒え、煩熱し渇多く小便不利するを治す。


麦門冬湯[5]《東醫寶鑑》
「麦門冬・白・半夏・竹葉・鍾乳粉・桑白皮・紫茸・人参各1銭、甘草5分」作1貼して、姜3、棗2を入れ水煎服。
◎歳火が太過し、火暑が流行して肺金に邪を受け、人身の疾病に瘧疾・少気・咳喘・血溢・血泄・身熱・骨痛などの症状が漫淫するとき。

麦門冬湯[6]《薛立斎十六種》《古今方彙》
「補中益気湯桔梗・山梔子・黄・麦門冬・五味子」
◎夏月に痰を吐し或いは嗽するを治す。
◎是れ火が肺金に乗ずるなり。此方を用いて而して癒たる後労復に因る嗽には、「補中益気湯桔梗・山梔子・黄・麦門冬・五味子」

麦門冬湯[]《聖済総録》





巴戟丸《東醫寶鑑》
「五味子・巴戟・肉蓉・菟絲子・人参・白朮・熱地黄・骨砕補・茴香・牡蛎・竜骨・覆盆子・益智仁を等分に作末して蜜で梧子大の丸剤毎回30丸を米飲で呑み下す。
◎顔色が青白く、愁いと悲しみが多く良く泣き脈が空虚なのを脱精、または脱神といい、肝と腎を補強し精気を収め陽を取りもどすために補う。

巴戟丸《東醫寶鑑》
「巴戟1両半、桑蛸(麩炒)・遠志(姜製)・生乾地黄(酒洗)・山薬・附子(炮)・続断・肉蓉(酒浸)各1両、杜仲(炒)・石斛・鹿茸・竜骨・菟絲子(酒煮)・五味子・山茱萸・官桂各3銭」蜜で梧子大の丸剤。空腹時に50~70丸飲む。
◎脾で小便が渋くて通じない者。


巴戟去痺湯《中薬臨床応用》
「巴戟天9g、杜仲9g、牛膝9g、続断9g、杉寄生15g、山茱萸6g、山薬12g」水煎服。
◎進行性筋萎縮症。


巴豆丸《東醫寶鑑》
「巴豆(去皮膜)2枚、白礬大拇指」作末し、瓦の上で炒赤、蜜で実大の丸剤。毎回1丸を綿に包んで患者の咽喉近くに入れて置くと、少したつと後で痰を吐いてすぐ治る。
◎卒中風に痰が詰まって、死にそうになった者。

巴豆薫法《東醫寶鑑》
「巴豆」皮を剥いて紙に巻き、叩いて油が紙に付くと巴豆は捨て、紙を再び巻いて、鼻中に挿しておく。or角末を加えても良い。or煙気で鼻内を燻じても良い。
◎卒中風で口噤し、人事不省のとき。

巴豆烟《東醫寶鑑》
「巴豆肉」紙で押しつぶして油を取って巻き、1頭に点火して消し、その煙で鼻の中をくすぶると、ツバのようなものが出て来る。
◎喉閉の危急を治す。


破傷風方《中薬臨床応用》
「全蝎9g、蜈蚣4匹、白蚕6g、天麻12g、川9g、当帰12g、木瓜24g、防風12g、法半夏9g、甘草(炙)6g」水煎服。
豚の胆嚢1個と合わせて服用しても良い。
◎ケイレン
◎破傷風のケイレン
◎小児の熱性ケイレン


馬歯煎液《中薬臨床応用》
      

馬豆湯《中薬臨床応用》
      「馬勃3g、山豆根9g、玄参9g、甘草(生)6g」水煎服。
    ◎咽喉の腫痛
    ◎頸部リンパ腺の腫痛
    ◎上気道炎

 馬勃丸《中薬臨床応用》
      「馬勃15g」作末し蜂蜜で小豆大の丸剤。1日3回、20丸づつ服用。
    ◎肺熱による慢性咳嗽。

馬明湯[1-1]《本朝経験》《勿誤薬室方函口訣》
「鷓胡菜2銭、忍冬1銭、紅花4分、石菖根2分、馬明退・甘草5厘」
    ◎眼疾、先天遺毒に属する者。
    ◎結毒眼に入り、あるいは疳眼などの諸証を治す。

馬明湯[1-2]《本朝経験》《漢方後世要方解説》
      「鷓胡菜・忍冬・石菖根・馬明退各3、効果・甘草各1」
    ◎眼疾の先天遺毒に属する者及び結毒眼に入り、あるいは疳眼などの諸証を治す。
   



馬明湯[2-1]《本朝経験》《勿誤薬室方函口訣》
    =「六味馬明湯」
      「馬明退5分、大黄6分、欝金6分、紅花4分、石膏8分、甘草4分」 
◎胎毒を治す。
    ◎胎毒眼に効あり、胎毒で眼胞赤爛・膿水淋瀝する者を治す。
    ◎嬰児胎毒、脇肋下にありて種々の害を為す者を治す。
    ◎凡て小児の病を診察するには、先ず陰嚢をよく観察すること。
     もし陰嚢に紅筋がちらちらとある者は父母から遺伝が多い。本方で治療すべし。     胎毒で悪瘡を発するときも同じ。
◎胎毒で瘡瘍を発する時;「忍冬・連翹」が良い。
    ◎投薬して、無効の者には、母親に帯下があることが多い。ぞのときには母乳が     原因。
    ◎一切の虫証に:「石膏・欝金」

馬明湯[2-2]《本朝経験》《漢方後世要方解説》
      「馬明退・効果・甘草各1、石膏5、欝金4、大黄0.5」(忍冬・連翹各1を       加えて用いることが多い)5歳以上増量す。
    ◎胎毒を治す。
    ◎村上氏の方は石膏・欝金を去り、一切の虫症を治す。
     又、石膏・甘草を去り、乳香を加え、「野蛮湯」と名付く。
    ◎此方は小児の胎毒により瘡瘍を発するものに用いる。頭瘡でも「治頭瘡一方」     の効無き者に試みてよい。
◎忍冬・連翹を加えて用いるときは効果優るという。
    ◎《大塚敬節》の経験によれば、小児皮膚病の、口渇引飲するものは石膏の証、     瘡面醜汚にして分泌物あるは更に桃仁を加えると、乳児の陰嚢に紅筋のあるの     は、父母の遺毒にして悪瘡を発すという。
    ★適応症及び病名 (五十音順)
     頭瘡
胎毒
皮膚病


馬兜鈴丸《東醫寶鑑》
      「馬兜鈴・半夏・杏仁各1両、巴豆(去皮芯油)21粒」細末にし、角を煎       じた膏で梧子大の丸剤。雄黄で衣をし、烏梅湯で10丸づつ飲む。
    ◎久嗽に。

馬兜鈴散《東醫寶鑑》
      「陳皮・大腹皮・桑白皮・紫蘇葉各1銭2分、馬兜鈴・桔梗・人参・貝母・       五味子・甘草各7分半、姜3片」水煎服。
    ◎子嗽で気が壅塞し、喘急する者。

馬蘭花丸《東醫寶鑑》
      「橘核丸馬蘭花1両、檳榔5銭」
      「橘核(炒)・海藻(塩酒炒)・昆布(塩酒炒)・海帯(塩水洗)・桃仁(麩炒)・川       楝子(炒)各1両、延胡索(炒)・厚朴・枳実・桂心・木香・木通各5銭・馬       蘭花1両、檳榔5銭」を作末し、酒糊で梧子大の丸剤。温酒又は塩湯で60       ~70丸呑む。
    ◎陰の偏墜と婦人の陰、小児の陰に。


 抜粋桔梗湯《医学入門》《古今方彙》
      「連翹・薄荷・黄・山梔子・甘草・竹葉各等分」水煎温服。すなわち「涼       膈散」の意なり。
◎熱腫喉痺するを治す。

発声散[1]《東醫寶鑑》
      「黄瓜(大)1箇、桔梗7銭半、白蚕(炒)5銭、甘草(炒)2銭」作末して、       少しづつ噛んでにじませる。万一咽喉が腫痛で左右に紅色があるか、又一       辺に紅紫の長大な症があるときは、この剤に朴硝1銭を加え、又喉中に小       白頭瘡があるときは、白礬末半銭を加える。
    ◎咽痛生瘡で、声が出ない者を治す。

発声散[2]《東醫寶鑑》
「黄爪婁1を切って炒り、桔梗7銭半、白蚕炒5銭、甘草炒2銭を作末       して毎3銭を温酒または姜湯で服用する。
◎声が出ないときに使う。

 発陳湯《徳本》《勿誤薬室方函口訣》
      「柴胡桂枝湯《傷寒論》人参大棗、蒼朮茯苓」
    ◎発熱、悪寒、上衝し、頭汗出で、あるいは下利、あるいは瘧状の如く発熱する     を治す。
    ◎此方は後世の柴苓湯や小柴胡湯、三白湯の合方よりは簡易にして活用しやすい。
◎大腸カタル:
       ☆邪気表裏の間に位して、寒熱、頭疼、腹痛、嘔気があって下利する者。

 発明半夏温肺湯《古今方彙》
      「半夏・細辛・桂心・旋覆花・甘草・陳皮・人参・桔梗・芍薬各5銭、赤茯       苓3分、生姜」煎服。
◎虚寒咳嗽及び中痰水、冷気心下に洋(ダブダブすること)し、雑多く清水     を唾し、脇腫りて食せず、脈珍弦細遅を治す。
◎これ胃の虚冷の致す所なり。


撥雲退翳丸[1]《銀海精微》
「当帰・川・地骨皮・白藜・密蒙花・菊花・活・荊芥・木賊草・花粉       ・蔓荊子・薄荷・枳実・甘草・川椒・黄連・蛇脱・蝉退」
◎風熱で曇りを生じ、羞明・流涙。

 撥雲退翳丸[2]《東醫寶鑑》
    =「撥雲退晴丸」
      「黒脂麻5両、密蒙花・木賊・白藜・蝉退・青塩各1両、薄荷・白・防       風・川・知母・荊芥穂・枸杞子・白芍薬・甘草(生)各5銭、甘菊6銭、       当帰(酒洗)3銭」作末し弾子大の丸剤。1丸づつ食後噛み下す。
    ◎内障に常服する。

 撥雲退丸《東醫寶鑑》
      「甘菊・川椒・大賊・白藜・密蒙花・蛇道・蝉退・川・蔓荊子・荊芥穂       ・石燕子()・黄連・薄荷・瓜根・枳実・活・当帰・地骨皮・甘草各       等分」作末し蜜で弾子大の丸剤。毎回1丸茶清で服用。
    ◎揆膜を治す。


 撥雲湯《東醫寶鑑》
      「活・防風・黄柏各1銭、荊芥・藁本・升麻・当帰・知母・甘草各7分、       柴胡5分、川・黄蓍・葛根・細辛・生姜各3分」煎じて食後服用。
    ◎目に黒。白が出来たとき。


抜毒散《東醫寶鑑》
      「寒水石2両3銭、石膏1両、黄柏・甘草各2銭」作末し、新水で調合して       塗る。
    ◎丹毒が広がった小児を治す。

 抜毒散《東醫寶鑑》
      「寒水石・石膏(生)各2両、黄柏・甘草各5銭」作末し新水で調合して塗る。
    ◎丹毒が、あちこちと移る者を治す。

 抜膿生肌散《中薬臨床応用》
      「象皮末15g、竜骨()24g、竜脳1g、阿仙薬6g、乳香6g、麝香1g、朱       砂6g、白21g、滑石6g」細末を密封して貯蔵、局所に散布する。
    ◎肉芽形成が悪い皮膚潰瘍、化膿症。
    


麹丸[1]《東醫寶鑑》
=「朮丸」
      「白朮3両、山肉2両、蒼朮・川・神麹(炒)・便香附子・陳皮・半夏・       白茯苓・枳実・黄連(酒炒)・当帰(酒洗)各1両、梔子(炒)・連翹・蘿葡子       (炒)・木香5銭を作末し、姜汁泡で搗いた餅で梧子大の丸剤。姜湯で50       丸呑む。
    ◎鬱を開き、気を運行させ、積を消し、熱を散らす。
      
麹丸[2]《東醫寶鑑》
=「朮丸」
      「便香附・川・神麹(炒)・梔子(炒)」各等分に作末し、水で緑豆大の丸剤。       温水で70~90丸飲む。
    ◎すべての欝を治す。

麹保和元《東醫寶鑑》
      「白朮3両、山肉2両、蒼朮・川・神麹(炒)・便香附・陳皮・半夏・白       茯苓・枳実・黄連(酒炒)・当帰(酒洗)各1両、梔子(炒)・連翹・蘿葡子        (炒)・木香各5銭」作末し、姜汁泡でついた餅で梧子大の丸剤。姜湯で50       丸飲む。
    ◎鬱を開き、気を運行させ、積を消し、熱を散らす。

 百中散《東醫寶鑑》
      「罌栗殻(蜜炒)・赤厚朴(姜製)各2両半」作末し毎回2~3銭、空腹時に       調下する。
    ◎一切の痢疾を治す。


 半温半熱湯《東醫寶鑑》
      「半夏・赤茯苓・白朮各1銭、前胡・枳殻・大戟・甘草各7分、黄・当帰       ・茵各5分、姜3片」煎服。
    ◎酒疸を治す。

 半瓜丸《東醫寶鑑》
      「半夏・瓜仁各5両、貝母・桔梗各2両、枳殻1両半、知母1両」作末し、       姜汁浸蒸し餅で梧子大の丸剤。姜湯で50~70丸飲む。半夏は姜汁で長い       間漬け、黄色くなったら炒る。
    ◎痰嗽を治す。


半夏温肺湯《医学発明》《東醫寶鑑》
「半夏・陳皮・旋覆花・人参・細辛・桂心・桔梗・白芍薬・赤茯苓・甘草各       1銭、姜5片」を入れて水で煎服。
  ◎中院に痰水があると心臓の下がぶかぶかし、水を吐き食欲がない、これは胃が     冷えた症である。
    ◎虚寒咳嗽で、中に痰水と冷気があり、心臓の下がゴロゴロして、水が上がり、     脈が沈んでゆるく遅い者を治す。

 半夏乾姜散《金匱要略》《龍野ー漢方処方集》
      「乾姜・半夏」各等分
       粉末2.0gを水60ccで煮て30ccに煮詰め頓服。
    ◎乾嘔吐逆、涎沫を吐く者。
半夏乾姜散証=乾嘔・吐逆、涎沫を吐す。《薬徴》
 [乾嘔]=からえずき。物が出ないで吐くようにする。
 [吐逆]=吐くこと。




半夏乾姜散《金匱要略》《東醫寶鑑》
      「半夏・乾姜」各等分に作末し、毎回3銭を水煎しゆっくり飲む。
    ◎胃が乾き、涎沫を嘔吐する者を治す。

半夏枳朮丸《東醫寶鑑》
      「半夏(姜製)1両、白朮2両、枳実(麩炒)1両」作末し荷葉でくるみ、ご飯       で梧子大の丸剤。熟水で50~100丸飲む。
    ◎冷食に当たって痰が起こった者を治す。


 半夏苦酒湯[1-1]《傷寒論》
    =「苦酒湯」
      「半夏(洗破如棗核)14枚、子(去黄内上苦酒着子殻中)1枚」
       右二味、内半夏、著苦酒中、以子殻置刀還中、安火上、令三沸、去滓。       少少含嚥之。不差、更作三劑。
    ◎少陰病、咽中傷、生創、不能語言、聲不出者、苦酒湯主之。


半夏苦酒湯[1-2]《傷寒論》《漢方治療の実際》
      「卵殻中の内容を去り、その中へ半夏2を入れ、それに2、3倍に稀釈した       酢を加えて、8分目に満たし、これを火の上において、沸騰させて半夏を       去り、半個分の卵白を加えて、再び沸騰させ、冷めてから少しずつ含み飲       む。」


半夏苦酒湯[1-3]《傷寒論》《龍野ー漢方処方集》
      「半夏14個、鶏卵1個、三杯酢」
       1回分につき鶏卵の一端を割り内容を去り、その中へ半夏を入れて3倍酢       を卵殻の八分目まで入れ、火にかけて二三沸したら半夏を去り、冷やして       後少しづつ口に含むようにして飲む。
    ◎半夏十四枚に作るは誤りなり。《本草綱目》に七枚に作る。然じて諸を事実に     試るに五枚以上に至り鶏子殻中に内れて煮ること能わず。十四枚は疑うわくは     十字は衍(エン)なり。
    ◎咽中瘡を生じ痛み、声が出にくい者。


 半夏苦酒湯[1-4]《傷寒論》
    ★適応症及び病名
  [1]アンギナ⇒口腔・咽頭の炎症(狭義)
     [2]咽喉の閉塞感
     [3]咽中のきず(潰瘍・糜爛)
     [4]嚥下不能(嚥下困難)
        ☆咽喉の潰瘍のために嚥下痛があって、嚥下に困難を訴える者に用いる。         私は咽喉結核の患者で、食事がのどを通らないという者にこの方を用         いて、疼痛を軽減せしめたことがあった。しかしその効力が一時的な         ものに過ぎなかった。《大塚敬節》
     [5]潰瘍
     [6]言語不能
     [7]声が出せない
     [8]喉頭ガン
     [9]喉頭潰瘍:
        ☆これはのどが腫れたり、のどに物が出来たり、またはのどが爛れ、ひ         どいときは、声が出ないというような者に用いる。半夏散よりは大分         良く効く。この方は大変飲みにくい薬で普通の飲み方では飲めない。         ただ1口、2口ずつすするようにして呑むのが良い。それが常の薬の         1剤、2剤にあたるものである。予も往年はこの方の用いる方法を知         らず。病人が呑みにくがるのを無理にすすめ、他の薬を呑むように多         く呑まそうとしたが、これは用法を良く知らなかったためである。1         口、2口で良く効くものである。この方を呑む時は鼻をつまんで呑む         が良い。そうしないと酢の気にむせて、気管の方へ薬の入ることがあ         る。生ぬるいものを用いると良い。熱いものはとても飲めない。
この方の目標は、爛れが主で、甘草湯より痛が緩やかである。《有         持桂里》
     [10]喉頭結核:
        ☆私は咽喉結核で、のどが痛み、食事の出来かねる者によく用いた。こ         れを呑んだ直後は、咽喉が軽くて、食事が出来るので、食事の前に、         これを呑ませた。これで結核が治る訳ではないので、一時の手段であ         る。《大塚敬節》
     [11]口内炎
     [12]嗄声(キズがあって、声がれ)
        ☆ex全身麻酔で気管内挿管により。
     [13]声門炎
     [14]声門ポリープ
     [15]舌炎
     [16]舌潰瘍
     [17]ビラン(糜爛)
     [18]扁桃炎
     [19]扁桃潰瘍
        ☆熱証があれば・・・凉膈散《大塚敬節》
         陰証であれば本方。《大塚敬節》
      [20]扁桃周囲膿瘍

半夏桂甘湯《活人書》

 半夏桂甘湯《東醫寶鑑》
      「半夏(姜製)・桂皮・甘草各2銭、姜5片」水煎し冷服。
    ◎腎傷寒・咽痛を治す。



#半夏厚朴湯[1-1]《金匱要略》
「半夏1升、厚朴3両、茯苓4両、生姜5両、乾蘇葉2両」
右五味、以水七升、煮取四升、分温四服、日三、夜一服。
◎婦人咽中如有炙臠、半夏厚朴湯主之。(臠=レン、切り身)
《金匱要略》婦人雑病脉證幷治第二十二。

◎胸満心下堅、咽中帖々、如炙肉、吐之不出、呑之不下、本方主之。
◎問曰、病者苦水、面目身体四肢皆腫、小便不利、脉之不言水、反言胸中痛、気上衝咽、状如炙肉、当微喘、審如師言、其脉何類、師曰、寸口脉沈而緊、沈為水、緊為寒、沈緊相搏、結在関元、始時当微、年盛不覚、陽衰之後、栄衛相于、陽損陰盛、結寒微動、腎気上衝、喉咽塞噎、脇下急痛、医以為留飲、而大下之、気撃不去、其病不徐、後重吐之、胃家虚煩、咽喉欲飲水、小便不利、水穀不化、面目手足浮腫、食飲過度、腫複如前、胸脇苦痛、象如奔豚、其水揚溢、則浮咳喘逆、当先攻撃衝気令止、乃治、止其喘自差、先治新病、病当在後、


半夏厚朴湯[1-2]《金匱要略》《龍野ー漢方処方集》
「半夏10.0g、厚朴3.0g、茯苓4.0g、生姜5.0g(又は干姜2.0g)、蘇葉2.0g」
水280ccを以て160ccまで煮詰め、日中3回夜1回に分服。



#半夏厚朴湯[1-3]《金匱要略》《漢方治療の実際》
 「半夏6、茯苓5、生姜4、厚朴3、蘇葉2」
○半夏厚朴湯証=咽中炙臠あるが如し《薬徴》
[咽中炙臠]=のどにあぶった肉片が付着しているように感ずる。

半夏厚朴湯
“半夏厚朴湯は、是れ小半夏加茯苓湯に更に厚朴・蘇葉を加ふるものなり。然れば則ちその眩悸の証を脱するや明らかなり”《薬徴》

小半夏湯(半夏8、生姜8)
嘔家本渇、渇者為欲解、今反不渇、心下有支飲故也。小半夏湯主之。
諸嘔吐、穀不得下者、小半夏湯主之。

小半夏加茯苓湯(半夏8、生姜8、茯苓3)
卒嘔吐、心下痞、膈間有水、眩悸者、半夏加茯苓湯主之。

    ◎宜しく近方の四七湯と、併せ考ふべし。且つその方、正に同じ。又、桔梗、枳     実を加ふれば益す可也。又、蘇葉に代るに蘇子を以てすれば尤も可なり。《類     聚方集覧》
四七湯《易簡方論》《勿誤薬室方函》
「半夏厚朴湯《金匱要略》に同じ。」
・七気鬱滞して、病となる者を治して極めて効あり。
・妊娠3ヶ月、悪阻病気となり、鬱・瘡を生ずるを治す。
・七情気鬱、呼吸気促、而して痰声無き者を治す。《医学入門》
     「喜・怒・悲・思・憂・恐・驚の気、結びて痰涎と成るを治す。状は破絮(はじよ)(古      綿)の如く、或いは梅核の如く、咽喉の間に有り、喀(は)けども出ず、咽(の)めども      下らず、これ七気の為す所なり。或いは中痞満、気は舒快せず、或いは痰      涎壅盛、上気喘急、或いは痰飲中結に因りて、嘔逆悪心、並に宜しく之を服      すべし」

    ◎咽喉食道辺に何か物がつかえている感じ、或いは刺激感、気鬱性神経症状のも の。《龍野》
    ◎気が鬱積して起こる病気に用いて、気の行りをよくする、気剤の代表的なもの     《大塚敬節》
  【腹証】
    《腹診配剤録》
      “胸満し、心下微しくく、咽中に紙屑を帖するが如し”
    《大塚敬節》
      “腹部が軟弱無力でない者”
    ★処方解説
    A[方剤分類]・・・理気剤
    B[八綱弁証]・・・裏寒虚
    C[六経弁証]・・・太陰病
    D[衛気営血弁証]・気分
     E[臓腑弁証]・・・肺胃氣逆
     F[方剤帰経]・・・胃・小腸・三焦・大腸
    G[効能・効果]・・降逆化痰・行気開鬱



半夏厚朴湯[1-4]《金匱要略》
    ★適応症及び病名 (五十音順)
     [1]足が冷える
     [2]胃アトニー(胃無力症)「胃弛緩」
     [3]胃液分泌過多症
     [4]胃下垂 
     [5]胃腸虚弱
     [6]胃部で振水音(胃内停水)
    [7]噎膈(嚥下困難を主訴とする病気。食道癌なども含まれる)
       ☆軽症に:「浮石」《勿誤薬室方函口訣》
       ☆膈症:「東洋化毒丸」《雑病翼方》
       ☆嘔吐、食下らざる者:「海浮石・枯礬」《先哲医話》
     [8]咽喉炎
     [9]咽中異常感:(咽中異物感)<咽中炙臠>(咽喉頭異常感症)
       ☆梅核気(のどの異物感)
        ☆のどが詰まる感じ
       ☆《備急千金要方》に“虚満、心下堅、咽中帖帖として炙臠あるが如く、        これを吐けども出でず、これを呑めども下らず、半夏厚朴湯之を主る”        とある。炙臠とは炙った肉片のことである。このように、のどに何かが        付着しているように感ずるのを、梅核気と呼び、近代医学のヒステリー        球に相当する。《大塚敬節》
       ☆のどに何かかかっているということが、ひどく気にかかるのを目標とす        る《大塚敬節》
       ☆神経症患者の咽頭異物感に良く効く《大塚敬節》
       ☆咽頭の異物感は、胃アトニー症の患者によく見られるが、胃アトニーの        無い場合でも、この半夏厚朴湯は良く効く《大塚敬節》
       ☆咽中に炙臠有るが如く、或いは嘔し、或いは心下悸する者を治す《方極》
       ☆病人、咽中に炙臠有るが如く、之を吐けども出でず、之を呑めども下ら        ず、心下微満する者は、半夏厚朴湯之を主どる《医聖方格》
       ☆「ヒステリー」性咽喉絞搾感等《奥田謙蔵》
       ☆此の症は、後世の所謂梅核気也。桔梗を加ふれば尤も佳なり。南呂丸を        兼用す。《類聚方広義》
(南呂丸=黄4銭、甘草・青石各2銭、大黄)
       ☆腹部が軟弱無力の者に用いると、かえって気分の悪くなる者がある《大        塚敬節》
       ☆24歳女性。結婚して1年くらい。数ヶ月前から、のどに球状のものが        つかえて、気持が悪いという。その他には何の異常もない。2、3の医        師に診てもらったが、何処も悪くないと云われたという。
血色も良く、腹証も、とりたてて云うほどの特徴は無く、振水音もな        い。月経も、大小便も異常がない。神経症らしいところもない。しかし        私はこれに半夏厚朴湯を用いた。すると1週間後に来院したときは、ほ        とんど咽頭の異物感を忘れ、3週間の服用で全治した。《大塚敬節》
       ☆京橋区高代町の三浦清十郎の妻、花は21歳で、今年の4月に分娩して        後、児沈痛を患い、1ヶ月ほどたって治った。ところが、その後、肩背        に浮腫が現れ、鳩尾で動悸がし、胸脇が苦満し、手の甲がシビレ、めま        いがして、食事に味がなくなった。その上、発作性に時々のどに、トゲ        のようなものがある感じになり、それを吐こうとしても出ず、呑もうと        しても下らない状態になり、その時は全身から汗がにじみ、顔は酒に酔        ったようになり、今にも悶絶するのではないかと思われる。このような        発作は1日に1回は起こる。そこで八丁堀の北島町の洋医、橋爪某に治        を托したが、20日ほどたっても、寸効もないので、更に何人もの医者        に診せた。しかし良くならないので、予に治を乞うた。
これを診ると、脈は微細で、舌も、大小便も異常がない。そこで予は        梅核気の一種と診断して、半夏厚朴湯を与えた。するとたった3日で病        情は大いに軽快し、1ヶ月ばかりで全治した。(滝松柏・和漢医林新誌        第62号)
(児沈痛=2~3日で起きる腹痛)
【EBM】咽喉頭異常感に対する半夏厚朴湯の効果
(対処患者)
咽喉頭異常感を主訴とする器質性病変を否定した17例。性別は♂7例♀10例。年齢は28~87歳。 平均63.8歳。
(薬物投与)
半夏厚朴湯(5~7.5g/日)を投与、投与期間は1週間以上。
(評価方法)
投与1週後から経過観察、異常感が完全消失あるいは著効すれば有効とした。
(結果)
改善度は症状消失6例と著効7例の有効13例で有効率は76.5%であった。無効例は軽度改善2例と不変2例であった。悪化例や副作用は無かった。
     [10]咽頭炎
    [11]陰嚢水腫:
       ☆睾丸腫大して斗の如くなる人、その腹を診察すれば必ず滞水阻隔して心        腹の気昇降できず、よって[半夏厚朴湯犀角末]を服せしめること100        日余り、心下開き、陰嚢裏の蓄水も消化して癒える。
       ☆疝、陰嚢腫大、治疝の諸方を与えて癒えざる者:「犀角」
    [12]鬱病:
       ☆七気欝滞して病となる者を治す。喜怒節せず、憂思悲恐を兼ね、ある時        は振驚し、臓気不平を致す、憎寒発熱、心腹脹満す。傍は両脇を衝き、        上は咽喉を塞ぎ、炙臠の如きあり、嚥めども下らず、みな七気の生じる        所なるを治す。《雑病論識》
☆発汗過多、手掌の発汗に適応することあり。
【EBM】うつ病あるいは抑うつ状態に対する半夏厚朴湯の効果
(対象患者)
うつ病あるいは抑うつ状態と診断された20例。♂8例♀12例。平均年齢は42.1歳。診断はうつ病10例、軽症うつ病7例、抑うつ状態3例、全例が外来症例で、重症のうつ病は除外。
(薬物投与)
半夏厚朴湯エキス(3.0g/日)を4週間投与。原則として漢方薬の単独使用とし、必要な際は抗うつ薬ないし睡眠薬を併用。併用薬ありが8例、無しが12例。
(評価方法)
身体症状7項目と精神症状6項目について、半夏厚朴湯投与後で症状の変化を評価し、著明改善、改善、やや改善、不変、悪化の5段階で判定。これらを総合して、最終全般改善度を著効、有効、やや有効、無効、悪化の5段階で評価。
(結果)
全般改善度は、著効が無く、有効6例(30.0%)、やや有効9例(45.0%)、無効5例(25.0%)、悪化なしで、うやや有効以上が75.0%を示した。
症状別改善度で改善率の高かったものは、
不眠(やや改善以上が87.5%)
咽喉党の異物感(100%)
心悸亢進(80.0%)
頭重感(66.7%)
不安(83.4%)
緊張感(70.0%)
抑うつ感(63.1%)であった。
(付記)
病型別の改善率では、抑うつ状態(100%)と、軽症うつ病(85.7%)が高かった。
性別の改善率では、♂(50.0%)よりも♀(91.7%)の方が高かった。
    [13]悪心
    [14]嘔吐
☆幽門痙攣のために、胃拡張の症状を呈し、胃部の膨満、嘔吐を訴える者に用いる(漢方診療医典)
    [15]かぜ:
       ☆若し感冒、桂枝の証にして、痰飲有る者は、桂枝湯合方之を主る《方機》
    [16]咳嗽:
       ☆咽喉中に痰涎あり、上気喘逆する者を治す。
    [17]喀痰
   [18]肩こり:
           ①咽中異物感。
           ②気鬱不安。
           ③眼球光彩。
           ④胃内停水、胃腸虚弱。
           ⑤尿利減少。
           ⑥疲労。
       ☆気鬱からくる肩凝りに用いる《木村長久》
    [19]眼球光彩
    [20]気鬱症:
       ☆諸気疾に活用して良し。婦人は気鬱多き者故、血病も気より生ずる者多 し《勿誤薬室方函口訣》
       ☆気結痰飲を聚め神識を鬱閉する者:「霊砂」。
        血熱によって起発する者は→「小柴胡湯生地黄犀角」
     [21]気管支炎(急性・慢性)
     [22]気管支喘息
☆強い発作時に服用すると苦痛を増すことがある。発作が落ち着いてから日常的に続服させると良い。
[23]狭心症
☆これも仮性の狭心症に用いる。一老人、1日数回、左胸部に差し込む痛みがあり、医師は狭心症として治療しているが、治らないというので当帰湯を用いたが効が無く、ある事件で、ひどく、心配してから、この発作が起こるようになっったというのにヒントを得て、半夏厚朴湯を用いたところ速効を得た(漢方診療医典)
    [24]胸中苦悶
    [25]恐怖症
    [26]眩暈
    [27]喉頭炎:
       ☆喉頭及び気管等の「カタール」症候《奥田謙蔵》
    [28]更年期障害
    [29]声がれ:(嗄声)
[30]呼吸困難
☆たとえば胸脇苦満と腹部膨満があって、呼吸困難のある場合には、大柴胡湯+半夏厚朴湯または大柴胡湯+厚朴杏仁を用い、胸脇苦満も腹部膨満も軽微なものには、小柴胡湯+半夏厚朴湯または小柴胡湯+厚朴杏仁を用いる。《漢方診療医典》
[31]自閉症
☆梅核気がある場合に用いる。その他、気分の変化、恐怖症、不眠、神経過敏に(漢方診療医典)
    [32]耳鳴
    [33]小便不利:
       ☆小瘡頭瘡内攻の水腫、腹脹強く、小便甚だ少ない者:
        「犀角」《勿誤薬室方函口訣》
       ☆婦人小便不順し、甚だしい者は陰戸疼痛するを治す。:
        「甘草・香附子・琥珀」《雑病翼方》
     [34]食道ケイレン
☆食道ケイレンに用いて効がある。一婦人、突然胸痛を訴え、、食物が下がらなくなったので、食道ガンを心配して某大学で診察をうけたが、別に異常はないといわれ、間もなく自然に治った。そこでその後、時々同じような発作を起こすので、漢方治療を乞うた。そこで、金匱要略に“婦人、咽中に炙臠あるが如きは、半夏厚朴湯之を主る”の条文によって、半夏厚朴湯を用いたところ、著効があり発作を起こさなくなった。(漢方診療医典)
    [35]食道憩室
    [36]食道狭窄:
       ☆食道狭窄、及びその類証。《奥田謙蔵》
    [37]食道浮腫
    [38]食欲不振
    [39]腎炎:
       ☆皮膚病性腎炎等には、証に由り犀角を加える《奥田謙蔵》
    [40]心悸亢進:
       ☆発作性にくる神経性心悸亢進症によく用いる。この際患者には不安感が        あり、死ぬのではないかという恐怖感に襲われることもある。《大塚敬        節》
       ☆めまいを伴うこともある。半夏厚朴湯を用いる心悸亢進は、神経性のも        ので、同時にめまいを伴うこともあり、多角的にはさほど激しい心悸亢        進を証明しないのに、本人には心臓麻痺でで起こすのではないかとい        う不安がある《大塚敬節》
   ☆心悸亢進の発作とともに、多尿が起こり、5分間・10分間おきに多量        の排尿のあることがある《大塚敬節》
☆のどに球のようなものがひっかかっているようだと訴えるものもある        《大塚敬節》
       ☆昭和13年2/12。血色・栄養共に良い一見病人らしくない婦人が、その        夫とともに来院した。
半夏厚朴湯証の患者は、不安のために1人で道を歩けないとか、家に        居るときでも、誰か、そばに人が居ないと動悸がして気分が悪くなると        か、或いは1人で外出する時は、住所と姓名を明記した札を帯の間に入        れておく。これは途中で、もし人事不省になるとか、死ぬとかいう時に、        すぐさま自宅に報せてもらうために用意である。この用意周到さが半夏        厚朴湯を用いる1つの目標である。また一体に、半夏厚朴湯証の患者は        容態を話すに、形容詞を多く用いて、こまごまと述べ立てる。中には手        帳にしっかり症状を箇条書きにしたためて来て、それを見ながら述べる        者もある。
からだに手を触れなくても、こんな患者にぶつかれば、まず半夏厚朴        湯の適応症ではないかと疑って良い。
さて、この婦人の語るところによると、昨年12月の下旬から、時々        めまいがしていたが、1/12に、新宿駅のプラットホームで急に胸が苦        しくなり、動悸がひどくなり、息が苦しくて歩行が出来ない状態となり、        駅員の世話になり、自宅から迎えが来て、漸く帰宅した。それからは自        宅にいても、急に心悸亢進を起こして、医者を呼ぶようになったが、医        者が来ると良くなってしまう。その他の症状としては頭が重い、手足が        冷える、食欲がない、熟睡出来ない、小便は近くて量も多い。ことに心        悸亢進の発作時には10分おきぐらいに尿意を催す。月経は正調である        が、始まる前に、特に気分が悪い。帯下は少しある。発作の無いときに        診察したが、脈は沈んでいて弱い。舌には薄い白苔があって、湿ってい        る。腹診してみると、腹部は一体に軟弱で胃部で振水音を証明する。(半        夏厚朴湯の腹証は、必ずしも、腹部は軟弱ではない。むしろ鳩尾が膨隆        して、抵抗のあるものもある。またひどく軟弱無力の者に用いて、却っ        て、気分の悪いと訴えた者もあり、あまり虚証になった者には用いない        ほうが良い)
右のような症状であるから、付き添いを必要とするほどの重病人では        ないのに、主人が随伴したのである。これが又、半夏厚朴湯を用いる特        徴ともなっている。
さてこの婦人は、前々から胃アトニー症があり、その上に気を使うよ        うな心配事があって、こんどの病気になったのである。そこでこの患者        には半夏厚朴湯を用いると良いのであるが、私はこの処方に茯苓飲を加        えて用いた。(今の私なら半夏厚朴湯だけを用いたであろう。茯苓飲は        胃部にガスが停滞して、食欲のない時に用いる処方であるが、この婦人        のような場合には、半夏厚朴湯だけで充分である)
         7日分を服薬した患者は、夫ともに来院し、大変気分が軽く、明るく        なったという。更に7日分を飲み終わった時、その婦人は1人で来院し        た。その後、3週間の服薬で、めまいも心悸亢進も去り、食欲も出てき        た。《大塚敬節》
       ☆35歳の理髪店の主人。弟に連れられて来院した。この患者は半年ほど        前から仕事が手に着かなくてブラブラしている。医者は神経衰弱症だと        診断した。主訴は発作性の心悸亢進で、1日に数回も医者を呼んで注射        することもあるという。そのほかには、頭重とめまいがある。のどに何        か詰まっているような感じがたえずある。栄養も血色もよい。腹部は一        体に緊張していて、振水音は証明しない。この患者には半夏厚朴湯を与        えたが、1週間の服用で1人で来院出来るようになり、3週間の服用で        仕事が出来るようになった。《大塚敬節》
    [41]心気症:(ヒポコンドリー)
       ☆48歳男性。色が黒く、中肉中背、栄養佳良。一見病人らしくない病人        である。この人は、ハワイで成功して、彼の地で広く商売をしていたの        であるが、半年ほど前から、のどに何物かが出来て、つまっているよう        に感じ、ハワイの医師に2、3診てもらったが、病名不明、治療法もな        いというので、食道ガンの初期に違いないと自己診断を下して、2ヶ月        ほど前に日本に帰ってきた。日本では、東京の大病院はもちろんのこと、        九州まで行って診断を仰いだが、病名不明、治療法なしというので、患        者はいよいよガンに間違いないと決めて、ひどく落胆した。ガンだから        病名を隠して言ってくれないに違いない。ガンだから薬をくれないのだ        と、勝手に決めているのである。
私の初診は昭和11年10/1。当時の症状は、のどというよりは、胸に        近い辺りが、狭くなっているように感ずる。しかし飲食物が下らないと        か、吐くとかいう症状はない。その他の症状としては、めまいがある。        ことに、人混みに出かけると、めまいがひどくなる。従って、外出には、        必ず杖を持って行くことを忘れない。この用意周到さが半夏厚朴湯を用        いる1つの目標となる。
10月下旬だというのに、足が冷えて困る。冷えると、小便が近くな        って、1時間に1行ある。食欲はある。安眠が出来る。脈は締まって力        がある。舌には薄い白苔がある。みずおちの部は、やや膨満して硬く、        この部で振水音を証明することは出来ない。臍の上で、動悸が少し亢進        している。
このような症状であったから、私は半夏厚朴湯で治ると確信し、“ガ        ンであっても治ればよいだろう”というと、彼氏は勿論ですという。そ        れなら、これをのみたまえ、といって半夏厚朴湯を与えたが、日毎に、        めまいや胸のつまる感じが取れ、不安感もなくなり、同年の12/21、横        浜出帆の汽船でハワイに帰ることになった。《大塚敬節》
[42]心臓神経症
☆胸が圧迫されて、イキがつまるように感じ、発作性に心筋亢進がきて、死ぬのではないかという不安を訴える者を目標にする。ノドに何かつまっていると訴えるものもある。腹診すると、心下部に痞満の状があって、振水音を証明することもある(漢方診療医典)
    [43]心臓不全(心不全)
    [44]神経質:
       ☆神経衰弱
       ☆38歳男性。栄養血色ともに佳良で、病人らしいところはない。今度の        病気は、約1年ほど前からで、いろいろ手当をしているが、全く効がな        いという、その症状は次の通りである。
頭が重く、手が頭髪に触れると頭の皮膚が痛む、時々胸が苦しくなる。        歩いている時は何でもなく、起立しているとめまを起こす。従って、風        呂場で、からだを拭く時でも立って拭くことが出来ない。また心臓部を        外からハンカチを丸めて押さえつけられているように感じ、それが気に        なってたまらない。時々動悸がしてくる。頭髪が非常に抜ける。食欲が        佳良で、口渇がある。小便は近くて多い。大便は1日に2行あるが、た        くさん出た時の方が気分が良い。脈は幅は広いが、強く圧すと力がない。        鳩尾は少し膨満して抵抗がある。このような症状であったから、初めに        柴胡加竜骨牡蠣湯を与えたが効無く、考え直して、半夏厚朴湯にしたと        ころ、たちまち良くなった。《大塚敬節》
    [45]神経性食道狭窄:
    [46]神経性胃炎
    [47]神経症:
       ☆神経症で、梅核気のほかに、めまい、発作性の心悸亢進、不安感、取り        越し苦労などを訴える者に用いる《大塚敬節》
【EBM】神経症に対する半夏厚朴湯の効果(証を考慮)
(対象患者)
不安、抑うつ、焦燥感、予期不安などの精神症状と、咽喉部症状や消化器症状を訴えて、神経症と診断された23例、♂5例♀18例。年齢は25~85歳、平均45.7歳。病型診断は、不安神経症16例、抑うつ神経症7例、重症度は、軽症7例、中等度12例、重度4例。
(薬物投与)
半夏厚朴湯エキス(4.5g/日)を6週間投与。
(評価方法)
12項目の身体症状と5項目の精神症状にういて6週間後に効果判定を行い、著明改善、改善、やや改善、不変、悪化の5段階で評価。
(結果)
最終全般改善度は、著明改善8例(34.8%)、改善10例(43.5%)、やや改善3例(13.0%)、不変2例(8.7%)悪化なしで、やや改善以上が21例(91.3%)であった。
主な改善症状は胸部圧迫感、腹痛、喉のつかえ感、易疲労感、嘔気、食思不振、予期不安、不安であった。
層別解析による病型別の有効率(やや改善以上)は、
不安神経症93.8%、
抑うつ神経症85.7%であった。
【EBM】神経症に対する半夏厚朴湯の効果
(対象患者)
抑うつ状態の強い神経症患者22例。♂13例♀9例。年齢は16~55歳。平均33.7歳。平均罹患期間は3.4年。
病型診断は、心気神経症7例、不安神経症6例、恐怖症4例、強迫神経症2例、神経衰弱証2例、ヒステリー1例。
(薬物投与)
半夏厚朴湯エキス(7.5g/日)を3週間投与。併用薬(眠剤)はありが3例、無しが19例。
(評価方法)
15項目の臨床症状について1週間ごとにその程度を評価し、3週間後に効果判定を行い、著明改善、中等度改善、軽度改善、不変、悪化の5段階で評価。2症例は症状改善のため1週目で脱落。
(結果)
最終全般改善度は、
著明改善2例(9.1%)
中等度改善6例(27.3%)
軽度改善9例(40.9%)
不変5例(22.7%)
悪化なしで、軽度改善以上が17例(77.2%)であった。
症状別改善度では、易疲労、不眠、不安、焦燥感、意欲減退、易度、運動系症状、心血管系症状、呼吸器系症状に対して50%以上の有効率を認めた。随伴症状および副作用は6例(27.3%)に認めたが、いずれも軽度であり、継続投与により軽快ないし消失した。内容は眠気が5例、軟便が1例であった。また、1例に肝機能の悪化を認めたが、追跡調査により自然に改善したことを確認した。
    [48]水腫:
       ☆身体巨瘤を発する者に有効。
       ☆腹形あしく水血二毒の痼滞する者に奇効あり。
    [49]精神分裂病
    [50]声帯浮腫
    [51]舌苔 :<湿潤・無苔><白膩>
    [52]喘息:
       ☆咽喉中に痰涎あり、上気喘逆するを治す。《雑病翼方》
    [53立ちくらみ
    [54]脱腸
    [55]痰(タン)が出る
    [56]血の道症:
        ①のどに異物がつかえる感じがして気になる者。
         ②のどにかゆみや刺激感があったり、声がかれやすく、脈腹軟弱でみず         おちに振水音がある者。
     [57]つわり:
       ☆妊娠嘔吐等《奥田謙蔵》
       ☆妊娠3ヶ月、悪阻となり、鬱、瘡を生じるを治す《雑病翼方》
       ☆妊娠悪阻を治すること極めて妙なり。大便不通の者は、黄鐘丸(大黄        銭・黄芩・黄連)、或いは大簇丸(だいそうがん)(大黄・黄・人参)を兼用す。《類聚       方広義》
     [58]動悸
     [59]尿量減少
    [60]ネフローゼ
    [61]ノイローゼ:
       ☆気のうっ滞を治す。
       ☆のどに何か詰まった感じがして、動悸、めまい、不安、取り越し苦労す        る者。
       ☆鳩尾がつかえ、胃部に振水音を認める。
    [62]呑み込みにくい(嚥下困難):
       ☆《原南陽》の事例から。ある武士の婦人で、急に積(下腹部から上に差        し込む)を患い、飲食物が口に入らなくなったので、夜中に、自分の門        人に往診を乞うてきた。診てみるに、脈は平穏で変わったところはない        が、水が1滴でものどに下ると、悶え苦しんで、死ぬのではないかとい        う状を呈する。腹は膨満している。そんな状態であるから、薬を進める        ことも出来ない。
門人は帰ってきて、自分に、どうしたら良いかと尋ねた。自分は喉痺        ではないかと尋ねたところ、そうではありません。のどに痛はありませ        んと言う。看病人に聞いてみるに、昨日、草餅を食べてから発病したの        で、初め1医官に治を乞うたが、反って悪くなってしまったということ        であった。門人は、きっと食べ過ぎでしょうから中正湯をやっておきま        す。明日どうぞ診察をお願いしますという。
そこで翌日、往診してみるに、1医官の薬はのどに下りかねて、吐こ        うとしたが出ず、うんと汗をかいて苦しんだが、後門弟の方の薬は、そ        れほど苦しくはなく、やや苦痛が薄らいだという。しかしたった1滴で、        のどを潤しただけだという。湯でも水でも1滴飲んでも腹から鳩尾に突        き上げてきて苦しいので、ただ何もしないでじっとしているだけですと        いう。診てみるに異常を発見しない。そこで試みに水を与えたところ、        のどを下ると、むせるようである。鼻孔へ出るかと問うに、一度もそん        なことなない。しばらく苦しんでいるうちに下るという。病人に聞いて        みると痛はない。何かのどにある心地がするという。看病人は3、4人        集まって、鳩尾を撫でたり、背をさすったりして、汗を流している。そ        れらの人が云うのに、鳩尾に何か逆上してくる物があり、その勢いで腹        が脹るので、とにかく喉中に病気があるらしい。しかし、喉部には変わ        ったところがない。こんな風で、処方に困って、半夏厚朴湯を与えたと        ころ、やや軽快し、また与えたところ、3、4日で治ってしまった《大        塚敬節》
   [63]肺気腫
    [64]肺結核
    [65]肺水腫
    [66]バセドウ病
☆炙甘草湯のような地黄の入った方剤を用いると。胃腸障害を起こして、服用を続けられない患者で、神経過敏で、動悸の亢進、脈拍頻数のものに「桂枝甘草竜骨牡蛎湯」を用いる(漢方診療医典)
    [67]ヒステリー
    [68]百日咳
    [69]腹部軟弱
    [70]不安感:(不安神経症)
       ☆神経症の患者で、気鬱、不安感などの有る者によく用いられる《大塚敬        節》
[71]不整脈
☆半夏厚朴湯桂枝甘草竜骨牡蛎湯
発作性に頻脈となり、不安を覚え、そのさい排尿の回数も尿量も多くなるものを目標とする(漢方診療医典)
    [72]不眠症
    [73]浮腫:<顔面浮腫>
    [74]腹部膨満感
    [75]浮腫
    [76]ヘルニア
    [77]扁桃炎
    [78]発作性心悸亢進
     [79]慢性胃腸炎:
       ☆貧血性、無力アトニー型で、冷え性で疲れやすい者。
       ☆気分が重く、動悸、むくみ、尿量減少、腹部軟弱、みずおちを叩くと振        水音がある者。
     [80]耳鳴り
    [81]無月経:
       ☆気鬱からくる無月経に用いる《和田東郭》
     [82]めまい:
       ☆神経症の患者のめまいに用いることが多い《大塚敬節》
       ☆めまいは軽いが不安感の方が強い傾向がある。《大塚敬節》
       ☆発作性に心悸亢進のくることがある。又、のどに何かつまっているよう        な感じを訴えることがある《大塚敬節》
       ☆27歳女性。結婚してから5年になるが、妊娠したことなはい。今度の        病気は、1年ほど前から起こり、2、3の医者の治療を受けたが良くな        らない。主訴はめまいで、不安感が強くて歩行が出来ない。人手を借り        てやっと立ち上がるという状態である。その他に、のどに何かひっかか        っている感じと、発作性にくる動悸と、下肢にシビレ感があり、立ち上        がろうとすると足がブルブルと震える。脈は沈微で、心下部で振水音を        証明するが、腹は軟弱無力というほどではない。そこで半夏厚朴湯を与        えたところ、1ヶ月ほどで、便所にまで歩けるようになり、3ヶ月後に        は外来患者として、来院出来るようになった。《大塚敬節》
       ☆厚朴の配合した処方を用いるときは、筋肉の緊張度に注意し、筋肉が弛        緩して、無力になっている時には、用いない方が良い。
         数年前、めまいがして外出出来ないという老婦人を診察して、半夏厚        朴湯を与えたところ、脱力して食欲が全くなくなって、文句を言われた        ことがある《大塚敬節》
☆不安神経症の患者にくるめまいに用いる機会がある、めまいのほか、発作性に心悸亢進を訴えたり、ノドに何か詰まっているように感じたりすることがある(漢方診療医典)
   [83]卵巣機能不全
[84]脈:浮弱or沈弱~沈細







 半夏厚朴湯[2]《東醫寶鑑》
      「半夏1銭、厚朴8分、神麹6分、蘇木・紅花各5分、三稜・当帰梢・猪苓       ・升麻各4分、肉桂・蒼朮・白茯苓・沢瀉・柴胡・陳皮・黄(生)・草豆       ・甘草(生)各3分、木香・青皮各2分、呉茱萸・黄連・乾生姜各1分、       桃仁7個、昆布少々」水煎服。
    ◎脹満の通治薬。

半夏朮湯[1-1]《東醫寶鑑》
      「半夏・蒼朮各1銭半、片(酒炒)・白朮・南星(炮)・香附子各7分、陳皮       ・赤茯苓各5分、威霊仙・甘草各3分、姜5片」水煎服。
    ◎痰飲による臂痛で、腕もあげられない者を治す。

 半夏朮湯[1-2]《東醫寶鑑》
      「蒼朮2銭、白朮1銭半、半夏・南星・香附子・片(酒炒)各1銭、陳皮・       赤茯苓各5分、威霊仙3分、甘草2分、姜3片」水煎服。
    ◎湿痰流注と肩臂痛を治す。

半夏左経湯《東醫寶鑑》
      「柴胡1銭半、乾葛・半夏・赤茯苓・白朮・黄・細辛・麦門冬・桂心・防       風・白薑・小草・甘草各5分、姜3、棗2」煎服。
    ◎足少陽経が四気に流注して発熱腫痛し、脚腰が痛む。

半夏散及湯[1-1]《傷寒論》
    =「半夏湯」
      「半夏(洗)・桂枝(去皮)・甘草(炙)」
       右三味、等分、各別搗篩已、合法之、白飲和服方寸匕、日三服。若不能散       服者、以水一升煎七沸、内散両方散沸、更煮三沸、下火令小冷、少少嚥        之。半夏有毒、不當散服。
    ◎少陰病、咽中痛、半夏散及湯主之。
《傷寒論》辨少陰病脉證治第十一。

半夏散及湯[1-2]《傷寒論》《龍野ー漢方処方集》
    =「半夏湯」
      「半夏・桂枝・甘草各等分」
       粉末とし1回2.0gを沸湯40ccの中へ入れ少し煮てきたら、火から下ろし       冷まして服用。1日3回。
    ◎風邪などで咽が痛み頭痛或いは熱ある者。
    ◎咽喉痛み上衝急迫する者を治す《吉益東洞》
    ◎此方は冬時寒にあたりて咽喉腫痛する者に宜し。発熱悪寒ありても治す。此症     冬時に多くあるものなり。又、後世の陰火喉癬とも云うべき症にて、上焦に虚     熱ありて咽喉糜爛し、痛耐え難く、飲食ノドに下らず、「甘桔湯」、その他、     諸咽痛を治する薬寸効なき者に用いて一旦即効あり。《勿誤薬室方函口訣》
◎古本草に桂枝咽痛を治する効を掲載する。半夏の辛辣と甘草の和緩を合して其     の効用をすみやかにする。《勿誤薬室方函口訣》
    ◎『活人書』半夏桂甘湯と名付け、冷証陽無く、咽疼喉閉するを治す。


    ★適応症及び病名 (少陰病)
    [1]飲食不能
    [2]咽喉炎(糜爛・激痛)
    [3]咽喉腫痛
       ☆寒冷にさらされて。
    [4]咽痛
    [5]咽頭炎
    [6]顎下リンパ節炎
    [7]発語不能(痛んでしゃべられない)
    [8]扁桃炎



半夏瀉心湯[1-1]《傷寒論》
      「半夏(洗)半升、黄・乾姜・人参・甘草(炙)各3両、黄連1両、大棗(擘)12       枚」
       右七味、以水1斗、煮取六升、去滓、再煎取三升、温服一升、日三服。
    ◎傷寒五六日、嘔而発熱者、柴胡證具、而以他薬下之、柴胡證仍在者、復與柴胡     湯。此雖已下之、不為逆、必蒸蒸而振、却発熱汗出而解。若心下満而痛者、     此為結胸也、大陥胸湯主之。但満而不痛者、此為痞、柴胡不中與之、宜半夏瀉     心湯。     《傷寒論》辨太陽病脉證治下第七。
    ◎傷寒五六日、嘔而発熱者、柴胡湯證具、而以他薬下之、柴胡證仍在者、復與柴     胡湯。此雖已下之、不為逆、必蒸蒸而振、却発熱汗出而解、若心下満、而痛     者、此為結胸也、大陥胸湯主之。但満而不痛者、此為痞、柴胡不中與之、属半     夏瀉心湯。        《傷寒論》辨発汗吐下後病脉證治第二十二。
    ◎嘔而腸鳴、心下痞者、半夏瀉心湯主之。
                   《金匱要略》嘔吐下利病脉證治第十七。
    
「半夏瀉心湯はの字を脱するなり。《薬徴》
    「心下痞」は心下痞に作るべし《重校薬徴》

 半夏瀉心湯[1-2]《傷寒論》
      「半夏8.0g、黄・乾姜・人参・甘草・大棗各3.0g、黄連1.0g」
       水400ccを以て240ccまで煮詰め、滓を去り、煮直して120ccに煮詰め3       回に分服。


 半夏瀉心湯[1-3]《傷寒論》《漢方治療の実際》
      「半夏5、黄・乾姜・人参・甘草・大棗各2.5、黄連1」

○半夏瀉心湯証=嘔して腸鳴る。
    ◎心煩し、心下痞硬し、腹中雷鳴し、若しくは乾嘔する者を治す《方極附言》
    ◎《備急千金要方》の心虚実門には附子を加う。《勿誤薬室方函口訣》
    ◎此方は飲邪併結して心下痞硬する者を目的とする。故に、支飲あるいは飲に     痞硬には効なし。飲邪併結より来る嘔吐にも逆にも下利にもみな運用して特     効あり。
    ◎《千金翼方》に附子を加えるのは、すなわち附子瀉心湯の意にて、飲邪を温散     させる老手段なり。
    ◎「乾姜黄連黄人参湯甘草・大棗・半夏」
    ◎何病に限らず、心下痞硬を目標に用いる。《大塚敬節》
    ◎鑑別:
      半夏瀉心湯:陽証
      丁香茯苓湯:虚証
  【腹診】
    「腹診上、小柴胡湯や大柴胡湯の証にまぎらわしい。柴胡剤は胸脇苦満を目標に     し、瀉心湯類は心下痞を目標にすると云えば、その区別ははっきりしている     ように思えるが、実際に患者を診てみると、どちらとも決めかねる場合が出て     くる。胸脇苦満は季肋下に充満感があって、この部に抵抗と圧痛を訴えるのに、     心下痞硬は心下部すなわち、みずおち部がつかえてここに膨満と抵抗を証明す     るのであるから、簡単に弁別が出来そうに思うが、大柴胡湯証では多くは、季     肋下ばかりでなく、みずおちまで充満して抵抗を訴える。小柴胡湯証でも、み     ずおちの硬いことがある。また半夏瀉心湯の心下痞硬が甚だしい場合は、その     余波が季肋下にまで及んでいることもある」。《大塚敬節》
    ★処方解説
    A[方剤分類]・・・和解剤
    B[八綱弁証]・・・裏(熱)虚
    C[六経弁証]・・・陽明病
    D[衛気営血弁証]・気分
     E[臓腑弁証]・・・脾胃不和
     F[方剤帰経]・・・胃・小腸・三焦・大腸経
    G[効能・効果]・・和胃降逆・清熱止瀉


   
 半夏瀉心湯[1-4]《傷寒論》
    ★適応症及び病名(五十音順)
     [1]アレルギー性鼻炎
  [2]胃炎
☆EBM
「胃炎に対する半夏瀉心湯の効果」(多施設症例集積研究)
多施設の急性胃炎もしくは慢性胃炎の急性増悪期の患者で、上腹部不定愁訴を有し、胃内視鏡検査で発赤・びらんなどの急性炎症所見を有する患者32例、男性15例、女性17例、平均年齢46±17歳
→半夏瀉心湯エキス(6.0g/日)を分3で食前または食後に投与した。投与期間は4週間。投与期間中症状が消失した場合は投与完了と判断。
→実家右症状、内視鏡所見、臨床所見を調査し、症状別改善度、内視鏡所見別改善度を判定した。総合評価として全般改善度、有用性を判定した。
→1例は経過中妊娠が判明し除外。31例を解析した。症状別改善度は、嘔気(62%)、嘔吐(80%)、食欲不振(75%)、心窩部痛(91%)、腹部膨満感(81%)、胸やけ(90%)、ゲップ(80%)の各症状が4週間以内に消失した。
内視鏡別改善度では、出血(67%)、びらん(79%)、発赤(63%)、浮腫(71%)の角所見で中等度以上の改善が見られた。悪化例は無かった。副作用症状や臨床検査値以上はみられなかった。
全般改善度では、中等度改善が77%、軽度改善が90%であった。
有用度は、有用以上24例(77%)、やや有用以上28例(90%)であった。
→生活習慣による全般改善度の層別解析では、コーヒーをほとんど飲まない患者が時々飲む患者に比べて優位に優れた改善度を得た。
     [3]胃拡張
胃ガン
☆あまり体力の衰えていない患者で心下痞硬、食欲不振、悪心などのある者に用いる、もし噫気の多いときは、生姜瀉心湯を用いたほうがよい。
幽門ガンの患者に、半夏瀉心湯を与えたところ著効があって、2ヵ年あまりも生き延びた例がある。その患者を診たときは、発病10ヵ月ほどたっていて、幽門はほとんんど塞がっていたが、手術の予後の良くないのを知っている患者は、漢方治療を希望して来院した。そこで心下痞硬と心下部の鈍痛を目標に半夏瀉心湯を与えたところ、食が進み、心下のつかえが取れ血色も良くなり、肉がつき、治ったのではないかと思うほどによくなった。このようにして、レントゲン検査では依然として癌は消えていない
にの、患者は病気を忘れて、2カ年あまり痔毎をしていた。(漢方治療)
     [4]胃下垂
     [5]胃潰瘍
     [6]胃酸過多症
     [7]胃腸カタル
     [8]胃痛
     [9]異常発酵
     [10]悪心
    ☆回虫で悪心甚だしい:[蜀椒・烏梅]=椒梅瀉心湯《本朝経験》
     [11]嘔吐:
         ☆嘔吐、或いは下痢性疾患にして、心下痞し、或いは時々腹中雷鳴す          る証《奥田謙蔵》
         ☆この方は心下痞硬・腹中雷鳴・嘔吐・下痢を目標にして用いるが、          これらの症状の中で、心下痞硬が一番大切な症状である。心下痞硬          があって嘔吐する場合は、腹中雷鳴や下痢がなくてもこの方を用い          る《大塚敬節》
☆急性or慢性胃炎による嘔吐にこの方を用いる機会がある《大塚敬          節》
         ☆胃ガンで嘔吐の止まない者に用いて効を得たことがある。《大塚敬          節》
     [12]潰瘍性大腸炎
     [13]肩こり:
           ①胸元がつかえる。
           ②下痢、腹鳴。
           ③吐き気。
           ④後頭部からうなじにかけて不快感。
     [14]過敏性大腸症候群
     [15]吃逆: 
         ☆吃逆等にして、心下痞硬する証《奥田謙蔵》
     [16]急性胃炎     
     [17]車酔い
     [18]月経不順:
         ☆半夏瀉心湯は脹満および月信不調に用いて効がある。ともに心下痞          硬を目的とする。いわゆる上が通ずれば、下は自然に開くという理          である《山田業精》
     [19]下痢:
         ☆(下痢・むかつき・腹鳴)
         ☆心下痞硬・腹中雷鳴があって下痢する者に半夏瀉心湯・生姜瀉心湯          ・甘草瀉心湯を用いる《大塚敬節》
     ☆虚労あるいは脾労等の心下痞して下利する者、此方に生姜を加えて          よし。すなわち生姜瀉心湯なり。
     ☆痢病嘔吐が強い者に『無尽蔵』の太乙丸を兼用して佳なり。   
     ☆胸元がつかえ張り、嘔いて腹が鳴り或いは下利する者。《龍野ー漢          方処方集》
   ☆某妻、年40餘、心下痞硬、時々雷鳴して下利し、飲食進まず、日          々背悪寒し、被覆し火に向かわんとす、衆治効なし。余診して「半          夏瀉心湯附子」を服せしむること数日、悪寒止み、漸々に和す。          《橘窓書影》
         ☆老少の下利、水穀消せず、腹中雷鳴し、心下痞満し、乾嘔して安か          らざるを治す《備急千金要方》
         ☆噤口痢:[檳榔]
☆EBM
「塩酸イリノテカンによる下痢に対する半夏瀉心湯の効果」
婦人科悪性腫瘍例で、塩酸イリノテカンを中心とした化学療法を行った28症例100コース、平均年齢55.2歳。原疾患は子宮頸ガン12例、卵巣ガン11例、子宮体ガン3例、絨毛ガン2例。
→塩酸イリノテカンは1日1回60mg/㎡を1週間間隔で3回投与し、2週間休薬した。これを1コースとして投与を繰り返した。半夏瀉心湯エキス(7.5g/日)は塩酸イリノテカン投与3日前より投与開始し、最終コースの塩酸イリノテカン投与後7日目で中止した。
→治療中の下痢の発現を日本癌学会の副作用記載様式の判定基準(下痢なし」程度0、泥状便2~3日:程度1、水様便3~4日:程度2、水様便5日以上:程度3、出血・脱水・電解質異常を伴う:程度4)に従い、Grade評価した。
→抗腫瘍効果は28例中CR:0例、PR:12例で、奏功率は42.9%であった。止瀉作用は、塩酸イリノテカンと半夏瀉心湯併用でも下痢発現率は、塩酸イリノテカン単独療法時では、Grade2が8.1%、Grade3以上が0%、多剤併用療法を含んだ全体ではGrade3以上が3.0%であった。審医薬品承認審査概要の示す塩酸イリノテカン臨床試験でも副作用の下痢発現率は、Grade2 が20.4%、Grade3以上が20.4%であることから、半夏瀉心湯の併用により下痢発現が抑制される傾向を認めた。
「塩酸イリノテカンがしつこい下痢を引き起こすメカニズムは、生体内活性代謝産物であるSN-38という物質が遅延性の下痢の原因と考えられえています。SN-38は肝臓でグルクロン酸抱合を受け、消化管へ排泄されます。その後、β-グルクロニダーゼによる加水分解をへて、SN-38となって再び腸管粘膜を刺激して下痢を引き起こします。http://www.naoru.com/Topotecin.html」
     [20]下痢と便秘を繰り返す
     [21]口臭
     [22]口中糜爛
     [23]口内炎(胸元がつかえる、下痢、腹鳴、吐き気)
     [24]後頭部の不快感:
         ☆後頭部から項部にかけて不快感を訴え、重いような、揉んでもらい          たいような感じを訴える患者があったら、心下部を注意して診るが          良い。多くは心下痞硬を証明する。このような場合には半夏瀉心湯          を与えると共に、食を減じ(腹7分にして)、間食を止めるように          すると速やかに、この項部の不快感が去る《大塚敬節》
     [25]鼓腸
     [26]食道狭窄症
     [27]食道痛
     [28]食欲不振
     [29]消化不良
     [30]十二指腸潰瘍
     [31]シャックリ()
         ☆諸薬一応効あり、しかる後に復発して止まざる者は、此方を連進数          服すれば全効を収める。《雑病翼方》
     [32]積聚:=積は刺すような痛みをいう。腹中の腫れ物や、かたまりを指すこ          ともあり、移動しないものを積、移動するものを聚という
         ☆附子《方読便覧》
     [33]視力障害
     [34]心悸亢進:
     ☆心下逆・動悸する:[茯苓]《勿誤薬室方函口訣》
     [35]心下部のつかえ(心下痞)
         ☆脾労の証、心下痞し、腹中雷鳴し、痛なくして下利し、利後不快に 反って痞張する者、半夏瀉心湯之を主る。《勿誤薬室方函口訣》
☆すべて、ゲップや吐き気のあるもの、あるいは胸やけがしたり、苦い水が口中に上がったりするもの。あるいは平日飲食するたびに、胸が悪くなって、胃部が膨満し、食べものがつかえて、胸のところへ上がったり下がったりするような症状の者は、多くみぞおちあたりが堅くなってつかえ、あるいは胃部に堅いシコリがあるものである。この方を長服して、かつ背中の第五椎から十一椎のところと、章門のツボに、毎日お灸を数百壮して、消塊丸や硝石大丸などを兼用すれば、自然に効をみるものだ《尾台榕堂》
  [36]心下痞硬:(=みずおちがつかえてかたい)
         ☆鳩尾がつかえて抵抗があること。
         ☆桂枝人参湯、半夏瀉心湯、生姜瀉心湯、旋覆代赭湯は皆心下痞の          称あり。此れ毒、心下に迫り結するを以てなり。故に甘草に人参を          伍し以て迫り結するを緩解するなり。甘草瀉心湯に至っては急迫尤          も甚だしく心煩して安んずることを得ざるに至る。更に1両を加う          る所以なり。《類聚方広義》
         ☆此の方は飲邪併結して心下痞硬する者を目的とす。故に支飲或いは 飲の痞硬には効なし《勿誤薬室方函口訣》
         ☆此方は心下痞満を瀉するなり。心火を瀉すとなし、癇証を慨治する は大いなる誤りなり。《先哲医話》
         ☆飲食物停滞の感ありて、心下痞硬する証《奥田謙蔵》
☆主証の主は俗にいう亭主のこと也。客証の客は客人のこと也。証は病症をいう。惣(そうじ)て目的の証の中ても主証と客証との別がある。先ず家の亭主というものはいつでも家に居る也。客人は外より来るもので、来れば帰り、帰っては又来り、定り無きは客証なり。其客の来るも亭主があればこそ客人も又来るものでこそあれ、亭主のなき家には客も来たりはせぬ也。この主客の姿を半夏瀉心湯の心下痞硬、嘔吐、下痢の3つへ当てて言う時は、主証は、痞硬也、客証は嘔吐、下痢なり。問うて曰く、痞硬を主証となし嘔吐、下痢を客証とする理は如何?
答えて曰く、胸に邪が集まる故に痞硬する也。痞硬があるが故に嘔吐、下痢もある者也。嘔吐、下痢は心下の邪熱が進んで上へ向かう時は嘔吐ばかりありて下痢の無き事もあり、また心下の邪熱が上へも下へもふり別れて狂う時は、上にも嘔し下にも瀉することもあり、又心下が痞硬するばかりの事もある也。かくの如く嘔吐、下痢の2つは定まったことはなき証なれば客人の往来常なき理と同じ故に、嘔吐、下痢の2つをは客証とすること、主証の痞硬がなく、ただ嘔吐、下痢あらば是れ別の証也。主証を知ることは只本方の証ばかりに非ず、広く諸方にわたって主客の目的は悉くあること也。この瀉心湯の主客の節を広く及ぼして考える時は一をして萬を知るに足れり。(饗庭(あえば)口訣)
  [37]心煩
     [38]神経過敏
         ☆気欝する者:[香附子]《勿誤薬室方函口訣》
    [39]神経性嘔吐
    [40]精神分裂病
    [41]舌苔 <白苔~微黄>
     [42]疝(せんか):
     ☆疝、積聚、痛、心胸に浸し、心下痞硬し、悪心、嘔吐、腸鳴し、          或いは下利する者を治す。若し大便秘する者は、消塊丸、或いは陥          胸丸を兼用す《類聚方広義》
    [43]喘息
    [44]蓄膿症:
         ☆半夏白朮天麻湯証よりも、今少し腹力があり、心下痞硬の状があっ          て、頭重、不眠などのある者に用いる。《大塚敬節》
☆1学生が、胃が良くないというので、診察して、半夏瀉心湯を指示          したところ、これを呑んで胃も良くなり、蓄膿症も良くなった、と          喜ばれた。《大塚敬節》
         ☆脳漏に半夏瀉心湯が良い。これは心下痞硬を目的とする。《山田業          精》
    [45]つわり:
         ☆妊娠嘔吐等にして、心下痞する証《奥田謙蔵》
乳幼児下痢症
☆心下部がつかえて抵抗があり、腹がゴロゴロなって下痢するものに用いる。
虚実は中ぐらいの者に用いる。さらに悪心。嘔吐を伴う場合には五苓散とする(漢方診療医典)

    [46]吐き気
    [47]軟便
    [48]肺気腫
    [49]肺結核
    [50]悲泣
    [51]脾労
         ☆心下痞し、腹中雷鳴し、痛なくして下利し、利後不快にかえって痞          脹する者、本方これを主る。《先哲医話》
     [52]不安感
     [53]不眠:
         ☆神経衰弱性不眠症等にして、心下痞し、心悸亢進等ある者には、証          に由り茯苓を加う。《奥田謙蔵》
     [54]副作用によるむかつき
[55]腹瀉
☆京師富街の賈人、堺屋治兵衛の妻、積病5年。首疾は腹痛。諸症雑出して復定証なし。其の族に、医、某なるものあり。久しく之を療するも、いまだ其の效を見ず。最後は、腹肚妨脹して平日に倍す。医以為(おもえら)くに必ず死すと。因って謝して退く。是において先生を召す。先生大承気湯をつくりて之を與う。その人、いまだ服さざるに某医復至り、先生の主方を聞く。因って賈人に謂ひて曰く、「嗚呼、此れの如き、殆(ほと)んど其の死を速めるなり。夫れ承気の峻烈、譬(たと)えば、なお火銃を腹内に發するがごとし。之を懼(おそ)れて已(や)まず」と。而して賈人、その初めより久しく效なきを以て、竟(つい)に聽かず。医退く。連(しき)りに数剤を服す。厠(かわや)に坐しての後、心腹頓(とみ)に安し。而して、胸中尚、喘滿の状を覚ゆ。先生又、控涎丹をつくりて之を與う。
その人いまだ服さざるに、医復至りて賈人に謂いて曰く「承気尚、その勝せざるを恐るるなり。況(いわ)んや此れ彼よりも甚だしきものならんか。必ず服すこと勿(なか)れ」と。再三叮嘱(ていしよく)して去る。賈人復、聽かず。その夜輒(すなわ)ち之を服す。翌早(よくちよう)に吐下傾けるが如く、胸腹愈々(いよいよ)安し。医復至り其の此れの如きを見嘆服して去る。後数日、全く愈ゆ。恒(つね)に希粥に非ざれば、食すこと能わず。然(しかれ)どもいまだ嘗て薬を服さず。
初め治兵衛は、腹瀉を患う。以為(おもえら)く、なし、と。先生の殊效を見て始めて医薬の信ずべきを知る。乃(すなわち)嘆じて曰く「先生は良医なり。豈、病みて治せざるべけんや」遂に之の診治を求む。半夏瀉心湯をつくりて之を飲む。数月、腹瀉止みて、能く飯を喫(くら)う。」
[首疾]=はじめの病。
[腹肚妨脹]=腹がはって、ふくれてくる状態。
[控涎丹]=甘遂・大戟・白芥子
[叮嘱(ていしよく)]=ていねいに言いつける
[腹瀉]=腹が痛くなって、のちに下痢するもの。
[殊效]=特別のめずらしい効能。
     [56]腹部膨満感(上腹部の)
     [57]腹鳴(腹中雷鳴)
         ☆下痢をしている場合にはみられるが、下痢がなく食欲不振だけを訴          える時には現れてこないことが多い。《大塚敬節》
     [58]二日酔い
     [59]船酔い
     [60]便秘
     [61]便秘と下痢を繰り返す
     [62]慢性胃腸炎:
         ☆心下痞硬があって、食欲なく、下痢・腹中雷鳴があり、悪心や嘔吐          する者
     [63]無月経:
         ☆旧藩、渡辺義之助の妻、腹満、経閉数ヶ月、心下痞硬、気鬱するこ          と甚だし、診するに経閉は急に通ずまじ、先ず心下痞硬を写せんと          思ひ、半夏瀉心湯を用いること、7、8日、経水大いに利し、気力          快然まったき癒える。《山田業広》
     [64]胸やけ
[65]痳疾=小便が近い、急に尿意が起こる。排尿作用があったり、尿が出しぶって痛み、淋瀝として断えない状態をいう。
☆四国の今治にある寺の住職である某上人は長い年月、小便の出しぶる病を持病としていました。東洞先生がこれを診断。心下痞硬があり、腹中雷鳴する。そこで、半夏瀉心湯と、三黄丸をつくってこれを服用させました30日ばかりで、いろいろの症状はすべて治ってしまいました。《建珠録》

【加減】《勿誤薬室方函口訣》
     2.背悪寒する者----------[附子]
     4.飲ある者------------[呉茱萸・牡蠣]


半夏生姜湯[1]《易簡方論》
      「小半夏湯《金匱要略》」に同じ
    ◎傷寒の後、吃逆在る者。


 半夏生姜湯[2]《東醫寶鑑》
    =「鮮陳湯」
      「半夏(製)5銭、生姜(切)1両、青竹茹(卵大)」水煎服用。
    ◎になって死にかける者を治す。


 半夏生姜大黄湯《医宗必読》
「小半夏加茯苓湯大黄」
    ◎旦(あした)に食し、暮に吐するを治す。これ下焦病なり。


 半夏地楡湯
=「半夏5、地楡3」
◎胃ガン
☆胃痛、嘔吐、出血などがあって、味の濃い薬のおさまらない者に用いる。これは大塚家の家方で、胃ガンの患者に常用した。(漢方診療医典)



 半夏湯[1-1]《東醫寶鑑》
    =「半夏散及湯」《傷寒論》
      「半夏(製)・桂枝・甘草(炙)各2銭」水煎し、少しづつ嚥服する。
    ◎少陰の客熱と咽痛に。


 半夏湯[1-2]《漢方治療の実際》
      「半夏・桂枝・甘草各3」
    ◎《傷寒論》には半夏散と半夏湯があるが、私は半夏散は用いたことがない。
◎この方は小柴胡湯に“少陰病、咽中痛むものは半夏散及び湯之を主る”とあり、     私はこれを扁桃炎にたびたび用いてみたが、あまり効がなかった。感冒の始め、     少しのどが痛むという者にはよい。《大塚敬節》
    ◎この方を用いてみるに、悪うはないが、あまり奇効はない。それ故にこの方に     は治験がない。《有持桂里》


半夏湯[2]《備急千金要方》
「半夏3両、生姜6両、附子1枚、呉茱萸300粒」
      =淡飲の半夏湯。
    ◎痰飲、辟気、呑酸を主とす。
    ◎脚気、胃虚嘔逆、衝心する者を尚して奇効あり《高階枳園》
    ◎此方は痰飲の陰分に陥る者を治する方なれども、その薬至って単捷ゆえ、中風     の痰喘壅盛、欲脱者にも、脚気虚憊して衝心嘔逆する者にも活用して効あり。     《勿誤薬室方函口訣》
    ◎脚気衝心の危証を治す《劉桂山》


半夏湯[3]《備急千金要方》
「乾姜、甘草、附子、人参、半夏、桂枝、細辛、蜀椒」
    ◎脚気上って腹に入り、腹急し、胸に上衝し、気息絶えんと欲するを治す。《脚     気提要》

半夏湯[4]《葉氏録験方》
    =「小半夏加茯苓湯」に同じ。
      「半夏・生姜・茯苓」
    ◎肩臂痛を治す。


半夏湯[5]《東醫寶鑑》
「生地黄・酸棗仁(炒)各5銭、半夏・生姜各3銭、遠志・赤茯苓各2銭、黄       1銭、黍米1合」作、1両づつを水で煎服。
◎胆の熱と煩悶を治す。



半夏白朮天麻湯[1-1]《東垣試効方》
「半夏・橘皮各1銭半、天麻・白朮・黄蓍・人参・蒼朮・沢瀉・茯苓・生姜       各5分、乾姜3分、黄柏2分、神麹1匁、麦芽1匁半」

半夏白朮天麻湯[1-2]《万病回春》
「半夏(姜汁製)・白朮(米のとぎ汁に浸す)・陳皮(白を去る)・麦芽各7分半、       神麹(炒)5分、茯苓(皮を去る)・黄蓍(炒)・人参・沢瀉・蒼朮・天麻各3       分半、乾姜(炒)・黄柏(酒炒)各2分」

半夏白朮天麻湯[1-3]《東醫寶鑑》
      「半夏(製)・陳皮・麦芽(炒)各1銭半、白朮・神麹(炒)各1銭、蒼朮・人参       ・黄蓍・天麻・白茯苓・沢瀉各5分、乾姜3分、黄柏(酒洗)2分、姜5片」       水煎服。
    ◎脾胃が虚弱して痰厥頭痛、身重く、四肢が冷え、嘔吐・めまいして目も開けら     れない者。

 半夏白朮天麻湯[1-4]《李東垣》《中薬臨床応用》
      「製半夏9g、天麻9g、白朮9g、麦芽9g、陳皮6g、神麹9g、蒼朮6g、党参9g、       黄蓍9g、茯苓9g、沢瀉6g、黄柏(or黄)5g、乾姜3g」水煎服。
    ◎頭痛、咳嗽、多痰
    ◎ときによだれを吐く
    ◎寒がる
    ◎眩暈

 半夏白朮天麻湯[1-5]《脾胃論》《漢方後世要方解説》
      「半夏・陳皮・茯苓・白朮・蒼朮各3、麦芽・天麻・神曲・生姜各2、黄蓍       ・人参・沢瀉各1.5、黄柏・乾姜各1」
    ◎痰飲の頭痛、眼黒く、頭旋り、悪心煩悶し、気短喘して力なく、与に語れば心     神倒、目敢えて開かず、風雲の中に在るが如し。頭苦痛裂るが如く、身重き     こと山の如し、四肢厥冷して安臥することを得ず、此れ乃ち胃の気虚損し、停     痰して致すなり。
    ◎此方は足の太陰(脾経)の薬である。痰厥の頭痛とは平素脾胃虚弱にして胃内停     水ある者が外感内傷等の変によって水毒上逆して頭痛眩暈を発するもので、本     症の頭痛は眉稜骨より天庭百会の辺りに最も甚だしく、足冷を訴える。
◎本症は「呉茱萸湯証」に類似している。此方は頭痛、眩暈を主とし、呉茱萸湯     は頭痛嘔吐を主とする。
    ◎又、此方は脾胃虚弱にして食後手足倦怠、嗜眠を訴える者に用いる。
     人参・黄蓍・甘草=脾虚を補い
     半夏・蒼朮・白朮・陳皮・茯苓=脾湿を通利して痰を除く
     麦芽・神曲=脾の消食を助ける
     乾姜=辛熱、以て脾胃の寒を去る



 半夏白朮天麻湯[1-6]《脾胃論》《龍野ー漢方処方集》
      「半夏・陳皮・麦芽各3.0g、茯苓・黄蓍・人参・沢瀉・蒼朮・天麻各2.0g、       神麹・白朮各1.5g、黄柏・乾姜各1.0g」
◎虚証冷性の激しい頭痛眩暈、悪心煩悶、目を開くことが出来ず、身重く四肢冷     え安臥することを得ぬ者。
    ◎胃腸虚弱者又は低血圧症の頭痛眩暈。
    ◎痰厥頭痛にて眼黒頭旋、悪心煩悶、心神倒、目敢て開かず、風雲の中に在る     が如く、頭苦痛して裂るが如く、身重くして山の如く、四肢厥冷、安臥するを     得ざるを治す。《古今方彙》
    ◎これ胃気虚し、停痰して致す所なり《古今方彙》
    ★処方解説
    A[方剤分類]・・・
    B[八綱弁証]・・・
    C[六経弁証]・・・
    D[衛気営血弁証]・
     E[臓腑弁証]・・・
     F[方剤帰経]・・・
    G[効能・効果]・・



 半夏白朮天麻湯[1-7]《脾胃論》《漢方治療の実際》
      「半夏・白朮・陳皮・茯苓各3、麦芽・天麻・生姜・神麹各2、黄蓍・人参       ・沢瀉各1.5、黄柏・乾姜各1」
    ★適応症及び病名(五十音順)
  [1]足の冷え
  [2]頭が重く脹る
     [3]頭がふらつく
     [4]息切れ
  [5]肩こり:
           ①激しい頭痛・めまい。
           ②嘔吐・吐き気。
           ③足冷。
           ④心下痞満。
           ⑤背中突っ張る。
           ⑥腹部軟弱。
     [6]胃アトニー
     [7]胃下垂
     [8]胃腸虚弱
     [9]胃内停水
     [10]悪心
     [11]嘔吐:
       ☆呉茱萸湯証の嘔吐との鑑別:
         「呉茱萸湯証の嘔吐は、半夏白朮天麻湯証のそれよりも、頻繁で激し          い傾向がある」《大塚敬節》
     [12]顔色悪い
     [13]虚弱
     [14]元気がない
    [15]肩背強急
     [16]高血圧(虚証の):
        ☆血色の良くない冷え症の患者で、頭痛・めまいなどを訴える高血圧症         に用いる《大塚敬節》
        ☆腹部は虚軟で、鳩尾がつかえ、上盛下虚して、とかく上ずりになり、         足が冷えるとめまいがするという者を目標に用いる。頭痛があれば尚         更良い。男女とも、とかく癇症と決め難く、時に頭痛がしたり、めま         いがしたりして、みずおちがつかえ、気が欝すてふさぎこみ、または         よく怒り、上ずりになってのぼせたりする証は、なかなか多いもので         ある。皆この方がとい。足の冷えるのを目標とするがよい。《纂方規         範》
  ☆胃アトニーや胃下垂のある無力体質で、疲れやすく、頭痛、めまい、         足が冷える者
        ☆胃腸虚弱者の高血圧《矢数道明》
        ☆52歳の女性。背が高く、痩せ型で顔色が蒼く、眼底出血を2回患っ         たことがある。耳鳴も時々あり、頭痛は1ヶ月に2、3回激しいもの         がくることがある。血圧は最高が200内外で最低は110内外が、         ずっと続いているという。
私ははじめに七物降下湯を用いたが、1ヶ月たても全く同じ症状で、         頭痛の激しいときは吐くという。
そこで半夏白朮天麻湯にしたところ、これを飲み始めてから、めま         い・頭痛が漸次軽くなり、初診時から8年あまりになるが、最近は血         圧も160-100内外に安定し、血色も良く、頭痛も忘れ、すこぶ         る元気である。《大塚敬節》
     [17]呼吸困難
    [18]四肢厥冷
    [19]消化不良をともなう頭痛
    [20]常習性頭痛
    [21]上腹部振水音
    [22]食後倦怠
    [23]食後嗜眠:
        ☆食後胸中熱悶、手足倦怠、頭痛睡眠せんと欲する者。《勿誤薬室方函         口訣》
  ☆食後胸中がいきれて、手足の倦怠を覚え、睡眠を催す者《矢数道明》
[24]食欲不振
[25]自律神経失調症
[26]心悸亢進
[27]心下痞
[28]心臓神経症
[29]頭重
[30]頭痛:
☆前額部の疼痛、痰厥頭痛、めまいを訴える常習性頭痛。
☆此方は、痰飲頭痛が目的なり。脾胃虚弱、濁飲上逆して常に頭痛に苦しむ者。《勿誤薬室方函口訣》
☆もし天陰風雨ごとに頭痛を発し、あるいは1ヶ月に2~3回、大頭痛、嘔吐を発し、絶食する者は:「半硫丸」《勿誤薬室方函口訣》
☆平素から胃腸が弱く、胃下垂・胃アトニーがあって、血色がすぐれず疲れやすく、食後に眠気を催し、手足が冷えるという症状の人にみられる頭痛《大塚敬節》
☆この頭痛は日によって、激しいこともあれば、軽いこともあるが、多くは持病[頭痛持ち]という形で長引く。多くはめまいを伴う頭痛で、吐くこともあり、頸の凝りも訴える。《大塚敬節》
☆頭痛は、頭が重いと訴える者が多く、めまいを伴うことが多い。めまいを伴うというよりも、めまいが主訴で、これに頭痛を伴う場合が多い。それに冷え症で、血色は赤味が少なく、色が白いか、蒼い。腹力もない者が多い。脈も弱い。《大塚敬節》
☆呉茱萸湯証の頭痛との鑑別:
「呉茱萸湯証の頭痛は片頭痛のかたちでくる場合が多いのに、半夏白朮天麻湯証の頭痛は、眉間の当たりから前額・頭頂部にかけて痛み、少し首を動かしても、めまいがひどく、からだが宙に浮いたように感ずる。」《大塚敬節》
「呉茱萸湯証では、腹力があり、上腹部が膨満し、みずおちが詰まったようになるが、半夏白朮天麻湯証では、腹力弱く、心下部で振水音を証明することが多い」《大塚敬節》
「呉茱萸湯証の患者よりも本方証の患者の方が虚弱で、血色も悪い。又、便秘する者が多い。このさいには大黄の入った下剤を用いずに半硫丸を兼用すると良い。」《大塚敬節》
☆平常胃腸虚弱の者、頭痛烈しく、眩暈悪心、四肢冷を訴える者《矢数道明》
☆濁飲上逆の頭痛:
実証---治頭痛一方《和田東郭》
虚証---半夏白朮天麻湯。さらに激しき者には呉茱萸湯《矢数道明》
☆34歳女性。
「平素から冷え性で、頭痛とめまいがひどく、強いときは実際に吐いたりする。夕方になるとたいてい治まるが、ヨクに日中は肩こり・頭重・頭痛に悩まされ、仕事が手につかないことが多いと言う。
メンスそのものは異常は無いが、生理日前後にこの症状がひどくなる。
そこで痿躄の当たりをたたいてみると、、水音がし、良く聞いてみると、昔から胃弱で、アトニーであることが分かった。そこで半夏白朮天麻湯を続けたら、10日ほどで硝黄がほとんど帰依、その後時々中断しては、再発しそうになると繰り返し飲んでいるうちに、半年ほどで完全に治った。」《山田光胤》
[31]前庭神経炎
[32]痰厥痛
[33]蓄膿症:(副鼻腔炎)
☆半夏白朮天麻湯は、平素から胃腸が虚弱で、胃部に振水音を証明するもので、脈が弱く、足が冷え易く、頭痛、頭冒、眩暈があり、時に嘔吐を催し、食後には眠気が起こり、手足がだるい者に用いる。ところが、慢性副鼻腔炎の患者で、頭痛、頭重を訴える者には、心下部に振水音を証明する者が多く、これらの患者は、近代医学の鼻の治療では、自覚症状が軽快しない者が多く、また麻黄剤や柴胡剤を用いても、著効を得る場合が少ない。
そこで副鼻腔炎の患者で心下部に振水音を証明し、頭痛、頭冒感の等のある者に、半夏白朮天麻湯を試用したが、大部分の例において、10日内外の服用で、頭痛が軽くなり、1ヶ月~2ヶ月で鼻閉も軽く、また嗅覚も微かながら回復するのを認めた。なおこれらの患者のほとんどが、甘い下肢を好み、肉食を好む者が多いので、これを著しく制限して、野菜ことに生野菜・海藻を摂るように指導した。なお鼻茸の有る者、又は鼻茸の手術をした者には[薏苡仁]として著効した。《大塚敬節》
☆この患者は数年前から肺結核があり、滋陰至宝湯を用い、最近は咳嗽もなくなり、体力もつき、疲れも少なくなって、元気になっていたが、数日前、風邪を引いたところ、鼻が詰まり、上顎部が発赤腫脹して疼痛を覚えた。医師に診てもらったところ、急性の副鼻腔炎を起こしているので、この際思い切って手術をした方が良いとのことであった。しかし虚弱な体質で、胃腸も弱いので、なるべく手術をしないで治したいという。脈は大きいが弱く、腹力がなく、胃部では振水音を証明する。この日体温は37、3℃。そこで半夏白朮天麻湯薏苡仁として与えたところ、3日間の服用で、腫脹、発赤、疼痛もともに消失した。そこで引き続き3ヶ月ほ連用して、頭重、鼻閉はなくなった。
脾胃論巻3に“脾胃虚するときは則ち九竅通ぜざるを論ず”という一文がある。九竅というのは眼・耳・鼻が各々2つ孔があり、口と肛門、尿道で九竅である。そこで副鼻腔炎の患者で、振水音を証明出来なかった者でも、脾胃の虚と診断したものには半夏白朮天麻湯を用いてみたのである。《大塚敬節》
[34]疲れやすい
[35]手足がだるい
[36]手足が冷たい
[37]低血圧:
☆低血圧者の頭痛・眩暈《矢数道明》
☆胃下垂症、胃アトニー症などがあって、疲れやすく、食後はだるくて眠くなり、足が冷え、めまい、頭痛、悪心などのあるものによい。(漢方診療医典)
[38]泥状~水様便
[39]脳血管障害
[40]脳動脈硬化症
[41]吐き気:
☆床から起きあがろうとすると、吐き気・頭痛する。
☆濁飲上逆の症、嘔気甚だしい者→「呉茱萸湯」
[42]疲労倦怠:
☆食事をとるとすぐ手足がだるくなって、ねむけを催すという点では、六君子湯と同じであるが、その他に食後に頭が重いとか頭痛がするとかいう症状があれば、これ方を用いる《大塚敬節》
[43]貧血
[44]腹部軟弱
[45]不整脈
[46]偏頭痛:
☆疝を帯びる者→「当帰四逆加呉茱萸生姜湯」《勿誤薬室方函口訣》
[47]慢性胃腸炎:
☆普段から胃弱、やせて貧血性の者。
☆38歳の主婦。
「半月前より食欲不振と鳩尾に膨満感を覚え、食事をするとその当たりが痛いという。手足が冷え、貧血がある。便通は1日1会。肩こり、めまい、頭重、腰痛、不眠を訴え、軽い耳鳴りがある。月経量は少なく、期間は2~3日で終わるという。出産は2会。体格は普通で、顔色は青白い。
脈は沈んで弱く、腹を診てみると、鳩尾当たりにつかえがあり、ふくらんでいるが、全体的には柔らかい。
血圧は(96-80)。
そこで、脾胃の虚であろうと考えて柴芍六君子湯を10日間服用させたが、5日目頃からめまいと頭痛。悪心を起こすというので、半夏白朮天麻湯にかえた。1週間服用し、いくらか良いので、ほとんど同一の処方を4ヶ月間続けさせたところ、胃腸症状も睡眠状態も良くなり、5ヶ月間の服薬でほぼ治った。」《矢数圭堂》
[48]慢性頭痛
[49]耳鳴り
[50]メニエール
☆平素胃腸虚弱で、胃内に停水があり、この水毒が上昇して、眩暈や嘔吐、頭痛を発するものに用いる。やせ型貧血性で、低血圧のものが多い、大塚氏は本方によってメニエール症候群といわれた者を何例も治したという。メニエール症候群は内耳のリンパ水腫といわれているが、胃内停水が動いて上逆し、内耳のリンパに影響を与えているのを本方によってその根本を治そうとするものである(漢方診療医典)
[51]めまい:(回転性・常習性)
☆めまいが主訴で、これに頭痛を伴う場合が多い。それに冷え性で、血色赤味が少なく、蒼い。腹力もない者が多い《大塚敬節》
☆目がくらむ、甚だしければ回転性のめまい発作で立っていられない《中医処方解説》
☆老人虚人の眩暈、但し足冷を目的とするなり。《勿誤薬室方函口訣》
☆眩暈、胃腸虚弱の者《矢数道明》
☆胃内停水によって眩暈を訴え、食後全身倦怠、睡気を催す者《矢数道明》
☆胃下垂症や胃アトニー症の患者にみられる、頭痛とめまいに用いる機会が多い《大塚敬節》
☆半夏白朮天麻湯証では、めまいするときは、頭痛を伴うことが多く、半夏厚朴湯証では、めまいに不安感を伴う事が多い。《大塚敬節》
☆62歳男性。めまいが主訴。この患者は痩せていて血色が悪い。血圧は平素150内外であるが、気温が低くなると190内外となり、冷え症で、胃腸が弱く、いつも軟便である。脈は浮大弱で、腹部に弾力が乏しく、振水音を証明する。
私はこれに半夏白朮天麻湯を与えたが、10日ほど呑むと、めまいが軽くなった。そこで約8ヶ月間、これを飲み続けたところ、めまいが取れたばかりでなく、血色も肉づきもよくなり、翌年の1、2月の寒冷の時期にも、血圧は170を越すことはなかった。《大塚敬節》
☆52歳、女性。
「背が高く、やせ型、顔色蒼い。血圧が高く、めまいと頭痛のため、ほとんど床についていた。眼底出血を2回患ったことがある。耳鳴も1ヶ月に2、3回激しいものがくる。血圧は(200-110)内外がずっと続いていると言う。
(私)は、はじめに七物降下湯を用いたが、1ヶ月たっても全く同じ症状で、頭痛の激しい時は吐くと言う。
そこで半夏白朮天麻湯にしたところ、これを飲み始めてから、めまい、頭痛が漸次軽くなり、初診時から8年あまりになるが、最近は血圧も(160-100)内外で安定し、血色も良く、頭痛も忘れすこぶる元気である。」《大塚敬節》
☆胃下垂症。胃アトニー症の患者にみられるめまいの用いることが多い。同時に頭痛を伴うことがある。半夏厚朴湯証の患者のような不安感を伴うことはなく、腹証では半夏厚朴湯証のそれより虚証で弾力の乏しい、半夏厚朴湯証では比較的弾力があって、軟弱無力というほどではない(漢方診療医典)
[53]羸痩
[54]ワインベルグ症候群




半夏茯苓飲子《雞峰普済方》
「理中湯-甘草乾姜茯苓附子」
◎痰飲嘔吐を治す。


半夏茯苓湯[1]《東醫寶鑑》
「半夏1銭半、赤茯苓・熟地黄各1銭、橘紅・旋覆花・人参・白芍薬・川芎・桔梗・甘草各7分、姜7片」水煎服。
◎悪阻で吐く・めまい・食気を嫌がる・酸味を好む者を治し、痩せて痰が起こる者を治す。

半夏茯苓湯[2]《東醫寶鑑》
「半夏・赤茯苓各2銭、陳皮・人参・川芎・白朮各1銭、姜5片」水煎服。
◎水が心下に溜まって吸い結胸になり、痞満して頭汗が出る者を治す。


半夏麻黄丸《金匱要略》
「半夏、麻黄」各等分
右2味、末之、煉蜜和丸小豆大、飲服3丸、日3服。
◎心下悸者、半夏麻黄丸主之。
半丸=精門猪苓丸
◎白濁を治す。

半硝丸《東醫寶鑑》
「半夏2両、風化硝1両」作末し姜汁糊で梧子大の丸剤。姜湯で50丸飲む。
◎痰飲の流注疼痛に。

半栗散《東醫寶鑑》
「半夏(姜製)2銭、陳栗米1銭、姜10」水煎服。
◎よだれと白緑水を吐く者を治す。胃が冷えたのが原因。

半硫丸[1-1]《和剤局方》
「硫黄80g(細末にして、柳の木槌で十分たたいておく)、半夏120g(湯洗7回)熱を加えて乾燥させ、作末し、生姜汁と煮詰め、乾蒸餅末と混ぜ合わせ、臼に入れて数100回ついて丸とし、桐の実大にする。
1回に15~30丸を服用。婦人は酢を加えた湯で飲む。小児は粟粒大にして、1回に3~5丸を重湯または生姜湯で服用。


半硫丸[1-2]《和剤局方》《中薬臨床応用》
「硫黄、半夏」等量を生姜汁で煮詰めて小豆大の丸剤。1回15~20粒、温酒or生姜湯で服用。
◎老人の虚寒による便秘。
◎大便を軟らかくして快通せしめる効が有る《大塚敬節》



反鼻交感丹《医事説約》
「反鼻交感丹料《本朝経験》-香附子、+桂枝・芍薬・実・丁香」
◎反鼻交感丹料《本朝経験》に劣る。《勿誤薬室方函口訣》

反鼻交感丹料[1-1]《本朝経験》《龍野ー漢方処方集》
「茯苓・香附子各6.0g、反鼻・乾姜各2.0g」
◎失心、健忘、心気快々として楽しまざる者。


反鼻交感丹料[1-2]《本朝経験》《漢方治療の実際》
「茯苓5、香附子3、反鼻2、乾姜1.5」

★適応症及び病名(反鼻交感丹料)
[1]意識混濁:
☆ある日、細君につれられて来院した38歳の男性。顔色が青ざめ、茫然自失の態で、問診しても応答が出来ない。
細君の語るところによれば、1年ほど前から、記憶力が減退し、疲労倦怠感と耳鳴を訴えていたが、だんだん病状が悪化するので、某大学病院で受診の結果、脳梅毒と診断せられ、3ヶ月間入院して治療につとめたが、軽快の様子が見えないので、退院して田舎へ帰るところだが、かって細君の弟にあたる人が肋膜炎で私の治療を受けたことがあり、それを思い出して来院したと云う。
脈を診るために、手を差し出すと、震える。細い弱い脈である。食用は普通にあり、大便は1日1行。時にない日がある。よく眠る。
私はこれに反鼻交感丹を与えた。2週間服用後、元気が出たという手紙が届き、更に3週間分とまた2週間分をそれぞれ送薬し、5/5に来院した時は、全く別人の様に快活である。頭は重いが、時に新聞でも読む気が出てきたという。それでも疲れやすいから、なるべく頭を使わないことにしていると云う。それから引き続き7月下旬まで服薬し、9月より勤務に出れるようになった。《大塚敬節》
[2]鬱病:
☆癇鬱して心気怏々として楽しまざる者。
[3]健忘:
☆甚だしい者   
[4]発狂:
☆発狂後に放心して痴(チガイ)になる者。
☆健忘甚だしき者、或いは発狂後放心して痴鈍になる者。または癇欝して心気快々と楽まざる者を治す。牧野候、発狂後、心気欝塞、語言する能はず、ほとんど癡人の如し。此方を服する1月余、一夜東台博覧会の煙火を見て、始めて神気爽然平復す。その他数人此方にて治す。反鼻揮発の功賞讃すべし《勿誤薬室方函口訣》
        


板王消毒飲《中薬臨床応用》
「板蘭根12g、王不留行9g、黄連3g、黄芩9g、四葉参9g、地黄(生)12g、牡丹皮9g、川楝子6g、黄皮核9g、海金砂9g、甘草3g」水煎服。
◎睾丸炎
◎流行性耳下腺炎に睾丸炎を併発。

板蘭大青湯《中薬臨床応用》
「板蘭根・地黄(生)・石膏(生)各30g、大青葉・金銀花・連翹各15g、黄芩12g、乾地竜9g」水煎服。
◎日本脳炎(軽~中等度)。


蟠葱散[1-1]《和剤局方》《東醫寶鑑》
「蒼朮・甘草各1銭、三稜・莪朮・白茯苓・青皮各7分、縮砂・丁香皮・檳榔各5分、延胡索・肉桂・乾葛各3分」作末し、1貼に葱白1茎を入れて煎服。
◎脾胃が冷え、心腹の疼痛、胸脇・膀胱・小腸・腎気がともに痛む者を治す。

蟠葱散[1-2]《和剤局方》《古今方彙》
「延胡索・肉桂・乾姜各1分、蒼朮・甘草各4分、砂仁・檳榔子・丁香各2分、三稜・莪朮・青皮・白茯苓各3分、蓮鬚葱白(ヒゲをとらず葱白)」水煎熱服。
◎男婦、脾胃虚冷、気滞りて行らず、攻めても心を刺し、腹痛胸脇に連たなるを治す。
◎膀胱、小腸、腎気及び婦人血気刺痛し並びに皆之を治す。


斑玄丸《東醫寶鑑》
「斑猫・延胡索」等分に作末し、醋糊で丸剤。3丸を酒で飲む。
◎鬼胎が妖魔に迷わされ、と同じようなとき。
◎一切の熱病を治す。

斑猫酒(はんみょうしゅ)《中薬臨床応用》
「斑猫2g」65度の白米酒orエチルアルコール100‹に浸けて、7日間密閉する。1日1~2回、少量を患部に塗布。
◎尋常性乾癬
◎神経皮膚炎(限局性)。

班竜丸《東醫寶鑑》
「鹿角膠・鹿角霜・菟絲・柏子仁・熟地黄各8両、白茯苓・破故紙各4両を細かくくだいて(酒煮)米糊で丸薬にするか、または鹿角膠を良い酒に入れて梧子大の丸剤にし、姜塩湯で50丸づつ呑み下す。
昔、蜀の老人がこの薬を飲んで380才まで生きたという伝説がある。
◎常服すれば長寿を保つ。
◎虚労を治す。
◎腎臓の気・血・精を補う。
    
班竜丹《東醫寶鑑》
◎虚労を治す。
◎腎臓の気・血・精を補う。
◎不老長寿の薬。

番瀉葉飲《中薬臨床応用》
「番瀉葉」単味のふりだし。1回6~9g使用。
◎一過性の瀉下剤として使う。


礬石丸《金匱要略》
「礬石(焼)3分、杏仁1分」
右二味、末之、煉蜜和丸棗核大、内臓中、劇者再内之。
◎婦人經水閉不利、藏堅癖不止、中有乾血、下白物、礬石丸主之。
《金匱要略》婦人雑病脉証并治第22
◎婦人、経閉・小便不利・白帯下。丸剤を内服、あるいは陰道中に挿入。


礬石大黄散《東洞家塾方》
「礬石・大黄各等分」
右2味、杵き篩い作末、毎服1銭、温湯を以て之を服す。日に1回。
◎無名の毒腫、及び癜風、疥癬を治す。

礬石湯《金匱要略》
「礬石2両」
右一味、漿水一斗五升、三五沸、浸脚良。
◎治脚氣衝心。
《金匱要略》中風節病脉證并治第五。

礬硝散《東醫寶鑑》
「白礬・硝石各1銭」作末し、大麦粥で調下する。
◎女労疸を治す。


礬丹丸《東醫寶鑑》
「黄丹・白礬各1両を先に瓦に乗せ、黄丹を敷き、次に白礬をかぶせて炭5片でくぶして細末にし、猪心血で緑豆大に丸め毎10~20丸づつ橘皮湯で服用。
◎五癲・百癇に効く。