「ふ」漢方処方



 

蕪荑丸
「蕪荑、黄連」


#蕪荑丸《銀海精微》
「蕪荑・黄連・神麹・麦芽」各等分。小麦粉で練り緑豆大の丸薬にし、毎服10~15丸、重湯で服用。


#蕪荑散《東醫寶鑑》
「蕪荑・雷丸各5銭、乾漆(炒って煙りがなくなった)1銭」作末し温水で2銭調服。小児は半銭。
◎蛔が心臓をかんで痛む者。

 

蕪荑湯《中薬臨床応用》
「蕪荑6g、榧子7粒、檳榔子9g、黄連2.5g、木香5g」水煎服。
◎小児の疳積
◎回虫による腹痛


#風引湯[1-1]《金匱要略》
「大黄・乾姜・龍骨各4両、甘草・牡蠣各2両、寒水石・滑石・赤石脂・白石脂・紫石英・石膏各6両」
右十二味、杵、篩(ソシ、荒くふるい)、以韋嚢盛之。取三指撮、井花水三升、煮三沸、温服一升。
◎寸口脉遅而緩、遅則為寒。榮緩則為亡血、衛緩則為中風。邪氣中經、則身痒而癮疹、心氣不足、邪氣入中、則胸満而短氣。


#風引湯[1-2]《金匱要略》《龍野ー漢方処方集》
「大黄・乾姜・竜骨各4.0g、桂枝3.0g、甘草・牡蠣各2.0g、寒水石・滑石・赤石脂・白石脂・紫石英・石膏各6.0g」
粉末とし1回分1.0gを汲み立ての井戸水120ccで煮て3回ほど沸騰したら火から下ろし40ccを服用。


風引湯[1-3]《金匱要略》《漢方治療の実際》
「大黄・乾姜・龍骨各4、桂枝3、甘草・牡蠣各2、寒水石・消石・赤石脂・白石脂・紫石英・石膏各6」
以上を細末して混和し、1日量9をとり、水150ccに入れ2、3沸騰させ、滓を去らずに、これを3回に分服する。

◎熱性のケイレン発作・テンカン・ひきつけ。
◎この方は《金匱要略》の、熱癱癇を除くの方として記載せられ、更に、その主治を“大人の風引、少小の驚癇、雞瘲日に数10発、医療する能はざるを治す、熱を除くの方”と述べている。《大塚敬節》

雞瘲(けいじゅう)とは、筋肉をふるわし、ひきつける状をいう。《大塚敬節》

◎この方は冗長で人が試用したことを聞かない用いることも難しい処方である。この方をわが国で試みたのは奥村良筑翁である。この方は用いてみると、けしからず良く効く方で、他にこれに代わるものがない。西土でもこの方を互に相唱和して用いたものと見え、《外台秘要方》にも、この類方が多くあって、僅かに1、2味が違うだけの処方が多数ある。奥村翁はすべて治術によくよく意を用いた人で、珍しくて、人の試みない方もよく用い試みた。候氏黒散までも、この人は試みた。
さて、この風引湯にはいろいろの治験があって、沈痾痼疾を治したこともあるが、この方の第1の目標は雞瘲である。雞瘲があれば約束通りに効くものでる。この方驚風などには手際よくきくもので、他医が参連白虎(参連湯、白虎湯)などを用いている処へ、この方を用いると気持ちよく効くものである。この方は京師では、田中適所翁がはじめて用いて効があった。《方輿輗》

★適応症及び病名(風引湯)
[1]癲癇:
☆《方輿輗》
“先年、氏秦(ウズマサ)に1病人があり、癇で、四肢がふるい、左手が特にひどくひきつけ、その脈を診ている中にも、左手が激しくひきつけるから、その腕を2人して捕まえていなければならないほどで、このような激しいヒキツケが数年続いて治らない。三角良察はこれに抑肝散+木瓜を与えて長服せしめたが、効がない。余はこれに風引湯を与えたところ、10日ばかりで、その症が大いにゆるみ、40日ばかりで全く治った”



#風疳丸《東醫寶鑑》
「青黛・黄連・天麻・五霊脂・夜明砂・川芎・蘆薈各2銭、草竜胆・防風・蝉退各1銭半、全蝎2枚、乾蟾頭3銭」作末し猪胆汁で麻子大の丸剤。薄荷湯で10丸呑む。
◎小児の肝疳・雀目を治す。


#風湿一方《中薬臨床応用》
「半楓荷30g、当帰12g、熟地黄15g、独活12g、桑寄生24g、鶏血藤24g」水煎服。
◎慢性関節炎
◎座骨神経痛
◎腰痛
◎産後の運動麻痺


#風湿身痛方《中薬臨床応用》
「鹿蹄草15g、羗活6g、防風6g、合歓皮12g、木瓜6g、蒼朮6g、紅棗9g」水煎服。
◎全身の筋肉・関節に疼痛。
◎風湿による関節痛。


#風湿二方《中薬臨床応用》
「松節12g、半楓荷30g、鶏骨香12g、豆豉姜9g、当帰12g、熟地黄15g」水煎or(酒浸)して服用。
◎風湿による筋肉・関節の痺痛。


#風蔕散《東醫寶鑑》   
「瓜蒂(炒)・赤小豆」各等分に作末し、各2銭を温漿水で調下するが、吐くことを限度とする。
<別法1>1銭を飲んで薬が消化されたら再び2銭を取って温水2合で調服し、手指を喉中に入れると吐く。
<別法2>先に味噌(みそ)1合と温水7合を煎じ汁に薬末1銭を混ぜて頓服し、吐かなければ再服して快吐した後、すぐ止まる。
◎吐剤。
◎頑痰と、または食積が胸中にあって、昏迷し、眩乱した症。


風栗殻湯《中薬臨床応用》
「風栗殻6g、牛蒡子9g、桔梗9g、夏枯草12g、甘草節9g」2杯の水で7分目まで煎じ、1回で服用。毎日1剤で、3剤服用後に玄参牡貝湯に代える。
◎頸部慢性リンパ腺炎
◎リンパ腺結核。


#赴宴散《東醫寶鑑》
「五倍子1両、黄柏(蜜炒紫色)・滑石各5分」作末し、毎回半銭を口内に塗る。
◎口瘡を治す。


#無射散(ぶえきさん)《東洞家塾方》
「牡蛎・鹿角霜・軽粉各5分」右3味。杵篩い2味を末と為し軽粉を合して鶏子白を治めて煉りて膏となし、瘡上に粘く。
◎諸々の瘡瘍、膿出でて止まざるものを治す。


#不換金正気散[1-1]《和剤局方》《勿誤薬室方函口訣》
「蒼朮・厚朴・橘皮・甘草・半夏・藿香各等分」
右六味。或いは茯苓を加う。
◎四時の傷寒、瘴疫時気、霍乱、吐瀉を治す。
「此の方は『嶺南方』にて山嵐瘴気を去るが主意なり、夫れより転じて、水土に服せざる者、或いは壊服と云いて腹気常を失し吐瀉などする者に用ゆ。《原芸庵》は此の方五十余通の加味ありて万病に用いたれども、それ程に効ある者に非ず。併し不換金と云うは古人も珍重したる者と見ゆ。」


#不換金正気散[1-2]《和剤局方》《中薬臨床応用》
「藿香6g、蒼朮9g、厚朴6g、製半夏9g、陳皮6g、甘草3g」細末にし1回9gを「生姜1g、大棗3g」の煎汁で服用。
◎急性胃炎。


#不換金正気散[1-3]《和剤局方》《漢方後世要方解説》
「半夏6、蒼朮4、厚朴・陳皮各3、大棗・生姜各2、藿香1、甘草1.5」
◎「平胃散+藿香+半夏」
◎四時の感冒、傷寒、瘟疫、時行及び山嵐瘴気、寒熱往来、霍乱吐瀉、下痢赤白及び遠方に出て水土に伏せず、並びに皆之を治す。
◎此方は山嵐瘴気を去るといって、時候当たり、慣れぬ土地、山地などを旅行して、水に慣れず、急性胃腸炎を発して嘔吐下痢等を起こす者に用いる。
◎平素胃腸弱きもの感冒等にて下痢する者ににもよい。
◎原雲庵は此方の加減方50余を使い、万病に応用せりという。藿香正気散の原方である。

[主治]
《和剤局方》
四時の傷寒、瘴疫時気、頭痛壮熱、腰背拘急、五労(志労・思労・心労・憂労・肺労)七傷(陰寒・陰痿・裏急・精進々・精少陰下湿る・精清・小便苦数)山嵐瘴気、寒熱往来、五膈(思膈・憂膈・喜膈・怒膈・悲膈)気噎、咳嗽痰涎、歩行喘乏するを治す。或は霍乱吐瀉、臓腑虚寒、下利赤白竝びに宜しく之を服すべし”
“若し四方の人水土に伏せず、宜しく之を服すべし、常に服すれば能く嵐気を辟け、脾胃を調和し、飲食を美くす”
《牛山方考》
“四時不正の気、瘟疫、中温、山嵐の瘴気によりて寒熱往来、霍乱瀉下し、痢赤白を問わず、或いは旅の途中で中暑、中湿、中寒の症、或いは旅館で滞留して、その土地の気に中てられて傷寒の如くに煩ふ、又は不食し湿瘡などを生じ、或いはは旅舎にて瘧疾を患るの類、皆水土に服せざるの症なり、不換金正気散奇効あり”
《医方口訣集》
“凡そ山嵐瘴気を受け、及び遠方に出で、水土に服せず、吐瀉するもの之を主る”

[目標]
《勿誤薬室方函口訣》
“此方は嶺南方にて、山嵐瘴気を去るが主意なり。夫より転じて、水土に服せざる者、或いは懐服と云ふて、腹気常を失し、吐瀉などする者に用ゆ。原芸庵は此方五十余通の加味ありて万病に用いたれどもそれ程に效ある者に非ず、併し不換金と云うは古人も珍重したる者と見ゆ”
《医療手引草》
“此方は温中の材なり、藿香正気散に比すれば、正は此湯より発散つよし、紫蘇あればなり。此湯は陰湿を主とす、蒼朮あればなり。2方ともに方外の殊功ある薬なりと考へ用ゆべし。此方もと平胃散に加味す、専ら傷食除湿の薬なり”

[薬能]
《医方口訣集》
“蒼朮、厚朴、陳皮、甘草は平胃散なり、以て湿土敦阜(トンフ、塞がった丘)の気を平げて、嵐瘴を消す。乃ち半夏の燥脾を醒ます所以、藿香の香りは嘔を開く所以なり。名を正気と曰ふ者は、その能く不正の気を正すを謂うのみ”


不換金正気散[1-4]《東醫寶鑑》
「蒼朮2銭、厚朴・陳皮・藿香・半夏・甘草各1銭、姜3、棗2」水煎服。
◎傷寒陰症で頭痛・身疼・寒熱往来。


不換金正気散[1-5]《和剤局方》《古今方彙》
「厚朴・陳皮・藿香・半夏・蒼朮各1銭、甘草半減、生姜、大棗」水煎。
◎内外の湿、或いは悪寒発熱、吐瀉腹痛、身体沈重等を主る《医方考》
◎内が生冷、湿、等に傷れて寒熱し吐瀉腹痛する者を主る。神麹、山楂子を加えるも可なり。
◎頭痛には:「+川芎+白芷」《寿世保元》
◎湿あれば:「+白朮+茯苓」=「除湿湯」と名づく。
◎口燥心煩するには:「+柴胡+乾葛」
◎冷瀉止まざるには:「+木香+訶子+肉豆蔲」
◎瘧病には:「+常山+檳榔子+草果」
◎痢疾には:「+黄連+枳殻-藿香」
◎初痢にて傷食より得たる者:「+黄連+芍薬」
◎咳嗽には:「+桔梗+杏仁+五味子」
◎喘急には:「+麻黄+紫蘇子+桑白皮」
◎身体疼痛するには:「+麻黄+桂枝+赤芍薬」
◎寒に感じ腹痛む:「+乾姜+官桂」
◎嘔逆には:「+丁香+砂仁」
◎気塊には:「+三稜+枳殻+檳榔子+小茴香」
◎熱極、大便通ぜざる:「+大黄+芒硝」
◎腹脹には:「+香附子+枳殻+白豆蔲」
◎胸脇脹満には:「+枳実+莪朮」
◎両足浮腫する:「+木瓜+大腹皮+五加皮」


不換金正気散[1-6]《和剤局方》《漢方治療の実際》」
「朮4、厚朴・陳皮・大棗・生姜各3、半夏5、甘草1.5、藿香1」


不換金正気散[1-7]《和剤局方》《龍野ー漢方処方集》
「厚朴・陳皮・藿香・半夏各3.5g、甘草1.5g、大棗2.0g、干姜1.0g」
◎流感その他の急性熱病、或いは山のガス等で悪寒発熱が交互に起こり、或いは吐瀉粘液便又は血便の者。

★適応症及び病名(不換金正気散
[1]汗が出る:
☆額の辺、手の平に汗がジトジト出る;「+大黄」《原芸庵》

[2]明るい所がイヤ:
☆目の上くぼみ腰痛力なきは腎虚なり:「+瓜蔞根+知母-半夏」《原芸庵》

[3]嘔吐
☆嘔逆には・・丁香1.5g、縮砂2.5g。
☆吐逆止まず:「半夏倍加、丁字縮砂」《原芸庵》
☆吐き出した物が苦いとき:「半夏倍加、黄連黄芩」《原芸庵》
☆どうしても止まない:「大黄or枳実」《原芸庵》

[4]悪寒:
☆汗無くして悪寒:「麻黄」《原芸庵》

[5]悪風:
☆汗ある悪風:「桂枝芍薬」《原芸庵》

[6]霍乱

[7]脚気


☆「木瓜・檳榔子・薏苡仁」《原芸庵》
☆脚気腫満:「檳榔子・木香・桑白皮・大腹皮」《原芸庵》
[8]急性胃腸炎:
☆水当たり《矢数道明》
☆冷麺・ビール・油ものなどを食して腹痛、吐瀉した者《矢数道明》
[9]下血:
☆便血に:「黄連・黄芩黄柏山梔子」《原芸庵》
☆便血甚だしき:「アヘン・阿膠」《原芸庵》
[10]下痢:<粘液便><血便>
☆冷瀉:「附子乾姜」《原芸庵》
☆冷瀉止まざる者:「木香1.5g、訶子・肉豆蔲各3.5g」
☆熱瀉:「黄連大黄」《原芸庵》
☆小便が大用道から水の如く出るのは水穀不分の瀉:「猪苓沢瀉」《原芸庵》
☆疝瀉:「呉茱萸・茴香・肉桂・沢瀉・茯苓」《原芸庵》
☆腹痛瀉には:「木香・寒曲《原芸庵》」
☆脾腎瀉(明け方の下痢):「破故紙・肉豆蔲」《原芸庵》
☆水あたり:「滑石」《原芸庵》
☆赤痢:「大黄・黄芩・芍薬」《原芸庵》
☆自利には:「乾姜木香」《原芸庵》
☆痢病を止めるとき:「アヘン」《原芸庵》
☆寒痢:「附子肉桂茯苓乾姜」《原芸庵》
[11]鼓脹:
☆鼓脹:「香附子4.0g、枳殻・白豆蔲各3.0g」《龍野ー漢方処方集》
[12]消渇:「石膏麦門冬生地黄」《原芸庵》
[13]小便閉:
☆「大黄・寒曲」《原芸庵》
☆甚だしい:「水銀」《原芸庵》
[14]腎虚火動:「瓜蔞根・黄芩・知母・禹余粮」《原芸庵》
[15]身体疼痛
☆麻黄・桂枝・芍薬各3.0g。
[16]ジンマシン:
☆飲食物が不適当で、エビ・カニ・魚類で発した者:「紫蘇葉2.0」《矢数道明》
[17]頭痛:
☆頭痛:「川芎4.0g、白芷2.5g」《龍野ー漢方処方集》
[18]せき:
☆咳嗽には:「桔梗・杏仁各3.0g、五味子2.0g」《龍野ー漢方処方集》
[19]喘息:
☆喘息には:「麻黄・桑白皮各3.0g、蘇子2.0g」《龍野ー漢方処方集》
[20]帯下:「麒麟血・阿膠」《原芸庵》
[21]大腸炎:
☆大腸炎:「黄連・枳実各3.0g、-藿香」《龍野ー漢方処方集》
[22]ため息:
☆顔色青ざめ大息痩せの見えるは気の疲れ:「木香烏薬」《原芸庵》
[23]中湿病:
☆山沢を渉り、遠隔地に旅行して水毒に中り、吐瀉する者《矢数道明》
☆湿地に露営し、河川を渉りなどして、悪寒発熱身体沈重する者《矢数道明》
☆新築家屋に入って壁湿に中った者:「白朮・茯苓各3.0」《矢数道明》
[24]盗汗:
☆盗汗がどうしても止まないのは欝熱による。不換金正気散で止むことがある。《矢数道明》
☆何としても止まず、不換金正気散を用いて止まることあり《老医口訣》
[25]吐血:「生地黄・生藕汁」《原芸庵》
[26]眠い:
☆目の中赤筋ありて酒に酔うたる如くトロトロとするはこれ痰と心得るべし:「瓜蔞仁・黄芩・桔梗」《原芸庵》
[27]発熱:
☆雨に濡れたり、夜露で衣服が濡れて:「沢瀉紫蘇乾姜」《原芸庵》
☆潮熱:「大黄枳実柴胡」《原芸庵》
[28]鼻血:「麦門冬・生地黄」《原芸庵》
[29]腹痛:
☆寒性の腹痛:「乾姜・桂枝各3.0g」《龍野ー漢方処方集》
☆積右より差し込む:「杏仁桑白皮枳実」《原芸庵》
☆積左より差し込む:「白芍薬」《原芸庵》
☆心下の積:「黄連・枳実」《原芸庵》
☆腎積は臍の下より起こりて心下に昇りて差し込む:「竜骨・肉桂」《原芸庵》
☆痰積:「懐石枳実貝母」《原芸庵》
☆疝積:「枳実・呉茱萸・茴香・川楝子」《原芸庵》
☆ヘソノ上:「肉桂・黄芩・乾姜」《原芸庵》
[30]腹満:
☆脹満には:「+枳実大黄木通-甘草」《原芸庵》
☆瘀血脹:「-甘草五霊脂」《原芸庵》
☆気脹:「-甘草香附子烏薬」《原芸庵》
☆水腫:「木香子-甘草」《原芸庵》
☆水腫の甚だしき者:「甘遂・大黄-甘草」《原芸庵》
☆胸脇脹満・・枳実・縮砂・莪朮各2.5g
[31]浮腫:
☆両足の浮腫:「木瓜・大腹皮・五加皮各4.0g」《龍野ー漢方処方集》
[32]便秘:
☆臍より下の左or右がコリコリして便秘:「大黄」《原芸庵》
[33]腰痛:
☆「土瓜根」《原芸庵》
[34]淋病:「大黄」《原芸庵》

【加減】《龍野ー漢方処方集》
・口燥心煩・・柴胡・葛根各4.0g。
・湿がある・・白朮3.0g、茯苓4.0g。 


不換金丹《東醫寶鑑》
「薄荷3両、荊芥穂・白殭蚕・防風・元麻・甘草角1両、川烏(生)・白附子・羗活・細辛・川芎・蝎梢・藿香各5銭」作末し蜜で弾子大の丸剤。茶清で1丸を噛み下す。もし曲がったのが左に向いていれば、この薬を右の頬に貼るといつの間にか治る。
◎中風の口眼喎斜を治す。


不臥散《東醫寶鑑》
=「青黛散」
「延胡索7枚、青黛2銭、猪牙皀角2両」作末し水でかき混ぜ、杏仁大の団子に作り、仰臥させて竹管で、男は左・女は右の鼻の中に入れ、薬が喉中に入って酸味を感じたら、起きて銅線1箇をくわえていると、ツバが出てきたらすぐ治る。
◎頭痛のひどいとき。


不臥散《東醫寶鑑》
「川芎1両半、石膏7銭半、藜蘆5銭、甘草(生)1銭半」細末にし口中に水を含み、1字(2銭半)を鼻中に吹き入れる。
◎吐剤。
◎中風卒倒を治す。鼻孔に挿入すると、すぐ目覚める。


不二飲《東醫寶鑑》
=「止瘧散」
「鶏心檳榔(雌雄)各2銭、常山・知母・貝母各等分を剉作1貼し、酒1鍾子で8分まで煎じ、あまり熱くしないで、一晩露に当て、発作が起きたとき五更に温服。
◎すべての瘧疾を截つ。


不二飲《万病回春》《古今方彙》
「常山、檳榔子、知母、貝母、生姜、桃脳」水煎し酒(少許)入れ一宿を露し発する日に臨み、、五更に温服す。午間(ひるま)は滓を再煎し服す。
◎一切の新久、寒熱瘧疾を治す。
◎人壮盛の者は宜しく単截(補薬は交せずに截り薬のみで落とすこと)すべし。
◎汗多きには:「+白朮-蒼朮」
◎熱多ければ:「+柴胡+黄芩」
◎寒多ければ:「+桂枝」
◎口渇くには:「+麦門冬+括楼根」


浮小麦櫓豆衣煎剤《中薬臨床応用》
「浮小麦・櫓豆衣 各9g」200ccの水で、100ccまで煎じる。1日2回50mlずつ服用。
◎自汗盗汗に。


復元活血湯《医学入門》《古今方彙》
「当帰、柴胡、穿山甲、甘草、紅花、括楼根、大黄(酒)、桃仁(泥)」水酒にて煎服。利するを以て度となす。
◎高きより墜下し悪血脇下に留り実痛して忍びべからざる者を治す。


復元活血湯《医方発明》
「柴胡・瓜蔞根・当帰・紅花・桃仁・穿山甲・大黄・甘草」
◎瘀血脇下に滞り、激痛。


復元活血湯《医方発明》《中薬臨床応用》
「桃仁6g(打砕)、紅花6g、柴胡6g、穿山甲(炮)1.5g、大黄(酒炒)3g、当帰尾6g、天花粉3g、甘草2.5g」水煎服。
◎打撲による内出血で、便秘、胸腹が疼痛。


復元活血湯《東醫寶鑑》
「大黄2銭半、当帰1銭7分、柴胡1銭半、穿山甲(炒末)・瓜蔞根・甘草各1銭、桃仁(炒)10箇、紅花5分」切って酒と水半々で煎服。
◎墜落による傷損で、悪血が内臓に流入して疼痛する者。
◎打撲による脇痛。


復元通気散《東醫寶鑑》
「白丑頭末2両、茴香(炒)・穿山甲各1両半、陳皮去白・延胡索・甘草(炙)各1両、木香5銭を細末にして毎2銭づつ姜湯または温酒で服用する。
◎全身に痛みが走るときに使う。
◎「+木香」(腰痛が脇痛までになる)


復元丹[1-1]《三因極一病証方論》
「附子2両、木香・茴香・蜀椒・独活・厚朴・蒼朮・橘皮・呉茱萸・桂枝各1両、沢瀉1両半、檳榔・肉豆蔲各半両」
◎此方は陰水を治する薬なれども、心腹堅脹と云うが目的にて、水のみならず、気の凝結が甚だしく短気急喘する者に宜し。《勿誤薬室方函口訣》
◎余が門にては、三聖丸の証にして緊張甚だしき者、此方にて送下す。《勿誤薬室方函口訣》


復元丹[1-2]《東醫寶鑑》
「沢瀉(略炒)・附子(炮)2両、木香・茴香(炒)・川椒・独活・厚朴・白朮(略炒)・橘皮・呉茱萸・桂心各1両、肉豆蔲(煨)・檳榔各5銭」作末し糊で梧子大の丸剤。紫蘇湯で50丸飲む。
◎心腎の真火が脾・肺の真を生むものだが、この枢機が運転されずに腫脹して喘息し、足が冷たく、舌が乾き、小便が通らないとき。


復元湯《寿世保元》《古今方彙》
「附子(熟)・乾姜(炮)・甘草・人参・五味子・麦門冬・黄連・知母・芍薬・ 生姜・大棗・葱白」温服。
◎傷寒にて頭痛なく、悪寒なく、身微しく熱し、面赤く微しく渇し、目に精光な く、口は無倫の語を出し、脉数にして力なし。此れ汗下太過し、下元虚弱、此 れ根無く虚火上に泛ぶ、名付けて截陽症と曰う。この湯に宜し。
◎此方は傷寒陰陽錯雑の者に用いる。《勿誤薬室方函口訣》
◎「四逆湯生脈散黄連・知母・芍薬」の趣意は、既に陰位に陥り、裏は虚寒になりて居るけれども、表邪は熱甚だしく、譫語、渇などありて、陽症に似たれども、病者元気弱く、脈の悪しき者は此方に宜し。《勿誤薬室方函口訣》
◎少陰裏熱の治法なり《傷寒翼方》


復元養栄湯《寿世保元》《古今方彙》
「人参1銭半、酸棗仁・黄蓍・白芍薬(酒)・当帰・地楡・白朮各1銭、荊芥8分、遠志5分、甘草3分、大棗」水煎。
◎血崩にて悪露去ること多く、心神恍惚、戦慄虚暈する者を治す。


復正湯《寿世保元》《古今方彙》
「烏薬・防風・荊芥・細辛・黄芩・白芍薬(酒)・天麻・当帰・川芎・白朮・茯苓・陳皮・半夏・枳殻・白芷・桔梗・白殭蚕・甘草・生姜」水煎。
◎風が経絡に中たり、口眼喎斜する。

 

復聡湯《東醫寶鑑》
「半夏・赤茯苓・陳皮・甘草・萹蓄・木通・瞿麦・黄柏(塩炒)各1銭、姜3片」水煎服。
◎痰火が上に上がって耳鳴り・耳聾する者。


復脈湯《東醫寶鑑》
=「炙甘草湯」
「甘草(炙)2銭、生乾地黄(酒炒)・桂皮・麻子仁・麦門冬各1銭半、人参・阿膠珠各1銭、姜5、棗3、水2分、酒1分」煎じて半分になったら滓をさり、阿膠を入れ、再び煎じて1日3回温服。
◎傷寒の脈が結代し、動悸する者。


復陽丹《東醫寶鑑》
「蓽澄茄・木香・呉茱萸・全蝎・附子(炮)・硫黄各5銭、乾姜1銭」作末し酒糊で梧子大の丸剤。姜湯湯で30丸飲み、再び熱酒を人で汗を出す。
◎陰毒で顔色青く、四肢が冷え脈が沈む者。


複方蒼耳子湯《中薬臨床応用》
「蒼耳子15g、辛夷9g、金銀花9g、茜草根6g、菊花9g」水煎し、蜂蜜or砂糖を加えて服用。
◎副鼻腔炎の炎症。


複方斑素カプセル《中薬臨床応用》
「cantharidin 1mg、呉茱萸50mg、姜半夏50mg、山薬粉100mg、白粉100mg」/1カプセル。
◎肝ガン。


複方砂湯《中薬臨床応用》
「砂120g、昆布60g、海藻30g、烏梅30個」400~500mlのシロップにして、1日4回、15mlづつ服用。全量が1クール。
◎腹部腫瘤
◎嚥下困難
◎消化管の腫瘤による嘔吐


腹痛一方《医宗必読》《古今方彙》
「黄連3銭、山梔子1銭半、陳皮・白豆蔲各1銭、木香・釣藤鈎各8分、肉桂2銭、姜汁半鐘」
◎欝怒の余り、胸腹脹痛し、諸薬効かず、脉弦にして数、これ内に欝熱ありて寒涼飲食のために之を壅ぎて痛むを治す。


伏竜肝散《東醫寶鑑》
「川芎・艾葉各1銭半、伏竜肝1銭、赤石脂・麦門冬各7分、当帰・乾姜・熟地黄・肉桂各5分、棗2枚」煎服する。又は作末し米飲で2銭づつ服用。
◎衝・任経脈の弱い者を治す。
◎腹痛・崩漏。

伏竜肝煎《漢方治療の実際》
=「伏龍肝煎」
「伏竜肝(黄土)4」を器に入れ水400‹を加えて、良くかき混ぜ、静置しておき、その上澄液をとり、この水で小半夏加茯苓湯を煎じる。


伏竜肝湯《備急千金要方》
「伏竜肝・生姜・地黄各1両半、甘草・艾葉・赤石脂・桂枝各6銭」
◎労傷任脈を衝き、崩中去血し、赤白相兼ね、或いは豆汁の如きを治す。
◎此方は、崩漏、帯下などの症、芎帰膠艾湯の類を与え、出血は減じたれども赤白相兼ね、或いは豆汁の如き止まざるに宜し。《勿誤薬室方函口訣》
◎もし水ばかり多く下る者:「少陽燥湿湯」《蘭室秘蔵》


伏竜肝湯《備急千金要方》
「黄土湯-朮附乾姜・牛膝・地楡・髪灰」


伏竜肝湯《三因極一病証方論》
「黄土湯-附子」


伏龍散《普済本事方》
「多年堊壁土、土爐中土、伏竜肝」
(堊=アク、しろつち)


伏梁丸《東醫寶鑑》
「黄連1両半、厚朴・人参各5銭、黄・桂皮・茯神・丹参各1銭、乾姜・菖蒲・巴豆霜・川烏各5分、紅豆蔲2分」作末し蜜で梧子大の丸剤。黄連湯で、初め2丸を飲み、1日1丸づつ増やし便が出たら、徐々に減らして、塊が小さくなったら止める。
◎心積を治す。


茯神散《証治準縄》《古今方彙》
「茯神1両、遠志・黄連・沙参各半両、人参・石菖蒲・羚羊角各7銭半、赤小豆49粒、甘草2銭半」水煎。
◎心臓風邪にて鬼を見、妄語し、見聞する所あり、真気恍惚なるを治す。


茯神散《万病回春》《古今方彙》
「茯神1銭半、茯苓・人参・菖蒲根各1銭、赤小豆5分」水煎。
一方に、赤小豆を赤芍薬に代ゆ。
◎婦人が鬼と交通し、妄りに言語雑乱あるを治す。


茯神散《東醫寶鑑》
「茯神・生乾地黄・白芍薬・川芎・当帰・桔梗・白茯苓・遠志姜製を作末して毎2銭を水2盃、燈心1銭、棗2枚と煎服。
◎びっくりして言葉が出ないとき飲む。


茯神湯《医学入門》《古今方彙》
「茯神、白朮、当帰、酸棗仁、人参、黄蓍、黄柏、甘草、燈心草」煎じ、先づ朱砂末を用いて舌上に点じ後に此湯を以て送下する。
◎神(精神)、舎(いどころ)を守らざるを治す。


茯神湯《証治準縄》《古今方彙》
「茯神1銭半、遠志・酸棗仁各1銭2分、石菖蒲・人参・茯苓各1銭、黄連・生地黄各8分、当帰1銭、甘草4分、蓮肉7枚」水煎。
◎慾心太熾、思想太過、夢に洩らして禁ぜず。夜臥寧からず、心悸するを治す 


茯神湯《東醫寶鑑》
「茯神・人参・遠志・通草・麦門冬・黄蓍・桔梗各7分、五味子・甘草各3分、姜2片」水煎服。
◎六脈の虚軟を治す。
◎咳嗽による心臓の痛みを治す。
◎咽喉のつまりを治す。


茯菟丸《和剤局方》
「菟絲子、五味子、石蓮子、白茯苓、山薬」


茯菟丸《証治準縄》
「菟絲子、白茯苓、石蓮子」


茯苓飲[1-1]『外臺』《金匱要略》
「茯苓・人参・白朮各3両、枳実2両、橘皮2両半、生姜4両」右六味、水六升、煮取一升八合、分温三服、如人行八九里進之。
◎治心胸中有停痰宿水、自吐出水後、心胸間虚、氣満不能食、消痰氣、令能食。
「氣満不能食」=胃にガスがたまって、そのために食べられない


茯苓飲[1-2]《外台秘要方》《中薬臨床応用》
「茯苓9g、白朮9g、党参9g、生姜5g、枳実6g、陳皮5g」水煎服。
◎痰飲
◎上腹部が脹って重苦しい、腹部で振水音。


茯苓飲[1-3]『外臺』《金匱要略》《漢方治療の実際》
「茯苓5、朮4、人参・生姜・陳皮各3、枳実1.5」

茯苓飲
“茯苓飲は苓を以て主となす。しかしてその証を挙げず。他の例を以て之れを推すに、心下悸して痞硬、小便不利、自ら宿水を吐する者、此の湯の主治するところなり”《薬徴》

◎茯苓飲の証に曰く、必ず胸中に停痰、宿水ありて、吐によりて水を出すと、為則若に証の人を診するに必ず心下悸、頭眩、小便不利等の証あり。茯苓の主薬たる所以なり。《重校薬徴》
◎心下痞硬して、小便不利、胸満して自ら宿水を吐する者を治す《吉益東洞》
◎此方は後世、いわゆる留飲の主薬なり。《勿誤薬室方函口訣》
◎人参湯の症にして胸中淡飲ある者に宜し。
★適応症及び病名(茯苓飲)
[1]噫気
[2]胃アトニー:
☆「胃アトニー」、及びその類証《奥田謙蔵》
[3]胃液分泌過多
[4]胃下垂:
☆胃下垂症、及びその類証《奥田謙蔵》
[5]胃ガン
[6]胃拡張
[7]胃酸過多症
[8]胃ノイローゼ
[9]胃部の振水音
[10]胃部の膨満感:
☆胃部にガスが充満して食べられない場合に用いる。ひどい時は、胸が一杯になって仰臥出来ないことすらある。四君子湯や六君子湯の証よりも腹力があって膨満している。嘔気が出る、水が口に逆上してくる、このような場合に用いる《大塚敬節》
[11]悪心:
☆毎朝悪心し、苦酸水あるいは痰沫を吐するを治す。南呂丸、陥胸丸等を兼用す《類聚方広義》
[12]嘔吐:
☆久腹痛、宿水を吐し、食を得れば痛劇しく、噫気酸臭ある者を治す:「呉茱萸・甘草」《原昌克》
☆もし食し終わって即ち吐し、関格の如き者は、不可。《雑病翼方》
☆《希藻》曰く、久腹痛、水及び食を吐し、澼嚢と称する者:「呉茱萸・牡蛎・甘草」煎服。然れども飲食を減ぜざれば効ない。《雑病翼方》
☆胃反、呑、嘈雑等、心下痞硬し、小便利せず、或いは心胸痛む者を治す《類聚方広義》
☆先年、夜床につくと水が胃から出てきて安眠を得ないという者に、茯苓飲を与えて、効を得たことがある。《大塚敬節》
13]回虫
[14]顔色悪い
[15]ガスが溜まる
[16]脚気:
☆脚気には、証により呉茱萸湯を合方す《奥田謙蔵》
[17]吃逆
[18]逆流性食道炎
[19]胸痛
[20]胸満
[21]小児の消化不良:
☆小児、乳食化せず、吐下止まず、并に百日咳、心下痞満し、吃逆甚だしき者を治す。半夏を加えればさらに効あり。《類聚方広義》
[22]上腹部振水音
[23]上腹部膨満感(上腹部がつかえて重苦しい)
[24]食道憩室
[25]食欲不振:
☆《陳念祖》曰く、積飲すでに去り、而も虚気その中に塞満し、食を進む能わず、此の証尤も多し、此方最も妙なり《雑病翼方》
☆下後、心下痞硬し、食する能わざる者、茯苓飲尤も効あり。《先哲医話》
☆諸病、食欲減退し、漸く衰弱加はらんとする等の証《奥田謙蔵》
☆食欲がないというよりも、胃部にガスが充満して食べられない場合に用いる。《大塚敬節》
[26]心悸亢進
[27]心下痞硬
[28]神経衰弱
[29]神経性胃炎
[30]胆石症 :
☆(痛みは少ない、嘔吐・心悸亢進する)
☆胆石には、証に因り、茵蔯、或いは半夏を加う《奥田謙蔵》
[31]手足冷える
[32]動悸
[33]妊婦の咳嗽:
☆胸中に水ある為:「旋覆花」《済世薬室》
[34]貧血
[35]便秘又は下痢
[36]慢性胃炎:
☆胃にガスと水が充満し、そのために食欲がない者。
☆口に水が上がってくる者。
☆足が冷え尿量減少し、みずおちに抵抗がある者。
☆慢性の胃「カタール」、及びその類証《奥田謙蔵》
37]幽門ケイレン:
☆(幽門の括約筋がケイレンを起こし、通過障害になる)
[38]溜飲症:
☆老人、常に痰飲に苦しみ、心下痞満し、飲食せず、下利し易き者を治す《類聚方広義》
☆飲に「呉茱萸・牡蛎」《原南陽》



茯苓飲合半夏厚朴湯
★適応症及び病名(茯苓飲合半夏厚朴湯)
[1]噫気
[2]胃下垂
[3]胃腸虚弱
[4]胃部の膨満感
[5]咽喉神経症
[6]咽中炙臠
[7]悪心
[8]嘔吐(精神的ストレスによる)
[9]気管支炎(急性・慢性)
10]気管支喘息
[11]逆流性食道炎
[12]消化不良
[13]上腹部振水音
[14]上腹部膨満感
[15]食道ジスキネジー《食道機能不全》
[16]食欲不振
[17]心下痞
[18]神経性胃炎
[19]神経性食道狭窄症
[20]声門浮腫
[21]嘈雑
[22]立ちくらみ
[23]つわり
[24]呑酸
[25]ノイローゼ
[26]のどの異物感
[27]吐き気
[28]反芻症
[29]ヒステリー
[30]不安神経症
[31]噴門ジスキネジー(噴門の括約筋の機能不全)
[32]慢性胃炎
[33]胸やけ



茯苓飲子《東醫寶鑑》
「半夏製・赤茯苓・茯神・麦門冬・陳皮去白各1両、沈香屑・ 檳榔・甘草各5銭を切って毎7銭づつの貼をつくり、姜5片を 入れて水で煎服。
◎痰が胸と胃につもってがとまらないときに使う。


茯苓戎塩湯(ぶくりょうじゅうえんとう)《金匱要略》
=「茯苓戎鹽湯」
「茯苓半斤、白朮2両、戎鹽(弾丸大)1枚」
◎小便不利、蒲灰散主之、滑石白魚散、茯苓戎鹽湯並主之。


茯苓丸《素女方》
「茯苓2両(消化不良加一倍)、附子(炮)2両(有風三分加一)、山茱萸3両(身癢三分加一)、杜仲2両(腰痛三分加一)、牡丹2両(腹中遊氣三分加一)、澤瀉3両(有水氣三分加一)、薯蕷3両(頭風加一倍)、桂心6両(顔色不足三分加一)、細辛3両(両目視三分加一)、石斛2両(陰湿癢三分加一)、肉蓯蓉3両(身痿三分加一)、黄蓍4両(體痛疼三分加一)」 (三分加一=1/3を増加)
右12味、搗篩蜜和丸如梧桐子先食服七丸日二服忌生葱生菜緒肉冷水大酢胡等物。
◎宜以補腎茯苓丸療男子内虚不能食欲怱怱喜忘悲遊不楽恚怒無常或身體浮腫小便赤黄精泄淋瀝痛絞膀胱經疼冷痺伸不得行渇欲飲水心腹脹満皆犯七忌上已具記當療之法髄病度量方用。



茯苓甘草湯[1-1]《傷寒論》
「茯苓2両、桂枝(去皮)2両、甘草(炙)1両、生姜(切)3両」右四味、以水四升、煮取二升、去滓、分温三服。
◎傷寒、汗出而渇者、五苓散主。不渇者、茯苓甘草湯主之。
◎傷寒厥而心下悸、宜先治水、當服茯苓甘草湯、却治其厥、不爾、水漬入胃、必作利也。茯苓甘草湯。
《傷寒論》辨厥陰病脉證并治第十二。


茯苓甘草湯[1-2]《傷寒論》
「茯苓2両、桂枝2両、甘草(炙)1両、生姜1両」
右四味、以水四升、煮取二升、去滓、分温三服。
◎傷寒、汗出而渇者、宜五苓散。不渇者、属茯苓甘草湯。《傷寒論》辨発汗後病脉證并治第十七。


茯苓甘草湯[1-3]《傷寒論》《龍野ー漢方処方集》
「茯苓・桂枝各2.0g、甘草1.0g、干姜1.0g」
水160ccを以て煮て80ccに煮詰め3回に分服。



茯苓甘草湯[1-4]《傷寒論》《漢方治療の実際》
「茯苓6、桂枝4、生姜3、甘草1」
◎心下悸し、上衝して嘔する者を治す《吉益東洞》◎茯苓甘草湯の証は具らず、此の方は、心下悸、小便不利、上衝、嘔逆する者は之を主る。《重校薬徴》
◎発熱汗出で小便不利の者。
◎手足冷え心下部に動悸を感ずる者。
◎「桂枝甘草湯+茯苓生姜」《大塚敬節》

★適応症及び病名(茯苓甘草湯)
[1]息切れ
2]遺尿:
☆咳をして尿のもれる者には茯苓甘草湯がよい。もしこれで効がなければ五苓散が良い《積山遺言》
[3]栄養失調
[4]嘔吐
[5]咳嗽
[6]脚気
[7]肝臓疾患
[8]気の上衝
☆按ずるに、厥とは逆也。衝逆する者は必ず頭に汗出ず。若し頭に汗出ずること多く、嘔、悸を兼ねる者は、此方を主どる。《類聚方集覧》
[9]気管支喘息
[10]逆上しやすい
[11]胸満感
[12]肩背強急
[13]しもやけ
[14]腎炎
[15]心悸亢進:<激しい>
☆発汗法を行いて後、熱候なお去らず、自汗出でて止まず、尿利減少し、心悸亢進し、四肢微厥し、其の脈濇なる証。《奥田謙蔵》
☆神経性心悸亢進には、証に由り竜骨、牡蛎を加う。《奥田謙蔵》
☆昭和8年のことである。今は亡き学友矢数有道氏が腸チフスに罹り、君の恩師○○教授の病因に入院しているときのことである。
ある日、重態の知らせで、市ヶ谷、台町の○○病院に君を見舞った。ドアを押して入るや否や、君の前額から、頬から、鼻の上から、流れるように汗の出ているのを私は見た。君は悲痛な面もちで、いいよ附子の証らしいですという。脈をみると腸チフス患者に不釣り合いなほど数が多い。1分間に120に達している。体温は39℃あまり。しかし口渇はない。
今朝から心悸亢進がひどいので、1時間ほど前に、ブドウ糖とリンゲルを皮下に注射してもらったが、全然吸収しないと云う。なるほど大腿の内側は、こんもりと盛り上がったままである。リンゲルが吸収されないのを見ると、いよいよ心臓が弱ったなと思ったとたんに、全身から汗が流れ始めたという。汗は胸からも腹からも、手からも、足からも、珠になって流れている。尿はと聞くと、今朝から1回も無いという。
私は言った。附子の証ではありませんね。まだ四逆湯を用いる場ではありません。《傷寒論》に“傷寒、汗出でて渇する者は五苓散之をつかさどる。渇せざる者は茯苓甘草湯之をつかさどる”とあり、また“傷寒、厥して心下悸する者は宜しくまず水を治すべし。当に茯苓甘草湯を服すべし”とあるによって、心悸亢進と多汗と尿利の減少を目標にして茯苓甘草湯がよいと思いますと。
そこで大急ぎで、これを煎じて1服飲むと、30分ほどで汗が止み、膨れ上がっていた注射の部位がたちまちの間に吸収されてしまった。そして夕方から夜にかけて、多量の排尿があり、気分がすこぶる爽快になった。 こんな風にして、かなりの重症と診断されたにかかわらず、漢方薬を飲んだ為に、同病の患者の中で、一番早く治った。ところが、それから10年ほどたって、君は軍医として出征し、中国の奥地で、再び腸チフスにかかり、ついに死去せられた。
この際、もし口渇がひどくて、尿利の減少があって、心悸亢進があれば、五苓散の証である、五苓散と茯苓甘草湯の証との差は、口渇があるかないかの点にある。《大塚敬節》
[16]心筋伝導障碍
[17]心臓神経症
[18]心臓弁膜症:
☆心臓弁膜病にして、軽易の証なるも、運動時胸腹部にやや動悸を感じ、呼吸促迫し、四肢微冷なる者。《奥田謙蔵》
☆口渇が無くて、尿の不利と浮腫があって、動悸と、手足の厥冷のあるものに用いる。五苓散との違いは、口渇の有無である(漢方診療医典)
[19]頭汗
[20]頭痛
[21]嘈雑
[22]脱汗:
☆発汗の後、脱汗止まず、顔面赤色にして酔状の如く、心下部膨満し、指頭冷え、身体重く、尿利無く、脈浮にしてなる証。《奥田謙蔵》
[23]動悸:
☆脈浮なるも熱候著しからず、動悸ありて身体懶(モノウ)く、自汗出で、欝々として煩悶する証。《奥田謙蔵》
[24]尿不利
[25]ネフローゼ
[26]熱性病:
☆熱性病、汗出でて尿利減少し、胸満感ありて逆上し、脈浮虚にして数なる証。《奥田謙蔵》
[27]肺水腫
[28]冷えのぼせ
[29]ヒステリー
[30]浮腫
[31]不眠:
☆不眠症等にして、時々神経性心悸亢進を発する証。《奥田謙蔵》
[32]目眩



茯苓緩中湯《肘後備急方》
「桂枝湯黄芩・茯苓・枳実」
◎痃気(腹部の塊・しこり)を緩む。



茯苓桂枝甘草大棗湯《傷寒論》
=「苓桂甘棗湯」参照。


茯苓桂甘湯《東醫寶鑑》
「茯苓6銭、桂枝4銭、甘草(炙)2銭」作1貼し「棗5枚」入れ、甘爛水 で先に茯苓飲苦両を煎じ2分ぐらい減ったら余薬を入れ、1鍾子ぐらいに なったら、滓を去り、1日3回服用。
◎臍の下がピクピク動き、奔豚症にならんとする者。



茯苓杏仁甘草湯[1-1]《金匱要略》
「茯苓3両、杏仁50箇、甘草1両」
右三味、以水一斗、煮取五升、温服一升、日三服。
◎胸痺、胸中氣塞、短氣、茯苓杏仁甘草湯主之、橘枳薑湯亦主之。


茯苓杏仁甘草湯
“茯苓杏仁甘草湯方は、是れ苓桂朮甘湯の、桂朮を去り、杏仁を加ふるなるものなり。然れば則ちその茯苓の証を脱するや明らかななり”《薬徴》


茯苓杏仁甘草湯[1-2]《金匱要略》《漢方治療の実際》
「茯苓6、杏仁4、甘草1」
◎心下悸して、胸中痺する者を治す。《方極附言》
◎胸痺、胸中気塞、短気、小便不利、心下悸、喘して急迫する者を主る《重校薬徴》 (参照→橘皮枳実生姜湯)
為則按ずるに、胸痺・短気・筋愓肉瞤・心下悸の者は、茯苓杏仁甘草湯之れを主る。《薬徴》
◎此方は短気を主とす。故に胸痺のみならず、支飲、喘息の類、短気甚だしき者に用いて意外に効を奏す。また打撲にて体痛して、歩行すれば気急して息どしかる者は未だ瘀血の尽きざるなり。下剤にて下らざるに此方を用ひて効あり。此方を橘皮枳実生姜湯と並列するものは、一は辛開を主とし、一は淡滲を主とし、各々宜しく処あればなり《勿誤薬室方函口訣》
◎胸中気塞がり息が切れる者。《龍野ー漢方処方集》
◎胸が塞がったように痛んで、呼吸の促迫する者に用いる《大塚敬節》

★適応症及び病名(茯苓杏仁甘草湯)
[1]飲酒による鬱血性肝疾患
[2]息切れ:(=短気)
☆瘀血ある者、喜忘し、人声聞くを欲せず、胸中気塞、短気するを治す。《雑病翼方》
[]打ち身(打撲):
☆《備急千金要方》には“瘀血があって、物忘れをし、人の声を聞くのを嫌がり、胸が詰まって、呼吸の促迫するものを治す”とあり、《和田東郭》は、この論にもとずいて、打撲後の癇症疑似(神経症)の者にこの方を用いている。《大塚敬節》
☆《有持桂里》は、打撲後、疼痛はほとんど良くなったが、歩く特に息どしがる者は、瘀血がまだ尽きていない証拠である。このような時には瘀血を下す薬を用いても効が無い。この方を用いると良い。 また打撲後に健忘症になって、癇症のようになる者はまれであるが、息どしがる者は被いと述べている。《大塚敬節》
[3]気管支喘息:
☆気管支喘息にして、胸中填塞の感強く、気息将に絶せんとするの状ありと訴える者。《奥田謙蔵》
[4]気胸
[4]狭心症:
☆軽症狭心症、及びその類似疾患。《奥田謙蔵》
[5]胸中痞塞感:
☆胸中痞塞、短気膈々たる者を治す:「半夏・生姜」《医心方》
気下らざるは「大黄・檳榔」《雑病論識》
☆胸痺、短気、心中懊悩する「檳榔・青橘皮」
☆胸痺、壅閉塞、短気「青橘皮」《雑病論識》
[6]胸痛
[7]呼吸困難
☆打撲による呼吸困難
☆本方は味が淡泊で呑みやすく、頼りないような処方であるが、激しい呼吸促迫に用いて意外に効を奏するものである《大塚敬節》
☆腎炎の患者で、浮腫があって、呼吸困難の激しいものに、茯苓杏仁甘草湯を与えて、一時の急を救い、そのあとで五苓散を用いて、これを全治せしめたことがある。《大塚敬節》
[8]心悸亢進
[9]心筋梗塞
[10]心下痞
[11]心臓神経症:
☆心臓神経証等。《奥田謙蔵》
[12]心臓喘息:
☆心臓性喘息等にして、脈沈微なる証《奥田謙蔵》
☆胸痺とは、《金匱要略》に胸痺の病は喘息咳唾、胸背痛、短気し云々と説けるによりて、この病の胸膈内に位するは推測に難からざれども、尚ほ未だ分明ならざりしが幾多の苦心と経験とにより心臓病の謂に外ならざるを知得せり。すなわち喘息咳唾は心臓性喘息、胸背痛は絞心症、短気(呼吸促迫)は心臓性呼吸困難にして気塞とは胸内を填塞せらるるが如く呼吸を抑制さらるるが如き自覚症なれば是また一種の心臓性呼吸困難なり。然れどもこの2方証にありては括呂薤白白酒等と異なり、喘息咳唾、胸背痛はその客症たるに過ぎずして気塞短気が主症なれば特に此の4字を胸痺の下に加えて之を明にせしなり。而して師が茯苓杏仁湯之を主る。橘枳姜湯また之を主ると曰へる真意は、胸痺、気息短気を主治する作用の相似たるを示さんが為にして全く相等しと曰うにあらざらん。何となれば、余の経験によれば2方共に気塞短気を主治すと雖も、茯苓杏仁甘草湯にありては短気主症にして気塞客症なるに、橘枳姜湯においては気塞主症にして短気客症なればなり。《湯本求真》
[13]心臓弁膜症:
☆軽症心臓弁膜症等。《奥田謙蔵》
☆病勢が激しくて、呼吸促迫、喘咳、浮腫があり、胸がふさがった梶が強く、味の重い薬がおさまらないものを用いる。本方は味が淡泊な軽剤であるが、意外に規矩ことがある。これで浮腫が去り、呼吸が楽になるが、その効は一時的であることが多い。(漢方診療医典)
[14]心不全<鬱血性>
[15]上腹部振水音
16]喘咳:
☆嬰児、喘咳して乳食を吐し、虚里(左乳下)跳動し、小便利せず、腹它異無き者は、此方に半夏を加えて効あり。《類聚方広義》
[17]喘息:
☆呼吸困難と胸苦しさ、咳、むくみがある者。
[18]打撲症:
☆打撲にて体痛して、歩行すれば気急して息どしかる者は、未だ瘀血の尽きざるなり。下剤にて下らざるに此方を用いて効あり。《勿誤室方函口訣》
☆打撲後、疑似癇症の病を発する《和田東郭》
[19]尿不利
[20]ネフローゼ
[21]肺気腫:
☆肺気腫、およびその類似疾患等。《奥田謙蔵》
[22]肺水腫
[23]背痛
[24]疲労倦怠
[25]腹痛:
☆急痛するを治す「半夏・生姜」
[26]浮腫:
☆浮腫、喘咳、呼吸促迫、小便不利、口渇などを訴え、麻黄剤を与えて効なく、種々手当を施しても治らない虚実間腫の者に用いて意外効を奏す《大塚敬節》
[27]慢性腎炎
[28]肋間神経痛
[29]肋膜炎


茯苓膏《素女方》
=靈膏《千金翼方》
「茯苓(浄去皮)、松脂24斤、松子人・柏子人各12斤」
右四皆依法煉之松柏人不煉擣篩白蜜二斗四升内銅器中湯うえ微火煎一日一夕次第下薬攪令相得微火煎七日七夜止丸如小棗毎服七丸日欲絶穀頓服取飽即得輕身明目不老。


茯苓琥珀散《宝鑑》《東醫寶鑑》
「沢瀉1両、滑石7銭、赤茯苓・白朮・琥珀・猪苓各5銭、肉桂・甘草(炙)各3銭」を作末して毎3銭づつ水で一杯調下する。
◎「五苓散六一散琥珀」《勿誤薬室方函口訣》
◎臍腹脹満し、腰脚沈重し、安臥し得ず、小便不利する者を治す。
◎此方は五苓散に六一散を合して琥珀を加ふる者にて、五苓散は元、小便不利、渇を主とする処へ、六一散の甘淡のものを加へ、琥珀の力を添えて、利水の効を立つるなり。《勿誤薬室方函口訣》
◎此方を水気に用いるは同気相求の理にて、水の味に類したる味の淡泊なるものを用いて浸透せしむるなり。《勿誤薬室方函口訣》
◎小便が渋く、たびたびする症を治す。
★適応症及び病名(茯苓琥珀散)
[]小便不利:
☆平素、膏梁、湿熱、内へ畜へ、施化し得ず、膀胱竅渋する者、按ずるに此方は透泉散《雞峰普済方》に本づく。《雑病翼方》 
[]淋:湿熱両畜の証を治す。《方読便覧》
   


茯苓琥珀湯《衛生宝鑑》


茯苓五味子湯《東醫寶鑑》
「赤茯苓2銭、桂心・甘草各1銭半、五味子1銭2分」を水で煎服。支飲は必ずめまいがし、めまいがすると嘔吐し、嘔吐するとお腹がはる。半夏を加えてその飲症を除去せえばならぬが飲症は嘔き気がなくなるとすぐ治る。
◎支飲と手足の冷痺と唾の多いのと、
◎小腹の気が胸と咽喉にのぼり、顔がほてって酔ったようになり、めまいがする症状につかう。


茯苓佐経湯《外科正宗》《古今方彙》
「茯苓・陳皮・半夏・白朮・蒼朮各1銭、藿香・沢瀉・甘草・葛根・柴胡・厚朴・木瓜各5分、生姜」水煎。
◎足の少陽経に四気の乗ずる所と為り、以て腰腿発熱して疼痛し、頭目昏眩して嘔吐して食せず、胸膈利せず、心煩熱悶する等の症を治す。


茯苓散《素女方》
「茯苓・鍾乳(研)・雲母粉・石斛・菖蒲・柏子人・菟絲子・続断・杜仲・天門冬(去心)・牛膝・五味子・澤瀉・遠志(去心)・甘菊花・蛇床子・薯蕷・ 山茱萸・天雄(炮)・石葦(去毛)・乾地黄・蓉(並)等分。」
右二十味、擣篩以蜜和丸如梧桐子先食服五丸酒飲皆得忌海藻菘菜鯉魚生葱 猪肉酢等物。
◎四時之薬具已聞之此薬四時通服得不對曰有四時之散名茯苓散不避寒暑但能久服 長生延年老而更壯方。


茯苓四逆湯[1-1]《傷寒論》
「茯苓4両、人参1両、附子(生用去皮破8片)1枚、甘草(炙)2両、乾姜1 両半」
右五味、以水五升、煮取三升、去滓、温服七合、日二服。
◎発汗、若下之、病仍不解、煩躁者、茯苓四逆湯主之。
《傷寒論》辨太陽病脉證并治中第六。


茯苓四逆湯[1-2]《傷寒論》《龍野ー漢方処方集》
「茯苓4.0g、人参1.0g、附子(生)0.3g、甘草2.0g、乾姜1.5g」水200ccを以て120ccに煮詰め1回に30ccづつ2回に分服。


茯苓四逆湯[1-3]《傷寒論》《漢方治療の実際》
「茯苓4、甘草・乾姜・人参各3、附子0.6」
◎四逆加人参湯の証にして心下悸する者を治す。《吉益東洞》
◎四逆加人参湯の証にして、心下悸し、小便利せず、身瞤動し、煩躁する者を治す《尾台榕堂》
◎「四逆湯茯苓・人参」
◎此方は、茯苓を君薬とするは煩躁を目的とす。《勿誤薬室方函口訣》
◎四逆湯の症にして汗出煩躁止まざる者、此方に非ざれば救うこと能はず。《勿誤薬室方函口訣》
◎誤治により虚証に陥り煩躁する者。

★適応症及び病名(茯苓四逆湯)
[1]悪寒:
☆発汗し、或いは下して後、悪寒甚だしく或いは煩躁し、或いは全身ケイレンを発し、その脈微なる証《奥田謙蔵》
[2]顔色悪い:<顔面蒼白>
[3]霍乱:
☆霍乱、臍上築悸するを治す《聖済総録》
☆霍乱の重症にして、吐瀉の後、厥冷、筋愓し、煩躁し、熱無く、渇無く心下痞鞕し、小便利せず、脈微細なる者は、此方を用ふ可し、服して後、小便利する者は、救ひ得可し。《類聚方広義》
[4]乾嘔
[6]虚脱状態:
☆種々の久病にして、精気衰憊し、乾嘔して食せず、腹痛、溏泄し、悪寒し、面部四肢微腫する者を治す《類聚方広義》
[7]ケイレン
[8]下痢:
☆之を下して下痢遂に止まず、腹虚脹し、少しく渇し、尿閉を起し、時に精神朦朧として、且つ煩躁の状あり、その脈浮虚なる証《奥田謙蔵》
☆完穀下痢
☆心下悸し、悪寒し、腹拘急し、下利する者《方機》
[9]眩暈
[10]元気がない
[11]限局性腹膜炎の誤治に
[12]口乾:
☆重篤な病気でひどく脱汗したり吐いたり、下痢がつづいたりして、体力が衰脱し、心臓も弱り、脈沈微、口渇等のある者に用いる《大塚敬節》
[13]膠原病
[14]こわばり
[15]産後の疾患:
☆産後、調摂を失する者に、多く此の症あり《類聚方広義》
[16]自汗
[17]身体疼痛
[18]舌質:<紅>>
[19]舌苔:<無苔><黒苔>
[]脱汗:
☆“大いに汗出でて、熱去らず、内拘急し、四肢疼み、悪寒する者は四逆湯之を主る”とあり、四逆湯や茯苓四逆湯は、重症患者にみられる脱汗に用いられる《大塚敬節》
[]虫垂炎:
☆虫垂炎の患者に、大黄牡丹皮湯を10日間も用いているが、体温は39℃を上下し、腹痛は依然として止まない。どんあ処方が良いだろうかかと、相談を受けた。
症状を詳しく聞いてみると、化膿しているらしい、のう大黄などで攻める場合でもないようである。そこで薏苡附子敗醤散を与えてはどうかと答えておいた。ところが、この処方を3日用いたが、よくないばかりか、却って悪化したので、小生が招かれて、友人の病院に入院しているこの患者を診察することになった。
患者は25歳の頑丈な漁夫で、10日以上病床に呻吟していても、なお肉づきがよく栄養もさほど衰えていない。気をつけてみると、少し黄疸の傾向がある。私が病室に入ったとき、患者は水を口に入れては吐き出し、唇を水で濡らしていた。口が乾きますかと尋ねると、口中がすぐカラカラになって、舌が動かなくなるという。舌を診ると、一皮剥けたように赤く、乾燥している。脈は洪大数である。   その日は、午前中に悪寒がして、午後からは38℃を越す熱があるという、発汗はしていない。
腹診すると、皮膚が一体に枯燥して、右側の下腹部はやや膨隆し、回盲部は圧に過敏である。右足はまったく動かせない。少し動かしても腹にひびいて痛みという。小便は赤濁して、量は少なく、快通しない。大便は自然には出ない。手足は午後になると煩熱の状態となり、フトンから出したくなる。
以上の症状をみるに、《金匱要略》の大黄牡丹皮湯の条に“脈洪数の者は、膿すでになる。下すべからず”の徴候であるから、下剤は禁忌である。また口舌が乾燥して、水を飲むを欲せず、口をすすがんことを願い、手足が煩熱するのは、地黄を主剤とする薬方を用いる目標である。このような考えから出発して、次の薬方を決定した。 七賢散八味丸である。
七賢散というのは“外科正宗に出ていて、八味丸の変方とみなすべき薬方で八味丸-桂枝附子沢瀉+人参黄蓍。この2方とも地黄が主薬である。その主治に腸癰(=虫垂炎)潰るるの後、疼痛淋瀝止まず、或いは精神減少、飲食味わい無く、面色痿黄、時間、盗汗、臨臥安からざるを主治す”とあって、まさにこの患者の正面の証のように見える。これに八味丸を兼用すれば鬼に金棒だ。2~3日で必ず軽快するだろう。これくらいの病気が治せなくてどうするんだと、意気揚々と帰ってきた。 ところが、以上の薬方を3日飲むと、大変なことになった。
まず第1に、全身に強い発汗が始まり、それが終日止まない。
第2に、点在性に異常感覚が起こった。

第3に、右脚の内側に軽い痙攣が起こった。

第4に、脈が弱くなり幅が減じた。しかも前からの悪寒、発熱、腹痛、手足の煩熱、口乾等は依然として続いている。結局病気が重くなったわけである。
そこで“大いに汗出でて熱去らず、内拘急し、四肢疼み、而して悪寒する者は四逆湯之を主る”の条文によって、最後の切り札として、四逆湯を用いることを決心し、これに人参と茯苓を加えて、茯苓四逆湯として与えた。
ところが、たった1日で、気分爽快となり、腹痛は減じ、腹満は去り、熱は下がり、食欲は出てくるという快調になり、この方を服用すること10日で退院ということになった。
この患者からは、尊い幾つもの暗示を得た。《大塚敬節》
まず舌である。
「附子剤を用いる場合の舌は、油でも引いたようにぬんめりとして湿っていると古人が述べているが、この患者の舌は乾燥していた。舌だけ診ると、大承気湯で下す場合の舌とほとんど区別がつきかねた。
この患者の大便は秘結していたし、脈は大きくて力があった。口舌の乾燥と口渇を誤認すれば下剤を用いる可能性もあった。大承気湯証にも白虎湯証にも、多汗がみられることがあるので、そうなれば、なおのこと、これらの鑑別が難しい。
この患者に薏苡附子敗醤散、八味丸、茯苓四逆湯を附子の配剤された薬方を3方、順々に用いたが、茯苓四逆湯はあれほどよく効いたのに、前の2方では、却って病気が悪化した。薬物の組み合わせが如何に厳粛なものであるかに頭が下がる。
四逆湯類は、四肢厥冷を目標とする場合が多いのに、この患者のように、手足の煩熱を訴える者もあるということを知った。
[20]手足が冷たい<厥冷>
☆吐利し、煩躁し、四肢厥冷する者。
☆肉瞤筋愓し、手足厥冷する者《方機》
[21]熱っぽい:
☆下痢の後、虚熱を現し、腹虚満して煩悶し、手足寒冷にして尿利著しく減少する証《奥田謙蔵》
[22]煩躁:
☆発汗の後、虚熱を発し、身体惰痛し、腹筋拘急し、煩躁甚だしき証《奥田謙蔵》
☆手足厥冷し、煩躁する者《方機》
[23]ひきつけ:
☆慢驚風、搐搦、上し、下利止まず、煩躁、し、小便利せず、脈微数なる者を治す《類聚方広義》
[24]疲労倦怠
[25]ふるえ
[26]浮腫:
☆(下腿の浮腫:老人に多い)
☆病気が重症で一般状態が悪く、予後があぶない患者で、浮腫があり、手足がひどく冷え、流れるように冷汗が出て、脈が微弱or浮大弱遅の者に用いる《大塚敬節》
☆此方で一旦浮腫の消失することがある、急性の諸病ではこれで一時の急を救って回復に向くことがあるが、慢性疾患では、その効が一時に終わることが多い。《大塚敬節》
[27]偏頭痛
[28]崩漏:
☆一婦人、崩漏100餘日、衆工手を束ねたり。余、「茯苓四逆湯浮石」を与えて癒える。《先哲医話》
[29]麻痺
[30]目眩
 

茯苓梔子茵蔯湯《衛生宝鑑》《古今方彙》
「茵蔯1銭、茯苓5分、山梔子・蒼朮・白朮各3分、黄芩6分、黄連・枳実・猪苓・沢瀉・陳皮・防已各2分、青皮1分」水煎。
◎心下痞満、梔子困倦、身体麻木、身目倶に黄にして微しく青色を見わし、顔黒く、心神煩乱、不安、として吐せんと欲し、口悪味を生じ、飲食遅く化し、時に完穀を下し、小便癃閉し、然して赤黒く、辰己(午前8時)の間に、日暮れには止むを治す。名づけて「穀疸」と曰う。


茯苓瀉心湯《外台秘要方》
「茯苓、半夏、黄芩、黄連、乾姜、人参」
「半夏瀉心湯-甘草大棗茯苓」
◎此方は半夏瀉心湯の変方にして、停飲多く、心下痞硬する者に宜し。
◎澼嚢吐水の症、
◎嘈雑甚だしき者に効あり。


茯苓滲湿湯《医学正伝》《古今方彙》
「黄芩・黄連・山梔子・木防已・白朮・蒼朮・陳皮・青皮・枳実各4分、赤茯苓・沢瀉各5分、茵蔯6分、猪苓1銭」水煎温服。
◎湿欝にて黄疸と成り、寒熱嘔吐し而して渇し、身体面目倶に黄し、小便不利、飲食を思わず、安臥する能わず。


茯苓滲湿湯《寿世保元》《古今方彙》
「猪苓、沢瀉、蒼朮、白茯苓、陳皮、枳実、黄連、黄芩、山梔子、防已、茵蔯、木通、生姜」水煎。
◎湿熱にて発黄、汗黄、尿赤、及び寒熱、嘔吐而して渇して冷水を飲まんと欲し、身目倶に黄く、小便不利し、飲食を思わざる者を治す。


茯苓滲湿湯《東醫寶鑑》
=「茯苓除湿湯」
「茵蔯2銭、赤茯苓・沢瀉・猪苓各1銭、黄連・黄芩・梔子・防已・白朮・ 蒼朮・陳皮・青皮・枳実各5分」水煎服。
◎湿熱黄疸を治す。


茯苓蘇《素女方》
「茯苓5斤(灰汁煮十遍清水煮十遍)、松脂5斤(煮如茯苓法毎次煮四十遍)、 天門冬(生)5斤(去心皮暴乾作末)、牛酥3斤(錬三十遍)、白蜜3斤(煎令 沫盡)、3斤(錬三十遍)]
右六味、各擣篩以銅器重湯上先内酥次次蜜消訖内薬急攪之勿住務令大均 内蓋器中密封之勿洩氣先一日不食欲不食先須喫好美食令極飽然後絶食即服 二両二十日後服四両又二十日後八両細丸之以咽中下為度第二度以四両為初 二十日後八両又二十日二両第三度服以八両為初二十日二両二十日四両合一 百八十日薬成自後服三丸将補不服亦得恆酥蜜消息之美酒服一升為佳合薬須 取四時王相日特忌刑殺厭及四激休廢等日大凶此彭法。


茯苓造花《東醫寶鑑》
「白茯苓・蓮肉・山薬・仁各4両、白晩粳米2升、砂糖1斤」作末しこ ねて容器に入れ、竹刀で搗いて蒸し、晒し乾燥し服用。
◎内傷で脾胃が虚弱し、食欲の無い者。


茯苓沢瀉湯[1-1]《金匱要略》
=「茯苓澤瀉湯」
「茯苓半斤、沢瀉4両、甘草2両、桂枝2両、白朮3両、生姜4両」
右六味、以水一升、煮取三升、内沢瀉再煮取二升半、温服八合、日三服。
◎胃反、吐而渇、欲飲水者、茯苓沢瀉湯主之。


茯苓沢瀉湯[1-2]《金匱要略》《龍野ー漢方処方集》
「附子(炮)8.0g、沢瀉・生姜各4.0g、甘草1.0g、桂枝2.0g、白朮3.0g」
水400ccを以て沢瀉以外の薬を煮て120ccに煮詰め沢瀉を入れて煮直して100ccに煮詰め3回に分服。
☆茯苓戎塩湯・茯苓沢瀉湯、各茯苓半斤を用ひ、以て主薬となす。しかも茯苓の証を挙げず。苓桂甘棗湯も亦茯苓半斤を用ひて臍下の悸の証あり。その他茯苓を用ひて主薬となしものは、各(おのおの)悸・眩・動の証あり。いわんや二方において多く茯苓を用ひ、しかも若(かくのごとき)の証なかるべけんや。その証脱するや必せり。《薬徴》



茯苓沢瀉湯[1-3]《金匱要略》《漢方治療の実際》
「茯苓・沢瀉各4、朮・生姜各3、桂枝2、甘草1.5」
◎苓桂甘棗湯、茯苓戎塩湯、茯苓沢瀉湯、皆茯苓半斤を用いて以て主薬と為す。而して偽って桂枝、大棗、甘草を以て下悸、奔豚を治し、戎塩、朮を以て専ら小便不利を治し生姜、沢瀉を以て則ち吐して渇する者を治すと、要は皆病の小便より去るものなり。《重校薬徴》
◎心下悸し、小便利せず、上衝、嘔吐し、渇して水を飲まんと欲する者を治す。《方極附言》
◎「五苓散-猪苓生姜甘草」《大塚敬節》

★適応症及び病名(茯苓沢瀉湯)
[1]噫気
[2]胃アトニー:
☆胃弛緩証、及びその類似疾患等。《奥田謙蔵》
[3]胃ガン:
☆胃ガンの疑いありて、口渇、胃内停飲、便秘、尿量減少、嘔吐、呼吸促迫等を現わす者には、証に由りて「大黄䗪虫丸」を兼用す。《奥田謙蔵》
[4]胃液分泌過多症
[5]胃炎(急性・慢性)
[6]胃潰瘍
[7]胃拡張:
☆胃拡張にして、殊に渇を訴え、尿量極度に減少する証。《奥田謙蔵》
☆幽門狭窄からきた胃拡張に、この方を与えて頑固な吐を止めたことがある《大塚敬節》
[8]胃下垂:
☆胃下垂にして、殊に気、胃部圧迫感、嘔吐、頭痛の諸証著しき者《奥田謙蔵》
[9]息切れ
[]嘔吐:
☆嘔吐止まず、復た吐して渇し、水を飲まんと欲し、その人発熱し、頭汗出で、眩悸し、小便疎通の者は茯苓沢瀉湯之を主どる。《医聖方格》
☆吐いて渇し水を飲みたがる者。
☆嘔吐の後で口渇を訴える点では、この薬方の証と五苓散証とはよく似ている。五苓散の水逆と呼ばれる嘔吐は、水を呑むと数分のうちに吐く、茯苓沢瀉湯の嘔吐は“胃反、吐して渇し云々”とあるように、水を呑んですぐ吐くのでなく、朝食べたものを午後吐いたり、夕方食べたものを朝吐いたりする。その吐物の量は多い。《大塚敬節》
☆24、5歳の婦人が吐を患い、3、4日あるいは4、5日に1回吐く。吐く時は必ず心下部が痛む。このような症状が2、3ヶ月続き、のちには毎日2、3回吐くようになり、ひどい時にはガタガタ震え、吐いてからあとで熱が出るようになった。この間何人もの医者が治療したが治らない。そこで自分が招かれて診てみると、のどが渇いて、しきりに湯水を好む。そこで茯苓沢瀉湯を与え、少量をたびたび服用せじめた。するとその夜から病勢が衰え、20日あまりですっかり良くなった。ただ腰から下に浮腫があったので、牡蠣沢瀉散料を与えたところ、浮腫もまた去った。《藤田謙造》
本方は五苓散の猪苓のかわりに甘草と生姜を入れたもので、茯苓沢瀉湯も口渇と尿利の減少を伴う嘔吐に用いられるが、五苓散と違うところは、五苓散証ほどに、口渇がはげしくないのと、水を飲んでもすぐに吐くことは無く、また回数も頻繁に繰り返すことはない。
朝食べたものを夕方吐いたり、夕方たべたものを翌朝吐いたりする。
金匱要略には“胃反、吐して渇し、水を飲まんと欲する者は、茯苓沢瀉湯之を主る”とあり、幽門狭窄、胃拡張などで吐く者に、本方を用いる機会がある(漢方診療医典)
[10]下痢
[11]口渇
[12]自汗
[13]自律神経失調症
[14]十二指腸潰瘍
[15]小児嘔吐症
[16]心悸亢進
[17]心下悸
[18]心下痞
[19]心下部の疼痛
[20]食道憩室
[21]食欲不振
[22]嘈雑
[23]つわり
[24]吐瀉:
☆吐瀉を発し、発熱して口舌乾燥し、渇して冷水を好み、或いは水を飲めば直ちに吐する証。《奥田謙蔵》
[25]吐乳:
☆乳児、吐乳止まず、尿利なき等の者。《奥田謙蔵》
[26]尿不利
[27]腹痛
[28]腹満
[29]不眠
[30]便秘
[31]羸痩


茯苓調血湯《東醫寶鑑》
「赤茯苓1銭半、赤芍薬・川芎・半夏麺各7分、前胡・柴胡・青皮 ・枳穀・桔梗・桑白皮・白茅根・燈心・甘草各5分、姜5片、蜜 2匙を入れ水で煎服。
◎酒と麺を食べすぎ、房事過労のあと小便から出血する症状を治す。


茯苓湯《方読便覧》
「香蘇散《和剤局方》茯苓・白朮・烏薬・木瓜」
◎孕婦六七ヶ月以来、両足腫大し、行歩困難、脚指間に黄水出るを治す。これ子気と名づく。


茯苓湯《寿世保元》《東醫寶鑑》
「当帰・川芎・白芍薬・熟地黄・白朮・赤茯苓・沢瀉・条芩・梔子(炒)・麦門冬・厚朴・甘草各7分、姜5片」水煎服。
◎子腫を治す。
◎子腫の者は妊娠七八ヶ月に面目浮腫するなり。《古今方彙》


茯苓湯《医学入門》《古今方彙》
「赤茯苓・沢瀉・香附子・陳皮・桑白皮・大腹皮・乾姜各等分」水煎し、或いは、防已、棗肉を丸となすも亦好し。
◎脾虚にて浮腫喘急し、尿渋るを治す。


茯苓湯《証治準縄》《古今方彙》
「赤茯苓・沢漆(葉微炒)・白朮各1両、桑白皮・黄芩・射干・防已・沢瀉各3両」を毎に5銭匕を服し、先に水3盞を以て大豆1合を煎じて2盞を取り、渣を去り、薬を内に入れて煎じて1盞を取り、分ちて2服と為す。未だえざれば頻りに服す。上の二方は須く「済生腎気丸」を以て之を佐く、後に方は虚したる者は用いるを禁ず。
◎痢後遍身浮腫するを治す。


茯苓湯《東醫寶鑑》
「赤茯苓・桑白皮各1銭半、防風・桂皮・川芎・芍薬・麻黄各1銭」剉作1貼し「棗2枚」入れ水煎服。汗を出せば効く。
◎痛痺で四肢が疼痛し、物に引っかかったとき浮腫する者。


茯苓導水湯《医宗金鑑》
「木瓜・木香・檳榔・大腹皮・白朮・茯苓・ 猪苓・沢瀉・桑白皮・紫蘇葉・縮砂仁・陳皮」


茯苓半夏湯[1]《東醫寶鑑》
「半夏製3銭、赤茯苓2銭、姜7片」を水で煎服。
◎停痰と留飲が発して諸症になるときに使う。


茯苓半夏湯[2-1]《東醫寶鑑》
「半夏2銭、赤茯苓・陳皮・蒼朮・厚朴各1銭、藿香8分、縮砂・乾姜・甘草(炙)各5分、姜3、梅1」煎服。
◎痰飲が胃につまり、嘔吐の止まらない者。

茯苓半夏湯[2-2]《万病回春》《古今方彙》
「茯苓・半夏・蒼朮・厚朴・陳皮各1銭、沙参5分、藿香8分、烏梅1個、乾姜・甘草各3分、生姜:水煎し徐々に温服。
◎水寒、胃に停まり嘔吐するを治す。


茯苓半夏湯[3]《東醫寶鑑》
「麦芽(炒)1銭半、白朮・白茯苓・半夏・神麹各1銭3分、橘紅・天麻各1銭、姜5片」水煎服。
◎風痰が脾胃の間にあって悪心・吐き気をもよおす。(食痺)



茯苓白朮湯[1-1]《仁斎直指方》
「苓姜朮甘湯桂枝・蒼朮各等分」
◎湿を受け、身体痛重するを治す。

茯苓白朮湯[1-2]《東醫寶鑑》
「赤茯苓・蒼朮・白朮・乾姜・桂心・甘草各1銭」水煎服。
◎湿温を治す。
湿温=両腕が冷え、胸腹がつまって汗が多く、頭痛し、妄言する症。


茯苓補心湯[1-1]《婦人大全良方》
「当帰・川芎・芍薬・地黄・枳実・半夏・茯苓・桔梗・蘇葉・柴胡・橘皮・葛根各7分、人参5分、木香5分、甘草3分、生姜」
◎婦人の血旺んに気衰うるを以て本と為すを治す。
◎心は血を生じ、肝は血を蔵す、今血衰えて気盛んなり。心気虚耗により血を生じる能わず、此の薬、専ら心元の虚を補い、栄衛を調和し、血脈を滋養す。
◎兼ねて、去血過多、虚労発熱、および吐血、咳嗽、痰喘を治す。
◎「四物湯」「参蘇飲」《古今方彙》
◎婦人の心胸雑するを治す《寿世保元》
◎男婦、血虚して潮熱を発し、汗無く咳嗽する等を治す。即ち四物湯と参蘇飲の合方なり。《易簡方》
◎血虚にて発熱悪寒咳嗽、虚労に成らんと欲する者を治す《三因極一病証方論》
◎此方は、血虚症なれども、気が閉塞して血を運らすこと能わず、血遂に欠乏する者を治す《勿誤薬室方函口訣》
◎故に、「八珍湯」「十全大補湯」は気血両虚を治し、茯苓補心湯は血虚し気実する者を治す。《勿誤薬室方函口訣》


茯苓補心湯[1-2]《東醫寶鑑》
「白芍薬2銭、熟地黄1銭半、当帰1銭3分、川芎・白茯苓・人参・前胡・半夏各7分、陳皮・枳穀・桔梗・乾葛・紫蘇葉・甘草各5分、姜5片、棗7枚を入れて水で煎服。
◎労心吐血を治す。


茯苓補心湯[2-1]《備急千金要方》
「茯苓4両、桂枝2両、甘草2両、大棗20枚、紫石英1両、赤小豆24枚、人参1両、麦門冬3両」
◎心気不足し、善く悲愁圭怒し、衂血、面黄、煩悶し、五心熱す。或いは独語不覚に、咽喉痛み、舌本強ばり、冷涎出で、喜忘、恐走不定、婦人崩中、面色赤きを治す。
◎此方は心気不定にて種々妄想を発し、瀉心湯の場合に似たれども、虚候多く顔色青惨なる者に宜し。《勿誤薬室方函口訣》
◎婦人、亡血の後、面色浮腫、心気爽やかならざる者に宜し。


茯苓補心湯[2-2]《万病回春》《古今方彙》
「茯苓・人参・白朮・当帰・生地黄・酸棗仁・白芍薬・麦門冬・陳皮・黄連各等分、甘草3分、烏梅1個、大棗2枚、浮小麦1撮」水煎、服するに臨み辰砂末5分を入れる。食遠に服す。
◎心汗症(心前部<前胸の中央部位を含む>だけに特に発汗が多い症状をさす)を治す。
◎凡そ心汗の者は心孔に汗ありて別処には無きなり。憂思驚恐、労傷欝結に因りて成る。


茯苓補心湯[2-3]《東醫寶鑑》
「白茯苓・人参・白朮・当帰・生地黄・酸棗仁(炒)・白芍薬・麦門冬・陳皮 ・黄連各1銭、甘草3分、朱砂5分(別に作末しておく)、棗2枚、烏梅1、 浮小麦100粒と煎服。
◎心汗を主に治す。心汗は心孔から出る症状だが、七情が欝結して出る。


附桂湯《医学入門》《古今方彙》
「附子3銭、肉桂1銭、黄柏・知母・升麻・甘草各5分、黄蓍1銭半、人参7分」水煎。
◎白帯下にて腥臭多く、悲しみて楽しまず、大いに寒きを治す。


附桂八味丸(⇒八味地黄丸)


附子温中湯《東醫寶鑑》
「附子(炮)・乾姜(炮)各1銭半、人参・白朮・白茯苓・白芍薬・甘草各1銭、 厚朴・草豆蔲(煨)・陳皮各6分」水煎し空腹時に服用。
◎中寒・腹痛・下痢で水穀が消化されない者。


附子丸《東醫寶鑑》
「附子(炮)5銭、巴豆霜1銭、砒霜半銭」細研しで溶かして梧子大の丸剤。 毎回1~2丸を冷水で飲み、下痢したら再び紫丸を1丸づつ常服する。
◎下焦の吐食。朝食べたら夕に吐き、夕に食べた物は朝吐き、大便の通じない者。

附子建中湯《元戎》


附子粳米湯[1-1]《金匱要略》
「附子(炮)1枚、半夏半升、甘草1両、大棗10枚、粳米半升」
右五味、以水八升、煮米熟湯成、去滓、温服一升、日三服。
◎腹中寒氣、雷鳴切痛、胸脇逆満、嘔吐、附子粳米湯主之。


附子粳米湯[1-2]《金匱要略》《龍野ー漢方処方集》
「附子(炮)0.3g、半夏8.0g、甘草1.0g、大棗2.5g、玄米7.0g」水320ccを以て煮て米が煮えたら滓を去り3回に分服。


附子粳米湯[1-3]《金匱要略》《漢方治療の実際》
「附子0.6、粳米6、半夏5、大棗3、甘草1.5」
◎腹中雷鳴し、切痛、嘔吐、悪寒する者を治す《吉益東洞》
◎此方、粳米を用いるものは切痛を主とするなり。
◎腹冷、雷鳴切痛、胸脇に逆満し嘔多く吐少き者。
◎鑑別:

「大建中湯」「烏頭桂枝湯」「解急蜀椒湯」
「この方は“腹中寒氣、雷鳴切痛、胸脇逆満、嘔吐、附子粳米湯之を主る”とあって、大建中湯の証によく似ている。この方も腹中の寒気が上につき、胸脇部に逆満してくるのである。ここでは雷鳴切痛とあって、腹がゴロゴロ鳴って、切られるように痛む。大建中湯の証では、町の蠕動運動があり、これを望見出来るのが特徴で、附子粳米湯では雷鳴切痛を特徴とする。ところがこの2方の区別がつきかねることもある。この2方を合した解急蜀椒湯という処方がある。この処方は附子粳米湯に蜀椒を加えたもので、浅田宗伯は“此方は大建中と附子粳米湯とを合した方で、その症も2方に近く、寒症で心腹に迫って切痛する者を主治する。烏頭桂枝湯とその証が似ているが、これとは上下の別がある。その上に烏頭桂枝湯は腹中絞痛して寝返りも出来ないのを目的とする”と述べているが、以上の3方の鑑別は必ずしもやさしくない。《大塚敬節》

★適応症及び病名(附子粳米湯)
[1]イレウス=腸閉塞
[2]胃潰瘍
[3]嘔吐:
☆胃中寒甚だしく、嘔逆止まず、或いは復嘔吐するは、軽剤にて効を取る能わず:「川椒(炒)・丁香」《雑病翼方》
☆附子粳米湯は、寒疝・腹痛・雷鳴・嘔吐・逆満の症に用いる。その中で嘔吐が最も甚だしく、腹の左右の別はないが、多くは左から逆満し、始終雷鳴し、痛の甚だしいものである。時たま回虫を吐く者がある。大便は多くは秘結する。世医は一概に寒疝・痼冷などの症に用いるけれども、嘔吐・逆満などの症がなければ正面の症ではない。解急蜀椒湯もたいていは同じようであるが、この方はもっぱら気を目当てに用いる《百々漢陰》
[4]霍乱:
☆霍乱、四逆し、吐少なく嘔多き者。《外台秘要方》
[5]寒疝
☆寒疝の雷鳴、切痛。《勿誤薬室方函口訣》
[6]寒冷で疼痛増悪する: 
[7]急性腹症
[8]膵臓炎
[9]胆石症      
[10]腹痛<激しい><切られる様に痛む>
☆腸の蠕動運動が亢進する者:「大建中湯」=解急蜀椒湯。
☆飲の腹痛甚だしき者に宜し。
☆流産後、脈が微細数で、嘔吐し手足が冷たくなって、刺すように腹痛する者に附子粳米湯を与えたところ、1貼で腹痛が止み胎盤が下りて治った。《豊浦元貞》
[11]腹中雷鳴
[12]腹部寒冷
[13]幽門狭窄
[14]癒着(腹膜炎etcで腸管が癒着)
[15]腰痛



附子散[1]《東醫寶鑑》
「附子(大)1個」泥土で作った容器に入れ、四方を炙ると焼けてくる、すると水が出、その水が乾くと「生姜汁」をまた注いで火で炙り、作末して栗米飲で1銭を調下する。
◎反胃を治す。


附子散[2]《東醫寶鑑》
「附子(炮)2銭半、桂心・当帰・白朮各2銭、半夏(製)・乾姜(炮)各1銭」剉作1貼し、「姜3片」を入れて水煎服。
◎傷寒の陰毒を治す。


附子山茱萸湯《東醫寶鑑》
「附子(炮)・山茱萸各1銭半、半夏・肉豆蔲各1銭2分半、木瓜・烏梅各1銭、丁香・藿香各7分、姜7、棗2」水煎服。
◎歳土が太過して、雨湿が流行し、腎気が邪を受け、人は腹痛を起こし、清厥して気分がすぐれず、肌肉と足が痿麻し、脚下が疼痛して、内が脹満して、食欲が無く、四肢を動かすことも出来ないとき。


附子瀉心湯[1-1]《傷寒論》
「大黄2両、黄連1両、黄1両、附子(炮去皮破別煮取汁)1枚」
右四味、切三味、以麻沸湯二升漬之、須臾絞去滓、内附子汁、分温再服。
◎心下痞、而復悪寒、汗出者、附子瀉心湯主之。


附子瀉心湯[1-2]《傷寒論》《龍野ー漢方処方集》
「大黄2.0g、黄連・黄芩各1.0g、附子(炮)0.6g(又は白川附子1.0g)」
附子以外の薬を沸湯80ccの中に暫時ひたし滓を去り附子は別に煮て汁を取り、両者を合わせて2回に分服。


附子瀉心湯[1-3]《傷寒論》《東醫寶鑑》
「大黄・黄芩・黄連各2銭、附子(炮)2銭<別煎汁を取る>」百沸湯に3味を入れ、しばらくして滓は捨て、附子汁で温服する。後は共に温かくして再分服する。
◎心下が痞し、再び悪寒しながら、汗をかく者。



附子瀉心湯[1-4]《傷寒論》《奥田謙蔵》
「大黄4.0、黄連・黄芩各2.0、附子2.0」
右四味、先づ沸湯六勺を以て三味を漬し、須臾にして絞り、滓を去り、別に水六勺を以て、附子を煮て二勺を取り、滓を去り、之を合して一回に温服す。此方原本に在りては、附子の煮法詳かならず。今、《尾台榕堂》氏の改むる所に従う。《奥田謙蔵》
◎瀉心湯の証にして悪寒する者を治す《吉益東洞》
◎此方は気痞の悪寒を目的とす。《勿誤薬室方函口訣》
◎桂枝加附子湯の悪風、芍薬甘草附子湯の悪寒、皆同意なり。
◎もし心下痞硬して悪寒する者:「半夏瀉心湯《千金翼方》附子」《勿誤薬室方函口訣》
◎心下部がつかえて悪寒汗出る者。

★適応症及び病名(附子瀉心湯)
[1]意識障害:
☆産後失心し、人事を省みざる者に宜し《先哲医話》
[2]感情不安定
[3]ウツ病:
☆心下部に閉塞の感ありて、精神欝憂氏、食思起こらず、四肢に冷感ありて、脈浮弱なる証。《奥田謙蔵》
[4]嘔吐
[5]悪寒:
☆脈浮弱にして、心下痞硬し、便秘の傾向あり、通年熱状なくただ悪寒し、時々脱汗を現す証。《奥田謙蔵》
[6]顔色悪い
[7]嗜眠
[8]食滞:
☆老人の停食にして、悶、暈倒し、人事を省みず、心下満ち、四肢厥冷し、面に血色無く、額上に冷汗あり、脈伏して絶するが如く、その状中風に髣髴する者は、之を食欝、食厥と称す。附子瀉心湯に宜し《類聚方広義》
[9]自律神経失調症
[10]頭痛
[11]中風:
☆卒倒する者は難治なり、本方まま効あり《先哲医話》
[12]テンカン
[13]脳出血
[14]脳出血後遺症
[15]半身不随:
☆半身不随等にして、嗜眠の傾向あり、或いは手足微冷なる証《奥田謙蔵》
[16]不眠
[17]便秘
[18]目眩



附子湯[1-1]《傷寒論》
「附子(炮・去皮破8片)2枚、茯苓3両、人参2両、白朮4両、芍薬3両」
右五味、以水八升、煮取三升、去滓、温服一升、日三服。
◎少陰病、得之一二日、口中和、其背悪寒者、當灸之、附子湯主之。
◎不仁懐娠六七月、脉弦発熱、其胎愈脹、腹痛悪寒者、少腹如扇、所以然者、子藏開故也、當以附子湯温其藏。《金匱要略》

附子湯
“附子湯方は、是れ真武湯の姜を去って参を加ふるものなり。真武湯条に心下悸・頭眩・身瞤動の証あり。然れば則ち此の湯の条、若(かくのごとき)の証を脱するや明らかなり”《薬徴》←茯苓

◎附子湯は証具らざるなり。此の方の真武湯における、朮附を倍加して、参(人参)を以て姜(生姜)に代ふるものなり。しかして真武湯証に、小便不利、あるいは疼痛、あるいは下利あり。此の方は朮附を倍加す。則ち豈に若(かくのごとき)の証なかるべぇんや。その証闕くや明らかなり。
○附子湯証=身体痛(←芍薬)
☆附子湯は証具らざるなり。此の方の真武湯と独り差ふもの1味。
附子湯(茯苓3両、芍薬3両、白朮4両、附子2枚、人参2両)
真武湯(茯苓3両、芍薬3両、白朮2両、附子1枚、生姜3両)
大塚:
真武湯(茯苓5、芍薬・生姜・朮各3、附子0.6
附子湯(茯苓4、芍薬4、朮5、附子0.6、人参3)
しかしてその方意におけるや、大いに逕庭(けいてい)あり。附子湯は朮附君薬身体疼痛、あるいは小便不利、或いは心下痞硬の者を主る。真武湯は、茯苓芍薬君薬にして、肉筋・拘攣・嘔逆・四肢沈重疼痛の者を主る。
「四肢」=上肢2本・下肢2本を指す

此の方の真武湯における、朮附を倍加して、人参を以て生姜に代ふるものなり。しかして真武湯証に、小便不利、或いは疼痛、或いは下利あり。此の方は朮附を倍加す。則ち豈にかくのごとき証なかるべけんや。

附子湯[1-2]《傷寒論》《龍野ー漢方処方集》
「附子(炮)0.6g(又は白川附子1.0~2.0g)、茯苓・芍薬各3.0g、人参2.0g、白朮4.0g」


附子湯[1-3]《傷寒論》《中薬臨床応用》
「熟附子片12g、白朮9g、党参12g、白芍薬6g、茯苓9g」水煎服。
◎ショック、虚脱
◎皮膚が氷のように冷たい
◎呼吸が微弱


附子湯[1-4]《東醫寶鑑》
「白朮4銭、茯苓・芍薬各3銭、附子(炮)・人参各2銭」水煎服。
◎少陰病で脈が沈み、手足が冷たく骨節の痛みを治す。
◎口中が和し、背が悪寒する者。


附子湯[1-5]《傷寒論》《漢方治療の実際》

◎「真武湯-生姜人参」
「真武湯」は少陰の裏水を治し、「附子湯」は少陰の表寒を主とす。一味の変化妙と云うべし。《勿誤薬室方函口訣》
◎水病、遍身腫満し、小便利せず、心下痞鞕し、下利、腹痛し、身体痛み、或いは麻痺し、或いは悪風寒する者は此方に宜し《類聚方広義》
◎「附子湯」との相違。《重校薬徴》
附子湯=茯苓、芍薬、白朮、附子、人参
真武湯=茯苓、芍薬、白朮、附子、生姜
“附子湯は朮附を君薬となして悪寒、身体攣痛、骨節疼痛、心下痞鞕、下利、小便不利等の証を治し”
“真武湯は茯苓、芍薬を君薬となして、心下悸、小便不利、頭眩、瞤動、腹痛、下利、四肢沈重、疼痛、等を治す”
◎《傷寒論》には“少陰病で、身体が痛み、手足が冷え、関節が痛み、脈が沈の者に”用いる。《大塚敬節》
◎清熱補気湯は後世方で、附子湯は古方である。そこで後世方で清熱補気湯を用いるところへ、古方では附子湯の加減を用いる《大塚敬節》


附子湯[1-6]《傷寒論》
★適応症及び病名(附子湯)
[1]下腹部の冷感
[2]関節痛:
☆発熱背部悪寒、或いは身体骨関節痛み手身冷える者。
[3]急性熱病:
☆(頭痛ナシ・咳嗽ナシ)
[4]筋肉痛:
☆肩背痛み、臍傍攣急し、尿利渋滞し、脈沈緊なる証《奥田謙蔵》
[5]下痢:
☆下痢性疾患にして、身体疼痛し、自汗ありて微悪寒し、脈微弱なる証《奥田謙蔵》
☆腹痛、下痢止まず、身体痛み、微悪寒し、脈沈なる証《奥田謙蔵》
[6]口内炎:
☆ある人云う、病人、舌上赤く爛れ、皮を剥ぐが如く、食塩の味に痛みを覚え、食ふ事態はず、食する時は津を吐く、或いは口中粘り、或いは涸渇する者。産後にこの症多し。男子もまたあり。附子湯の方内において当帰8分を加ふ。また鹿胎子の霜1銭を兼用すべし。《腹証奇覧翼》
[7]産後の疾患:
☆産後下利、舌上赤爛し、飲食すべからざる者:「当帰」《生生堂方函》
☆産後の口糜瀉を治するに甘草瀉心湯にてしばしば効を得たり。蓋し附子湯の主る所と陰陽の別あり。《雑病翼方》
[8]ジンマシン
[9]しびれ(風寒湿が合わさり、骨節疼痛、皮膚の不仁、四肢が緩弱)
[10]四肢麻痺
[11]湿疹
[12]神経痛:
☆諸種の神経痛、及び「ロイマチス」性疾患等にして、熱性症候なき者。《奥田謙蔵》
[13]身体痛:
☆少陰身痛、肢冷、骨節煩疼するを治す。《古今方彙》
☆身体攣痛、小便不利、心下痞し或いは腹痛する者を治す《吉益東洞》
☆湿痺緩風、身体疼痛し、折れんと欲するが如く、肉は錐刺刀割の如きを治す:「桂枝・甘草」《雑病翼方》
☆腰から大腿にかけて痛み、夜間特に甚だしく、脈が沈細で、寒気を恐れることの甚だしい者は附子湯が良い。大防風湯などを用いて効無く、次第に大腿が痩せ、疼痛のいよいよ甚だしい者に用いて効がある《百々漢陰》
[14]背悪寒
[15]舌痛
[16]掻痒性皮膚病
[17]手足が冷たい
[18]尿不利
[19]妊婦の腹痛
[20]ネフローゼ
[21]煩躁:
☆寒性の煩躁。
[22]疲労倦怠:
☆身体労倦し、胸腹部拘急し、発汗の傾向ありて煩し、尿渋滞し、脈緊数の証《奥田謙蔵》
[23]腹水
[24]腹膜炎
[25]浮腫
[26]片麻痺
[27]末梢神経の麻痺
[28]慢性関節リウマチ
[29]慢性腎炎




附子湯[2-1]《備急千金要方》
「附子湯《傷寒論》桂枝・甘草」
◎湿痺緩風、身体疼痛し、折れんと欲するが如く、肉は錐刺刀割の如きを治す《雑病翼方》


附子湯[2-2]《東醫寶鑑》
「附子(生)・白芍薬・桂皮・人参・白茯苓・甘草各1銭、白朮1銭半、姜7 片」水煎服。
◎風寒湿が合わさって痺になって、骨節が疼痛し、皮膚の不仁、肌肉が重着し、 四肢が緩弱する者。


附子湯[3]《聖済総録》
「桂枝加附子湯《傷寒論》地黄」
◎産後営血虚損し、汗出で日に止まず、形体困怠するを治す。



附子理中湯[1-1]《和剤局方》《漢方治療の実際》
「理中湯(人参湯)附子0.6」


附子理中湯[1-2]《東醫寶鑑》
「附子(炮)・人参・白朮・乾姜(炮)・甘草(炙)各1銭」水煎服。
◎中寒で口噤し、四肢が硬直して、卒然と暈倒する。

附子理中湯[1-3]《和剤局方》《古今方彙》
「人参(去蘆)・附子(炮・去皮臍)・乾姜(炮)・甘草(炙)・白朮各3両」水1盞を以て7分に至り、空心食前にやや熱して服す。
◎脾胃冷弱、心腹絞痛、嘔吐、泄利、霍乱、転筋、体冷えて微しく汗し、手足厥寒、心下逆満、腹中雷鳴、止まず、飲食進まざるを治す。及び一切の沈寒痼冷並びに之を治す。

附子理中湯[1-4]《閭氏小児方論》《中薬臨床応用》
「熟附子片6g、乾姜6g、党参15g、白朮9g、甘草(炙)3g」
◎寒証の腹痛
◎腹鳴、腹痛
◎上腹部痛
◎よだれが多い
◎泥状便、下痢



附子理中湯[1-5]《仁斎直指方》
「理中湯附子」
◎虚損久痢、四肢厥冷する者を治す。
◎此方は理中丸の方後によるなり。《勿誤薬室方函口訣》
◎「理中湯」は専ら中焦を主とする故、霍乱(激しい嘔吐・下痢を伴う重篤な疾患)吐瀉の症にて、四肢厥冷する者は「四逆湯」より反って此方が速やかに応ずるなり。《勿誤薬室方函口訣》
◎後世にては、中寒(寒気にあたる)に用ゆれども、中寒は「桂枝加附子湯」「四逆湯」を優とす。《勿誤薬室方函口訣》

附子理中湯[1-6](附子人参湯)
◎(中寒・腹痛・下痢・水穀が未消化)

★適応症及び病名 (附子理中湯)
[1]噎膈:
☆「松寄生」《萩野台州口訣》
☆寒邪、太陰に中り、清涎沫を嘔吐し、腹中冷痛し、或いは下痢清穀、回虫を吐し、脈来ること沈細、急に宜しく之を温むべし。此方に宜し。《医学心悟》 
[2]嘔吐:
☆寒吐、陰盛格陽して薬を納れざるを治す「附子・童便・猪胆汁」 《保命集》
☆嘔久しくして諸薬納れざる者、これ胃口の壮火、関格(小便が出ず、嘔吐が止まない病)なり、此方に宜し。《雑病翼方》
[3]霍乱:
☆吐利甚だしく、手足微冷なる者「半夏」
☆霍乱の調理:「桂枝」《方読便覧》
☆年労羸劣し、冷気悪心、食飲化せず、心腹虚満し、拘急短気す、霍乱、嘔逆し、四肢厥冷、心煩気悶し、流汗するを治す「麦門冬・茯苓」《雑病翼方》
[4]下痢:
☆小児にわかに下痢し、搐搦を発して死する者はいわゆる真中である。先ず本方を与える。《先哲医話》
☆久瀉なる者は中焦を理むべし。「赤石脂」《先哲医話》
☆噤口痢は、胃口より胃中に至り、多く水飲を畜す。故に水分の動気甚だし:「薯蕷・生地黄」or「粳米」《和田東郭》
☆久痢を治す「肉桂・益智仁」《方読便覧》
☆冷えから来た下痢、四肢冷。《龍野ー漢方処方集》
[5]四肢厥冷:
☆大吐瀉後、虚寒し、四肢厥冷、咳逆する者《雑病翼方》
[6]傷寒:
☆煩躁し、面赤く、昏乱悶絶し、時に冷水をもとめ、手揚げ足なげうち、脈洪大にして倫なく、之を按じて糸の如き者を治す《医宗必読》
[7]小便不利:
☆小便、涼薬を服して日久しく通ぜず、ほとんど死せんとす。:「琥珀末」《済世全書》
[8]せき:
☆脾肺の虚寒にて痰涎壅塞し、少しく動作ありて喘嗽頻促し、脉来ること遅細の者を治す。《医方考》
☆一男あり、中気素より虚し、食少なく、神倦し、忽然として喘急し、悶絶して人を知らず、手足倶に冷ゆる者を治す。《医宗必読》
☆久嗽止まず、時に喘促を見はす者を治す「茯苓・細辛・五味子・阿膠・天門冬」《方読便覧》
[9]吐乳:
☆胃虚なる者、「附子理中湯」、「温脾湯」の類に宜し。もし癒えざる者。「青金丹」《普済本事方》を与える《先哲医話》
[10]腹痛:
☆口に冷物を食して寒が客して胃を犯し、中焦の痛み甚だしく、脈沈遅の者は宜しく急に此方を用う。原方は理中湯附子なり。《医方考》
[11]便秘:
☆新陳代謝の衰えを改善し便通をつける。
☆1婦人、平素から肥満のたちで、腹が膨満して、相撲取りの様である。あるとき疫痢にかかり、初めはどんな薬方をもちいたか分からないが、便秘が、始まったので、医者は大承気湯を用いた。ところが、之を呑んでも、通じがないので、大黄・芒硝を増量して用いたが、それでも便通がなく、10余日も便秘して、だんだん食欲が減じ、全体の様子が良くないので、余を迎えた。診てみると、舌に黄苔があるが乾燥していない。脈は沈微である。腹満はしているが、按圧しても痛まない。腹の張り具合を聞いてみるに、平素より少し張っているくらいだと言う。これらの様子から、疫の邪はもう大半去って、ただ胃腸の働きが衰えているだけで、結糞がつまっているとも思えない。そこで試みに真武湯を与えたところ、別に支障がないようである。ところが、ある夜、急に手足が冷たくなって、汗が流れるようになったので、これは温補が足りないに違いないと考え、附子理中湯を作り、人参と附子の量を多くして与えたところ、手足も温まり、少しずつ食も進むようになった。全快も近いと思われたが、大便がなお通じないのである。もし便意を催したら、さだめし大便が硬くて苦悶するだろうと考えていたところ、ある日、何の苦もなく、すらすら大便が通じ、全快した。大便の無いこと37、8日であった。《大塚敬節》
☆高槻候の永井某は年50歳余で、癇癖家であった。いつもは治を修三に頼んでいたが、ある時、病気にかかって、修三が薬をやったが、なかなか治らず数十日も良くならないことがあった。そこで、候の小児の病気を診に来ていた麹町の柴田氏に診てもらった。柴田氏も、種々と薬を用いたが効無く、その上に便秘するようになった。そこで多紀庭先生に治を乞うた。多紀氏は修三と相談して、六磨湯や承気湯などの大黄・芒硝の入った下剤をいろいろ用いたが効がないばかりか、逆にただの1回も大便が通じない。候はまた医者を更えてみようと思い、重臣の山藤助之進を使わしてまた修三に治療を頼んだ。修三はこれを固辞して云うのに、「いまの自分の考按は衆医の考えとは全く反対で意見は一致しないし、却って疑惑を生むことになろう」と、そこで翌日、侍医の瀬川淳庵を通じて懇請して修三に治を頼んだ。修三が云うのに、「衆医の処方は皆寒下の方剤で不可ではないが、ただその用量が多すぎたために、却って胃腸が疲労して機化運転が悪くなっただけである。先ず人参・附子のような温める方剤を用いて胃腸を鼓舞したら、前に呑んでおいた薬の働きが急に効を奏するようになるだろう」と。すると侍医たちは果たして戸惑ったが、修三は意を決して附子理中湯をすすめた。するとまだ1日分を飲み終わらないにのに、5、6行の下痢があって、気宇が爽快になって、諸症がそれにつれて減じ数日で全快した。(塩田修三の治験)
[12]無月経:
☆月経の閉止には、駆血剤と云われている桂枝茯苓丸、桃核承気湯、大黄牡丹皮湯、抵当湯などが用いられ、また順気剤である大承気湯、半夏厚朴湯、正気天香湯などで月経の通ずる者がある。ところで、いくらこれらを用いても効のないことがある。やはり証に随って用いることが必要である。
23女性。色が白く、背も低く、一見して13、4歳位に見える。1年あまり月経が止まっているという。私はこれに当帰芍薬散を用いたが効無く、結局、全身の栄養を良くしてみようと考え、1年ほど附子理中湯を用いたところ、全身の発育が良くなると共に、月経が通ずるようになった。《大塚敬節》


附子理中湯[2]《東醫寶鑑》
「附子(炮)・乾姜(炮)各1銭半、人参・白朮・白茯苓・白芍薬・甘草各1銭、厚朴・草豆蔲(煨)・陳皮各6分」水煎し空腹時に服用。
◎中寒・腹痛・下痢で水穀が消化されない者。


 附子六物湯《備急千金要方》《古今方彙》
      「
    ◎足の太陰経に四気が流注し、骨節煩疼し、四肢拘急し、自汗短気、小便不利し、     手足は或いは時に浮腫するを治す。兼ねて五痺を治す。


 浮小麦櫓豆衣煎剤《中薬臨床応用》
      「浮小麦、櫓豆衣」各9g、200‹の水を加え100‹まで煎じる。1日2回、50       ‹づつ服用。
    ◎肺結核の盗汗。


巫雲散《東醫寶鑑》
      「胆礬・五倍子・百薬煎・青枯桃皮・酸石榴皮・訶子皮・木瓜皮・猪牙角       ・何首烏・細辛各等分」作末し蜜で丸め、熱酒で延ばして貼る。
    ◎髪が白く艶のないとき。

巫神湯[1-1]《原南陽》《漢方治療の実際》
「五苓散木香・黄連各2、乾姜1」
◎婦人の血暈、発熱し、或いは振寒し、小便不利、上衝、頭眩、悪心す。
◎或いは嘔し、或いは吐するを理す。
◎産後諸症、婦人百病、運用多端なり。
◎瘀血結痛し、桃仁輩を頻りに用い、益々劇しき者攻むべからざる者あり。その持重堅守の日、任用すべし。血熱膀胱に入る者、是れ正的なり。
◎此方、面白き組み合わせなり。「五苓散大香連丸乾姜」は、血分不和より水気を醸し、その上胃中に湿熱を生じ頭眩、下利、種々の変症をなす者、その標に眩惑せず、此方を持重するときは意外に効を奏するなり。《勿誤薬室方函口訣》
◎水を利し、眩を治す《方読便覧》

巫神湯[1-2]《原南陽》《医事小言》
「茯苓1銭、朮・猪苓・沢瀉・桂枝各5分、乾姜4分、黄連3分、木香1分」


巫神湯[1-3]《原南陽》《漢方後世要方解説》
「茯苓6、白朮・猪苓・沢瀉・桂枝各3、乾姜・黄連各2、木香1」
◎婦人血暈、発熱、或いは振寒し、小便不利、上衝、頭眩、悪心、或いは嘔し、或いは吐し、産後諸症、婦人百病を理す。運用多端なり。
◎瘀血結痛、桃仁の輩を頻りに用い、益々劇しきもの攻むべからず、血熱膀胱に入る者是れ正的なり。
◎此方は五苓散に大香連丸を合方して、乾姜を加えたもので、血症に水気を兼ね、胃中に湿を生じて、上衝、眩暈、悪心などを発し、婦人百病を生ずるに長く持重して意外の効あるものである。瘀血による腹部の疼痛など、桃仁剤を服して益々烈しき者に用いてよい。
血熱膀胱に肺って、而も桃仁剤の適せざるものを目標とせよとは原南陽の指示である。
五苓散=膀胱の熱を去る
大香連円=黄連・木香。腸胃虚弱、冷熱不調を治す。


巫神湯[1-4]《原南陽》《龍野ー漢方処方集》
「茯苓・沢瀉各4.0g、白朮・猪苓・桂枝・黄連各3.0g、乾姜2.0g、木香1.5g」
◎婦人血暈、発熱或いは振寒、尿利減少、上衝頭眩、悪心或いは嘔吐、産後の諸証、婦人百病、血の道症。

普済消毒飲《李東垣》《外科正宗》
「黄芩・黄連・柴胡・桔梗・升麻・玄参・連翹・板藍根・馬勃・白彊蚕・牛蒡子・陳皮・薄荷・甘草」
◎頭面の腫れがひどく、目が開けられない。
◎しかも口渇・舌乾(大頭蘊)。

普済消毒飲(⇒消毒飲)《医方集解》《中薬臨床応用》
「板蘭根12g、黄芩9g、黄連6g、連翹9g、升麻3g、柴胡9g、牛蒡子9g、玄参9g、馬勃5g、白蚕6g、薄荷5(後下)、桔梗6g、陳皮6g、甘草3g」水煎服。
◎頭面の丹毒。

普済消毒飲子《東醫寶鑑》
「黄芩(酒炒)・黄連(酒炒)各5銭、人参3銭、陳皮・桔梗・玄参・柴胡・甘草各2銭、鼠粘子・馬勃・板蘭根・連翹各1銭、升麻・白殭蚕各5分」作末し、半分は白湯で調合してときどき呑み、半分は蜜で梧子大の丸剤。毎回1丸を細かく噛んで熟水で呑む。
◎天行大頭瘟を治す。


艀経湯《東醫寶鑑》
「姜黄2銭、当帰・海桐皮・白朮・赤芍薬各1銭、羗活・甘草各5」剉作して「姜3片」を入れて煎じ、沈香磨汁を少し入れて服用。
◎気血が経絡に凝滞し、臂痛する者。


封臍艾《東醫寶鑑》
「艾葉(陳)・蛇床子各1両、木鱉子2箇」作末し水と混ぜ綿でくるんで臍の上に貼り付けて紙でそれをかこってアイロンがけする。
◎臍腹の冷痛と下痢を治す。

扶脾生脈散[1-1]《医学入門》
「人参・当帰・芍薬各1銭、黄蓍2銭、五味子5分、麦門冬5分、紫菀2銭、甘草5分」


扶脾生脈散[1-2]《医学入門》《漢方治療の実際》
「人参・紫苑・黄蓍各2、五味子・甘草各1.5、当帰・芍薬各4、麦門冬6」
◎「生脈散黄蓍・紫菀・白芍・当帰」
◎血を見る後、脾胃虚弱に、気喘し、精神短少、衂血、吐血止まざるを治す。
◎此方は、吐血、血止まず、虚羸少気、或いは盗汗出で、飲食進まざる者を治す。《勿誤薬室方函口訣》
◎《張氏医通》曰く、内傷、熱傷肺胃、喘嗽、吐血、衂血者:「生脈散黄蓍・紫菀・白芍・当帰」とは此方のことなり。《勿誤薬室方函口訣》
◎吐血、先輩は此証に「阿膠」にて経験すれども、余は「白」でしばしば吐血の危篤を救へり、《勿誤薬室方函口訣》
◎目標:
瀉心湯や麦門冬湯を用いる場合よりも、一段と体力が衰微した者。

★適応症及び病名(扶脾生脈散)
[]喀血:
☆肺結核で喀血が止まらず、衰弱が加わり、呼吸が苦しく、盗汗も出て、食欲の無い者に用いる《大塚敬節》
☆止血の効を強化するには:「白」《大塚敬節》

    

扶陽助胃湯《東醫寶鑑》
      「附子(炮)2銭、乾姜(炮)1銭半、草豆・益智仁・白芍薬(酒炒)・人参・       甘草(炙)・官桂各1銭、呉茱萸・白朮・陳皮各5分、姜3、棗2」水煎服。
    ◎胃が心に当たって痛む者。

扶老理中散《備急千金要方》
「加味理中湯《備急千金要方》附子」
「附子理中湯《仁斎直指方》麦門冬・茯苓」
◎年労羸劣、冷気悪心、食飲化せず、心腹虚満拘急し、短気霍乱嘔逆し、四肢厥冷、心煩気悶、流汗するを治す。《雑病翼方》


仏手散[1]《東醫寶鑑》
「芒硝1両、白殭蚕5銭、甘草2銭半、青黛1銭」作末し、少しづつ喉中にふりかけ、重いときは竹管で吹き入れる。
◎纒喉風に特効あり。

仏手散[2]《東醫寶鑑》
「薄荷葉2両、芒硝1両、甘草7銭、桔梗・蒲黄各5銭、青黛2銭」作末し少しづつ竹管で吹き入れる。
◎風熱による咽喉の腫痛に。

 仏手散[3]=《和剤局方》「芎帰湯」


仏手敗醤湯《中薬臨床応用》
「仏手柑30g、敗醤草9g」水煎服。1日1剤、3~4回に分けて温服。
◎伝染性肝炎。


浮萍丸《東醫寶鑑》
=「去風丹
「紫背浮萍を7月上旬に採取し、竹篩いで漉して酒で乾燥し、作末して弾子大の蜜丸。毎回1丸を豆淋酒で服用。」
◎諸風・風・大風・破傷風。


浮萍散《万病回春》《古今方彙》
「浮萍、当帰、川芎、荊芥、麻黄、甘草、赤芍薬」各2銭、水煎温服し汗を出す。
◎諸風、疥癬、癩瘡を治す。


浮萍湯《万病回春》
「浮萍・当帰・川芎・荊芥・麻黄・甘草・芍薬各2銭」
◎諸風、疥癬、癩瘡を治す。
◎此方は瘡疥の発表に宜し。《勿誤薬室方函口訣》
◎但し、たいていは「葛根湯荊芥・将軍」にて治すれども、水気ありて発し兼ぬる者に浮萍湯を用いるべし。《勿誤薬室方函口訣》
◎《希藻》曰く、粉刺(ニキビ)、白屑風(フケ)、癜風(なまず)などに効あり。《雑病翼方》


浮萍湯《東醫寶鑑》
=「水聖散」
「晩春の霜を受けた浮萍」採集して綺麗な瓦の上に広げて乾燥、瓦を1日1 枚づつ取り替え、陰干しにして細末し、水で肛門を綺麗に拭いた後、薬を 塗る。
◎脱肛を治す。

敷和湯《東醫寶鑑》
「半夏・五味子・枳実・白茯苓・訶子・乾姜(炮)・陳皮・甘草(炙)各1銭、棗2枚」水煎服。
    

分気飲《東醫寶鑑》
「桔梗・赤茯苓・陳皮・桑白皮・大腹皮・枳殻・半夏(麹)・蘇子(炒)・蘇葉各1銭、草果・甘草各5分作1貼し、姜3、棗2」水煎服。
◎腫脹と喘急を治す。

分気紫蘇飲《医学入門》《古今方彙》
「紫蘇葉1銭6分、大腹皮・桑白皮・甘草・桔梗・草果・茯苓・五味子各2分、生姜」煎じ、塩(少許)入れて温服。
◎男婦、脾胃和せず、胸膈噎塞、腹脇疼痛、気促喘急、心下脹悶し、飲食を思わず、嘔逆止まざるを治す。


分気補心湯《袖珍方》《古今方彙》
「大腹皮(炒)、香附子、茯苓、桔梗、川芎、前胡、青皮、枳殻、甘草、細辛、木香、生姜、大棗」水煎。
◎心気欝結し而して四肢浮腫し、上気喘急する者を治す。


分消湯[1-1]《万病回春》《和田泰庵方函》
「蒼朮2分5厘、茯苓6分5厘、橘皮3分、厚朴4分、枳実2分5厘、猪苓3分5厘、沢瀉4分、莎草5分5厘、大腹皮2分5厘、縮砂2分5厘、木香1分8厘、燈心草、生姜」右13味。
◎中満鼓脹を成す。兼ねて脾虚、腫満を発し、飽悶するを治す。


分消湯[1-2]《東醫寶鑑》
「蒼朮・陳皮・厚朴・枳実・赤茯苓各1銭、香附子・猪苓・沢瀉・大腹皮各8分、縮砂6分、木香3分、姜2、燈心1」水煎服。
◎中満で鼓腸になった者。


分消湯[1-3]《万病回春》《漢方後世要方解説》
「蒼朮・白朮・茯苓各2.5、陳皮・厚朴・香附子・猪苓・沢瀉各2、枳実・大腹皮・砂仁・木香・燈心草・生姜各1」
◎此方は気を順らせ食滞を去り水腫を治する剤である。腹水鼓脹の初期に用いて効がある。
◎心下痞硬し小便短小、大便秘し、その腫張勢あって充実し、食後飽悶を訴え、噫気、呑酸、食を悪み、少し食するも心下部飽悶に苦しむとういう者によい。
◎体力衰え腫張、弾力無き者には用いられない。
◎此方は「平胃散四苓散枳実・香附子・腹皮・砂仁・木香・燈心草」
◎燈心草=専ら利尿の効あり。
大腹皮=気を下し、水を行らし、脾を和し、大小腸を通ず。


分消湯[1-4]《万病回春》《古今方彙》
「蒼朮・白朮・厚朴・枳実・陳皮・茯苓各1銭、砂仁7分、木香3分、香附子・猪苓・沢瀉・大腹皮各8分、生姜、燈心草」水煎。
◎中満し鼓脹と成るを治す。兼ねて脾虚し脹満飽悶を発する者を治す。
◎虚労にて喘熱、脾虚飽悶、腫を発する者は治し難し、宜しく此湯を用うべし。
◎気急には:「沈香」
◎腫脹には:「蘿葡子」
◎脇痛して面黒きは是れ[気鼓]なり:「+青皮-白朮」
◎脇満し小腹脹満して身上に血糸縷あり、是れ[血鼓]なり:「当帰・芍薬・紅花・牡丹皮-白朮・茯苓」
◎気、酸をなし飽悶腹脹するは是れ食鼓なり:「山子・神麹・麦芽・蘿葡子-白朮・茯苓」
◎悪寒し手足厥冷し、瀉して清水を去るは是れ水鼓なり:「官桂」
◎胸腹脹満し塊ありて鼓の如き者はこれ痞散じて鼓となる:「山楂子・神麹・半夏・青皮・当帰尾・延胡索・鼈甲-白朮・茯苓・猪苓・沢瀉」




分消湯[1-5]《万病回春》《龍野ー漢方処方集》
「蒼朮・白朮・厚朴・枳実・陳皮・茯苓各3.0g、縮砂2.0g、木香1.0g、香附子・猪苓・沢瀉・大腹皮各2.5g、燈心1.5g、干姜0.5g」
◎浮腫、鼓脹、或いは腹水、飽悶する者。



分消湯[1-6]《万病回春》《漢方治療の実際》
「朮5、茯苓2.5、陳皮・厚朴・香附子・猪苓・沢瀉各2、枳実・大腹皮・縮 砂・木香各1、生姜3、燈心草2」

★適応症及び病名(分消湯)
[1]噫気: 
[2]黄疸:
☆発黄を治し、腹満を消す。按ずるに是れ本、気に属する者、湿熱実証に非ず。《雑病翼方》
[3]肝硬変
[4]鼓脹:
☆此方は利水中に疏気を兼ねて鼓脹の初起に効あり。《勿誤薬室方函口訣》
[5]心下痞満
[6]心臓病
[7]腎炎(急性・慢性):
☆腎炎または腹膜炎で浮腫を兼ねた者で、体力の未だ衰弱しない者《矢数道明》
[8]水腫:
☆心下痞硬、小便短少、大便秘し、その腫、勢ありて指を没せず、脈沈実なる者に用いる。《吉益東洞》
☆食後に飽悶の意ある者に用いて大効あり《勿誤薬室方函口訣》
☆肝硬変の腹水《矢数道明》
[9]呑酸
[10]尿色<赤濁>
[11]尿不利
[12]ネフローゼ:
☆お腹がカエルの腹のようにむくんで膨満し、もだえ苦しむ者。
☆体力中等度以上の者に用いる。
☆患者は4歳の男児。
「顔は水瓜のように丸く腫れあがり、むくみのために両眼は開かず、眼瞼は赤く爛れて涙がにじみ、唇は腫れて厚く反り返り、芋虫を2つ並べたように見える。腹は臨月の夫人のように膨満して、腹水が充満し、臍が梅干し大に突出している。氷嚢に一杯水を入れてぶら下げたように腫れきった陰嚢、包皮の先端も膨れ上がってピカピカ光っている。
母親が語る患者の既往症は、昨年ひどい皮膚病に悩まされ、種々の治療をしたが治らない。風邪を引きやすく、月に2回ぐらい扁桃炎を起こして寝込む。ところが、この頑固な皮膚病が治ったと思われた頃より、全身に浮腫が現れ、急性腎臓炎と診断され、浮腫は一旦良くなったが、風邪をひくたびに繰り返し出ていた。そして今年5月にひどい風邪を引き扁桃が腫れ、むくみもひどかったので、品川の病院に入院させた。
入院後、浮腫が全身に広がり、猛烈な頭痛、嘔吐、痙攣がおこり、眼が見えなくなってしまった。最も恐るべき尿毒症を起こしたので、病院でもいろいろ治療をしてくれたが好転せず、あと1週間ぐらいの命と言われ、意識不明の瀕死の病状のまま自宅に連れ戻った。
すっかりあきらめて、今日か明日かと死を待っていると、次第に浮腫が引いて、視力も意識も回復し、不思議と思われるほど元気が出て、奇跡的にも一見しては治ったように思われた。7月一杯は家の中で起きていられるまでに好転したのであった。ところが、8月始めに再び浮腫が現れて近所の内科医の方に、尿の出が良くなる注射をしてもらった。しかしむくみは増す一方なので、主治医は思いきって強い利尿の注射をしてみようといってこれを試みた。
その前から母親は、毎日注射をしても小便は出ないし、むくみは増す一方なので、ひとつ漢方薬でも飲ませてみようと思い立ち、近くの漢薬店で容態を話して調剤してもらった。そしてこれを飲ませたのが、ちょうどその強い注射をしたのと同じ日からであった。漢方薬は3日間飲ませたがやはり尿量は多くならない。それどころか、浮腫はますますひどくなって、この1週間の中に、前述のように見るも哀れな状態になってしまった。内科医からはあの注射で小便は出るはずなのに出ないのは、漢薬など飲ませるからだとひどく叱られたので、漢薬も注射もそれきり止めた。
現在の尿量は1回わすか50mlぐらい。1日数回で、計300ml程度しか出ない。大便は軟かで、少量づつ4回ぐらいである。咽に痰がからまって喘鳴が聞こえ、暑さのためか自汗がある。
 脈は熱がないのに緊数で陽脈である。しかし浮腫の状態はブワブワと熟柿のように軟かで、押せばすぐ陥没しなかなか正常に戻らない虚腫である。胸部の聴診では「ラ」音はないが、肋膜腔の半ば以上に蓄留液があって、呼吸音は消失し、濁音を呈している。呼吸困難や動悸などは少なく、腹部は太鼓のように円く膨満。心下はそれほど硬くない・腹囲は68cmあった。舌苔はなく潤って、口渇もそれほどひどくない。
 診察を終わって、この患者の予後をどう告げたものかと思案していると、いままで死人のように一言も口をきかずに仰臥していた患者が、細い眼をかすかに開いたと思うと、コロッと起き上がって、そばで玩具を弄んでいた乳呑児の手に握られたその玩具を奪い取ると、泣くような表情でニヤッと笑ったのである。
 体力はまだある。脈は陽脈である。浮腫で陽脈を現すものはまだ治療の見込みがある。明朝、薬とりの際、持参した尿を検査してもらったら混濁黄褐色で、試薬を1滴加えると、卵の白身を煮た時のように白い凝固となって墜落した。ひどいタンパクである。
 胃苓湯、補気健中湯、木防已湯、壮原湯、分消湯などを考えたが、結局実腫と認めて分消湯を与えることにした。「茯苓・白朮・蒼朮各2.5 陳皮・厚朴・香附子・猪苓・沢瀉各2.0、大腹皮・縮砂・木香・燈心草各1.0、枳実・生姜各0.5」1日量。水500ccを加え250ccに煎じ滓を去り、毎食前3回に分け温服。これは大人量であるが、そのまま与えた。
 投薬後10日以上たっても何の連絡もないので、もはや絶望であったかと、往診時の患児の姿が時々脳裏をかすめた。ところが、2週間目に、母親が試験管に入れた尿と、服薬後の尿量表をもって、その後の経過報告に来院した。
 それによると、薬を服んで3日目から、それまで300mlであったのが、400,600、900と漸次増加し、現在ではあの恐ろしいほどのむくみはほとんどとれてしまったと。非常に喜んでの報告であった。」《矢数道明》
☆ネフローゼの患者で、浮腫があり、ことに腹水が著明で、腹部が緊満し、脈が沈んで力のあるものに用いる(漢方診療医典)
[13]腹水:
☆腹水の初期《矢数道明》
☆肝硬変で腹水の現れた者に用いた《大塚敬節》
☆もし水気が多く腹部にあつまって、腹脹の甚だしい者には三聖丸を兼用するが良い。毎服1銭(約3.7g)を白湯で1日に2回飲む。もしそれでも腹脹の減じ難い者には、3銭からさらに増量すると述べている《大塚敬節》
[14]腹膜炎の初期:
☆体力未だ衰えず、腹部の緊張が甚だしく、脈も相当力ある場合《矢数道明》
[15]腹満:
☆気、呑酸、悪食、飽悶等の症状のある腹脹満。《勿誤薬室方函口訣》
[16]浮腫:
☆<下半身>
☆腎炎の浮腫《矢数道明》
☆実腫に用いる《大塚敬節》
☆《和田東郭》は、水腫で心下痞硬し、小便短少にして、大便秘硬し、その腫に勢があって、しっかりと堅く、指で按せばしばらく凹んでも、手を放せばたちまち元の如くの肉脹し、その脈が沈実で力のある者は実腫である。分消湯を用いるのが良いと述べている《大塚敬節》


分心気飲[1-1]《和剤局方》《漢方後世要方解説》
「桂枝・芍薬・木通・半夏・青皮・陳皮・茯苓・羗活・桑白皮各2、燈心草・大腹皮・蘇葉・大棗・生姜・甘草各1.5」
◎此方は心胸間の鬱気を分け開く方剤の意を以て分心気飲と名づけられた。即ち胸膈に気欝結すれば水も亦従って停滞する。これを分解して水道より順下せしめる能がある。「三和散」は三焦の実閉に用い、此方は胃虚の傾向があって温脾健胃の意がある。又「正気天香散」は気陰分下焦に鬱するを水として引き下し、此方は気陽分肺に(つま)るものを水として引き下すものである。その症候は心下痞硬し、心下胃中に水を蓄え、上って胸中に波及し、諸症を発するものによい。
◎本方は香蘇散の変方とみなすべきものです。
陳皮・青皮・腹皮=辛温気を利し、鬱を破り
木通・茯苓=甘淡滞を遺る
羗活・紫蘇=気を散解する
桂枝・芍薬=血滞を破り
甘草=諸気を和す。

[主治]

《和剤局方》
“男子婦人一切気和せず、多くは憂愁思慮怒気に因って神を傷り、或いは食に臨んで憂感し、或いは事意に随わず、鬱抑の気をして留滞して散ぜず、胸膈の間に停りて流暢すること能わず、心胸痞悶し、胸肋虚脹し、噎塞して通ぜず、噫気呑酸、嘔吐悪心、頭目昏眩、四肢倦怠し、面色萎黄、口苦く舌乾き飲食減少して、日に羸痩し、或いは大腸虚秘するを治す。或いは病の後、胸膈虚痞するによって飲食を思わざるを治す、竝びに皆之を治す。
常に服すれば、滞気を消化し、陰陽を昇降し、三焦を調順し、脾を和して食を進む”

《牛山方考》
“此方は男婦一切気和せず、或いは七情に傷られ、或いは憂思過度、或いは事意に遂はず、痞悶嘔吐、頭眩、労倦、面色萎黄、口舌乾、飲食漸く減じ、羸痩するを治す。諸気の百病を治し、陰陽を昇降し三焦を調順するの妙剤、その效尽く述べがたし”

[目標]

《蕉窓方意解》
“此方は心下痞硬甚だしきに因て、心下胃中に水を蓄え、その水上み胸中に波及し、四肢関節に流れ、小水短渋、心胸痞悶、日々に益々甚だしくなり、脇肋虚脹し、心思も亦日々に益々欝結し、劇しきときは咽喉不利、噫気、呑酸悪心などの症を見はすものを治す。按ずるに諸気不和は心胸痞悶、脇肋虚脹するに因って也。心胸痞悶、脇肋虚脹は心下痞硬の枝葉也。心下痞硬甚だしきに因って、心胸の間に飲を蓄え、痞悶し脇肋に虚脹するなり。噎塞不通、噫気、嘔吐悪心、頭目昏眩は心下胃口及び胸中に多く飲を蓄ふるに因って也。四肢倦怠、面色萎黄は心下痞硬甚だしくして、その気上下四末に分布せざるに因って也。口苦舌乾は、胸中及び胃中に飲を蓄ふること多くして、その飲反って火を生ずるに因って也。飲食減少日漸羸痩は、心下痞硬し、心中胃中に飲を蓄ふるゆへ、胃気転ぜざるに因って也。大腸虚閉は、上部閉して下降の気なきに因って也、大便快通するは即ち、南風を得んと欲するものは、必ず北陽を開くの手段にて、用薬中此術少からざること也。総身満腫して小水不利、心胸痞悶、心下痞硬甚だしきもの此薬にて效験あること多し”

《漢陰臆乗》
“此は一切気滞より来る症によし、心胸痞悶、脇肋虚脹の症、此湯の目的也。男婦に限りはなけれども此方の効く症婦人に尤も多し、婦人気滞より来る鼓脹の状をなす者に尤も良し。一婦人夫の不身持を患へ、遂に離別して家に帰りて後腹脹遂に鼓脹の状をなす。有時常安に乞ひて此を治せしむ、衆方手を尽せど癒えず、予此方を用い、月を踰(コ)えずして癒ゆ。或いは気滞より来る水腫、心下虚痞し、此を按ずるにものなし、虚腫にして熱無きによし。此方の組方気滞をさばく所は三和散に似たれども、三和散は三焦の閉にて実症也。此は胃虚に属し、総体の所、温暖健胃の意を帯びたり。その心にて運用すべし。”
“一室女18、穀食を絶すること3年、但だ炒り豆、かき餅を食ふ。常に闇室に引籠り、人に対することを忌む。衆工手を尽くして癒えず。予此方を用ひ、《仁斎直指方》の加減(=-羗活芍薬木香・檳榔・枳殻・莪朮・麦門冬・桔梗・藿香・香附子)に従って全快せり。”

《老医口訣》
“男女共に気を詰る者、何とも合点の行かざる症を煩らはば、分心気飲用ゆべきなり。総じて不思議なる煩は気病と心得治すべし、さりながら草臥して寝起きも成らざる程の病人ならば、四君子湯に陳皮、紫蘇など加え用ゆべし。或いは補中益気湯など用ひて気力を付けて様子に因って分心気飲を用ゆべし”

《方意弁義》
“諸気滞留を治す、蓋し胸膈欝結の主方なり。分心気飲と云う薬名を考ふるに、心気を分利すと云う如くなれども、心は周身諸気の主なるによって、心の字を附したり、実は気を分利すと云う心なり。胸膈の気鬱結するを解いて順下す。天地にも鬱あり、その鬱は天曇りて人気もともに清からず、此を天地の鬱と云ふ。此の天鬱は大いに雨降り、風吹くときはその鬱散ず、人身も之に同じ、無形の気は有形に従ふによって此鬱気は水道より引下す。又此気水合一の理なり。”
“此方と正気天香湯と表裏相為す。天香湯の烏薬は下焦陰分の水を引下す。足の太陽膀胱経の薬なり、下焦の水を引くよりして気を通ず、乾姜は分心気飲に肉桂あるがごとし。此分心気飲の木通は上肺気分陽分より次第して水を引下す。さて男は陽体なり。気陽分に鬱す、女は陰体也、気陰分に鬱す。分心気飲は気陽に(ふさ)がるもの、主方とし、天香湯は気陰分に鬱するもの、主方とす。故に分心気飲は男子の主薬とし、正気天香湯は婦人の主薬と分つ也、此分心気飲と、天香湯を用ひる間は香蘇散の主なる場所也”

[治験]
《山田業精》
“本郷真砂町栗原弥四郎妻、行年40余、妊娠7ヶ月、悪寒胸満、短気咳嗽、大便秘結小便不利、渇して冷水を引く、其の脈沈緊、食に味無く四肢倦怠、気宇舒陽せず、而して咳嗽日に甚だしく、小便利せず一身腫を発す。即ち小青竜湯加石膏を与ふるに効無し、因って分心気飲を投ずれば大いに効あり、5日を出ずしてその症全く癒ゆ、此婦分娩後、乳房腫結して痛む、十全流気飲を与え効無し、乃ち更に分心気飲を投ずるに腫痛霍然として去る。時に明治14年5月中幹也”(温知医談第38号)
“本郷1丁目鍛冶職金田伊三郎妻、年41、妊娠7ヶ月咳嗽を患ひ、夜に至れば殊に甚だし、大便堅くして溶く毒下血す、小便頻数、頭肩背膂倶に疼痛、右膝亦痛、口苦く食に味なく、舌微苔、表に熱無く両脚酸疼而重、脈沈緊数、その咳たる乾咳に属す。臥せば即ち喘鳴、余以て外邪痰飲を兼ねたるの症となし、小青竜加石膏を始めとし、諸方を用ゆるにただに効無きのみならず、その咳き益々甚だしく、胸満して痛み、その声嗄す。因って之を友人に談ずるに友人以て不治となす。是に於いて壱や熟考し、乃ち分心気飲3貼を与ふるにその夜咳嗽7分を減ず。翌日に至りて咳き全く止む。随って諸症去る、   而して胎気安静ならず、故に紫蘇和気飲(当帰・川芎・芍薬・人参・紫蘇・陳皮・大腹皮各1.5、甘草・生姜各0.8)に転じ、服すること4日にして休薬す。”
    《和漢簒言要方》
“一婦人離男憂悲日あり、このごろ食せず、或いは食するときは必ずこれを吐し、体倦み微熱す。他医補気養血の剤を投じて反って憎劇す。予に治を求む。分心気飲に香附子、山梔子を加え、十八九貼にして癒うること、十に七八なり。後調理して全く癒ゆ”
“一男子二十許り、謹読の士なり。去秋依来通夜寝られず、五心煩熱し、頭鬱冒し、盗汗して飲食進まず、或いは洒々として悪寒し咳嗽す。上症当春2月に及んで癒えず。一医謂く、之れ陰虚火動なり。治するに清離滋坎湯を用ゆること十余日にして反って増劇す。予に治を求む、分心気飲を用ゆること数貼にして大効を得たり。上件の諸症は気鬱なり”
“気鬱に外邪を挟んで、咳嗽発熱などあって、労瘵の如く病むことあり。一男子十八九なり。去春より微咳吐痰し、或いは汗あり、胸膈痞悶し、時に疼痛し、口舌乾き、不食して夜安眠するこおとなし。他療効無し。予に治を求む。これを診するに沈清なり、分心気飲を用いて奇効を得たり。此は俗子滋陰降火湯の症と見る也。大いに誤り也”《医方口訣集》
“摂州一婦、平素姑に得られず、鬱を懐くこと日久し、仲春親と会し、数々失礼有り、姑に教訓さらる。その夜安臥すること能はず。次日に至って口に無倫の語を発し、目親疎を弁ずること能はず。蓋し鬱を抱いて失心風を兼ねたる症也。法当に先ずその鬱を散じ、後その虚を補うべし。《仁斎直指方》分心気飲を用い、30貼にしてその症始めて平復、帰脾湯を用い、半夏、陳皮を加へて安し”

[薬能]
《医方口訣集》
“此方や、陳皮、青皮、腹皮の辛温、以て気を利すべく、以て気を破るべし。木通、茯苓の甘淡をを以て滞を遺る可し、羗活、紫蘇は散解する所以、半夏、桑白皮は痰を導く所以、官桂、芍薬は血滞を破り、甘草は諸気を和す、蓋し鬱病の聖剤也”《蕉窓方意解》
“此方、芍薬、甘草、肉桂、大棗にて心下の痞硬を緩む、心下先の4味にて緩みたる処を、桑白皮、羗活、紫蘇、生姜、半夏、陳皮、青皮にて胸中心下に蓄へたる水を疏鑿(ソサク)して、下も胃中腸に下降せしむ。水気既に胃中小腸に下降する勢ひになりて、心胸の間稍清和するゆへ、茯苓、木通、大腹皮、燈心草にて水気を膀胱に通利するの意なり。此方中芍薬、大棗を用ゆること立方の人深く意を用ゆるの極み也、即ち大柴胡湯及び甘遂半夏湯などに芍薬を用ゆると同意なるべし。又芍薬、甘草、大棗、肉桂、生姜は即ち桂枝湯なり、桂枝湯に利気の薬を合したる方なりと知るべし。青皮は胸中の鬱気を開き、陳皮は胃中の鬱気を開くと謂う意なるべし。余今此方を用ゆるに青皮を用ひて陳皮を略す” 《方意弁義》
a“人々小便を通ぜんと欲して通ぜざれば、三焦の気塞つて和せず、又快く通ずれば三焦の気通利して和するものなり。故に(木通)を薬品の上に冠せしむ。 然からば猪苓沢瀉の類を以て水道を引導して宜しかるべきことなれど、猪苓、沢瀉は下焦にて泄すものなり。木通は竹筒の中を通ふ水の如く、上衝肺より中下焦まで真っ直ぐに水を引下す。茯苓亦之に々。三焦に塞る気を水道へ引下す効能は、此の木通、茯苓より為す。然してその2味の間へ肉桂を混じるによって水気各温を得て能く通行す。(半夏)気鬱すれば津液も行らずして痰となって閉塞す。茯苓、木通能く気水を引下すといへども痰支へて流下することなし。故に半夏を以て、支へ塞る痰をすぐひ去りて宜し。

(桑白皮)肺熱を冷まし、肺気を主る、その陽気胸膈に鬱すれば肺に鬱熱なくんばあらず、故に桑白皮を以て肺の鬱熱を冷ます時は、木通、茯苓の効いよいよ宜しきを得る也。

(青皮、大腹皮、陳皮)大腹皮、陳皮は中焦に止まって下ることを得ず。故に此2味を以て中焦をすかす。又青皮は肝気の鬱を開くその開けたる中に肝 の鬱怒の気をおさゆるもの也。肝は発生の勢あり、此気鬱することなければ周身の気の能くめぐる、此気鬱すれば邪となって亢ぶり、己が勝つところの中焦脾胃の上に乗ず。故に水気を上焦より引下す害をもなす。此によって青皮は以て肝の亢ぶりを伐つなり。

(紫蘇、羗活)紫蘇は胸膈中焦の気を開く、紫蘇の味辛しと云へども苦味を兼ねるもの也、此の苦味を以て胸膈の気を推し下す。羗活は大腸経に入って風湿を去る風剤也。羗活は風によって雲雨を吹き散らす如く、倚(かたよ)らずして周身の鬱気を開き散ず、此によって諸薬に効用を倍す。故に東垣は四君子湯、六君子湯の中へ羗活を加へ入れること伴々之れ有り。言ふ心は四君子湯、六君子湯のしめつける薬味によってその効速かならざるものは、此羗活によって開き、余薬の効を強くす。

(芍薬、甘草)気分鬱すれば血分にも瘀血を生ず、故に亦芍薬を入る、      

(姜、棗、燈心)燈心草は草茎の中の身なり。此によって心脾の間を貫通して水気を引き下す、木通の助けとなる”



分心気飲[1-2]《東醫寶鑑》
「紫蘇葉1銭2分、甘草炙7分、半夏製・枳穀各6分、青皮・陳皮・木通・大腹皮・桑白皮・木香・赤茯苓・檳榔・莪朮・麦門冬・桔梗・桂皮・香附子・藿香各5分、姜3、棗2、燈心10茎を入れて、煎服。
◎七情が渋滞したとき使うと、大・小便がよく通ずるようになる。


分心気飲[1-3]《和剤局方》《古今方彙》
「官桂・茯苓・半夏・木通各3銭半、桑白皮・陳皮・青皮・羗活・大腹皮各5銭、紫蘇葉2両、赤芍薬3銭半、甘草2銭半、生姜、大棗、燈心草」水煎。
◎男子婦人、諸気和せず、心胸痞悶、脇肋虚脹、噎塞通ぜず、呑酸噫気、嘔逆悪心、頭目昏眩、四肢倦怠、面色萎黄、口苦舌乾、飲食減少、日に漸く羸痩し或いは大腸虚閉し、或いは病の後に因り胸中虚痞して飲食を思わず等の症を治す。
◎腹脹が気に因る者は宜しく順気すべし:「猪苓・沢瀉・車前子・・木瓜・麦門冬」《万病回春》
◎水腫が気脳に因る者は宜しく気を順らすべし:「猪苓・沢瀉・車前子・・木瓜・麦門冬」《万病回春》



分心気飲[1-4]《和剤局方》《龍野ー漢方処方集》
「桂枝・茯苓・半夏・木通・芍薬各2.5g、桑白皮・陳皮・青皮・羗活・大腹皮各3.5g、紫蘇葉2.0g、大棗・燈心各1.5g、干姜0.5g」
◎諸気の不和、心胸痞悶、脇肋虚脹し噎塞して通ぜず、呑酸噫気、悪心、嘔吐吃逆、心頭昏眩、面色萎黄、口苦舌乾、食欲不振、次第に羸痩する等の症、神経衰弱、浮腫、腹膜炎、不食病等に現れる。



分心気飲[1-5]《和剤局方》《漢方治療の実際》
「桂枝・芍薬・木通・半夏・甘草・大棗・燈心草・生姜各1.5、桑白皮・青皮・陳皮・大腹皮・羗活・茯苓・蘇葉各2」

★適応症及び病名(分心気飲)
[1]噫気
[2]胃内停水
[3]咽喉不利
[4]嘔吐
[5]悪心
[6]咳嗽
☆「桔梗3.0g、半夏6.0g。」《龍野ー漢方処方集》
☆気鬱からくる咳に用いられ処方に半夏厚朴湯・香蘇散・分心気飲がある。咳のひどい者には分心気飲を用いて効をとることが多い《香川牛山》
[7]顔色悪い<面色萎黄>
[8]気の不和
☆種々の気病に:「枳殻・檳榔各2.5g、香附子6.0g」
[9]脇肋虚脹
☆胸膈緊に:「枳実3.0g、香附子6.0g」。
[10]拒食症(不食病)
☆18歳女性。3年間、不食で、わずかに大豆の炒ったものと餅をっすこし食べ、闇室にひきこもり、人に逢うことを嫌い、多くの医者の手こずった者に分心気飲を用いたが、これで全治した。《百々漢陰》
☆気鬱による不食に用いることがある《矢数道明》
[11]眩暈
[12]口苦
[13]口舌乾燥
[14]結核類似症:
☆鬱症癆と相似たり、但し癆脈微細数、鬱脈多く沈、或いは他脈を現はすと雖も。未だ嘗て微細に至らず、是れ弁となす也《後藤艮山》
☆青年室女情を忍び、或いは寡婦、尼僧等鬱気甚だしくて、肺結核に築地の症を現す者《矢数道明》
[15]鼓脹
[16]四肢倦怠
[17]小便不利
[18]食欲不振
+縮砂・神麹各2.0g。《龍野ー漢方処方集》
[19]神経衰弱:
☆憂愁、思慮、怒気等によって発病し、気が詰まりがちで、食す進まず、噫気、呑酸、悪心等の胃症状があり、大小便が気持ちよく通ぜず、衰弱の次第に加わる症、脈は沈濇で、腹の腫る者《矢数道明》
☆怒りっぽい者:「黄連3.0g」《龍野ー漢方処方集》
[20]心胸痞悶
☆憂思欝悶怒気痞満に:「-芍薬・羗活、枳殻・桔梗・檳榔子・藿香・莪朮各2.5g、香附子6.0g。《龍野ー漢方処方集》
[21]心下痞硬
[22]頭昏      
[23]乳房の腫れ
☆気鬱による乳房痛《矢数道明》
[24]呑酸
[25]妊娠咳嗽:
☆奇効がある《矢数道明》
[26]疲労倦怠
[27]浮腫
☆水気面目浮腫に:
「猪苓・車前子・沢瀉・木瓜各・麦門冬各3.0g、子2.0g」。
☆総身満腫して、心胸痞硬ひどく、小便不利する者《矢数道明》
☆全身に浮腫を起こし、小便少なく、心胸部痞満する者《矢数道明》
[29]腹膜炎:
☆鼓脹に応ずる者が多い《矢数道明》
[30]便秘
[31]腰痛:
☆気満腰痛に:「木瓜・枳殻各2.5g」《龍野ー漢方処方集》
[32]羸痩


分心気飲真方《仁斎直指方》《古今方彙》
「紫蘇葉(茎葉)3両、半夏・枳殻各1両半、青皮・陳皮・大腹皮・桑白皮・木通・赤茯苓・木香・檳榔子・莪朮・麦門冬・桔梗・肉桂・香附子・藿香各1両、甘草1両2銭半、生姜3片、大棗2枚、燈心草10茎」煎服。
◎憂思欝怒、諸気痞満、停滞噎塞して通ぜす、大小便虚秘するを治す。

分利順元散《寿世保元》《古今方彙》
      「


文蛤湯《金匱要略》
「文蛤5両、麻黄3両、甘草3両、生姜3両、石膏5両、杏仁50枚、大棗12枚」
右七枚、以水六升、煮取二升、温服一升、汗出即癒。
◎吐後渇欲特水而貪飲者、文蛤湯主之。兼主微風脉緊、頭痛。
◎頭痛、発熱悪寒、身疼、喘咳、汗出ずして煩躁し水を飲まんと欲する者は之を主る《重校薬徴》(→大青竜湯)

蚊蛤散[1]《東醫寶鑑》
「五倍子・白膠香・牡蛎粉を等分にして患部にぬる。
◎上舌にふき出るように出血するのを治す。


蚊蛤散[2]《東醫寶鑑》
「五倍子末を「白礬・蛇床子」煎じ湯に入れて薫洗した後、「赤石脂末」を芭蕉葉のうえに塗って肛門内に挿入し、又薬を入れた容器を尻にあてがってつかるようにする。
◎脱肛。