糖尿病とオレキシン

味わって食べると血糖値の上昇をおさえる

「脳の視床下部で働くホルモンであるオレキシンは、オレキシン神経が活性化されると分泌される。
オレキシンは1998年に、柳沢正史・テキサス大学教授が食欲をうながす作用を持つホルモンとして発見したものだ。

さらに、睡眠状態と覚醒作用を制御する作用を持つことでも知られている。


生理学研究所のグループは、

①マウスの視床下部にオレキシンを投与する実験を行った。
すると、筋肉が血中の糖分を取り込んでエネルギー源として利用する効果が促進されることが分かった。

②また、マウスの口から糖を摂取させて“味わう”ようにした場合と、腹部に注射器で糖を直接注入した場合とで、30分後の血糖値を比べた。その結果、口から摂取した場合の方が、血糖値が低く抑えられることが分かった。

③一方、脳でもオレキシンの働きを阻害する薬を投与してから、同じ実験を行うと、血糖値を抑える効果がほとんど無かった。
オレキシン神経を活性化させることで、血糖値を抑えることができると考えられる。

④又、エネルギー源にならない人工甘味料のサッカリンをマウスに飲ませたところ、オレキシン神経が活性化することが確かめられた。このことは、オレキシン神経の活性化が味覚刺激によって起きることを裏付けている。
オレキシン神経の活性化は、数日間同じ時刻にサッカリンを与え続けることで顕著になった。サッカリン摂取への期待感が、オレキシン神経の活性化を促すと考えられるという。

⑤血糖値を下げるホルモンとしては、膵臓で分泌されるインスリンが有名だ。

ただし、インスリンは、筋肉だけでなく、脂肪組織への糖の取り込みも促す。
箕越靖彦・生理学研究所教授によると、オレキシンには、筋肉におけるインスリンの働きを増強する効果がある。そのため、オレキシン神経を活性化すると、脂肪組織への糖の取り込みを間接的に抑えられることができ、肥満の予防にもつながるという。

⑥また、オレキシン神経は夜間、とくに睡眠中は活動が抑えられる。
そのため、夜中に何かを食べた後、すぐに寝てしまうと、オレキシンによる筋肉での糖分の利用促進が働かない。
その結果、糖分が脂肪組織に蓄えられやすくなり、肥満の原因となってしまうという。

2017年12月18日