夢遊病

近江大津の人、某が先生を訪ねてきて、同室の人を他室に退け。こっそりと先生に相談した。

 

私に1人の娘があります。歳は18で、某家と婚約をしています。ところで妙な変わった病気があって、毎夜のこと辰己の時刻になって、家人が熟睡すると、こっそり起き上がって舞をまいます。その舞は消妙閑雅で、ちょうど才妓の最も秀でた者が舞うのに似ています。

その舞は寅の刻を終わる頃になると止み、それから床につきます。私が時々、その舞をのぞいてみますに、毎晩、その曲が違っていて、曲が異なるたびに、その奇妙なことに、まことに名状出来ません。


ところで翌朝の動作、飲食は平常とちっとも違いません。また自分でもそのことを知りません。そこで、そのことを本人に話してもひどく驚いて、不思議がって信用しません。


これは鬼か、狐か、狸が化かしているのではないでしょうか?もしこれを婚家で知ったなら、結婚解消になると思います。

そこで神に祈ったり、おまじないをしたりしていますが、一向に効きません。先生は奇妙な病気の治療がお上手だということを聞きましたので、どうぞ御診察をお願いいたしますと。


先生はこれにこたえて、それは孤惑病というものであろうと、診てみるに、果たしてその通りであった。よって甘草瀉心湯を与えたところ、数日もたたないで、夜間の舞踊が自然に止み、某家に嫁して子供が生まれた」《生々堂治験》

 

 

2017年01月14日