<か> つらい症状・病名


【病状か】


Kalman症候群

(カルマン症候群)

⇒間脳疾患の1つ。
●散発性・家族性に見られ、男子に多い。
●症状:
性腺発育不全による類宦官症(主徴)
嗅覚異常(主徴)
色盲
知能低下

 


ガスがたまる

■栄養が原因の場合
<1>単なる食べ過ぎ、
<2>豆料理を食べた後、
<3>ビタミンCをたくさん摂った後、
<4>はっきりした理由なしに、いつもガスが溜まっている人は、膵臓酵素と胃液の分泌不足を考えよう。
<5>食品へのアレルギーや過敏症によっても、おなかにガスが溜まる。
<6>乳糖不耐性(牛乳に含まれている糖をうまく消化出来ない)の可能性もある。         

<7>いくつかの原因が絡まっている人もある。

 

【処方名-五十音順】
■茯苓飲

【芳香療法】(ガスがたまる)
<1>バジル
<2>ベルガモット
<3>カミルレ
<4>キャラウェイ
<5>シナモン
<6>フェンネル
<7>ジンジャー
<8>レモン
<9>マージョラム
<10>ナツメグ
<11>ペパーミント
<12>ローズマリー




ガス中毒
【漢方薬】
■麻黄加朮湯

 



カフェイン中毒
⇒カフェインを大量に摂取することで起きます。

◎中毒症状:

<1>強い不安感が特徴。

<2>パニック発作に類似症状。

①心悸亢進・不整脈

②胃腸障害

③顔面紅潮

④不眠

⑤神経質・落ち着かない

⑥興奮しやすい

⑦筋肉のケイレン

⑧緊張しやすい

⑨頻尿

⑩精神的な焦燥感

⑪疲労を感じない

⑫とりとめのない考えや会話

■具体例:
「男子生徒が受験のため、1日コーヒーを12~13杯飲んでいました。

①心臓の動悸
②手足の発汗とシビレ
③死ぬような恐怖感を訴え、救急車で病院へ。」

「彼女が飲むコーヒーは、普段は1日に1杯程度ですが、深夜に及ぶ仕事でコーヒーを8杯飲んだ夜、パニック発作で目が覚めました。それから1ヶ月ほど仕事が続き、同じようにコーヒーを飲んでいると、パニック発作を起こり、病院を訪れました。診察した医師からカフェイン中毒を指摘され、コーヒーを飲むのを止めたところ、パニック発作は起こらなくなりました」

「男子高校生が数ヶ月間、不安感が続き成績も下がってきたと受診。彼の不安は些細なことにビクつき、小さな物音にもドキッとしてしまうことで、パニック発作は無かったものの、手足の発汗・手指のふるえ・不眠などの身体症状も認められました。この高校生は最近まで、1日7、8本のコーラ類を飲み続けていて、さらに宿題が多い日は、コーラ類の他にコーヒー数杯も飲んでいたことが分かりました。医師の指導でコーラ類やコーヒーを飲むことを止めると、不安症状は消え、学校の成績も元に戻りました」

■カフェインの禁断症状:
①吐き気

②頭が重く感じる(頭重)

③熱感or冷感

④頭痛

⑤意欲・集中力が低下する

⑥不安感・抑鬱感

⑦筋肉痛

⑧視力障害

⑨精神活動の低下

⑩疲労感

⑪社交性が低下する。

◎カフェインの含有量:
コーヒー:100~150mg/cup
・インスタントコーヒー 86~ 99mg/cup
・紅茶 60~ 75mg/cup
・コーラ類 40~ 60mg/1ビン
・ココア 10~ 20mg/cup

◎耐性が生じる
「寝る前にコーヒーを飲むと眠れなかった人でも、毎日コーヒーを飲んでいると眠れるようになります。」
「頭をすっきりさせるために、1杯のコーヒーで十分だったのが、いつの間にか2杯以上飲まなければ、すっきりしなくなる」

■パニック障害:
「17人の健常者と21人のパニック障害の患者に体重1kg当たり10mgのカフェインを飲んでもらい、カフェインによる不安の程度を[神経質][恐怖感][吐き気][心臓の動悸][落ち着きのなさ][ふるえ]の5項目で測定しました(チャーネー・エール大学)
その結果、健常者の場合、カフェインによって不安の程度が増すことはあっても、あまり大したことはなかったが、パニック障害の患者は21人中15人(71%)が、パニック発作と同じような感覚に襲われました。」



カポジ肉腫
■ドキシル
「ヤンセンファーマが厚労省に2006年10月に申請した薬剤は「ドキシル」。古くからある抗がん剤[塩酸ドキソルビシン]を改良した。ドキソルビシンは効果は高いが、脱毛などの副作用が問題だった。薬剤が体内の至る所で吸収され、ガン細胞だけでなく正常細胞も攻撃してしまう。そこでドキシルではまず、ドキソルビシンを「リポソーム」という脂質のカプセルに包み込んだ。リポソームに包まれた抗がん剤は分子が大きくなる。血管の壁を通り抜けて体内に吸収されることもなく、血管内の血流に乗って循環する。
ガン細胞周辺の血管壁には正常細胞付近の血管には無い数10~100ナノ㍍の比較的大きなすき間が空いており、リポソーム製剤はこのすき間から滲みだしてガン細胞を攻撃する仕組みだ。
ただ、リポソームは体内の異物を監視して排除する血中の免疫細胞[マクロファージ]に捕まりやすい欠点がある。そこで、ドキシルはリポソームの周囲にポリエチレングリコールを結合させた。ポリエチレングリコールは水となじみやすい。血管内を通るうちに水が表面を覆うため、マクロファージはドキソルビシンの入ったリポソームを異物と認識せずに通過させる。
この仕組みはJ&Jグループの米アルザが開発。「ステルス・リポソーム」と呼ばれる。」



カリエス Caries(骨傷)
⇒疾病により硬組織が脆弱化し、侵蝕破壊されること。
(→脊椎カリエス spinal caries)

【民間療法】(カリエス)
<1>ニンニク・マムシ。

【漢方薬】(カリエス)
■黄蓍建中湯
■帰蓍建中湯 
■十全大補湯


カリニ肺炎
■仕組み
「東京大学医科学研究所の西城忍研究員と岩倉洋一郎教授のチームは、エイズ患者や臓器移植患者など免疫機能が弱まった人が罹りやすい肺炎(カリニ肺炎)の発症を抑える仕組みを解明した。
成果は2006年12/11付けのネイチャー・イムノロジー(電子版)に掲載
研究チームは、カリニ肺炎を引き起こす病原菌がベーターグルカン(β-グルカン)という多糖類で出来ていることに注目。この多糖類が人の白血球などの表面にあるタンパク質(ディクチン1)にくっつくことを突き止めた。
多糖類がくっつくと、活性酸素が発生し病原菌を殺すという。ネズミの実験では、ディクチン1を作る遺伝子を壊したネズミでは病原菌が増加し、正常なネズミでは増えなかった。」




カルニチン欠乏症
⇒生後すぐに進行性の心筋症や#低血糖症を発症する。

◎(メルクマニュアルp31)
「アミノ酸であるカルニチンは、リジンがメチル化され修飾されたリジン誘導体であり、長鎖脂肪アシル補酵素(CoA)エステルのミトコンドリアへの輸送に必要とされる。カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼは、脂肪アシル基のCoAからカルニチンへのエステル交換を触媒氏、次にミトコンドリア内膜を通して輸送される。ミトコンドリア内における第2のエステル交換は、β酸化のために脂肪アシルCoAを再生する。」
動物の細胞はカルニチンを合成できるため、動物性の食物にはカルニチンが豊富である。ヒトにとってのカルニチンの必要量は、このような内因性の生合成と食事性摂取の組み合わせによって満たされる。正常な食事による供給は約100~300mg/日で、生合成の寄与は300~600mg/日である。

カルニチン欠乏症は、筋肉壊死、オグロビン尿、脂質貯蔵ミオパシー、血糖症、脂肪肝、さらに筋肉痛、疲労、錯乱を伴う高アンモニア血症を引き起こす。

カルニチン欠乏症はカルニチンの生合成能力の低下:正常を下回る量のカルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ:細胞機構のカルニチン輸送における異常:下痢、利尿、または血液透析による、カルニチンの過剰な喪失:ケトン症や、脂肪酸化の必要性が高い状態におけるカルニチンの必要量の増加;長期におけるTPN中の、不十分な栄養摂取によって生じる。
一部の欠乏症は、カルニチン生合成、輸送,あるいは代謝(例カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ、の欠乏、メチルマロン酸性尿症、プロピオン酸血症、イソ吉草酸血症)に必要な酵素の突然変異によって生じるが、これはL-カルニチンを6時間ごとに25mg/kgを経口投与することによって補正される。
重篤な肝疾患よって生じた剛性の低下は、慢性腎不全の透析による過剰な喪失と同様に、体カリニチン濃度を低下させる。
長期のTPNで発生するカルニチン欠乏症の生化学的根拠とも関連する低血糖症と骨格筋脱力は、カルニチン療法によって消失する。」

■原因遺伝子を発見。
「生後すぐに心筋や骨格筋など筋肉に異常が現れ高い死亡率を示すカルニチン欠乏症と呼ばれる病気の原因遺伝子を、金沢大学などの研究グループが13日までに突き止めた。これまで有力な診断法がなかったが、遺伝子が特定されたことで出生後すぐに診断できるようになる。新生児の原因不明の突然死の中にはこの病気がある程度まで含まれていると推定され、治療に役立つ可能性がある。
発見したのは金沢大学薬学部の辻彰教授と中外分子医学研究所の根津淳一研究員ら。カルニチンは細胞内でエネルギーを作り出すのに不可欠な分子で、この遺伝子に異常があると心筋などに異常が出る。カルニチン欠乏症は確実な診断法が無く、患者がどの程度いるかはっきりしていない。」19991.14《日本経済新聞》
「研究グループは細胞の表面に存在し細胞外の物質を内部に取り込むポンプの働きをしている分子に注目。その1つで『OCTN2』という分子がカルニチンを取り込んでいることを発見した。実際の患者の遺伝子を解析したところ、この分子を作る遺伝子に異常がある事を確認。さらにマウスでも同様の事を確かめた。成果は英科学誌ネイチャー・ジョネティクスに発表した。
カルニチンは、細胞内ミトコンドリアという小器官が脂肪を燃やしてエネルギーを作るのに必要。カルニチンがないと脂肪はミトコンドリアに輸送されずエネルギーが出来ない。1999.1.14《日経産業新聞》


カルブンケル carbunculus
=癰(よう)
⇒相隣接している多数の毛包が化膿菌に侵されたもの。

【漢方薬】(カルブンケル)
■越婢加朮湯

■葛根加朮附湯

■葛根湯

■桂枝茯苓丸

■十味敗毒湯

■大黄甘草湯

■大黄牡丹皮湯

■調胃承気湯

■桃核承気湯

■排膿散及湯

■白朮附子湯

■防風通聖散

■防已黄蓍湯

■薏苡附子敗醤散



ガン(癌)   

canser

「ガンの語源」は、ギリシャ語でカニを意味する「カルミノース」。理由は見た目が、血管の伸びた様子がカニを連想させるから。

◎ガンと癌
漢字の「癌」と仮名で書く「がん」あるいは「ガン」は同じものと思われているかも知れませんが、正確には違っています。

「癌」は上皮細胞、たとえば胃の粘膜上皮細胞や肺の気管支上皮細胞の悪性腫瘍であり、

「がん」はこれらも含めたもっと広い意味での悪性腫瘍を言います。英語では前者はcarcinoma、後者はcancerと使い分けています。ですから、胃癌や肺癌と書き、愛知県がんセンターと書くわけです。医者の間でも混同している人もいますが、血液の癌と書いたら笑われます。

=悪性腫湯(malignant tumor)。
「合目的的でない、制御されることのない、無制限に増殖する細胞集団を腫瘍といい、この結果、個体の生命を脅かすものを悪性腫瘍という。」
増殖を繰り返す細胞の一種。→「幹細胞」

■ガン細胞の【特徴】
<1>成長の様式は、被膜形成は不充分で、他組織への浸潤性の発育を示す。
<2>摘出されても、しばしば、再発する。
<3>正常細胞の構造とは異なった細胞が増殖し、未分化である。又、核分裂が多く、しかも不揃いで、過色素性である。
<4>細胞生理学的には、解糖作用が強く、酸化作用は弱い

<5>腫瘍の毒素により、悪液質・貧血・出血など全身状態が悪化し死亡する。

<6>腫瘍細胞は、浸潤・リンパ行性・血行性に広範に転移する。(薬学大辞典p5)

<7>90%が、「上皮細胞」と呼ばれる四角い細胞に発生する。
「ガン化した上皮細胞は形が丸くなり、周囲から剥がれやすくなる。剥がれた細胞は別の場所に取り付き(=転移)、その組織に潜り込む(=浸潤)」

<8>ガン細胞は夜中に活発に増殖し、昼間は休んでいる。
(田村康二著「病気の時刻表」p20)

<9>ガン細胞には、細胞内に入った抗ガン剤を排出する強力なポンプがある。それが抗ガン剤を、細胞外へくみ出すため、耐性が出来る。また抗ガン剤の攻撃目標となるタンパク質を増産したり、抗ガン剤の攻撃目標が遺伝子本体のDNAなら、せっせと遺伝子を修復する。
ポンプは正常な細胞にも存在する。そこでは必要な栄養分やホルモンを取り込む一方で、有害な物質を効率よく排出する。ポンプの種類は100種類以上あるとされている。ポンプの構造は、タンパク質で出来た筒が、細胞膜を貫くように並んでいる」

ガン細胞の浸潤
「ガン細胞が本来なら胎児期に神経成長を促すタンパク質を“悪用”して、触手を伸ばすように成長していくことを田口明彦・大阪大第一内科研究員が米コロンビア大との共同研究で突き止めた。この物質の働きを阻害することで、癌の成長を抑える動物実験にも成功した。
田口研究員らは、ガン細胞が周囲に広がっていく浸潤の様子が、胎児の神経細胞が伸びていく様子にそっくりなことに着目。神経の成長を誘導するアンホテリンという物質と、それに結びついて細胞に「宿主を伸ばして移動していけ」という信号を伝える『RAGE』という細胞表面のアンテナ(受容体)が、ガン細胞で働いているかを調べた。
その結果、脳腫瘍を始め、肝臓・大腸ガンなどで、2つの物質が通常の数倍に増えていることを発見した。
そこで、脳腫瘍細胞をマウスの皮下に植えて、作用を抑える抗体を注射すると、ガン細胞の浸潤が少なくなり、ガンの大きさは、抗体を注射しなかったマウスの1/10に抑えられた。
一方、RAGEの量を10倍に増やしたマウスでは、ガンの大きさも約10倍になった。
転移に対する抗体の効果も調べるため、マウスの肺ガン細胞を皮下に植えて、ガンの大きさが約1.5cmほどになってから抗体を注射した。すると、注射しなかったマウスに比べ、ガン細胞の肺への転移病巣の数は約1/10になった。抗体の注射による目立った副作用は無かった。
コロンビア大では、RAGEを使ったガンの遺伝子治療の研究を進めている。田口研究員は「ガン細胞は独自の成長戦略を持っているわけではなく、正常なタンパク質を利用して成長するようだ」と話している。

◎ガンの原因となる遺伝子:
[ab1]------白血病
[APC]-------大腸ガン
[BRCA]------乳ガン・卵巣ガン
[MEN]-------甲状腺ガン・膵臓ガン
[NF]----------神経繊維腫症
[p53]---------種々のガン
[PTC]----------皮膚ガン
[RB]------------網膜芽細胞腫
[VHL]----------膵臓ガン・腎臓ガン

◎ガンの種類:
約100種あるとされるが、抗ガン剤による化学療法で完治が出来るのは数種類にすぎない。

■ガン細胞を弱める遺伝子
「米イリノイ大学のグループは、カゼのウイルスで見つかる遺伝子(E1A)にガン細胞を弱める働きがあることを確かめた。ガン細胞に組み込むと免疫機構から逃れる働きが弱まり死滅しやすくなるという。
人間やマウスなど4種類の生物のガン細胞で実験した。ガン細胞にE1Aを組み込んだところ、いずれの場合も細胞の生死を制御するタンパク質に作用したという。薬剤投与や放射線療法などに対して、ガン細胞が耐性を持ってしまう問題があったが、その有効な対策になりそうだ。」2002.9.20《日経産業新聞》

■がん増殖遺伝子を発見
「米イリノイ大学シカゴ校のグループは人間の設計図であるヒトゲノム(ヒトの全遺伝情報)の解読データを手がかりに、ガン細胞の増殖に関わる57個の遺伝子を発見した。
57個の遺伝子のうち1つは神経系の細胞の発生に関わる遺伝子で、これまでガン細胞との関係が知られていなかった。実験でこの遺伝子が作るタンパク質の働きを妨げたところ、正常細胞に影響が無いまま乳ガンや大腸ガンの成長が止まったという。」2003.7.24《日経産業新聞》

■キラーT細胞を増やし------ガン攻撃
「九州大学、東京大学、大阪大学の共同研究チームは日本人に多い胃ガン・大腸ガン・肺ガンに有効とみられる遺伝子治療技術を開発、動物実験で効果を確認した。ガン細胞を攻撃するキラー細胞を増やす遺伝子を体内に導入するという独自の方法を考案した。臨床応用までには安全性の確認など課題があるが、抗ガン剤が効きにくい各種のガンに幅広く適用出来る可能性がありそうだ。
 九大医学部の岡田全司助教授らは血液中の未熟なリンパ球をキラーT細胞に変える働きがあるインターロイキンー6(IL-6)というタンパク質に注目。 [IL-6]及びIL-6と結合する受容体タンパク質の遺伝子を、運び役である毒性を無くしたアデノウイルスに組み込んで投与する。研究チームは人間のガン患者から取ったリンパ球を導入した特殊なマウスの腹にガン細胞を移植して治療を試みた。遺伝子を導入した約20匹のマウスの80%はガン細胞が1/10以下に縮小したり消失して、100日以上生きていた。一方、アデノウイルスだけを投与した約20匹は14~20日間ですべて死んだ。
肺ガン・胃ガン・大腸ガンは日本人に多いが、抗ガン剤を使った化学療法では治すのが難しい。これらのガンはキラーT細胞が出来にくく、遺伝子の導入でキラーT細胞を増やすことによってガンを攻撃する。1997.1.27《日本経済新聞》

■ナチュラルキラー細胞(NK細胞)
<1>笑うこと、楽しい考え方はNK細胞の活性を高め、免疫力を高めガンを 消失させることも可能です。  (参照→サイモントン療法)
<2>悲しみは逆にNK細胞の活性を低下させます。
<3>手術療法・化学療法・放射線療法などはストレスをあたえるので免疫力 を弱めるだけでなく、活性酸素の量を増やし、発ガン性があります。    

<4>ストレスは、発ガン物質や農薬と同じように、活性酸素を体内で発生させる。(参照→用語:活性酸素)

■生存率=性格が左右
「がんを治療した後、物事に無頓着でわがままな患者ほど長生きするのに対し、几帳面でまじめ、自己主張の下手な仕事人間タイプは生存率が悪い。
こんな興味深い傾向を、神奈川県立がんセンターの岡本直幸・臨床研究所主任研究員らとQOL(生活の質)研究会が、のどや口の頭頸部ガン患者の追跡調査で確かめた。患者の性格が、ガンの予後に関係することを示すもので、患者の心構えにヒントを与えるデータだ。
 岡本さんらは、91年11月から神奈川県立がんセンター病院に入院した頭頸 部がん患者96人について入院時に質問紙エゴグラムで性格を判定し、9つのタイプに患者の生存率を解析した。
その結果、責任感が強く、几帳面だが、自己中心的で、思いやりに欠ける [タイプ7]と、過保護で自己主張が弱く、冗談や遊びが下手な[タイプ8]の患者ほど、生存率の低下が早かった。
 頭頸部の進行がん患者57人をタイプ別で比べると、この傾向はもっとはっきりた。[タイプ7]と[タイプ8]の患者のほとんどが2年以内に亡くなったのに、他のタイプは半分が4年間生存した。特に、わがままで自分の意見を医者や看護婦によく伝える気楽な性格の患者では、5年間の生存率が80%近くに上った。やや神経質で悩み事を抱かえる患者の生存率は中間だった。1997.《日本経済新聞》

■ガンの原因と予防
「毎日2杯のアルコールを飲み続けると、乳ガンになる可能性がおよそ25%高 まる-----。
ハーバード大学パブリック・ヘルス校から59頁に及ぶガンの 原因と予防に関する研究リポートが発表された。
(『USニューズ・アンド・ワールド・リポート』誌12月2日号)これによると
<1>喉頭ガン・食道ガン・膀胱ガン・腎臓ガン・膵臓ガンの主たる原因は:「喫煙。」
<2>体重が適正体重よりも35%以上多い女性は:
胆嚢ガン・子宮ガン・子宮内膜ガン・卵巣ガン・乳ガンに罹る可能性が55%高い。
<3>体重が適正体重よりも35%以上高い男性は:
大腸ガン・前立腺ガンに罹る可能性が40%高い。

「ガン死の要因別シェア」を見ると
<1>タバコ(30%)
  『喫煙』だけは科学的裏付け。1996.12.15《朝日新聞》
(参照→喫煙)
<2>大人になってからの食生活、肥満(30%)
<3>座っている時間が長いライフスタイル(5%)
<4>職業的要因(5%)
<5>ガン家系(5%)
<6>アルコール(5%)
<7>生殖関連要因(3%)
<8>電離放射線、紫外線(2%)
<9>塩、食品添加物、汚染物質・・(1%)
同リポートは「米国のガン死の2/3近くは、タバコ、食生活、肥満、運動不足によるもの。野菜の摂取量を増やすと乳ガンにかかる危険性を20%カット出来、スポーツや毎日のエクサイズが大腸ガン予防につながるという強力な証拠も得られた」と語っている。
「食生活を改善し、もっと体を動かして、規則正しい健康的な生活を送ればガンなどの病気を予防出来る」 などということは百も承知だが、そうすることによって「ガン死は1/3近く減らすことが出来る」のだという。
 タバコも、禁煙して5年たつと肺ガンにかかる危険性は半分に落ち、禁煙し続ければ、10~15年以内にはまったく吸ったことがない人とほぼ同じ確率になるという。「わかっちゃいるけど。やめられない」という人も、こうした具体的な数字を聞くと「来年こそは・・・」と思うかもしれない。1996.12.24《日本経済新聞》

■ウロン酸が加熱で-抗ガン物質に変化する(→ウロン酸)

■免疫抑制剤がガンを早める
「臓器移植後の拒絶反応を抑えるのに必要な免疫抑制剤は、ガンの進行を早めることが知られていたが、その仕組みの一端を米コーネル大学の放生稔博士らが突き止めた。
従来考えられていたのとは別の仕組みがあることがマウスの実験で分かった。
他人の臓器を移植すると、これを異物とみなして排除しようとする拒絶反応が起きる。免疫抑制剤はこうした免疫の働きを抑えるため、結果としてガンもホロ狩り安くなると考えられていた。しかし研究チームが代表的な免疫抑制剤であるサイクロスポリンをマウスに投与して調べたところ、免疫抑制の作用とは別に、サイクロスポリンがガン細胞に直接作用し悪化させていることを確かめた。1999.2.13《日経産業新聞》

■血圧を下げる化合物が転移を抑制
「血圧を下げる物質として開発された化合物が、ガン細胞の運動能力を奪い、転移の抑制に高い効果を示すことを大阪府立成人病センター研究所、京都大医学部と吉富製薬の研究グループが4日までにラットの実験で突き止めた。正常な細胞には働かないため副作用も無いといい、新しいタイプの抗ガン剤開発につながる成果として注目される。
ガンの転移は、増殖したガン細胞が血管にはりついて細胞のすき間から内部に侵入し、血流に乗って他の組織に運ばれて起きる。こうしたガン細胞の動きには細胞の接着や移動などを促す酵素が関与している。
研究グループは、血管などをつくる平滑筋の細胞の動きを止め、収縮を抑えて血圧を下げる化合物「Y-27632」の働きに着目。この酵素を作る遺伝子をラットの肝ガン細胞に注入して運動能力を高めた後、Y-27632を投与した。12時間後、ガン細胞は遺伝子を作る前の状態に戻り動かなくなった。
さらに、酵素を活性化したガン細胞を導入したラットに、Y-27632を投与し続け経過を観察。ガン細胞だけの場合、約2週間でがん性の腹膜炎を起こし、死亡したが、Y-27632を持続投与すると、ガンの増殖はほとんどみられず、悪性化や転移はしなかった。
同研究所の伊藤和幸主任研究員は「ガン細胞を殺すことを目的にしたこれまでの抗ガン剤と違い、運動能力だけを抑えるので副作用が出ないはず。毒性や安全性、他の組織への影響を調べなければならないが、ガンの悪性化を防ぐ転移抑制剤として有望だと思う」と話している。

■鎮痛薬に抗ガン効果
「モルヒネに似た鎮痛薬が人間のガン細胞の自殺行為アポトーシスを引き起こすことを、長崎大薬学部の植田弘師教授(薬理学)と横浜市立大医学部の研究グループが、細胞培養実験で突き止めた。特定のガン細胞にだけ作用し、正常細胞に対する副作用のない新しいタイプの抗ガン剤になる可能性があり、26日から東京などで開かれる日本薬学会で発表する。
グループは培養器内で人間の胃ガン・肺ガン・乳ガンの細胞に、『モルヒネ』や化学構造の似た鎮痛薬『ブプレノルフィン』『ブトルファノール』などを加えてガン細胞を培養。細胞増殖に対する薬の影響を調べた。
<1>ブプレノルフィン:
肺ガン・乳ガンで、ある種のガン細胞の細胞核を断片にするなど、遺伝子に組み込まれた細胞の自殺アポトーシスを誘発。
<2>ブトルファノール:
乳ガンで有意に増殖を抑制し、肺ガン・胃ガンで抑制傾向を示した。
<3>モルヒネ:
肺ガン・乳ガン、高濃度で、わずかに抑制作用。
  1997.3.25《日本経済新聞》 

■ガンと電磁波。(→用語:電磁波)
「がんになりやすいように遺伝子操作した特殊なマウスに、携帯電話と同じ電波を浴びせたところ、発ガン率が約2倍になったことを、オーストラリアの王立ア デレード病院の研究グループが米国の雑誌「放射線研究」最新号に発表した。
米国では、携帯電話で脳腫瘍や障害を受けたとして少なくとも8人が訴訟中。専門家は「動物実験で、携帯電話が出す電波の発ガン性を疑わせる結果が出たのは初めてだが、このマウス自体が新しい実験動物で、普通の動物に当てはまるかどうかは不明。今後さらに研究する必要がある」としている。        1997.5.11《日本経済新聞》


■抗ガン剤の副作用。
「抗ガン剤『テガフール・ウラシル』(商品名ユーエフティ)の服用で激症肝炎で死亡。投与開始から障害が出るまでの期間は1~5ヶ月で、ほとんどが1~2ヶ月の間に発症した。昨年6月に死亡した胃ガンの女性のケースでは、早い段階で胃の大半を切除する手術を受けた後、再発防止の為に投与が始まったが、26日目から発熱や倦怠感が見られ、その後、投与を中止したものの、約1ヶ月後に激症肝炎で死亡した。1995.4.29《日本経済新聞》より。
フルオロウラシル系抗ガン剤には、このほかにも重症腸炎・骨髄抑制などの重い副作用が報告されている。(厚生省発表)
「フルオロウラシル系の経口剤は日本でしか使われておらず、その一種であるテガフールは年間30万人が服用しているとの試算もある。米国などでは効果が確認できないとして、承認されていない。1995.4.29《朝日新聞》」      
    
■抗ガン剤による死亡例の情報公開請求
「愛知県がんセンターの福島雅典内科医長は16日、小泉潤一郎厚生大臣に対し、抗ガン剤の一種である[塩酸イリノテカン]の副作用で死亡した患者について、使用状況や死亡に至る経過などの情報開示を求める請求書を提示した。
  塩酸イリノテカンは大腸ガンや肺ガンに対する抗ガン剤。
臨床試験中に全体の4.4%にあたる55人が死亡したため、厚生省は専門医がいる病院で患者の状態を観察しながら投与するように警告している。
  福島医長は請求書で「厚生省はこれまで情報を一部しか開示しておらず、特に現場の臨床医師が最も知りたい死亡例の情報を明らかにしていない」と指摘。「数回にわたって厚生省薬務局に対して情報開示を求めたが拒否された」としたうえで、副作用とすべての死亡例についての速やかな情報開示を求めている。1997.5.17《日本経済新聞》

 

■「メス入れぬ」望んだ寅さん
「寅さん」がガンの告知を受けたのは、1991年.7月だった。2ヶ月に一度肝機能の検査を受けていた都内の病院で、肝臓にガンが見つかった。
それから5年たった今年の8月.4日、寅さんは亡くなった。映画「男はつらいよ」シリーズで人気を集めた俳優、渥美清(本名・田所康雄)さん、享年68歳。8月8日の朝刊はこう伝えている。「2年前に肺ガンだと分かり、治療を続けていた。病状は好転しているように見えたが、今年7月末に再発が分か り入院。31日に手術を受けたが手遅れだった」
 実はガンを切除する外科手術は一度も受けていない。5年前の肝臓ガンが肺に転移した。告知後に転院した都内の大学病院の医師も勧めなかったし、渥美三自身も「メスは入れないでほしい」と望んだという。
 若い頃肺炎にかかり、片肺を手術している。そのときの輸血が原因になったのか、20年ほど前にウイルス性肝炎を発症した。それが肝硬変・肝臓ガンへと進んだ。
 肝硬変などで肝臓の働きが極めて悪くなっている場合、手術はしないのが普通だ。肝臓は一つしかないし、人工臓器で代替する事もできない。切除した残りの部分が正常に働く保証がなければ、手術は出来ない。
 肝炎や肝硬変から肝臓ガンに進むケースが多く、日本では80%を占める。手術する割合は他のガンの比べ極めて低い。厚生省が10年ごとに実施しているガンの全国実態調査(89年)でも、ガン全体が66%なのに、肝臓ガンはわずか17%にすぎない。
  渥美さんはガンの栄養を送っている肝動脈そくせん療法を選んだ。治療は半年に1回ほど。抗ガン剤は、渥美さんが「体調が思わしくないのでやめた い」と希望し、半年ほどで打ち切られた。
肺への転移がわかったときには、患部に2度抗ガン剤を注入した。ガンはいったん消失したが、今年の7月26日の検査で再び転移が見つかった。31日、最後の治療も抗ガン剤の注入だったという。
「外科手術はガンの基本的な治療法だが、それがいつも最善という訳ではない。ガンの種類、進行程度、患者の体調、患者の意思の4条件がそろって初めて有効になる」と国立がんセンターの浅村尚生医師(呼吸器外科)は指摘する。たとえば肺ガンでも、抗ガン剤が効きやすい小細胞ガンでは手術をしないのが普通だし、転移が進んだ場合もまずしない。手術は全体の4割程度だ。
 93年、胃ガンのため48歳で亡くなった人気司会者の逸見政孝さんの手術は、医師の間に議論を呼んだ。
  逸見さんは都内の前田外科病院で2度、東京女子医大病院で1度、8ヶ月で計3度の手術を受けた。「発見時から悪性の進行性ガンで内臓を包む腹膜にも転移していたのに、なぜ手術をしたのか」「本人に病状が正確に伝えられていたのか」など、疑問が相次いだ。
腹膜に転移したガンの進行を食い止めるのは困難なうえ、外科手術が悪化を速める可能性がある。前田外科の前田昭二院長は「最初の手術で腹膜に転移したガンが1つだけ見えた。転移がこれ1つという可能性もゼロではない。目の前に見えているガンを残しておくのは、外科医としては難しかった」と話す。
膵臓の半分、脾臓や大腸の一部など3kg近くの内臓を切除した東京女子医大での最後の手術については、「意味があったとは思えない」との批判がある。執刀した羽生富士夫名誉教授は「末期ガンに対し外科医は無力だ。他に治療法もない。ぎりぎりの決断だった」と話している。1996.10.20《朝日新聞》

■「説明」なかった最初の手術
「逸見政孝が亡くなって3年たち、ようやく冷静に考えられるようになりました。主人は一途な人で、医師の言葉を信じて賭けたのですから、最後の手術に何のうらみも有りません。むしろ、先生には感謝しています。
 ただ、インフォームド・コンセント(説明した上の同意)は、最初の手術から取れていなかったと実感しています。今から思えば、手術の後にガンが進行している兆候が現れていたのです。でも、説明はありませんでした。
 2回目の手術のときは手術室の中に呼ばれ、「手をつけられない状態で、このまま閉じます」と説明されましたが、そんな状況ではこちらがパニックになってしまいます。何をいわれても頭に入ってこないような状態でした。
 亡くなってから、「手術はすべきでなかった」との声が聞こえて来ました。医師たちはなぜ早く言ってくれなかったのでしょう。主人は「闘います」と記者会見していたのです。だれかが一言、別の医師はこう言っていると私に知らせてくれれば、違った選択があったかもしれません。
 患者には専門知識がなく、一方、医師はなかなか本当のことを言ってくれないのが現実です。でも、私たちがもう少し知識と知恵をつけ、医師の言うなりにならず、自分なりに考えて行動するようになれば、後悔のない死に方ができる気がします。」東京都世田谷区 逸見晴恵(47) 1996.11.10《朝日新聞》

■患者が選ぶ「自分の治療法」
「ガンと分かれば、手術や放射線治療で「闘う」のが大方の常識だ。だが4年前に前立腺ガンと診断された米ノースカロライナ州のトム・アレクサンダーさん(66)は、多くの医師の意見を聞いて、「何もしない」と決心、そのいきさつを「フアーチュン」誌の1993年9月号に寄稿した。
  全米から電話や手紙が舞い込んだ。患者が書いた「患者よ、ガンと闘うな」だった。ファーチュン誌の科学記者の仕事を引退、同州の観光地スモーキーマウンテンに引っ越した矢先だった。ガン細胞を見た病理医は、たちの悪さが中ぐらいと診断した。まだ小さく、転移はなかった。
  いまなら95%治ると、泌尿器科医は強い手術を勧めた。放射線だけでも75~85%治る。インポテンスになる確率は手術で50~75%、放射線は20~40%ある。何もしない場合、5年以内にどこかに転移する確率がほぼ40%、転移すれば助からないと説明を受けた。
 それから情報収集を始めた。米国立がん研究所の電話相談で最新データが載った医療専門誌の名前を聞き、近くの図書館で調べた。平均余命の研究には、60歳で手術すると17.1年、放射線は17.2年、何もしなくても16.1年とあった。
 次々と電話をかけた医師の中に、無治療を勧める若手がいた。心は決まった。ただし、半年ごとに検査を受ける。血液中のPSAという物質が増えれば、前立腺ガンが大きくなったと分かるからだ。雪をかぶる山頂にアレクサンダーさんを訪ねた。妻のジェーンさんと2人暮らし。すこぶる元気そうだ。 PSAは大きく増えていないという。
  「このガンには、おとなしいカメ型、治療という柵で進行を止まられるウサギ型、柵をしても飛び越えてしまう鳥型の3種類がある。問題は、どの型かが初期には分からないことだ」
  4年前には、「患者があれこれ聞き回っても仕方がない」といさめる医者もいたという。「今は医者同士の意見の違いが、インターネットなどで誰にでも分かるようになり、医者も正直になった。そして、治療法を患者が選ぶように勧めるのが普通になった」
 インファームド・コンセプト(説明された上での同意)が浸透した米国でインフォームド・チョイス(説明された上での選択)が新たな目標になっていることがこの話しから伝わってくる。
「自己決定、自己責任という考え方が社会のすみずみにまで行き渡っている米国だから出来ることだ」。老年医学の研究のためニューヨークにいる岡本祐三・神戸市看護大学教授は、こう指摘する。
スタンフォード大学病院の赤津晴子医師の話しも象徴的だ。「米国では70歳のおじいさんでも自分の薬の名前はもちろん、1日何mg飲んでいるかまで知っている。ところが日本から来た働き盛りの男性は、持病の薬を毎日飲みながら、名前すら知らなかった」
 医者が教えてくれないから患者も聞かない。患者が尋ねないから医者も教えない。日本では、この悪循環が続いている。ガンのような命に関わる病気になって初めて、患者の知らないうちに治療が進められるシステムのおかしさに気付く人が多い。
 今かかっている医者とは別の医者の意見「セカンドオピニオン」を聞き、それを元に患者が自分で治療法を選択する。米国で育ちはじめた医療システムは、日本ではまだ遠い夢のように思える。100年余りの歴史を誇る米国中部の綜合病院メイヨークリニックの精神科部長でメイヨー医大教授の丸田俊彦さんは、その理由の一端をこうみる。
「米国では、私とあなたは意見が違うということを許容できる。ところが、日本人には正しい意見は1つだという思い込みがあるようで、正しいのはどっちかだなとなっちゃう。だから日本に医者は、別の医者の意見で自分の判断が間違いと分かるのではと不安なんです」
 米国の医療は、法律など社会制度の後押しと医師・患者双方の意識改革で変わってきた。まずは、医師にとことん説明を求めよう。セカンドオピニオンを取りたいと言って見よう。そうしなければ、日本の「おまかせ医療」は変わらない。1997.3.2.《朝日新聞》高橋真理子記者。

■焼却場付近でガン死亡率が高い
「サリンよりも毒性の強いダイオキシンが、日本全体をジワジワと汚染している。空気からだけでなく、魚介類からも体内に入り込み、分解されずに溜まってしまう。その最大の発生源が、どこにでもあるゴミ焼却場だった。

ダイオキシンの毒性は
①フグ毒のテトロドトキシンの10倍、
②青酸カリの10000倍、
③サリンの10倍という、合成毒で最強の毒物である。
いわゆるダイオキシンは、2つのベンゼン核が2つの酸素で結びついた『塩化ダイオキシン』と、1つの酸素と結びついた『塩化ダイベンゾフラン』の2つに分けられる。これら2つを総称してダイオキシンと呼んでいる。そして、ベンゼン核の酸素のつながっていないところに塩素が結合し、そのパターンで多くの同族体を作っている。
数ある同族体のうち、最も毒性の強いものが、ベンゼン核の2、3、7、8番目の項目に塩素が付いた[2.3.7.8四塩化ダイオキシン](TCDD)で、1g で約20000人死ぬという。
厚生省のゴミ処理に係わるダイオキシン削減対策委員会で委員長を務める、京都大学の平岡正勝名誉教授はこう説明する。「ダイオキシンは非意図的に生成されるので、管理することが大変難しく、環境に出てしまったダイオキシンを人為的に分解することは今のところ出来ません」
発生したダイオキシンは環境を汚染していく一方、脂に溶ける性質から、生物内の脂肪に蓄積され、食物連鎖の中で濃縮されていくことになる。食卓に上がる魚介類も、高濃度のダイオキシンで汚染されてしまっているのだ。
分解出来ない為、発生自体を抑制することが重要となる。

現在知られているダイオキシンの発生源は
(ゴミ焼却施設)のほか、
(製鋼所の金属精錬過程)、
(紙パルプの塩素漂白過程)、
(自動車の排ガス)などである。
  日本では国土が狭いため、ゴミのほとんどが焼却処分されている。諸外国に比べて異常に数が多い。世界中の焼却場の2/3近くの1860基が日本 にある。----“誰もがすでに許容量の半分を摂取”-
6月末に、厚生省の研究班が、ダイオキシンの体重1Kg当たりの1日許容量を、欧米なみの値にすることを提案したが、現在の日本人は、すでにその基準値の半分の量を、毎日体内に取り込んでいるらしい。
 愛媛大学農学部生物資源学科生物環境保全学講座の脇本忠明教授が説明してくれる。
「欧米なみの値として提案された1日許容量は、体重1Kg当たり10ピコg(1ピコグラム=1兆分の1g)。60Kgの人だと、1日に600ピコグラムまでの 摂取が許容範囲だということですが、日本の大気には、都会・農村の区別なく、1m3当たり1~3ピコグラムのダイオキシンが含まれていて、多い人だと、呼吸により、1日45~60ピコグラムを吸収しています。他に、魚・肉・野菜などの食べ物などにもダイオキシンが含まれているので、それらをすべて計算すると、平均的な日本人で、1日約300ピコグラム摂取していることになるのです」(Quark number 172/1996.10/ p89~)
   
■レトロウイルスでがん化
「米ピッツバーグ大学ガン研究所のE・ゴレリック教授らは、マウスの悪性黒色腫から取り出したレトロウイルスが、正常な細胞をがん化することを発見した。
 このウイルス自体はガン遺伝子を持っていないため、正常細胞の遺伝子に入り込んで、細胞内のガン遺伝子が、ガン抑制遺伝子に異常を引き起こしているとみている。1997.5.19《日経産業新聞》
   

■免疫とガン
「ガン患者が感染症にかかったら、ガンが消えた。どうやら、感染に伴う免疫反応がガン細胞をたたいたらしい-------。そうした実例からガン患者に細菌の成分や合成化学物質を与え、免疫力を高める新たな治療法が始まった。ガンに対する免疫反応を狙って高める事は出来ないので『非特異的免疫療法』と呼ばれる。1980年に日本で爆発的に売れたクレスチンやピシバニールなどの免疫賦活剤がこれに当たる。
“ただ、免疫力で病気を治したい時、非特異的治療だけでは十分な効果は期待出来ません。麻疹に麻疹ワクチンを使うように、ガンにはガンに対する免疫力を上げる治療法が必要です”と珠玖洋・三重大教授(腫瘍内科学)は言う。それが『特異的免疫療法』である。
米国立がん研究所のローゼンバーグ博士は80年代半ば、特異的免疫療法に近い治療を始めた。ガンの周囲に集まる腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を取り出し、生理活性物質を混ぜて数を増やした後、患者の体内へ戻す『TIL療法』だ。進行したメラノーマ(悪性黒色腫)の患者へTIL療法を実施したら、約4割の人のガンが半分以下の大きさになった。たくさんのTILが、ガン組織を攻撃したおかげだと考えられる。
免疫系がガンを攻撃出来ることは、もはや誰の目にも明らかだった。だとすれば、ガン細胞は「私は排除すべき異物ですよ」と免疫系へ知らせる目印を身につけているはずである。
この目印を『ガン抗原』といい、“見つかればガン研究の分野では最大級の業績になる”とさえ言われている。
それがここ10数年で大きく進展した。まず、ベルギーのブーン教授が1991年、メラノーマから、世界で初めてヒトがん抗原をつり上げたと発表した。やや遅れてローゼンバーグ博士も、メラノーマから別のヒトがん抗原を発見した。メラノーマに関しては現在、約20のがん抗原が見つかっている。
一連の抗原の中には、免疫系の攻撃を導くものと、そうでないものがある。岡山大の中山睿一教授(免疫学)は“前者がガン拒絶抗原といって、今特に注目されています。この抗原を使えば、ガンに対する免疫力だけを強める真の特異的免疫療法が可能になるならです”と話す。1998.3.1《朝日新聞》
   

■がん細胞に“穴” (特殊抗ガン剤+超音波)
「福岡大医学部の立花克郎講師(39)(第一解剖学)らのグループが30日、試験管内でヒトの白血病のガン細胞に光で作用する特殊な抗ガン剤を加えて超音波を照射すると、多数の穴や陥没が出来ることを初めて確認したと発表
   


   
■ガン細胞集中破壊------中性子反応の化合物を開発
「中性子が当たるとアルファ線を放出し細胞を破壊するホウ素を、ガン細胞だけに高い濃度で取り込まれるよう合成した化合物の開発に、筑波大臨床医学系と旭川医大の共同研究グループが成功した。1996.8.27《日本経済新聞》」
   

■中性子捕捉療法
「学習院大学理学部の中村浩之教授らのチームは、中性子線でガン細胞を叩く『中性子捕捉療法』の治療効果を高める手法を開発した。
患部にだけ薬剤を届けるDDSをつかってホウ素化合物を注射する、マウス実験でガンが1/3に縮小した。
中性子捕捉療法は、がん放射線療法の一種で、現在は原子炉から出る中性子線を利用している。国内では脳腫瘍や皮膚ガンなどに臨床研究がある。
あらかじめ患者にホウ素化合物を注射しておいて中性子線を患部周辺に照射すると、ホウ素からアルファ線が飛び出しガン細胞を攻撃する仕組み。従来はホウ素化合物だけを血液中に注射していたが、ガン細胞以外の場所にも拡散するので効果が限定されていた。」20077/5産業
   

■ガン抑制遺伝子で、ガン細胞が消失
「肺の進行ガン患者の患部に「ガン抑制遺伝子」と呼ばれる遺伝子を、注入する新しい治療により、ガン細胞が消失するなどの効果があることを、米テキサス大のジャック・ロス博士らの研究グループが確認した。米科学誌ネイチャー・メディシン9月号に発表する。乳・大腸ガンなど、他の進行・早期癌への応用が期待されている。
多くのガン患者の場合、「P53」というタンパク質を作る遺伝子が欠損していることがこれまでの研究で分かっていた。この遺伝子が正常な場合は細胞がガン化するのを妨げる働きがあり、ガン抑制遺伝子を呼ばれている。
同博士らは、他の治療法では効果がなかった9人の肺の進行ガン患者の患部に、ウイルスを遺伝子の運び屋(ベクター)にしてP53の正常遺伝子を注入する治療を1日1回、5日間続けた。
経過観察期間をおいて調べた結果、9人のうち、1人はガン細胞が完全に消失、2人は約半分以上縮小、3人は縮小はしていなかったものの進行が止まるなど、6人ではっきりとした効果を確認出来たという。1996.8.30《朝日新聞》」
 


■生きていてもつらい-------終末医療
「今月初旬、日本緩和医療学会と日本サイコオンコロジー学会の合同総会が広島市で開かれた。
「終末期のがん患者の希死念慮について語ることは、これまではタブーでした」。パネリストの1人、聖隷三方原病院ホスピス(静岡県浜松市)の医師、森田達也さんはこう切り出した。『希死念慮』とは、死にたいという思いのことだ。
森田さんは国内外の研究を基に分析した希死念慮の実態を説明した。終末期患者の思いとしては、決してまれではなく、心身の苦痛を和らげる緩和医療を受けている患者にも死を望む人がいるという。
痛いから「死にたい」と思うのだと考えられがちだ。しかし、「痛みよりも全身倦怠感や呼吸困難などが患者にとってより苦痛な場合がある。さらに実存的苦痛がより大きく関係している可能性がある」と森田さんは話した。
実存的苦痛とは、簡単に言えば、「現在に意味がない」と思うこと。例えば、食事やトイレが自分で出来ず他人に依存するようになったり、治る見込みのない自分は無価値だと思ったりすることだ。
国立がんセンター中央病院(東京都中央区)の精神科医、明智龍男さんは53歳の男性患者の実例を紹介した。
肺のガンが骨にも転移。食欲不振や不眠も伴っていた男性は「みなさんに迷惑をかけるばかりで、申し訳ない。生きていても、つらい。早くいかせて頂きたい」と申し出た。
同病院精神科で診察し、抗うつ剤や精神療法など、ウツに対する治療をすると希死念慮は消えた、という。
明智さんはちは「死にたい」と望んで同科に紹介されたガン患者362人の症例を検討。57%が「欝病」と診断され、29%は意識障害を伴う「譫妄」だった。
死への願望を「『ガンなんだからやむを得ない』と見過ごすのではなく、鬱状態なその精神医学的な問題に目を向け、そうであれば、適切なケアをすべきだ」と明智さんは強調した。
治療では身体的な痛みは取れても、終末期には譫妄や呼吸困難、全身倦怠などが取りきれない場合もある。
こうした苦痛を緩和するために、薬剤を使って患者の意識を意図的に低下させる「鎮静(セデーション)という治療がある。様々な方法が採られるが、中には最後まで薬で“眠っている”場合もある。
国立がんセンター東病院(千葉県柏市)の医師、志賀泰夫さんは、国内の鎮静の現状について述べた上で、鎮静をする際には▽いつ、誰に、どのような説明をして意志決定するのか▽鎮静が本当に必要な状態かどうかの確認▽使う薬剤のや使い方(持続的or間欠的)といった具体的な方法をどうするか------などの課題を指摘した。
患者が死を望む時、どう考えるべきかぬついて、生命倫理の面から話したのは京都女子大国際バイオエシックス研究センターの星野一正さん。安楽死と医師による自殺幇助についても述べた。
事例として紹介したのは、医師による患者の自殺幇助が容認されている唯一の法律、アメリカの「オレゴン州尊厳死法」。星野さんは「命を絶つ薬の処方箋を書くまでの待機期間に、医師は思いとどまるよう何度も患者を説得する義務があるなど、多くの歯止めがかかっいる」と説明。国内でも鎮静をするにしても、十分注意して行うべきだと指摘した」

■臨床試験、積極的に参加
「ジョージワシントン大医療センターで、進行の早い炎症性乳ガンの治療を受けてきたフリーライター、アイリス・J・ポートニーさん(48)は、骨髄移植を伴う大量化学療法」の臨床試験への参加を真剣に考えた。化学療法と手術で姿を消したかに見えた乳ガンが、まだ残っていたからだ。
この治療法は、まず患者に通常の数倍もの強力な化学療法を行う。その後、あらかじめ凍結して置いた自分の造血肝細胞を移植する。この細胞は白血球などのもとになるもので、破壊された白血球などに代わり、増殖する。白血病など血液のガンで普及している方法だが、「乳ガンのような固形ガンにも効果があるのでは」と、注目された。
既に、米国の一部の医療機関で行われているが、治療効果はまだ証明されていない。
このため、数種類の臨床試験が行われている。大きく分けて2種類あり、1つは、患者をその治療を行う群と行わない群とに分けて、治療成績を比べる無作為試験。もう1つは、全員に治療を行い、それによる奏功率(腫瘍の縮み具合)などを何年もかけて調べる方法だ。
無作為試験に参加した場合、自分が振り分けられる可能性がある。
ポートニーさんは主治医から「あなたはこの治療が絶対に必要だから、無作為試験はやめた方がいい」と言われ、同センターで後者の臨床試験をしていた。
アメリカでは、臨床試験についての情報の入手が容易だ。臨床試験を専門に行うクリニックもあれば、雑誌などでも参加募集が行われている。国立がん研究所のホームページでは、患者が病名や進行度などを入力すると、該当する臨床試験の一覧が現れ、その詳しい内容や資格基準、連絡先なども分かる。
患者支援団体「米国乳ガン連合」の元副会長で、乳ガン患者のジェーン・リース・コルバンさんは現在、国立がん研究所の臨床試験水深事務局顧問を務める。「ガンの治療法を進歩させるには、臨床試験に参加するしかない。私たちは患者に、臨床試験について情報を集め、参加を検討するように話しています」
ポートニーさんは臨床試験に参加し、今年1月、大量化学療法と骨髄移植を受けた。放射線治療を毎日受けているが、腫瘍の縮小などの経過は順調で、すこぶる元気だ。
心残りは、退院の1週間後の2月、母親が突然亡くなったこと。心配をかけてはと、自分の病気のことはまだ話していなかった。乳ガンを克服した母親と、同じ喜びを分かち合う機会が永久に失われてしまった。
「この治療の結果、自分がどうなるかは分かりません。ただ、仮にうまくいかなかったとしても、私の経験が人の役に立てばいいと願っています」
アメリカでは、がんと診断され、治癒した人や闘病中の人を「サバイバー(生き残った人)と呼ぶ。「患者」や「犠牲者」ではなく、そこには、「よりよく生き抜こうとする人」という前向きな姿勢がある。」
「自分に自身を持ち、まだ生きているってことを忘れないのがコツ」。明るく笑うポートニーさんには、サバイバーという言葉がよく似合ってる。

■「外来型」化学療法が普及
「大きな窓からやわらかな光が射し込み、ゆったりとしたソファが並ぶ。ソファごとに備え付けられた小形テレビを見ている女性もいれば、楽しそうに語り合っているカップルもいる。
部屋の一角には看護婦の詰めるカウンター。待合室のようにも見えるが、ソファの傍らには点滴の袋がぶら下がる。抗ガン剤治療(化学療法)を受けている外来患者だ。
インディアナ州のインディアナ大がんセンターにあるこの部屋は、「開放型点滴区域」と呼ばれる。ベッドのある個室も使えるが、多くの患者は、ここで数10分~3時間ほどの点滴を受け、その日のうちに帰宅する。
米国での化学療法は、この病院に限らず、ほとんど通院で行われる。日本では、一部の癌専門病院を除き、入院が当たり前で、対照的だ。
その理由の1つは、米国の医療保険制度。医療費を抑えるため、保険から支払われる医療費が病気ごとに決まっていることが多い。米国での入院費は日本に比べて高額なため、患者に支障がない限り、必然的に医療費の低い外来治療が選ばれる。
同大がんセンター長のスティーブン・ウイリアムズさんは「外来治療の普及は、胃慮言う日の問題だけではない。多くの患者は『ベッドでじっと寝ているのは苦痛。家にいたい』と思っている。」と説明する。
ジョージア州内に22のクリニクを持つ医療グループ「ジョージア・キャンサー・スペシャリツ」。ラルフ・E・ハウさん(77)は。今年5月、左肺にガンが見つかり、自宅から通いやすい同グループのクリニックで、化学療法を受けている。
趣味のパソコンで電子メールをやり取りし、妻の運転する車で教会などへ出かける。化学療法が始まった今も、生活は変わらない。「医師から様々な副作用の可能性を聞いていましたが、頬がピンク色になった程度。今のところ吐き気などもありません」とハウさん。
同クリニック医師のリチャード・S・レフさん(腫瘍学)は「外来治療を行う前提は、絶対に吐を招かないこと。副作用の少ない抗ガン剤の開発と、抗吐剤の進歩のおかげで、それが可能になった」と説明する。
ハウさんが受けている化学療法も、カルボプラチンと塩酸ゲムシタビンという副作用の少ない抗ガン剤の組み合わせで、抗吐剤も定期的に服用している。塩酸ゲムシタビンは投与時間が1回30分程度で、外来に適した長所もある。
患者が在宅時に質問があったり、具合が悪くなったりした場合、クリニックに電話すれば、夜間でも腫瘍専門の医師や看護婦のポケベルに転送され、適切な指示や助言を受けられる。
「万一の時も安心」と話すハウさん。」

■1日1時間歩く
「1日に1時間程度あるく人とは、ほとんど運動しない人よりも、ガンで死亡する危険性が半分以下という調査結果を東京ガス健康開発センターの沢田亨・主幹研究員らがまとめた。10月4日から横浜市で開かれる日本癌学会で発表する。
沢田研究員らは、1分間に体内に取り込める酸素の最大値を示す「有酸素能力」が、ガンにかかる危険性にも関係するとみて、同社社員9039人の有酸素能力の値を、低い順に2~4群に分け、癌による死亡者数の違いを約16年間、追跡調査。肥満や喫煙、血圧の影響も考慮し、ガン死亡の危険性を計算した。
有酸素能力が最も低い1群は、最高の4群に比べ、ガンで死亡する危険性が約2.4倍に上った。2群に比べても約1.3倍。喫煙者との関係を見ると、1群に属し、1日20本以上たばこを吸う人は、4群でたばこを吸わない人に比べ、危険性が約5.1倍だった。
有酸素能力は、運動週間を反映するとされ、1群は「ほとんど運動しない」に相当。2群は「1日20分程度の歩行」、4群は「1日1時間の歩行と週末の運動」に当たるという。

■光でガンを攻撃
「東京大学の研究グループは光を当てると活性酸素を発生してガン細胞を死滅させる効果がある新しい化合物を開発した。この化合物はプラスの電荷を持った高分子を脂質で包み込んだ粒子(ミセル)で、ガン細胞だけに効率よく結合する性質を持っている。
開発したのは東大工学部の片岡一則教授と相田卓三教授らのグループ。まずポルフィリンという色素の外側にデンドリマーという分子をつけた高分子を作った。ポルフィリンは光を当てると活性酸を放出して、ガン細胞を攻撃する。
デンドリマーは外側がプラスに帯電しているためマイナスに帯電しているガン細胞の表面に付着しやすい。培養したガン細胞を使った実験では、通常のポルフィリンだけの場合に比べてガン細胞を殺傷する能力は、約28倍強くなる」2001.1.16《日経産業新聞》

■ナノ材料でガン細胞を攻撃
「新華社電によると、中国武漢大学の李世譜教授は、一部のナノメートル材料が、正常な細胞組織を少しも損なわずにガン細胞を殺し、腫瘍の成長を抑えることを発見した。骨格中の成分として知られる「オキシリン灰石」をナノ(十億分の1)メートルサイズの微粒子にした材料で、ガン細胞に対する有効な武器であることが分かった。
北京医科大学などによる細胞生物学試験で、ヒトの肺ガン、食道ガンなど複数の腫瘍細胞を殺せることが示された。マウス体内の腫瘍にオキシリン灰石ナノ粒子ゾルを注射した動物実験では、7日後の腫瘍抑制率は66.1%で、外見上はコブが消えていた。」2001.1.18《日経産業新聞》
   

●発ガン性のある成分:
<1>サイカシン:
・ソテツ(蘇鉄)に含まれる。
<2>ピロリジンアルカロイド:
・セネシオに含有。
<3>サフロール:
①大茴香油、樟脳油、サッサフロス油、桂皮油に含まれる。
②サフロール0.1~0.5%含有飼料をラットに2年間投与すると、肝ガンを生じる。
<4>プタキロシド:
・ワラビ(蕨)に含まれる。
<5>ホルボール:
・ハズ(巴豆)に含有。プロモーターとして作用する。
<6>3ニトロベンズアントロン:
・ディーゼルエンジンの排ガスから出る。
・ベンゾピレンの数千倍の強さの変異原性がある(エームズ試験)
<7>ディーゼルエンジンの排ガスから新しい発ガン物質
「ディーゼル排ガス中からこれまで見つかっている『ベンゾピレン』などの発ガン物質よりも強力な変異原性を持っている『3ニトロベンズアントロン』を発見」1997.11.26《朝日新聞》

抗ガン剤(西洋薬)の種類:
<1>アルキル化剤:
1.細胞の中に入り、核の中にある遺伝物質DNAを壊す。
2.毒ガスの転用。毒ガスは細胞の核に障害をもたらす。
<2>代謝拮抗剤:
・細胞の合成を阻害する。
<3>抗生物質:
<4>アルカロイド剤:
・細胞分裂を止める。
<5>白金系:
・ガン細胞自体を痛めつける。
<6>合成ホルモン剤:
・ガン細胞を活性化させるホルモンの合成を阻害させる。


■天然の抗ガン剤を合成
「米イリノイ大学のグループは、アンフィジノールと呼ばれる天然の強力な抗ガン成分を人工合成するのに成功した。
磁気共鳴装置などを使って分子構造を分析、分子の合成経路を逆にたどる「逆合成解析」という手法を使って『アンフィジノールT1』と呼ばれる成分を合成した。
アンフィジノールは細胞を攻撃する働きが強いことで知られるが、特定の海洋微生物から微量しか得られず研究が進んでいなかった。2003.2.19《日経産業新聞》

■ヘルペスウイルス
「米ニューヨーク大学の研究グループは、普通の組織を傷つけずにガン細胞だけを殺すヘルペスウイルスを作り出した。脳炎を引き起こすヘルペスウイルスの遺伝子を操作して感染力を弱らせた上で、ガン細胞を効率よく殺す突然変異体を選び出した。
ヒトの前立腺ガン細胞を移植したマウスで効果を確認した。遺伝子操作ウイルスを注入したところ、34日後に4割のマウスで腫瘍が完全に消えた。ガン細胞以外の普通の組織にはキズは見られなかったという。」2001.7.19《日経産業新聞》

■増殖抑制の可能性
「東京都立大久保病院の丸山道生外科医長らは成長の遅いガン細胞によって、成長の早いガン細胞の増殖を抑制する可能性を突き止めた。
皮膚に出来る悪性の腫瘍「メラノーマ」と進行の遅い肺ガン細胞をマウスの背中に移植する実験で調べた。メラノーマの細胞だけを移植するとマウスは30日足らずしか生きられないのに対し、両方を混ぜた場合の生存日数は50日程度で、進行の遅い肺ガンだけの場合とほとんど変わらなかった。
あらかじめ加熱処理して働きを失わせた肺ガン細胞をメラノーマ細胞と混ぜて移植しても生存日数は延びず、延命効果は見られなかった。実験皿で2種類のガン細胞を一緒に培養した場合でも、メラノーマの増殖速度が遅くなることはなかった。
研究グループはガンの増殖が抑制されるのは、進行の遅いガン細胞が生きたまま体内で一緒に存在する場合だけとみている。今後他のガン細胞の組み合わせで同じ現象が見られるか調べるとともに、ガンが抑制される詳しい仕組みの解明に取り組む」2001.10.10《日経産業新聞》

■ガン攻撃力100倍以上
「協和発酵は26日、ガンなどを攻撃する力を従来の100倍以上に高めた抗体医薬を生産する新技術を開発したと発表した。抗体に含まれる糖を減らすことで、ガン細胞などを殺傷する力を高めた。少ない量でも効果が高い薬の開発に役立つ。
抗体はタンパク質に糖鎖が結合した構造をしており、体内の免疫細胞をガン細胞などに引き寄せて攻撃させる作用を持つ。抗体の構造を部分的にかえることで、ガンの他アレルギーや感染症など幅広い病気の治療に応用できる。新技術で生産した抗体は従来に比べて「フコース」という糖が少ない。ガン細胞などの殺傷能力を示すADCC活性が従来抗体の100~1000倍高いことをマウス(小型ネズミ)などを使った動物実験で確認した。」2001.12.27《日経産業新聞》

■抗ガン剤を使わない方法
「リンフォテック(東京03-5940-0977関根社長)は、大井博道・元大阪大学助教授と抗ガン剤を使わずにガンの腫瘍を縮小させる技術を開発特許出願した。
薬剤でガン細胞の分裂・増殖を促すタンパク質の働きを阻害して、体内の免疫力を高めるリンパ球を投与する方法。」2003.8.13《日本経済新聞》

■糖尿で
「糖尿病と診断されたことがある人は、ガンにもなりやすい傾向があるとする報告を厚生労働省の研究班(主任研究者:津金昌一郎国立がんセンター予防研究部長)がまとめ、2006年9/25付けの米医学誌「内科紀要」に発表した。
糖尿病でない人と比べ、発症確率は平均で男性(1.27倍)、女性(1.21倍)だった。
40~69歳の男女約10万人を1990年~2003年まで追跡した大規模疫学調査で分かった。糖尿病と診断された4667人、何らかのガンを発症した者6462人などを分析してリスクを比較した。
ガンの種類別にみると
男性-肝臓ガン(2.24倍)
男性-腎臓ガン(1,92倍)
男性-膵臓ガン(1.85倍)
女性-肝臓ガン(1.94倍)
女性-胃ガン(1.61倍)
糖尿病になると膵臓からインスリン分泌量を上げようとするあtめ、[高インスリン血症]になったり、インスリンと似た働きをする物質の分泌量が増えたりする。このため、これらが肝臓や膵臓などで、ガン発症の刺激となり、ガン細胞の増殖を促すと考えられるという。
日本国内の糖尿病患者数は740万人と推計されている。

■兵糧攻め・・・栄養路遮断
「バイオベンチャーのジャイファーマ(新宿区)は、ガン細胞を兵糧攻めにする新薬候補物質を開発した。ガン細胞に栄養分のアミノ酸を取り込むタンパク質の働きをジャマし、ガン細胞を栄養不足にして死滅させる。
スキルス胃ガンの治療薬として開発。
ガンの治療に使う抗ガン剤は成分が正常な組織にも作用して重い副作用を引き起こすことが多い。ガン細胞をねらい打ちにすれば副作用を抑えられる。新薬候補品はガン細胞に特異的に表れるタンパク質『LAT1』に反応するアミノ酸に似た化合物。
LAT1はガン細胞の表面に表れ、細胞が生きるために体外から調達する栄養素、「必須アミノ酸」などの栄養分を細胞内に通過させたり老廃物を細胞外へ排出したりする出入り口の役割を担っている。
新薬候補品はこの出入り口をふさいで、ガン細胞に栄養分が入るのを防ぐ働きがある。そしてガン細胞は栄養を得られず、増殖が止まりやがて死滅する。
膀胱ガンでネズミを使った前臨床試験を実施。末期状態のガン細胞が2週間で活動停止したのを確認した。また、スキルス胃ガンの培養細胞を使って新薬候補品の効果を調べる試験をしたところ、投与して2週間後、細胞が増殖せずに死んでいたという。
スキルス胃ガンは患者数が少なく、希少疾病用医薬品として助成金の交付や承認を得る際に優先的に審査を受けられる可能性がある。このため、まずスキルス胃ガンで治験を始める。2008/1/4産業

■低酸素で増殖
「2009年、曽我朋義・慶応大学教授と国立がんセンターヒガシ病院のチームは、ガン細胞が酸素の薄い環境で活発に増殖できる仕組みを盛っていることを突き止めた。
寄生虫や微生物が低酸素状態で働かせる代謝経路で、人の細胞には通常無い。この働きを阻害できれは、新たな抗ガン剤の可能性がある。
研究チームは大腸ガンと胃ガンの患者から採りだした細胞から、エネルギーの代謝関連物質をすべて取りだし、詳しく解析した。
寄生虫や微生物では『コハク酸』という代謝物質が増えるが、ガン細胞でもコハク酸が増えることを確認。それ以外にも『リンゴ酸』や『フマル酸』などの代謝関連物質が増加していた。寄生虫などは低酸素状態で「嫌気呼吸」をしており、この際に活用している代謝経路と同様のパターンを示した。
寄生虫などがも低酸素状態で働く代謝経路は、回虫向けの「虫下し薬」で防ぐことができる。国立がんセンター東病院がこの虫下し薬を試したところ、ガン細胞を殺す働きが有ることが分かった。」
  

【禁忌】
ガン患者は、リンパマッサージは不可です。
「なぜならリンパから転移して二次ガンを発生させるおそれがあります。」
       (参照→二次ガン)
  

■環境要因が影響
「ガンは、遺伝子の病気だ。人体を構成する約60兆個の細胞の1つに、遺伝子の変異が次々に蓄積することで、悪性のガンに育っていく。決して一朝一夕に、出来る訳ではない。その仕組みの解明は、ガンとの闘いの中で、最大の研究テーマになってきた。
関東地方の病院で5年前、50歳代の女性が乳ガンと診断された。「母も乳ガンで亡くなった」といい、遺伝子を検査すると、乳ガン関連遺伝子『BRCA2』に、特有の変異が見つかった。親からの遺伝で受け継ぐことが多い変異なので、妹も検査を受けてみると、同じ変異があった。その年のうちに、この女性は亡くなり、妹は「私も乳ガンに-----」と、不安を募らせたが、57歳になった今も乳ガンとは無縁だ。
「決して珍しいことではありません」。この家族の遺伝子を検査した癌研究会ガン研究所(東京都豊島区)の三木義男・遺伝子診断研究部長は、そう語る。「1つの遺伝子だけでは、ガン化を説明できない。環境も複雑に絡む。体内にはもともと、ガン化を防ぐ仕組みもある」という。
なぜ、ガンになるのか?
最初の手がかりは、1775年に見つかった。英国の外科医が「すすにまみれて働く煙突掃除人には、ガンが多い」と発表。環境中の発ガン物質が犯人として浮上した。140年後、日本の研究所が、これを裏付けた。東京大の山極勝三郎教授(1863-1930)が、ウサギの耳のコールタールを塗り人工的に腫瘍を作ることに初めて成功。これをキッカケに発ガン物質の研究が本格化し50年代、発ガン物質犯人説がほぼ確立した。
[発ガン物質]
「スス」やカビ毒、焼き魚のコゲ、タバコ。アスベストなど3000種類以上が知られている。遺伝子に直接働いて変異を引き起こす物質(イニシエーター)と、遺伝子に直接は働かないものの、変異を促す物質(プロモーター)の2種類がある。イニシエーターは遺伝子の本体DNAの構造を変化させる。プロモーターは、変異した細胞の増殖を促し、その過程で遺伝子の複製ミスなどをさらに誘発させる。両方の機能を備えた物質もある。国際がん研究機関(IARC)は、このうち発ガン性の強い約80種類について、有害性を数値で示しており、日本も92年から、ベンゼンなど6種類に環境基準値を設け、削減を目指している。
発ガン物質が遺伝子を傷つけて突然変異を引き起こし、ガンの原因になる訳だが、個々の遺伝子の解析技術がなかったこともあって、ドン綾田氏の突然変異なのか皆目分からなかった。
●ウイルス研究で進展
突破口を開いたのが、ニワトリやマウスなどの動物のガンウイルスの研究だ。動物のガンウイルスは、ガンを作る「がん遺伝子」を持つ。人間のガンとの関係は不明だったが、70年代に入り、このガン遺伝子とそっくりの遺伝子が人間や動物の細胞の中にもあることが判明、そうした遺伝子の突然変異が原因になっているガンもゾクゾクと見つかった。ガンウイルスのガン遺伝子も、もともとは、細胞中の遺伝子をくわえ込んだものと分かった。
人間や動物のガン遺伝子の多くは、細胞分裂の制御に関係する遺伝子だった。その後、ガン化を抑える『がん抑制遺伝子』も見つかってきた。
しかし、冒頭の乳ガン患者の家族のように、1つの変異が、直ちにガンに結びつく訳ではない。複数の変異が段階を蓄積して初めてガンになるという多段階発ガン説が登場した。変異の数は、少なく見積もって4~6個。高齢者にガンが多い理由も、「年月を経る間に、変異が蓄積するから」と説明できた。
たとえば大腸ガンは、ガン抑制遺伝子[APC]の変異が第一段階になり、大腸にポリープが出来る。そこに細胞増殖にかかわる[K-RAS]遺伝子の変異が重なって早期ガンになり、さらに、ガン抑制遺伝子[P53]が変異して、ガン化を防ぐブレーキが完全にはずれ、進行ガンになる。
●発症経路は多彩
こうした経路は、1つに限らない。ガンに関連する遺伝子は、100個前後あるとみられ、変異が起きる遺伝子の組み合わせごとに、理屈では無数の経路があり得る。
癌研究会癌研究所の桶野興夫・実験病理部長は、「同じ臓器のガンも患者ごとに経路は違う。かなめとなる遺伝子は重なるが、ガンに至る経路は実に多彩」と話、そこから新たな治療の開発に挑む。
肝炎が起きると、幹細胞の遺伝子を変異させる物質が出来ることに着目、その物質の量、働きを抑える薬を作るという。大腸ガンでも、米国の製薬会社が、ガンになる前のポリープ形成を防ぐ物質を開発、動物実験を進めるなど、欧米でも、他段階発ガンの経路に的を絞った研究は活発だ。
予防策の立案にも役立つ。遺伝子の変異には、環境要因が絡むためだ。スウェーデンの研究チームが先月発表した研究結果も、それを裏付ける。北欧3ヶ国で約45000組の双子(一卵性、二卵性)の病歴を調べたところ、1人だけがガンになった例が18%だったのに、2人ともガンになった例は、たった3%。
個別のガンを見ると、乳ガンや前立腺ガンは、遺伝的な要因がうかがわれたが、ガン全体では、遺伝的に胸痛の多い双子でも、ガンになる確立は食い違った。環境要因の方が、はるかに影響することになる。
「ガンは、環境要因に注意すれば減る」。焼き魚のコゲの発ガン性を見つけるなど、発ガン研究の権威そして知られる杉村隆・国立がんセンター名誉総長も、そう強調する。

■自殺促す、新DDS
「慶応大学と岡山大学の共同研究チームは遺伝子組み換え技術を駆使してガン細胞を殺す新しい薬物送達システム(DDS)を開発した。細胞の“自殺”(アポトーシス)を促す酵素とガン細胞の表面にある受容体と結合するタンパク質の遺伝子を大腸菌に組み込んで合成した。DDSはガン細胞に結合すると酵素が細胞の中に送り込まれ、死滅する仕組み。
新しいDDSは慶応大医学部の北島正樹教授と上田正和講師、岡山大工学部の妹尾昌治助教授が共同で開発した。細胞死を促す酵素は、リポヌクレアーゼ(RNA分解酵素)と呼ばれる。リボヌクレアーゼは遺伝子の本体であるデオキシリボ核酸(DNA)がタンパク質を合成するときに作るRNAを壊し、タンパク質の合成を阻害する。ガン細胞の中にリボヌクレアーゼを送り込めば、ガン細胞の中でタンパク質が作れなくなり、細胞死が起きると共同チームは考えた。
実験は食道などに出来る扁平上皮ガンの細胞で試みた。ガン細胞の表面には、上皮細胞成長因子(EGF)というタンパク質と結合する受容体が突き出ている。このEGFとリボヌクレアーゼのそれぞれを作り出すDNAをつないで大腸菌に導入。こうして作ったDDS10マイクログラムを、扁平上皮ガンの細胞を移植したマウスに投与したところ、EGFの働きがガン細胞の中に酵素が送り込まれ、ガン細胞が減少することが分かった。また。白血病を起こす免疫系のT細胞で実験したところ、同様の働きがあったという。
マウスの実験では毒性は見られなかった」2000.11.16《日経産業新聞》

■pH5・・・
「ガン細胞の内部のpH(水素イオン濃度)が5であることに着目してDDSを東京大学の片岡一則教授が開発。pH5(酸性)になると分解する高分子材料を開発し、カプセル化した。血中はpHが7.4になっているため、カプセルは分解しないが、ガン細胞に取り込まれた後に分解し、薬を放出する。2004.4.6《日経産業新聞》

■ガン細胞の培養・加工
「ガン患者向けに免疫細胞療法に取り組む瀬田クリニックグループ(東京。世田谷)は横浜市内で細胞培養・加工施設を稼働する。患者の血液からリンパ球などを採りだし増殖、体内に戻し免疫力を高める。同種の施設としては世界最大規模になる。
新施設は「新横浜プロセッシングセンター2」。
冠者自身のガン組織を摂氏零下90度前後で保存する「自己ガン細胞バンク」を併設した。2002.7.10《日経産業新聞》

■ガンの増殖を抑える抗体
「金沢大学がん研究所のグループは、ガンの増殖を抑える抗体を突きとめた。この抗体は様々な血液細胞を作る元になる造血幹細胞の増殖を抑えることで、癌が大きくなるのを防ぐ。
金沢大学の高倉伸幸教授らは、マウスに人間のガン細胞を移植すると同時に、ACK2という抗体を1週間に1階、注射した。抗体を打たなかったマウスはガン細胞が増殖したが、抗体を打ったマウスは主要が大きくならなかった。
ガン細胞が増殖するには、腫瘍の中に細い血管(新生血管)が侵入して栄誉を補給する必要がある。この抗体は血管をガン細胞の中に導く働きがある造血幹細胞や血液細胞の数を減らすことで、癌の増殖を抑制するという。」2002.8.5《日経産業新聞》

■“標的”で免疫回避するシステムだった
「京都大学医学研究科のチームは、ガン細胞が免疫機構の攻撃を回避する仕組みを解明した。ガン細胞の表面には「本人の細胞だから攻撃してはいけない」という標識が付いていて、免疫細胞をあざむいているという。
その標識は『PD-L1』と呼ぶタンパク質。
免疫機構からの攻撃を避ける目印の1つとして、正常細胞の表面に備わっている。一方で、正常細胞の暴走で生じるガン細胞にも標的は残っており、攻撃回避に使われている。
同大の湊長博教授と本庶祐教授らは、標識を無効にすれば免疫細胞が、ガン細胞を攻撃すると考えた。標識を覆うタンパク質を作り、ガン細胞を移植したマウス10匹に投与した結果、4匹が生き延びた。
免疫機構がガン細胞を攻撃したためとみられる。標識を覆わなかった10匹は30~40日後に死亡した。2002.1119《日経産業新聞》

【民間療法】
○アカメガシワ・スイセン・タンポポ・テンナンショウ・ヒキオコシ・ハトムギ・マンネンタケ・ミヤマトベラ。

■ガン発見
「米ライス大学の研究チームはガンの早期発見に応用できる超小型の『酸性センサー』を開発した。ナノ㍍サイズの微粒子で細胞などの生体物質内に入れて、内部の酸性度を調べる。
微粒子はシリカで出来た核の周りに金が塗布されている。金の表面には酸性度に反応する「メルカプト安息香酸」をくっつける。この粒子を細胞内に入れて、外からレーザー光を照射すると酸性度に応じた波長の光を散乱する。散乱された光を調べることで酸性度が分かる。
細胞がガン化すると酸性になるため、ガン発見に応用できるという。
今回の技術は細胞を取り出さなくても、酸性度を調べられる。20067/13《産業》

■ガンの幹細胞
「ガンの正体を解明する上で大きなカギを握るとされる『ガン幹細胞』が研究者の間で注目されている。
金沢大は2006年4月に、国内初の専門研究所「がん幹細胞研究所」を同大のがん研究所内に設置予定。
ガン幹細胞は、1990年代後半にカナダ・トロント大の研究チームが、血液や髪の毛など体の組織をつくる幹細胞の中にある特殊なタンパク質を発見。これが血液のガンである白血病の源になっていることを突き止めた。
1つの受精卵から細胞が分化して人の体が作られるように、ガンもガン幹細胞から生まれていると考えられている。これまでに乳ガンや脳腫瘍でも、ガン幹細胞が発見されている。」20061/4《経済》

■副作用を抑える薬「タボセプト」
「抗ガン剤の副作用による[手足のしびれ]や[感覚障害]などを抑える日本初の治療薬をあすか製薬が2010年に発売予定。タボセプトは乳ガンや肺ガン患者に使われる白金製剤やタキサン系と一緒に使う。抗ガン剤が細胞内にあるタンパク質『チューブリン』に作用して起こる、手足のしびれや指先の焼けるような痛みなどの神経障害を和らげる効果があるという。20078/10

■免疫抑制薬
「PD-1」
2011年3月、米ブリストル・マイヤーズスクイブ(BMS)は、「イピリムマブ」(一般名)を悪性黒色腫の治療薬として発売した。
これが免疫抑制解除薬の先駆け。
がんは異物として認識されるのに何故?患者の体内で増殖を続けるのか?
臨床医の長年の疑問がいま明らかになりつつある。カギを握っていたのが抑制性の免疫系だった。免疫は諸刃の剣。免疫反応が過剰に働くと、正常の自己組織を攻撃する自己免疫疾患を引き起こす。
そのため免疫系にはブレーキがいくつもある。ガン組織の周囲には、キラーT細胞など免疫系の細胞が集まっている。しかし、ほとんどのキラーT細胞は抑制され沈黙している。
PD-1はT細胞の表面にあるタンパク質。
ガン細胞の表面に現れるPD-L1と結合し、キラーT細胞を抑制する免疫系の強力なブレーキだ。
京都大学の本庶裕氏がPD-1を発見した、小野薬品がPD-1抗体を開発した。
PD-1やPD-L1の結合を、それぞれ結合する抗体で切断することで、免疫系のブレーキを解除しようとするのが、坑PD-1抗体や抗PD-L1抗体のねらい。


■Snai1
「慶応大学の工藤千恵助教授は、ガン細胞の転移を促すタンパク質が免疫機能を抑制していることを突き止めた。
ガン細胞はタンパク質「Snai1」によって生体との接着性を弱めて転移しやすい環境を作り出していることが知られている。
工藤助教授は「Snai1」を強制的にk生み出す細胞を作製、その影響を調べた。ガン細胞ではSnai1が「TSP-1」など複数の遺伝子を刺激して樹状細胞などの活動を抑制していた。試験管内の細胞実験で「TSP-1」などを抑制する抗体を入れたところ、免疫機能は正常になった。2007/11/5産業

■生きたガンに目印
「2008年、12/7東京大学の研究チームは、光を発する特殊なタンパク質分子でガン細胞の目印をつける新技術を開発した。分子は生きたガン細胞にはいると緑色に発光し、治療でガン細胞が死滅すると光が消える。
成果はネイチャーメディシン(電子版)に発表。
新技術はガン細胞の表面にあるタンパク質とくっつく特殊タンパク質に、蛍光を発する有機分子をつける。この有機分子がガン細胞の中の小器官「リソソーム」に取り込まれると緑色に光る。
リソソームは細胞が生きている間は弱い酸性を示す性質があり、蛍光分子は之を認識して光る。
ガン細胞が死滅するとリソソームのエネルギー源がたたれて中性に戻り、光が消える。
【西洋医学】治療法→「がんの治療」

■発症抑制免疫分子
「2008年、筑波大学は免疫に関係した分子がガンの発症を抑え手居ることを突き止め、成果を12/22の米科学誌「ジャーナル・オブ・エクsペリメンタルメディシン」に掲載。
渋谷彰・筑波大学教授らが見つけたのはキラーT細胞などを活性化してガン細胞を殺す免疫敬受容体分子『DNAM1』。
この分子をつくれなくしたマウスに発ガン性物質のDMBAを与えると140日程度ですべてのマウスが乳頭腫というガンを発症した。一方で、通常のマウスは約20%しか罹らなかった。
メチルコラントレンを与えた場合でも、分子を作れなくしまマウスが線維肉腫を発症する狩り愛が大幅に高かった。
ガン細胞は常に体内でつくられているが、通常は免疫作用で増殖が抑えられているために病気にならないとする『免疫監視説』が唱えられている。

■抗ガン物質候補
「2009年、神戸学院大学の水品善之准教授と国立がんセンター研究所の藤田雅俊室長は、抗ガン剤の候補物質を絞り込み有効な手法を開発した。
ガン細胞は正常細胞に比べて分裂・増殖する能力が高まる。これに伴い。[cdt1]と[ジェミニン]という2種類のタンパク質が非常に増える。この2つは結合してDNA複製の制御に関わっているという。
研究チームはこの2つのタンパク質の結合をジャマするかどうかで、抗ガン作用を持つ薬剤を選び出せると考え、検査技術を開発した。あらかじめcdt1をプレートに入れておき、調べたい物質やジェミニンなどを順番に加える。結合を阻害するかどうかは発色するかどうかで見分ける。
この技術を利用し試したところ、[コエンザイムQ10]が結合を妨げ、抗ガン剤の候補物質になる可能性があると分かった。」 3/11産業




ガン診断(ガン検診)
■腫瘍マーカー
「ガン細胞が作り出す物質の中には、正常な細胞ではあまり見かけないものが含まれている。これらは、ガンかどうかの診断の目印(マーカー)になるため腫瘍マーカーと呼ばれている。
 腫瘍マーカーが注目されるようになったのは1965年、結腸ガンの細胞の表面に「がん胎児性抗原(CEA)]という糖タンパクが見つかったころからだ。
  この物質は大人の正常細胞には比較的少ないが、なぜか胎児の腸管粘膜には多く検出される。がん細胞も胎児の細胞も盛んに分裂することが関係しているらしい。ガンが大きくなるとCEAを周辺にまき散らし、血液に含まれる量も増える。この量を調べ、ガンの有無を判断する。とくに大腸ガンや乳ガンなどの診断では有効だ。
腫瘍マーカーは保健で認められているものだけで約40種。[CEA]や、肝 臓ガンで多く検出される[AFP]、膵臓や胆道系のガンで多い[CA19-9]などがその代表格だ。
「血液中の量を調べるケースが多く、検査しやすく経済的だ。しかし、早期ガンは見つけにくく、良性の腫瘍やほかの病気でも値が上がる場合があり、確実というわけではない」と国立がんセンターの菅野康吉・臨床検査部長。
例えば、膵臓や胆嚢のガンの人で、CA-9が基準を超える率は8割弱。ガンがある臓器の特定も、腫瘍マーカーだけでは難しい。ただ、治療後も継続して調べていれば、再発の兆候は早めに捕らえられる。最近ではガンと関係する遺伝子の解明が進み、遺伝子がつくるタンパク質を新たなマーカーに使う研究も盛んだ。1996.12.15《朝日新聞》
    (参照→用語:CEA)
   

■病理診断は間違いないか?
「ガンかどうかの診断は、疑わしい組織を顕微鏡で観察する「病理診断」が決め 手になっている。細胞や核の形、大きさ、組織の全体の様子などが、正常な細 胞とは違ってくるからだ。
 東京大医学部の小田秀明助教授(病理学)は、子宮の入り口の子宮頸部から採った組織がガンかどうか判断に迷った。3年ほど前のことだ。顕微鏡で見ると、組織の様子はガンにようにも、そうでないようにも見えた。ガンだとしても極早期で、手術をすれば治る段階だが、患者は妊娠していた。手術すれば流産する可能性が高かった。
「いまの状態なら、出産まで待っても大丈夫かもしれない。だが、もし本当にガンで、その間に進行してしまったら・・・」患者の主治医と相談し、そのまま様子を見ることにした。普通なら3ヶ月に1回程度の検診を毎月行い、様子に変わりがないかどうかを確かめた。そして、無事に出産。手術はそれからしばらくしてから行われた。
 ガンは、正常な細胞と「顔つき」が違うという。「顔つき」はガンの種類や進み具合によっても変わる。診断は病理医の「目」が頼りだ。
 「99%正しく診断出来る」と病理医らは口をそろえる。しかし、人の「目」に頼る限り診断が分かれることもあり得る。小田さん自身、判断に悩むことも少なくないと打ち明ける。
 例えば、高齢者の胃ガンなどでは、組織の見た目の変化とガンの進み具合とが一致しないことがある。肉腫も良性と悪性の区別がつけにくい。「診断は人の将来にかかわる。判断に迷ったら他の病理医の意見を聞き、主治医や患者とも話し合うことが重要だ」と小田さんは言う。
  様々なガンを正確に診断するには、腕の立つ病理医が欠かせない。「だが、日本では病理医の数そのものが足りない」と国立がんセンター研究所支所(千葉県柏市)の向井清・臨床腫瘍病理部長は嘆く。日本病理学会が認定している病理医は現在、1535人。病理学の研究経験が5年以上ある医師の中から、試験で毎年100人近くを認定している。引退する人もいて、実数はここ数年、ほとんど変わっていない。
 病理診断を自前で出来る病院は全体の1割ほど、残りは他の病院に頼んでいる。常勤の認定医がいるなど体制が整っている学会の認定病院も全国で300余りにすぎず、1人の医師が毎年、3000件前後の診断をこなしている。
 国立がんセンターは1994年から、都内の中央病院と柏市の東病院との間で、ハイビジョンを使った遠隔地病理診断の試験を進めている。顕微鏡に取り付けたハイビジョンカメラで組織を撮影、画像を病院間でやりとりする。病理医がいない地域でも、高水準の診断が受けられる体勢をつくることが目的だ。
「医師どうしが同じ組織を見ながら意見を交わせるので、とり確実な診断や病理医の教育に役立つ」と向井さん。
 しかし、顕微鏡で見るための組織の標本づくりにも、病理医は必要だ。病理医がいないところで診断に使える標本が作れるかどうかなど、実用化への課題は多い。1996.12.21.《朝日新聞》

■ガン悪性度の診断薬
「杏林大学の遠藤仁名誉教授らの研究グループは、ガンの悪性度を判別する診断薬候補を開発した。ガン細胞の増殖に必要なアミノ酸を運ぶ役割を果たす『LAT1』と呼ぶタンパク質の量を調べて、悪性度を3段階に分類する。
LAT1の量が多いほど、摘出後の生存率が低いことを突き止めた。」2006.1/25

■個人向けガン検査
「受託希望者が自宅で尿を採取し郵送してガンの検査をするのが、医療分析センター(東京都多摩市)が始めた。
☆尿中ポリアミン(UP)検査:
・ガンがあるかどうかが分かる。
☆尿中遊離型フコース(UFC)検査:
・胆嚢・肝臓・膵臓のいずれかの臓器にガンがあるかどうかを調べる
☆自己採取型子宮ガン細胞診(SSP)検査」
・専用の器具を使って子宮の細胞を受診者自身が採取し、子宮ガンの有無を調べる

■ガン専門健診会社
「ガンの早期発見を専門に検査する「ガン予防ネットワーク機構」(東京港区)が、7月7日から業務開始。血液や尿などを使った特殊な検査で、画像診断では難しい微小ガンの段階で見つけだす。」2000.6.20《日経産業新聞》

■直径1mmでも発見
「東北大学と東北福祉大学のグループは、直径1mm以下の微小なガンを発見できる検査技術を開発した。脳などの検査に使う陽電子放出断層撮影(PET)装置の解像度を約30倍高めた。従来は4mm程度が検出の限界だった。」2002.6.7《日本経済新聞》

■画像診断
「大手病院チェーンの大坪会(東京世田谷区)グループは、癌治療で知られる癌研究会(東京豊島区)と組み、遠隔画像診断網を構築した。診断の質を高めるほか、コスト削減が期待できる。競合関係にある医療機関同士が提携する例はこれまでほとんどなかった。
グループで主に検診を手がける岩井クリニック(東京千代田区)、霞ヶ関ビル診療所(東京千代田区)、期間病院の東和病院(東京足立区)の3機関と、癌研究会付属病院を仮装私設網(VPN)と呼ぶ機密性の高いネットワークで結んだ。
岩井クリニック内に画像サーバーを設置、グループ内の医療機関で撮影した磁気共鳴画像装置(MRI)などの診断用デジタル画像を癌研究会病院に送信できるようにした。癌研病院で放射線科専門医が読影し、数時間~1日でリポートを送付、大坪会は画像の枚数により読影手数料を支払う。
放射線科専門にの人材難から、大坪会は非常勤医に依存しているのが実情。非常勤医が不在の際には診断が遅れがちになるなどの問題があった。
大坪会は北多摩病院(東京都調布市)、宇都宮中央病院(宇都宮市)など他のグループ内病院も順次接続する計画」2003.5.28《日経産業新聞》

■1回で全身のガンを検査
「米バイオベンチャーのパセナ社が持つ主要な18種類のガンに共通して盛んに生じる『HAAH』という酵素を目印(マーカー)にすえう検査技術を、SRLが取得。」2003.12.24《日経産業新聞》

■尿でガン診断
「バイベンチャーのトランジェニックはがん診断薬の開発を始める。尿を使ってガン細胞を検査するため、血液などを使う従来の手法より人体への負担が軽い。
すでに診断薬メーカーと共同研究をはじめた。
患者から採取した尿に診断薬を加え、ガン細胞の増殖に伴って増える『ポリアミン』という成分の量を量る。一般的な血液検査では判定が困難な早期がんも検出可能。」2006.6/21《日経》

■新酵素
「キッコーマンはガン発生の指標となる尿中の化学物質を測定するために酵素を作ることに成功した。
ガン発生の指標となる尿中の『ジアセチルスペルミン』に反応する酵素。ジアセチルスペルミン濃度は、ガン患者の尿中で健康な人よりも高くなるとして、診断マーカーとして検査機関で使われている
各地の土壌から、ジアセチルスペルミンを栄養源として成育できる微生物を見つけ、約15000株から酵素活性を調べた。酵母の一種『Debaryomyces hansenii T-42』が、ジアセチルスペルミンに反応する酵素を作ることが分かった。
この酵母から目的の酵素を作る遺伝子を摂りだし、大腸菌に組み込んで、生産量を通常の630倍とした。更に酵素の安定性を高め、定期診断などで尿を簡単に測定できるように研究を進める。」

■DNA異常
「2009年、九州大学の竹中繁織教授らのチームは、ガンと関係のあるDNAの異常を簡単に高精度に検出する技術を開発。細胞から抽出したDNAを増やして色素を加えて識別する手法で病院や診療所でも利用できる。
5/16からの分析化学討論会で発表。
開発したのは『メチル化』というDNAの変化を、特殊な機器などを使わずに簡単に識別する技術。
まず、患部から採取した細胞のDNAを抽出し、亜硫酸を加える。亜硫酸にはメチル科したDNAだけを識別する働きがある。
そのあと、PCR法(ポリメラーゼ連鎖反応法)でDNAを増やしてから、研究チームが独自開発した『FKA』という蛍光色素を混ぜると、亜硫酸で処理されたDNAに蛍光色素がくっつく。これに紫外線を照射するとDNAの成分によって赤色や赤褐色に変化するので、この色を分光器で捕らえて判定する。
実験では、大腸ガンの患者の便中に含まれるDNAを調べたところ、DNAのメチル化の有無を判定できた。
【メチル化】
DNA(デオキシリボ核酸)を構成する塩基の1つ「シトシン」のメチル基という化学構造がつく変化を指す。ガンなどの病気では細胞のDNAのメチル化が起こっていることが多いことが分かっている。たとえば、大腸ガンでは[CDH4]という遺伝子にメチル化が起こることが知られている。
メチル化の判別には、これまで、PCR法だけが使われてきたが、精度が悪く、DNAの塩基配列をすべて決める必要があった。




ガン性疼痛
【西洋医学】
(1)Buscopan 8T 分4。
(2)Voltaren 3T 分3。
(3)Voltaren Sup 25~50mg 頓用。
(4)Pentagin 15~30mg 筋注 2~3回/日。
(5)Brompton mixture or Morphine Chloride
(6)脊髄硬膜外ブロック
(7)Morphine Chloride 皮下注
or Opistan 皮下注。

■貼るタイプ
「米医薬大手のJ&J子会社のヤンセン協和と協和発酵は2日、ガン患者の痛みを和らげる治療剤「デュロテップパッチ」の承認を取得した。両社が共同で国内臨床開発したテープ状の医薬品で、皮膚に貼って使用する。ガン患者の痛みに使われているモルヒネに比べて便秘や吐き気といった副作用が少ないという。
有効成分は合成麻薬のフェンタニル。医薬品の公定価格である薬価決定後、2002年に発売する。従来のモルヒネ製剤は注射、経口、座薬の3種類があるが、皮膚に貼るタイプの製品は無かった。」2001.10.3《日経産業新聞》


ガンの再発
■血管が多いほど増殖
「血管が豊富なほど、ガンが再発・転移する危険は大きくなる」。東京都千代田区の杏雲堂病院婦人科の坂本優医師はそう話す。実際、患者から切り離した腫瘍の組織を調べると、血管の多寡が治療の明暗を分けるという。
子宮頸ガンのため、同病院で手術を受けた30歳代の女性2人はその差が顕著に現れた。1人は昨秋、手術を受けた。腫瘍は骨盤まで達し、かなり進行していた、しかし、主要素式を調べると、血管はほとんどなく、放射線治療を続けているが、再発はない。
もう1人は、昨年夏に腫瘍を切除した。腫瘍は膣に及んでいたが、最初の女性ほど進行していなかった。ただ、主要素式から多数の血管が見つかったことが気がかりで、医師は手術直後から放射線と抗ガン剤を組み合わせた懸命の治療を試みたが、半年後に再発。病状が悪化して昨春亡くなった。
臓器や組織の膣補を無視して増殖するガン細胞は、生きていくために大量の栄養分や酸素を必要とする。カニを連想(canserの語源はカニを意味するギリシャ語カルキーノス)させるほど血管が育つのは、それを過不足亡く補給するためだ。血管は、ガン組織の活性度を反映していることになる。さらに、血管は、転移の際の主要な経路にもなるため、予後に響くらしい。
●促進物質を特定
正常な細胞から見れば、ガン組織は反乱分子。どうして、体は、敵に塩を送る様なことをするのだろうか?。1960年代、米国率衛生研究所(NIH)にいたジューダ・フォークマン博士はそんな疑問を抱いた。
思いついたのが「ガン細胞は血管の新生を指令する物質(血管新生促進物質)を出す」という仮説。これが正しければ、薬などで血管新生を阻害することで「ガンは退治できる」と唱え、71年に発表した。いわゆる「兵糧責め」だ。
基礎実験にも成功した。ガン組織をウサギの目に移植して観察し、血管がないうちは成長しないのに、新たな血管が出来ると激しく増殖することを確かめた。80年代には、純粋な研究者のみならずバイオ企業も、同博士の提唱したガン治療への応用をにらんで、血管新生促進物質の探索に熱を入れ始めた。
この結果、83年に、婦負国のガン研究グループが血管新生促進物質の1つ『bFGF』、88年に米国のバイオ企業が『VEGF』を発見するなど、約30種類の血管新生促進物質が特定され、血管新生の仕組みが徐々に見えてきた。
[血管新生の仕組み]
(1)ガン細胞が血管新生を促す物質を放出する。
(2)血管新生が始まる。
(3)ガン細胞に血管が到着し、栄養・酸素を補給。
(4)ガン細胞が一気に増殖を始める。
●正常細胞内にも
ガン細胞だけが血管新生促進物質を出すわけではない。この物質を作る遺伝子は、正常細胞にもある。生物の体が出来る時には、血管も張り巡らされるが、これも血管新生促進物質のおかげだ。VEGFもその1つで、この物質を作る遺伝子を壊したネズミは血管が正常に出来ず、10日前後まで育った段階で死亡する。体の傷が治る時にも血管新生は起きる。
血管新生に詳しい渋谷正史・東京大医科学研究所教授は、「ガン細胞は、この仕組みを自らの生存のために悪用している」と説明する。VEGFの濃度も、ガン細胞では、正常細胞よりはるかに高い。ガン細胞が血管新生のアクセルを踏むという図式がほぼ確立した。
アクセル役の仕組みが解明されるに従って、ブレーキ役となる抑制物質もあるはずという仮説も、80年代後半になって登場した。正常細胞では、血管は、必要な時と場所にできるだけできるだけ。その微妙な調節には、アクセルとブレーキの両方が必要という理屈だ。
ガンの研究も、この仮説を支持した。転移した腫瘍は、元の腫瘍を手術で切除すると逆に大きくなることがある。不思議な現象だが、元の腫瘍が自らの生存に必要な限度以上に血管を増やさないよう抑制物質を放出しているためと考えると説明がつく。
仮説通り、抑制物質も見つかり始めた。
●冷静な評価必要
血管新生を阻害するガン治療、というフォークマン博士の夢の実現もカジカに迫っている。すでに20種類以上の薬剤候補が開発され、米国などで臨床試験が始まった。新生血管が、ガン細胞に入り込むのに欠かせない酵素の阻害剤は臨床試験の最終段階だという。日本でも武田薬品工業や田辺製薬などが開発にしのぎを削っている。
博士自身も、抑制物質のアンジオスタチンとエンドスタチンを使い、人間に換算すると約1kgもある、ネズミの腫瘍を数週間で消滅させる実験に成功。夢の癌治療薬と注目が集まった。昨年10月には、米国内で臨床試験にも着手した。
細胞を直接攻撃する訳ではないため、正常細胞には影響が出ず、副作用も少ないのが利点をされる。
ただ、兵糧責めに耐えるガンもある。特にガン湯億世遺伝子[P53]が壊れたガンは強い。兵糧責めで酸素が不足した細胞が死滅するには、P53が、細胞に自殺を指令する必要があるからで、それがもともと壊れていると効果は薄い。」

■簡単に検出
「東京慈恵会医科大学の松藤千弥教授らのチームは、ガンになると体の中で増える分子を簡単に検出する技術を開発した。
ガン細胞が急激に増殖するときに体内で大量にできる物質『ポリアミン』を検出する。ポリアミンは尿中に排泄されるため、ガンのバイオマーカーとしての活用が期待されているが、分子量250の低分子で、既存の抗体や試薬では判別できなかった。
研究チームは、ポリアミンの一種でガンのバイオマーカーとして期待される小さな分子『スペルミン』だけに結合する特殊なRNAの合成に成功した。『RNAアプタマー』と呼ぶ40塩基程度のRNAで、標的分子の形にピッタリくっつく。
実験では極微量のスペルミンを分子レベルで高感度に検出できた。」



がんの治療
■ガンの新しい遺伝子治療法
「米ノースカロライナ大学の研究グループは、ガンの新しい遺伝子治療法を開発した。ガンを増殖させるタンパク質の働きを阻害する遺伝子を使って、ガン細胞を殺す。ネズミを使った動物実験で効果を確認しており、年内には臨床試験を始める予定だ。
ガン細胞が抗ガン剤や放射線から自らの身を守るために、特殊なタンパク質を放出している。研究グループがこのタンパク質の働きを阻害する物質の遺伝子をネズミに導入したところ、体内のガン細胞は抗ガン剤や放射線の影響を受けやすくなった。あらゆる種類のガンに応用できそうという。1999.4.1      《日経産業新聞》
   

■光線力学的治療法(→用語:光線力学的治療法)
膀胱ガン以外は90%の有効性。1996.6保健適用。
「肺ガン・食道ガン・子宮頸ガンの、いずれも(表面に出ている)表在型の早期ガンが対象で、内視鏡でレーザー光線を患部に直接照射出来る場合に有効だ、フォトリン(日本レダリーの薬剤)を静脈注射すると、ガン組織に選択的に滞留する。そこにレーザー光線を照射すると、薬剤が活性化してガン細胞を死滅させる。“直径1cmの腫瘍だとほぼ100%消滅する。直径2cmでも90%は消滅する。
5年生存率のデータはまだまとまっていないが、肺ガンについて4年間の中間報告をみると、60数%の人が全くガンの症状が無く生存している
PDT(光線力学的療法)は1人の患者に1回だけしか行わない。1996.7.17《日経産業新聞》」

■光がん治療法
「大阪大学産業科学研究所の真嶋哲朗助教授らは、光増感剤を使ってガン細胞のDNAを効率よく破壊できる方法を突き止めた。光増感剤を使った光がん治療法の効率向上につながる。
DNAは4種類の塩基という物質が対になって並んでいる。アデニンとチミンの塩基対が4~5個連続している部分を狙うと、DNAを破壊する効率が高くなる可能性があるという。
DNAの塩基対には、アデニンとチミンの他、グアニンとシトシンがある。研究グループはこの配列を様々なパターンに人工的に作り出し、光増感剤をどのような部分に結合させたときにDNAを破壊する効率が高まるかを調べた。
ナフタルジイミドという光増感剤にアデニンとチミンが5個連続しているとDNAの破壊効率は約50%、ナフタルイミドという光増感剤の場合はアデニンとチミンが4個連続していれば、破壊効率が12%となった。
アデニンとチミンの連続配列が3個以下の場合はいずれも破壊効率は数%に留まった。
光がん治療法は光増感剤を体内に注射して、光を照射すると、光増感剤が光を吸収してガン細胞のDNAを破壊する。
だが胃カメラなどを使って光を照射する時間が数時間に及ぶこともあり負担になっていた。」2005.9.26《産業》

■温熱療法
「国立国際医療センター研究所や早稲田大学などの研究グループは、ガン細胞を効率よく死滅させられる新しいガン温熱療法の基礎技術を開発した。電磁波でガン細胞を熱する仕組みで、ガン細胞にうまく熱が伝わる超微粒子を利用した。化学療法に頼ることの多い白血病など、様々なガンに応用できそうだ。
開発した治療法は「マグネタイト」と呼ぶ酸化鉄を利用する。磁気共鳴画像装置(MRI)の造影剤にも使う物質。ナノ㍍サイズ(1/10億)に加工した酸化鉄の超微粒子を体内に入れる。そこへ電磁波を照射すると酸化鉄微粒子が発熱するため、その熱でガン細胞の膜が破壊され、ガン細胞が死滅する。
超微粒子の表面にはガン細胞にある抗原にだけくっつく抗体を貼り付ける。そこへ電磁波を照射するとガン細胞だけが加熱される。」2003.4.18《日経産業新聞》
   

■ガン治療装置:「アルバレライナック」
「科学技術庁放射線医学総合研究所(千葉市)にある。直径2.2m、長さ24mの加速器で、重粒子線がこの中を、光速の11%の速さで通り抜ける装置。
ガンを死滅させる重粒子線は、強いプラスの電気を帯びた炭素イオンの粒。原子から電子を引き離す作用が強く、ガン細胞のDNAの二重螺旋を切断することで、ガン細胞を破壊する。治療が始まって丸5年で、500名以上の実績がある。」1999.5.16《日本経済新聞》
   

■直径5mmのX線源
「名古屋工業大学の奥山文雄名誉教授らの研究グループは2004年3/18、直径5mmのミニチュアX線源の開発に成功したと発表。X線源を体内に入れて放 射線を患部に直接照射する癌治療への応用を目指す。」《日経産業新聞》
   

■陽子線で
「最先端のガン治療法を実施する兵庫県立粒子線医療センター(兵庫県新宮町)で2003年4/1から一般診療が始まる。ガンの病巣部だけを放射線の一種である陽子線で狙い撃ちするため副作用が少ないのが特徴。
陽子線を使った一般診療は国立がんセンター東病院(千葉県柏市)に次いで2番目。西日本の施設では初めて。
治療対象は肺・肝臓・前立腺・頭頚部に出来た初期段階のガン。X線など従来の放射線治療では体の表面近くで照射線量が最大になるため、ガン周辺の健康な細胞を傷つける難点があったが、陽子線治療はガン細胞だけに照射して病巣を退治する。
受付窓口は兵庫県立成人病センター(兵庫県明石市078-9291-1339)で、同センターが転移が無いなど治療の可否を判断する。受付は2003年3/17から始めており、1日平均約40人の問い合わせがあるという。
毎日1回、約40分の治療により4~8週間での除去を目指す。健康保険の適用外のため、機関に関係なく治療費\2883000は自己負担。」2003.3.30《日本経済新聞》
「兵庫県のJR相生駅から車で25分。ガン治療が中心の兵庫県立粒子線医療センター(0791-58-0100)には、世界最大の放射光施設SPring-8を擁する播磨科学公園都市内に2001年開設した。2003年から一般診療を始め患者数は1000名を超えた。2005年度から当初採用した陽子線に、線量の大きい炭素イオン線を加え、2種類の粒子線により治療ができる世界唯一の施設となった。
通常の放射線治療に使われるX線は、体の表面近くで線量が最大になる。これに反して粒子線は、体の中をある程度進んでから、ガン細胞の近くで最大線量になってピンポイントで病巣を攻撃する。このため正常細胞に与える影響が少ない。[前立腺][頭頸部][肺]などの初期ガンを対象に、1日30分ぐらい、週5回の照射治療を2~8週間している。
施設を統括するのは「闘わないガン治療」をテーマに全国で講演している菱川良夫院長。「病院らしくない病院」を目標に掲げる」20072/2《産業》

■陽子線でガン治療
「日立製作所は放射線の一種である陽子線を使ったガン治療システムを2002年度中に製品化する。陽子線を病巣に照射し、腫瘍を破壊する装置で、原子力分野の陽子加速器を医療向けに改良し、検査装置などと組み合わせた。
陽子線を使ったガン治療システムは住友重機械工業に次いで国内2社目。日立はすでにシステムの技術を開発済み。現在、筑波大学付属病院がこのシステムの医療機器としての安全性を確かめる臨床試験を肝臓ガンや脳腫瘍の患者6人を対象に実施している。
システムは陽子を放出するための加速器と照射装置などで構成。医療用に開発した加速器が陽子を最大250メガ(1メガ=100万)電子ボルトまで加速、体内の30cmの深さにある腫瘍でも破壊できるという。」2001.11.27《日経産業新聞》
『南東北病院』
「総合南東北病院グループを運営する脳神経疾患研究所(福島県郡山市・渡辺一夫理事長)は、最先端のガン治療装置で患者の被爆量を最少に抑えられる陽子線治療装置を2008年に解説する。陽子線は患部で放射線量を最大にでき、副作用を最低限に抑え、より効果的にガン細胞を破壊する。人体を通過するX線と違い、標的の深さで止め、その先の放射線量をほぼゼロにできる。
治療は、がんの大きさや転移の状況で異なるが、1回5分の照射を繰り返し、2週間程度の通院治療ですむ。治療費は300万円程度。
X線やγ線は電磁波を使っているのに対し、陽子線は水素原子から電子を除いた重く大きい原子核を光速に近い速度まで加速して使う。
陽子よりさらに重い炭素を使って、がん殺傷能力を高めた重粒子治療も国内2施設、海外1施設ある。」2005.11.2《産業》

■粒子線で
「石川播磨重工業(IHI)は、放射線の一種である粒子線を使ったガン治療システムを開発した。システムは患部に当てる粒子や陽子を放出するための直径6~7mの加速器や照射装置などで構成。
粒子線がん治療システムは住友重機械工業や日立製作所、三菱電機などが実用化、国内では国立がんセンター東病院(千葉県柏市)など6施設で稼働している。」2002.11.25《日経産業新聞》

■重粒子線治療・・・・2003年11月から高度先進医療に
「ガンの新しい放射線治療法として研究されてきた「重粒子線治療法」。約10年近い臨床試験で有効性や安全性が確認され、2003年11月から高度先進医療の扱いになった。放射線照射の費用自体は患者の自己負担になるが、入院・検査費用などには保険適用になった。
重粒子線治療は炭素イオンを加速して患部に照射する。X線やガンマ線を利用する通常の放射線治療に比べ、体の奥深くにあるガン細胞に集中照射できる特徴がある。ガン細胞を攻撃する威力も数倍高い。周囲の正常な細胞に与える影響が少なく、体内のガンだけを効果的に死滅できる。手術や抗ガン剤治療の難しいガンや、通常の放射線治療に抵抗のあるガンにも応用できる。
放射線医学総合研究所(千葉市)は1994年に臨床試験を開始。これまでに、1500人以上の患者で有効性・安全性を検証してきた。同研究所重粒子医科学センターの辻井博彦センター長は「転移がないこと等が条件になるが、肺や肝臓をはじめ、ほとんどの臓器が治療対象になる。骨肉腫や悪性黒色腫などにも適応できる」
問い合わせは:放医研の広報室(043-206-3026)2003.11.5《日本経済新聞》

■ヘルペスウイルスで
「名古屋大学の西山幸広教授らは、単純ヘルペスウイルス(HSV)を使った新しいガンの治療法を開発した。ガン細胞に入り込み、急速に増殖してガン細胞を殺す。効果を動物実験で確認した。バイベンチャーのエムズサイエンス(神戸市・三田四郎社長)と協力して1年後に臨床試験に着手、がん治療薬として実用化を目指す。
西山教授らは様々なHSVの遺伝子を解析し、細胞に対する毒性に関係する『UL56』と呼ぶ遺伝子が欠落したHSVの一種を発見した。このHSVがガン細胞の中に入り込んで増殖しながらガン細胞を殺してしまう。
ガン細胞を移植したマウスを使って抗ガン効果を調べたところ、治療しなかったマウス10匹は3週間ですべて死んだ。新たに見つけたHSVを3日間連続で注射すると、すべてのマウスでガン細胞がほぼ死滅した。別のガン細胞をこれらのマウスに移植しても、死滅させるほど免疫力を高めていることも分かった。
このHSVは、健全な細胞にも入り込むが、増殖する速度がゆっくりな場合は差相棒を壊さない。増殖スピードが速いガン細胞に入ったとき、細胞の破壊作用が生じるため、安全性を保てるとみている。」2001.11.28《日経産業新聞》

■ガン細胞の増殖抑制---[RNA干渉]---
「信州大学のグループは、2本鎖のRNA(リボ核酸)が特定遺伝子の働きを抑える現象、RNA干渉を利用してガン細胞の増殖を抑える実験に成功した。副作用が少なく効果の高い治療法になると期待されているが、実際に抑制効果が確認できたのは初めてという。
RNA干渉は、2本鎖RNAを細胞内に人為的に入れると、同じ塩基配列を持つRNAが分解され、タンパク質の合成の指令を断って遺伝子の働きを抑える現象。従来、線虫や植物の細胞内でのみ起きると考えられていたが、昨年にヒトなど哺乳類の細胞でも起きることが確認された。
信州大医学部第二内科の青木雄次講師らは、この現象をガン治療にも応用できるとみて、ヒトの肝臓ガンと膵臓ガンの培養細胞で実験をした。培養細胞にルシフェラーゼという蛍光タンパク質の遺伝子を組み込んで、これをRNA干渉の標的にした。この場合、遺伝子の働きを最大で50~75%抑えることができた。ガン細胞で活発に働いている遺伝子(c-raf)を対象にした実験でも、同様の効果が得られたという。
2本鎖RNAを細胞に導入するベクター(遺伝子の運び屋)には、ガン細胞に集積しやすい構造を持つペプチドを使った。さらにRNAが細胞内にきちんと入り込むのを促す高分子、ヒスチジルリジンを結合させ、導入効果を高めた。
RNA干渉は21塩基と、短い2本鎖RNAで起きることが分かっている。」2002.1.30《日経産業新聞》


■粒子線で
[静岡県立がんセンター]
陽子線治療と呼ぶ最先端の放射線治療。陽子線とはエネルギーを持った粒子の流れである粒子線の仲間。静岡がんセンターの陽子線治療棟には、水素原子から電子を奪った後に残る陽子を猛スピードで過疎校させる加速器がある。水素ガスから取り出された陽子は、まず長さ3mの線形加速器を通る。次に、1周約20mの円形加速器を周回しながらスピードを増してゆく光速の70%に達するまでに、円形加速器を1200万回も周回する。治療糖の大きさは延べ4800平方㍍。でも世界最少クラス。
粒子の重さがより重い炭素イオンを使ってガンを治療する重粒子線で使う加速器は巨大なものが必要。放射線医学総合研究所にある加速器はサッカー場がすっぽり入ってしまう。
陽子線を始めとする粒子線と、現在、放射線治療に使われているX線やγ線とは何が違うのか?
どんな細胞も放射線を当てると、原子から電子がはぎ取られて傷つく。X線やγ線だと体の表面近くでエネルギーの吸収量が最大になるため、体の奥深くにあるガンには効きにくい。
一方、粒子線は止まる寸前にエネルギーが最大になる。体の中にあるガン細胞に到達するまでは、エネルギーが極めて低いので、正常な細胞を傷つけることもなく、ガンだけを狙い撃ちにできる。
ただ、どんなガンにも有効なワケではない。ガンの種類によって得手不得手がある。
前立腺ガン・肝臓ガン・肺ガン・・・有効。
胃ガン・大腸ガン・・・などの消化器ガンは不向き。転移があるとダメ。

【国内施設】
・筑波大学(茨城県)
・放射線医学総合研究所(千葉県)
・国立がんセンター東病院(千葉県)
・若狭湾エネルギー研究センター(福井県)
・兵庫県立粒子線医療センター(兵庫県)
2005.12.25《日経》

■ワクチン療法(樹状細胞培養法)
「大阪大学医学系研究科の研究グループは、「樹状細胞」と呼ぶ免疫細胞を利用してガン細胞への免疫力を高めるワクチン療法で、治療効果を3~10倍に高める新技術を開発した。体外で樹状細胞を培養する手法を改良した。2006年に臨床を始める予定。
開発したがんのワクチン療法はまず、患者の末梢血からリンパ球を取りだし、「単球」という樹状細胞の元となる細胞を採取する。ついで、この単球を、免疫細胞間の情報伝達を担うタンパク質「サイトカイン」で培養して樹状細胞に成長させた。最後に、胃や大腸などのガン細胞に特有の『CEA』(がん胎児性抗原)という物質を加えて攻撃対象を覚え込ませ、さらに独自の薬剤を加えて培養し、体に戻す。
開発した薬剤は、抗ガン薬やインターフェロンαなど3種類の物質を混ぜ合わせた「OPA」と呼ぶもの。この薬剤を入れると、樹状細胞を体内に戻したとき、樹状細胞と連携して免疫作用を発揮する『CTL(細胞傷害性T細胞)』や『NK細胞(ナチュラルキラー)』といった抗原を攻撃する細胞の免疫活性が高まり、治療効果が向上する。2005.11.24《産業》

■ワクチン療法の試薬
「ワクチン療法はワクチンがガン細胞内のタンパク質と結合し、それを感知した白血球がガン細胞を攻撃する。このタンパク質が無いとワクチン療法は有効にならない。
試薬製造のホクドー(札幌市)が、試薬を開発。ホルマリン保存した細胞でも使用できる。試薬は札幌医大の佐藤昇志教授が開発。」20061/16《産業》

■ぬる抗ガン剤
「富士フィルムは2007年4/12、フィルム製造で培ったナノテクノロジーを応用して効き目の長い塗る抗ガン剤の開発に着手した。
米バイベンチャーのキャンジェン・バイオテクノロジーズと共同で臨床開発を進める。5年以内の実用化を目指す。
塗り薬の基剤にはフィルムの主材料であるゼラチンを使う。開発したゼラチンは体になじみやすく、牛由来の一般的なゼラチンと異なり、BSE(牛海綿状脳症)などの感染症のおそれがない。
ゼラチンを直径約100ナノ㍍の微粒子にして薬をしみこませる。肌に塗ると薬の成分が徐々にしみ出て効果が持続する。
DDSの一種で、副作用を軽減できる。注射剤として使うと、体の内部のガンに対し、ガン病変の周辺に薬を集めやすくなる」

■非侵襲的な熱療法
「英国のエリオット・ワット大学は、がんの非侵襲的な治療法を開発。多重モード電磁波空洞共鳴器(ある周波数の電磁波で共振を起こす導体の壁に囲まれた空洞)を使う。現在のシステムより正確で集中的に個体腫瘍系の除去ができる。
電磁波の熱治療の技術的問題は腫瘍組織の過熱と続いて起こる非がん部分の損傷だ。健康な組織が過熱する原因は、電磁波ビームの絞り方が不十分で標的となる腫瘍を限定できないため。
①非侵襲的であるため、冠者のトラウマとストレスを軽減できる
②非手術的手法
③周辺組織への損傷が少ない
④再同調が不要

■糖尿病薬と併用で
「プラチナ系の抗ガン剤の効果が糖尿病治療薬との併用で増加することをダナ・ファーバーガン研究所のグループ突き止めた。
ガン細胞を移植したマウスにプラチナ系抗ガン剤と糖尿病薬を同時に投与したところ、抗ガン剤単独で投与するより約3倍の効果があった。
この糖尿病薬は「PPARγ」というタンパク質を働かせる機能がある。プラチナ系抗ガン剤にはPPARγが含まれており、このタンパク質が別のタンパク質と結合し、薬に耐性を持ったガン細胞が増殖する遺伝子の働きを押さえ込んでいるとみられる」20075/10

■麻疹ウイルスで
2009年、東京大学の中村貴志・特任准教授らのチームは、麻疹ウイルスを使ってのガン治療でマウス実験に成功した。
ウイルスは、人の細胞に感染すると増殖した後で細胞を壊して細胞外へ出て行く。ウイルスを使うガン治療ではこの性質を利用する。
研究チームは、ガン細胞にだけくっつく麻疹ウイルスを開発。遺伝子組み替えで、ガン細胞に多い「葉酸」と結合するタンパク質を、麻疹ウイルスの表面に作った。このウイルスを注射すると、ガン細胞にだけ集まってガン細胞内に入り込み、ガンを死滅させる。
実験ではマウス約10匹にこのウイルスを注射して、何もしない卵巣ガンのマウス9匹と比較した。
20日後、ウイルスを注射したマウスのガン細胞は増殖しなくなり、30日後にはガン細胞の大きさが、治療をしないマウスの1/5~1/6にまで縮小した。
また、治療しないマウスは60日後にすべて死亡したが、ウイルス治療したマウスは半数が生き延びた。9/15産業
  

【栄養療法】
①アルコール摂取-----ガン転移を助長する。(→用語:アルコール)
②抗酸化成分の抗ガン作用
<1>ビタミンC、E-------ビタミンCが転移抑制。
<2>ベータカロチン
<3>シアニジングルコシド:(赤米・黒豆の色素)。
<4>クルクミン:(カレー香辛料の黄色色素)。
<5>カテキン:(緑茶)-(10杯/日)
<6>テアフラビン:(紅茶)。
<7>タンニン:(ココア)。
③みそ汁
*味噌のサポニンがガンを防ぐ。(参照→みそ)
*「豆腐」を食べよう。
「大豆サポニンが有効。沖縄は日本一の消費量。沖縄にはガン・骨粗鬆症が少なく、長寿県。1996.1.24NHK「女の大研究」より」
④タイ産の野菜は、国産の野菜の数倍のガン抑制効果あり。
「タイ産のレモングラス・ナンキョウ・コブミカンの3種の香辛料には、顕著な発ガンプロモーション抑制活性が認められた。又、セロリ・バジルなどもタイ産のほうが、ガン発生を抑える働きが強かった。日本産でガン抑制効果が強かったのは、里芋の茎だけだった。」近畿大学=小清水生物理工学部教授(Quark 6 JUN '95 NO.156)
⑤メラノイジン(褐色色素)が、発ガン物質を抑える。(参照→メラノイジン)
ガン予防の食事デザイン。(米国立がん研究所)
疫学調査のデータから裏付け。
以下の食品を3度の食事に組み合わせましょう。
<1>最重要度の食品(8種類)
①ニンニク:摂取量が多い地方で、胃ガンが極めて少ない。
②キャベツ
③大豆
④ニンジン(キャロット)
⑤セロリ
⑥アシタバ
⑦カンゾウ
⑧ショウガ
<2>次に重要な食品(15種類)
・タマネギ
・茶
・ターメリック
・亜麻
・玄米
・全粒小麦
・オレンジ----
 温州ミカンに含まれるガン抑制物質はオレンジの100倍。
・レモン
・グレープフルーツ
・トマト
・ナス
・ブロッコリー
・カリフラワー
・ピーマン
・芽キャベツ
<3>重要な食品(14種類)
・マスクメロン
・バジル
・タラゴン
・カラス麦
・ハッカ
・オレガノ
・キュウリ
・タイム
・アサツキ
・ローズマリー
・セージ  
・ジャガイモ
・大麦
・ベリー

【宝石療法】
○[ダイヤモンド]
○[ウォータ・メロン・トルマリン]
○[マラカイト・アジュライト]
○[アズアマラカイト]
○[天然磁石]

【漢方療法】
術後の腹痛------------------------大建中湯
化学療法による味覚障害-

  ①補中益気湯
  ②香蘇散
  ③六君子湯
抗ガン剤点滴、放射線治療で
①唾液が出過ぎて困る---人参湯
②口が乾燥----------------柴胡桂枝乾姜湯
③湿疹・発赤-------------紫雲膏
  

【漢方薬】(ガン)
■黄連湯   
■帰脾湯 
■芎帰膠艾湯
■三黄瀉心湯    
■四逆散
■十全大補湯
■小建中湯     
■大黄甘草湯
■大承気湯    
■調胃承気湯
■当帰芍薬散
■茯苓飲
■六君子湯
  

【有効なもの】
◎紅参
◎山豆根(肺ガン・喉頭ガン)
◎スクアレン
◎白花蛇舌草
◎霊芝





ガンの転移
(→リンパ節へのガン転移)
 

■転移の巧妙さ
「ガンのやっかいさは、秩序を無視した増殖だけでなく、様々な臓器に飛び火することにある。転移しなければガンも単なる“腫れ物”に過ぎないが、たった1個の異常な細胞から始まったガンは、もとの居場所を離れ、血管やリンパ組織を経て遠い組織に潜り込み、再び増殖を始める。まるで独立した意思を持つかのような『悪性新生物』である。

■転移に関する仮説(タネと土壌)
「英国の病理学者ページェットが、乳ガンで死亡した患者の解剖結果から、転移は特定の臓器や組織に多いことを発見、「タネと土壌」の仮説をうち立てた。それは、タネ(ガン細胞)が育つためには、それに合った土壌(臓器)が必要だという内容で、転移は行き当たりばったりに起きるものではなく、背後に、背後に仕掛けが巧妙に施されているとした。
■転移のメカニズム
<1>接着因子がなくなる。
  「接着因子とは、多細胞生物が体の構造を維持する上で、絶対に必要なもの。なかでも、細胞がどの臓器の細胞と結合するかを決めている「カドヘリン」と呼ばれる接着因子で、発見した竹市雅俊・京都大大学院生命科学研究所教授は、“転移能力の高いガン細胞は、まず、接着因子が無くなるなどの異常が起きる”を話している。」
「細胞はそもそも、その表面に「所属情報」とでも言うべき接着因子を持っている。それに従って、特定の臓器を構成する細胞の一員となっている。人体は約60兆個の細胞から出来上がっているが、その1つ1つが組織や臓器ごとにまとまりを保ち分業している。
<2>細胞外の組織を分解する:
「異常なタネとなったガン細胞は、本来の居場所を離れ、異なる接着因子を表面に作りながら、新たな土壌(居場所となる臓器)へと動き始める。」
<3>血管に入り込む:
「途中で血管などの壁に道を塞がれると『タンパク質分解酵素』を分泌して壁を破壊し、突き進み血管に入り込む。このとき使われるタンパク質分解酵素は、細菌感染の時などに白血球などが使っているのと同じもので、ガンは正常な機能に使われるものを悪用する異常さがある。」
<4>血管から這い出す。
<5>新たな背着因子を細胞表面に出し、別の臓器に定着する。
■転移に関わる遺伝子
「8種類あることを、国立がんセンターの横田淳・生物学部長が1996年、突き止めた。ただ、正常な遺伝子が、時と場所を間違えて働きガン化させる真の犯人はまだ見つかっていない」
■ガン転移遺伝子40種
「東京大学の多比良和誠教授らと産業技術総合研究所、スイス系製薬大手ノバルティスファーマは、ガンの転移に関わる約40種類の遺伝子を新たに見つけた。
東大グループはヒト由来のガン細胞について、様々な遺伝子の働きを抑えてみて、ガン細胞の移動能力がどう変わるかを調べた。リボザイムという酵素を使って、遺伝子RNA(リボ核酸)を分解して、タンパク質が作られるのを妨害する手法を使った。
その結果、未知の約40種類の遺伝子が、ガン転移に関わることを突きとめた。未知遺伝子のほかに、すでに転移との関係が報告されている遺伝子『ROCK』なども同様に検出できたことから、実験の精度は高いとみている。」2002.10.3《日経産業新聞》
■転移を抑える遺伝子
「米バージニア大学のグループはガン細胞の転移を抑制する遺伝子を特定した。転移性がんの効果的な遺伝子治療になるという。
転移性の強いガン細胞では『RhoGD12』という遺伝子が少ないことを発見した。転移性のヒトガン細胞に、この遺伝子を導入したところ、特殊なタンパク質が作られ、転移が起きなくなった。
このタンパク質の有無を検知すれば、ガン転移の早期発見につながる。」2002.11.27《日経産業新聞》
■転移しやすさを予測
「転移しやすいガンに特徴的な遺伝子:
 <1>『サイクリンD1』:
「細胞が分裂する過程を調節する遺伝子で、突然変異などで働きが強くなると、分裂にブレーキが掛からなくなり、ガン化の一因になる。この遺伝子は、11番染色体にあり、その一部が増幅すると、ガンが転移して増殖しやすくなる。
たとえば、食道癌の場合。もとの食道ガンで細胞の増殖は28%だが、肺など別の臓器に転移した場合、71%の細胞で増殖が始まる。」
<2>『C-erdB』:
「細胞増殖に関与する遺伝子。C-erdBが増殖していると周囲のリンパ節に高い頻度で転移が見つかる。」
■転移とタンパク質
「ガレクチンというタンパク質『ガレクチン9』がガン細胞内にあると、他の臓器に癌が転移しにくいという臨床結果が出ているとして、平島光臣・香川医科大教授はベンチャー企業を設立した。」2002.10.24《日経産業新聞》
■ガン細胞の動きを止める物質
「慶応大学と微生物化学研究所(東京・品川)の研究グループは、ガンの転移を防ぐ効果がある物質を発見した。ガン細胞はアメーバのように自分で動いてほかの臓器に移っていく性質を持ったものが多いが、新物質を投与するとその動きを止められる。研究チームはガンの転移が防げれば、効果的なガン治療が出来るようになると期待している。
慶応大学理工学部の井本正哉助教授らは、1000種類程度の微生物を培養しba医用液の中からガンの転移を抑制できる物質を発見した。この物質は慢性呼吸器疾患や皮膚病などで治療に使われている抗生物質に似た構造をした物資で、『マイグラスタチン』と名付けた。
ヒトの食道ガンの細胞は肺や肝臓などの臓器に転移しやすい。シャーレに食道ガンの細胞を敷き詰めて、マイグラスタチンを投与すると、ガン細胞の運動能力が半分以下に落ち込むことがわかった。また、ガン細胞を頃阿須に運動能力だけを奪うため、研究チームは正常細胞には悪影響を与えないとみている。ガン細胞の運動能力を奪う薬剤はこれまでにも知られているが、正常な細胞にも作用して殺してしまうことが多かった。
転移ガンは早期発見が難しく、現在は転移を防ぐ有効な治療法は確立されていない。今回見つかった物質は、正常な細胞に影響を与えないため、安全性が高いガン転移抑制剤の開発につながる可能性が高い。」2000.5.1《日本経済新聞》
■転移を抑制するDDS
「京都大学の西川元也助教授と橋田充教授らは、新タイプのDDS(薬物送達システム)でガンの転移を抑える手法を開発した。2005年9/14の日本癌学会で発表。
動物実験で肺に転移したガン細胞の増殖を1/300に抑えることを確認した。制御が難しい手術後の肺ガンへの転移を抑える可能性がでてきた。
研究チームは、過酸化水素がガン細胞の転移を促すが、活性酸素を分解する酵素(カタラーゼ)を投与すると転移が抑制されることに着目。カタラーゼが血中で壊れにくくするため、水溶性高分子[PEG]をカタラーゼにくっつけたDDS製剤をつくった。
ガン細胞を皮下移植し、肺への転移を起こさせたマウスで実験。移植したガンを手術で取り除くと、肺でガン細胞が急増する。作製したDDS製剤を投与したマウスでは、何もしなかったマウスに比べ、ガン細胞増殖が1/300に減少。活性酸素による増殖因子の増加を防ぐことで、ガン細胞の増殖を抑えているとみている。」2005.9.15《産業》
■ゾナタ
「ガンの骨転移は増殖したガン細胞が血流で骨に運ばれ、骨髄内の毛細血管で増殖して起こる。ガン細胞は骨を溶かす細胞を活性化させ正常な骨が作れなくなる。ゾナタ(高カルシウム血症薬)は骨の表面に吸着し、骨を溶かす細胞を減らす。」
■微小カプセル
「大阪府立大学の河野健司教授らはガンの病巣だけに抗がん剤を集中的に投与できる微小カプセルを開発した。2006年5/24高分子学会で発表。
『リポソーム』と呼ぶ脂質からなる直径約100ナノ㍍のカプセルで、体温では安定しているが、40℃以上に温めると収縮して中の薬剤を放出する。
ガン細胞周辺には栄養を取り込むために血管が集中している。カプセルに入った抗がん剤を注射し、患部に集まった頃合いをみて温めると、高分子が縮んでカプセルの表面が壊れ抗がん剤が放出される。
ガン細胞を移植したマウスに抗ガン剤をいれたカプセルを投与、12時間後に45℃で10分間温めると、ガン細胞の増殖を抑えることが出来た。」
■骨への転移
「理化学研究所は、骨へのガン転移を抑える物質を見つけた。土壌中の微生物が作り出す物質で、骨を壊す破骨細胞を抑える。動物実験で効果を確認した。
川谷誠基礎科学特別研究員らの研究成果。土壌中の放線菌が作る『リベロマイシンA』という物質の作用を調べた。この物質が骨粗鬆症に有効であることは理研で確認済み。
ガンが転移しやすいモデルマウスの尾に、人の肺ガンを移植し、リベロマイシンAを投与した。1ヵ月後にレントゲン写真で確認したところ、肝臓や肺には転移したが、骨には転移していなかった。また、骨折も見られなかった。骨の切片を調べると、破骨細胞が消えていた。
ガンは骨へ転移する際に破骨細胞を活発化させて骨を破壊し、増殖するための足場を作る。さらに破骨細胞ががんの増殖を促し、ガンが大きくなる。この循環を断つことでガン転移を予防できる」20065/25《産業》
■2種類のタンパク質
「日本赤十字・秋田短期大学などのグループは、ガンの転移を抑える新しい仕組みを見つけた。2種類のタンパク質が、血管に入ったガン細胞が別の臓器に転移するのを抑える。
廣田茂・秋田短期大学教授らの成果。研究グループはこれまでに、ガン細胞周囲の細胞が作る『KAI1』というタンパク質がガン細胞にくっつき、転移を抑えることを発見していた。今回は更に詳しい仕組みを調べた。
血管内皮細胞が作るタンパク質を調べたところ、『DARC』というタンパク質がKAI1とい結合することが分かった。KAI1がついたガン細胞が血管内に入ると、KAI1にDARCがくっつき、ガン細胞を抑えるという。
DARCを作れないマウスに人の前立腺ガンを移植して1年間様子を見たところ、ガンは肺に転移したが、DARCを持つマウスでは転移しなかった。」20068/7《産業》
■肺への転移に関係するタンパク質
「東京女子医科大学の丸義朗と東京大学の共同研究グループは、消化器などに最初に発生したガン細胞が、血管を通じて肺に転移するときに不可欠なタンパク質2種類を、マウス実験で突き止めた。このタンパク質の働きを抑える中和抗体を患者に投与すれば、肺への転移をさまたげられる可能性がある。
成果は2006年11/27ネイチャー・セルバイオロジー電子版に掲載。
胃などに最初のガンが発生すると、ガン細胞が分泌する物質の働きによって、肺で『S100A8』『S100A9』というタンパク質が異常に多く作られるようになる。すると、タンパク質の異常発生に対処するため、血液中の『骨髄球系細胞』という免疫細胞が肺に向かう。最初に現れたガン細胞は、この免疫細胞の移動を利用して血管を通り、肺へ向かい転移する事が分かった。」
■9種類のタンパク質
「島津製作所は2007年4/23、実験動物中央研究所ががん転移に関するタンパク質を9種類発見したと発表した。田中耕一フェローの研究成果であるタンパク質の質量分析技術と動物中央研の持つ免疫機能を失ったマウスを組み合わせて実現した。
まずヒト由来の膵臓がんの細胞を体内に注入したマウスと大腸がんのガン細胞を注入したマウスを用意した。その後、肝臓に転移したがん細胞を取り出し、再び別のマウスの体内にそれぞれ注入、肝臓に転移したがんを調べた。
その結果、膵臓がんと大腸がんの両方の場合でも増減しているタンパク質が9種類あることを特定した。
   ■体外から観察
「アンチキャンサージャパン社。アンチ社の技術は「イメージング」と呼ばれるもの。クラゲやサンゴから摂取した経口タンパクで細胞や分子を発色させて、観察に役立てる。
緑色蛍光タンパク質(GFP)を組み込んだヒトのガン細胞をマウスに移植する。特定の光を当てるとガン細胞が緑色に光り、移植したガン細胞がどこに転移したかが分かる。
ただ、ガン細胞を単純にマウスに移植しただけでは転移しない。
親会社の米アンチキャンサー、大腸ガンならマウスの大腸、膵臓がんならマウスの膵臓にと、同じ部位に外科的に移植すると転移することを突き止めた。
■骨へ転移
「乳ガンや前立腺ガンの6~7割。肺ガンの3~4割は骨に転移する。骨に転移したガンは、骨の内部で増殖するスペースを確保するために、周囲の組織を壊していくため、次第に骨がもろくなり骨折につながる。」
■抑えるペプチド
「東京医科歯科大学の玉村啓和教授と京都大学の藤井信孝教授らは、ガンの転移を抑えるペプチドを作ることに成功した。乳ガンや白血病で見つかっているペチドをもとに『T140』を人工合成した。
T140は細胞表面などにあるタンパク質「CRCR4」に結合する。ガンはCXCR4の濃度の多い場所に転移しやすいことが指摘されている。
遺伝子操作で免疫不全にしてガン転移の抵抗性を無くしたマウスの尾に、乳ガンを注射して肺への転移を調べた。マウスにポンプを埋め込み、数時間かけてペプチドを投与した。未投与のマウスではガンが肺全体の40%を占めたが、ペプチド投与グループは25%に抑えられた。
T140の元となったペプチドは関節リウマチでも確認されている」2008/5/9
■仕組みを解明
「2009年、慶応義塾大学の河上祐教授と工藤千恵助教らは、ガン細胞が転移する仕組みを発見した。ガン細胞がまわりの細胞に広がって転移する際に、免疫の働きを抑えて転移しやすくしていた。
成果は3/3のキャンサーセル(電子版)に発表。
研究チームはガン細胞で働く『Snai1』という遺伝子に着目。この遺伝子が働くと細胞同士がくっつく力が弱まり、ガンが転移しやすくなることが知られている。
マウスでこのSnai1遺伝子の働きを調べたところ、免疫反応に必要な細胞の働きを弱めるなど、ガン細胞を体内の異物として認識されないようにして免疫系から逃れていた。
この遺伝子が働かないようにマウスを操作したところ、ガン細胞の転移や増殖が抑えられたほか、免疫反応も活発になった
■即時分析
「2009年、スイス系検査が医者のロシュ・ダイアグノすティックス(東京港区)は、ガン細胞の転移の状況をリアルタイムで分析できる細胞解析システムを発売した。」
■ロボットで判別
「2009年、カナダの西オンタリオ大学のチームはは、手術中に体内の腫瘍を高精度に見つけ出す、ロボットを開発した。細長い触診装置が取り付けてあり、組織の微妙な硬さの違いから腫瘍を判別する、
人の手による触診より精度が40%以上高まるという。
臓器などに生じた腫瘍は周囲の正常な組織より硬くなる傾向がある。従来も触診は利用されていた」
■転移を観察
「2010年、東北大学の権田幸祐講師らは、生きたマウスの体内でガン細胞が転移する様子を、分子レベルの精度で観察することに成功した。
独自開発の顕微鏡を使い、ガン細胞表面にあるタンパク質「PAR1」に蛍光分子で標識をつけ、ガン細胞が動く様子を調べた。その結果、血管近くのガン細胞は血管より遠くのガン細胞と比べて約1000倍の速度で移動することが分かった。
■血液検査で見つける
「2010年、東京農工大学の松永是驚異寿らは、ガン細胞の転移を血液検査で発見する手法を開発した。ガン細胞は血管内を、血液と共に流れて別の場所に移る。新しい手法は少量の血液を微細な穴を開けた金属板に通すだけで、わずかなガン細胞でも検出できる。血液中のガン細胞の8割を補足できる。
血液中にもれ出したガン細胞を捉える装置を製作。基板上に電気を通さない微小部分を多数設けたうえで、電解メッキで金属のニッケルをコーティングし、これをはがして使った。縦横18mm、厚さ50マイクロ㍍の薄板に、8~11マイクロ㍍の微細な穴を均一に開けることができた。
血液の液体成分や赤血球は8マイクロ㍍より小さいので穴を通過する。よりサイズが大きいガン細胞のみが、うまく引っかかる。
通常、血液1㍑中には赤血球など約50億個の血球が含まれるのに対し、ガン細胞はあっても1~10個ぐらい。
実験では健康な人の血液に研究用に販売されている人の胃ガン細胞、大腸ガン細胞、肺ガン細胞、乳ガン細胞などを混ぜて調べた。」



 ガンワクチン
■がん免疫療法
体の免疫力を利用してがんを退治するのが免疫療法。[手術][抗ガン剤][放射線療法]に次ぐ治療法として期待されている。
①“ようやく免疫療法に適したガンを見つけることができた”と千葉大学大学院医学研究院の中山俊憲教授は胸を張る。
口やのどにガンができる頭頸部ガンの患者8人に免疫療法を施し、3人でガンを小さくすることに成功した。中山教授らが開発した手法は2つのルートを使って患者の免疫を活性させる。ガン細胞を攻撃するだけでなく、他の免疫細胞の働きも刺激する『NKT細胞』を動脈注射で、免疫の司令塔となる『樹状細胞』を鼻から患者に投与する方法だ。“免疫細胞をいかに患部に集中させるかが重要になる”と中山教授は語る。ガンのできている場所によって免疫作用は異なってくる。そのため[投与方法][治療回数][タイミング]が問題になる。
②東京大学医科学研究所の田原秀晃教授はペプチド(タンパク質断片)を患者の体の中に入れて、ガンをやっつける臨床研究に取り組んでいる。ペプチドは作りやすいが、“効果が出にくく、進行ガンには対抗できないのではないか?”という意見もある。田原教授はペプチドの作用メカニズムの解明を続けた結果、“ペプチドがT細胞を増やしたり、ガンの作用したりするメカニズムがほぼ分かった。効果的な治療方法を探す土台になる”と語る。
③ガン免疫療法の第一人者である米国立がん研究所のスティブン・ローゼンベルグ博士は2006年、医学誌で“10年間免疫療法の臨床研究を続けてきた結果、進行ガン患者での治療効果は(2.9%)だった”と公表した。
・・・・これまでの免疫療法ではガンを克服できない・・・
④米国では薬で体内のリンパ球を大幅に減らし、その後培養したリンパ球を大量に入れるという手法で患者の「体質」を変えて免疫の力を上げる臨床研究がスタートした。
⑤ガン免疫療法で治療効果を高めるのは簡単ではない。慶応大学の河上祐教授はガンに特異的に働くTリンパ球を患者の体内で増やす研究に取り組む。臨床研究でガン細胞の成長を食い止めることはできたが、縮小はしなかった。Tリンパ球は体外では増えても体に入れるとあまり増殖しなくなる。体内でも活発なTリンパ球を作る必要がある。“免疫は複雑でやってみないと分からないことばかりだ”(河上教授)
患者の末梢血からとった免疫細胞を体外で増やして、その後、体の中に戻す手法は、一部の医療機関では治療行為として臨床応用されている。ただ、効果を疑問視する声は専門家の間でも根強い。その理由は、試験管内で培養したガン細胞には効果的でも、体内ではあまり働かないからだ。
⑥イミュノフロンティア(創薬ベンチャー)は三重大学の珠玖洋教授が開発した「がんワクチン」を使った免疫療法の臨床研究に取り組んでいる。免疫細胞を使わずに、ガンに関連するタンパク質を薬剤として使う。体内にはいると、この薬剤を目印に免疫細胞が活性化、ガンを叩くという仕組みだ。タンパク質を特殊な物質で包み投与するため、患部に到達するまで分解されにくい。一般的に免疫療法はガンの増殖が止まるなどの効果が出たとしても、日数がかかる。その理由は、体内の免疫系を刺激するのに日数が必要なため。1~2週間に1回投与して4~5ヶ月にようやく効果が出ることが多い。臨床研究では乳ガン患者で見つかったタンパク質『NY-ESO-1』をがんワクチンとして使う。投与すると司令塔となる免疫細胞がキラーT細胞だけでなくヘルパーT細胞にもガンへの攻撃命令を出す。食道ガン患者数人でテストし2人でがん縮小、前立腺ガン患者の大半で増殖を抑える効果を確認した。
⑦FDA(米食品医薬品局)は抗ガン剤を認可する際、患者の生存率を重視する。米ベンチャーのデンドリオン社が世界初のがんワクチン実現を目指し、治験を終えてFDAに認可申請した。治療方法が限定される前立腺ガン患者を対象にしているが、まだ足踏み状態。
■商品化・・・ロシアで
「ガンワクチンは患者自身の免疫力を活性化し、患者の免疫細胞がガン組織を破壊することを促す医薬品。副作用も少なく、他の治療法では不可能な微少ガンや転移巣を叩くことができる。
従来開発されたガンワクチンは、細胞の細胞壁などで非特異的の免疫系を活性化するが、治療効果は限定滴だった。
現在、開発が進むワクチンは、ガン特異抗原を免疫し、患者の体内にガン特異的に攻撃する免疫細胞を増強するのが特徴。
【オンコファージ】Oncophage
がんワクチン商業化1号。米アンチジェネチック社が開発した腎臓ガンのワクチンでロシアで商品化された。
対象・・・腎臓ガン・悪性黒色腫
抗原・・・事故のガン組織からヒートショック蛋白とガン関連抗原の複合体を抽出
【Reniale】
対象・・・腎臓ガン
開発企業:ドイツLipoNova社
開発段階:フェーズⅢ
抗原・・・患者のガン組織のタンパク質分画
【GVAX】
対象・・・前立腺ガン
開発企業:米Cell Genesys社・武田薬品
開発段階:フェーズⅢ
抗原・・・GM-CSF遺伝子を導入した2種類の前立腺ガン細胞株
【TroVax】
対象・・・腎臓ガン
開発企業:フランスsonof-aventis社
開発段階:フェーズⅢ
抗原・・・ガン関連抗原5T4遺伝子を組み込んだワクチニアウイルス
【MAGE-A3 ASCI】
対象・・・非小細胞肺ガン
開発企業:英GlaxoSmithKline社
開発段階:フェーズⅢ
抗原・・・MAGE-A3抗原



カンジダ症 Candida Albicans
=「モニリア症」ともいう。
⇒生理的に体内に存在するカンジダ、特にCandida Albicansという酵母の一種によって起こる。
◎口腔・膣・皮膚・爪・気管支・肺に急性or亜急性の炎症をきたす病態。
    (参照→鵞口瘡)
■(A Field Guide to Germs by Wayne Biddle)春日倫子訳より。
<1>カンジダ症のおもな原因であるカンジダ・アルビカンスは真菌の一種をなす酵母であり、あきらかに我々の世界に入り込んでいる。とは言っても、これ(サッカロミセス・セレヴィシア)はパンを膨らませ、ビールを醸造し、果実酒を発酵させる種類の酵母ではない。そして又イギリス人が好んでトーストに塗る食油酵母、 あのマーマイト(カンジダ・ウティリス)とかいうひどい代物でもない。兄貴分のキノコが朽ち木の幹に好んで住み着いているのと同じように、真菌は腐りかけた 有機物をヒトが溜めている部位、つまり口腔や性器や皮膚などに住み着いて いる。
<2>この酵母が問題になるのは、我々の防御システムが弱ってそれが繁殖しすぎたときに限られる。つまり、防腐剤がきれてカビだらけになったサンドイッ チと同じなのだ。
<3>おむつかぶれというのは、赤ちゃんのお尻にカンジダ・アルビカンスが店開きしたときに起こるものだが、この場合は免疫系が弱った為ではなく、申し 分のないご馳走がたっぷりあるだけのことである。
<4>女性の性器のいわゆるカンジダ症は、この酵母が皮膚表面や腸管内という通 常の住処から伝わって感染するもので、性行為によることはほとんどない。
<5>鵞口瘡<口内或いは舌の上に黄白色の「コッテージチーズ」様の斑点が生じ て、掻き取ることが出来る>と呼ばれるのは、この酵母が口腔内で繁殖する 病気で、若者の間ではエイズの徴候として悪名をはせているが、これは普通 の子供にも見られる病気である。

■エイズの日和見感染の1つ
「Aさんは89年、風邪の様な症状で受診した都内の病院で、カンジダ症と診断された。免疫力が落ちてカビが口の中に白く膜を作るエイズの日和見感染症の1つ。「エイズを発症しています」。医師は検査数値を挙げ、そっけなく告げた。
エイズと聞かされても、全く知識がない。医師からも満足な説明もないため、どうして良いか分からなかった。「感染の事実を家族には話したが、友人には話せない。何もかも忘れるため、宅配便のアルバイトに打ち込んだ」と話す。
95年にカリニ肺炎、97年にはサイトロメガロウイルス網膜炎にも罹り、失明しかけた。「眼科と内科の連携が悪かったのではないか」と思い、一時は医師に不信感を持った。病気を忘れようと、ギャンブルにおぼれたこともある。
今は1人暮らし。毎日、抗HIV薬3剤を服用しているが、幸い副作用はほとんどない。
「エイズ予防は、頭で分かっているだけではダメ。実践しなくては」
  「日本はいまだに増加傾向」と厚生省エイズ疾病対策課。特に日本人男性の性感染が目立ち、20~40歳の働き盛りに多い。「エイズは薬物中毒や外国人ではなく、ごく一般的な人達に広がってる」と警告している。
「現実の感染者は、厚生省の数値の6倍にはなるだろう」。エイズ治療に詳しい大坂大健康体育部の吉崎和幸教授は推測する。心当たりがあっても抗体検査をする勇気がない「影の感染者」が、水面かでのエイズの蔓延に拍車をかけている。「最近、治療薬の進歩で、エイズは怖くないとの風潮があるがどんでもない。HIVに感染したら、身体的・経済的・精神的の3つの苦痛に耐えられるが、考えてほしい」と訴える。
■なぜ、再発
「40代女性。昨年、カンジダになり、婦人科で塗り薬をもらって。3週間ほどで治りました。ところが、その後、2回も再発しました。ここ1、2年、抗生物質は飲んでいませんし、清潔さには気をつけていますが、どうして再発するのでしょうか?」
カンジダ症は、女性では外陰部、膣にできやすい感染症で、カンジダ菌で起こります。
性感染症の1つですが、成功が無くても、抵抗力が低下した時や、抗菌剤や抗生物質の服用で膣の自浄菌が減り、その代わりにカンジダ菌が増える菌交代現象によってもよく起こります。
自浄菌は、卵巣から分泌されている卵胞ホルモンにより栄養をもらっているので、ホルモンのリズムが狂ったり、閉経などでホルモン分泌が減ると自浄作用は減少し、感染しやすくなります。
カンジダ症は、性行為ではお互いに感染を繰り返すこともあるので、パートナーと一緒に治療することが必要です。
治療法は塗り薬、膣錠、内服なによる薬剤をシヨウします。また、漢方療法により血行障害が改善され、皮膚・粘膜が湿潤となり、抵抗力が付いて、感染しにくくなることもあります。
カンジダ症を繰り返す例には、糖尿病など全身の抵抗力が低下する疾患がみられることがありますので、一度、内科を受診し、検査を受けて下さい。また、最近、月経時のナプキンやおりものシートにかぶれて繰り返す方も見られるので注意が必要です」
■重病患者を襲う
「一般の人に「カビによる病気を知っていますか?」と聞くと、水虫以外に病名を上げる人はほとんどいない。
しかし、数は少ないがカンジダというカビの名前を挙げる人もいる。水虫に次いで最も高頻度で病気を起こすのが、このカンジダ。正式には「カンジダ・アルビカンス」という。
このカビが皮膚に感染すると水虫やタムシに似た症状となる。女性の場合は膣にも感染し膣カンジダ症になる。性交渉で相手にも感染するので、膣カンジダ症を治療しても、今度は相手からカンジダをもらって再感染することもある。ピンポンのようにカビが往復するので「ピンポン感染」と呼ばれる。
医療現場ではカンジダによる日和見感染が深刻な問題となっている。「日和見感染」とは、重い病気などで体が弱り、通常ならば生体の防御機構が働いて撃退されるような微生物が、体内に入り込んで起こす感染のことだ。カンジダの場合は、重病患者などの体の奥深く、内臓で増殖する。
口から食道・胃・腸に至る消化管内には無数の微生物が住み着いている、ほとんどが細菌で、カビでは唯一、カンジダが加わっている。ジャングルのように、これらの微生物の間には厳しいなわばり争いがある。ほかの微生物がたまたま消化管に入ってくると、協力して排除してしまう。この限りではカンジダは人間にとっては有用だ。
しかし、ガンなどの重い病気の患者は細菌による感染症にかかりやすく、そのたびに抗生物質を投与する必要がある。この抗生物質に感受性のある細菌は、口の中を含め消化管内のあらゆる場所で殺されるようになる。
すると、これらの細菌が占領していた領域に、抗生物質が効かないカンジダがどんどん増殖していく。
消化管の内面を覆っている粘膜層が健全な場合はカンジダは増殖しても組織ナイブに侵入できない。粘膜のは皮膚と同じく強い防御機能があるからだ。しかし、抗ガン剤などを投与されると、薬の効果はガンばかりでなく、この粘膜層も破壊してしまう。抗ガン剤の副作用だ。
そうなると、カンジダは消化管の壁へ容易に侵入し、血流に乗って全身に到達する。カンジダが内臓に感染すると、治療はとても困難だ。
カンジダなどのカビは人間と同じ真核生物という大きなグループに属するので、その細胞の構造は、人間とよく似ている。だから、カンジダに効果がある薬は、人の細胞にも悪影響を及ぼす可能性が高い。この感染がもとで命を落とすこともある。
カンジダは消化管内にいつもいるので、ガン以外にも、身体が弱れば常に人間に牙を剥く可能性がある(宮治誠・千葉大学教授)2002.8.4《日本経済新聞》
■酩酊症
「ストレス解消にちょっと一杯というのは、多くの人の楽しみだが、アルコール分解酵素を持っていない下戸の人にとって、サケは苦痛以外の何ものでもない、少し飲んだだけで、頭がフラフラして気持ちが悪くなる。
そうした人が酒を一滴も飲んでいないのに、顔を真っ赤にして酔っぱらったような症状を引き起こす病気がある。それは食後30分~2時間くらいで顔が真っ赤になり、酒臭い息を吐き始める『酩酊症』といい、朝食後、この症状が出てしまう人は会社などで非常に肩身の狭い思いをする。酒を飲まないのに、なぜ酒を飲んだ症状がでてしまうのか?その謎解きの鍵をにぎるのが、消化管の中に住み着いているカビ「カンジダ・アルビカンス」(略称:カンジダ)なのです。
このカビは普段は悪さをしないが、癌の重病患者などの消化管から体内に侵入し、内臓に重い感染症を起こすことが知られている。
しかし、健康な人でも胃や腸に狭窄があって、食物がそこで停滞すると、カンジダが繁殖して発酵しはじめ、アルコールが出来てしまう。カンジダはカビの中でも、酵母のグループに属するからだ。
言い換えれば、カビの働きで体内にミニ“醸造所”ができ、自家製の酒で酔っぱらってしまうというワケだ。
現在までに国内で30例以上報告されているが、いずれもかなり重症。症状が軽いと、本人が病気と思わずに病院に行かないので、隠れた患者は多いと考えられている。
食事の内容と症状の軽重に関係があることも分かってきた。コメやイモなど発酵作用の原料となる炭水化物を多く含む食物を口にしたときに症状はひどくなるらしい。
1例だが、カンジダでなく、ワインやビールの醸造に使う酵母「サッカロミセス・レエビジエ」による症例も報告されている。摂取した食物中に酵母が生きていて、体内で働いてしまった結果と考えられている。
治療方法は、抗真菌剤の内服だが、効果は一時的だ。根治するには、食物滞留の原因となる消化管の狭窄を切除して食物の通りをよくする手術をするしかないようだ。
興味深いことに酩酊症に似た病気が魚にもある、カンジダの仲間の「カンジダ・サケ」と呼ばれる酵母があり、これが養魚場の魚の胃で増殖する。、ニジマス・アマゴ・ヤマメなどの渓流魚に多い。この病気になった魚は胃が拡張し、その中にカンジダ・サケを大量に含む灰褐色の液体が詰まっていて、無数の小さいガス泡が混じり、発酵が起きている可能性を示している(宮治誠・千葉大学教授)2002.8.11《日本経済新聞》

【色彩療法】
<1>口腔のカンジダ---青緑色。
■膣カンジダ
「ロート製薬は2008年4/10、女性器の強い痒みを引き起こす膣カンジダの再発治療薬「メンソレータム フレディCC膣錠」を22日に発売すると発表。一般用医薬品としては国内初の医薬品




 かかとが痛い(跟痛)
■かかとが痛い「骨棘」
「50歳代、男性。昨年から右足のかかとに痛みを感じる葉になりました。私の趣味は登山ですが、朝起きての第一歩が苦痛になりだし、病院に行ったところ骨棘(コツキョク)と言われました。《導水瑣言》のような病気で、どう対処すればいいのでしょうか?
正式の病名は『踵骨棘(ショウコツコキョク)』です。これはかかとの骨(踵骨)の足底部の着地部分に骨のトゲ(棘)が出来、体重がかかると痛む病気です。
人間の足の裏には、上方になだらかなアーチを有する土踏まずがあります。これは足指にある前足部と後足茯苓飲の踵骨との間にあるゴムバンドのような足底筋膜により支持されています。ちょうど弓の弦のようなもので、扁平足ではこの原画緩み土踏まずが無くなります。
人間が起立する時には、この足底筋膜が緊張してアーチを支えます。骨が直接に圧迫されないように熱い脂肪層がありクッションとなっています。しかし加齢とともにこの脂肪が減ると足底筋膜の踵ことへの付着にストレスがかり過ぎるようになり、余分な骨である骨棘ができるようになります。そしてこの部分に炎症が起きると、かかとに痛みが現れ、急性期には強い痛みのため、靴も履けなくなることもあります。このようば場合はステロイド注射をすることもありますが、一般的は消炎鎮痛剤の服用で十分です。
あなたの場合には、靴の土踏まずの部分にパッドを当て、骨棘の部分を少しくりぬいた足底板を作られるのがいいと思います。

◎足跟痛:桂芍知母湯特効あり。
もし湿熱甚だしき者は当帰拈痛湯に宜し《方読便覧》
【漢方薬】
■四物湯
■芍薬甘草湯
■大黄附子湯
■八味地黄丸
■六味丸

【臨床例】
☆越跟痛
「越中の僧、玉潭は、病みての後、左足屈縮して行歩すること能わず。乃ち越婢加朮湯をつくりて之を飲む。時に紫圓を以て之を攻む。攻むる毎にその足伸びること寸許り。出入りすること三月ばかり。行歩、常に復す。而して 指頭なお力なし。跂(=キ、つまだてる)立すること能わず。僧益々之を下して止まず。一日遽かに起ちて架上の物を取る。已りて自ら念う、其の架やや高し、跂立に非ざれば及ぶこと能わず。因って復試みに之をなすときは則ち已に意の如し。」《建珠録》




 かすみ目
(参照→「目がかすむ」「ベーチェット病」「飛蚊症」)
◎チェック→「サルコイドーシス」

【鍼灸】
「曲池穴に灸すると、眼がハッキリする」《沢田流聞書鍼灸眞髄》

【民間療法】
<1>オオバコ。
<2>ナンテン。
<3>ニワトリ。
<4>ウナギ・クロマメ(黒豆)・ゴマ・セキショウ・タニシ・ニワトリ・ヒシ・メ ハジキ。

【処方名-50音順】
■牛車腎気丸・・・・(老人の)
■明目流気飲・・・・(かすみ目、外障)
  

 かぜcommon cold
(参照→妊婦の風邪)
=「風邪」=感冒    
かぜ症候群:ウイルスによる上気道感染(病態)。
検査:
・白血球数
・赤沈
・CRP
・血清ウイルス抗体価
◎風邪の原因となる病原体は200種類以上あり、そのうち約80%がウイルス。
■かぜはウイルス感染症
「ウイルスというのは細菌より小さな生き物で、単独で増えることが出来ないために、ほかの生物の細胞に入り込み、それを壊しながら増える。
症状はウイルスの種類で違ってくる。
<1>ライノウイルス、コロナウイルス:
(1)『鼻風邪』の原因。鼻の粘膜で増えて鼻づまり・鼻水を引き起こす。
(2)こじらせることはあまりないが、たびたび感染してしまう。
<2>アデノウイルス:
(1)温度や湿度の変化に強い為、夏でも広がり『夏かぜ』を引き起こす。
(2)大人に感染すればのど(喉)で増え、油断すると肺炎を起こすこともある。
(3)子供には、のどの痛みや目の炎症を起こす『プール熱』の原因になる。
<3>RSウイルス、パラインフルエンザウイルス:
(1)小さい子供に重い肺炎・気管支炎を引き起こす。
<4>コクサッキーウイルス、エコーウイルス:
(1)下痢をともなう風邪
(2)髄膜炎を起こすことがある。
<5>インフルエンザウイルス:
(1)ひんぱんに突然変異するため、免疫が出来にくく、数年ごとに世界的な大流行を起こす。
 (2)症状もほかのウイルスよりも重く、39℃前後の高熱、頭痛・関節痛・筋肉痛などの強い全身症状が起きる。
(3)肺炎なども引き起こすことが多い。
1997.2.4《朝日新聞》」
■冬に増える。
「冬になると風邪の患者が増える。当たり前のように考えているが、これはなぜだろうか?
温度が低く乾燥している冬の気候は、インフルエンザなど冬の風邪を起こすウイルスにとっては生き続け、増殖するのに絶好の条件だ。一方、人間にとっては不利な気候という。
鼻やのどから肺へ通じる気管の粘膜には、じゅうたんのよな細かい毛(せん毛)が生えている。普段はこのせん毛が、侵入してくる異物や病原体などを外に押し出している。しかし寒さや乾燥で、このせん毛の動きが鈍くなる。又、粘膜が乾いて分泌液が減るやめ、ウイルスが侵入し、増殖しやすい状態になってしまう。大手前病院(大阪市)の辻野芳弘・小児科部長は「最高気温が5℃、最低気温が0℃より低くなり、湿度が50%以下になると、風邪の患者はどっと増える」と指摘する。
  冬には締め切った部屋で過ごすことが多くなることも、ウイルスが広がるのに好都合だ。特に通勤電車や学校・会社など、多くの人が狭い空間にいる      ところでは、ウイルスをもっている人が咳(せき)やくしゃみをすると、つば      などに含まれるウイルスが飛び散って感染が広がってしまう。
   暖房で空気が乾燥していると、粘膜が乾き気味になってさらに感染しやす      くなる。1997.2.5《朝日新聞》
■「入浴」を勧める外国
「熱があったり、風邪を引いたりした時、風呂に入るのはいけないと、多くの日本人が信じている。しかし、外国では層とは言い切れないようだ。
静岡県浜松市周辺にはブラジルから多くの人が働きに来ている。日本人医師が「シャワーや入浴をしないように」というと、「エー、何で」と困惑する。
「外国では入浴が常識です。とくにブラジルではシャワーで熱を下げるよう子供の時から教えられているようですから」と県西部鼻末医療センターの矢野邦夫・感染症科長。米国の医学書は、熱が高い子供には解熱剤よりも、シャワーやぬるま湯に入れることを勧めている。
風邪を引いている子供を入浴させて問題がないか。1994年に自治医科大学教授だった五十嵐正紘さん(地域医療学)を班長とする厚生省の「ありふれた病気」研究班が調査に取り組んだ。
五十嵐さああんと岡山雅信・同大助手は全国の小児科医(約270人)に「かぜの子供に入浴させるか?」と聞いた。「させる」はたった4%でm「絶対ダメ」
が12%、84%が条件付きで、その9割は「熱があったらダメ」だった。」
同時に全国の保育所の3歳児クラスの父母薬250人にも尋ねた。「入れる」は14%、「入れない」が46%。洗髪を避ける、浴す通導散で遊ばせないなど「入れ方を変えて入れる」が40%だった。親は医師よりは柔軟に対応しているようだ。入浴の結果は、「変わらない」82%、「良くなった」15%、「悪くなった」2%。
研究斑は風の子ども約90人を、入浴しないグループと入浴するグループに分け、入浴の影響を調べてみた。症状が出ている期間や合併症などに差はなかった。
国内の育児書の多くは風邪の時の入浴を避けるよう指導している。「入浴は体力を奪い、風邪を悪化させると考えられているようです」と岡山さん。貝原益軒の「養生訓」(1713年)にも、熱症に入浴は良くない、とある。
矢野さんはきっぱり言う。
「先頭からの帰り道で体が冷えた昔と違い、今は自宅に風呂やシャワーがあり、悪化の心配は無い。抵抗力が落ちているのに、細菌まみれの方が問題です。」1999.12.12《朝日新聞》
■線毛を弱らせるな
●のどと鼻の粘膜がウイルスの侵入を阻止している
「鼻や喉の粘膜細胞には、線毛という毛がびっしりと生えている。私たちの体を守っているのは、この小さな線毛たちだ。普段、この毛は活発に動いている。その動きによって、線毛の上に広がる粘液がどんどん流れているのだ。ここへウイルスなどの異物が入ってくると、その流れに乗せ安全なところへ運び出すという仕組み。つまり、線毛が活発に動いていれば、そう簡単にウイルスに感しないように出来ている。
ところが、乾燥した空気を吸い込み続け、粘膜が乾くと線毛の動きが鈍ってしまう。そこへ、ウイルスが入ってきても抵抗できず、侵入を許してしまいインフルエンザにかかってしまうのだ。
●温度が問題
鼻やノドの粘膜の乾き以外にも、線毛の動きを弱らせる原因がある。それは温度。ノドの温度はおよそ38℃だが、ちょっと冷やすとすぐに30℃まで下がる。すると、線毛の活動量が半減してしまうのだ。ノドを冷やすことは、そのままウイルスの侵入につながると考えて良いだろう。
鼻やノドの温度が下がるのは、毛細血管が収縮して血液が減るため。暖かい血液が流れてこなければ当然、粘膜の温度は下がってしまう。血流が悪くなる原因は-------

①直接冷気を吸い込んだ
②足や手先を冷やして、体温を保持するための自律神経が反応して血管を収縮させるため
③タバコ
④急激な運動
⑤イライラなども血流を悪くする。」
(NHKためしてガッテン)
■カゼに民間療法
「英国では国民の医療費は税金で賄われており、薬代や歯の治療の場合などをのぞき、国民は原則として治療代を払う必要はない。国民には人気の制度だが、政府は支出を抑えるため、極力医者にかからないようというキャンペーンに熱心だ。だから、医者に入っても、普通の風邪なら、なかなか薬は処方してくれず、自宅で十分休養をとっって自分で直すように勧められる。そのため、民間療法が普及し、私もよくアドバイスを受ける。
たとえば、カップにレモンの絞り汁とハチミツを入れ、湯で割って飲むドリンク。これは日本でもおなじみだろう。とにかくビタミンCを多く摂るように、というわけだ。最近は、ビタミンCにさらに亜鉛をミックスした市販薬が、自然の治癒力が高めると言われ、流行しているようだ。
鼻づまりや咳には、メイソール入りの塗り薬を茶さじ1杯を洗面器に入れ、湯を注いで蒸気を吸い込む。洗面器を抱きかかえながら、自分と洗面器を覆うようにバスタオルを頭の上からかぶる。というやり方だ。
私も試したことがあり、咳込みは抑えられた。が、副作用というのか、タマネギを切った時のように目が痛くなった記憶がある。
鼻のかみ方1つにしても、欧米人は口臭の面前でも躊躇しないので、その様子は日本人から見ればあからさまだ。
また、英国人は女性は普段から、ちり紙や小さなハンカチを洋服の袖口に押し込んで持つ習慣があり、風邪を引いている時には便利だろうと思う。
そういえば、鼻づまりの時に、植物のオイルをハンカチにたらして鼻にあてる方法もあった。
不思議なことに、日本でしばしば見かける白いマスクはこの国には存在しない。カゼの症状はどこの国民も同じだろうが、対処方法はこんな風に国で違うのはおもしろい」
■抗生物質の乱用
「日本ではER(緊急救命室)というアメリカのドラマが人気と聞いた。私のレジデント(研修医)生活は、そのERから始まった。
初日、緊張も抜けないまま、幸いにも元気な3歳の男児を受け持った。
「2日間熱が下がらず。咳と鼻水が止まらないのです」と母親は心配そうに訴えた。診察では咽頭が軽度に赤く腫れている以外は、極めて元気。ここは、今までの日本での経験をミセルチャンスとばかりに、私は診断を上気道炎とし、咳止め・鼻水止め・抗生物質・さらに解熱剤を処方箋に書き、準備万端とばかりに指導医に提示した。当然、二重丸の評価をもらえると思っていた私は、指導医の顔がみるみるこわばっていくのに驚いた。
「混ぜ風邪の子供に抗生物質を出すのか。咳、鼻水を止めるのは良いことなのか」。日本では上気道炎いわゆる風邪に二次感染予防として抗生物質、さらに風邪薬を出すのは当たり前。患者側も薬を求めて受診する“薬至上主義”がまかり通っている。
アメリカではどうですか?
いわゆる風邪はウイルスによって引き起こされ、抗生物質は細菌感染症にのみ効く。細菌感染症を強く疑うような症例、例えば、中耳炎・扁桃腺炎などにはちゅうちょ無く抗生物質を投与するが、ウイルスによる風邪に抗生物質の効果は無いに等しい。
また、風邪による咳、鼻水、下痢、発熱などは体内の異物を取り除こうとする体内の防御反応の1つであり、それを薬で押さえ込もうとするのは、1時期の症状緩和になったとしても、その症状を長引かせたり、薬の副作用をもたらすことにもなりかねない。
これは、アメリカと日本に保険システムの違いによるところが大きいと思われるが、“薬漬け”というような言葉は、アメリカでは見あたらない。
結局、その男児は解熱剤だけをもらって帰った。もちろん、帰る前にウイルス性の風邪である可能性が極めて高いことを説明し、症状の悪化や全身症状の変化があったらすぐに来院することを約束、署名させた。2週間後に男児を診る機会があった。その後、熱は1日で下がり、咳・鼻水も数日で治まったという。
近年、抗生物質が効かない強力な最近が問題になっている。不必要、不適切な抗生物質の乱用による産物である。医療者のみならず、患者側も責任があることに気づかないと、今後、さらに問題が拡大していくだろう」
■タンパク質が関与
「大阪大学の研究チームは、風邪にかかりやすい体質かどうかを左右している可能性があるタンパク質を突き止めた。
ウイルスが体内に侵入した際、感染したことを認識し免疫反応を起こしていた。動物実験での成果で、2006年4/9付けのネイチャーに掲載。
鼻やノドから細菌・ウイルスが入り込んでも、人間は病気になるとは限らない。自然免疫と呼ぶ病原体に立ち向かうシステムが備わっているためだ。毎年、風邪が流行していても罹りやすい人とそうでない人がいるのは、この自然免疫の個人差によることが大きい。
阪大の審良静男教授らが特定したのは細胞以内にある『MDA5』と呼ぶタンパク質。遺伝子操作でMDA5が働かないマウスを作製し、様々なウイルスに感染させたときの反応を正常マウスと比較した。
『ピコナウイルス』と呼ぶ風邪ウイルスに感染すると、このタンパク質の働きで免疫反応が誘導された。」2006.4.10《日経》
【色彩療法】
<1>緑色
<2>青色
<3>レモン色(慢性)

【民間療法】
<1>ダイコン。
<2>フキ。
<3>ホオノキ。
<4>ミミズ。
<5>アカネ・ウメ・イタドリ・イチヤクソウ・イナゴ・イブキボウフウ・ウスバサイシン・ウド・ウマ・ウメ干し・ウラジロガシ・オオバコ・オナモミ・カキドウシ・カボチャ・カミツレ・キカラスウリ・キキョウ・キク・キササゲ・ギシギシ・キュウリ・キンカン・クサノオウ・クズ・クマツヅラ・ゲンノショウコ・コオニタビラコ・ゴシュユ・コブシ・ザクロ・サフラン・サルトリイバラ・シイタケ・ジャノヒゲ・シュンラン・ショウガ・スイカズラ・スズメ・セミ・センブリ・ダイコンソウ・チョウセンニンジン・トウキ・ドクダミ・トチバニンジン・ナンテン・ニシキギ・ニッケイ・ニワトコ・ニワトリ・ニンニク・ネギ・ノキシノブ・バショウ・ハス・ハチク・ハマゴウ・ハマボウフウ・ヒオウギ・ヒマワリ・ビワ・ヘクソカズラ・ヘチマ・ミカン・ムクゲ・ムベ・メナモミ・モグラ・ユキノシタ・ユズ・ヨメナ・ヨモギ。
  【漢方薬】
■温白元
■黄蓍建中湯・・・・(咳嗽がひどい)
■加減葳蕤湯
■藿香正気散・・・・(胃腸型)
■葛根加朮附湯
■葛根湯
■葛根湯加川芎辛夷・(頭痛、発熱、鼻づまり)
■加味益気湯・・・・(労力感寒)
■加味香蘇散
■羗活勝湿湯
■杏蘇散
■銀翹散
■九味羗活湯
■九味檳榔湯
■桂枝加黄蓍湯
■桂枝加葛根湯
■桂枝加厚朴杏仁湯
■桂枝加芍薬湯
■桂枝加朮附湯    
■桂枝湯
■桂枝二麻黄一湯
■桂枝人参湯
■桂麻各半湯
■荊防敗毒散
■交加散
■香蘇散
■香薷飲
■呉茱萸湯
■五積散
■五味香薷飲
■再造散
■柴陥湯
■柴胡枳桔湯
■柴胡桂枝乾姜湯
■柴胡桂枝湯
■柴朴湯
■柴平湯
■柴苓湯
■三拗湯
■梔子豉湯
■止嗽散
■四味香薷飲
■七味白朮散
■十味香薷飲
■小建中湯
■小柴胡湯
■小柴胡湯加桔梗石膏
■小青竜湯
■升麻葛根湯
■新加香薷飲
■参蘇飲
■真武湯
■清上防風湯
■清暑益気湯
■川芎茶調散
■桑菊飲
■桑杏湯
■葱豉湯
■葱白七味飲
■大柴胡湯
■大青竜湯
■竹茹温胆湯
■冲和湯
■天津感冒片    
■陶氏補中益気湯
■防已黄蓍湯
■防風冲和湯
■防風通聖散
■補中益気湯
■麻黄加朮湯
■麻黄細辛附子湯
■麻黄湯
■麻杏薏甘湯
■沃雪湯
■苓甘姜味辛夏仁湯
  
  【臨床例】
☆「信濃の商人、山川総右衛門は、冬の末に風邪にかかった。発熱、悪寒がして、脈が浮数であったので、ある醫者が大いに発汗剤を与えたところ、汗が出過ぎて精神がぼんやりし、胸中に動機がして、少しも眠ることが出来ず、両の耳は聞こえなくなり、脈は浮弱、四肢が疼んで、胃中が乾燥し、盛んに水を欲し、舌は微黄色になっていた。そこで、余《尾台榕堂》は柴胡清燥湯を与えて、時々大柴胡湯を以て通利を取り、約20余日で全快した。時に患者の年は50余才であった。」(尾台榕堂著「井觀醫言」荒木正胤譯より)

☆「近江屋左平の次女、年16。発熱悪寒がし、汗はなく、身体が疼んだ。数人の医者にかかって8、9日も治療をしたが、全く効がなかったので、親戚の者が来て、余の治療を乞うた。之を診すると、大便せざること既に7、8日で、胸脇煩満し、心下は痞えて堅く、腹中は拘急して身体中が熱して布団を掛けることを嫌がった。洪脈で舌は黒胎である。そこで大柴胡加芒硝湯を与えること5、6貼すると、大便が日に3~5行あった。数日後、小腹に急結の状を現したので、桃核承気湯に転ずると、急にその急結が和解したので、再び大柴胡湯に転じた。すると寒熱することは已に止んだが、ただ心下が硬く結実し、しばしば唾を吐き、夜になると嘔吐を催して腹中がひきつり痛む。因って桂枝加芍薬生姜人参湯を与え、黄鐘丸を兼用し、通計40余日で全快した。《井觀醫言》


 かぜをひきやすい
=「風邪引きやすい」
■白血球に違いがあった
「鼻やノドの粘膜を突破したウイルスに対し、私たちの体は血液の中の白血球で防衛する。白血球の中のリンパ球は、体内に侵入したインフルエンザウイルスなどの異物の掃除が専門だ。このリンパ球がしっかりと力を発揮すればウイルスを撃退出来ることになる。
風邪を引きにくい人は、風邪を引きやすい人に比べ、リンパ球活性度(リンパ球の元気さを示す値)が高い。
さらに、白血球中のリンパ球の比率にも差が出た。
①一般成人の理想のリンパ球比率は---35%。
②風邪を引きやすい人は------------------28.4%
③風邪をひきにくい人は------------------47.5%だった。」
●リンパ球を増やすには?
最近の研究で、緊張状態が続く、すなわちストレスが強いと顆粒球が増え、逆にリラックスするとリンパ球が増えるということが分かった。アドレナリンが顆粒球を増やし、アセチルコリンがリンパ球を増やす。つまりイライラや多忙な生活は、リンパ球の比率を下げてしまうのだ。ほかにも、偏食や睡眠不足・激しい運動をすると、リンパ球比率が下がることが分かっている。ストレス・夜更かし・偏食は免疫力を弱める、
なお、激しい運動ではなく、散歩などの軽い運動はリンパ球比率を高めるという。」(NHKためしてガッテン)
  【宝石療法】
    <1>[トパーズ]
    <2>[シトリン]
  【漢方薬】
■玉屏風散
■桂枝加黄蓍湯
■柴胡桂枝乾姜湯
  





 かぜがこじれた
=「風邪がこじれやすい」「風邪をこじらせた」」
■原因はリンパ球と顆粒球のバランス
「リンパ球の仕事がウイルス退治なのに対し、顆粒球の仕事は細菌の退治です。顆粒球が細菌を退治する時に多くの活性酸素を使う。この活性酸素が多すぎると体まで傷めつけてしまうのだ。これが二次感染と呼ばれる症状の原因の1つとなる。
風邪の初期には、ウイルス戦のために一時的にリンパ球が増加し、治りかけると減少していく。そして、顆粒球とリンパ球の比率が元の戻れば完治となる。ところが、そのままリンパ球が減り、顆粒球が増えてしまうことがある。これが風邪をこじらせた状態。
原因は------①治りかけの時に無理をした
     ②細菌の多い場所に出かけた、こと。
自分ので出番とばかりに、顆粒球が一気に増えてしまったのだ。熱が下がっても油断せず、しっかり休むようにしよう」(NHKためしてガッテン)


 
 かぶれ
【民間療法】
<1>カキ。
<2>クリ。
<3>オトギリソウ・ギシギシ・サイカチ・サラシナショウマ・サンショウ・スギナ・ユキノシタ。
  


 かゆみ itching
   =かゆい=「瘙痒」
◎ステロイド剤を使っても止まらないかゆみ:「疥癬」を考えましょう。

◎種類:
発疹を伴うかゆみ:(五十音順)
 ☆アトピー性皮膚炎
 ☆疥癬
 ☆湿疹
 ☆ジンマシン
 ☆小児ストロフルス
 ☆脂漏性皮膚炎
 ☆接触性皮膚炎
 ☆痒疹
発疹を伴わないかゆみ:
  ☆悪性腫瘍
  ☆肝疾患
  ☆血液疾患:白血病
        悪性リンパ腫
        真性赤血球増加症
        Hodgkin病
  ☆寄生虫症
  ☆神経症
  ☆腎不全
  ☆潜在性薬物反応(アスピリン、アヘン、キニジン)
  ☆糖尿病
  ☆ 妊娠
  ☆皮脂腺分泌欠乏

■肌着
「ダイワボウはアトピー性皮膚炎の患者でもOKの肌着を2006年10月に発売する。特殊な化合物を生地の染色時に使い、カユミの原因となるタンパク質を肌着に触れた瞬間に変換させる。
染色に使われているのは『鉄フタロシアニンテトラカルボン酸』と呼ばれる有機化合物。正の電気を帯びているフタロシアニンが、カユミの原因となるタンパク質の負の電気を帯びた部分と結合。タンパク質分子の集合体が変形して異物と認識され無くなり、免疫反応が起きなくなるという。
文部科学賞の外郭団体である科学技術振興機構が、この化合物にカユミを沈静化する効果があることを認めている。
ダイワボウと久光製薬が共同で実施した実証試験では、76名のアトピー性皮膚炎患者の約8割が“かゆみの症状が弱くなった”と答えた。」20069/28《産業》
  【芳香療法】
    <1>カミルレ(ブルーカミルレが最高)
    <2>ベルガモット
    <3>ラベンダー
    <4>メリッサ
  【民間療法】
<1>アカメガシワ・キササゲ・シキミ・シジミ・ダイコン・タケニグサ・ドクダミ・ヘチマ・ムクゲ。
  
  【漢方薬】
■茵蔯蒿湯
■黄連解毒湯
■桂枝加黄蓍湯
■桂麻各半湯
■三物黄芩湯
■梔子豉湯
■十味敗毒湯
■消風散
■清上防風湯
■蝉脱散・・・・・・(飲酒後に全身がかゆい)
■澡洗薬・・・・・・(風燥してかゆい)
■治頭瘡一方・・・・(化膿傾向、熱感発赤、水泡滲出物、舌苔黄)
■当帰飲子・・・・・(激しい掻痒感、かきむしって血痂・血がにじむ、遊走性のかゆみ、老人性)
■桃核承気湯・・・・(激しい掻痒感)
■白虎加人参湯・・・(掻痒性皮膚病
  




 からえずき
  ⇒吐き気があって、吐こうとするが内容物が出ないこと。




 (か)
=おびえ。
小児が夢の中でうなされて驚く病気。《漢方用語大辞典》


 回避行動
■外敵からの攻撃
「2009年、魚が外敵からの突然攻撃された際に、脳が混乱しても脊髄の指令で回避行動をとる仕組みがあることを、自然科学研究機構・生理学研究所の東島真一准教授らのグループが突き止めた。
生物が脳だけで判断している訳ではないことを示す成果。
熱帯魚のゼブラフィッシュの神経細胞を緑色蛍光タンパク質で光らせ、音の刺激に対する反応を調べた。
真下から音が出た場合、ゼブラフィッシュは左右どちらに動いたらよいか迷い、脳は両方への動きを命じるなど混乱した指令を出す。こうした場合、脊髄は脳から先に届いた指示を選び、後からきた指示は無視して、一方に逃げている事が分かった。」




 過換気症候群
(参照→「呼吸が異常」)
精神的な不安によって過呼吸になり、その結果、手足や唇のシビレや動悸、目眩等の症状が引き起こされる心身症の1つである。
■紙袋を口に、吐いた息吸って
「40歳になる娘が3年ほど前から、呼吸が困難になる発作に悩まされています。発作はたいてい夜に起こり、病院で処方された精神安定剤を服用すれば呼吸は鎮まるのですが、生死に関わるよいうで不安でなりません。発作を起こさないようには、できないでしょうか?
●どんな症状が出るのですか?
呼吸のペースが何らかのきっかけで急激に速まると、二酸化炭素を吐き出し過ぎて、血液中の二酸化炭素の濃度が一気に下がります。こうなると手足のシビレや、軽いけいれんが起きたり、胸の痛みや、息苦しさを感じたりする。「窒息して死ぬんじゃないか」という恐怖を感じる人も少なくありません。
●何だか怖いですね?
あらかじめ言っておくと、この病気で死ぬようなことは、まずありません。1分間に30回以上の呼吸を3分間続けると、たいていの人で症状が現れます。とはいえ、現実には、かんじゃさんは不安になり、息をどう吸って、どう吐いたらいいかも、分からなくなってしまう。っそれで、ますます呼吸が速まり、症状がどんどん強まってしまうのです。
●そんなときはどう対処したらいいのでしょういか?
二酸化炭素が減りすぎているのですから、基本的にはこれを増やせばいいのです。紙袋を口に当て、二酸化炭素が多く含まれている呼気(吐いた息)を吸う。原始的ですが、これがかなり効果的です。後は落ち着いて呼吸のペースを落としていく。抗不安薬も、症状に伴う不安や緊張などを抑えるのに有効です。
●なぜ、呼吸のペースが速まってしまうのですか?
疲労や睡眠不足(南山堂ー医学大辞典)疎経活血湯、体のストレスがきっかけのこともありますし、急に不安に襲われた、驚いた、緊張したといった心理的ストレスが原因のこともあります。気がついたら呼吸が荒くなっていた、というケースも少なくありません。
●発症しやすいタイプは?
以前は10代後半から20代の若い女性に多いと言われていましたが、最近は男性や子供、年配の方もよく見られます。性格的には、どちらかといえば自分の感情や欲求を抑えてしまうタイプの人に目立つようです。
●口に当てるのは紙袋で無いとダメなのでしょうか?
ビニール袋だと気密性がよすぎて、長く口に当てていると、今度は酸素が不足することもありますから。
●この娘さんはもう3年も悩まされているということですが?
一度だけで治ることが多いのですが、最初の症状が激烈だったり、もともと少し神経質な人の場合は、「また発作が起こったら」という不安感から、再発することもあります。
●つまり心配のし過ぎが一因と言うわけですか?
でも、これは患者さんのせいばかりとは言えません。そもそも症状が激烈なので、初めての時は本人も周囲もビックリして、救急車で運ばれることが多い。なのに医師からは、「特に心配しなくていい」と言われ、発作も紙袋を口に当てているうちに収まってしまう。本人はなぜ発作が起こり、どうやって治ったか、よく分からなかった、というケースもかなりある。病気に対する理解不足も不安の原因になっているようです。
●医師がもう少し、きちんと説明してあげたらいいのに。
患者さんも気が動転しているので、説明しても、覚えていないこともあります。病院で、補中益気湯¥発症の仕組みや治療に意味を書いた簡単な説明書きを配って読んでもらるようにするだけで慢性化はかなり防げるとomo宇野ですが。
●完治させるには、どうしたらいいのでしょうか?
結局は患者さんが抱えているストレス要因が解消しないと、再発しやすい。日々の生活の中でちょっと肩の力を抜いてみるとか、趣味などで気分転換を図るとかが大切です。不安があれば心療内科などの専門家に相談してください。
また、脳や肺の病気やホルモンの異常など、別の要因で過換気になるケースもあります。慢性化している場合、一度は検査を受けて下さい。」(入江直子・国立精神・神経センター国府台病院医師)1999.10.10《朝日新聞》
■ゆっくり呼吸で対処
「図工の授業が終わりに近づいた子供たちは、描き終わった絵を片づけ始めた。まだ乾ききったいない水彩絵の具を、早く乾かそうと吹いている子供たちのなかに「目がチカチカする」「頭が痛い」と座り込む子供が出てきた。
一体、なにが起きたのだろうか?。呼吸は酸素を取り込むだけではなく、体から二酸化炭素を放出する重要な役割を担っている。たとえば、全速力で走ると息は大きく速くなる。それは酸素摂取と同時にエネルギーを作る過程でできた乳酸を二酸化炭素の形で吐き出すためだ。
人は呼吸を自分の意思で制御できる。フーッ、フーッと吹くとき血液中の二酸化炭素はドンドン少なくなり、脳への血流も減少する。その結果、目がチカチカしたり、頭痛を訴えることになった。息をゆっくりすれば不快な症状は消える。
精神的緊張があると脈だけでなく呼吸も速くなる。速い呼吸が自分の意思で止まらなくなり、どんどん大きく速くなることがある。二酸化炭素は減少し血液のアルカリ分が高まる。こうなると強い症状が出てくる。手指が緊張し動かなくなる。息苦しくなりどうにも身の置き所が無くなる。
これが過換気症候群という状態だ。人間は意識のレベルで過呼吸を制御できない時に、自動制御で過剰な呼吸を抑えるプログラムを持っていない。進化の過程でこうしたシステムへの必要性が少なかったのだろう。精神的ストレスが満ちあふれている現代に過換気症候群が多いのは、自然に適応してきた身体が文明社会に適応していないことに由来するのかもしれない(行岡哲男・東京医科大学教授)2--3.3.25《日本経済新聞》
■深呼吸は逆効果
「急に呼吸を乱し、へたっと座り込む。そんな場面に遭遇する機会が増えるかもしれない。呼吸を制御できなくなって脳への血流が減って様々な障害を引き起こす過換気症候群。不安が原因で起きる現代病の1つとされる。苦しいからと息を大きく吸うのは逆効果。落ち着いて対処しよう。
10代後半のAさんは学校で突然、息苦しいと叫んで取り乱し、病院に運び込まれた。大きな深呼吸を何度も繰り返し、手足のしびれや胸の圧迫感もあるという。「息をいくら吸っても空気が入ってこない」とパニック状態。
かっては「過呼吸症候群」とも呼ばれた過換気症候群で、呼吸の回数が必要以上に増えることで起きる。女性の患者が男性の2~3倍と多く、特に10~20歳代に目立つ。
正常な呼吸では、吸い込んだ空気から酸素を取り入れ、体内の余分な二酸化炭素をはき出す。このため体内で酸素と二酸化炭素のバランスが保たれている。ところが、過換気症候群になると、空気をはき出す回数が多すぎて血液中の二酸化炭素の濃度が急低下する。こうなると「血液がアルカリ性に傾いて体の機能を調整する電解質の濃度が変わり、体が動かなくなったり、胸が苦しくなったりする」と聖路加国際病院の太田大介医師は説明する。
発症の原因はよく分かっていない。感情の起伏が大きい性格のヒトやストレス、心の葛藤などが複雑に関係しているようだ。不安感や発熱、吐き気などが引き金となって急に呼吸が乱れていくという。
発作が起きたら、どう対処したらよいか?
本人はパニックに陥っているので、自分の力だけで回復することが難しい。息苦しいので、さらに大きく息をしようとする。これでは血液中の二酸化炭素がますます減ることになり歯止めがきかない。そこでまず、周囲の人があわてないことが大切。「もっとゆっくり呼吸してみよう」「息を止めてください」などと呼びかけ、本人を落ち着かせれば、体のしびれなどは消えることもある。症状が治まらないときに有効なのが、「紙袋法」だ。本人の口元に楽な姿勢で紙袋をかぶせて、はき出した息を袋の中にため、その同じ空気を吸ってもらう。はき出した空気には二酸化炭素の濃度が高いので、これを吸い込めば体内に二酸化炭素が取り込まれ、酸素とのバランスが正常に近づく。
紙袋の代わりにビニール袋を使ったり、口を長時間ふさいだりするのは厳禁だ。救急病院に葛根湯あけ根で安定剤や抗不安薬の注射を受けるのも有効。
発作を何回か経験すると、本人や周囲も余裕を持って対処できるようになる。過換気症候群はもともと命に関わる病気ではない。発作が起きても呼吸の筋肉が疲れてくると自然に治まってしまう。それが分かってくると、自分の気持ちをうまく操れるようになる。
ただ注意すべきは、脳腫瘍・狭心症・肺疾患・薬物中毒でも同じような発作を起こすので「発作はいずれ治まる」と油断していると、これらの病気を見逃す恐れもある。」2003.6.3《日本経済新聞》




 火証
=火とは「充血」または「炎症」の意味。精神及び肉体の機能亢進状態を指す。
  【漢方薬】
■滋陰降火湯《万病回春》
■黄連解毒湯《傷寒活人書》
■黄芩湯《万病回春》
■黄連湯《万病回春》
■活血潤燥生津飲《医学入門》
■柴胡清肝湯《明医雑著附》
■柴胡湯《万病回春》
■三黄瀉心湯《傷寒論》
■自製清燥救肺湯《医門法律》
■滋燥養栄湯《医門法律》
■芍薬湯《万病回春》
■生血潤膚飲《医学正伝》
■升陽散火湯《内外傷弁惑論》
■千金麦門冬湯《医学正伝》
■防風当帰散《医学入門》
■防風通聖散
涼膈散《和剤局方》




 加齢黄斑変性症→「黄斑変性症」
■飲むサングラス
「光を受けた細胞が過度に活性化し有害な老廃物が溜まった結果、栄養不足に陥って細胞が死んでしまうのが加齢黄斑変性症。オリンパス・大塚製薬・大日本印刷が出資する米創薬ベンチャーのアキュラが開発を進めている薬は、網膜にある2種類の細胞のうち、光をモノクロで検出する桿体の働きを抑制する。あたかもサングラスをかけたかのように、光による網膜への刺激を和らげる。
米国での治療で健康な36人に試し、副作用が無かった。」
■点眼で治療
「2008年、岐阜薬科大学の竹内洋文教授と原英彰教授らのチームは、薬物送達システムを利用して網膜の疾患を点眼だけで治療医出来る手法を開発した。
加齢黄斑変性症や糖尿病性網膜症などの後眼部疾患の治療は目に注射して薬を投与したり、レーザーなどで患部を焼いたりする手法が一般的。だが、完治は難しい。
竹内教授らは直径100ナノ㍍のリン脂質性のリポソームの微粒子の構造を最適化し、目に点眼しただけで網膜にまで透過させる設計方法を見つけた。蛍光物質を添加してマウスに点眼すると、30分後には網膜が光り、3時間後には光が消えていた。時間経過とともに拡散したためとみている。
眼球の奥にある網膜まで届く経路はまだよく分かっていない。竹内教授は“動物実験からは角膜は通りにくいようだ。結膜を通るのではないか?”と推測している」
■核酸医薬品
「2008年7/16、ファイザーは核酸医薬品の承認を初めて取得した。核酸医薬品はDNAやRNAを構成する塩基配列の組み換え技術を使い、人工的に合成してつくる。
核酸は服用すると体内で分解されやすい。
加齢黄斑変性症に承認された「マクジェン」は病的な血管の増殖を抑える効能を持つ」
■核酸医薬
「2008年10/14、ファイザーは加齢黄斑変性症の治療薬「マクジェン」を発売した。DNAやRNAの塩基配列を人工的に組み換えた核酸医薬というタイプの薬剤。
日本初の核酸医薬。特定のタンパク質の機能を抑えるアプタマーと呼ばれる種類に分類される。
注射キットで、6週間1回、眼球に注射する。
病的な血管(新生血管)の成長や血液の漏出を引き起こす原因となる体内物質の働きを抑えて病的な血管の成長を遅らせ、視力の低下速度を緩やかにする。




蛔厥(かいけつ)
⇒心臓の疼痛が静まったと思うと、又痛み、又止む。何を食べても嘔吐し、また煩悶して回虫を吐く症状。
  【漢方薬】
■安虫散・・・・・・(虫痛を治す)
■烏梅丸・・・・・・(蛔厥の心腹痛)
■化虫丸・・・・・・(蛔厥で腹痛)
■化虫散・・・・・・(蛔厥で心腹が痛み、よだれを流す)
■追虫取積散・・・・(虫積)
■檳榔鶴虱散《外台秘要方》
■蕪荑散・・・・・・(蛔が心臓をかんで痛む)
■霊礬散・・・・・・(小児の蛔厥心痛)


 

回帰熱(かいきねつ)
⇒回帰熱スピロヘータの感染によって起こる。

◎アジア・アフリカ・アメリカ大陸の熱帯圏の風土病であるが、我が国では海外から持ち込まれて小流行する。
◎病原体を有するネズミ・リスなどから、シラミ・ダニの媒介で伝染する。                                   

 

回虫
 (→犬・猫回虫症)
◎「虫下し」に使われる[カイニン酸][ドーモイ酸]は、どちらも回虫の筋肉にあるグルタミン酸受容体を強く刺激して、筋肉をケイレンさせて、虫を動けなくする作用があり、動けなくなった回虫は、やがて糞便と一緒に排泄される。
 [カイニン酸][ドーモイ酸]はともに、神経伝達物質である[グルタミン酸]と類似の構造をもち、神経に対する作用も似ている。
(川合述史著「一寸の虫にも十分の毒」p160~162講談社より)

◎回虫が消化管内に生息していても、何らかの症状を起こさないですむこともあるが、また一方では腹痛、嘔吐、痙攣、高熱など、種々の雑多な症状を呈する。
徳川時代には、回虫症が多かったために、回虫症だけを取り扱った書物が数種刊行された。それらを要約すると、攻める場合すなわち駆虫、補う場合すなわち安蛔と、温める場合と冷やす場合、これらを組み合わせたものからできていて、それぞれの病状によって取捨選択している。(漢方診療医典)
■「三昧鷓胡菜湯」
普通一般に用いる駆虫剤で、回虫が上って胃にいるときには効が無く、腸にいるときに用いる。回虫症の予防のために、平素これを用いる。
■「理中安蛔湯」
本方はもともと腸チフスのような熱病の際に、回虫を吐き、手足の厥冷する者を治する方剤であるが、熱病の場合に限らず、胃腸が弱く、波乱に力が無く、手足が冷えやすく、下痢の傾向があって、回虫を吐く者に用いる。
また胃部が冷えて、腹部の不快感、腹痛などがあって、口にうすい唾液がしきりにたまる者に良い。これは温補安蛔の方である。
■「淸中安蛔湯」
これは胃に熱状があって、回虫を吐く者に用いる、
これは胃の実熱を目的として用いる瀉剤で安蛔を兼ねている。そのため理中安蛔湯にくらべて、腹部が充実し、脈にも力があり、手足厥冷の候の無いものを目標にする。
■「烏梅丸」
古人が蛔厥と呼んだものに用いる。その状は、寒と熱が錯綜して、手足厥冷、煩躁、胸腹痛などがあって、回虫を吐くものである。
■「甘草粉蜜湯」
甘味のある方剤で、急迫を治する効が顕著である。そこで、種々の駆虫剤が応ぜず、あるいはかえってこれらの薬によって、疼痛が激しくなりあるいはこれらの薬を吐く場合に用いる。
■「椒梅瀉心湯」
本方は半夏瀉心湯に山椒と烏梅を加えた方で、心下痞硬、腹中雷鳴して、胸腹痛を訴え、あるいは悪心、嘔吐があり、うすい唾液をたびたび吐くものに用いる
  【漢方薬】
■烏頭桂枝湯
■烏梅丸
■烏頭湯
■黄連湯
■甘草乾姜湯
■甘草粉蜜湯
■呉茱萸湯
■三物黄芩湯
■鷓胡菜湯
■椒梅湯
■大烏頭煎
■大建中湯
■当帰四逆加呉茱萸生姜湯
■人参湯
■八味地黄丸
■檳榔鶴虱散《外台秘要方》
■茯苓飲

【民間療法】
<1>クララ。
<2>ザクロ。
<3>カボチャ・クロマメ・スギナ・ニシキギ・ニンニク・モモ・ヨモギ・リンドウ。


 買い物依存症
■心の空虚感、物で満たす
「C子(女医、28)は不眠、過食と嘔吐、人間関係がうまくいかないという訴えで来所した。何回か話を聞くうちに、「買い物依存症」であることが分かってきた。ストレスがたまるとデパートに行き、高価な物を手当たり次第、1回に数万円~数十万円も買ってしまうのである。
買った後は気分もすっきりして、晴れた気持になるという。買った物はとくに使うわけでもなく部屋に一杯置いてある。お金は自分の給料では足りないので、両親(ともに医者)から、出世払いするからと借りている。しかし、いくら買っても心は満たされないのである。
C子は2人兄弟の妹として生まれ、特に父にかわいがられた。現役で一流大学の医学部に入学した。知的で生真面目、好奇心旺盛であるが、少女的で涙もろい面がある。学生時代に親の反対を押し切って、2年先輩と同棲結婚した。2人とも医者になったが、研修と勉強に忙しくスレ違いの生活が続いた。C子の不満はつのり、情緒不安定となった。
そんなとき、同級生のD男にグチをこぼしているうちに、やさしく話を聞いてくれる彼にひかれていった。自己愛的人間関係のもとに育てられたC子は、いつも愛されていないと不安定となるのである。先日は彼とドライブに行った。彼との会話は新しい別世界を夢見るような心地だった。心は夫と彼との間でブランコのように揺れ動く。真剣に結婚を考えるようになったが、まだ決心はつかず宙ブラリンのままである。
現代はストレスの時代である。ストレスが溜まると、女性はおしゃべりをしたり、日用品や食料品を余計に買ったりして、気分を発散させいるようだ。軽い買い物依存傾向は、誰にでも見られる。歴史上、リンカーン大統領夫人とケネディ大統領夫人の買い物依存症は有名である。
最近は女性の自立が強く叫ばれて、甘えたくても甘えられない状況(土居健郎の説)にある。人に甘えることはよくないこというメッセージが絶えず流されて、依存性(甘え)は物質依存に行き着くようになる。『アルコール・薬物依存症』『ギャンブル依存症』『買い物依存症』等となる。対人依存症の物象化である。
価値観が多様化し、いかなる人生を生きるか、全くその人の自由である。有り余る選択肢の中で、どこに基軸をおいて選択するか迷ううちに途方に暮れ、空虚なる自己(景山任佐の説)に逢着する。その自己の心の空虚を満たそうとして物を買い込むのである。
そして物によって自己の空虚感を埋める作業には限りがない。瀬戸内寂聴は世俗の有限の物によっては心は満たされず、無限の世界の仏教に入信したと語っている。(榎本稔・榎本クリニック)1999.2.22《日本経済新聞》

■不要なのに次々買う
「必要ないと分かっていても、つい洋服やブランド品などを次々購入してしまう『買い物依存症』。かっては単なる浪費癖と見られていた行動も、日常生活の不満や不平が購買欲求に転化する精神疾患の1つだと分かってきた。このほど買い物依存症の自己診断表を作った昭和大学病院の精神科医・大坪大平氏にその現状をまとめてもらった。
●借金が250万円にも
「『あ、荒れほしい』と一度思うと、買うまでそのことが頭から離れず、仕事にも家事にも集中できない」。30大前半の女性がこう訴えて外来に北。専門職についたキャリアウーマンで、3人の子供の母。東京近郊で夫とその両親と同居している。
症状が出始めたのは半年前。最初はティッシュペーパーや石鹸といった日用品から始まった。それでも外出するたびに買うので、家の中に溜まる一方。それを夫や義母に注意されるほど“買いたい”という衝動は高まり、対象もアクセサリーや洋服。ブランド品と高額なモノに映っていった。自分の給料で払いきれなくなっても、消費者金融から借りては買った。来院したときには借金は約250万円に膨れていた。
こうした買い物依存症を訴える女性がこのところ目立ってきた。必要以上に物を買ってしまう浪費癖は以前からある。その中には買い物依存症も含まれていたのだろう。だが大多数は自由になり金に限度があり、病的なレベルまで達するケースは限られていた。それが最近は働く女性も増えて女性の経済力が上がり、キャッシングやカードローンなどを若い女性も簡単に使えるようになった結果、顕在化するケースが増えたのだと思われる。
●買っても使わない
買い物依存症の原因は、現状の生活に対する不満や不平だ。冒頭に上げた女性の場合も夫の両親との不仲が発症の引き金だった。子育て方針など生活の細々したことまで毎日、注意される。反論したくても夫の両親だという気兼ねがあり、不満を心にため込んでいるうちに、その鬱積した感情が買い物に向かってしまったのだ。
診察していると患者には共通した性格がある。きまじめで融通が利かず、わがままで自己顕示欲が強いタイプだ。仕事や子育てといった現実が自分の思うようにならないのは決して珍しいことではなく、普通なら、「そんなもの」とあきらめたり、気軽に考えたりするのに、それが出来ず、不満をため込みやすいのだろう。
患者は大量に物を買い込むが、その4割は実際に使わない。購入した洋服をそのままタンスに並べて、一度も袖を通さない人もいる。ある女性患者は「買い物中のお客様気分がたまらない。日頃は誰も私のことを気にかけてもくれないのに、買い物中は周囲(店員)がかしずいてきて、万能感が味わえる」とその心情を説明してくれた。
買い物依存症は、1つのことに病的に固執する強迫性障害に似た疾患だ。そのため最近になって、強迫性障害の治療に使う抗ウツ薬が買い物依存症の改善にも効果があることが分かってきた。昨年5月に副作用の少ない抗ウツ薬『SSRI』が発売された。私の病院ではこれを買い物依存症の患者に処方し、大きな効果を上げている。
これまで買い物依存症の診断基準はなかったが、昭和大学医学部精神医学教室でこのほど診断基準を作成した。米国の研究者がまとめた病的賭博の診断基準を元に、これまでの外来での診察経験を加えて改良した。現実社会への不満・不平が根底にある点で病的賭博と買い物依存症は似通った疾患で、一般的にそのはけ口が男性は賭博に、女性は買い物に向かうと言われている。
●週3日以上が目安
もちろん購買欲求は誰にでもあるが、週に3日以上、それも日に数時間も「買いたい」「どうしても欲しい」という思いにとらわれて、その間、ほかのことに集中出来なかったり、我慢するのがとても不快であったりしたら、正常とは言い切れない。
買い物依存症は周囲から見ると自分の欲望の赴くまま行動しているようなので、家族からも同情だれにくい。だが実際には本人の苦しみも大きい。アルコール依存症の禁断症状のように、買い物衝動を我慢するのは苦痛だし、かといって買ってしまえばあとから激しい自己嫌悪に襲われる。買い物を繰り返すために消費金融などから借金を重ねて生活が破綻してしまう恐れもある。
“まぜそんなに買うのか”と責めるのは本人を追いつめるだけ。適切な治療を受ければ治らぬ病気ではないのだから、大切なのは周囲の人たちが病気だと認識し、つらさを理解し、手を差しのべてあげることだ。」
☆診断基準:(5項目以上該当すると依存症の恐れあり)
<1>過去の買い物体験を生き生きと思い出したり、次の買い物計画を立てるのに固執することがある。
<2>どんどん高額な物を買いたくなる
<3>買い物を止めたり、その金額を減らす努力をしたことがあるが失敗した。
<4>買い物を止めたり、その金額を減らそうとすると、イライラする。
<5>現実の問題からの逃避や不快な気分の解消のために買い物をする。
<6>買いそびれた品物を後日、探し求めに行くことが多い。
<7>買い物に執着していることを隠すために、家族や友人にうそをつく。
<8>買い物資金を得るため、、盗みや詐欺など、非合法は行為をしたことがある。
<9>買い物にのめり込みすぎて、大切な人間関係や、仕事を失ったことがある。
<10>買い物で金がなくなり、他人に貸してくれるように頼んだことがある。
2000.7.15《日本経済新聞》
■ニューロエコノミクス(神経経済学)
「消費者金融で謝金を重ね自己破産する人が耐えないのは何故か?
“アリの周到さとキリギリスの刹那主義は同じ人間に共存し、別々の神経回路が司っている”。米プリンストン大学の脳科学者サミュエル・マクルーア研究員とハーバード大学経済学部のデビット・レイブソン教授らが、2004年10月、米サイセンスに発表した論文が契機となって、出てきた学問分野。
・「1年後に10㌦もらうか?」「1年1日後に11㌦もらうか?」
という質問で、大半の人は額が多い方を選ぶ。アリの選択だ。脳を観察すると理性を司る前頭前野が活発化していた。
・「今日10㌦もらうか?明日11㌦もらうか?」と、同じ人に尋ねると、一転して前者を選ぶ。直近の問題では、少額でもすぐ欲しくなる。キリギリスの発想だ。この場合、大脳皮質の内側にある情動の関係する大脳辺縁系が活発だった。(生きた脳を観察できる機能的磁気共鳴画像診断装置(fMRI)ができた)
脳の中でアリ(理性脳)とキリギリス(情動脳)がせめぎ合い、どちらが勝つかで、消費行動が変わってくる。
昼間文彦・早稲田大学商学部教授は、過剰債務者は少額で借入期間が短いほど、高金利を平気で借りる傾向があることを突き止めた。
米国ではマネーゲームの勝者の性格分析にも応用。スタンフォード大学などの研究チームは、コインを投げて賭をする実験と脳の働きを調べ、「情動に支配されない冷酷な人が勝者になりやすい」ことを突き止めた。20061/15《日経》





 外骨腫
(参照→「骨の腫瘍」「内軟骨腫」)
=「骨軟骨腫」
⇒骨の一部に角のような突起が出来る腫瘍で、骨軟骨腫とも言う。内軟骨腫が骨の内側にある軟骨が膨らむのに対し、外骨腫は骨の外側の骨皮質が膨らむ。基本的に良性で、関節の周囲に出来ることが多い。内軟骨腫同様、小さなものは放置しても問題はなく、必要なら手術で切除する。1999.12.28《朝日新聞》
■多くは関節の周囲に出来、良性
「専門的には『骨軟骨腫』ともいいます。マッシュルームのような形のものと、山型に盛り上がるものと半々です。大きさは、1cmを切るものから10cmを超えるものまで様々で、レントゲン検査をすると、骨と同じように白く見えます。
悪性の『骨肉腫』や『軟骨肉腫』はレントゲンで見ると輪郭がぼやけています。
外骨腫は、骨の縦方向の成長と深く関わっています。頭蓋骨と鎖骨を除く全身の骨にはそれぞれ数カ所の成長軟骨層があって、体が大きくなる成長期には、この軟骨部分が骨に変化していくことで骨が伸びていきます。全体的に伸びていく訳ではありません。
 例えば、大腿骨には4カ所に成長軟骨層があって、通常は伸びる方向、つまり上下方向に骨が出来ていきます。ところが、何かの拍子で左右や前後に骨が出来てしまうことがある。これが外骨腫です。」1997.10.19《朝日新聞》


 外障(がいしょう)
⇒<1>まぶた・両眥・白睛・黒睛などに起こる疾患。
 (眥=シ=まなじり) (睛=セイ=ひとみ)
<2>外障は肺の病であし、晴が外からかげると暗い。
<3>六経弁証
1.目痛で赤脈が上から下る・・・太陽病。
2.赤脈が下から上る症・・・・・陽明病。
3.赤脈が外から内に入る症・・・少陽病。
    

●.外障の種類。
1.肝臓積熱 2.混晴 3.努肉欅晴 4.両瞼粘晴  5.膜入水輪 6.黒如珠 7.花白陥 8.水瑕深  9.玉浮満 10.順逆生  11.鶏冠蜆肉 12.瞼生風栗 13.神祟風栗  14.胞肉膠凝 15.漏晴膿出 16.蟹晴疼痛  17.突起晴高 18.風起偏 19.倒睫拳毛 20.風牽瞼出 21.神祟疼痛 22.施螺尖起 23.鶻眼凝晴 24.轆轤転関 25.被物撞打 26.血灌瞳人 27.昧目飛塵飛絲 28.天行赤目 29.赤眼後生
  

【漢方薬】
■黄蓍散・・・・・・(瞳から膿が出る)
■槐子丸・・・・・・(風邪で瞳がかすむ)
■夏枯草散・・・・・(瞳が痛く、冷涙があふれ、明るいのを嫌う)
■観音夢授丸・・・・(内障で目が腫れた者。塩辛い物の食べ過ぎが原因
■帰葵湯・・・・・・(物を見ると黒花が出、涙が出、目の中に火気があって陽を嫌い
■揆雲散・・・・・・(眼目が暗く、かゆくて痛い)
■救苦湯・・・・・・(目尻が赤く腫れて痛い
■局方密蒙花散・・・(風眼で目が暗く、赤く腫れる)
■駆風一字散・・・・(目がひどくかゆい者)
■瞿麦散・・・・・・(砂が目に入って出ないとき)
■軽効散・・・・・・(目に打撲を受けたとき)
■五黄膏・・・・・・(目赤・腫痛)
■五退散[1]・・・・・(まつげが乾き、刺すように痛む)
■牛黄丸・・・・・・(小児の通晴(外障の一種)を治す
■犀角飲・・・・・・(黄膜が上がって瞳が痛み閉渋の者を治す
■犀角散・・・・・・(失明を治す)
■柴胡湯[2]・・・・・(目が赤く腫れ疼痛)
■散熱飲子・・・・・(目が赤く腫れ疼痛)
■地黄膏・・・・・・(目に打撲傷を受けた者
■地黄散[2]・・・・・(混晴を治す)
■四物竜胆湯・・・・(目が赤く腫れて痛み、雲が出る)
■車前散・・・・・・(肝経の熱毒が逆上してが出、涙が多く出る)
■生地黄散・・・・・(目に打撲を受けた)
■消毒散・・・・・・(まぶたに栗粒のようなものが出来る)
■神効明目湯・・・・(目のまわりがつれ、睫毛が乾き目の上下が腫れ、ひとみが痛く、涙が流れ、目が開けられない)
■神仙退雲丸・・・・(瞖膜・内外障が昏暗になる)
■聖草散・・・・・・(爛弦風と虫痒を治す)
■清肺散・・・・・・(肺熱が上にのぼって白眼が腫れ、日夜疼痛する)
■清涼散・・・・・・(水瑕と深の青色を治す)
■石決明散・・・・・(目が腫れて痛み、膜が生じ、又目の中に鶏冠状のもの)
■蝉花散・・・・・・(肝経に熱があり、涙が多い)
■蝉花無比散・・・・(風眼・気眼で目がはっきりせず、かゆく目がしぶい)
■洗肝明目湯・・・・(一切の風熱と目が赤く腫れ疼痛する)
■蒼朮散・・・・・・(肝臓に風熱があって冷涙が止まらない)
■速効散・・・・・・(努肉・紅絲・紅白障と白珠眼に死血があって紅筋または目にあがって、腫れあがり昼夜痛みに堪えられない)
■通血丸・・・・・・(血が瞳に入って痛む)
■天門冬飲子・・・・(ひとみが真っ直ぐでない)
■白薇元・・・・・・(瞳から膿が出る)
■白殭蚕散・・・・・(肺が弱くて冷たい風に当たると涙が出、冬ひどくなる)
■定心元・・・・・・(固い肉が瞳をおおう)
■二黄散・・・・・・(固い肉が瞳をおおう)
■明目細辛湯・・・・(目のまわりがつれ、睫毛が乾き目の上下が腫れ、ひとみが痛く、涙が流れ、目が開けられない)
■神仙退雲丸・・・・(瞖膜・内外障が昏暗になる)
■明目流気飲・・・・(かすみ目)
■木賊散・・・・・・(目に冷涙が多い)
■竜胆散・・・・・・(肝熱で瞳が腫れる)
■羚羊角散・・・・・(目に硬い腫れ物ができて、目が開けられない)
■臘茶飲・・・・・・(赤脈が上から下る)
■炉甘石散・・・・・(爛弦風を治す)




 外傷
⇒一般に外傷と呼ばれるものに
<1>ナイフ・カッターなどの刃物やガラスの破片などで切ったもの=切り傷。
  (特徴)出血が多い。
<2>キリやクギなど先の鋭いもので刺して出来た傷=刺し傷。
 (特徴)傷口が小さくても深いところで損傷して、中に不潔な物が残っていることがあるので要注意。
<3>転んで出来る傷=擦過傷(サッカショウ)。 いわゆるすり傷のこと。
■常識を捨てよう
「“傷はお風呂で洗ってキレイにしてください”。手術で縫い合わせた後、傷口が塞がって回復途上にある傷の処置について、茨城西南医療センター病院(茨城県境町)の知久明義形成外科科長が説明すると、患者は“洗ってもいいんですか?”と驚く。
従来は抜糸まで病院に通い、医師に消毒してもらうのが普通。自分で洗うなどもってのほかだった。“頭の傷ならシャンプーで洗っていい。洗わずにフケだらけになった頭と、毎日洗った頭とどっちが清潔でしょうか”と和久科長は笑う。
従来、傷にはまず消毒というのが常識だったが、“消毒薬は、ばい菌を殺すだけでなく、傷を治そうとしている細胞も殺してしまう。水道水でよく洗えば、浅い擦り傷や切り傷程度なら消毒は必要ない”(和久科長)」
“ガーゼで覆うのも良くない”(北里大学の塩谷伸幸名誉教授)。傷から出る体液には、皮膚の湿度を保つ働きの他、傷を治す指令を出す物質が含まれ、自然治癒を助けている。それがガーゼを当てると体液がガーゼに吸われて乾燥する。すると、これらの働きが弱まり、傷の治りが遅くなる。傷跡も残りやすいという。カーゼが傷にくっつき、剥がすときに傷を悪化させることも多い。
傷が真和久とかさぶたができるが、「“かさぶたは迫害あって一利なし”(知久科長)。皮膚が元に戻るのにジャマになるという。かさぶたの下で傷が化膿することも多い。体液で湿った状態にしてかさぶたが出来ないようにする方が菌の感染を抑えられるという研究もある。
茨城西南医療センターでは2年ほど前からこうした新しい傷の治療を始めた。傷が早く治り、傷跡も目立たないといった特徴が注目され、各地の形成外科などの医師の間で広まりつつあるという。
最近では日本形成外科学会や日本皮膚科学会でも関連したセミナーが開かれるようになった。
“治療の原理自体は40年前から分かっていた”と話すのは山形市立病院済生館の夏井睦形成科医長。長い間、普及しなかったのは“医師にとってガーゼを使う治療はラーメンに湖沼を入れるようなもの。習慣的にやってきたことなので誰も見直そうと思わなかったのだろう”と夏井医長はみる。
軽い擦り傷や切り傷など大半は家庭で治せる。家庭では汚れを落としてからラップを当てて絆創膏で留め、その上に包帯を巻くのが良い。最近では傷が乾燥しにくいタイプの救急絆創膏も普及し始めた。
医薬品メーカーのジョンソン・エンド・ジョンソンは「正しい傷ケア推進委員会」と題して、新しい家庭での傷治療法の普及を進めている。
ケガをしたら、
①傷を水道水で良く洗う。
②清潔なタオルやチュッシュで押さえて止血。
③絆創膏を貼る
という手順で処置すると良い。乾燥を防ぐため、絆創膏は汚れていなければ4~5日替えなくて良いという。“傷を治すのは自分の治癒能力。消毒や乾燥はマイナスになることを知ってほしい”と塩谷名誉教授。
ただ、砂や泥が中に入ってしまた傷や、2~3分たっても血が止まらないようなかなり大きな傷の場合は医師に相談して、処置を受ける必要がある。」2002.12.24《日本経済新聞》
■素早く治すタンパク質
「山之内製薬と慶應義塾大学は共同で、血管や皮膚、軟骨の細胞を増殖させて外傷を素早く治すタンパク質を発見した。マウスを使った実験で効果を確認。
慶応大の尾池雄一講師、須田年生教授らが、従来知られていた血管成長タンパク質の遺伝子と似た構造の遺伝子をヒトやマウスで発見。
マウスの耳に約2mmの穴を開け、この遺伝子のタンパク質を皮膚で働かせると、1ヶ月足らずで穴が完全にふさがった。
マウスのしっぽを切断する実験では、皮膚が傷口を覆うまでの時間が通常の約5日から1~3日程度の短縮。」2003.7.15《日本経済新聞》
「見つけたのは『アンジオポエチン関連成長因子(AGF)』で、皮膚や血管に加え、軟骨ませ再生させる作用が見つかったタンパク質は初めて。」2003.7.15《日経産業新聞》

【漢方薬】
■王不留行散
■芎帰膠艾湯
■芎帰調血飲
■三黄瀉心湯
■治打撲一方・・・・・(打撲、打ち身)

【民間療法】
<1>アロエ・イチヤクソウ・ウコン・オトギリソウ・カタクリ・ガマ・キリンソウ・ソテツ・ツワブキ・ビナンカズラ。
   ◎田七




外傷の後遺症
【漢方薬】
■芎帰調血飲
■芎帰調血飲第一加減
■通竅活血湯
■補陽還五湯




外傷性出血
【漢方薬】
■芎帰膠艾湯
■三黄瀉心湯
◎田七3gを重湯or黄酒or白酒30mlで服用。
◎田七1.5g・竜骨15g・五倍子15gの細末を散布。



 外傷性脳損傷
■間葉系幹細胞で再生
2016年、サンバイオは外傷性脳損傷を対象にした国内で臨床試験を夏にも始める。
健康な人から採取した骨髄液を加工・培養した候補薬「SB623」を脳に注入すると、神経や血管などを新しくつくるような特殊なタンパク質「サイトカイン」が放出される。これにより脳の機能回復につながるとみられている。


 外耳炎(外耳道炎)
【漢方薬】
■葛根湯
初期1~3日、発赤、腫脹、疼痛し、悪寒、発熱あるときに用いて上部の熱を発散させる(漢方診療医典)
■十味敗毒湯
初期にそれほど発熱、悪寒がなく化膿しやすい体質の者に(漢方診療医典)
■小柴胡湯
3~5日ごろに本方に転じ、また皮膚の色が黄褐色の人には荊芥連翹湯を用いる。そして排膿散を兼用する(漢方診療医典)
■托裏消毒飲
炎症、化膿が激しく乳様部の浮腫、腫脹などあるとき、伯州散を兼用する(漢方診療医典)
■内托散
排膿が始まれば本方にする。あるいは2~3日目から本方をもちいたほうがいい場合もある。平素化膿しやすい虚証の人には、本方を平素から服用させていると化膿しなくなる。伯州散を兼用する(漢方診療医典)
■氷硼散
■「枯礬30g・竜脳3g」細末を外用。

【健康食品】
 <1>SQUALENEの塗布。

【民間療法】
<1>ユキノシタ。
<2>セミ・ホオズキ・ミツバチ・ムカデ。


 外痔核
【食養生】《螺王人》
◎絶対に、食べてはいけないのは、
 <1>もち米が入った食品。
 <2>牛肉。
 <3>アルコール。
 <4>就寝時3時間前の食事。
 <5>脂っこい食事が続く。
 <6>刺激物をたくさん。
以上の食事を続けると、悪化しやすい。

  
【漢方薬】
■桃核承気湯・(実証、のぼせ、足冷、下腹部痛)
■神仙太乙膏





 外腎腫硬(がいじんしゅこう)
⇒陰嚢部が腫硬する病証名。小児に多くみられる。


 外吹(がいすい)
⇒吹乳の一種。「外吹乳」。
婦人の懐胎中に乳房の腫脹するのを『内吹』といい、出産後腫脹して痛むものを『外吹』という。
吸乳中に乳児が眠って乳房を傷つけたり、乳頭を噛むことで、そこから感染して癰を生じる、乳房炎の一種。

 

外疝(がいせん)
=「横痃」の別名。


 外反足
   ◎チェック:「くる病」


 咳逆(がいぎゃく)
=「欬逆」
◎意味:
咳嗽して気が上逆するもの。
噦の俗称。
  柿蔕が主薬《万病回春》

【処方名-50音順】
■橘皮乾姜湯・(胃が冷え、咳逆する)
■橘皮竹茹湯・(胃が弱り、膈に熱あり咳逆する)
■橘皮半夏生姜湯
■羗活附子湯・・(大病後に胃中が虚寒し咳逆する)
■桂枝加厚朴杏仁湯・(夜間咳逆)
■三香散・・・・・・(胃が冷え、咳逆する)
■小青竜湯・・・・・(咳逆倚息)
■丁香柿蔕湯・・・・(大病後に胃中が虚寒し咳逆する)
■半夏生姜湯・・・・(噦になって死にかかる)



 咳逆上気
=「咳喘」
⇒咳嗽気逆して喘する症候。




 咳血(がいけつ)
=肺よりの出血で咳と共に出る血痰のこと。
⇒咳がひどくて出血する、肺が悪い症状。
◎咳血:「肺傷湯」「麦門冬湯地黄・阿膠黄連」にて大抵治すれども、咽痛劇しき者に至っては、百合固金湯《通雅》に非ざれば効無し。《勿誤薬室方函口訣》

【漢方薬】
■河間生地黄散・・・(欝熱・衂血・吐血・咯血・唾血に)
■加減逍遙散《寿世保元》
■加味逍遥散・・・(痰の中に血が混じって出る)
■聖餅子・・・・・(咯血の主治剤)
■鶏蘇散
■玄霜膏・・・・・・(咯血・吐血に)
■玄霜雪梨膏・・・・(咳血・嗽血・唾血・咯血・吐血・心労などに)
■山梔地黄湯・・・・(先に痰が出、あとから血が出る症状)
■滋陰降火湯・・・・(咳と同時に血を吐く、皮膚浅黒い、痰<痰稠>、乾咳、乾性ラ音、発熱無汗、便秘、陰虚火動)
■清火滋陰湯・・・・(吐血・咳血・嗽血・咯血・唾血を治す)
■清咳湯《万病回春》(咳血の治療剤)
■扶脾生脉散《医学入門》
■六君子湯・・・・・(神経衰弱、咳嗽、喀血)
■竜脳鶏蘇散・・・・(咳・嗽・唾血を治す)



咳嗽(がいそう)=せきのこと。
【咳】(がい)=声があってタンのないもの
【嗽】(そう)=声が無くてタンのあるもの
【咳嗽】(がいそう)=せき(喘)のこと
【欬】(がい)=「逆気なり欠(体の曲げる様を示す)に従い亥の声」<説文>
セキをする時、体の筋肉を緊張させ一気にはき出すこと。
【欬嗽】(がいそう)=「しはぶき」急・慢性気管支炎
【喘】(ぜん)=「疾き息なり口に従い耑の声」<説文>
日本訓「あへぐ」。短い息づかいでハァハァすること。
【喘急】(ぜんきゅう)=「ぜんそく」気管性喘息の類。
【喘鳴】(ぜんめい)=ゼーゼー・ヒューヒューという呼吸音のこと(狭窄音)
【喘咳】ぜんがい)=喘して咳嗽するもの。セキが出てゼイゼイとノドが鳴るをいう。
   

◎咳嗽を引き起こす疾患:
急性(2週間以内):
   ▼炎症所見が陽性:
         急性気管支炎
         急性上気道炎
   ▼炎症所見が陰性:
         異物
         肺塞栓
慢性(2週間以上持続):
 ▼乾性咳嗽(dry or nonproductive cough):
   ①間質性肺炎 or 肺・縦隔腫瘍
   ②肺ガン or 心不全
 ▼湿性乾燥(wet or nonproductive coug):
    ①血痰あり:
       気管支拡張症
       肺結核
   ②血痰なし:
       気管支喘息
       慢性気管支炎
   

◎セキタンがでる疾患:
    <1>急性気管支炎。
    <2>慢性気管支炎。
    <3>びまん性汎細気管支炎。
    <4>肺気腫。
    <5>気管支喘息。
    <6>大葉性肺炎。
    <7>肺化膿症。
    <8>肺結核。
    <9>肺ジストマ症。
    <10>肺ガン。
    <11>心不全。
    <12>肺梗塞。

◎タンが出ない咳嗽を引き起こす疾患:
    <1>咽喉頭疾患。
    <2>気管の圧迫。
    <3>びまん性間質性肺炎。
    <4>胸膜炎。
    <5>神経性咳。
  

【漢方療法】
◎漢方での咳嗽:
「咳」:痰はなく、声だけのせき。咳は声ありて痰なし。
「嗽」:声がなく、痰がでるせき。嗽は痰ありて声なし。
(1)臓腑
 <1>肝咳:[小柴胡湯]
 <2>胆咳:[黄芩湯半夏・生姜]
 <3>心咳:[桔梗湯]
 <4>小腸咳:[芍薬甘草湯]
 <5>脾咳:[升麻湯]
 <6>胃咳:[烏梅丸]
 <7>肺咳:[麻黄湯]
 <8>大腸咳:[赤石脂禹余粮湯]
 <9>腎咳:[麻黄附子細辛湯]
 <10>膀胱咳:[茯苓甘草湯]
 <11>三焦咳:[銭氏異功散]

(2)病勢

<1>風嗽=風が肺に入ると、鼻づまり・声は重く・口乾・咽喉が痒く・話すと咳が出る。

〇処方・・・[神朮散][款冬花散][人参荊芥散][金沸草散][三拗湯][五拗湯][加減三拗湯]

<2>寒嗽=風寒にあたって鼻が詰まり、声が重く、悪寒。

〇処方・・・[二陳湯麻黄・杏仁・桔梗][九宝飲][華蓋散][杏子湯][紫蘇飲子][橘蘇散][薑桂丸][人参款花膏][半夏温肺湯][杏蘇湯][白円子][人参潤肺湯][温肺湯][加味理中湯][八味款冬花散][飴薑元][小青竜湯杏仁]

<3>熱嗽=暑熱にあたって咳をすると口が乾き、のどが枯れ、喘沫を吐く。
〇処方・・・[辰砂六一散][洗肺散][人参瀉肺湯][貝母散][参朮調中湯][苓半丸][小黄丸][黄連化痰丸][四汁膏][小柴胡湯4両石膏1両、知母5銭]

<4>火嗽=声はあっても痰は少なく、顔赤く、口渇で水が飲みたい。脈多い。
〇処方・・・[貝母散][清肺飲][柴胡枳桔湯][清金降火湯][二母寧嗽湯][抑心清肺丸][玄霜雪梨膏][人参清鎮丸][滋陰清化膏][海青丸]

<5>湿嗽=湿が肺を犯して咳き、身重く・骨節疼痛・寒気がする。
〇処方[不換金正気散][白朮湯][白朮丸]

<6>乾嗽=痰はなく声だけある症。
〇処方・・・[地黄(生)2斤、杏仁2両、生姜・蜂蜜各4両を搗いて瓶に入れて蒸して、3匙づつ飲む]

<7>痰嗽=痰が出ると咳が止まる。胸膈が張る為。
〇処方・・・[半瓜丸][橘甘散][滴油散][二母散][玉芝元][澄清飲][三聖丹] [藍漆煎元][安肺散][人参散]

<8>気嗽=七気が積もって傷ついて、咳をし、痰涎が凝結して梅の核のよ うなものが、咽喉にひっかかって出てこない症。
〇 処方・・・[蘇子降気湯][加味四七湯][団参飲子][青竜散][三子養親湯] [蘇子煎][玉粉丸][星香丸][橘薑丸]

<9>欝嗽=咳をし、痰があって顔がほてる。
〇処方・・・[清化丸][訶黎勒丸][清金降下湯]

<10>血嗽=瘀血咳嗽というのは、のどから生臭い匂いが上がって来、又は、 瘀血を唾・吐するのは、打撲と傷損によるものである。
〇処方・・・[四物湯大黄・蘇木][人参百合湯][桑皮湯][当帰飲]

<11>食積嗽=
〇処方・・・[瓜蔞丸][青金丸][二母寧嗽湯][温脾湯][香附丸]

<12>酒嗽=酒に酔って熱いとき、冷いものを飲むと、熱とともに胃の中に固まって痰に作用して咳になる。 
〇処方・・・[瓜蔞杏連丸][蜂薑丸]

<13>労嗽=虚労の咳。
〇処方・・・[人参清肺湯][加味二母丸][人参芎帰湯][加味人参紫菀散][潤肺丸][補肺丸][大寧嗽湯][知母湯][寧嗽湯][大阿膠元]

<14>久嗽=積痰が長い間肺脘につもって、阿膠に似て、気が下りないことから成る。
〇処方・・・[蜂薑丸][加味二母丸][人参清肺湯][貝母湯][九仙散][人参款花散][天鼠散][清肺湯][馬兜鈴丸][加味百花膏][潤肺除嗽飲]

<15>夜嗽=夜になると咳が出る。陰に属する。
〇処方・・・[滋陰精化膏][麻黄蒼朮湯]

<16>天行嗽=感冒・はやりの咳嗽で、痰が多く、寒熱があったりななったり。
〇処方・・・[人参飲子][一服散]
   

主薬
1)肺寒の咳嗽には、麻黄・杏仁を主薬とすべし《万病回春》
2)肺熱の咳嗽には、黄芩・桑白皮を主薬とすべし《万病回春》
3)咳嗽日に久しきには、款冬花・五味子を主薬とすべし《万病回春》
  

【漢方薬】
■安肺飲・・・・・・(痰嗽、新旧に)
■飴薑元・・・・・・(冷嗽)
■葦茎湯
■一服散・・・・・・(流行性暴嗽を治す)
■温金散・・・・・・(労嗽)
■温肺湯・・・・・・(肺虚に客寒を浴びて喘咳し、痰沫を嘔吐)
■温脾湯・・・・・・(飽食すると嗽がでる)
■黄連化痰丸・・・・(熱痰と咳)
■海青丸・・・・・・(火嗽・欝嗽、肺脹で苦しいとき)
■華蓋散《和剤局方》(肺に寒邪を感じ、咳、上気して鼻がつまり、声しゃがれる)
■藿香正気散桑白皮・杏仁《医学正伝》
■加減三奇湯《医学入門》
■加減瀉白散《古今方彙》
■加減散拗湯・・・・(風・喘・嗽)
■加味二母丸・・・・(久嗽・労嗽・食積嗽)
■加味人参紫菀散・・(虚労の咳)
■加味八物湯《済世全書》
■加味百花膏・・・・(久嗽)
■加味理中湯・・・・(肺胃が冷え、咳嗽)
■訶黎勒丸・・・・・(労嗽・乾嗽・喘急)
■瓜蔞丸・・・・・・(食痰が壅滞し喘息・咳)
■瓜蔞杏連丸・・・・(酒痰)
■括樓枳実湯《万病回春》
■含膏丸・・・・・・(喘嗽を治す)
■甘草湯・・・・・・(炎症<軽>、ケイレン性)
■甘麦大棗湯・・・・(ケイレン性)
■甘胆丸・・・・・・(酸っぱいのを食べて喘嗽になり、諸薬が無効のとき)
■款冬花散《医学入門》(寒と壅で肺気に不利となり、咳をして痰が起きるとき)
■桔梗湯・・・・・・(痰を除き咳嗽を止め、心咳を治す)
■帰地二陳湯
■橘甘散・・・・・・(気嗽・痰嗽)
■橘薑丸・・・・・・(慢性の気嗽)
■橘蘇散《医学正伝》(傷寒に咳、熱があって汗出・脈浮数、杏子湯で効無きとき)
■玉芝元・・・・・・(風熱で痰が激しく、声重い)
■玉粉丸・・・・・・(気痰の咳、喘急)
■九仙散・・・・・・(久嗽)
■九宝飲・・・・・・(咳嗽・寒嗽・久嗽)
■薑桂丸・・・・・・(寒痰の咳嗽)
■杏膠飲・・・・・・(16種の哮嗽を治す)
■杏子湯・・・・・・(風寒を感じ、痰が盛んで咳)
■杏参散・・・・・・(墜落して驚恐し、喘急して不安)
■杏蘇散《医学正伝》
■杏蘇湯・・・・・・(風寒にあたって咳、痰が盛ん)
■銀翹散
■金沸草散《傷寒活人書》(肺が風寒を感じ、咳・声重い・痰涎が黄色で壅盛)
■九仙散《医学正伝》
■鶏鳴丸・・・・・・(18種の咳と哮喘、吐血のあらゆる病勢を治す)
■桂麻各半湯・・・・(顔面赤い、発熱無汗、皮膚掻痒、便秘なし)
■玄霜雪梨膏・・・・(労嗽、痰を消化させ咳を止め、咯血・唾血)
■香附丸・・・・・・(食積痰嗽)
■五虎湯・・・・・・(気管支喘息、呼吸困難、小児喘息)
■五苓散《医方考》
■五拗湯・・・・・・(風寒による咳、声重く、のど痛)
■芩半丸・・・・・・(熱嗽で痰ある)
■柴陥湯・・・・・・(胸脇苦満<著明>、胸痛、胸中苦悶、咳嗽)
■柴胡枳桔湯・・・・(傷寒で胸脇が痛み、熱で咳、喘息して痰が盛ん)
■柴胡桂枝乾姜湯・・(胸脇満、臍上動悸、往来寒熱、小便不利、口唇乾燥、頭汗、腹部軟弱、脈微細数)
■柴胡桂枝湯・・・・(胸脇苦満<軽>、心下支結、腹直筋緊張、発熱・微悪寒、頭痛・頭重、心窩部痞鞕、下腹部疼痛、脈浮弱)
■柴朴湯・・・・・・(神経性)
■三聖丹・・・・・・(慢性痰嗽)
■三子養親湯・・・・(咳が急にひどくなる)
■三拗湯《和剤局方》(風寒を感じ、咳・声重い・失音)
■滋陰降火湯《万病回春》
■滋陰至宝湯・・・・(咳嗽、痰<痰稠>出しにくい、口渇、のぼせ、手掌のほてり、午後の潮熱、舌質紅、脈弦細数)
■滋陰清化膏・・・・(咳を止め、痰火を降ろす)
■紫菀茸湯・・・・・(過食による邪熱が肺を犯し、咳でのどがかゆく、痰が多くて喘急し、背骨が痛む)
■四逆散・・・・・・(胸脇苦満、腹直筋攣急、神経過敏、精神内欝、不定期熱、心下痞鞕<軽>、任脈拘急、下痢後重、小便不利、四肢冷<微>)
■四汁膏・・・・・・(咳を止め、痰をなくす)
■止嗽散    
■紫蘇飲子・・・・・(脾肺が虚寒して咳、痰が盛ん)
■小黄丸・・・・・・(熱痰咳嗽で脈多く、顔が赤く煩渇)
■小陥胸湯
■小柴胡湯青皮・桑白皮《万病回春》
■小青竜湯・・・・・(咳嗽、喘、鼻水、)
■小半夏加茯苓湯・・(めまい、頭汗、口渇、心悸亢進、心下痞満、胃内停水、尿利減少、手足厥冷<微>)
■升麻葛根湯・・・・(時気温疫、頭痛発熱、無汗、目痛、鼻乾燥、口渇 口乾、身体疼痛、胃中熱、脈浮)
■潤肺丸・・・・・・(燥痰・乾嗽・労嗽)
■潤肺除嗽飲《医学正伝》(老年の咳)
■参蚧散
■参蘇飲《和剤局方》
■参蘇温肺湯《医学発明》
■参朮調中湯《弁惑論》(熱を下げ、気を補い、嗽を止め、息を静め、食欲を増進)
■神朮散[3]・・・・・(風にあたって頭痛・鼻づまり・声重く・咳)
■神秘湯・・・・・・(呼吸困難、痰少ない、気鬱、胸脇苦満<軽>)
■青金丸・・・・・・(食積・咳)
■青竜散・・・・(咳をし、上気して寝られない)
■清化丸・・・・・・(肺欝と痰嗽で眠れない)
■清火寧嗽湯《済世全書》
■清金飲・・・・・(通治薬、諸般の咳嗽を治す)
■清金降下湯・・・・(熱嗽を治し、肺・胃の火を降ろす)
■清肺飲・・・・・・(肺熱に咳)
■清肺湯《万病回春》
■清風百解散《和剤局方》
■星香丸・・・・・・(気嗽、痰が盛ん)
■銭氏瀉白散《医学正伝》
■洗肺散・・・・・・(咳、痰が多く、熱があって肺気が濁る)
■洗肺湯《医学入門》
■旋覆代赭湯
■桑菊飲
■桑杏湯
■桑皮散・・・・・・(上焦に熱あり、咳を連発、気の通らない者)
■蘇子降気湯
■蘇子煎・・・・・・(老弱者の咳)
■大阿膠元・・・・(虚労の咳、血を吐き、唾を吐いて、発熱、痩せる)
■大寧嗽湯・・・・・(労嗽)
■団参飲子・・・・・(七情の咳、労傷で脾肺から膿血を出し、肺痿・労瘵になる)
■竹茹温胆湯・・・・(発熱、不眠、両頬紅潮、煩躁、咳嗽痰多い、驚き安い、心悸亢進、脈滑)
■知母湯・・・・・・(虚労の咳嗽、膿血を吐く)
■定喘化痰散・・・・(喘を治す)
■葶藶散《医学入門》(酒の飲み過ぎで喘急する)
■天鼠散・・・・・・(久嗽で諸薬効なきとき)
■東垣瀉白散《医学発明》
■澄清飲・・・・・・(痰嗽で諸薬効無きとき)
■滴油散・・・・・・(痰嗽で顔が腫れる)   ■当帰飲・・・・・・(打撲により肺気が損傷して咳、黒い血を吐く)
■当帰四逆加呉茱萸生姜湯
■都気丸
■二陳湯・・・・・・(胃内停水、心下部不快感、めまい、心悸亢進、発熱<不定期>、脈沈弦細)
■二母散・・・・・・(諸般の咳嗽と痰喘)
■二母清順湯《寿世保元》
■二母寧嗽湯《済世全書》(飲食に当たって胃火が肺気を衝迫し痰嗽が止まらない)
■人参款花膏・・(肺胃も虚寒で咳嗽が止まらない)
■人参款花散・・・・(久嗽)
■人参款花湯《和剤局方》
■人参芎帰湯・・・・(虚労による貧血で乾嗽、膿血を吐く燥熱、寒嗽)
■人参蛤蚧散
■人参胡桃湯
■人参散・・・・・・(痰嗽)
■人参瀉肺湯・・・・(熱嗽)
■人参潤肺湯《医学入門》(傷寒の咳)
■人参清鎮丸・・・・(熱を治し、咳を止め、痰を消化させ、喘息を静める)
■人参清肺湯・・・・(久嗽・労嗽・肺痿・腥臭の血を吐く)
■人参湯・・・・・・(寒嗽)
■人参百合湯・・・・(労嗽で鮮血を吐く)
■人参平肺散《医学発明》
■人参養栄湯・・・・(毛髪脱落、貧血、羸痩、疲れがとれない、食欲減退、不眠健忘、発熱悪寒、皮膚枯燥、腹部軟弱、小便赤渋、脈弱)
■排膿散及湯・・・・(部分的な化膿)
■排膿湯
■貝母散《医学入門》(火嗽と久嗽)
■貝母湯・・・・・・(諸般の咳)
■麦門冬湯《薛立斎十六種》
■麦門冬湯《内科適要》
■白果定喘湯
■白円子・・・・・・(風痰)
■発明半夏温肺湯《古今方彙》
■馬兜鈴丸・・・・・(久嗽)
■八物湯《万病回春》
■八味款冬花散・・・(肺経の寒熱が不順で涎嗽が止まらない)
■半瓜丸・・・・・・(痰嗽)
■半夏温肺湯・・・・(虚寒咳嗽で中に痰水と冷気があり、心臓の下がゴロゴロ)
■半夏厚朴湯・・・・(咽中異物感、気鬱不安、眼球光彩、胃内停水、胃腸虚弱、尿利減少、疲労)
■備急五嗽元・・・・(気嗽・飲嗽・燥嗽・冷嗽・邪嗽をなおす。昼夜止まらず、顔・目が腫れ、飲食を消化しない者)
■百合固金湯
■白朮湯・・・・・・(嗽に痰が多く、身体がだるい)
■分心気飲・・・・・(神経性)
■平胃散・・・・・・(太陰病、心下痞塞、腹部膨満、食後腹鳴)
■宝鑑瀉白散《玉機微義》
■蜂薑丸・・・・・・(酒痰の咳、積聚の久嗽)
■防風通聖散・・・・(赤ら顔、便秘、尿濃い、腹部緊満、腹部膨満感、舌苔黄厚膩、舌質紅)
■補中益気湯麦門冬・五味子《寿世保元》
■補中益気湯茯苓・半夏・五味子《薛立斎十六種》
■補肺阿膠湯
■補肺湯《婦人大全良方》(労嗽)
■麻黄湯・・・・・・(頭痛、発熱、悪寒、身体疼痛、関節がいたい)
■麻黄細辛附子湯・・(悪寒が強く、のどが痛い、脈沈)
■麻杏甘石湯・・・・(口渇、頭から汗、乾咳)
■麻黄蒼朮湯・・・・(秋冬の夜嗽が止まらない、明け方少し止まり、口苦、胸痛、涎沫の痰を唾き、食欲ない)
■礞石滾痰丸
■木防已湯・・・・・(顔面<蒼>黒色、喘息、呼吸困難、心下痞堅・膨満、尿利減少、浮腫、動悸、脈沈緊)
■射干麻黄湯
■養陰清肺湯
■抑心清肺丸・・・・(肺熱の咳、咯血)
■藍漆煎元・・・・・(痰嗽)
■六君子湯炮姜・肉豆蔲《薛立斎十六種》
■六味丸麦門冬・五味子・山梔子補中益気湯《薛立斎十六種》
■苓桂朮甘湯・・・・(胃内停水、悪心)
■苓甘姜味辛夏仁湯・(虚弱者、気管支拡張症)


【民間療法】
    <1>イタドリ。
    <2>イチョウ。
    <3>オオバコ。
    <4>カイコ。
    <5>ダイコン。
    <6>ノビル。
    <7>ハチク。
    <8>フキ。
    <9>アオギリ・アカマツ・ウスバサイシン・ウツギ・ウマノスズクサ・ウメ・カイコ・カキ・カキドウシ・カラスウリ・カラタチ・キカラスウリ・キク・キュウリ・キリ・キンカン・クコ・クサスギカズラ・クルミ・クワ・コブシ・サクラ・サネカズラ・サル・サンショウ・シイタケ・シオン・シソ・ジャノヒゲ・ショウガ・チョウセンアサガオ。トチバニンジン・トンボ・ナタマメ・ナメクジ・ナルコユリ・ナンテン・ニシキギ・ニンニク・ネムノキ・ノイバラ・ハス・ハトムギ・ハハコグサ・ハラン・ヒオウギ・ビワ・ヘチマ・ホオズキ・ミカン・ミョウガ・モモ・ヤツデ・ヤマノイモ・ユキノシタ・ユズ。





 解放隅角緑内障
⇒隅角鏡検査で隅角の解放している原発性緑内障。
◎房水がその主要な排出経路である線維柱帯からシュレム管を経て流れる時に、線維柱帯が虹彩根部で閉塞されていないのが特徴。

   
 

解離性大動脈瘤 aneurysma dissecans
    (参照→「大動脈瘤」)
⇒多くは内膜の亀裂により、劇的に大動脈中膜に解離性血腫が起こり、突然の激烈な前胸部痛があり、背部に放散する。

◎症状:顔面蒼白、発汗などのショック症状を呈し、胸部から肩への放散痛や頸部から肩胛骨間に強い痛みを覚え、初期には血圧は低下せず、むしろ高血圧を示すことが多い。
 

◎特徴:血圧に左右差がある。
    片麻痺
    心雑音(AR)が発生。
◎以下の者に発症しやすい。
   コントロール不良の高血圧症患者
   妊婦
   大動脈狭窄症
   Marfan症候群

◎1979年、NYHAの診断基準:とのいずれか、又は両者を満足すること。
特徴的な胸痛の他に、
①大動脈弁閉鎖不全
②胸部大動脈の拡大
③脈拍の非対称的な減弱。
  の所見のうち1つ以上を持つこと。
大動脈造影により偽腔の検出、または、剥離内膜によって分けられる2つ以上の腔を検出すること。
   

◎分類:大動脈内膜の亀裂の部位、解離の方向により病型が分類される。  
 


 解離性同一性障害Dissociative Identity Disorder(DID)
■解離性障害の1つ
「解離性障害は、意識や記憶、人格などが現実との接触が失われる現象。
トラウマや強いストレスが引き金になる。

種類:
・解離性健忘
・解離性遁走
・解離性同一性障害(DID)
・離人症性障害
・特定不能の解離性障害
1人の人間に2つ以上の人格が現れる解離性同一性障害は、以前は多重人格と呼ばれていました。強いトラウマ(心的外傷)もその引き金になる。
DIDには、明確に区別できる2つ以上の人格が出現します。たとえば、トラウマに対して“内気”な人格と、平然として居られる“活発”な人格という互いに補い合う正反対の人格が多い。

原因・・・・
解離性同一性障害の多くは児童虐待や性的虐待などのトラウマが原因とされています。米国立衛生研究所(NIH)の調査では、DIDの97%は子供の頃にトラウマを受けていたという。
DIDでは自殺、自傷行為、ウツなどが現れることがあるが、複数の人格が現れることが直ちに重症ということではない。ただ、出現したばかりの人格が現実判断を誤り、本人や周りに不利益をもたらすこともある。
霊魂や妖精が乗り移ったという形で表現されて、社会的に認知された時代もありました。
精神科医は人格の数をあまり問題にしません。悪い人格は消えてくれという治療はしない。現れてきた人格すべてをその人の人格と考えて全体を調和させる方向で治療します。新しく現れた人格は社会的なトレーニングを受けていないと考えられるので、こうしたものが社会にスムーズに入れるようにするのが治療の基本です。」(金吉晴・国立精神・神経センター精神保健研究所成人精神保健部長)2006.5.23《日経》



 解顱(かいろ)
⇒頭蓋骨の縫合不全。顖門の閉鎖不全。
◎小児、解顱初起の者に葛根加朮附湯を与え、紫円を以て之を攻めれば則ち効あり。其の証すでに成る者は之を攻めれば命を促す。紫円能く上部の毒を治す。《先哲医話》

【漢方薬】
■十全大補湯
■八物湯
■補中益気湯
■六味丸


 蟹睛(かいせい)
=「蟹目」「損翳」
⇒黒睛の破損、光彩が破口より突出して珠のようになって、蟹の目に似た病証。
甲状腺腫の患者にも見られる。(睛=セイ、ひとみ)
症状:目が激しく痛み、羞明し、涙が出る。失明することがある。

【漢方薬】
■知柏地黄丸
■竜胆瀉肝湯




壊血病 scurvy
     (参照→小児壊血病)
◎症状:
自覚症状:
  口腔・下腿の激しいケイレン
  倦怠・衰弱
  歩行困難
その他の症状:
  歯牙脱落
  口臭
  潰瘍性口内炎
  内出血(血尿・血便)
  脾腫張を欠き、筋内出血がある。
  筋の板状硬化、関節の拘縮
  浸出液しばしばアンギナ
  気管支炎・肺炎
  視力障害

◎検査所見:低色素性貧血
      Rumpel-Leede現象:強陽性。
◎鑑別:
歯肉炎を欠く場合:紫斑病や白血病との鑑別が困難なことがある。
血液像・骨髄所見・リンパ節

【漢方薬】
■甘露飲《和剤局方》


 顔色が悪い
   ⇒顔色悪い
【漢方薬】
■安中散
■温経湯
■加味帰脾湯
■黄蓍建中湯
■芎帰膠艾湯
■桂枝加竜骨牡蠣湯
■桂芍知母湯
■啓脾湯
■五積散
■呉茱萸湯
■柴胡清肝湯
■酸棗仁湯
■四君子湯
■四物湯
■七物降下湯
■十全大補湯
■小建中湯
■小半夏加茯苓湯
■真武湯
■大建中湯
■猪苓湯合四物湯
■通導散
■桃核承気湯
■当帰建中湯
■当帰芍薬加附子湯
■当帰芍薬散
■人参湯
■人参養栄湯
■半夏白朮天麻湯
■茯苓飲
■平胃散
■補中益気湯
■麻黄細辛附子湯
■木防已湯
■六君子湯
■苓甘姜味辛夏仁湯

 

顔が黄色い
⇒顔色が黄色い。

【漢方薬】
■茵蔯蒿湯
■茵蔯五苓散
■清暑益気湯
■人参養栄湯
■平胃散




 顔が黒い
   ⇒顔色が黒い。
◎女性の場合には、

①『インスリン受容体異常症』かも?
②ステロイドホルモンを常用していないか?

【漢方薬】
■荊芥連翹湯・・・・(皮膚浅黒い、筋肉やせ型、腹直筋<心下部>拘攣、くすぐったがり、手掌に脂汗、脈緊)
■柴胡清肝湯・・・・(皮膚浅黒い<青白い>、くすぐったがり、虚弱、やせ形、頸部リンパ腺腫大)
■人参敗毒散・・・・(浅黒い)
■木防已湯・・・・・(黒ずんでいる)
■竜胆瀉肝湯・・・・(実証、皮膚浅黒い、手掌湿潤、くすぐったがり、下焦の疼痛・腫脹、小便黄赤、脈緊)


顔が熱い(=面熱)

【漢方薬】
■桂枝茯苓丸
■升麻黄連湯
■清上防風湯
■調胃承気湯7銭黄連3銭・犀角1銭



顔が冷たい
=顔面が冷たい
【漢方薬】
■升麻附子湯
■沖和気湯


顔が赤い
⇒顔色が赤い。赤ら顔。
◎チェックしましょう。--------多血症
  【漢方薬】
■温清飲
■黄連解毒湯
■桂麻各半湯
■通導散
■通脈四逆湯葱白9茎。
■防風通聖散
■附子理中湯




顔に湿疹
=顔にできもの
⇒顔に発斑
<1>顔に熱毒・瘡癤・・疿が出る:
[柏連散][硫黄膏][白附子散][清上防風湯]
<2>一切の風刺・粉刺・雀卵:
[玉容散][連翹散][紅玉散][玉容西施散][皇帝塗容金面方][玉容膏]
<3>顔面の瘢痕:
[衣中白魚37枚、白石脂3銭半、鷹糞白7銭半、白附子2銭半、白蚕5銭を作末し猪脂で調和して毎夜塗り、朝洗う]

【漢方薬】
■硫黄膏・・(顔面の瘡、鼻や頬に赤紫色の風刺・粉刺)
■茵蔯五苓散・・(黄疸、発熱、腹壁軟弱、胃内停水、煩渇、脈浮)
■紅玉散・・(顔面に出る酒刺・風刺・黒ほくろ・班子を治す)
■皇帝塗容金面方・・(粉刺・風刺・雀卵)
■玉容膏・・(顔面の燥瘡・斑痕・ほくろ)
■玉容散・・(顔面上の小瘡・痤疿・粉刺を治す)
■玉容西施散・・・・(顔面の難病に)
■清上防風湯・・・・(上焦の火をなくし、顔面の瘡癤・風熱毒を治す)
■治頭瘡一方・・・・(発赤・丘疹・水泡・糜爛・結痂)
■柏連散・・・・・・(顔面の熱毒・悪瘡)
■白附子散・・・・・(顔面の熱瘡・斑点)
■連翹散・・・・・・(顔面の穀嘴瘡を治す

 

顔が腫れる
【漢方薬】
■加味消毒飲・・(塔顋腫=流行性耳下腺炎)
■消風散・・・・(感覚異常)
■升麻胃風湯・・(胃風でなった面腫を治す)
■清胃散石膏・・・(顋頬・歯牙:口唇がともに腫れる)
■托裏消毒飲・・(膿もうとしたら)



顔の感覚がおかしい
=「顔面神経麻痺」
女優「高樹澪」さんは、片側顔面神経麻痺になって、自分の顔が作れなくなり、引退。長年苦しんでから、脳神経外科へ。顔面神経がくっついているを外し、回復。4年後に女優に復帰。

 

顔のむくみ(=陰虚面浮)
  【漢方薬】
   =顔面浮腫。
■八味地黄丸
■麻杏甘石湯
■六味丸




疥癬(かいせん) scabies
⇒カンセンチュウ(Sarcoptes scabiei)が引き起こす、強烈なかゆみを伴う悲惨な症状を呈する。この虫の雌は皮膚の表面のすぐ下に穴を掘って入りこみ、卵を生みつけます。この卵がかえると、皮膚の下のカンセンチュウが動くために、掻痒感と刺激が生まれます。

俗に[ひぜん]という。
伝染性が極めて強く、どんどん広がっていきます。
カイセンチュウはヒツジの毛皮のなかに住んでいる。
■ダニによる疥癬
「現在、日本国内で流行しているのは、大部分がヒトにつくダニ、ヒゼンダニによって起こるカイセン(疥癬)であって、その感染経路は、ヒトとヒトの直接接触、すなわち、性行為や親子間、兄弟間で感染が起こっている。
ヒゼンダニによる疥癬はヒトの皮膚にトンネルを掘って、ダニがその中に寄生して起こる。したがって、とても痒く、特に夜間や、寄生部位が温まると痒さが増す」藤田紘一郎著「ボンボン・マルコスのイヌ」より。
■下着やシーツは毎日交換を
「66歳の女性。疥癬虫に感染してしまいました。かゆみ止めの軟膏や硫黄石鹸を使っていますが、なかなか治りません。将来、孫の面倒を見たいのですが、移るのではないかと心配です。
<1>どんな病気ですか?
疥癬は、ダニの仲間のヒトヒゼンダニが皮膚に寄生して起こる病気です。体長は0.2mm~0.4mmほどで、肉眼ではほとんど見えません。患者さんが「体についていた虫を捕まえた」と病院に持ってくるのは、ほこりやふけが多い。診断の際には、皮膚の表面を削って、顕微鏡でヒトヒゼンダニやその卵の有無を調べます。
<2>症状は?
①ステロイド剤を使っても止まらないような激しいかゆみが特徴です。

②腹や胸、脇の下、へその回り、手の指などに赤いツブツブができます。

③また、外陰部に小豆ほどの大きさの赤い結節が出来ます。

④男性では、特に陰嚢に出来やすい。

⑤間違って『アトピー性皮膚炎』などと診断されるケースも少ないようです。
<3>ダニの寿命は長いのですか?
ヒトヒゼンダニの寿命は4、5週間~2、3ヶ月と言われています。皮膚のごく浅い層に横穴のトンネルを掘って、1日に2mm ほど進みます。このトンネルの中に卵を産みます。卵は3、4日で孵化し、約2週間で成虫になります。人体に感染してから、赤いツブツブが出来る間での潜伏期間は、2週間~1か月です。
<4>ダニは衣類や布団の中でも生き続けますか?
人体から離れると、3日ほどで死滅します。ただし、風呂場の近くなど高温多湿の場所では10日~2週間生き続けることもあります。
<5>感染の経路は?
人から人への直接接触と、寝具やこたつなどを通じた間接接触の2つがあります。疥癬は終戦直後に大発生しました。1960年代末頃に性病として東南アジアなど海外から移入され、2、30歳代を中心に多発したこともあります。1975年頃からは、老人福祉施設や老人病院での集団発生が目立つようになりました。栄養不良だったり、抵抗力の弱い人の場合、耳や膝、足や爪などに無数のヒトヒゼンダニが集まってかさぶた状になる『ノルウェー疥癬』と呼ばれる病態になり、集団感染の源になることがあります。
<6>どんな治療が必要ですか?
まずダニを駆除するために、安息香酸ベンジルアルコール液などの薬剤を、1回または2回だけ患部に塗ります。次に、かゆみを抑えるクロタミトン軟膏、硫黄軟膏などを症状が改善するまで毎日塗ります。硫黄入浴剤や抗ヒスタミン剤の内服薬を併用することもあります。難治性の疥癬でなければ、通常、患者本人だけでなく、まだ症状の出ていない家族も一緒に診察と治療を受けることが大切です。
<7>日常生活での注意点は?
①毎日、下着とシーツを交換することが必要です。②また、風呂場の脱衣かごは別々にして下さい。

③このダニは50℃以上で死滅するので、洗濯の際に熱湯をかけるのも効果的です。

④普通のやり方で洗濯しても、日光に十分当たれば駆除出来ます。病院では患者を個室に隔離して治療する事が望ましいのですが、空き部屋を確保出来ない病院もあり、現実はなかなか難しいようです。 (小木野篤彦・国立京都病院皮膚科医長)1997.11.23《朝日新聞》

【芳香療法】
<1>ガーリック内服と、
<2>ラベンダーペパーミントのクリーム。又は
<3>シナモンクローブラベンダーレモン
【漢方薬】
■治癬一方《竹中氏》
■調胃承気湯
■反鼻一味:霜となし酒服《本朝経験》
■防風通聖散
■六味丸:足のすねの疥癬。


 疥瘡(かいそう)
⇒ひぜん、かさ、疥癬の類を指す病名。



 疝(かいせん)
=「疝タイセン」に同じ。
=睾丸が大きくなって、かゆくも・痛くもない、地気の卑湿なところでなる病。
イ.腸=小腸気:[天台烏薬散][救命通心散][却鈴丸][加味通心飲][痛元][消疝丸][立効散]
ロ.卵=水疝と同じ治法。
ハ.気=気疝と同じ治法。
ニ.水=膀胱疝:[青木香元][三花神祐丸][神保元]



 潰瘍(かいよう)
⇒皮膚や粘膜が深いところまで欠損した状態。
◎炎症、循環障害、化学物質、圧迫、神経作用などが原因となり、組織の壊死・剥離・融解によって形成される。
◎陰部の潰瘍(参照→ベーチェット病)
■傷の治り具合
「英国のストラスクライド大学は、非侵襲的な傷と包帯のモニターを使って傷の湿潤レベルをはかることができる技術を開発した。英国ではケガがなかなか治らない患者が300万人いる。
キズと包帯の接触部分の適正な湿潤バランスは傷の治療にとて大切。現在、キズの点検には包帯をはがすしか方法がなく、治癒を損なう結果になっている。
開発したのは
①現場でキズと方位帯を監視できる
②包帯の使い方が効率的になる
③早期に治療できるのでキズの浸出液の管理がうまくゆく
④包帯替えの痛みを軽減できる
⑤従来の治療法と併用できる
⑥治療コストが低減できる」
  【宝石療法】
    アンバー
    クリソコラ
【漢方薬】
■安中散
■烏頭湯
■茵蔯五苓散
■温経湯
■黄蓍建中湯
■黄連湯
■葛根加朮附湯
■乾姜附子湯
■帰脾湯
■桂枝加黄蓍湯
■桂枝加芍薬湯
■桂枝加朮附湯
 呉茱萸湯
 五苓散
    柴胡加竜骨牡蛎湯
    柴胡桂枝乾姜湯
    柴胡桂枝湯
    三黄瀉心湯
    四逆散   
    四君子湯
    梔子湯
    小建中湯
    小柴胡湯
    消風散
    大黄牡丹皮湯
    大柴胡湯
 猪苓湯
    桃核承気湯
    当帰建中湯
    当帰芍薬散
    当帰湯
    人参湯
    排膿散及湯
    八味地黄丸
    半夏瀉心湯・
 防風通聖散
    六君子湯
    竜胆瀉肝湯
    苓桂朮甘湯
    苓姜朮甘湯
    六味丸



 潰瘍性大腸炎 idiopathic ulcerative colitis
⇒大腸に原因不明の広範な非特異的潰瘍性炎症が発生する疾患。
      ①壮年者に多く、男女差は少ない。
      ②下痢・発熱・粘液便・膿血便・栄養障害が発生する。
      ③直腸・S状結腸に初発する。連続性に上行性に波及する。
      ④小腸に病変が波及することはない。
      ⑤検査により、症状の悪化や穿孔、中毒性巨大結腸症を誘発することがある       ので、検査時期に要注意。
   ◎1975年、厚生省特定疾患潰瘍性大腸炎調査研究班の診断基準
     下記の[A]の他、[B]のうちのい1項目を満たすもの。
     [A]持続性または反復性の粘血・血便またはその既往があること。
     [B]内視鏡検査により、
         ①粘膜は粗または細顆粒状を呈し、もろくて易出血性(接触出血)          を伴い、粘血膿性の分泌物を付着しているか
②多発性のビラン、潰瘍あるいは偽ポリポーシスを認める。
       生検により、組織学的に主に粘膜に炎症性反応を認める。
        この際、同時にビラン、陰膿瘍(crypt abscess)や腺の配列異常及び上        皮の変化を認めることが多い。
   注腸X線検査により:
         ①粗または細顆粒性の粘膜の表面の変化
         ②多発性ビラン、潰瘍、あるいは
         ③偽ポリポーシスを認める。
         ④この他、腸管の狭小や短縮を認めることもある。
切除手術または剖検により、肉眼的および組織的に潰瘍性大腸炎に特徴        的な所見を認める。
     [C]除外規定:
         ①細菌性赤痢
         ②アメーバ赤痢
         ③日本住血吸虫症
         ④大腸結核
         ⑤放射線照射性大腸炎
         ⑥虚血性大腸炎
         ⑦肉芽腫性大腸炎
   ◎潰瘍性大腸炎と過敏性腸症候群の鑑別:
       潰瘍性大腸炎-------CRP上昇する。
過敏性腸症候群----CRP低下する。
■潰瘍性大腸炎を引き起こす有害因子。
     <1>水銀
     <2>クロム
     <3>ビスマス
     <4>ヨード
     <5>砒素
   ■炎症性腸疾患の新治療法
    「独マインツ大学などの研究グループは、クローン病や潰瘍性大腸炎など炎症性     腸疾患の新しい治療法を開発した。
      研究グループは、同病の発病にP53というタンパク質をつくる遺伝子が関     わっていることを発見した。この遺伝子に結合するアンチセンス核酸を作成、炎症性     腸疾患にかかっている動物に与えたところ、遺伝子の働きが抑えられ、症状が     緩和された。アンチセンスを利用した腸炎の治療法は人間にも応用出来る可能     性もあるという。1996.9.18《日経産業新聞》」
   ■ビールの搾りカスが有効
    「キリンビールと北海道大学、久留米大学の共同チームはビールの搾りカスから、     激しい下利を起こす潰瘍性大腸炎に効果がある成分を発見した。ビール製造に     使った後の大麦に含まれる食物繊維を患者に与えたところ、約9割で症状が改     善したという。
共同チームはキリンと北大獣医学部の岩永敏彦教授、久留米大医学部の光山     慶一講師。研究成果を5月に米国で開く消化器病学会で発表する。発酵させた     大麦からうまみ成分を取り除いた後の搾りカスはセルロースやリグニンなどの     食物繊維が豊富で、整腸作用が期待されていた。
マウスの実験で安全性と機能を確認した後、潰瘍性大腸炎の患者で効果をみ     た。8人の患者に十分な説明による同意を得てから1日30gずつ4週間にわ     たり食べてもらった。その結果、7人の患者で下利の症状が改善したうえ、潰     瘍が縮小していたという。
潰瘍性大腸炎は腸内がただれて血便などの激しい下痢を伴う病気。人工肛門     など日常生活で不便を強いられるケースもある。国内患者は30歳以下の若者     層を中心に約50000人と推定されている。1998.5.2《日本経済新聞》
   ■胃風湯など工夫
    「25歳の男性。3年前、潰瘍性大腸炎との診断を受け、ステロイド剤やサラゾピ     リンという抗炎症剤の投与を受けています。薬を減らすと再発し入退院を繰り     返しています。
潰瘍性大腸炎は完全に治すことがなかなか難しい疾患の1つである。大腸の     炎症で出血や粘液便・腹痛などが主な症状であるが、複雑な免疫機構の異常が     あることが分かっている。ステロイド剤や抗炎症剤が効いていても減量すると     再発したり、ステロイド剤の副作用に悩んでいる方が少なくない。
そこでひとつはステロイド剤の減量や廃止のために種々の漢方薬が用いられ     ている。頻用されているのが柴苓湯である。局所の炎症を抑えるために活動期     には黄連解毒湯を併用するとよい。
もう一つは免疫異常を根本的に治すために漢方薬が試みられている。温清飲     を基礎にした処方や十全大補湯、黄蓍建中湯、などが用いられる。私どもの研     究ではこれらの一般的処方でうまくいかない時、胃風湯甘草や、白頭翁甘     草阿膠湯などを処方している。
      現代医薬品と全身状態を改善する漢方薬を上手に組み合わせて、本来の免疫     機構にもどすようにじっくり治すべき疾患である。(花輪寿彦)1999.5.10《日     本経済新聞》
■血液を対外循環
「大塚製薬の子会社である日本抗体研究所(高崎市)は、潰瘍性大腸炎の新しい治療法を開発した。人工透析の要領で血液を体外循環させ手、炎症を引き起こす原因となる血液中の顆粒球を取り除く。
現在はステロイドを使う治療が主に摂られているが、ステロイドを大量に投与するため副作用を起こす心配があった。同社は新しい治療法に使う専用医療用具「アダカラム(商品名)」の認可を厚生省からすでに取得しており、12月にも発売する予定だ。
アダカラムは直径6cm、高さ薬20cmの筒状をしており、筒の中には酢酸セルロール製で直径2mmのビーズが35000個詰まっている。ここに患者の血液を流し込んで、活性化した顆粒球を吸着させる。
1回の治療時間は約1時間で、これを定期的に繰り返すことによって治療を進める。臨床試験を担当した兵庫医科大学の下山孝教授は「副作用はほとんどない」としている。逆にステロイドの投与量を大幅に減らせるため、ステロイドによる副作用を抑えることが出来る。」1999.11.19《日経産業新聞》
■炎症悪化の仕組み
「2008年、京都大学の森泰生教授らは体内で炎症が悪化する仕組みをマウス実験で確認した。成果は6/9、ネイチャーメディシン(電子版)で発表。
炎症は病原菌が体内に侵入してきた時などに体を守るために働く機能の1つ。正常範囲なら問題はないが、何らかの原因で炎症が悪化すると[潰瘍性大腸炎]や[クローン病]などに発展する。
研究チームは炎症が起きている場所では白血球の一種である『好中球』が多く集まり腸管などの組織を傷つける物質を出すことに着目。好中球を呼び寄せる仕組みをしたらべた。その結果、炎症個所にいて異物を食べるマクロファージの細胞表面にある『TRPM2』というタンパク質が働くと、好中球を呼び寄せる[ケモカイン]というタンパク質が作り出されることが分かった。
実験ではある化学物質をマウスに与えると潰瘍性大腸炎を発症し[血便]や[体重減少]などが起きたが、TRPM2を欠損した遺伝子改変マウスに与えても潰瘍は起きなかった。
人でも同様の仕組みが働いていると見られている。
TRPM2を一時的に抑える薬剤を開発できれば炎症の悪化や慢性化を防げると考えられている」
■腸内細菌が関与
「大阪大学の研究チームは、難病の潰瘍性大腸炎やクローン病が発症する仕組みをマウス実験で突き止めた。腸内細菌によって過剰に放出されたATP(アデノシン三リン酸)が免疫細胞の分化を促し、炎症を誘発する物質を多く作り出していた。
成果は2008年8/21ネイチャー電子版に発表。
潰瘍性大腸炎やクローン病は炎症性腸疾患と呼ばれ、体の免疫システムの異常が発症の引き金と考えられている。欧米では多い病気だが、日本でも増えつつある。
阪大の竹田教授と本田賢也准教授らは、これらの病気発症との関連性が指摘されている『Th17細胞』という免疫細胞に着目し、マウスを使って働く仕組みを詳しく調べた。
腸管にTh17細胞の分化に関わる樹上細胞が存在し、樹状細胞が活性化すると炎症性サイトカインが放出され、Th17細胞も数多く作られることが分かった。
樹状細胞を活性化するのが[ATP]で、腸内の常在菌によって放出されることも分かった。
ATPは細胞内のエネルギー源として知られているが、免疫にも深く関係していた。ヒトでも同様の仕組みがあると見られている。」
■遺伝子
「2009年、潰瘍性大腸炎の発症リスクを高める3種類の遺伝子が見つかった。理化学研究所と札幌医科大、東北大、九州大などのチームが見つけネイチャー・ジェネティクス電子版に11/16発表した。
潰瘍性大腸炎は自己免疫疾患に近いと分かった。
日本人患者1384人と健康な3057人のゲノムを解析して比較し見つけた。
その結果
①免疫反応を促す「FCGR2A」遺伝子
②13番染色体上野未知の遺伝子
③消化物から水を吸収する「SLC26A3」遺伝子
の変異が発症に関与していることが分かった。
  【漢方薬】
    胃風湯《万病回春》
直腸に潰瘍があって、1日に10数回の粘血便を下し、排便時に、絞るような腹痛のある老婦人に、本方を用いて効を得た。この婦人は2年前より下痢し、左腸骨窩に索状物を触れ、圧痛があった。本方服用後、半年で全治した。(漢方診療医典)
 温経湯
    加味槐花散
    桂枝加芍薬湯
    柴胡加竜骨牡蛎湯
柴胡桂枝湯
本方が奏功することを、相見三郎が報告(漢方診療医典)
    小柴胡湯
    小柴胡湯四物湯
    四神丸
参苓白朮散《和剤局方》
    大黄牡丹皮湯
    桃花湯
    半夏瀉心湯
    半夏瀉心湯四物湯
■治療薬
「杏林製薬は10日、日清製粉グループとの共同出資会社である日清キョーリン製薬(東京・千代田区)とともに、潰瘍性大腸炎とクローン病の治療薬「プレドネマ注腸20mg」を発売した。両社は炎症性腸疾患(IBD)領域の医薬品を共同販売している。
潰瘍性大腸炎は大腸内に、クローン病は小腸など消化管に潰瘍が出来る疾病で、ともに激しい下痢や下血を伴う難病。「プレドネマ」は症状が出ている活動期に使い、速やかに症状を落ち着かせる効果があるという。
肛門からノズルで入れる注腸タイプで、成分は副腎皮質ホルモンの一種であるプレドニゾロン。2002.9.11《日経産業新聞》
■繊維で除去
「東レは難病の潰瘍性大腸炎を治療する医療機器を開発した。極細繊維で作った特殊フィルターを使い、病気の原因と見られる病気の原因と見られる特定の白血球だけを効率よく血液中から除去できる。
除去するのは顆粒球や単球とよぶ白血球。顆粒球と単球は体内に侵入した異物を認識し、食いついて分解する。潰瘍性大腸炎患者は顆粒球と単球の数が健康な人に比べて1.3~1.7倍多い。」




 化学物質過敏症
 =一般に行われている検査で症状を説明出来ない不定愁訴があり、極微量の化学物質に反応して発症するもの。「アレルギー」「アトピー」とは違う病気。
⇒化学物質を大量に取り込んだり、長い期間接して、一度体が敏感になると、極微量の物質で症状が出る。薬品、衣類、食物、日用品などあらゆるものが原因になり、生活にも支障をきたす。1997.9.27《朝日新聞》
◎原因物質を生活環境から排除することが大切。
◎一旦、発症すると次々に反応する物質が増える。
◎「ダラス環境健康センター」のウイリアム・レイ博士が権威者。
1年間に9000人の患者数。
 日本では北里大学・石川教授。
   ◎患者数:アメリカ---4人に1人。
■専門施設を新設
「北里研究所付属病院(東京・港区)は化学物質過敏症を専門に診断・治療施設「臨床環境医学センター」を新設する。化学物質の濃度が通常の部屋の1/30 程度のクリンルームの建設に8月から着工、来年4月の開業を目指している。」     1998.1.30《日本経済新聞》
■空気中の化学物質の分析----横浜国立大学環境化学センター
筑波山上の空気中の化学物質を測定すると、400種類以上の化学物質が測定された」
■体調狂わす建材、転居繰り返す
「東京・池袋から急行電車で約50分の、自然豊かな埼玉県西部の丘陵地帯。ここにある一戸建て住宅で、飯田道子さん(61)は会社員の夫、娘と3人で10年間を過ごした。しかし、家にいるのがどうにも我慢できず。一昨年末に自宅を離れた。現在は完全な空き家となっている。
飯田さんと娘が異常に気付いたのは5年ほど前。[手足がむくんだり]、[声が出にくい]などの症状が現れた後、血の混じった痰(タン)が出たり、[頭痛]が頻発するなど悪化した。声楽を専攻している娘の教師が「もしかしたら、住宅が原因では」そう心配してくれたが、医師に相談してみると、「病気ではない」。
そんなとき、テレビの特集番組で、住宅の壁紙などに含まれる化学物質が居住者の健康に悪影響を及ぼす「化学物質過敏症」を知った。番組に登場していた研究機関に連絡を取り、自宅内の空気を調べてもらったところ、34種類の有機化合物が検出された。
驚いた飯田さんは化学物質過敏症の研究に取り組んでいる北里大学病院で診察を受けた。診断結果は、「中枢神経に機能障害があり、化学物質過敏症の疑いが強い」
そういえば、「自宅と同じ建材を使っている工事現場の近くを通ったり、シロアリ駆除をしたばかりの建物に入った直後に、全身が赤く腫れた」経験があった。調べてみると、自宅の建材にも、シロアリ駆除剤など、複数の化学物質が含まれていりことが分かった。
「もう、この家には住めない」。夫を説き伏せ、一昨年末に近くのアパートに引っ越した。まもなく家から持ってきた寝具や衣類に、刺激臭が染み付いていることに気付く。「寝具はすべて取り替え、衣類はほとんど捨てた」。家具やテ

レビなどの電気製品も買い換えたが、すでにアパート内に広がっていた為か、刺激臭は残り、家はさらに別の住居に。
引っ越しを繰り返すうち、刺激臭は薄まったが、「今度は都内に勤務する夫の衣類や体にこびりついたニオイが気になった」。夫が風呂に入った後は「浴室中に刺激臭が充満している」感じがする。その後、夫が通勤に使う最寄り駅の建物が自宅と同じ建材を使っていることが分かり、昨年6月、娘を連れて夫と別居した。
夫と離れた後、さらに2度住まいを移した。それでも刺激臭はなくならない。「この町に居る限り、逃れられない」。飯田さんは今年5月、夫の住む町を離れ、空気のきれいな山沿いの町に引っ越すことを決心した。」1998.4.28《日本経済新聞》
■シンガーソングラーター(園田純子)
「マンション6階のベランダの窓を開けると、目の前の湾岸道路を大量の車が夜通し走る。大型車両が多い。排ガスがあたり一面にただよい、動かない。毒の雲のようだ。産業廃棄物の山も見える。化学物質過敏症を発症した1991年当時、私たち家族の住まいは、千葉県のそんな環境の中にあった。
風邪がなく空気がよどんだ夜中には、強烈な化学臭が部屋に入り込んでくる。
私の視力は極度に衰え、当時3歳だった娘の目にも“失明寸前”と医師に言われた。同じ部屋で暮らしていても何の症状もない夫は、さぞ奇異に感じたことだろう。
多くの患者が周囲の理解を得られず、心の病とされて精神科の門を叩く。
確かに、呼吸が猛烈に苦しくなると、私は豹変した。エプロン姿で音楽を聴きながら娘と戯れていたのに、突然“苦しい”と叫び、部屋中をウロウロし始める。興奮状態に陥り、思考は混乱し、悲鳴を上げる・・・・。そんなことがたびたびあった。
誰にも分かってもらえない絶望と深い孤独感にさいなまれた。ある日、ついにベランダの柵に足をかけた。だが、死ねなかった。誰か私を殺して!、と叫んだ。
一刻も早く、息の吸えるところへ行きたい。あてもなく地図を広げた。森や緑地を示す緑色を見ただけで涙が出るほど、追い詰められていた。幸い、夫も分かってくれ、家族3人で同じ県内の緑の残る静かな住宅街へと引っ越した。雑木林に癒される日々を送り、私の体調もいったんは落ち着いたかに見えた。
だが、平穏なひとときは、ほんのつかの間だった。今度は、片頭痛とセキと嘔吐が止まらない。近所のゴミ焼却による煙が原因だった。県が援助金を出して家庭でのゴミ焼却を奨励していたのだ。被害を役場に訴えたが、「おかしな住民」と思われただけだった。
そのうちに、日用品のあらゆる化学物質に、次々と反応し始めた。シャンプーやリンス、衣類のほか、ガス給湯器の室外機から出る燃焼ガスにも過激な反応が出た。
私が突然キレる時、隣家では必ず誰かがシャワーを浴びていた。再び、地獄のような日々が始まった」2007/11/25日経

鏡ー緒方症候群
■命名
2015年、欧州の研究者団体は、人の14番目の染色体にある遺伝子「RTL1」が過剰に働いて起きるまれな病期の仕組みや症状の解明に国立成育医療医研究センターの鏡雅代室長と浜松医大の緒方勤教授が貢献したとして「鏡ー緒方症候群」と名付けた。
世界で論文報告された患者は1991年以来51人。
頬が丸く胸の骨格が小さいなどの共通の特徴が分かってきた。
母親の羊水が多く、出生直後に人工呼吸が必要となり、お座りや歩行の開始が遅くなるという。



 牙疳(がかん)
=「漢方の病名」壊血病のこと。
⇒歯肉や口腔粘膜に潰瘍を生じる病気。
◎種類:
<1>風熱牙疳:風熱が原因
<2>青腿牙疳:下肢の青色の腫塊を伴う。
<3>走馬牙疳:急性で険悪なもの。甘草瀉心湯《傷寒論》
【漢方薬】
■甘露飲


牙痛(がつう)
=「歯痛」
◎主薬:牙痛には、石膏・升麻を主薬とすべし《万病回春》



角皮症
  【漢方薬】
■温経湯
■加味逍遥散
■桂枝茯苓丸
■麻杏薏甘湯
■薏苡附子敗醤散



 角膜炎   
◎「角膜」・・・眼球の正面にある透明なドーム状の膜。黒目に当たる部分を覆っている。厚さは約0.5mmで外側から[上皮][実質][内皮]の3層構造になっている。眼球の表面を保護すると同時に、カメラのレンズのように眼球の裏側にある網膜の上で光が像を結ぶのを助ける働きがある。

◎「アカントアメーバ」による角膜炎。
<1>コンタクトレンズを使用している人、特にソフトコンタクトの人は要注意です。
<2>アカントアメーバは、家庭内のほこり・ゴミなど、どこにでもいる。
<3>眼科で、“角膜のキズ”と診断されることが多い。
<4>症状:

1)激しい痛み、刺されたような痛みがあり、目が真っ赤になり、
涙がポロポロ。
2)視力低下
    <5>専門医:東京女子医大・石橋康久教授
■角膜移植
「角膜の上皮層が傷ついて起きる病気には[アルカリ腐食][スティーブンズ・ジョーンズ症候群]があります。
アルカリ腐食は実験中に薬品や、工事の時にセメントが目に入って起きます。スティーブンス・ジョーンズ症候群は西洋薬などの副作用で、全身の粘膜に異常が生じて起こると云われています。
いずれも角膜上皮が無くなり、結膜(目の白い部分)の細胞が血管を伴って角膜を覆い白く濁ります。その結果、視力が著しく低下することになります。
薬では治らないので、アイバンクから亡くなった人の角膜を取り寄せて移植することになります。アルカリ腐食はこれで50%くらい治ります。
また、スティーブンス・ジョーンズ症候群のように角膜の中に血管が入り込んでいる場合、他人の角膜を移植すると高い頻度で拒絶反応が起き、うまくいきません(西田幸二・東北大学大学院教授)」
  【漢方薬】
    越婢加朮湯・・・・(実質炎)
    桂枝茯苓丸
    梔子柏皮湯
    生姜瀉心湯
    洗肝明目湯《万病回春》
    大柴胡湯
    抵当湯
    桃核承気湯
    当帰芍薬散
    八味地黄丸
    白虎加人参湯
    六味丸



 角膜潰瘍
⇒角膜実質に及ぶ組織の欠損をいう。(参照→痛みが激しい)
■視力回復へ角膜上皮再生
「事故などで失った角膜上皮(角膜の表面層)を再生する新手術法を開発した。角膜上皮をつくる細胞を移植する。角膜移植でも治らなかった重症患者も目が見えるようになると期待されている。これまで実施した約200例の臨床試験で約半数の患者の視力が回復した。
海外でも同様の手術を試みていたがことごとく失敗。成功の秘訣は「患者の涙だった」。涙の量を制御することで移植した細胞がうまく付き、角膜上皮を作り出す、涙の出にくい患者には、成分の似ている血清を使うなど工夫した。」
(坪田一男・東京歯科大教授)1999.6.28《日本経済新聞》
■ブタ角膜
「東京医科歯科大学と物質・材料研究機構などの共同研究チームは、ブタの角膜を拒絶反応なく角膜移植につかう技術を開発した。開発したのは岸田晶夫・東京医科歯科大学教授と小林尚俊・物材機構グループリーダーら。
加工したブタの角膜をウサギへ移植したところ正常にくっつき、視力が回復することを確認した。角膜は三層構造になっており、上面と下面は薄く細胞が並び、中央部に皮膚などに含まれるコラーゲンを含んだゼラチン状物質が詰まっている。移植すると拒絶反応を起こすのは上下層にある細胞が原因と考えられている。
研究チームはブタの角膜に1万気圧をあけ、表面の細胞を壊して取り除きゼラチン状物質だけにすることに成功した。ウサギの角膜にポケット状の切り込みを入れ、細胞を除いた角膜を挿入して移植した。2ヶ月後、移植した角膜に拒絶反応は起こさず、完全に透明になり、ウサギの視力も回復した。」
■自分の血液から
「山口大学の西田輝夫教授の研究室の机の上に、小さな工場がある。原料は患者から採取した血液。生理食塩水などと一緒に装置にセットすると、1時間ぐらいで患者専用のオーダーメイド目薬が完成する。この目薬は傷ついた角膜の治療に使う。
目薬の主成分は細胞同士をくっつけ傷の治りを早めるタンパク質『フィブロネクチン』。血液から取りだしたフィブロネクチンがそのまま目薬になる。
外傷などで角膜の表面が傷ついても自然に治ることが多いが、[糖尿病]などの患者には傷が治りにくい事例もある。そのままでは角膜内部に雑菌が入り込み眼内炎を起こしてしまう。重症化すれば失明の危険もある。
ところが、この目薬を使うと、1日4回。4週間の点眼をつづけることで、ほとんどのキズが癒えるという。原料は患者自身の血液なので、感染リスクはない。
フィブロネクチンによる角膜の治療は、1980年代から西田教授が独自に進めてきた。「約150名の臨床試験で約8割に効果があった」(西田教授)2008/1/17産業
■コラーゲンで人工角膜
「1999年にカナダで開発されたが、強度が足りず移植して縫合しても破れる問題があった。西田幸二・東北大学教授らはコラーゲン繊維を格子状に組み合わせることで問題を解決。3年後をメドに臨床試験に入る予定。」2008/1/17産業
■角膜の再生
「2007年に日本で初めてジャパン・ティッシュ・エンジアニリング(J-TEC)が実用化した。やけどなどで角膜細胞の元になる角膜幹細胞が死滅してしまった患者の治療。幹細胞が無いと角膜は新陳代謝できなくなり、失明してしまう可能性がある。
患者本人の角膜から幹細胞を含む1mm角の細胞を採取し、これを直径2cm、厚さ0.1mmに培養して患者に移植する。2007/5に臨床試験を申請した。」
  【漢方薬】
     五苓散
 八味地黄丸
    苓桂朮甘湯
    六味丸


 角膜パンヌス
 pannus⇒血管新生を伴う表在性角膜浸潤。
  【漢方薬】
    苓桂朮甘湯・・・・(小便不利、めまい、)


 角膜びらん
(参照→「再発性角膜上皮びらん」)

 角膜ヘルペス
   ⇒ヘルペスウイルスによる感染性疾患である。
   ◎ウイルスの種類によって、単純ヘルペス(herpes simplex)と帯状ヘルペス(herper     zoster)とに分かれる。
    <1>単純ヘルペス性角膜炎:
      ①原則として小児が罹患する。
      ②単純ヘルペスウイルスは、DNAウイルスでウイルス粒子の中心にはDN       Aを含むcoreがあり、周囲を162個のcapsomereが取り囲みcapsidを形成       している。capsidは正20面体をしている。最外部にはenvelopeがあり、       ウイルスの直径は130~180nmである。
    <2>眼部帯状ヘルペス:
      ①帯状ヘルペスウイルスは水痘ウイルスと同一のものとされ、前者は向神経       性、後者は向皮膚性をもったものである。DNAウイルスで直径は210~       250nmである。
      ②三叉神経第一枝領域に、激しい疼痛を覚える
     ③約40%に角膜炎が現れる。
          (金芳堂ー眼科学p187)
■薬を規則正しく使って治療を
「60歳の女性。2年前に角膜ヘルペスと診断されました。完治したように思われましたが。その後も再発を繰り返し、治りません。再発を繰り返すと角膜が混濁して視力が低下すると聞き、不安でたまりません。再発を防ぐには、どのようにすればいいのでしょうか?
●どんな病気でしょうか?
ヘルペスウイルスの一種が目に感染するのが原因です。口や顔に小さな水ぶくれを作るのと同じウイルスです。角膜ヘルペスになると、目が痛む・涙が出る・黒目のまわりが充血するなどの症状が出ます。ウイルスが角膜に住み着くと、細胞は増殖できません。そのため角膜炎になったり、角膜が白く濁ったりします。角膜炎の場合、角膜の上皮に木の枝のような形で潰瘍や欠損が起きるのが特徴です。
●このウイルスに感染するケースは多いのですか?
ほとんど人が子供の頃に感染しています。最初に罹った時は症状が出ないか、軽い結膜炎程度が普通です。感染したウイルスは、目を支配する神経節の1つ、毛様神経節に住み着きます。この状態を潜伏感染といい、多くの人はこの状態のままです。ところが何らかのきっかけで、ウイルスが神経を伝って角膜に感染すると、角膜ヘルペスが起き間津。症状は片方の目だけに出ることが多いようです。
●治療はどうするのですか?
角膜ヘルペスには活動性と非活動性があり、治療方法が異なります。活動性の場合はアシクロビルうあIDHなどの抗ウイルス剤の点眼薬や軟膏を使います。非活動性の時は抗ウイルス剤に加えてステロイドの点眼薬も使います。
●活動性と非活動性はどんな違いがあるのですか?
ウイルスが病変部にいるかどうかによって区別されます。角膜の上皮に角膜炎を起こす上皮型の角膜ヘルペスは、活動性です。角膜のさらに深い部分である実質で、ウイルスに対する抗原抗体反応が起きている実質型の角膜ヘルペスでは、すでにウイルスがいない非活動性のことが多いんです。
●治りにくいんですか?
治療で症状は無くなってもウイルスは神経に潜み続けています。発症の原因はよく分かっていませんが、角膜の屈折矯正手術や、ある種の点眼薬を使い続けていると再発することが知られています。上皮型で、抗ウイルス剤が効けば治るのですが、実質型では再発を繰り返すことがしばしばあります。
●再発を防ぐには、どうしたら良いでしょうか?
風邪を引いた途端に再発したと言う人もいます。過労など体の抵抗力が落ちるようなことは避けてください。再発を繰り返し、角膜の濁りが強くなってしまったら、角膜移植をyけることも出来ます。現在、移植を受ける人の1/10ぐらいは角膜ヘルペスです。
●治療上の注意を教えてください。
抗ウイルス剤の使い方に気を付けましょう。抗ウイルス剤はウイルスがデオキシリボ核酸(DNA)をい合成するのをじゃまする仕組みなので、合成の周期に合わせて、十分な量の薬が必要です。IDUは1時間前から2時間起きに、アシクロビルでは1日6回、薬を使わなければいけません。中途半端な使い方をすると、ウイルスが薬剤に耐性を持ってしまうことがあります。実質型で使う捨てろウドも、自分の勝手な判断で使うと症状を重くすることがあり、あす。
●家族に移してしまったりしないでしょうか?
ほとんどの人が、すでにウイルスに感染し、抗体を持っていますから心配ありません。」(澤充・日本大学医学部教授)1999.12.12《朝日新聞》
  【漢方薬】
    八味地黄丸
    六味丸





 膈痰(かくたん)
⇒痰水が胸郭に結聚し、気機の昇降が失調し、気逆痰壅することで起きる病気。
症状:心腹痞満・短気
    頭眩・目眩

 膈中
=「噎膈」に同じ。


 鶴膝風(かくしつふう)
=「膝游風」「游膝風」「鶴節」「膝眼風」「膝傷」「鼓槌風」。   
⇒病後、膝関節が腫大し、形が鶴の膝のようになるもの。
歴節風の一種で、膝関節のみが腫れて痛む。
<1>足三陰の弱った所へ風邪を引いて疼痛:[五積散松節]
<2>長い痢疾後に手足が腫れる:[大防風湯][独活寄生湯]
<3>腫痛は瘀血が原因:[経験二防飲][独活寄生湯][四物湯人参・黄蓍・白朮・附子・牛膝・杜仲・防風・羗活・甘草]

【処方名-50音順】
■経験二防飲・・・・(痢疾後に脚が痛み、まるで刀で切られた様な痛さで、腫が大きく歩けない)
■桂芍知母湯
■三気湯
■蒼亀丸・・・・・・(痢疾後に足が弱く、だんだん細くなる)
■大防風湯
■八味地黄丸
■六味丸



拡張型心筋症
⇒心臓の筋肉(心筋)が弱って収縮出来なくなる。心臓の筋肉が薄く伸びきってしまい、ポンプ機能が低下する病気。原因は免疫異常や遺伝、ウイルス感染などが考えられている。

症状は:[息切れ][呼吸困難][むくみ][不整脈][肺のうっ血][肝臓の腫れ]
■背筋使い治療
「患者の心臓を背中の筋肉で包み込んで収縮させ、心臓の動きを助ける新しい心臓手術の臨床試験の準備が進んでいる。東京慈恵会医科大学など7医療機関で、この手術に適した患者が出れば実施する考えだ。心臓移植は必要ないものの症状が重い患者に適用し、日常生活が出来ることを目指す。
臨床試験を準備しているのは、慈恵医大のほか、京都大学、横浜市立大学、東京女子医科大学、神戸大学、東京医科大学の6大学と国立循環器センター で作る治験委員会。
手術は、広背筋と呼ばれる背中の筋肉を、一部を残して背中からはがして体の中に引き込み、心臓をすっぽり包み込む。背筋にペースメーカーを付け、心臓の動きに合わせて規則的に収縮させる。心臓の負担を軽くするすることで、呼吸困難や疲労感などの症状を改善する。腕などの運動に支障はほとんど無いという。
対象は拡張型心筋症の患者のうち、寝たきりではないが安静にしていなくてはならない状態の人。」1997.8.23《日本経済新聞》
■心臓縮小術、病状で差
「症状が重くなれば心臓移植が必要になる拡張型心筋症について、心臓を一部切り取って縮小する新しい手術を国内で始めて導入した湘南鎌倉総合病院(神奈川県)が、これまでの実施症例を分析した。其の結果、心不全や心拡大があっても強心昇圧剤の点滴に至っていなければ全例で回復していたほか、患者がショック状態などに陥った緊急手術でも救命した例があった。
同病院で1996年~今年2月までに患者20人に縮小手術をした。術前の状態ごとに3つの集団に分けて分析したところ、強心昇圧剤の点滴に至っていない9人は全員良好に回復していた。点滴を受けていた患者で、比較的安定した状態で手術が出来た5人のうち4人が回復出来た。」1998.4.5.《朝日新聞》
■降圧剤で治療
「順天堂大循環器内科グループが、重症になれば心臓移植が必要になることもある拡張型心筋症の患者に、降圧剤として開発されたβ遮断剤やACE阻害剤で治療した場合、重症患者でも5年生存率が、薬を使わなかった患者よりも4倍近く高いことを見いだした。」1998. 5.3《朝日新聞》
■補助人工心臓
英オックスフォードのラドクリフ病院と米テキサス心臓研究所は11日、永久使用を目的に、親指大で重さ90gという超小型の補助人工心臓を心臓病の英国人男性患者(61)に埋め込む手術に世界で初めて成功したと発表した。患者は術後3ヶ月を経て、軽い運動も出来るまでに回復している。
記者会見した医師団によると、この人工心臓は、米国のロバート・ジャービック博士が開発した「ジャービック2000」。チタン製の円筒形で、左心室から大動脈へ新鮮な血液を連続的に送り込む。動力は電気で、体外の小型充電池とケーブルで結ばれている。
埋め込み手術は6月20日に行われた。患者は元カウンセラーのピーター・ハウトン氏で難病の拡張型心筋症のため「数週間の命」と診断されていた。
世界で心臓移植を希望する患者数12万人にのぼる一方、実際に移植を受けられるのはわずか4000人に過ぎない。このため欧米では、恒久的目的で人工心臓を埋め込む手術も進められてきたが、機器の大きさや感染症の危険などがネックとなり、患者が健康な生活を取り戻すには至っていない。」
■移植しないで
「心臓移植しか助からないとされる拡張型心筋症患者に、病気の原因物質を除去する方法を、北里研究所病院と慶応技術大学のチームが成功した。2006年9/27の日本心臓学会で発表。
治療法はまず、病気の原因となる抗体が血中に含まれている患者を選別。関節リウマチなどの治療に使う『自己抗体除去法』と呼ぶ方法で、人工透析のように血液から原因抗体を取り除く。
研究チームは心臓移植が必要な患者のうち原因抗体が見つかった人(女性2任、男性1人)に治療法を実施。治療前は心臓から血液を送り出す能力が健康な人の半分以下だったのが、治療後は8割程度と、日常生活に支障のないレベルまで回復した。3ヵ月程度で原因物質は増えてくるが、再治療で除去できる。
ドイツでも同様の抗体除去法を約100名の患者に実施。7割の患者で治療効果が認められ、中には2年以上移植せずに生存している患者もいる。
京都大学の本庶佑特任教授らが2003年、心臓の細胞(心筋細胞)の中にあるタンパク質を異物として認識してできる抗体によって発症することをマウスで突き止めた。馬場副部長らはヒトでもこうした抗体があり、拡張型心筋症を引き起こしていることを確認。約6割の患者が該当した。20069/25《日経》
■毛細血管・心筋が予防
「大阪大学の中岡良和・特認助教授と国立循環器病センター研究所の望月直樹部長らは、健康な心臓では、毛細血管と心筋の相互作用が心不全の原因となる拡張型心筋症を防いでいることを突き止めた。
心臓で毛細血管や内側の内皮細胞からは『ニューレギュリン1』というタンパク質が出ている。マウスで詳しく解析したところ、このタンパク質の働きで心筋に栄養がもたらされる一方、このとき栄養が行き渡った心筋は内皮細胞を健康に保つ別のタンパク質を見返りに分泌していた。
マウスの遺伝子を操作して互いに助け合う関係を崩すと、心臓のポンプ機能が衰えたり血管や膜が変形するなどの心筋症のような症状を起こした。
研究チームは正常な心臓では血管や心筋が互いに依存し合う“持ちつ持たれつの関係”を築いており、心筋症の予防に大きな役割を果たしている。
成果は2007年6/18、米医学誌ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーションに報告。

【処方名-50音順】
■木防已湯
劇的に症状の改善が見られることがある。浮腫の強いものには茯苓4.0を加え、喘鳴、呼吸促迫の強い場合は、紫蘇子、桑白皮、生姜を加えた増損木防已湯を用いる(漢方診療医典)



 学習障害児⇒参照→「LD児」


霍乱(かくらん)
=漢方の病名。吐瀉病、日射病、熱射病にて吐瀉する症。コレラ症状。
⇒発病が突然で、吐瀉激しく、煩悶して気持が悪いもので、俗に「吐き下し」ともいう。
◎古人が霍乱と呼んだ病気は、激しい嘔吐、下痢、腹痛を訴える病気であるが、これに五苓散を用いる場合と人参湯を用いる場合とのあることについて、《金匱要略》は次のように述べている。“霍乱で、頭痛、発熱、身疼痛の状があって、熱が多くて水を飲みたがるものは五苓散の主治するところで、寒が多くて水を飲みたがらないものは理中丸(人参湯を丸にしたもの)の主治である”《大塚敬節》
◎霍乱、吐利甚だしき者、及び所謂暴瀉の症は、急なる者は死、朝を崇(オワ)らず。若し倉皇として措を失し、疑議して策を誤らば、人を非命に斃さん。その罪何れにか帰せんや。医人は当に平素討究講明し、以て急を済ひ、難を靖んずべし。
霍乱病は、外感に由ると雖も、蓋し傷食也。又疝を挟んで激動する者有り。その吐せず、下らず、胸腹劇痛する者は、当に先ず備急円、或いは紫円を与えて、以て之を吐下すべし。腹痛、悶乱止み、而して嘔止まず、薬汁入らざる者は、宜しく「小半夏加茯苓湯」を以て、その嘔を止むべし。吐下の後、頭痛、発熱し、身疼痛し、渇して嘔吐し、小便利せず、脈浮数なる者は、「五苓散」に宜し。前症にして吐利止まず、四肢微冷し、熱飲を好む者は、「人参湯」なり。吐下止みて、大熱大渇し、煩躁し、心下痞鞕する者は、ひこう「白虎加人参湯」なり。前症にして頭痛し、汗出で、悪寒し、身体疼痛し、心下痞鞕せざる者は、「白虎加桂枝湯」なり。乾嘔止まず、冷汗、厥逆し、転筋し、脈微にして絶せんと欲する者は、「四逆湯」を用ふ可し。苟(イヤシク)も攻伐の術、治安の策を精究し、施設に誤無んば、その起つ可き者を起たしむる、豈にそれ難からんや《類聚方広義》

◎主薬:藿香・半夏を主薬とすべし《万病回春》
◎種類:
乾霍乱=吐いたり、下したりすることが出来ない症。乾霍乱は、急に心腹が 脹満して痛み、吐下出来ず悶絶するおそれがある。
(1)急いで塩湯で吐かせて、つづけて
①[理中湯橘紅]使い、又は
②[藿香正気散官桂・赤茯苓・枳殻・木瓜]煎じ、又は③[蘇合香元]を飲み下す。

(2)乾霍乱が最も治しにくくあっという間に死ぬ場合がある。吐かせて その気の横格した症を通じさせるべきで、涼薬はいけない。
①[二陳湯川芎・蒼朮・防風・白芷]を使い、
②兼ねて[姜塩湯]で吐かせるべきである。
(3)[絞腸沙]=乾霍乱の一名で、腹が痛くて堪らず、手足が厥冷し、腸 胃が絞るように痛い症である。急いで塩湯で吐かせるべきである。
(4)乾霍乱という症は、気がなかにあって痞悶し、吐下出来ず、正気を壅塞し陰陽を関格し、煩躁・喘脹すると必ず死ぬ。
①急いで、吐法を使い、委中に鍼をし、
②兼ねて[治中湯]or[藿香正気散]を服用する。

湿霍乱=上から吐き、下から下痢する症。
(1)熱が多くて水を飲む症:[五苓散]       
  寒が多く吸いを飲まない症:[理中湯]
(2)霍乱は湿熱で風木の害を兼ねる症で、治法は風寒をはらい、湿を下痢させる。
①[藿香正気散]を使い、
②冷えには[理中湯]、
③暑い時の煩渇には[黄連香散]or[五苓散]を合わせて上・下を 分消させ、再び[益元散]を合わせて降ろす。
(3)霍乱・吐瀉に:[香散][桂苓白朮散]
(4)吐瀉が多く、四肢が冷え、人事不省に陥る時。
  [南星末3銭、棗3枚、姜5片]煎服。
  [半夏末]を姜汁で点服。
  [白礬末]を沸騰湯で点服。 

霍乱後の転筋
(1)血熱:[四物湯酒芩・蒼朮・南星]
(2)吐瀉・脇痛・脈ゆるい:[平胃散木瓜]
(3)吐瀉後に転筋が止まらない:[木瓜湯]
(4)転筋が甚だしい:[理中湯木香当帰]《先哲医話》

霍乱後の煩渇=吐瀉が多いと津液がなくなり、渇いて飲みたいのが止まらない。
[桂苓白朮散][五苓散][椒豆散][麦門冬湯][加減苓湯][止渇湯]

【処方名-50音順】 
    益元散・・・・・・(生姜湯で調下する)
回生散・・・・・・(霍乱・吐瀉がひどい)
    加減苓湯・・・・(霍乱後の熱渇)
    加減正気散・・・・(地方に行って、水が合わず霍乱になり、吐下する者)
    加味姜附湯・・・・(霍乱・吐瀉で手足が冷え、六脈の沈伏した者)
    既済湯・・・・・・(霍乱後の虚煩と不眠症)
    桂苓白朮散・・・・(中暑による霍乱、霍乱後の吐瀉・煩渇)
    香散・・・・・・(中暑に霍乱・吐瀉して腹痛、四肢が冷える)
    五苓散
    止渇湯・・・・・・(霍乱後の熱渇)
    四逆湯
    椒豆散・・・・・・(霍乱・吐瀉のあと、薬・水が入らない者)
    小半夏加茯苓湯
    参胡三白湯・・・・(霍乱後の煩熱・口渇・頭痛)
    二香黄連散・・・・(伏暑霍乱で腹痛、脈沈、手足が冷える)
    人参湯
    麦門冬湯[4]・・・・(霍乱後の煩渇)
    白虎加桂枝湯
    白虎加人参湯
    木萸散・・・・・・(霍乱・吐瀉で肢体の節々が痛く、冷える)
    木瓜湯・・・・・・(霍乱の転筋)



 踝骨カリエス
■防已黄蓍湯・・・・(上半身、足がむくむ)


 下肢が痩せて細い
■大防風湯・・(栄養失調による運動麻痺、体力低下)



 下肢の痛み
【漢方薬】
■牛車腎気丸
■疎経活血湯



 下肢の運動障害
=下半身の運動障害。
【漢方薬】
■痿証方
体力中等度~虚証の人で、両下肢の麻痺、脱力などに用いる。腰部痿弱の初期、大病後の下肢無力症、脊髄炎、小児麻痺などに応用される(漢方診療医典)
■桂芍知母湯
■牛車腎気丸
八味丸料に牛膝、車前子を加えたもので、糖尿病性神経障害などに応用される(漢方診療医典)
■四物湯
■続命湯
金匱要略に“中風、(ひ)(=中風)にて、身体自ら収むること能はず、冒昧にして痛む処を知らず、或は拘急して転倒すること能はざるを治す”とあり、脳血管障害による下肢麻痺などに用いる(漢方診療医典)
■疎経活血湯
体力中等度で、瘀血と水毒があり、そこへ風寒が加わり、特に腰より下に発した痛みを目標に用いる(漢方診療医典)
■二妙散
■三妙散




下肢の潰瘍
【漢方薬】
■防已黄蓍湯・・・・(上半身、足がむくむ)
■「大黄10・甘草2」細末にし服用。



下肢の筋萎縮
【漢方薬】
■八味地黄丸




 下肢のケイレン
【漢方薬】
■芍薬甘草湯・・・・(疼痛)
■附子粳米湯



下肢の血栓
【漢方薬】
■桂枝茯苓丸
■疎経活血湯

 


 下肢のしびれ
【漢方薬】
■疎経活血湯
■二妙散



 下肢静脈瘤 varix
(参照→「静脈瘤」「バリックス」「深部静脈血栓症」)
■再発の場合は再び硬化療法
「59歳の女性。数年前に脚(下肢)の静脈瘤の硬化療法を受けました。経過はいいのですが、再発する可能性が大きいと言われました。同じように硬化療法を受けた人からは、将来固まった血が流れ出し血管を詰まらせる恐れがあるとも効きました。実際はどうなのでしょうか?
●どんな病気ですか?
心臓へ戻る血液が逆流しないように、脚の静脈には数cmおきに弁がついています。皮膚近くを走る静脈の弁が壊れ、脚のひざから下に血液がとどまり、桂枝加竜骨牡蛎湯感がコブのように浮き出る病気です。女性に多く、痛みやかゆみ・だるさなどの症状が出て、長期にわたる潰瘍になることもあります。
●なぜ弁が壊れるのですか?
長時間立ったままの仕事を続けるなど、脚の血液が心臓に戻りにくい状況が続くと弁に負担がかかります。長年積み重なると、まず足のつけ近くの弁が機能しなくなり、次にその下にある弁に負担がかかる。そんな風にして弁の胡椒が脚先に進み、少しずつ症状が現れます。妊娠がキッカケになることもあります。分泌されるホルモンが血管の組織を軟らかくしたり、子宮の重さや出産時の圧力が関係したり、脚の血液の流れに影響するためです。
●硬化療法とは?
ここ10年ほどの間に普及しました。濃い食塩水や界面活性剤などの硬化剤を静脈に注射し、血管の内側の内皮細胞を殺して細胞同士をくっつけて静脈瘤部分の血液の流れを止めます。皮膚を1cmほど切開し、固めたい部分の静脈の上端を糸で縛っておいてから注射するのが確実で、最近の主流です。縛るだけでも改善するので、私たちの病院では1ヶ月ほど様子を見てから硬化剤を使うようにしています。入院は必要ありません。
●相談の方は、流れ出た血の塊で血管がつまらないが心配していますが?
内皮細胞が死ぬと、血栓(血の塊)が出来ますが、皮膚に近い静脈なら詰まっても問題ありません。血栓が胚などの血管を詰まらせる可能性はかなり低いのです。硬化療法を受けた人で皮膚に小さなキズ跡があれば、血管を縛っているはずなので、血栓が他の血管を詰まらせることはなく、より安心です。注意が必要なのは、脚の深い部分の静脈が詰まる深部静脈血栓症の場合です。
●患部は摘出出来ないのですか?
壊れた弁を静脈ごと取り去る手術もあります。血管にワイヤを通して先端を固定し、内側に巻き込むようにして。抜き取ります。硬化療法が難しい太めの血管にも使える方法ですが、周囲をキズつけやすく、1、2日は入院が必要です。深部静脈に血栓が無ければ、表面近くの静脈は取っても差し支えありません。
●硬化療法後の再発は?
縛った場所以外から血液が流れ込み、数ヶ月で固めたところがはがれることもあります。再発したら、血管の他の場所を縛ったり、もう一度硬化療法をしたりすることで対処できます。弁への負担は年々積み重なり、手術をしても、10数年後に別の場所に症状が現れることもあります。命に別状のない良性の病気なので、「一緒に暮らす」というくらいの気持ちでいてほしいと思います。」(池田正孝・市立堺病院外科医長)2000.6.25《朝日新聞》

【漢方薬】
■越婢加朮湯
■疎経活血湯
■桃核承気湯





下肢の脱力感(脚弱)
⇒下肢が重だるい。
【漢方薬】
■越婢加朮湯
■九味檳榔湯
■三妙散
■芍薬甘草湯
■大防風湯
■釣藤散
■苓姜朮甘湯

【民間療法】
<1>アサガオ。
<2>トウゴマ。
<3>トウモロコシ。
<4>ヒガンバナ。
<5>ヤマゴボウ。
<6>ワラビ。
<7>アオツズラフジ・イノコズチ・イチヤクソウ・ウシ・オオツズラフジ・オモト・カニ・カマキリ・カラスビシャク・カラタチ・カワラケツメイ・クガイソイウ・クロマメ・ゲンノショウコ・ゴシュユ・シカ・シソ・スイカ・スギ・スズメ・ゼンマイ・ダイコン・ダイコンソウ・タニシ・タンポポ・ツユクサ・ナギナタコウジュ・ナスビ・ナンテン・ニシキギ・ニワトコ・ニワトリ・ノイバラ・ハコベ・バショウ・ハトムギ・ハンゲショウ・ヒヨドリジョウゴ・ヘクソガズラ・ヘチマ・ボケ・マタタビ・ムクゲ・モモ・ヤマモモ。


下肢の浮腫
⇒下腿浮腫
【漢方薬】
■九味檳榔湯
■五苓散
■麻杏薏甘湯
■木防已湯
   ◎附子

 
下肢の知覚麻痺
=下肢の知覚鈍麻
【漢方薬】
■桂芍知母湯


下肢の麻痺
=下半身麻痺。
【漢方薬】
■桂芍知母湯
■四物湯
■疎経活血湯
■大防風湯
■桃核承気湯
■当帰芍薬散
■八味地黄丸

「医療事故」-----脊椎麻酔に指針-----
「心停止や下半身麻痺などの深刻な事故が起きている脊椎麻酔の安全性を高める為に、医師や弁護士、市民らでつくる「医療の安全に関する研究会」(理事長、島田康宏・名古屋大医学部教授)が全国で初めて、「脊椎麻酔の安全指針」をまとめた。14日、名古屋市で開かれた「医療の安全に関する研究大会」で公表した。麻酔中の血圧測定、脈拍、呼吸の確認など、安全な麻酔方法を定めている
 指針はA4版、16ページ。どんな条件のとき麻酔を避けるべきか、麻酔薬の注入量、速度、麻酔中の血圧、脈拍などの確認方法など11項目を盛り込んだ。過去に多発した事故の共通点も明記した。
 例えば、麻酔薬の注入から1分後、それ以後の14分間にも、2分に1回の間隔で血圧を測定する。注入から5、10、15分後や手術終了時、血圧低下などの異常事態が生じた場合などには、麻酔の状態を必ず確認する。麻酔による血圧低下、呼吸抑制、神経障害などの原因や治療方法などについても注意点を具体的に記した。
 さまざまな治療の際に行う脊椎麻酔による医療事故は、繰り返し起きている。指針をとりまとめた東京逓信病院の芦沢直文麻酔科部長らは、「この指針で、適切な麻酔をしてもらい、深刻な事故をなくさないといけない。今後、厚生省など関係機関に働きかけていきたい」と話す。 1996.12.15《朝日新聞》

   


下肢が冷える
⇒下肢が冷たい。下肢の冷え。
【漢方薬】
■温経湯
■桂枝加黄蓍湯
■桂枝茯苓丸
■桃核承気湯
■八味地黄丸



下垂体疾患 
◎種類:
下垂体前葉の機能低下:

  「汎下垂体機能低下症」「下垂体性小人症」
下垂体前葉の機能亢進:「先端巨大症」「巨人症」「高プロラクチン血症」(参照→下垂体腺腫)
下垂体後葉の機能低下:尿崩症
下垂体後葉の機異常:ADH不適合分泌症候群

■鼻の下から手術
「脳下垂体を手術する場合、鼻の穴の奥から内視鏡などを脳底部に挿入する方法が日本でも少しずつ広がり、日本間脳下垂体腫瘍学会などで注目を集めている。
脳下垂体は頭の中心部付近にあるホルモン分泌器官。この周辺部に薯蕷言うが出来ると以前は、開頭手術が必要だった。10年ほど前からは、上唇の裏側を切り、そこから手術用の顕微鏡や器具を入れて腫瘍を取る方法が主流になった。
鼻の穴からの手術はその次に登場した。3年以上前から行っている福島孝徳・米カロライナ脳科学研究所教授や、堀智勝・東京女子医大教授(脳外科)によると、患者にシビレなどの感覚障害が残らず、入院期間も短くなる。「2歳~77歳まで安全に手術出来た。脳腫瘍の2割以上がこの方法で可能だと思う」
福島さんも「米国では1、2日の入院ですむこの手術が普及し、上唇の裏側から切る手術はかなり大きい腫瘍だけになった。新手術でも、技術的には、肉眼で見る顕微鏡の方がテレビ画面の内視鏡より解像力がよく、操作も簡単」という」1999.5.30《朝日新聞》
       

下垂体機能低下症 
    hypopituitarism
=下垂体前葉機能低下症
◎下垂体前葉の機能低下:
   汎下垂体機能低下症
   部分的機能低下症
   下垂体性小人症

【臨床症状】一般に下垂体はその75%が破壊されない限り、機能低下を起こさない。したがって、症状は徐々に現れる。
<1>易疲労性。
<2>脱力。
<3>嗜眠傾向。
<4>肉体的精神的な不活発。
<5>寒冷に対し敏感。
<6>発汗減少。
<7>貧血。
<8>全身の色素は脱失し、腋毛・恥毛は脱落し、性器も高度に萎縮し、女性では月経不順・無月経をきたす。
<9>老人性顔貌が早期に認められ、
<10>病変が視床下部の食欲調節中枢にまで及んだ者では、羸痩を来すが、羸痩の程度は著明でなく、ほとんど認められない者も多く、逆に肥満を来す者もいる。(金芳堂ー内科診断学 P531)

 

 

 




下垂体巨人症
=growth hormone(GH)の過剰分泌が骨端線閉鎖前に生じると『巨人症』となり、閉鎖後に生じると『末端肥大症』になる。
<1>GHの過剰の原因:
ほとんどが下垂体腺腫
まれに異所性のGH産生腫瘍
視床下部GH分泌促進因子(GRF)産生腫瘍
<2>プロラクチン分泌亢進が20%に認められる。---以下の症状を示すことあり。
 ①乳汁漏出
 ②無月経
 ③性欲低下
<3>ゴナドトロピン分泌機能低下は約40%に見られる。----以下の症状。
       性機能低下
<4>TSH分泌低下は40%にみられるが、まれに分泌亢進例もある。

◎診断基準:1990年、厚生省間脳下垂体機能障害研究班
主症候:
①著明な身長の増加:
発育期にあっては身長の増加が著名で、最終身長は男子185cm以上、女子175cm以上であるか、そうなると予測されるもの。
②先端肥大:発育期には必ずしも顕著ではない。
検査所見:
①成長ホルモン値:
(a)空腹時にブドウ糖負荷後の血中成長ホルモン値がともに10ng/‹以上。
(b)血中成長ホルモン値10ng/‹以上の場合に、以下の2項目以上を満たすこと。
(イ)ブドウ糖75g(50~100g)経口負荷で抑制されない。
(ロ)夜間睡眠中の分泌増加が欠如している。
(ハ)TRHまたはLH-RHに反応して増加する。
(ニ)L-dopaまたはbromocriptineに対する増加反応がみられない。
②血中ソマトメジンC(IGF-1)高値
副症候および参考所見:
①頭痛
②視野障害
③発汗
④トルコ鞍の拡大及び破壊
⑤CTスキャンまたはMRIで下垂体腺腫を認める
⑥heel padの肥厚(22mm以上)
⑦指末節骨X線像における花キャベツ様肥大変形
⑧糖尿
⑨高血圧
除外規定:
 脳性巨人症
 その他の原因による高身長を除く。





下垂体性小人症(かすいたいせいこびとしょう)
⇒下垂体前葉から分泌される成長ホルモンが減少するために、思春期前に骨の成長が止まり、身長が伸びなくなるもの。
◎身長が低いだけで均整はとれており、知能も正常。
◎診断基準:1989年、厚生省特定疾患研究班
主症候:
①身体のつりあいは正常であるが、低身長であること
②通常は、身長が平均身長の[-2.0SD]以下、または年間の成長速度が2年以上にわたって標準値の[-1.5SD]以下であること。
検査所見:
①以下の2つ以上の成長ホルモンの分泌刺激試験で血中ホルモンの反応頂値が(7ng/‹以下)。
インスリン負荷、
アルギニン負荷、
L-dopa負荷、
clonidine負荷
グルカゴン負荷
②propranolol負荷を併用する場合は、反応頂値が 10ng/‹以下。




下垂体性尿崩症
⇒下垂体後葉からの抗利尿ホルモン分泌が不全となり、口渇・多飲・多尿となる疾患。
◎低比重尿、低浸透圧尿が特徴。




下垂体腺腫
=「下垂体腫hypophysoma」
■脳下垂体腺腫
「21歳の女性。5ヶ月間生理が無かったので産婦人科に行ったところ、プロラクチンというホルモンの値が高いので、脳神経外科で診察を受けるように言われました。脳神経外科のMRI検査の結果、脳下垂体に腫瘍があると診断されました。手術してもその後、薬を飲む必要があるかもしれないと聞き、不安です(大阪・H)」
脳下垂体の腫瘍だそうですが?
この腫瘍は、下垂体腺腫と呼びます。ホルモンの過剰分泌などの症状が出る機能性下垂体腺腫と、ホルモンの分泌にはほとんど影響がない非機能性下垂体腺腫という2種類があります。さらに、機能性下垂体腺腫は過剰分泌するホルモンの種類によって分類されます。一番患者数が多いのが、この方のようにプロラクチンを過剰分泌するタイプです。
腺腫が大きくなりすぎると、視神経を圧迫して視力視野障害が出ることがあります。又頭痛が起こる人もいます。ホルモン分泌に影響がなくても出ます。最近は症状がなくても脳ドックなどで偶然、発見される人もあります。下垂体腺腫が悪性のことはまずありません。
どのように診断しますか?
消化剤などの薬の影響で血液中のプロラクチン濃度が高くなることもあります。常用薬があれば、止めてもらってからもう一度検査します。腺腫の確定診断にはMRI(核磁気共鳴断層撮影)を使います。腺腫の大きさが4~5mmでもわかり、専門家が診れば下垂体の肥大などと間違えることはないでしょう。

症状は?
プロラクチンが高いと生理が止まります。また妊娠していないのに乳汁が出ることがあります。不妊や閉経が早くくるような状態になりますので、骨密度が低下することが心配です。
治療法は
妊娠の希望がなく閉経期の近いと思われる場合には、経過を見るだけのこともあります。視力や視野に影響がないか定期的に検査する必要はあります。そうでない方は手術で腺腫を取り除けるかどうかを画像診断で見極めます。除去可能ならば、症状が収まると期待できます。取り残しがあると術後、薬を飲む必要があります。腺腫が大きな血管に入り込むほどで取りきれないと最初から分かる場合には、手術を勧めません。

どんな手術になりますか?
昔は頭を切って手術をしていましたが、今は頭を切らずに、歯茎の上の方を切って鼻の下から手術器具を差し込み、直接腺腫を取ります。手術そのものは1~2時間で終わります。見えるところに傷は残りませんし、脳神経を傷つける心配もありません。多少、歯茎の周りにシビレ感が残るかもしれません。手術後10日程度で退院できます。
その後は?
プロラクチン値が正常に戻り生理も再び始まり、問題は無くなるでしょう。ただし肉眼では見えない小さな取り残しがあれば再発の可能性もありますので、定期的に検査を受けて下さい。
薬の治療はどんなものですか?
 プロラクチンの分泌を抑える物質『ドーパミン』の作用する薬でプロラクチンを抑えます。腺腫そのものが消えることはありませんが、症状は治ります。ただし閉経期までの長期間飲んでもらうことになります。副作用として、気分が悪くなったり吐き気が起こることもあります。特に飲み始めは、きついと感じられるかもしれません。(有田憲生・大阪大学助教授)1999.5.23《朝日新聞》





下腹部の腫瘤
【漢方薬】
■桂枝茯苓丸
■大黄牡丹皮湯
■腸癰湯・・・・・・(回盲部の硬結)
■当帰芍薬湯・・・・(下腹部の腫瘍

 


 下腹部の知覚鈍麻
【漢方薬】
■芎帰膠艾湯
■九味檳榔湯・・・・(知覚麻痺)
■八味地黄丸・・・・(下腹部の麻痺感


下腹部の疼痛(下腹部疼痛)
⇒下腹部の脹痛・下腹部のひきつれ。
【漢方薬】
■温経湯
■黄蓍建中湯
■桂枝加竜骨牡蠣湯
■桂枝茯苓丸(下腹部の抵抗と圧痛
■五積散
■四物湯(下腹部堅痛)
■泰山盤石散
■大黄牡丹皮湯
■腸癰湯(回盲部の圧痛)
■猪苓湯(下腹部脹満・疼痛)
■通導散(下腹部の抵抗・圧痛、膨満)
■桃核承気湯(実証、のぼせ、足冷、下腹部痛)
■当帰建中湯(貧血、食欲不振、虚弱体質、腹痛、腰痛<牽引痛>、)
■当帰四逆加呉茱萸生姜湯
■当帰芍薬散(貧血、冷え性、疲れやすい、月経不順、神経症状)
■人参湯



下腹部軟弱
下腹部無力
【漢方薬】
■桂枝加竜骨牡蠣湯
■八味地黄丸
■六味丸



下腹部の冷え
⇒下腹部の冷感
【漢方薬】
■温経湯
■五積散
■小建中湯
◎附子



下腹部の不快感
【漢方薬】
■温経湯



下腹部膨満(下腹部の膨満感)
【漢方薬】
■温経湯
■桃核承気湯
■通導散


 過少月経 
  hypomenorrhea
⇒月経量が異常に少ない。

生理が1~2日で終わり、量が少ない。
稀発月経と同時に起きることが多い。
【漢方薬】
■四物湯
■抵当湯
■桃核承気湯
■防已黄蓍湯
■六味丸



過食症
    (→摂食障害)
■過食高校生は流行に敏感。
「食事以外に、スナック菓子やカップ麺などを大量に食べてしまう「過食」の経験を持つ高校生は、体重や体形を過剰に気にしながら、ピアスをするなど流行に敏感で、アルバイト先は居酒屋やスナックなど、大人びた世界を好む傾向があるーーという調査結果を、国立療養所久里浜病院(神奈川県横須賀市)の武田綾心理士らがまとめた。5日から京都市で始まった日本心身医学会で発表した。
武田さんは“流行に遅れたくないという気持ちがストレスになり、過食や、逆に無理なダイエットとなって表れるのでは”と分析している。
調査は昨年11月、東京都と神奈川県の公立高校2校で、生徒約650人の過食の経験、アルバイト歴、流行への関心などを調べた。
 男女とも約60%が過食を経験しており、週1回以上はつい食べ過ぎてしまうという男子は13%、女子が11%。1996.6.5《日本経済新聞》」

【芳香療法】
<1>ベルガモット(食欲中枢を刺激し調整する)

【漢方薬】
■平胃散



過短月経
⇒月経持続日数が2日以内。
■四物湯



過敏性腸症候群

irritable bowel syndrome (IBS)
(参照→「ペインクリニック」)
■過敏性腸疾患にはまず桂枝加芍薬湯
「38歳男性。コンピュータ関連の会社員。昨年係長になった頃から会議の前や商談の時、たびたび腹痛と下痢が起こるようになりました。内科では過敏性腸症候群との診断を受け薬を飲んでいますが、あまり変化が有りません。漢方によい薬はありますか?
 過敏性腸症候群は「心の痛み」が「おなか」に現れる機能的疾患である。質問者の場合も昇進を機にストレスが重なり、心の状態と密接につかがりのある腸が警報を発していると思われる。
 この病気の第一の選択剤は[桂枝加芍薬湯]である。芍薬は甘草など他の生薬と組合わさって腸の蠕動運動を調節する。胃腸の不快とともに口内炎が出来やすく、それほど空腹でもないのにお腹がゴロゴロとかキュウと鳴って困るという人は半夏瀉心湯がよい。
疲労性の下痢が続くようなら真武湯。下痢と便秘を交互に繰り返す場合は、他の漢方医学的所見と併せて柴胡桂枝湯や小建中湯を選ぶ。神経過敏の人には香蘇散や半夏厚朴湯などを考慮する。
 この病気は漢方が極めて良い適応となる疾患であり、西洋医学の薬より漢方薬の方が治療成績が勝っていることが比較試験で確かめられている。ぜひ漢方治療を受けてみることをおすすめしたい。(花輪寿彦・北里研究所東洋医学総合研究所長)1998.1.12《日本経済新聞》

■効果的な薬物
「慢性の腹痛や下痢に悩まされる過敏性腸症候群に、うつ病などに関係する神経伝達物質セロトニンの働きを抑える薬が効果疎経活血湯示すという臨床試験結果を、婦負メイヨークリニックなどのグループが英医学誌ランセットに発表した。
下痢症状を起こすタイプの女性患者約650人を2グループに分け、一方にアロセトロン(商品名:ロトロネックス)という薬を、もう一方に、薬としての成分ががないプラセボをそれぞれ12週間使ってもらい、症状を比べた。薬を使ったグループで、痛みや不快感の軽減されたヒトが41%いたのに対し、別のグループでは29%、便意切迫感・排便回数などの症状は、薬を与えたグループの方が、はっきりと改善された。
この病気は下痢型・便秘型・両方が現れる交代型の3種類があり、疫学調査によれば、日本など先進国の成人の約2割が症状を訴えている。
セロトニンは、腹痛の伝達や腸の運動機能などに関わるとされる。この薬は腸内にあるセロトニンの受容体に働き、その働きを止めて症状を和らげるとみられている。2000.5.7《朝日新聞》」

■特徴
▽何週間も下痢や便秘が続いている
▽腹痛やお腹の張りに悩まされている。
▽排便で腹痛が軽くなる
▽ストレスがかかると症状がひどくなる
▽血便はない
▽体重は減らない
▽夜中に腹痛は無い

■治療法
軽症・・・・食事を規則的に摂取。
十分な睡眠
適度な運動
食物繊維をたくさん摂る
アルコールを控える
香辛料を減らす
脂肪の摂取を減らす
タバコを控える
薬剤
「ポリカルボフィルカルシウム」便の水分調節が出来る。
■治療薬
「イリボー」(アステラス)2008年承認を取得。男性患者についてOK。
腸管神経にある特定の受容体に結びつき、過剰な情報伝達を抑制する。
◎ストレスを感じると過剰に放出される神経伝達物質「セロトニン3」が消化管に作用するのを防ぎ下痢や腹痛を和らげる新薬をアステラス製薬が開発。2006/1月に承認申請した。
■セロトニン
2009年、医療関連ベンチャーのオーダーメイド創薬(東京港区)はストレスなどが原因で腹痛や便通異常が起きる過敏性腸症候群について治験を英国で始める
過敏性腸症候群は腹部の不快感や腹痛があり、下痢など便通異常が現れる疾患。消化管内でセロトニンという物質が増え、消化管の運動が過剰に活発になる。
候補薬「OMS210」はセロトニンの受容体と結ぶついて作用を部分的に抑え、腸が活発に運動するのを防ぐ。セロトニンを完全に抑えると便秘などの副作用が発現しやすい。
【宝石療法】
<1>[オプシディアン]

【漢方薬】(過敏性腸症候群)
■安中散
■胃苓湯
■加味逍遥散
■甘草瀉心湯
■桂枝加芍薬大黄湯・(裏急後重、宿便)
■桂枝加芍薬湯・・・(冷えによる者
■柴胡桂枝湯
■四逆散・・・・・・(ケイレン性便秘型
■四君子湯
■芍薬甘草湯
■小建中湯
■千金当帰湯《備急千金要方》
■大建中湯
■半夏瀉心湯

【西洋医学】
◎過敏性腸症候群の疼痛:
<1>基本処方:
[Solanax 1.2mg+Buscopan 6T]分3。
   Solanaxの代わりに、
Cercine 6mg or
Rixe 15mg or
Depas 1.5~3mg。
Buscopanの代わりに、
Trancolon 6T or
Coliopan 3~6Cap。
<2>軟便の時:
[Biofermin R 3.0g+Phelloberin A 6~9T]分3。
<3>便秘の時:
[MgO 0.6~1.3g ]分3。
◎一般名:「ポリカルボフィルカルシウム」2000.10.17《日経産業新聞》
「腸内で水分を吸収してゲル状になり、下痢にも便秘にも効果を発揮する」
  商品名:「ポリフル」(北陸製薬)
「コロネル」(藤沢)




 過敏性肺臓炎
  hypersensitivity pneumonitis
=『外因性アレルギー性肺胞炎』ともいう。
⇒過敏性肺臓炎とは、真菌胞子・細菌などの有機じん埃や鳥類の異種タンパク・糞などの反復吸入によって、一群のアレルギー反応が引き起こさ、びまん性に肉芽腫性間質性肺炎をきたしたものをいう。
 有機粉塵によるもの。
 無機粉塵による肺臓炎との鑑別が必要。
◎我が国では、夏型過敏性肺臓炎が全体の70%を占める。
それ以外に、農夫型、鳥飼型、加湿器型、空調型などがある。

◎症状:
悪寒・発熱
全身倦怠
セキ
息切れ
呼吸困難

◎検査:

赤沈促進
好酸球増加
特有のスリガラス様の胸部X線像

◎1980年の厚生省特定疾患「肺線維症」調査研究班による診断基準。
[Ⅰ]疫学
有機じん埃抗原に暴露される環境での生活歴
抗原への暴露(5時間~12時間)後に臨床症状発現。
同じ環境で同様な症例が他にもみられる。
[Ⅱ]臨床症状及び理学的所見
せき
呼吸困難
特異なラ音:捻髪音
      小水泡性ラ音
      Velcroラ音
発熱
[Ⅲ]検査成績
胸部X線:びまん性散布性粒状影(又はスリガラス状)
肺気量減少、肺拡散能低下。
血液検査:血沈値促進
     白血球・好中球増多
     高γ-グロブリン血症
     RAテスト:陽性
特異抗原に対する沈降抗体陽性
特異抗原の吸入試験により臨床症状、検査成績の再現
病理組織学的所見:肉芽腫性間質性肺炎
「病理組織の採取は、経気管支肺生検で十分で、開胸肺生検まで要しない。」

◎診断の判定:
[Ⅰ]確実と診断できる:臨床像が一致し、病理的裏付けがあり、免疫学的所見が一致するもの。
[Ⅱ]強い疑い:
臨床像が一致し、病理的裏付けがあるが、免疫学的所見が明らかで無いか、
臨床像が一致し、
免疫学的裏付けがあるが、病理学的裏付けが無いもの。
[Ⅲ]疑い:臨床像が一致するが病理学的にも免疫学的にも裏付けを欠くもの。





過労
【漢方薬】
■帰脾湯
■牛黄清心丸
■小建中湯
■当帰建中湯(貧血、食欲不振、虚弱体質、腹痛、腰痛<牽引痛>、)
■平胃散(太陰病、心下痞塞、腹部膨満、食後腹鳴)
■補中益気湯

 

仮性近視
漢方では古来水毒の一症候として治療する。

肉瞤筋惕(筋肉の異常痙攣)があげられ、とくに茯苓がこれを主治するといわれている

【漢方薬】(仮性近視)
■五苓散
■大柴胡湯(実証、筋肉質、胸脇苦満、心下部緊張、便秘)
■苓桂朮甘湯



仮性コレラ
【漢方薬】
■五苓散



家族性アミロイドポリニューロパチー
⇒常染色体優位遺伝を示し、家族性にみられる。下肢末端の異常知覚が左右対称性に始まり、次第に上行する。このあとに運動障害も起こり、自律神経症状も表れる。
◎自律神経症状:

①陰痿
②下痢・便秘の交代
③起立性低血圧
④発汗異常
⑤膀胱障害


家庭内暴力
(参照→「強迫神経症」)
■ムチなきアメ、目標喪失
「長男(28)の家庭内暴力に耐えかねた父親(54)が相談にきた。長男は大卒後会社勤めとしたものの、仕事がうまくいかず、上司や同僚との人間関係のトラブルもあって退職、そのまま家に4年間も居る。
「上司はバカだ」「親や社会が悪い」などと当たり散らし、テレビや家具を壊し、家族に乱暴するのだった。思いあまった両親は近くの相談所を訪ねたが「いつかきっと分かる時が来るから、堪え忍んでください」と言われるだけだった。
しかし、暴力は一向に収まらず、父親は母親と娘を別居させ、はれ物に触れるような気持で、息子のご機嫌をとりながら、毎日のように暴力を受けている。30年前に起きた開成高校事件以降、3年前の金属バット事件のような家庭内暴力は今も続いている。

現代は「アメ(母性原理)」の時代である。何事も豊富に与えられ、家族や周囲の人達に温かく受容され、安心して生活できることが最高の幸せであろう。しかし、ルソーは《エミール(教育について)》で「子供を不幸にする一番確実な方法はなにか?。それはいつでも何でも手に入れられるようにしれやることだ」と述べている。
少子化の中で、一方的に愛情を独占し、アメばかり与えられている子供に自立心が育たないのは当然である。その依存(甘え)が受け入れられないと、相手を攻撃する。「依存と攻撃」という両価的情動を示す。かえって愛情飢餓感に陥り、愛を惜しみなく奪い、他罰的となり、決して自己反省しないのである。

昔は「ムチ(父性原理)」の時代だった。課題達成のため、常に尻をたたかれ、刻苦勉励することが推奨されていたのである。今はムチは無くなってしまった。父権の喪失である。社会のルールを守り、困難に立ち向かって刻苦勉励するなど、どんでもないことになってしまった。
今の若者は飽食して、生きる目標(モデル、自己原理)そのものを見失ってしまったようだ。何を求め、どう行動したらいいのか分からず、自分探しの旅に出かけている若者をよく見かける。何かの「モデル」を見いだすと、人間はどんな困難にも耐え忍んで邁進する者だ。自己実現に向かって旅立っていく時、人間は光り輝くのである。
人間の成長・発達にはアメとムチとモデルがバランス良く作用していることが必要であるが、今の若者にはムチとモデルが欠如しているように思える。
古今東西、父親と息子との葛藤、争いは続いている。父親には以上のことを話して、毅然たる態度で、息子と対峙するよう勧めた。現在、父親は奮闘中である。(榎本稔)1999.1.25《日本経済新聞》



化膿症
◎主薬:排膿去らざるには、白芷を主薬とすべし《万病回春》

【鍼灸】
 「曲池」(外科手術に欠くべからず。)《沢田流聞書鍼灸眞髄》

【漢方薬】(化膿症)
■黄蓍建中湯
■黄連解毒湯
■葛根湯
■帰蓍建中湯
■帰脾湯
■荊芥連翹湯
■荊防敗毒散
■桂枝加葛根湯    
■桂枝茯苓丸
■五物大黄湯
■三黄瀉心湯
■紫雲膏
■紫根牡蠣湯
■芍薬甘草附子湯
■十全大補湯
■十味敗毒湯
■十六味流気飲
■小柴胡湯
■芍桂枝苦酒湯
■神功内托散
■千金内托散
■先鋒膏
■大黄牡丹皮湯
■大柴胡湯
■托裏消毒散
■托裏消毒飲《万病回春》
■治頭瘡一方
■調胃承気湯
■腸癰湯
■猪苓湯
■抵当湯
■桃核承気湯
■内疎黄連湯
■排膿散及湯(部分的な化膿症)
■伯州散
■麦門冬飲子
■破敵膏
■防已黄蓍湯(上半身、足がむくむ)
■補中益気湯
■竜胆瀉肝湯(化膿傾向)

 


牙疳(がかん)
⇒初期は歯根紅腫して疼痛し、ついで腐爛臭悪な血水を流す病名。
種類:
風熱牙疳:
青腿牙疳:牙疳とともに下肢に青色の腫塊が出来るもの。
走馬牙疳:発病が急で険悪なもの。

 


牙関緊急
=「口噤」に同じ。
「牙関」とは、…下顎骨と奥歯のこと。
■破傷風
「1998年3/21、生後9日まで順調に育っていた女児がアゴが開かず、母乳が飲めないと言うことで来院した。1~2日前からその子の臍帯から腐敗臭のする分泌物が出ていた。入院時、その子は牙関緊急(破傷風の典型的な症状で、筋肉の緊張のため顎が開かないこと)の状態にあり、全身の筋肉が緊張して、外界刺激に過剰反応した。臍帯は粉末粘土で覆われ、臍帯を引っ込ませると腐敗臭のある黄緑色の分泌物が見えた。臍帯部分からはクロストリジウム属の嫌気性菌(種名までは同定されていない)のほか、数種類の菌が分離された。臨床症状からみて新生児破傷風であることは明白であった。
母親は32歳、米国生まれの白人で、信教上の理由で予防接種を拒否していた。妊娠中にとくに以上はなかったが、患児は病院で帝王切開で分娩した。入院中、母児は標準的な臍帯の消毒処置を受け、産後3日で退院した。家では臍帯の処置のため特認助産婦(通常の公認助産婦ではなく、併発症状のない妊娠、分娩および分娩後の婦人に付き添うことのみ許可されている)が与えた“健康・美容粘土粉末”を使用した。
この家族は馬放牧牧場の隣に死んでいた。母児ともに外出しなかったが、家族の飼い犬が家と放牧場の間を行き来していた。
“健康・美容粘土粉末”というのはカリフォルニア州のデスバレーで採取した粘土で、製造者がいうには、とくに健康に有害だという報告もなく。21年間も売られてきた。しかし、製造工程に滅菌操作は入っていない。これは臍帯の乾燥に良いと信じられていたため、その地方の特認助産婦にはごく普通に愛用されてきた。
患者は抗破傷風抗体とペニシリンの注射を受け、呼吸補助装置を12日間も付け続けた。幸いにして神経後遺症もなく退院し、7ヶ月の追跡調査でも発育は正常であった。」(吉川昌之介著「ヒトは細菌に勝てるのか」丸善)




牙菌(がきん)
⇒牙齦に菌状の腫脹が出来て、紫黒色の顔色を呈する病証。


牙歯
「牙」とは、歯のこと。
【漢方薬】
■加味清胃散《寿世保元》
■甘露飲《和剤局方》
■羗活附子湯《証治準縄》
■犀角升麻湯《普済本事方》
■瀉胃湯《万病回春》
■十全大補湯《薛立斎十六種》
■清胃散《脾胃論》
■定痛散《万病回春》
■当帰連翹飲《万病回春》
■独活散《袖珍方》
■白芷散《証治準縄》
■補中益気湯《薛立斎十六種》
■麻黄附子細辛湯《傷寒論》


 鵝口瘡(がこうそう)
    thrush
=「鵞口」。アフター性口内炎。
⇒別名:「雪口」
症状は

口中が糜爛し、舌面上に白い滓が広がり、口舌が疼痛し、甚だしいときには身熱・煩躁などを伴う。多くは小児に現れる。

◎カンジダ・アルビカンスという真菌類が引き起こす粘膜の感染症につけられた名称。もっとも多いケースは膣への感染で、赤ん坊の口腔に感染することもあります。
■《諸病源候論》
「小児初生、口裏に白屑起こり、すなわち、舌上に至りて瘡を生ず、鵝の口の裏の如し、此れ胎にあるとき穀気を受けること盛んにして、心脾の熱気口に燻発するによる故なり」

【芳香療法】
<1>以下の精油のブレンドで洗浄します。
 ①ラベンダー
 ②没薬
 ③ティートリー
<2>ヨーグルト錠or乳酸菌を摂取して腸内細菌叢を再生させる。or生きたヨーグルトをたっぷり食べる。

【漢方薬】(アフター性口内炎)
■一捻金散(鵝口瘡で乳を吸えない)
■桔梗湯(咳嗽、喀痰、舌苔微黄)
■朱礬散(鵝口瘡で乳を吸えない)
■清熱補気湯
■調胃承気湯
■保命散(鵝口瘡で乳を吸えない)

 


鵞掌風
【漢方薬】
■桂枝茯苓丸




角膜パンヌス
⇒pannus=血管新生を伴う表在性角膜浸潤。
【漢方薬】
■苓桂朮甘湯(小便不利、めまい、)



角膜炎
【漢方薬】
■越婢加朮湯
■葛根湯加川芎辛夷
■桂枝茯苓丸
■大柴胡湯
■桃核承気湯
■八味地黄丸
■白虎加人参湯
■六味丸
     


角膜潰瘍
【漢方薬】
■琥珀杞菊湯
■五苓散
■走馬湯
■大青竜湯
■八味地黄丸
■苓桂朮甘湯
■六味丸

◎「夜明砂・猪肝・蒼朮」(麻疹による小児の角膜潰瘍)



角膜混濁
◎チェック:ムコ多糖症  
【薬物】
*「穀精草」(流行性角膜炎による、点状の混濁=星障)
*「石決明」(混濁一般)
*「石決明・野菊花・連翹・荊芥・木賊・穀精草」(目の充血・羞明)
*「白蒺藜・木賊・決明子・穀精草」
*「磠砂・竜脳」外用。
*「瑪瑙(メノウ)粉末を点眼。
*「木賊」(結膜炎による混濁=翳障)
*「珊瑚・朱砂・竜脳」微細末を点眼。





角膜ヘルペス
【漢方薬】
■八味地黄丸
■六味丸

 


覚醒剤中毒
■生活不安、逃げ場求め
「前略、もやもやする心の逃げ場になったのが、『ヒロポン』という覚醒剤だった。
といっても昭和22、3年(1947、8年)当時、この薬は疲労回復薬として、どこの薬局でも売っていたし、芸能人や受験生が気軽に注射していた。人がうつのを見て怖がっていた私も、始めてしまうとあっという間に深入りしてしまった。1日40本もうち、そのせいで眠れないと、睡眠薬にも手を出した。
こうなると、舌はもつれ、いつも酔っ払ったようにフラフラしている。中 略、その間にも症状は悪くなっていった。ちょっとした音にもビックリするし、電車の中でも道路でも、泡を吹いてひっくり返る。時には舌をかんで血の泡を吹く。
鈴木君は様子をうかがっていて、発作が起きそうになると、舌をかまないように、すぐ手ぬぐいかハンカチを口の中に突っ込んでくれた。ハンカチが間に合わなければ手を突っ込む。気づくと鈴木君の手が血まみれになっていることも度々だった。今の私があるのは、鈴木君があそこまで尽くしてくれたおかげだと、づくづく思う。
ついに体重は30kgぐらいに減ってしまい、人の話す声も、自動車の走る音も、風で木の葉がそよぐ音も、みんな私の悪口に聞こえるようになってきた。見るもの聞くものすべてが恐ろしくてへんになろそうだった。いや、もう心はばらばらになり、おかしくなっていたようだ。
父はやせ細っている私に何とか食事をさせようと、ある日、小さい子につるようにご飯を口に入れかけた。ところが私は、「父が世間体が悪いから毒を入れて殺そうとしている」と思い込み、そこにあった木のお盆で思いっきり殴ったしまった。
こわごわ「殺さんといて」と言いながら父の顔を見ると、額には血がにじみ、悲しそうに私を見つめる目には、涙があふれていた。私は頭の中でおかしいなと考えた。父一人、娘一人、身を寄せ合って暮らしてきて心から尊敬し、大好きな父を殴ったりするなんて----------。
そこで、「私ちょっと頭がおかしくなったんとちゃうかしら。もし、おかしい思たら、病院に連れていってちょうだい」と頼んだ。父は救われたように笑い、「おかしいとは思わへんへど、気になるんやったら一度診てもらった方がええ。あしたでも病院にいこか」と言った。
翌日、みんなで病院に行った。車が玄関に着いたとたん、懐かしい人に出会った。以前、吉本興業で楽屋の世話をしてくれたお茶子さんで、私ととても仲の良かったお仲さんだった。懐かしさの余り抱きつくと、お仲さんも私の手を取り「会いたかったですわ」と喜んだ。
でも、お仲さんは白衣を着て胸には婦長と書いてある。「ここの婦長さんになったんか」と聞くと、「そうですよ、だから安心して入りましょうね」といい、腕を組んで病院に入った。
長い廊下をいくつか曲がった時、ガチャンという音が高い天井に響き、ドアが閉まった。後から来るなずの父も鈴木君もいない。ドアを叩いて暴れる私に、お仲さんが優しく、「私がついていますよ」と部屋に連れていってくれた。(ミヤコ蝶々・私の履歴書)1998.2.12《日本経済新聞》
■禁断症状、眠れない夜
「『ヒロポン』という覚醒剤の依存症で精神病院に入院した。その夜から禁断症状が襲ってきた。薬が欲しくてたまらない。眠れないし、胸苦しくて吐き気もする。入院したての患者は禁断症状で暴れるらしいが、私は必死になって我慢した。芸人としての誇りからだった。良くなって再び舞台に立った時、だれかに「あいつが暴れていた」などと言われては困ると考えた。
病院からは眠るようにと、睡眠薬をもらって飲んでいたが、どうも胃腸薬のようなものだったらしい。それまでご飯もろくに食べられなかったのが、急にお腹がすいてきて、朝ご飯が待ちきれなくなってきた。
3日ほどたつと、だいぶまともになってきた。すると、最初の日に懐かしく会ったお仲さんが、見も知らない人であることに気づいた。聞くと、「気が付きましたか。それが分かるだけ、良くなったんですよ」と言われた。うまく調子を合わせてきれたものだと感心したら、「どんな患者さんにも合わせますよ」と笑っていた。
私も自分の錯覚がおかしくてクスクス笑っていると、近くにいた17、8歳の娘さんの患者から、「何がおかしいねん。1人で笑っていたら、頭おかしいと間違えられるでぇ」とたしなめられた。毎日、お医者さんの回診はあったが、私は割合軽症だったらしく、特別の治療は受けなかった。ただ食べて寝て依存症状を無くし、健康な体を取り戻せばよかった。
今でこそ笑って話せるが、入院中の私は、1日でも早く退院したい一心だった。もう治ったことを見せようと、回診のお医者さんにやたらと笑顔を振りまいたり、ヘラヘラ笑っていると治っていないと思われるからと、黙りこくってみたりした。そのうちお医者さんが、「そんなに苦労せんかて、こっちは商売や、治ってるかどうかはわかってる」と言ってくれた。
つらい思いもした。病院の隣は刑務所で、窓から農作業をする服役囚が見える。鉄格子の窓からその姿を見ていたら、服役囚たちが私を指さし、「かわいそうに、あの娘、頭がおかしいんや。人間あないなったら終わりやで」と言ってみんなで笑う。
腹が立った。確かにお互い監視付きで鉄格子の中にいるけれども、私は病気を治しているのであって、悪いことをしたのではない。無性に悔しくなり、大声で「バカ野郎」と怒鳴ってしまった。服役囚たちはどっと笑って、「えらい重症の患者やな」と聞こえよがしに言った。
怒りと恥ずかしさでカッとなり、いっそ死んでやろうと、病院の中をさまよった。鉄格子にヒモをかけようと思ったが、高いところにあって届かない。 低いところはちゃんと看護婦さんが見ている。ヒモがかかるよな角はすべて丸く削ってある。トイレも下半身は隠れるが、上半身は見えるので、自殺など出来ない。よく行き届いていると、妙なところで感心した。
結局、死ぬのはあきらめて、食べては寝、寝ては食べる毎日に戻った。この規則正しい生活の為、やせ細って30kgほどしかなかった私の体も、自分でも分かるほど太ってきた。
入院して20日ぐらいしてお医者さんから、退院してもよいと言われた。退院の前日はうれしくて寝られなかった。だが、退院はまた3日延びた。同室の娘さんが私の退院を知り、別かれたくないと泣きすがる。母親が首をつって死んでいる姿を見て発病したため、私を母親と思い込んでいる。つい情が移ってしまい。父に頼んで退院を延期してもらった。
3日して病院から、「そんなつき合いのいいことをしても、あの患者さんはまだ治りません」と言われ、退院させられた。
私は幸いにも軽症だったが、病院で重症の人の禁断症状やうつろになった顔を見て、つくづく薬物依存の恐ろしさを思い知った。2度としたくない、人にもさせたくない体験だった。(ミヤコ蝶々・私の履歴書)1998.2.13《日本経済新聞》
■スピード鑑定
「鑑定に時間を要していた覚醒剤原料の含有率について、徳島大薬学部の楠見武徳教授(57)(有機分析)らが、試薬を使ったあとの色変化を通じて素早くチェック出来る新しい鑑定方法を開発、30日の日本薬学会(岐阜市)で発表した。
覚醒剤取締法では含有率を10%以上でないと処罰対象ではなく、捜査現場で瞬時に分からない現状では現行犯逮捕が難しかった。新方法では分析用試薬を持ち込むだけで簡単に判定できる。
覚醒剤の原料は『エフェドリン』と『メチルエフェドリン』。通常は白い結晶の状態になっている。楠見教授らの方法はエフェドリンなどの結晶をパレットに載せた後、酢酸と硫酸銅、水酸化ナトリウムの3種類の試薬液(原料1mg当たり各74mg)をスポイトから垂らす。その結果、結晶と液が溶け合い、色が変わる。
含有率「0%」の場合は、透明に近い水色。
含有率「10%前後」------淡い水色。
含有率「50%前後」------青紫色。
含有率「100%」---------黒に近い青紫色。
これまでも、同原料と銅が結合すると、青みを増す性質は知られており、先の3種類の物質を原料に添加すると青に変わることは分かっていた。ただ、風邪薬にも3~4%含有されており、青になるだけでは逮捕に踏み切れなかった。」




膈噎
=「噎膈」
⇒食道胃の狭窄症のことで、食道ガン、胃ガン、食道麻痺などを含む。
【臨床例】
☆膈噎
「泉州、佐野の豪族、食野喜兵衛の家僕元吉は、年二十餘。治を請いて曰く「膈噎二年ばかり。桃花、五日に必ず発す。頃者、胸腹脹満し、擧體癒々安からず。衆醫皆以為く治せずと。一も方を処する者なし。蓋し先生の論を聞くに死生は天の命ずるところ、疾病は、醫に治するところなり。等しく死せば願わくば、先生の治において死せん。幸に為に之を瘳(いや)せよ」と。
《吉益東洞》先生は、大半夏湯をつくりて之を飲む。飲めば輙ち随いて吐す。吐す毎に必ず粘痰を雑(まじ)える。居ること八九日。薬始めて下ることを得る。飲食も復吐せず。出入り二月ばかり。全く癒ゆ。」《建珠録》
   


膈消
=糖尿病の一種で上消に属し舌赤裂、大渇引飲、膈満、少食、大小便普通のもの。
【漢方薬】
■門冬飲子《宣明論》





脚気
⇒「緩風」⇒「脚弱」。            

腫れるを湿脚気といい湿と風を去るべし。
腫れざるを乾脚気といい血を潤し燥を清すべしと《万病回春》
⇒湿が溜まって熱を生じ、脚に流注して、麻木・痠痛・軟弱無力・腫脹・攣急・紅腫・発熱を生じる。
◎足を俗に脚というのは、却字と意義が同じで、座ると足がうしろのあるという意味です。
<1>湿熱が三陽にある:[神秘左経湯]
<2>湿熱が太陽にある:[麻黄左経湯]
<3>湿熱が少陽にある:[半夏左経湯]
<4>湿熱が陽明にある:[大黄左経湯][加味敗毒散][通宣檳蘇散]
<5>湿熱に三陰がある:[羗活導滞湯][除湿丹][三花神祐丸][捜風丸][枳実大黄湯][開結導引丸][当帰拈痛湯]
<6>気血が虚した:[独活寄生湯][羗活続断湯]
<7>寒湿が盛ん:[勝駿丸][捉虎丹] [巻柏散]
<8>熱がひどい:[二妙蒼柏散][加味蒼柏散]   
<9>腫がひどい:[勝湿餅子][桑白皮散]

◎脚気腫満には、通常隻解散三将軍円《済世薬室》
嘔気ある者:犀角旋覆花湯
◎乳児の脚気:「夏檳湯」

【漢方薬】(湿脚気/乾脚気)
■茵蔯蒿湯
■烏頭湯
■烏薬平気湯《三因極一病証方論》(脚気が上攻して昏眩し、喘息する)
■越婢加朮湯
■黄蓍桂枝五物湯
■開結導引丸(脚気で食積の流注による心下の治悶)
■脚気一方《寿世保元》
■加味蒼柏散《医学入門》(湿熱脚気でいざりになる)
■加味敗毒散(三陽経に脚気が流注し、脚踝が赤く腫れる)
■括楼桂枝湯     
■甘遂半夏湯
■桔梗白散
■枳実大黄湯(湿熱脚気の腫痛)
■羗活続断湯(脚気で肝腎骨のケイレン)
■羗活導滞湯《蘭室秘蔵》
■巻柏散(久年の脚気で難治)
■五積散《万病回春》
■牛膝散《医学入門》
■牛車腎気丸
■柴胡桂枝乾姜湯
■柴胡加竜骨牡蛎湯
■三脘散
■三将軍元(脚気が心臓を衝いて大小便不通)
■杉節湯(脚気が腹に入り、心臓を衝いて危険なとき)
■三黄瀉心湯
■三物黄芩湯
■地黄湯《証治準縄》
■梔子柏皮湯
■芍薬甘草湯
■茱萸木瓜湯《証治準縄》
■小建中湯
■勝駿丸(脚気でケイレンして痛み、歩行不能。足弱に)
■四物湯《万病回春》
■真武湯
■勝湿餅子(久年の脚気で足脛に腫痛)
■沈香散《証治準縄》
■神秘左経湯(風寒暑湿が足陽経に流注して、脚膝がケイレンして腫痛)
■清熱瀉湿湯(湿熱脚気で腫痛)
■桑白皮散(脚気の浮腫で小便が渋く、腹が脹る)
■桑白皮湯《脚気論》
■捜風丸(脚気の腫痛)
■走馬湯
■疎経活血湯
■捉虎丸(脚気で疼痛がたまらない)
■大黄左経湯(四気が足陽明経に流注して、脚腰が赤く腫れて疼痛し、歩行出来ず、大小便が秘渋する)
■大柴胡湯
■大承気湯
■大陥胸湯
■大腹皮散《医学入門》
■竹葉石膏湯
■調胃承気湯
■通導散
■当帰芍薬湯(脚弱)
■当帰拈痛湯《蘭室秘蔵》(湿熱脚気で腫痛)
■独活寄生湯(肝腎が虚弱して筋骨がケイレンして痛み、脚膝が緩弱・冬痺のとき)
■二十四味飛歩散《万病回春》
■二妙蒼柏散(湿熱脚気で足膝が疼痛し、又赤く腫れ、脚骨の間に熱があって歩行困難となり、いざりになりかける)
■人参敗毒散《三因極一病証方論》
■八味地黄丸《金匱要略》
■半夏左経湯(足少陰経が四気に流注して発熱・腫痛し、脚腰が痛む)
■檳蘇散《厳氏済生方》(風湿脚気の腫痛・しびれ)
■檳榔散《証治準縄》
■茯苓甘草湯
■防已飲《寿世保元》
■防風通聖散
■補中益気湯《寿世保元》
■牡蛎沢瀉湯
■麻黄左経湯(四気が足太陽経に流注して、腰脚がしびれて重くて痛く、増寒・発熱・無汗・悪寒or自汗・頭痛・めまい)
■木萸湯(脚気が腹に入り危険)
■木防已湯(顔色が黒ずんでいる
■薏苡仁湯(腫脹・熱感・疼痛)
■苓姜朮甘湯(腰脚げひどく冷える、腰がスースーする)
■六味丸
■六物附子湯《三因極一病証方論》

【民間療法】
<1>アサガオ。
<2>トウゴマ。
<3>トウモロコシ。
<4>ヒガンバナ。
<5>ヤマゴボウ。
<6>ワラビ。
<7>アオツズラフジ・イノコズチ・イチヤクソウ・ウシ・オオツズラフジ・オモト・カニ・カマキリ・カラスビシャク・カラタチ・カワラケツメイ・クガイソイウ・クロマメ・ゲンノショウコ・ゴシュユ・シカ・シソ・スイカ・スギ・スズメ・ゼンマイ・ダイコン・ダイコンソウ・タニシ・タンポポ・ツユクサ・ナギナタコウジュ・ナスビ・ナンテン・ニシキギ・ニワトコ・ニワトリ・ノイバラ・ハコベ・バショウ・ハトムギ・ハンゲショウ・ヒヨドリジョウゴ・ヘクソガズラ・ヘチマ・ボケ・マタタビ・ムクゲ・モモ・ヤマモモ。

【臨床例】
☆《建珠録》
「京師油街、界屋新七。通身浮腫し、脚気上衝し、心胸熱煩し、甚だしきときは正気乏絶し、昼夜、壁に倚りて臥すること能わず。湯を進むれば即ち吐す。衆醫、以為く「必ず死っす」と。
《吉益東洞》先生、越婢加朮附湯をつくりて之を飲む。吐なお故の如し。而して益々之を飲みて止まず。居ること5、6日。心胸、やや安し。薬するも復吐せず。是において又、十棗湯をつくりて之を飲む。吐下傾けるが如く(入れ物をひっくり返したように吐き出す)して諸證傾退す。」

☆《建珠録》
「《吉益東洞》先生門人、備中足守の中尾元彌、脚弱の状を覚ゆ。自ら平水(=平水丸)、桃花(=桃花湯)の輩を服して、その脚益々弱し。然れどもなお、前方を服して止まず。遂に以て痿弱して起居すること能わず。是において、先生之を診す。十棗湯及び芍薬甘草附子湯(毎貼15銭)を作りて雑進(交互に服用)す。
時に礬石湯を作りて、脚を浸すこと数月。いまだその效を見ず。生(門人を指す)なお、前方を服して止まず。出入りすること1歳ばかり。全く癒ゆ。」




脚気 Beriberi
=1642年、オランダ領ジャワ島で、オランダの医師ブロンチウスが発見。
「この地域には現地人によって羊(ジャワ語で羊のことをberiという)と呼ばれている厄介な病気がある。之は一種の麻痺症状で特に脚部、手部の知覚麻痺及び運送麻痺が著しく、全身が侵されることもある」
⇒ビタミンB1の欠乏症。
下肢の倦怠感・知覚異常・知覚鈍麻・食欲不振・便秘・心悸亢進・心肥大・浮腫などの症状を呈する。

【症状】
<1>はじめ最低血圧の降下-(60mgHg以下となり、しばしば0となる)
<2>心音の第2肺動脈音の亢進などの循環器障害。
<3>食欲不振・吐き気・便秘などの消化器障害。
<4>浮腫。
<5>手足の知覚麻痺・しびれ、疲労感。
<6>ふくらはぎの筋肉を他から圧迫されると痛みを覚える。
<7>腱反射が減弱。
<8>ついには手足の神経が麻痺して歩行困難となり、筋萎縮をきたす。
<9>循環器障害がひどく悪化(心臓は右方へ拡大)すると、わずかな身体運動の増加により急性心力衰弱すなわち衝心(脚気衝心)を起こし死亡することがある。(薬学大事典p103)

◎自覚症状:四肢仙骨部の疼痛。
      頭痛
      全身倦怠
      心障害
      下痢
◎検査所見:リンパ球増加
      好酸球増加
◎鑑別が必要な疾患:
☆神経炎:アルコール中毒
     マラリア
     ペラグラ(意識明瞭で浮腫あり)
☆浮腫:浮腫性疾患との鑑別

 


【漢方薬】(脚気)
■九味檳榔湯
■鶏鳴散加苓《時方歌括》
■当帰芍薬散
■防已茯苓湯・・・・(脚気の浮腫)

【民間療法】
 <1>アズキ 



 脚気衝心(かっけしょうしん)
⇒脚気の心臓型。
◎症状:①心悸亢進
    ②呼吸困難
    ③胸内苦悶
    ④口渇
    ⑤嘔吐
◎2~3日で死亡することがある。

【漢方療法】
脚気衝心時の嘔吐に:治脚気冷毒云々方《外台秘要方》

【漢方薬】(脚気衝心)
■大陥胸湯
■沈香豁胸湯
■鶏鳴散加苓《時方歌括》
■黒錫丹 
■呉茱萸湯
■沈香降気湯《和剤局方》
■大承気湯



 

顎下腺炎
⇒唾液腺の一つである顎下腺の炎症。
◎原因となる疾患
①流行性耳下腺炎
②結石
③Sjögren症候群
④Mikulicz症候群
⑤混合腫瘍
  

【漢方薬】
■三黄瀉心湯
■半夏散及湯



喀血  hemoptysis

⇒肺声門より下部の気管・気管支・肺実質からの出血をいう。
◎肺に由来するため、鮮紅色・泡沫状が多く、水に浮く。

吐血は暗赤色にして水に沈む。

◎喀血を引き起こす原因:
①気管支拡張症
②肺結核
③肺ガン
④その他:肺炎、肺梗塞、肺化膿症、肺ジストマ症、塵肺、
    激しい咳、
    僧帽弁狭窄症、
    血管疾患、
    Webener肉芽腫
    ヘモジデローシス、             
    Goodpasture症候群

【漢方薬】(かっけつ)
■黄連解毒湯
■恩袍散(咯血・唾血・吐血)
■咳血方加減
■河間生地黄散(欝熱・咯血・唾血・衂血・吐血)
■加味逍遥散
■玄霜膏(咯血・吐血)
■玄霜雪梨膏(咳血・嗽血・咯血・心労がある)
■犀角地黄湯
■三黄瀉心湯
■三物黄芩湯
■滋陰降火湯
■梔子豉湯(身熱、胸中煩熱、心中懊、不眠、熱感)
■十灰散
■清火滋陰湯
■清咯湯《万病回春》(咯血の治療剤)
■聖餅子(咯血の主治剤) 
■猪苓湯合四物湯
■桃核承気湯(実証、のぼせ、足冷、下腹部痛)
■人参湯
■麦門冬湯
■八味地黄丸
■白枇杷丸
■六君子湯(咳血、喀血、栄養不良性貧血)
   



喀痰(かくたん)
【漢方薬】
■金沸草散(多量・表寒による寒痰)
■柴陥湯(濃厚な喀痰)
■柴胡桂枝乾姜湯
■柴朴湯(湿痰、緩解期に常用)
■三子養親湯(多量・湿痰)
■滋陰降火 湯(痰稠痰・量少ない)
■小陥胸湯(黄色で粘稠なタン・喀出しにくい)
■小柴胡湯(粘痰が出る)
■小青竜湯(水様性で多量・無色 ̄白色)
■辛夷清肺湯(黄色で粘稠)
■参蘇飲(タンの量が多い、濃厚な痰)
■神秘湯(呼吸困難、痰少ない、気鬱、胸脇苦満<軽>)
■清肺湯(濃厚で切れにくい
■蘇子降気湯(多量・寒痰)
■竹茹温胆湯
■白果定喘湯(黄色で粘稠)
■麦門冬湯(濃厚な少量の痰~無痰)
■半夏厚朴湯(白色)
■二陳湯(白色で大量のタン)
■麻黄細辛附子湯(うすい・多量)
■木防已湯
■六君子湯(白色で多量)
■礞石滾痰丸(タンが多くて詰まる・実熱の頑痰)
■苓甘姜味辛夏仁湯(白色でうすい多量のタン・寒痰)



肩こり(肩凝り)

【原因】
静電気が原因。
(イ)衣類の組み合わせが大切です。
組み合わせる衣類によって、静電気の発生量が変化します。静電気が多いと衣類が肌にくっていて動きにくくなり、肩こりなどの原因となります。
(ロ)帯電
[+]に帯電する衣類---[ナイロン][毛]
[−]に帯電する衣類--[ポリエステル][アクリル]
[+]にも[−]にも帯電しにくい衣類:[綿][アセテート]
(ハ)例えば、

ポリエステルの下着の上に毛100%のセーターを着ると、[−]と[+]が反応して静電気が起こり、筋肉を圧迫します。その結果、動きにくい・肩が凝るなどの症状が出てきます。
(ニ)上の例で、下着とセーターの間に[綿]の衣類をはさむと、[+]と[−]は反応しなくなり、静電気は起こりません。
(ホ)静電気防止スプレーを利用するのもおすすめです。

活性酸素
「活性酸素の働きで細胞が酸化し、体内に過酸化脂質が出来るのが原因とされている」

原因となる疾患:
過労、姿勢が悪い、精神的ストレス、自律神経失調症、更年期障害、頸肩腕症候群、筋膜炎、後縦靱帯硬化症、変形性脊椎症、胸郭出口症候群、むち打ち症、がんの骨転移、心臓病、肺炎、肺ガン、風邪、外傷。

☆病気の肩こり=胸郭出口症候群


■甘く見ないで> 肩こりに潜む病魔
「テレビゲームやパソコンが普及するにつれ、若い人の間でも肩こりが増えている。ある調査では男性の約4割、女性の約6割が肩こりを訴えているという。
「ほとんど場合、運動不足や姿勢が悪いことが肩こりの原因」と伊藤博元・日本医科大学助教授は話す。運動をしたり、同じ姿勢を続けないようにしたりすることで肩こりは自然に治るという。シャワーなどで肩を温めて血行をよくするのも良い。

●大半は運動で改善
肩を動かす体操も効果がある。

①首をぐるりと回す。

②肩をすくめゆっくり戻す。

③腕を大きく振って深呼吸する。

④腕を前後にゆっくり振り上げてから振り下ろす。という手順を毎日5~10回続ければ多くの場合肩こりは解消する。しかし「運動を2週間続けて全く改善しない時は、病院に行った方がいい」(伊藤助教授)とアドバイスする。
大半は運動などで改善するが、腫瘍などの理由で肩こりを起こしている場合もあるからだ。放置していると危険な兆候を見過ごしてしまう可能性もある。
慢性的な肩の痛みやシビレなどがあったら要注意だ。普通の肩こりであれば、横になって筋肉の緊張がほぐれれば自覚症状が治まることが多い。だが寝ていたり安静にしているときに痛みを感じたら、病気の可能性がある。

●シビレは神経の圧迫
シビレは神経の圧迫が主な原因で、まずはそれを治療する必要がある。神経の圧迫を引き起こす病気の代表例は『胸郭出口症候群』だ。ひどい肩こりを訴えて整形外科を訪れる人の約2~3割がこの病気だという。肩の鎖骨と胸の肋骨が近づきすぎて、間を通っている神経や血管が圧迫されてしまう病気だ。
この病気は、なで肩で首が細い女性に多い。首の筋肉が弱いと鎖骨を持ち上げることが出来なくなり、鎖骨が下がってしまう。この結果、肋骨と鎖骨が近づいて神経の通り道が細くなり、シビレや欝結などを引き起こす。一般的には首の筋肉を鍛えれば対処できるが、苦痛がひどいときは肋骨を手術で切除して、神経の通り道を開けてやる必要がある。
また『頸肩腕症候群』と呼ばれる病気もある。慢性的に頸の筋肉が緊張することで、頸椎が変形してしまう病気だ。
普通なら緩やかにカーブしている頸椎が、頸の途中で曲がってしまいバランスが悪くなる。それによって肩こりや痛みなどの症状が出るという。この病気の患者も頸を伸ばしたり、頸の筋肉を鍛えることで症状を改善することが出来るという。
希な例だが、腫瘍が脊髄に出来ていたり、肺ガンが悪化して肩付近まで腫瘍が膨らんで肩が凝る例もある。この場合もシビレや鈍痛が続くなどの自覚症状がある。命に関わる危険な病気だ。こういっった病気は手術を覚悟しなければならない。
●素人判断は禁物
最近は短時間で簡単なマッサージをしてくれる店が流行している。軽い鬱血による肩こりなどは問題ないが、病気が原因の肩こりの場合には効果はない。慢性的な痛みやしびれを伴う肩こりの原因を取り除くには、きちんとした医療機関で診断を受けなければ、命取りになりかねない。」1999.10.26《日本経済新聞》

【鍼灸】
「沢田先生は云われる。“昔から三焦については諸説まちまちで、不明瞭であったが、私の研究では三焦は乳糜管と関係があるということが分かった。下焦というのは小腸の乳糜管のことで、乳糜管の流通が悪くなると血が滞る。即ち血の病という病を起こす。だから血の道をおさめるには、左手の陽池と腹の中脘とへ灸すえて下焦を調えれば、乳糜管の流通が良くなって治る。血の道の人が左肩へ凝るのは、下焦の滞りのためです。それで、乳の出方にも関係があるのです。下焦を調えると乳の出が良くなります。それどころか帯下の降りるのが止まります。帯下の降りるのは乳糜管の停滞によるのです。      
☆「天髎」《沢田流聞書鍼灸眞髄》

【漢方療法】
<1>肩こり一般(通治薬)--------「葛根湯」

<2>高血圧ぎみで肩こり
*太鼓腹、便秘、声が大きい:「防風通聖散」
*顔赤黒く、顔色が悪い、便秘:「通導散」
*顔色きたない、神経質、便秘ぎみ:「大柴胡湯」
*のぼせ気味、便秘、軟便-:「黄連解毒湯」
*のぼせる、便秘、硬便-:-「降圧丸」
 
<3>肥満ぎみの人の肩こり
*美食家、太鼓腹:「防風通聖散」
  【組み合わせ】 「防風通聖散+葛根湯」
*愛煙家:-「通導散」
*ストレスが多い:「大柴胡湯」

<4>右が凝るのか、左が凝るのか?
*右側の凝りが多い、「大柴胡湯」
*左側の凝りが多い「桂枝茯苓丸」
*両方が凝ることが多い「当帰芍薬散」

<5>首の横から肩にかけて凝る。
*便秘ぎみ:「大柴胡湯」
*食欲がない--「小柴胡湯」
*腹痛、頭痛がする-「柴胡桂枝湯」
*片頭痛、足が冷える。胃切除後の「延年半夏湯」

<6>首の後ろから背中にかけて凝る。
*頭痛、さむけ「葛根湯」
*体力なく、胃腸が弱い「 桂枝去桂加茯苓朮湯」
*肩強急:「葛根加朮附湯」「 延年半夏湯」「三味鷓胡菜湯」

【漢方薬】(肩こり)
■烏薬順気散:
■延年半夏湯:
■回首散:
烏薬順気散に羗活、独活、木瓜を加えたもので、万病回春に“頸項強急し、筋痛み、或いは頸を挫(くじ)きて項を転ずることを得ざるを治す”とあるように寝違えの疼痛に用いる(漢方診療医典)
■葛根湯:    
傷寒論に“太陽病、項背強ばること几几、汗無く悪風する者”とあり、肩から項背部のこりを訴えるものに幅広く用いられる(漢方診療医典)
■葛根湯加辛夷川芎
慢性副鼻腔炎で肩こりするもの(漢方診療医典)
■葛根黄芩黄連湯:
■葛根加朮附湯:
■加味逍遥散 :
比較的きょじゃくな人で疲労しやすく、神経質で貧血があり、主として中年以降の更年期に不定愁訴の中の1つに肩こりがある者に(漢方診療医典)
■括楼薤白白酒湯:
■九味檳榔湯:
■桂枝加黄蓍湯
■桂枝加葛根湯:
■桂枝加芍薬生姜人参湯:
■桂枝加朮附湯
冷え症の者や、冷えると症状が悪化するものなど附子剤の適応症があれば比較的気軽に使える処方(漢方診療医典)
■桂枝茯苓丸:
■桂枝去桂加茯苓朮湯:
■香蘇散:
■呉茱萸湯:
■五苓散
■柴陥湯
■柴胡加竜骨牡蛎湯:
■柴胡桂枝乾姜湯:
■柴胡桂枝湯:
■柴胡疏肝湯
■柴芍六君子湯
■三黄瀉心湯:
■酸棗仁湯:
■三味鷓胡菜湯 :
■四逆散:
■炙甘草湯:
■芍薬甘草湯 :
■ 小陥胸湯:
■生姜瀉心湯:
■小建中湯:
■小柴胡湯:
☆63歳、婦人
「肩が凝り、疲れやすいといって来院。若いときから冷え症で、胃が弱かった。現在朝起きて水3合飲み、朝食にご馳走を多く摂り、夜は酒を3勺飲むという。便通は1日1回あり、小水は近く、夜も1~2回ある。中肉中背で、筋肉はがっしりしている。腹診すると、軽い胸脇苦満を認める。
  腹証により、小柴胡湯を与える。60日ほど服薬すると、肩こりがすっかり治り、冷え症も治った。」《寺師睦宗》
■神効湯
■清湿化痰湯:
■千金独活湯
■大柴胡湯 :
体格・体力とも充実した人で胸脇苦満が強く、便秘があり、舌はやや乾燥し白苔または黄苔を認める。頭重、不眠、めあい、耳なり、高血圧を伴うことが多い(漢方診療医典)
■大承気湯 :
■大陥胸湯:
■治肩背拘急方《中川摂洲》:
■釣藤散:
■通導散:
■桃核承気湯:
■ 当帰四逆加呉茱萸生姜湯:
■当帰芍薬散:
■二朮湯
平素から胃腸が弱く、比較的体力の弱い人で、筋肉のトーヌス(tonus緊張)は低下していて痛みのさほど激しくないものによい(漢方診療医典)
■女神散:
■人参湯:
■八味地黄丸:
■半夏厚朴湯:
■半夏瀉心湯:
■半夏白朮天麻湯:
■防已黄蓍湯:
■抑肝散:
■抑肝散加陳皮半夏湯:
■六君子湯:
■六味丸:
  

【臨床例】
☆62歳、男性。
「4年前に胃ガンのため胃を2/3取りました。再発の心配はないと言われていますが、食後に胸焼け・肩こりがひどく、特に左の肩が下へ引っ張られるように重苦しくなります。」
「胃切除後の不定愁訴でつらい思いをしている人は実に多い。胸焼け・ヒリヒリする胸部の痛み・腹部膨満感・ゲップ・みぞおちの詰まる感じ・便秘・下痢・体重減少・貧血など様々な症状がある。質問者のように頑固な肩こりや、背中全体の不快に悩むケースも少なくない。私の患者にも“毎日、ネコのように柱に肩をゴリゴリとこすりつけないとおさまらない”と訴える人がいる。
  このような胃切除後の後遺症にも漢方薬が比較的奏功する例が多いことは一般に知られていない。

①強い肩こりは「痃癖」と捕らえて[延年半夏湯]を服用すると良い。痃癖とは胃症状を伴う背中や肩の強いこわばりを言う。もちろん古典には胃切除後の記載はないが、みぞおちを抑えると不快や圧痛を認め、下半身特に足の冷えるタイプの頑固な肩こりによい。
②胸焼けがひどく、ゲップの出る人には[茯苓飲合半夏厚朴湯]
③食べ物が胃に落ちていかないという人は[利隔湯]や[六君子湯]が良い。(花輪寿彦・北里研究所東洋医学総合研究所所長)1997.9.29《日本経済新聞》

■若い人の肩こり
「22歳の娘。以前からの肩こりが細菌ひどくなり、「ずっしりとヨロイを着ているようだ」と言います。頭や背中が痛むだけでなく、足先もしびれます。大学病院で検査を受けたところ「首の骨が通常と逆に反っている」と言われました。薬や矯正器もあまり効果がありません。肩こりを治す良い方法はありませんか?
●肩こりは若い人にも多いと聞きます。どうして起こるのですか?
首から肩にかけて筋肉が張り、重苦しい感じになるのが肩こりです。個人によって場所や範囲もずいぶん異なり、首の後ろのこともあるし、肩関節に近い肩胛骨の上部のこともあります。首の姿勢や気苦労など原因は様々です。中高年の場合には、頸椎椎間板の老化が原因のことが多いのですが、若い人では首の姿勢の問題がよくみられますね。
リラックスした状態では、頸椎はふつう、体の前方に湾曲しています。相談者のケースは体の後方に湾曲しているようですね。この場合、首の後ろの筋肉は常にのびて緊張状態になっています。いわば、ずっと中腰になっているのと同じで、それが肩こりにつながっていると考えられます。このような姿勢の肩は珍しくありません。
●体型も関係しているのですか?
なで肩の肩に肩こりを訴える人が多いようです。肩が下がっていて筋肉が緊張している状態になり、凝りやすいのです。これも若者に多いですね。
治療にはまず、整形外科で診察を受け、原因をはっきりさせることが大切です。複数の原因が合併していることが多いので、疑わしい原因を一つ一つ排除して行きます。
●治療方法を教えてください。
一番手軽なのが内服薬です。肩こりは筋肉の緊張が続いているじょうたいですので、筋緊張弛緩剤が効くかどうかみます。血液の循環を良くするビタミンEの投与も試みます。原因が特定できない時は負担の少ない治療法から始めて最適な治療法を探っていきます。(伊地知正光・東京労災病院整形外科部長)2000.5.7《朝日新聞》



肩関節周囲炎
【漢方薬】
■黄蓍桂枝五物湯
■葛根加朮附湯
■葛根湯
■桂枝加朮附湯
■五積散
■疎経活血湯
■二朮湯
■麻杏薏甘湯
薏苡仁湯
   



滑精(かっせい)
⇒平常時に、精液がもれること。
◎性交時・就寝時以外で、精液がもれること。

【漢方薬】
■金鎖固精丸
■苓姜朮甘湯
■六味丸

 



滑脱(かつだつ)
=滑泄(かっせつ)
◎頻繁に下痢すること。頻回下痢症。
【漢方薬】
■補中益気湯



滑脳症
■重い知的障害を起こす難病
「2009年、大阪市立大学の広常真治教授と山田雅己講師らは、脳の「シワ」が無くなり、重い知的障害などを起こす『滑脳症』の症状を、薬剤投与で改善する動物実験に成功した。
成果は9/7ネイチャー・メディシン電子版に発表
滑脳症の多くは神経細胞の移動に関係する『LIS1』というタンパク質が健常者の半分しかなく発症する。遺伝性の疾患で、LIS1を作る遺伝子がうまく働かないのが原因。国内では新生児の約15000人い1人の割合で発症する。
研究チームはLIS1を分解する『カルパイン』という酵素の注目。この働きを阻害する役を滑脳症のモデルマウスを妊娠した親マウスに注射した。その結果、LIS1の分解が抑えられ、マウスの胎児は正常の約8割までLIS1量が回復し、症状が改善した。





褐色細胞腫pheochromocytoma
⇒副腎髄質、頸動脈球、尾骨球、腹部大動脈周囲の傍神経節などのクロム親和細胞が腫瘍となったもの。

◎症状:カテコールアミン(アドレナリン・ノルアドレナリン)過剰による症状。
①高血圧
②突然にor 感情的に興奮する
③頭痛・発汗・動悸・顔面紅潮(蒼白)・悪心・嘔吐
④胸痛・腹痛
④手足のふるえ

■著しい血圧変動起こす
「Yさんは38歳の男性。最近、頭痛や動気があったので内科を受診したところ高血圧と指摘され、超音波検査で右副腎に6cmの腫瘍を認めた。内分泌検査で褐色細胞種と診断され、当科を紹介された。
褐色細胞種は二次高血圧を起こす代表的疾患であり、手術で完治できる高血圧の1つである。
腫瘍から放出されるアドレナリンやノルアドレナリンなどカテコールアミンの過剰分泌によって血管が収縮し、高血圧・頭痛を始め醜女の臨床症状を示す。しばしば著しい血圧の変動を来す。
高血圧には発作性高血圧と持続性高血圧があるが、褐色細胞種による高血圧は両者が合併する場合が多い。発作時には頭痛や発汗・頻脈・嘔吐などが数分~数十分続き、発作後には低血圧や脱力感が起こることがある。グリコーゲンの分解が進み、血糖が上昇することもある。
褐色細胞種には性差はなく90%は副腎髄質で発生する。残る10%は交換神経節に発生する。しばしば多発性で悪性の褐色細胞種が10%を占める。5%八味地黄丸甲状腺や上皮小体の腫瘍を合併し、遺伝性の多発性内分泌腫瘍として発症する。
血中あるいは尿中のカテコールアミンが上昇していれば、褐色細胞種と確定診断する。
局所の診断にはコンピューター断層撮影装置(CT)、磁気共鳴画像装置(WRI)、シンチスキャンが有用である。高血圧などの症状がない『無症候性褐色細胞種』も10%あり、画像診断の進歩に伴って健康診断などで偶然に発見されることも多い。
高血圧は長期にわたると二次的な血管病変が起こり、元には戻りにくいので早期に治療した方がよい。治療は手術で腫瘍を摘出する。かては診断技術が稚拙で、手術による死亡も認められた。しかし診断技術や降圧剤・麻酔法・手術のテクニックの進歩により、安全に摘出が行われるようになった。
褐色細胞種は一般的には開腹して手術が行われる。ただ3~4cm程度の小さな腫瘍なら侵襲の少ない腹腔鏡で手術が行われるようになってきている。」(池本慎一・大阪市立大学医学部泌尿器科教室助手)1999.11.8《日本経済新聞》
       
 


金縛り

(かなしばり)

⇒参照「傾眠症」「ナルコレプシー」
■意外に多い
「世の中、金縛りに悩んでいる人は案外多く、霊の祟りだと思いこんでいる人も少なくない。金縛りは「霊のなせる業」ではない。
筆者も何度も金縛りにかかった経験がある。なんと言ってもひどかったのは1978年5/30にニューヨークのルーズベルト・ホテルでかかった金縛りだった。国連が発足以来初めての軍縮特別総会を開催し、日本からも502名の民間代表団がニューヨークの国連本部に派遣された。
筆者は、その運営委員の1人として、広報活動の責任者を務めていた。毎日毎日ホテルと国連本部を行ったり来たり、総会での労気の特徴点を取材し、記事を書いて新聞を作り、代表団員に配布する。5日間で13時間しか睡眠が取れない超多忙の日々だった。
5/30、朝5時過ぎ、前日来の仕事がやっと一段落してベッドに倒れ込んだ途端、数分のうちに金縛りにかかった。頭では「いまこんなことをしている場合ではない。自分は刷り上がったばかりの新聞を各ホテルに分宿している代表団員に配布し、今日1日の行動予定を徹底する義務を負っているのだ」と分かっていた。だが、体がまったくいうことをきかない。
東京都神経科学総合研究所の宮下彰夫さんらは金縛りに冠する調査・研究の結果を日本睡眠学会で発表した。大学生を対象にしたアンケート調査によると、金縛り体験率は平均43%で、男は39%であるのに対し、女は51%に達していた。しかも最初の金縛りを体験した年齢は14~18才の思春期の集中していた。
そこで、金縛りを一度も体験したことがない学生と、2度以上の金縛り体験のある学生について、アンケート調査結果を比較してみたら、重要な差があることが判明した。金縛り体験群では、睡眠が浅い、夜中に目覚めやすい、朝起きた後も睡眠について不満をもっているなど、とかく睡眠生活が不安定な人が多いことが判明した。
とくに、心に重いストレスを抱え込んでいるようなときには、恐ろしい幻覚を伴うひどい金縛りにかかる。暗闇に白い幽霊を見たり、ヒタヒタと忍び寄る足音を聞いたりする。
また、被罷暗示性の強い人の場合には、二度三度と繰り返し金縛り体験をするうちに、同じような条件が揃うと「アッ、また金縛りにかかるんじゃないか?」という重いにとらわれ、自己暗示に導かれて、みどとに金縛り状態に陥る。「この前、金縛りにかかったときの状況と似ているなぁ」と感じ、「来るぞ、来るぞ」と思っているうちに、本当に金縛り状態がやってくる。
宮下さんたちは、学生を被験者として人工的に金縛りを誘発する実験を試みた。学生に「さぁ、そこに寝なさい。だけど、いつ何時に起こすか分からないから、そのつもりで寝なさい」と言う。被験者は寝込んでいいのか悪いのか、心にひっかりを感じながら中途半端な睡眠に入る。ある程度寝入ったところで強制的に起こされる。眠りが半端だから不快だ。しばらく覚醒状態におかれた後で、また「さぁ、また寝てもいいよ。だけど、いつ起こすか分からないから、そのつもりで寝なさい」と命じる。
何度かこうした不規則な睡眠を繰り返している内に、被験者のストレスはだんだん大きくなり、「どうせ、寝入ってもまた強制的に起こされる」のだという気分が安眠を妨げるようになり、ついに何度目かの寝入りばなに、ちゃんと金縛りにかかるのだ。
金縛りには、どうも2種類あるようだ。
①のタイプは、筆者が経験したニューヨークでの金縛り。決定的な睡眠不足で肉体的には疲労の極にありながら、精神だけは任務の痔核に燃えて冴え渡っているような場合。頭が覚醒状態にあるままに、肉体は睡眠状態に入る、頭では「こんなことをしている場合ではない」と分かっていても、体が言うことをきかない。筆者の場合もホテルの医者に診てもらったら、「お前の心臓は震えているだけだ」と診断され、安静を命じられた。
②のタイプは、それほど疲労困憊しているワケでもないのに、被暗示性に導かれて条件反射のごとく金縛りに入るケース。
ようは必要な睡眠を確保するように努めながら、ストレスを適当に捨てる「はけ口」を作ることだろう。知人の精神科医の中沢征夫さんによれば、ストレスはウンコと同じだから、便秘しないように毎日排泄すればいいらしい。心地よい酒に身をゆだねながら、同僚と上司の悪口でもほどほどに楽しむのもいいのだろう。
金縛りにかかりたくなければ、「仰向け」に寝るよりは「横向き」に寝るなどして、体を少し緊張状態においたほうがいいということだから、お悩みの方は試してみるがよい
(安斉育郎著「不思議現象の正体を見破る」河出書房新社p155~)



化膿性関節炎
⇒淋菌・化膿菌で、関節痛を起こす
◎関節の発赤・腫脹・激烈な痛みがあり、疼痛は拍動性で、関節運動で増強する。
浸出液の貯留を認める。

◎検査:CRP
    赤沈
    関節X線検査
    関節液細菌検査


化膿性疾患   
【漢方薬】
■防風通聖散(皮膚病、腫れ物)
■葛根湯(炎症・湿疹)
■十味敗毒湯(化膿性皮膚疾患)
■清上防風湯(化膿性皮膚炎


過呼吸症候群
⇒無理に深呼吸を繰り返すことによって起きる以下のような症候群。
*不安・緊張感
*心臓がドキドキする
*不整脈
*息づまり
*めまい
*手足のシビレ
*頭痛

◎過呼吸→発症のメカニズム:
「過呼吸によって血液中の酸素が増すと、血液はアルカリ性になり、アルカリ性の血液は脳内の血管を収縮させるので、脳組織が酸素不足の状態になって種々の症状が出てくる。

しかし一方、酸素不足になった脳内細胞のエネルギー供給がグリコーゲンに頼ることになり、乳酸が増加してくる。

その結果血液はアルカリ傾向であるのに細胞内では酸性傾向になり、延髄の呼吸中枢の神経細胞が刺激されて、ますます過呼吸となり、全体として悪循環が生じると考えられている。」

◎パニック発作の症状に似ている。
「パニック障害の患者に過呼吸をさせると、パニック発作を起こしやすい」





過敏性大腸症候群 irritable colon syndrome
     (刺激結腸)
⇒大腸そのものに炎症はないが、過敏になっているため、下痢・便秘・腹痛などが慢性的に続く。

◎症状:
<1>腹痛・腹部膨満・腹鳴・
<2>下痢・便秘・
<3>交替性便通異常・粘液便・       
<4>頭痛・
<5>動悸・多汗・疲労

などの症状を訴える。
◎種々の自律神経失調症や精神神経症状を伴う。
◎精神的な影響を受けやすい性格や体質の人に起こりやすい。

【漢方薬】
■加味帰脾湯
■加味逍遥散
■甘草瀉心湯
■桂枝加芍薬湯
■柴胡桂枝湯
■柴芍六君子湯
■四逆散
■小建中湯
■逍遥散
■痛瀉要方
■桃花湯
■当帰建中湯
■半夏瀉心湯





花粉症hay fever
⇒ブタクサ・スギ・松などの花粉がアレルゲンとなり、これを吸入して起こるアト    ピー性アレルギーをいう。 (参照→痛みが激しい)

◎症状:

①鼻・咽頭粘膜の炎症
②喘息
   

■治療薬「テルフェナジン」に不整脈の副作用が17件。    
<1>【禁忌】テルフェナジンを使ってはいけない場合。
(イ)心不全の患者。
(ロ)心筋梗塞。
(ハ)クラリロスマイシンを投与している患者。
(ニ)利尿薬を投与している患者。
ホ)重い肝臓病がある人には毒性の強い物質であり、急に心臓の拍動が乱れて突然死することがある。
<2>FDAは「代替薬が承認された」などとして、1995.1.13、テ ルフェナジ の承認を取り下げるように提案した。
<3>フランスでは、販売中止になった。
 
■スギ花粉症に小青竜湯
「23歳女性。ここ数年、スギ花粉症で悩んでいます。くしゃみ・鼻水や目がかゆくなり、ひどい時は眼球を取り出して洗いたいほどです。
漢方では花粉症への対症療法と花粉の飛んでいない時期の2段構えで治療にあたる。(花輪寿彦・北里研究所東洋医学道号研究所所長)
 先ず治療薬だが、胃腸が丈夫なら急性期には麻黄を含む処方がよい。代表的なのは小青竜湯である。くしゃみ・鼻水がひどく、朝ティッシュが離せないタ イプに向く。鼻づまりが強く、うなじや肩がこる人には葛根湯がよい。
鼻アレルギーには鼻茸といって、鼻粘膜の発赤・ポリープ状の隆起を伴うものが多い。この症状には辛夷清肺湯が極めて良く効く。質問者のように目のかゆみの強い場合には越婢加朮湯が即効性がある。
一方、胃腸の弱い人には胃腸にやさしい桂枝湯、当帰芍薬散や苓甘姜味辛夏仁湯などを用いる。
「花粉症の出ない時期には、漢方独特のバランス理論により免疫機構の改善を試みる。例えば、冷え性・胃腸虚弱・生理不順・むくみなど種々の症状と漢方医学的診察から体質別に処方する。このことによって年来の花粉症から開放されたと喜ばれる例をしばしば経験している。」1998.2.9《日本経済新聞》
■スギ花粉症にワクチン
「スギ花粉症の原因タンパク質を作る遺伝子を使ったワクチンの開発に、国立感染症研究所免疫部の坂口雅弘・主任研究官、戸田雅子研究員らのグループが成功し1日、京都市で始まった日本免疫学会で発表した。犬の実験で発症予防効果が高く副作用も無かった。毎年春に鼻水やくしゃみに悩まされる多くの患者にとって朗報になりそうだ。
スギ花粉症の原因になり抗原タンパク質は2種類で、抗原の中でアレルギーの治療に役立つ部分(エピトープ)もわかっている。同グループは花粉から抗原の遺伝子を取り出し、環状DNA(デオキシリボ核酸)に組み込んで、T細胞というリンパ球による免疫反応を起こさせる新タイプの「DNAワクチン」を作った。
スギ花粉症は、花粉の抗原に対する抗体が体内に出来、これが特定の細胞中のヒスタミンなどを放出させて鼻粘膜などに炎症が起こる。このワクチンをマウスに投与したところ、T細胞による免疫反応が起こり、その結果、抗体を作る反応が抑えられた。
東京大農学部獣医内科との共同研究で、スギ花粉による皮膚炎になったことがあるイヌ3匹に月1回、5ヶ月間筋肉注射した結果、2匹は花粉の飛散時期になっても発症せず、1匹の症状も軽かった。
坂口主任研究官は「このワクチンはスギ花粉症に対する安全で簡単な治療法となる可能性があり、効果は数年持続すると思う」と話している。

■花粉症の予防物質
「三共と林原生物科学研究所(岡山市)の共同チームは花粉症の予防につながる化学物質を開発した。新物質は体内に入った花粉の働きを弱めてクシャミなどの症状を和らげる。花粉が飛散するシーズン前に服用すれば花粉症が予防できるという。共同チームは患者に飲んでもらって効果があるかどうかを確かめる臨床試験を年内にも始める。
花粉症はT細胞と呼ばれる免疫細胞が鼻などから入った花粉とくっついて刺激を受けるために起きる。T細胞の表面には花粉とくっつく受容体と呼ばれるタンパク質があり、新物質はこのタンパク質に一部を人工的に合成した。
この物質を服用すると免疫反応により受容体をブロックする抗体が出来る。このため、T細胞の受容体を抗体がふさぐため、本物の花粉が入ってきてもT細胞に刺激が与えられず、クシャミや鼻水など花粉症特有の症状が起きない。
人為的に花粉症を起こしたマウスで効果を確認した。新物質は分子量が小さいため口から飲み込んでも吸収され、経口薬になるという。」2001.2.15《日経産業新聞》
■抗体(IgA)
「2008年、医薬品受託開発のTTC(東京渋谷区)はと鳥取大学、久留米大学のチームは、唾液から花粉症に罹患しやすさを判定する方法を開発。
花粉症患者は口腔内にある抗体量が半減していることを見つけた。研究チームは腸管や口腔内で細菌などに感染したときに働く『IgA』という特異的な抗体に着目。花粉症患者と健常者の口腔内の粘膜や唾液などに含まれるIgAの量を比較したところ、花粉症患者では半減していた。
IgAと花粉症との関連が見つかったのは初めて。詳細なメカニズムはまだ不明。
現在の花粉症患者の検査には、血液を採取して花粉症などのアレルギーがあるときに増える『IgE』という抗体を調べるのが一般的。」


【ワクチン】
「スギ花粉症のアレルゲンを作る遺伝子を注射して完治を目指すDNAワクチンが開発された。国立感染症研究所の坂口雅弘主任研究官らが2004年2/21までに開発。犬の実験で、3回の投与で症状を数年間抑えることに成功した。
DNAワクチンは、重い病気に限って臨床研究が求められている遺伝子治療の一種。」2004.2.21《日本経済新聞》

【栄養療法】
*ビタミンC---3000mg以上/1日
*乳製品を控えめに
*精製食品を減らす
  
【芳香療法】
    <1>カミルレ
    <2>メリッサ
    <3>ラベンダー
    <4>ユーカリ
    <5>バラ水(充血した眼に)
    <6>カミルレ浸剤(充血した眼に)
【色彩療法】
    <1>レモン色
    <2>青緑色
    <3>青色
【宝石療法】
    アンバー
  

【漢方薬】(花粉症)
■葛根湯加川きゅ辛夷
■過敏性鼻炎湯
■桂枝人参湯
■蒼耳益気湯
■麻黄附子細辛湯  
     
◎花粉症、脱対症療法へ
「ダニアレルギーと並んで多くの日本人を悩ませているのが花粉症アレルギー。根本的に治す治療法はなく、花粉に触れるのを防いだり鼻炎症状を抑えるなど対症療法に頼っているのが現状だ。花粉アレルギーもダニと同様に減感作薬の開発が進んでいる。
明治乳業ヘルスサイエンス研究所は、スギ花粉アレルギーを減感作療法で治療する新薬の候補物質を開発した。候補物質は花粉疾患者の多くがアレルギー反応を引き起こす花粉の成分である『Cryj1』と『Cryj2』という2種のペプチドを基に合成した。これらのペプチドからアレルギー反応を引き起こす原因になる部分を除き、減感作を示す部分だけをのこした構造になっている。試験管内の実験では減感作作用があることを確認している。
ただ、減感作療法には副作用の危険があり、治療にも時間がかかり過ぎるという課題がある。花粉やダニから抽出したたくさんのタンパク質をまとめて投与していたのでショック反応の恐れがあり、一度に少しずつ歯科投与出来なかった。このため治療期間が数ヶ月から数年に及び途中で治療をあきらめる患者も多く、減感作療法の普及を妨げていた。
明乳が開発した候補物質はショック反応がないとみられるため、大量投与が可能で短時間の治療が見込める。研究グループは同様の薬剤をヒノキ花粉症にも応用したいと考えている。
熊本大学大学院医学研究科脳・免疫統合科学系の松下祥助教授らはアレルギー反応を抑える働きを持つ免疫細胞を効率よく刺激するペプチドの合成に成功した。ダニや結核菌に含まれるペプチド分子を一方の端から削って短くすると、通常の長さのペプチドよりも免疫細胞と欲反応する事が分かった。「治療効果が高い減感作薬として有望」と松下助教授は期待している。
ペプチドを生産する遺伝子を患者に注射してアレルギーを抑える遺伝子治療を開発する動きもある。国立感染症研究所の坂口雅弘主任研究官らは、明乳のグループが利用した「Cryj1」の遺伝子をネズミの筋肉に注射した。この遺伝子はネズミの体内に留まり、長期間にわたって「Cryj1」を作り続け、減感作作用を示した。遺伝子治療はペプチドを注射するより、効果が長続きするという。
減感作療法以外の治療法の開発も活発になっている。三共は林原と共同で、スギ花粉のアレルゲンタンパク質に糖鎖を結合させた花粉症治療薬を開発した。年内にも厚生省に承認申請する方針という。」1999.7.15《日経産業新聞》
■乳酸菌成分
「日本赤十字社和歌山医療センター榎本雅夫耳鼻咽喉科部長らの研究グループは乳酸菌から抽出した物質が花粉症の症状軽減に効果があることを見つけた。花粉症に悩む患者に服用してもらい試したところ、鼻づまりやくしゃみ・鼻水などの症状が軽くなったという。ニチニチ製薬が乳酸菌から抽出したLFK。」1999.11.6《日本経済新聞》
■ディーゼル排ガス
「ディーゼル車の排出ガスとスギ花粉症との関連を調べていた東京都の調査委員会は2003年5/27、「排ガスに含まれる微粒子が花粉症の発現や悪化に影響を及ぼす可能性がある」との調査報告書をまとめた。
調査は医師や大学教授ら約30人が参加し、2001年9月から2003年3月まで実施。花粉症患者の血液を実際に用いて試験管内で排ガスの微粒子を加えた実験では、症状を発現・悪化させる物質を増やすことが判明した。
また、ラット(大型ネズミ)を使った実験では、妊娠中の親ラットや免疫機能が未発達なほ乳期の子供ラットに一般大気中の10倍濃度の排ガスを浴びせると、子供ラットが花粉症になりやすい体質になることが分かった。」2003.5.28《日本経済新聞》





鎌状赤血球貧血
⇒赤血球が鎌状化などの奇形から、溶血性貧血を起こす。
◎黒人のみに現れる慢性遺伝性疾患。


 
■全身に影響
「肩凝り・腰痛に悩んでいる人は一度、歯のかみ合わせそ調べてみてはーー。最近、歯のかみ合わせの悪さが原因で様々な病気になることが分かってきた。腰痛など口から離れた場所の症状も起きる可能性があるという。かみ合わせの悪さが体のバランスを崩し、その影響が全身に及ぶためだ。歯並びの矯正や抜歯をするときにもかみ合わせが悪くならないように注意する必要があるという。
東京都中野区の林歯科医院。同病院の林晋哉医師のところには、口を開けにくい開口障害や顎関節症を患った患者が全国から訪れる。林医師は歯の治療を噛むという動作全体で捕らえて診察している。「歯を治療するには削ったり、詰めたりするだけではなく、噛むという一連の動作をみてかみ合わせを調べる必要がある」と強調する。
●ガム使ってチェック
人は歩行と同じように成長するに連れて噛む能力を身につける。たとえ歯並びの悪い人でもその人なりのかみ合わせを長い年月をかけて体得している。林医師は「安易に歯並びを矯正すると、長い間かけて獲得したかみ合わせのバランスを崩しかねない。治療には注意が必要」と言う。
正常なかみ合わせとは「最小限の力で軽やかに噛めること」(林医師)。善し悪しはガムを使った簡単な方法で調べられる。ガムを口に入れて何気なしに数分噛んでみて、左右の奥歯を均等に使って噛んでいればほぼ正常。ガムを噛む回数がどちらかの奥歯に偏っている人は噛み合わせが悪い可能性が高い。あごに痛みを伴う場合などには治療が必要だ。
かみあわせの悪さと肩凝り、腰痛などの全身の症状のつながりは「風が吹けば桶屋が儲かる」式の関係にある。例えば、虫歯の痛みなどで左側ばかりで噛む癖がついている人について考えてみよう。
左でばかりものを噛む人は、左側の口を動かす筋肉(咀嚼筋)が発達する。咀嚼筋は、頭と顎の骨の間についているので、左で噛み続ける人は顎の左側が引っ張られ、頭は左側に傾いてくる。すると体は頭のバランスを保とうと右側の頭を支える筋肉を強く働かせる。こうした状態が続くと首や肩、背中に痛みやコリが生じることになる。
●内臓疾患の可能性も
背骨のゆがみや腰痛、ひざ痛なども、かみ合わせバランスを保とうとする体の反応の現れだという。背骨が傾いたために内臓が圧迫され、内臓疾患を患う可能性も指摘されている。実際、京都府立医大でイヌの右側の歯を人為的に削る実験をしたところ、イヌは顎関節症になり、右後ろ脚の筋肉が衰え、骨盤が湾曲してしまった。
和歌山市で歯科医を営む上西真充医師は、かみ合わせの悪さが病気につながる原因として、脳と噛む銅だの関係を指摘する。噛むとうy動きは三叉神経という脳に直結した太い神経によってコントロールされている。かみ合わせが悪いと三叉神経を通じて脳にストレスが24時間送り続けられ「不眠症や自律神経失調症の原因になる」(上西医師)という。
上西医師がかみ合わせの治療に使っているのは、マウスピース状のプレートだ。これまで同じ良い温清飲名プレートはあったが、かみ合わせる時に歯の高さを微調整出来るように改良を加えたのが特徴という。夜寝ていても装着することで、例えば片側だけで噛む人の筋肉の偏りを補正する。ただ、保険の利かない自費治療なので、25~40万円程度の費用がかかる。
●顔の筋肉マッサージ
林医師は専用器具に頼らない簡易な療法として、咀嚼するときに使う筋肉のマッサージを勧める。咀嚼筋のマッサージは、緊張した際に自然に奥歯を噛んでいるかみしめや夜中の歯ぎしりに効果が高いそうだ、
方法は至って簡単。両手をほおに当てて奥歯を強く噛むとピクと動く筋肉とこめかみの当たりの筋肉を手でマッサージするだけだ。とにかく自分がかみしめているなと感じたらマッサージする。咀嚼筋をゆるめるには割り箸を口にくわえる方法もある。割り箸を軽く口にくわえるだけで、口の周りの筋肉が自然にゆるむ仕組みになっている。

■歯列矯正
「きれいな歯並びは健康のもとだ。かみ合わせが悪い不正咬合になると、食べたり話したりするのが不自由になる。治すには歯列矯正を行うが、かみ合わせが過度の悪いときには顎の骨をずらすなどの外科的処置をしなければならない。「歯の機能を高めるためにも、不正咬合は若いときに治すことを心がけて欲しい」と東京歯科大学水道橋病院口腔外科の柿澤卓教授は話す。



仮面うつ病
⇒身体症状によて精神症状がマスク(仮面)されているという意味で、仮面うつ病と呼ばれている。

◎症状:  
①便秘や食欲不振などの消化器症状、
②頭痛・めまいなどの神経症状、
③身体各部の慢性的な痛みなどの身体症状を主として訴え、ゆううつな気分についてはあまり訴えない人。

◎最近多いのは、
ゆううつな時にそのことをそれほど自覚せず、『むやみに食べてしまう』タイプである。鬱病患者が『過食』をするなど以前はほとんど考えられていなかった。1997.7.7《日本経済新聞》
 

■叱咤激励は逆効果
「43歳のE氏はめでたく課長に昇進した。そのことを家族は喜んだものの、几帳面で責任感が人一倍強いE氏は、ひどく重荷を背負ったように感じたという。   それ以来、彼はどことなく体調がすぐれなくなった。
「頭が重い」「手足がしびれる」「疲れやすい」と訴えて、会社を休みがちになった。心配した家族は、E氏を連れて内科を受診した。各種の身体的な検査をしたが、何も問題はみられない。内科医はうつ病を疑い、精神科を紹介した。
E氏は、主に身体の症状を訴えている。よく聞いてみると睡眠障害があり、気力の衰え、活動力の低下も見られた。とりわけ睡眠については熟睡出来ず、明け方早々に目が覚めてしまう。また、具合が悪いのは特に午前中で、午後はいくらか良いようである。
私は、仮面うつ病と診断し、抗ウツ剤を処方した。また、しばらく会社を休み、家庭で静養するように伝えた。E氏の状態はしだいに改善し、2ヶ月ほどで職場に復帰することが可能となった。
復帰にあたり、これまで仕事に全力を出していたところを80%でとどめ、あとの20%は余力として取っておくように、アドバイスした。幸い彼は盆栽という趣味をみつけ、私生活と仕事にバランスをうまく取れるようになり、いまだに再発していない。
『仮面うつ病』とは、身体症状という仮面をかぶったうつ病のことである。身体の症状を主に訴えるため、本人はもちろんのこと、家族も周囲も「うつ病」とは思わず、内科や婦人科などを受診するのは普通である。
しかし、仮面に隠れた本体はうつ病なのだから、身体の症状に見合った対症療法をいくら続けても改善しない。何よりも鬱病の治療が必要なのである。もし適切な治療をしないと、場合によっては「自殺」という不幸な事態に至る こともあるので注意をしなければならない。
身体の症状という仮面をかぶってはいるものの、よく見れば鬱病本来の姿は分かるものである。睡眠障害などの他に、食欲や性欲なども衰えたりする。家蔵や周囲は本人の態度や言動の変化に気を付けて見て欲しい。「何となく元気がない」「口数が少なくなった」「外出したがらなくなる」というような変化がみられるはずである。
こうしたとき、家族や周囲は「がんばれ」といった激励をしがちだが、慎んでほしい。叱咤激励は本人を追いつめることになり、鬱病を悪化させかねない。」      (賀陽濟・北山研究所顧問)1997.10.6《日本経済新聞》




仮面様顔貌
⇒顔の皮膚が硬くなって、表情が乏しくなり、お面をかぶったような顔をいう。鼻 はとんがり、口はすぼまり、口の周りに放射状のシワが出来る。


寡黙(かもく)
  【漢方薬】
■甘麦大棗湯


逆流性食道炎(胃食道逆流症)
○胃酸が食道に逆流して[胸やけ][胃もたれ][ゲップ]などの症状を引き起こす。

患者
・食道の機能が低下した高齢者
・脂肪が多い肉料理を食べると胃酸が活発に出る

医薬品
・プロトンポンプ阻害剤・・・「タケプロン」「パリエット」
・H2ブロッカー

■欠かせない内視鏡検査
「胃食道逆流症の診断に欠かせないのが、内視鏡による検査だ。粘膜のただれの程度によって、4段階に分ける「ロサンゼルス分類」という方法が重症度を区別する目安にされている。
A:5mm以下の炎症
B:5mm以上の炎症、別のひだとは連続しない。
C:炎症が2つ以上のひだに連続
D:全周性の炎症。

■「pH検査」で症状把握
「みぞおちの辺りが締め付けられるように痛んで、病院に駆け込んだ中年男性。自分でもてっきり『狭心症』による心臓発作と思いこんだ。実際に、緊急にニトログリセンリンを処方され、症状は軽くなった。
ところが後日、心電図検査や運動負荷試験を受けても、ちっとも異常が見つからない。「あんなに激しい痛みだったのに」。なかなかつかない診断に、不安は募るばかり・・・。
「痛みの原因は、食道への逆流した胃酸の刺激によるものでした。ニトロが食道のケイレンを抑えて一見効いたように見えたため、診断をややこしくしました。このような非心臓性胸痛には、胃食道逆流症が関わっているものが多くあるようです」と、慈恵医大外科教授の青木照明さん(63)は解説する。
胃食道逆流症は、“胸やけ”や“胸の痛み”、胃酸が口に上がってくる“呑酸”や“就寝中の激しいセキ”など様々な症状を引き起こす。しかし、症状のひどさと、内視鏡で見られる食道の粘膜傷害の程度は、必ずしも一致しない。
そこで、より客観的に胃酸の逆流が起きている状態を把握するために行われるのが、『24時間pH(水素イオン指数)モニタリング』検査だ。
千葉県柏市の主婦A子さん(52)は、10年ほど前から胸やけに悩まされていた。甘いものが大好物だが、イモ類を食べた後は胸をかきむしりたいぐらい胸焼けした。
薬は飲んでいたが、日によって調子が良かったり悪かったり。そのうち、床の拭き掃除で前かがみになるのも胃酸がこみ上げて、つらくなった。
昨年10月にしないの森永胃腸科外科を受診。内視鏡検査での粘膜傷害は、軽度から中程度にあたるBランク。しかし幸福部のX線検査では、逆流症を起こす要因である、胃の上部が横隔膜の上に飛び出す“食道裂孔ヘルニア”が進んでいることも分かった。
24時間pHモニタリング検査は、直径1mmほどの細い管を鼻から通し、pHセンサーのついた先端部を胃の部分に、そこから5cmほど手前のもう1つのセンサー部分が食道部分に当たるように固定する。
食後の状態や寝ている間の逆流の様子も把握するために、センサーをつけたまま普段どおりに食事をしたり、睡眠をとる。pHのデータは小型テープレコーダーほどの大きさの装置に記録される仕組みだ。
胃の中は強い酸性を示すpH2前後で、食道では通常pH6~7の、ほぼ中性を示す。森永胃腸外科で主治医を務める慈恵医大外科講師の小村伸郎さん(36)は、「逆流の程度をみるには、食道のpHが4以下だった時間の割合を目安としますが、A子さんでは1日のうちの15.8%でpH4を下回っていました。」と説明する。
健康な人でも食後には一時的な逆流が起きるものの、pH4以下の時間が4~8%なら軽度の逆流症、8~20%で中程度、20%以上なら重度の逆流が起きているとされる。
「このひどい胸やけは、胃酸の逆流のせいか」
A子さんは。以前に耳にした手術の説明を聞くことにした。」
■根治には手術が必要
「胃酸の逆流は、食道と胃のつなぎ目にあたる下部食道括約部が、何らかの理由で緩んでしまうために起きる。
胃酸分泌抑制剤は良く効くが、逆流そのものを治すものではないため、服用を止めると再発することも多い。このため根治療法となるのは、食道と胃のつなぎ目を胃の内容物が逆流しないように締め直す『噴門形成術』と呼ばれる外科手術だ。
慈恵医大外科助教授の柏木秀幸さん(46)は、「胃食道逆流症に対する噴門形成術はこの10年で腹腔鏡手術が標準的な方法になりました。日本ではまだ症例数が少ないものの、開腹手術と変わらない成績を上げています」と説明する。
胃食道逆流症によるひどい胸やけの症状に長年悩んできた千葉県柏市の主婦Aさん(52)は、昨年12月、腹腔鏡による手術を受けた。
10年ほど前からひどい胸やけに悩まされ、脂っこい食べ物は避けるなど食事に気を付けたり、胃酸を抑える薬を飲んだりしていたが、日によって良かったり悪かったり、務めていたスーパーの仕事が出来ないほど症状が悪化したことや、検査の結果でも胃酸の逆流がひどいことがはっきりしたこともあって、手術を決断した。
腹腔鏡手術は腹部に5カ所の穴を開け、そこから電気メスや超小型のカメラが千単位着いた棒状の器具を差し込み、モニターに映し出される内部の映像を遠隔操作して手術する。胆石の手術などではかなり普及している方法だ。
腹部に残る傷跡は2カ所が直径12mmで、残り3カ所は直径5mm。A子さんは、事前に手術のやり方を映したパソコン映像を見せられながら説明を受けた。「手術というと、おなかを切った跡が残るのが心配でしたが、これで安心できました」と、話す。
重症の胃食道逆流症の患者では、胃の一部が横隔膜の上に飛び出してしまっている食道裂孔ヘルニアを起こしているケースが多い。
このため、A子さんの手術では、まず胃の位置を横隔膜の中にきちんと収まるよう下げた後、亀裂を修復。そのうえで、胃の上部を襟巻きのように食道の下部に巻き付け、緩んだ食道の下部を締め付ける、噴門形成が行われた。
手術は2時間ほど。1週間後の退院時に行った24時間pH(水素イオン指数)モニタリング検査では、手術前には15%あった胃酸逆流時間が全く消えていた。A子さんは「胸やけはすっかり無くなり、薬も飲まなくてもすむようになった」と、満足している。
課題もある。食道の下部を締めるので、逆流が無くなる代わりに、飲み込みは手術前に比べ悪くなる。A子さんは、「特にウドンやソバは要注意で、手術して間もない頃は、以前の様に噛まずに飲み込んで喉を詰まらせたこともある」と笑う。
   ■「喘息」悪化に関係か
「気管支喘息など呼吸器疾患にも、胃酸の逆流との関連が注目されている。
喘息の発作をたびたび起こして赤穂市民病院(兵庫県)に通院治療していた女性(81)。胸がムカムカするといった胸やけの症状もあったため内視鏡検査をしたところ、胃食道逆流症による重度の食道炎が見つかった。
主治医である呼吸器科部長の塩田哲広さん(40)が、胃酸の分泌を抑える薬[H2ブロッカー」を出したところ、胸やけは治まった。それと同時に、思いがけず喘息症状も軽くなってしまった。
塩田さんは「喘息だけの治療では、一定以上、症状が改善しなかった。胃酸の逆流が、喘息の悪化に関係があるのではないか」と、北野病院(大阪市)の消化器内科部長の中村武史さん(46)と協力。喘息患者に、より強力な胃散分泌抑制薬(PPI)を投与し、症状が良くなるかどうかを調べた。
するとい18人のうち2人に、症状の変化が見られた。重症の食道炎があった69歳の男性患者は、呼吸機能を示す数値(ピークフロー値)が明らかに改善。8週間で胃酸分泌抑制剤を止めると元の状態に戻ってしまい、薬を再開すると再び良くなった。中村さんは「胃酸の逆流が喘息症状を悪化させる一因となる場合があるようだ」と話す。
さらに、幌南病院(札幌市)内科主任医長の鈴木潤一さん(46)が、気管支喘息で通院している約100人の患者を調べたところ、65%の患者が胸やけなどの症状を訴え、食道の酸性度を調べる検査では75%に異常な逆流が認められた。
胃酸の逆流と喘息の関係や仕組みについて様々な説があるが、鈴木さんは「食道に逆流した胃酸の刺激が自律神経を通して、間接的に喘息の諸症状を引き起こすのか、あるいは気道に吸い込まれて直接刺激するのか、どちらかとするセルが有力」と説明する。
●ピロリ菌除菌後に発症も
一方、胃潰瘍などの原因となるヘリコバクターピロリの除菌後に、胃食道逆流症が増えることも注目されている。
広島大内科講師の春間賢さん(49)らが、ピロリ菌の除菌治療をした約300人について調べたところ、約10%に軽症の食道炎が発生していた・
ピロリ菌が住み着いているのは胃の粘膜だけで、食道から検出されることは無いため、直接的に食道炎の発症に関わっている訳ではない。
除菌治療の前後で胃液の酸性度を調べたところ、胃炎のために、酸性度が弱くなっていた例では、除菌後、逆に、酸性度が強まり、本来のレベルにまで回復していた。
このため、除菌治療後に食道炎が発生するのは、ピロリ菌の除菌によって、胃酸分泌が活発になり、逆流につながったのではないかと見られる。
「せっかくピロリ菌を除菌しても、今度は胃食道逆流症が生じてしまうこともある。除菌すべきかどうかは、患者さんの症状で身長に判断すべきだ」と春間さんは指摘する。
実際、逆流性食道炎の患者は、ピロリ菌の感染率が、同世代の平均に比べ、半分程度という報告もある。中高年世代で、ピロリ菌の感染率が7、8割と極めて高いことが、欧米人と比べ、日本人の逆流症が少ない原因の1つになっているようだ。
だが、若年層のピロリ菌感染率は欧米人並に低くなってきている。それだけ《日本経済新聞》、今後さらに増えると見られる胃食道逆流症への対策⇒、生活の質をさあ有する重要な課題となっている。」



 体が黄色い
【漢方薬】
■茵蔯蒿湯
■厚朴半夏湯(傷寒で発汗後に腹満)
■四順丸(太陰病で腹痛、自利し渇かない)
■四順理中丸(太陰病で腹痛、自利し渇かない)
■四順理中湯(腹痛、自利)
■治中湯(太陰病の腹痛)

 

体がだるい   
⇒からだが重だるい、体が重い。
【漢方薬】
■蒿芩清胆湯
■五苓散
■柴胡桂枝乾姜湯
■四逆加人参湯
■小建中湯
■小柴胡湯
■参蘇飲
■真武湯
■竹葉石膏湯
■当帰建中湯
■八味地黄丸
■白虎加人参湯
■防已黄蓍湯
■木防已湯
■薏苡仁湯
■苓桂朮甘湯
■苓姜朮甘湯
■六一散

         

 からだの色
   ⇒体の色

【漢方薬】
■茵蔯五苓散・・・・(黄色い)
■温清飲・・・・・・(充血、皮膚黒(黄)褐色)
■梔子柏皮湯・・・・(身黄、発熱、腹満なし)


 体の節々が痛い
【漢方薬】
■桂枝加葛根湯   
■桂枝加竜骨牡蠣湯
■桂枝湯
■桂麻各半湯
■柴胡桂枝湯
■十味敗毒湯
■小建中湯
■升麻葛根湯
■参蘇飲
■疎経活血湯
■当帰四逆加呉茱萸生姜湯
■人参湯
■麻黄湯




 体の衰え
■20代女性
「“20代女性の80%以上がからだの衰えを感じている”・・・・・。明治製菓のヘルス・バイオ研究所(埼玉県坂戸市)が実施した「現代女性の体の衰えに関する意識調査」でこんな結果が出た。明治製菓では「食生活の乱れやストレスにより、体の負担が重くなっているようだ」と分析している。
体の衰えを感じている割合は20代・・・・80%、30代以上・・・90%を超えた。衰えが始まる年齢を聞いたところ、平均は32.3歳となった。
『体力の衰え』・・・・75%
『肌の衰え』・・・・・・63%
『体形の衰え』・・・・58%
     50代以上では、「記憶力」や「集中力」といった『脳の衰え』を自覚する人     が多かった。
調査は6月下旬、首都圏在住の20歳以上の女性を対象にネットで実施、3     600人から回答。2003.7.29《日経産業新聞》




 加齢臭
   ■ノネナール
古本やローソク・ポマードのニオイに例えられることが多い加齢臭。ニオイの元になるのが[ノネナール]と呼ぶ物質。皮膚にある皮脂腺のなかで脂肪酸の一種である[9-ヘキサデセン酸]が増え、過酸化脂質と反応して分解されるとできる。
40歳以上に特有の体臭であることが分かった。「オヤジ臭」と呼ばれることもあるが、実は女性の体からも見つかる。
ノネナールは一般的に加齢とともに量が増える傾向にあるが、個人差が大きい。皮脂腺の中で脂肪分がたまると増えやすい。以下に注意しよう。
・食事は肉類が中心
・毎晩のように酒を飲む
・しょっちゅうタバコを喫煙
・睡眠不足
・運動不足
・ストレスがたまる・・・体内の活性酸素が大量に増えて、過酸化脂質が増えることでノネナールが増加する。
[9-ヘキサデセン酸]の元になるもの・・・・「脂質」
・肉類
・マヨネーズ
【対策】
      ・野菜や果物をたくさん食べる(ビタミンC,E)
      ・緑茶(カテキン)・・・抗酸化物質が修復
      ・大豆(イソフラボン)・・・抗酸化物質が修復


 川崎病
   mucocutaneous lymph node syndrome
=全身の動脈に炎症が起きる病気。
主に4歳以下の乳幼児がかかる。年間の患者数は数千人。
日本川崎病研究センターの川崎富作理事長が1967年に発表した。
急に高熱が出て発疹や目の充血・手足の腫れなどの症状が出る。重症になると心臓にある冠動脈が炎症を起こして詰まり、急性心筋梗塞で突然死することもある。免疫グロブリン製剤の大量投与で血管が詰まるのを防ぐ治療法が普及し、死亡患者は激減した。」
   ⇒高熱が何日も続き、重症の心臓病後遺症を起こす場合がある子供の病気。
「1歳をピークに主に4歳以下の乳幼児にみられる急性熱性発疹性疾患で、川崎富作博士が1962年に初めて報告した。厚生省によると、70年から98年までに報告された患者数は約152700人。現在も年間6000人を超える患者が発生している。罹患率は漸増傾向にあり、98年の4歳以下の乳幼児の罹患率は10万人当たり111.7。全身の血管に炎症が生じるのが特徴で、冠動脈の拡大や瘤など、患者の3~7%に心臓の後遺症が発生する。治療法や検査阿呆の進歩で、致命率はピーク時の2.3%~0.03%まで低下している」1999.11.19《日本経済新聞》
   ◎主要症状:①5日以上続く発熱
   ②手足の硬いむくみ
         ③様々な形での発疹
         ④両目の結膜の充血
         ⑤唇や舌が真っ赤になる。
         ⑥首のリンパ節が腫れる。
       以上のうち5つ以上、又は4つでも断層心エコー法などで冠動脈にこぶが       見つかった場合、川崎病と診断する。(厚生省研究班)
   ■重症減ったが患者は微増
    「“まだ僕の存在に意味はありそうですよ”。川崎病を発見した川崎富作さん(73)     は、今も東京都内で日本川崎病研究センターを開き、患者や家族からの相談に     無料で応じている。北海道から九州、さらに東南アジアからも問い合わせがあ     る。この5年間で500件近くに上っている。
「川崎病という名前は知っているが、どうしていいか分からず戸惑っている     患者は相変わらず多い」と話す。
川崎さんが、重度の心臓後遺症が起きる病気を論文で報告したのは1967年。     10年以上も積み重ねた臨床経験からまとめた。以降、細菌やウイルスによる     感染説、免疫性の疾患説などが出ているが決め手はない。「根治療法がないだ     けに、どんな対症療法があるのか、病後管理はどうしたらいいかなどの相談に     応じている。多くの臨床経験が役立っている」と言う。
この病気は、5日以上高熱が続き、唇や舌が赤くなるなどの症状が出る。急     性期には1~2割の子供で心臓の冠動脈にコブ(冠動脈瘤)が出来、それが心     筋梗塞のもとになることがある。重症の場合はコブが残り、激しい運動が出来     ないなどの後遺症が残る。再発率は3%で、約半数が1年以内だが、10年後     の例もある。
発見当初、発症したこの100人に2人が死亡した。96年の調査では0.0     6人にまで下がった。血液製剤のγ-グロブリンによる治療が効き、冠動脈瘤     の発生率も半減した。
「熱が早く下がっても、その後に必ず心臓の超音波検査をやって、冠動脈の     状態を把握しなければいけない」と厚生省研究班長の原田研介・日本大学教授     は指摘する。
動脈にコブや炎症が出来ていないか超音波で調べるほか、階段の上り下りな     ど負荷をかけて心電図を調べたり、場合によってはカテーテル検査をしたりす     ることが肝心だ。(研究センター:03-5256-1121)1998.4.5《朝日新聞》
■NPO法人に
「日本の子供に多い、川崎病の原因解明をめざす日本川崎病研究センター(川崎富作理事長)が、このほど東京都から特定非営利活動法人(NPO法人)として認可された。
同センターは財団法人・生存科学研究所の協力を得て財団法人化を試みてきたが、不況のため条件のゆるやかなNPO法人に切り替えた。」1999.10.31《朝日新聞》
■溶連菌毒素が原因
「乳幼児に多く、心臓に異常を残すことがある川崎病について、日沼頼夫・京都大学名誉教授らの共同研究チームは、溶連菌が作り出す強い毒素の1つが病因である可能性が極めて高いとするデータをまとめた。患者38人の約8割で、この毒素が血液中の特定のTリンパ球を急増殖させていることを確認、これが全身で強い免疫反応を引き起こし川崎病特有の症状が出る、とみている。同チームでは発症までのメカニズムの解明を進め、診断・治療・予防の研究につなげたいとしている。
今回の成果は19日から広島市で開く日本川崎病研究会で発表する。
共同研究チームは日沼名誉教授が相談役を務める塩野義製薬の医科学研究所免疫研究部門(鈴木隆二博士)と和歌山県立医科大学小児科(小池通夫教授)のメンバー・
原因と見ているの物質は、溶連菌(A群連鎖球菌)外毒素(SPEC)と呼ばれるタンパク質。チームはSPECが特定の2種類のTリンパ球を急増殖させる結果、強い免疫反応が起き、発熱・目の充血・イチゴ舌・発疹・紅斑・頸部リンパ節腫脹・血管炎などの症状を引き起こすとみている。
2種類のTリンパ球は[Vβ6.5][Vβ2]遺伝子の受容体(抗原の刺激に応答する部分)を持ち、チームはSPECがこれらのTリンパ球を1000倍以上に急増殖させる事実を、健康人の血液を使い試験管内で証明した。
また95~96年に和歌山県内で発病した患者22人全員が溶連菌に感染していることを確認。さらに発病後1週間以内で治療前の22人を調べた結果、13人で[Vβ6.5]のリンパ球、9人で[Vβ2]のリンパ球が急増していた。少なくとも[Vβ6.5][Vβ2]のいずれかが急増殖していた患者は17人(77.3%)に上った。
今年これまで発病した同県内の患者16人の検査でも、13人(81.3%)でいずれかが急増していた。一方,
99年発送の患者34人について、HLA(ヒト組織適合性抗原)を調べた結果、12人(35.3%)に特定のタイプ(0901型)が見つかった。このため、リンパ球と密着するHLAも発症のメカニズムに重要な関係を持つとみている。」
[溶連菌]
溶血性連鎖球菌の略称。ヒトに感染するものの90%はA群連鎖球菌で、代表的な感染症には猩紅熱・丹毒・リウマチ熱・急性糸球体腎炎などがある。1999.11.19《日本経済新聞》
■人工抗体
「国立感染症研究所の鈴木和男室長らは、[肺炎][川崎病]などの治療に使えそうな人工抗体を開発した。血液から分離して作る免疫グロブリンに比べて、ウイルス感染に恐れがない。
感染研生物活性物質部の鈴木室長らは、遺伝子組み換え技術を利用して大腸菌にヒトの抗体を作る技術を確立した。
ヒトの末梢血に含まれているリンパ球から抗体遺伝子を取りだし増幅し、1億種類以上の抗体遺伝子を集めた。これらを大腸菌に組み込んで大量培養する。できたタンパク質の分子を解析すると、ヒトの抗体が出来ていることが分かった。
同じ手法でマウスの抗体を人工合成し、全身の血管が炎症を引き起こす血管炎に罹ったマウスの治療に成功している。
免疫グロブリン製剤は、「川崎病」や高齢者で増えている難治性血管炎、肺炎をはじめとした重症感染症治療に使われている。ただ献血されたヒトの血液を原料とするため、未知のウイルス感染を完全に除くことが不可能。」
  川崎病の漢方薬
温清飲
やや急性期を過ぎて、発熱、発疹、結膜充血、不眠などを目標に用いる(漢方診療医典)
黄連解毒湯
川崎病の初期、発熱、発疹、結膜充血、不眠などを目標に用いる(漢方診療医典)
五苓散
急性期の浮腫に用いる(漢方診療医典)
柴胡桂枝湯
川崎病の回復期に用いられる。胸脇苦満、食欲不振、反復性上気道炎を目標に用いる(漢方診療医典)
十全大補湯
慢性期の体力低下、盗汗、食欲不振を目標に用いる(漢方診療医典)
補中益気湯
慢性期の体力低下、盗汗、食欲不振を目標に用いる(漢方診療医典)



関格(かんかく)
=食物が食道に滞って苦しむを云う。大小便秘閉、腹満して湯水おさまらざるを云う。《古今方彙》
⇒邪が六腑にあると陽脈が和せず、陽脈の不和は気が留し、気が留すると陽脈が起 こる。邪が五臓にあると陰脈が起こる症。
陰気が大盛すると陽気は立ち上がれないので格する症。
陽気が大盛すると陰気は立ち上がれないのを関といい、
陰陽が共におき、その作用をなさないと関格となる。
関は小便不通、格は吐逆。
関は熱がなく、格は冷える症状。
関は息を吐き出せない症、格は息を吸い込めない症。
  

【漢方薬】
■枳縮二陳湯[2]《寿世保元》
■大承気湯
    洗熨法
    二陳湯
    檳榔益気湯《証治準縄》
    芒硝湯・・・・・・(関格不通を治す)
    補中益気湯檳榔・(中焦の虚弱者)
    補中益気湯木香・檳榔(中気が弱く、吐瀉)




関節炎    arthritis

   ◎関節炎(arthritis)は厳密には“関節の炎症(joint inflammation)”を意味します。    関節炎基金(the Arthiritis Foundation)によると、関節痛及び炎症を引き起こす疾患    はインフルエンザからある種のガンまで入れると100以上あります。しかし、    人々が関節炎といえば、それは通常は骨関節症(osteoaethritis)を意味します。
   ⇒関節炎は体の化学的なアンバランスから生じる病気である。関節炎の徴候を知ら せる直接の要因がどんなものであっても、体は尿酸を有効に排泄しなくなる。体 に毒素が溜まる原因に、
      ①ストレス・不安
      ②間違った食生活
      ③環境汚染などがあります。
     尿酸が結晶として間接に蓄積され、それが炎症・こわばり・可動性の喪失を引 き起こし、最終的には間接の表面に損傷を与えます。
◎種類:
     全身の病気から起こる関節痛には
       <1>リュウマチ。
       <2>痛風。
     個々の関節が痛むには、
       <1>五十肩。
       <2>変形性関節症。
         1.変形性股関節症
         2.変形性膝関節症
       <3>捻挫の後遺症。
   ◎浅田宗伯は、関節炎の初期は、[越婢湯][大青竜湯][続命湯]で発汗せしめ、慢性    になって疼痛のひどいもの、又は関節だけが大きく腫れて、他の処が痩せて細く    なったものには、[烏頭湯][桂芍知母湯]を用い、熱毒の激しい者には[千金の犀    角湯][当帰拈痛湯]を用いている。そして血によるものには、[桂枝茯苓丸附    子][桃核承気湯附子]を用いている。私は打撲の後遺症として、手足に神経痛    様の疼痛を訴える者には、[桂枝茯苓丸]や[桃核承気湯]を用いる《大塚敬節》
■DNA分解
「大阪大学の長田重一教授らのチームは、体内で不要になった細胞のDNA(デオキシリボ核酸)の分解がうまくいかないと関節炎の症状が現れることをマウス実験で確認し、2006年10/26付けのネイチャーに発表した。
マクロファージが不要になった細胞を取り込んでその細胞のDNAを分解する仕組みに注目。DNAを分解できないマウスを作り実験した。」《日経》
  【芳香療法】
     <1>沐浴とマッサージに用いて、毒素を体外へ排出するのを促進させる
        ①サイプレス
        ②フェンネル
        ③ジュニパー
        ④レモン
     <2>鎮痛効果がある
        ①安息香
        ②カミルレ
        ③ラベンダー
        ④ローズマリー
     <3>局所の血液循環を改善
        ①ブラックペパー
        ②ジンジャー
        ③マージョラム
  【ハーブ】
    ◎じんま誘導法(uritication)
「2000年前の聖書の時代にさかのぼって、そのネットル(“nettle”=イラクサ属の総称)の植物学名Urtica dioicaに由来しています。その方法は痛い関節にスティンギングネットルの刺毛で叩いて刺すのです。硬く腫れた関節をこの植物のトゲで刺すことで症状が好転するのです。長く伝承されてきた方法です。」じんま(蕁麻)=イラクサの漢名。
蕁麻誘導法は、しばしば著しい緩和をもたらします。数分以内に関節の腫れが軽減するのを私はまのあたりに見てきました。」p56
◎関節の炎症
「関節炎(arthritis)は厳密には“関節の炎症(joint inflammation)”を意味します。関節痛及び炎症を引き起こす疾患には100種類以上ありますが、人々が関節炎と言えば、それは通常は骨関節症(osteoarthritis)を意味します。
「ショウガ」
「パイナップル」
「トウガラシ」
「スティンギングネットル」
「オレガノ」
「ヤナギ」
「ニンニク」
「カンゾウ」
「ブラジルナット」
「ヒマワリ」
「ブロッコリー」
「ローズマリー」
「ビタミンC」
  【宝石療法】
アズライト
     銅のブレスレット(トレーシー・ジョンソン)
    <1>[クリソコラ]
    <2>[ガーネット・緑色の]・・原石のままではダメ。
    <3>[ベリドット・緑色の]
【民間療法】
    <1>アサガオ。
    <2>ドジョウ。
    <3>ヒガンバナ。
    <4>アオツズラフジ・ウシ・ウド・オオツズラフジ・クガイソウ・ゴボウ・サン ショウ・ショウガ・スイカズラ・ダイコン・ダイコンソウ・トウガラシ・ニ ワトコ・ハトムギ・ボタン。
    <5>[ドクダミサルトリイバラボタン]
    <6>[クワエビスグサハトムギ]
  【漢方薬】
    烏頭桂枝湯
    烏頭湯・・・・・・(固定性の強い痛み)
    烏豆湯・・・・・・(激しい痛み)
    越脾湯
 越婢加朮湯
    甘草附子湯
    桂枝加葛根湯・・・(虚証、自汗、項背がこる)    
    桂枝加附子湯
    桂枝加朮附湯・・・(四肢疼痛、麻痺)
    桂枝去芍薬加附子湯
    桂枝二越婢一湯
    桂芍知母湯
    痺湯
    五積散
    柴胡桂枝湯
    小活絡丹・・・・・(激しい痛み)
    小陥胸湯
    小青竜湯・・・・・(浮腫性)
    小続命湯
    朮附湯
    身痛逐湯
    疎経活血湯
    大黄牡丹皮湯
    大防風湯
    程氏痺湯
    当帰四逆湯
    当帰芍薬散
 二朮湯
    独活寄生湯
    白虎加桂枝湯
    白虎加蒼朮湯
    附子湯
 防已黄蓍湯・・・・(汗かき、小便不利
 防風通聖散
    防風湯
    麻黄加朮湯
    苡仁湯
●αー4000   
   ●秘方ー21
   
   ●サメ軟骨



 関節症 
  arthropathy
(参照→「変形性膝関節症」)
   ⇒栄養障害による関節の変形を起こす。炎症ではないので疼痛しない(変形性関節    炎との違い)。神経障害によることが多い。
   ◎脊髄癆性関節症:脊髄癆・脊髄空洞症のときに膝・股・肩・肘などの大関節が侵            されること。
  <1>炎症ではないので疼痛しない:(変形性関節炎との違い)
     <2>神経障害を起こすことが多い。
  【漢方薬】
    疎経活血湯


 関節水腫 hydrops of the joint
   ⇒関節は腫脹するが、関節周囲炎は伴わないので、輪郭は明瞭で膝蓋跳
     動を認める。膝関節に特に多い。
  【漢方薬】
    越脾湯
 越婢加朮湯
    九味檳榔湯
    小青竜湯
    疎経活血湯
    大青竜湯
    二朮湯
    防已黄蓍湯
    苡仁湯
【組み合わせ】
    <1>[スイセントウゴマ]


 関節痛
   ◎あちこちの関節が痛む疾患→「多発性関節痛」

│多発性関節痛 │     症状 │ 参考 │
│化膿性関節炎 │全身倦怠・発熱で始まり、局所│単発性が多いが、多発す│
│ │の発熱・発赤・腫脹・激痛をき│ることもある。 │
│ │たす。 │ │
│ │疼痛は拍動性で連動で増強する。│ │
│急性感染症 │頭痛・全身倦怠・筋痛・四肢痛│原疾患の症状が出る。 │
│急性白血病 │で始まり、次いで発熱と共に特│ │
│ │有の症状を示す。 │ │
│リウマチ熱 │扁桃炎に続発する。 │小児に多い。 │
│ │発熱と共に1~2個の関節の発 │心疾患・舞踏病を合併し、│
│ │赤・腫脹・発熱・疼痛をきたす。│治癒後、関節に異常は残│
│ │数日で他の関節に波及する。 │らない。 │
│ブルセラ症 │間欠熱が多い。 │職業・環境をチェック。│
│ │高度の発汗を示すことあり。 │赤沈、白血球数、 │
│ │筋痛・関節痛のみ示すことあり。│ブルセラ凝集反応。 │
│痛風 gout │健康な中年男性に突然発症。 │赤沈、血液尿酸、 │
│ │1~2関節に発赤・発熱・腫脹 │関節X線検査 │
│ │をきたし、2~3時間後激痛を │痛風結節生検 │
│ │起こす。 │ │
│慢性関節リウマチ│女性に多い。 │白血球増加。 │
│ │関節に疼痛・変形をきたし、慢│赤沈促進。 │
│ │性に経過する。 │CRP試験。RA試験。│
│ │微熱、貧血、栄養障害をきたす。│Waaler-Rose反応。 │
│骨関節症 │健康な老人に徐々に発症。 │慢性関節リウマチ・痛風に合│
│(osteoarthritis)│初め機能障害があり、続いて、│併することあり。 │
│ │運動時に関節が痛む。 │ │
│ │腰椎・股・膝関節に好発。 │ │
│ │関節に炎症はない。 │ │
│筋筋膜症 │中年以後に発症。 │痛みは朝軽く、運動で消│
│(fibrositis) │全身に多発したり、頸椎・腰椎│失し、夕方増強する。 │
│ │・肩・手首に限局したりする。│ │
│ │痛みは軽い。 │ │
│ │進行すれば強直を起こす。 │ │
│ │ │ │
「内科診断学」金芳堂 p180
   ◎関節に器質的障害を起こす疾患:
      化膿性関節炎
      病巣感染性関節炎
      リウマチ熱
      慢性関節リウマチ
      痛風
      骨関節症
      筋筋膜症
乾癬性関節症
【民間療法】
    ○アロエ・イノコズチ・オオツズラフジ・オオバコ・カイコ・サルトリイバラ ・スイセン・セキショウ・ゼンマイ・ドジョウ・ニッケイ・ニンニク・ネム ノキ・ハマボウフウ・ミミズ・ミヤマシキミ。
  【漢方薬】
    温経湯
    越脾湯
 越婢加朮湯
 葛根湯
    桂枝加朮附湯
    桂枝湯
    桂芍知母湯
    五積散
    柴胡桂枝湯
    大防風湯
    当帰芍薬散
    防已黄蓍湯
    麻黄湯
   ●秘方ー21
   ●αー4000


 関節内出血
   ⇒突然に激痛する。
    運動・起立で痛み増強し、腫脹・表皮の着色を見る。
   ◎出血素因をチェック:血友病に起こることが多い。
   ◎検査:出血時間
       凝固時間
       血小板数
       関節腔穿刺
       関節X線検査

 関節のこわばり
  【漢方薬】
    九味檳榔湯・・・・(硬直感)


 関節リウマチ articular rheumatism
   ⇒急性関節リュウマチ(独):リュウマチ熱(米・英)
    慢性関節リュウマチ(独):リュウマチ様関節炎(米・英)      
   ⇒膠原病の1つ。多数の関節を転々と移動する疼痛が主症状。
【民間療法】
    <1>アサガオ。
    <2>ドジョウ。
    <3>ヒガンバナ。
    <4>アオツズラフジ・ウシ・ウド・オオツズラフジ・クガイソウ・ゴボウ・サン      ショウ・ショウガ・スイカズラ・ダイコン・ダイコンソウ・トウガラシ・ニ      ワトコ・ハトムギ・ボタン。
  【漢方薬】
    越脾湯
 越婢加朮湯
 葛根加朮附湯
    甘草附子湯
    桂枝加朮附湯
    桂枝加苓朮附湯
    桂枝二越婢一湯白朮附子
    桂芍知母湯
    桂枝附子湯
    五積散
    柴胡清肝湯
    真武湯
    身痛逐湯
    疎経活血湯
    大防風湯
    二朮湯
    防已黄蓍湯
    麻黄細辛附子湯
    麻杏甘湯
    苡仁湯

  【組み合わせ】《螺王人》
    <1>[秘方21SQUALENE疎経活血湯]
    <2>[秘方21霊芝疎経活血湯]
  【臨床例】
    ☆54歳、主婦。
     「両膝の関節が腫れて痛いので、病院に70日間通ったが少しも効き目がない。      漢方がよいと進められて来院したという。
       以前に甲状腺が腫れ、そのあとで両膝の関節痛が起こったとの事。
       患者は色白で肉の軟らかい、水太りの婦人で、汗かきでよく霜焼けが出来      る由。食事は野菜を主にしているが、甘いもの、辛いものが好きである。便      通は秘結がちで、小水は近く、、夜も行くという。脈は浮いて、舌には異常      がない。腹診すると、腹直筋の緊張があり、下腹部を押さえると少し痛がる。      両足が冷たい。
 両膝の関節痛、水太り、汗かき、夜間尿、霜焼け、足冷などを、水分代      謝異常による湿痺と考えて、防已黄蓍湯麻黄を投与した。本方を2ヶ月ほ      ど服用すると、両膝の関節の腫れと痛みがすっかりとれて良くなった。」       《寺師睦宗》
■ニコチンが緩和→「ニコチン」
■薬を申請
「米製薬大手ワイスの子会社である日本ワイスレダリーは関節リウマチ治療薬「エタネルセプト」(一般名)について、厚生労働省に承認を申請した。患者に足りない体内物質を補い炎症を抑えるタイプ。
体内では通常、炎症を引き起こすタンパク質の一種「TNF-α」に血中を漂っているタンパク質「TEFレセプター」が結合。TNF-αの働きを抑え込んで過度の炎症を防いでいる。関節リウマリ患者はTNF-αに対しTNFレセプターが少ないという。
エタネルセプトはこのTNFレセプターと全く同じ物質で、人工的に作り出した『ヒト型TNFレセプター』。すでに「エンブレル」という製品名で45カ国で発売。2002.11.26《日経産業新聞》
■遺伝子特定
「体を守る免役システムが、逆に体の組織を攻撃して起こる関節リウマチの原因となる遺伝子の1つを、理化学研究所の山田亮研究員らが特定し、2003年6/30付けのネイチャー・ジェネティクスに掲載。
この遺伝子は、PADI4と呼ばれ、体内にあるアミノ酸のアルギニンをシトルリンに変える酵素を作る働きがある。患者の血液中では、シトルリンを含んだタンパク質を攻撃する抗体が見つかっており、この遺伝子の働きを抑えたり、酵素の作用を阻害出来ればあたらな治療法になる。
山田研究員らは、関節リウマチ患者830人と、健常者736人の遺伝子を解析。患者が特徴的に持つ遺伝子を探した結果、PADI4が効率で見つかった。
この遺伝子には2タイプがあり、患者では酵素を作りやすいタイプを持つ人が多かった。」2003.6.30《日本経済新聞》
■原因菌を発見
「バイベンチャーのエムバイテックは関節リウマチの原因菌を発見した。特殊な炎症物質を作る菌で、4割近い患者の関節から見つかった。協和発酵の子会社である協和メディックスと炎症物質の検出試薬を開発中で、2006年2月にも試作品が完成する。臨床診断薬として承認申請する予定。
関節リウマチは自己免疫疾患の一種。患者に特定の抗生物質を投与すると「約4割が快方に向かう」と米リウマチ学会などが指摘し、原因菌探しが始まっている。
エムバイテックは患者の関節組織に含まれる遺伝子を解析し、『マイコプラズマ・ファーメンタス』という細菌を発見。この細菌が作る『GGPL3』と呼ぶ特殊な炎症性の脂質を見つけ、名古屋大学と共同でこの脂質の人工合成に成功した。
人工合成した脂質を鋳型に抗体を作製。抗体を使って患者の関節を調べ、4割近くの症例で関節組織中に炎症性脂質があることを突き止めた。
協和メディクスと診断薬を開発する。20061/5《産業》
■治療に道
「横浜市立大学」国際総合科学研究科の佐藤衛教授の研究チームは、関節リウマチの原因とされる酵素が、他のタンパク質と結合する仕組みを解明した。この酵素は結合相手を「改造」して、病気を引き起こすとされる。
関節リウマチの原因とされる『ペプチジルアルギニン。デイミナーゼ(PAD4)』という酵素が、ヒストンというタンパク質と結合する仕組みを調べた。
大型放射光施設「Spring-8」の強力なX線などを使うと、酵素とタンパク質の結合部分を詳しく観測できた。酵素がヒストンを構成するアミノ酸の1つを他のアミノ酸に置き換え、改造している様子も分かった。
関節リウマチの患者の患部ではこの酵素が過剰に働き、本来は改造しては行けないタンパク質まで改造する。その結果、本来は病原体などを攻撃する免疫システムが誤って患者自身を攻撃してしまう。今回の成果をもとに結合を阻止する化合物を見つけられれば、関節リウマチの治療薬となる可能性がある。
成果は2006年4/4の米科学アカデミー紀要に掲載。
■白血球除去療法
「関節リウマチは、体内に侵入した異物を排除するはずの免疫機構に異常が起こり、自分自身の体を攻撃することで発症すると考えられている。活性化した白血球が関節に入り込んで炎症を引き起こす物質を放出する。炎症が長引くと、軟骨や骨の破壊につながる。
白血球除去療法は活性化した白血球をフィルターで体内からこしとることで、こうした症状を軽減する。
①まず、ひじなどから血液を採りだし、体外循環させる。
②特殊なフィルターで活性化した白血球だけを取り除く
③反対側のひじなどから、処理後の血液を再び体内に戻す。
白血球は血液中からと取りだしても、体内で作られすぐに元の量に戻るため、目立った副作用はないという。1回の治療時間は約1時間。週に1回ベースで5回続けて受ける。治療後、3ヵ月程度は効果の持続が見込める。
この療法は、痛みや腫れを抑える効果は生物製剤(レミケード・エンブレム)には及ばないが、目立った副作用が出ないのが特徴。2004年4月から、医療保険の適用が認められるようになった。週1回の治療を5回受けると3割負担分で約23万円。高額療養費制度を利用して払い戻しを受ければ、最終的な負担額は7~14万ぐらいになる。
保険適用の条件は6ヶ所以上の関節が腫れているなど中程度以上の症状があることなど。」
■原因タンパク質
「佐藤衛・横浜市立大学教授らは、関節リウマチの原因とされるタンパク質の働きを妨害する化合物を開発し、試験管内の実験で確認した。
佐藤教授らは関節リウマチの原因とされる『ペプチジルアルギニンデイミナーゼ(PAD)4』と呼ぶ酵素(タンパク質)の立体構造を解析。このデーターを基に働きを妨げる化合物を設計した。
PAD4は患者の遺伝子解析から見つかった酵素で、遺伝子の働きを調整するタンパク質の構造を変える機能を持つ。
関節リウマチ患者では、PAD4が本来は影響を与えない別のタンパク質にも影響を与え、免疫異常を引き起こしていると見られる。
合成した化合物とPAD4などのタンパク質を混ぜて効果を調べた。その結果、PAD4のタンパク質の構造を変える働きを抑えることができた。X線解析で観察することもできた。20067/18《産業》
■飲み薬
「三菱ウエルファーマ、東京医科歯科大学は、関節リウマチによく効く「生物製剤」と同等の効き目が期待できる飲み薬の候補物質[Y-320]を開発。動物実験で効果を確認した。3年前に登場した生物製剤は症状が無くなるまで回復する反面、点滴や注射で投与する必要があるため通院や入院が必要。
関節に炎症を起こしたカニクイザル12匹に毎日、経口投与した。4週目から症状が良くなった。別の実験では生物製剤と同等の有用性も確認ズミ。生物製剤を投与した時の様な免疫力の低下を招いて感染症にかかりやすいという欠点も無かった。」200611/20《日経》
■治療薬・・・治験
「生化学工業は関節リウマチなどの炎症性疾患の治験を2009年から開始する。白血球の動きを抑えて炎症を治療する抗体医薬。[完全ヒト化抗体]から出来ている。完全ヒト化抗体は、ヒトが本来持つ抗体と同じ。遺伝子操作されたマウスから作る。異物反応が無いため、抗体医薬の効果が続き、副作用が少ない。動物とヒトの遺伝子から作られた抗体はキメラ抗体と呼ばれる。
炎症性疾患は白血球が炎症部位に集まることで悪化する。開発中の治療薬は白血球に炎症部位に集まる指令を出す物質『Vap-1』の働きを抑えて炎症を治療する。
従来の抗炎症薬は、白血球の一種のマクロファージが作り出すサイトカインと呼ばれる免疫性物質の発生や作用を抑えて、炎症を治す。サイトカインは異物からカラダを守る免疫機能を持つが、免疫機能を抑えすぎると感染症を引き起こす恐れがある。
関節リウマチ患者の約40%が従来の治療薬が効かないとされる。」
■検査
コニカミノルタエムジーが開発したX線撮影装置は「位相コントラスト」と呼ぶ技術を利用したもので、既存装置に比べ1000倍も鮮明に観測できるので、痛みが出る前に、関節に異常を発見できる。
健康診断で使われている装置はX線が骨などに吸収されて弱まることを応用して画像化している。しかし、吸収が弱い軟骨では輪郭がハッキリしない画像しか出ない。
位相コントラストはX線が物質を通過する際に生じるわずかな屈折を計測して画像化する。軟骨でも屈折が起きるので鮮明が画像が得られる200711/7産業
   ■治療薬
TNF-αをねらい打ちにする関節リウマチ薬[エンブレル]と[レミケード]は痛みを起こす原因物質に作用するため治療効果は大きく、販売量を増やしているが、副作用から従来の薬が効かない患者への処方に限られている。
約6割の患者には、[メトトレキサート][スルファサラジン]が使われている。メトトレキサートは「人によって効き方が全く違う」(鎌谷直之・糖巨言う徐痔医科大学付属膠原病リウマチ痛風センター所長)
2mg/週で効く人もいれば、15mgでも効かない人がいる。
スルファサラジンには白血球減少の副作用がある。
ためしてガッテン

関節リウマチ

2012年、12月12日

全身に激痛
骨まで破壊
進行を止められない

ほぼ日常生活が普通にできる=寛解

「早期関節リウマチ」 2008年から発症から6ヵ月に変更。
  超早期=2ヵ月
  早期=
2011年10月

サイトカイン(伝令役)の嵐(発症から6ヵ月で起きる)
      →免疫細胞を集める
→自分の滑膜を攻撃

超音波で調べる(エコー検査)・・・血流が増えている=炎症状態

生物学的製剤(注射)サイトカインを鎮める
病気の状態を改善するので、継続注射が必要。
免疫を抑えるので感染症に注意

痛くても動かすことで血流がよくなって改善する。
リハビリ=グーとパーをそれぞれ10秒×3回/日


 肝炎(かんえん)
    (→A型肝炎)(→B型肝炎)(→C型肝炎)(→自己免疫性肝炎)(→慢性肝炎)
    (→E型肝炎)(→アルコール性肝障害)(→薬剤性肝障害)(→傾眠症) 
   ◎肝臓:約3ポンド(1.36kg)の重さ。
   ◎肝疾患に伴う皮膚変化[望診]
     <1>手掌紅斑
     <2>クモ状血管腫
     <3>女性化乳房
     <4>ばち指
     <5>爪(白色爪white neil)
     <6>皮膚の色素沈着
     <7>黄色腫
     <8>便の色。
        1.溶血性黄疸----------濃い暗色。
        2.肝細胞性黄疸-------薄い色。
        3.閉塞性黄疸----------灰白色~白色。
   ◎肝疾患の種類:
     急性肝炎:A型肝炎
           B型肝炎
C型肝炎
           D型肝炎
           E型肝炎
           アルコール性肝炎
     劇症肝炎
     アルコール性肝障害
     薬剤性肝障害
     自己免疫性肝炎
     慢性肝炎
     肝硬変
     胆汁性肝硬変
     肝レンズ核変性症(Wilson病)
     ヘモクロマトーシス
     特発性門脈圧亢進症
     鬱血肝
     脂肪肝
     肝膿瘍
     ワイル病
     肝ガン
     肝寄生虫:日本住血吸虫症
           肝ジストマ
     Gilbert病
     Dubin-J0hnson症候群
 
   ■サイレントB型ウイルス(→C型肝炎)
   ■肝炎ウイルスに「7番目」が存在。
A型=食べ物などで口から感染。急性の肝炎のみで慢性にならない。
     B型=血液・性行為で感染。母子感染もある。
        急性肝炎のほか慢性感染し、肝硬変・肝ガンにも。
     C型=血液で感染。母子感染も。時に急性肝炎を起こす。普通は慢性感染し、        肝硬変・肝ガンに。
     D型=血液で感染。B型肝炎ウイルスがいないと肝炎は起きないが、急性肝炎        では激症化しやすい。
     E型=食べ物などで口から感染。日本での感染はまずない。急性肝炎のみ。
     F型=昨年インドのゲループが報告したが、その後報告が無く、詳細は不明。
     「肝炎を起こすウイルスはこれまでに、AからFまでの6つの型が報告されて     いる。日本にはA・B・C型が多い。
      しかし、厚生省の非A非B型肝炎研究班(班長:鈴木宏・山梨医大学長)の調     査によると、急性肝炎患者の25%、慢性肝炎患者の4%が、これら6種類の     ウイルス感染を確認出来ず、ほかにも未知のウイルスがあるのではないかと云     われていた。
      今年になって米国のアボット社のグループがGBVーC、ジーンラボ社のグ     ループがHGVという新しい肝炎ウイルスを見つけたと発表した、HGVはま     だ遺伝子の構造が公表されていないものの、両者はほぼ同じものとみられ、7     番目の「G」ウイルスとして注目されるようになった。
日本でも同研究班が全国18の医療機関から原因不明の肝炎患者の血清約      500人分を集め、新ウイルスの有無を調べる作業を9月から開始。その結果、     GBVーCのリボ核酸(RNA)遺伝子の一部が、12人から見つかった。さら     に、昭和大藤が丘病院の与芝真・助教授(消化器内科)らが過去10年間、激症     肝炎で同病院に入院した67人の血清を調べたところ、「Gウイルス」だけ見     つかった人が3人、C型と混合感染していた人が8人いた。
      同病院で激症肝炎の治療を受けた人の中で、死亡率はA型0%、B型25%、     C型50%だったのに対し、G型のみ見つかった人は100%、C型との混合     感染者は63%といずれも死亡率が高かった。
      このウイルスの感染経路はよく分かっていないが、動物実験でサルの仲間が     患者の血清から感染したことから、輸血での感染が疑われている。信州大の清     沢研道第二内科教授らが、同大の人工透析患者69人について調べたところ、     7人が「Gウイルス」陽性で、うち5人は輸血歴が有った。ただ、感染者らの     肝機能には今のところ、目立った異常はないという。
11月上旬に米国であった肝臓学会では、「感染者の40%は何の症状も出 ない」との報告があり、感染と症状の関係はまだよく分からない。同学会に参     加した岡上武・京都府立医大助教授(第3内科)は「肝炎患者が多い日本でこそ、     新ウイルスが病気にどう関係しているか突き止めるべきだ」と訴える。
  しかし、現在は、感染の有無を知るのに特殊な検査が必要で、一部の施設で     しかできない。1995.12.8《朝日新聞》より。」
 「原因不明の激症肝炎患者6人のうち3人が新型肝炎ウイルスに感染」。      11月に岡山市で開いた日本ウイルス学会で、自治医科大学の報告に注目が     集まった。肝炎ウイルスに詳しい東芝病院の三代俊治臨床研究室室長によると、     GBVーCは遺伝子の塩基配列の25~40%がC型肝炎ウイルスと一致、構     造も似ているという。C型ウイルスは直径が0.05ミクロンとA型・B型よりも大     きいが、GBVーCはC型とほぼ同じ大きさと考えられる。1995.12.9《日本経     済新聞》より。」
   ■D型肝炎ウイルス
     「D型肝炎ウイルスは、他の肝炎ウイルスにとっていわば障害を持つ兄弟分で     ある。それはB型肝炎ウイルスに感染した細胞の中でしか増殖できず、B型肝     炎ウイルスの外皮を借用しながら、病気の症状を重くするのである。B型肝炎     がジェット戦闘機だとすると、D型はそのアフターバーナーにあたるだろう。」
     (A Field Guide to Germs by Wayne Biddle)春日倫子訳より。

  ■肝炎ウイルス
     「日本の患者に肝炎を起こしているのはA・B・C・Gの4つの型のウイル       スだ。
   体内のウイルスについては、血液中の抗体や抗原、核酸の有無や量がいい      情報源で。特にB型肝炎ウイルスでは、抗原と抗体で病気の程度が良く分か      る。
       ウイルス表面のかけらであるHBs抗原は「ただいまウイルス感染中」、      それにくっつくHBs抗体は「ウイルスに感染したことがある」。ウイルス      内部にあるHBe抗原は「ただいまウイルス活発活動中」、それにくっつく      HBe抗体は「ウイルスは不活発になった」ということを表す。
      “最近、HBe抗原を作らないで増える変異ウイルスも一部で見つかってい      るので、診断が要注意”と大阪大学医学部の林紀夫講師。
       A型では、発病してすぐ出現するIgMHA抗体が、急性肝炎の指標にな      る。
       最新の検査法は核酸の量を調べる方法だ。B型・C型げはほぼ実用化の段      階になり、最新のG型には今のところ核酸の検査しかない。林講師は“C型      慢性肝炎患者にインターフェロン治療するかどうかなどの判断はこの検査で      しています”と述べる。1996.4.14《朝日新聞》」
   ■輸血でG型肝炎に
     「日本の輸血用血液がG型肝炎ウイルスに汚染され、実際に輸血で感染した患      者がいることを虎ノ門病院(東京都港区)の消化器科グループが確認した。G      型肝炎ウイルスは1995年に米国で遺伝子が確認されたばかり、簡単な検      査法も未開発で、肝炎や肝臓ガンをどの程度起こすかもはっきりしていない      が、B、C型肝炎やエイズのような感染症の拡大を未然に防ぐため早急な対      策が必要と、研究者らは指摘している。
   輸血による感染を確認したのは同病院の熊田博光部長、茶山一彰医長、小      林正宏医師ら。肝臓ガン手術では出血を止めるため、通常、新鮮凍結血漿や      血小板などを輸血するが、同病院では肝臓ガン手術を受けた患者の手術前後      の血液を、自ら開発した遺伝子検査で調べた。
   92年~94年までに手術を受けた後、1年以上経過を観察できた患者が      55人いたが、このうち、手術前からG型肝炎ウイルスに感染していた患者      は2人だけ。手術後1ヶ月では新たに7人(12.7%)が感染していたこと      が明らかになった。
 熊田部長らは感染した7人に平均71人分の輸血が入っていることから、      輸血に使った日赤の血液の1.4%がG型肝炎ウイルスに汚染されていると      見ている。この率から推定すると、日本では100数十万人がウイルスを持      っている計算になる。1997.1.28《朝日新聞》
   ■G型肝炎---母子感染を確認
     「米国で平成7年に発見された『G型肝炎ウイルス』の日本国内での母子感染      例を、獨協医大産婦人科の稲葉憲之教授と岡島祐子非常勤講師らが初めて確      認、東京で開かれている日本産科婦人科学会で7日発表する。
   G型肝炎ウイルスは、B型・C型肝炎ウイルスと同様に血液を通じて感染      するが、どの程度、肝炎や他の病気の原因になるのかといった病原性はよく      分かっていない。今回感染が判明した3人の子供も肝炎は発症ていないもの      の、稲葉教授は「ウイルスが肝炎以外の病気に関係している可能性もあり、      子供の健康状態を見守っていくのが重要」と話している。
       稲葉教授らは、C型肝炎ウイルスに感染している母親56人の保存血液を      調べ、うち5人がG型肝炎ウイルスにも感染していることを発見。その母親      から生まれた赤ちゃん計7人について、定期的に採血するなど追跡検査した      結果、3人の血液からG型肝炎ウイルスの遺伝子が見つかり、母子感染を確      認した。1997.4.5《産経新聞》
   ■新型ウイルス発見
      ●血清から特定
     「新たに見つかった肝炎ウイルスは患者のイニシャルから付けられた名前で       『TTウイルス(TTV)』。自治医科大学の真弓忠教授と岡本宏明講師らが昨年      末に報告、各国の研究者に注意を促した。
肝炎ウイルスは東南アジアなどで生水を飲んだりしたりして感染する[A      型]、輸血などで感染する[B型]や[C型]など6種類がこれまでに見つかっ      ている。
        A型-----------------東南アジア、食事で感染 (経口)
        B型-----------------推定150万人。患者の血液で感染。(輸血・性交渉)
        C型-----------------推定200万人。 (輸血・性交渉)
        D型-----------------国内感染わずか。 (輸血・性交渉)
        E型-----------------国内発症例なし。 (経口)
        G型-----------------1995年発見。 (輸血・性交渉)
        TTV-----------------劇症肝炎と慢性肝疾患の約半数から発見。
(輸血・経口)
真弓教授らはこの6種類のウイルスに感染していないにもかかわらず、肝炎      を起こしている患者の血清を調べ、3人から新たなウイルスを見つけた。
ウイルスを探す場合、これまでは体内の免疫系がウイルス撃退のため作り      出す抗体を調べる方法が取られてきた。真弓教授らは血清中に含まれる遺伝      子をしらみつぶしに調べ、人間に由来しないものだけを効率的に取り出す方      法を導入、これが決め手になってウイルスの特定に成功した。」
●20年前から流行
     「この報告を受けて国内の研究者が調べてみると、劇症肝炎や慢性肝炎の患者      の約半数、糖尿病の透析患者では約4割、薬物乱用者では約3割が新型ウイ      ルスの感染者だった。日本赤十字が77年に製造し凍結保存していた非加熱      製剤からも新型ウイルスが見つかり、このウイルスが20年も前から蔓延し      ていたことも分かった。
新型ウイルス発見が原因不明の肝炎に迫ると見られているのはその特徴か      らだ。新型ウイルスは輸血を受けた患者からも見つかっており、感染経路と      してはまず輸血が疑われている。だが、便の中からウイルスが見つかった例      も報告され、食物などを通して経口感染している可能性もあると言う。
これまで知られている6種類の肝炎ウイルスは経口感染するのが2種類、      輸血などで感染するのが4種類。輸血では血液からウイルスを除去する技術      が確率したが、輸血後肝炎が発症する患者がまだ数%いる。肝硬変も肝ガン      も5~10%、死亡率が高い劇症肝炎では4割の患者の原因が不明だ。新型      肝炎ウイルスはその病原の疑いが濃く、原因不明患者が一挙に経る可能性が      ある。
治療法の研究も早速始まっており、山梨医科大学のグループは肝炎の治療      薬として広く使われているインターフェロンを投与すればウイルスが消滅し      たとの成果を発表した。同大学の坂本穰医師は“新型ウイルスによる肝炎の      治療法にある程度見通しが得られた”と話している。」
●病原性に疑いも
     「もちろん慎重な研究者のなかには新型ウイルスを疑う人もいる。新型ウイル      スは感染しても発症しないケースが約20%もある。この比率は他の肝炎ウ      イルスより高く、“感染しても発症しないウイルスではないか”と病原性と      いう見方に疑いをはさむ向きもある。
日本の研究者は過去に、肝炎ウイルスの研究で先行しながら最終段階で外      国研究者に追い抜かれるという苦い経験を味わっている。」1998.5.3.《日本      経済新聞》
■肝炎の新ウイルス解明
    「日本人のほとんどが感染。特定型のみ病原性」
    「肝炎を起こす新しいウイルスとして注目されている[TTウイルス]の全遺伝情     報(ゲノム)が解読された。日本人のほとんどがこのウイルスに感染しており、     このうち特定の遺伝子の型だけに病原性があることが明らかになった。自治医     大の真弓忠教授が3日、こうした再申請かを、東京で開催中の日本医学会総会     で報告した。
研究グループは、このウイルスが世界に広く分布し、遺伝子の型が極めて多     様であることも見付けた。病原性は、日本人の大人で約10%が感染している     遺伝子型Ⅰだけにあった、極ありふれたウイルスが人間と共存し、特定の遺伝     型が病気を起こすケースとして関心を集めている。
肝炎ウイルスはA、B、Cなど計6種が分かっている。しかし、現在もこれ     らの既知のウイルスがないのに、輸血などで肝炎になる場合があり、その病原     ウイルスが追究されている。その有力候補に浮上しているのがTTウイルスだ。
真弓教授らは97年、国立金沢病院に保存されていた輸血後肝炎患者5人の     血液のうち3人から新しいウイルスの遺伝子断片を分離し、男性患者のイニシ     ャルからTTウイルスと名づけていた。
      この遺伝子断片を手掛かりに、日野茂男鳥取大享受らが約3900塩基ある     TTウイルスの遺伝情報をすべて解読した。人に感染するウイルスとしては初     めて1本鎖環状のDNAを遺伝子として持っていることを確かめた。
ウイルスことに遺伝子の変異が大きく、19までの遺伝型に分類できた。国     立金沢病院の保存血液から最初に見つかった[遺伝型Ⅰ]が肝炎などの原因にな     りそうなことも分かった。ほかの遺伝型は今のところ、病原性はないという。
大人の遺伝型Ⅰの感染率は、日本で約10%、アフリカで約50%、欧米で     低く、英国で2%と推定されている。1999.4.4《日本経済新聞》
■新型ウイルスの検査技術を開発
「臨床検査大手のSRLはTTウイルスと呼ぶ新型の肝炎ウイルスの検査技術を開発し、特許出願した。
これまで原因不明とされてきたタイプの肝炎を起こすとみられるウイルスで、患者の血液からウイルスの遺伝子を検出して感染を判定する。慢性肝臓病の原因究明や予防の他、輸血による感染を未然に防ぐのい役立ちそうだ。
TTウイルスは自治医科大学の真弓忠教授らが1998年に学会報告した新型ウイルス。肝炎ウイルスには生水飲用などで感染するA型、輸血で感染するB型やC型など6種類が知られていたが、これらのいずれにも感染していないのに肝炎を起こした患者の血液を調べて発見した。TTは患者のイニシャルに由来する。
新技術はウイルスが持つ遺伝子を手がかりに感染を判定する。TTウイルスは遺伝子の特徴によって数種類に分かれるが、SRLはこのうち肝炎を起こすとみられるタイプを特定した。患者の血液を採取してこの遺伝子の有無を調べ、感染を見つける。
肝炎ウイルスの感染者は国内で数百万人と推定され、一部は慢性肝炎や肝硬変を起こした後、肝臓ガンになる。こうした肝臓病で年間に約33000人が亡くなっており、原因不明の肝炎も多い。TTウイルスの感染を確実に検査できれば、原因がよく分からなかった症例についても究明が進むと期待されている。
ただ、TTウイルスに感染しても発症しない例があり、厚生省の研究班がTTウイルスに病原性があるかどうかを詳しく調査中。」2000.9.25《日本経済新聞》
■輸血でE型肝炎感染
「北海道室蘭市の病院で2002年に心臓手術を受けた60歳代の男性が輸血でE型肝炎ウイルス(HEV)に感染、発症したことが2003年1/18分かった。輸出によるHEV感染が確認されたのは国内で初めて。道内では別の献血液からもHEVが検出された。E型肝炎は主に飲食物による経口感染のためウイルス検査はしていなかった。
日本赤十字社は未知の肝炎ウイルスなどによる感染を防ぐため、肝炎になると血中に増える酵素『ALT』を検査しているが、男性に輸血した献血液は検査に合格していた。同血液センターは「感染した直後に採血されたか、軽い感染だった可能性がある。輸血以外で感染した可能性も否定できない」としている。
同センターは原因が不明ながらALT値が高く、不合格となっていた18人分の献血液を改めて検査したところ、6人分からHEVを検出した。このため、日赤は全国のALT値が高く、不合格になった献血液を抜き取り調査し、HEVが混入していないかどうか検査するという。
E型肝炎は動物と共通する唯一の肝炎ウイルスで、ブタ・ヤギ・ヒツジ・ネズミなどにも感染する。血液を介して感染するB型、C型と異なり、こうした動物の糞が混じった水などを飲んで感染すると言われ、海外では洪水の多い国などで流行することが多い。
2002年7月に北海道と東北地方で3名がHEVによる劇症肝炎で死亡していたことが確認された。」2003.1.18《日本経済新聞》
  【芳香療法】
    <1>ローズマリー
    <2>カミルレ
    <3>サイプレス
    <4>タイム
    <5>ペパーミント
    <6>レモン
    <7>ゼラニウム
  【色彩療法】
    <1>緑色(急性肝炎)
    <2>青色(急性肝炎)
    <3>赤色(急性肝炎)(慢性肝炎)
    <4>レモン色(慢性肝炎)
    <5>赤紫色(慢性肝炎)
    <6>藍色(慢性肝炎)
  【宝石療法】
グリーンジェード
【民間療法】
    <1>ヒガンバナ。
    <2>モッコク。
    <3>アカメガシワ・アスナロ・イチイ・イワタバコ・ウコン・ウド・ウツボグサ     ・ウラジロガシ・エビスグサ・オウレン・オオバコ・オオムギ・オナモミ・カ     ラタチ・カラスウリ・カワラヨモギ・キササゲ・クガイソウ・クコ・クサノオ     ウ・クチナシ・クマヤナギ・クララ・スイカズラ・スベリヒユ・タンポポ・ツ     ルドクダミ・トウモロコシ・ナズナ・ニワトコ・マンネンタケ・メギ・ヤブコ     ウジ・リンドウ。
  【漢方薬】
     一貫煎・・・・・(慢性肝炎・脂肪肝)
    「茵蒿湯」
急性肝炎で、熱が出て、何となく気分が悪く、胸がふさがったようで、食欲が無く、悪心のある者。このような場合には黄疸が無くても用いる。
口渇と尿不利と便秘が目標となるが、これが顕著に現れないこともある。流行性肝炎の大部分は、本方でよい(漢方診療医典)
「茵五苓散」
口渇と尿の不利と黄疸を目標として用いるが、黄疸の無いものが用いても良い。急性、慢性を問わず用いる。
黄疸と腹水があて、肝硬変症と診断された患者に、本方を用いて、腹水がとれ、黄疸もなくなり、健康を回復した患者がある。(漢方診療医典)
    越鞠丸
    黄連解毒湯
    加味逍遥散
    甘露消毒丹
    血府逐湯・・・・(慢性肝炎・肝硬変)    
    蒿清胆湯・・・・(急性肝炎)
 呉茱萸湯
     柴陥湯
     柴胡陥胸湯・・・・(急性肝炎)
     柴胡加竜骨牡蛎湯
     柴胡桂枝湯
     柴胡桂枝乾姜湯
     柴芍六君子湯・・・(慢性肝炎)
     柴苓湯
     柴平湯・・・・・・(急・慢性肝炎)
     三仁湯・・・・・・(急性肝炎)
     四逆散
     十全大補湯
     逍遥散・・・・・・(慢性肝炎・肝硬変)
     小建中湯・・・・・(慢性肝炎、)
   「小柴胡湯茵蒿湯」
本方は亜急性または慢性に移行したものに用いる機会がある。肝の肥大があり、疲労、倦怠、食欲不振があり、大便の快通しないものに用いる。大便の快通するものには大黄を去ってもちいてよい。
血清肝炎には本方を用いることが多い(漢方診療医典)
「小柴胡湯茵五苓散」
肝の肥大があり、口渇と尿の不利があり、あるいは黄疸や腹水のあるものに用いられる。(漢方診療医典)
     梔子大黄湯
   「大柴胡湯茵蒿湯」
小柴胡湯茵蒿湯を用いるより証も実証で、腹部が膨満し、便秘し、肝も肥大しているものによい(漢方診療医典)
     知柏地黄丸・・・・(慢性肝炎)
     当帰芍薬散
     当帰補血湯・・・・(B型肝炎)
     当帰竜薈丸・・・・(急性肝炎)
「人参湯五苓散」
某大学病院に入院中の肝硬変症の39歳男性。腹水と下半身の浮腫と黄疸があり、衰弱がひどくて寝返りもできない。この患者には、衰弱がひどい点に、眼をつけて人参湯を与え、腹水と尿の不利に眼をつけてこれに五苓散を合して与えたところ、その夜から尿量が増加し、2週間ほどで腹水と浮腫が去り、1ヵ月ほどで黄疸もなくなった。(漢方診療医典)
     八珍湯・・・・・・(慢性肝炎)
     復肝2号方・・・・(急性肝炎)
「分消湯」
肝硬変からきた腹水が、これでとれることがある。45歳の女性。胃潰瘍の手術後、肝硬変になり、腹水がたまった者に、近代医学の治療に本方を併用したところ、3週間で腹水がとれた。(漢方診療医典)
     防風通聖散・・・・(急性肝炎)
     補中益気湯・・・・(慢性肝炎)
   竜胆瀉肝湯・・・・(急性肝炎)
  凉膈散・・・・・・(急性肝炎)


肝萎縮
  【漢方薬】
    犀角地黄湯・・・・(急性黄色肝萎縮)


 肝火上炎
   ⇒顔面紅潮・顔のほてり・激しい頭痛・口が苦い・口乾・目の充血・急性耳鳴り・    急性難聴・怒りっぽい・煩躁などの症状が表れる。
     顔面・頭部の熱象が激しいので“上炎”という。
  【漢方薬】
 黄連解毒湯
    三黄瀉心湯

◎白藜


 肝ガン
   =肝臓ガン
   自己診断リスト:以下の症状が2週間以上続く。
     早期胃ガンに見られる症状:
       ○黒褐色の小便が出た。
       ○両目の白目が、黄色っぽくなってきた。
       ○みぞおちのあたりが痛む。
       ○最近、身体がだるい。
     頻度は少ないが、要注意な症状:
        ○シャックリが続く。
○ヘソを中心に静脈が放射状に浮き上がって見える。
       ○手のひらが、妙に赤っぽい。
       ○最近、下半身がむくんでいる、むくんだ感じがする。
       ○胸の当たりに、クモの巣のような赤い模様がある。
       ○最近、やたらと体がカユイ。
       ○右の肋骨の下にあたりにシコリがある。
       ○男性なのに、乳房が膨らんできた。
       ○お腹が張った感じがして、食欲がない。
     進行ガンor他の疾患も考えられる症状:
       ○疲れていないのに、酒の量が減ってきた。
       ○かって肝臓が悪くなったことがある。
       ○過去に輸血を受けたことがある。
       ○下痢が続く。
   ◎腫瘍マーカー:
      AFP(アルファフェトプロテイン)
      CEA
      PIVKA-Ⅱ
      ALP1
      糖鎖抗原:[CA-19-9][CA-125][CA50][CA15-3]
      自己抗体:LE細胞
           抗核抗体(ANA)
           抗平滑筋抗体(ASMA)
           抗ミトコンドリア抗体(AMA)           
   ◎肝臓の予備能検査:
     <1>腹水が有るかどうか?
     <2>血清ビリルビン、
     <3>ICG値(緑色の色素)
     <4>プロトロンビン活性値
   ◎治療:
     <1>PEIT(アルコール注入法)-----3cm以下可能。出血する。
     <2>TAE(塞栓療法)
     <3>部分切除
   ■再発しやすい。
    「その訳は肝臓ガンのもとであるC型肝炎ウイルスの感染、それによる慢性肝炎     あるいは肝硬変を治すことが困難なためである。
  86年、大阪府下の運転手の男性Sさんが慢性肝炎と診断された、90年5月     に肝臓ガンの影が見つかり、肝臓の一部を切除した。そのときC型肝炎に罹っ     ていることが初めて分かった。94年にまた影が出て再手術。その後超音波や     CTスキャンによる検査を3ヶ月に1回、血液検査を1ヶ月に1回の割合で行     っていた。
 ところが96年に2つの影が出てので、今度は腹から肝臓の患部に細い針を     刺し、その針先からマイクロ波を出し、熱凝固療法(電子レンジと同じ原理)を     数回繰り返した、現在再発の徴候はなく、職場に復帰している。
 肝臓ガンの再発には2つのパターンがある。
      <1>転移:他のガンと同様にガン細胞が血管やリンパ管に入り、その流れに           乗って肝臓の他部位に転移して大きくなる。B型肝炎ウイルスが           関係した肝臓ガンに多いタイプ。
 <2>「多中心性再発」:
       「ガン細胞が1カ所に発生するのではなく、多くの部位で一斉に蜂起する        パターンで、肝臓ガンに特徴的である。C型肝炎ウイルスと関係が深い        肝硬変の人に多い。」1997.10.13 《日本経済新聞》
■AFP--------妊娠などでも高値に。
    「血液検査でガンを発見するのは現時点では難しいが、ガンが作る特有の物質を     調べて診断がつくこともある。これを腫瘍マーカーと呼ぶ。その代表がアルファフェ     トプロテイン(AFP)だ。
   AFPは胎児の肝細胞が作るタンパク質でもある。妊娠5ヶ月ころの胎児で     血清濃度は3~4mmg/100mmlもあるが、出生後は減少し、1歳以降ほとんど     作られなくなる。
   ところが、肝臓ガンでは、ガン細胞がこのタンパク質を作り出す。ガン細部     には無制限に増え続ける性質があり、増殖能という点では胎児の細胞に似てい     る。肝臓ガン患者の約80%がAFP値200ナノg/100mml(1ナノ=1/10億)以上     を示し、1000ナノgを超えることすらある。
      慢性肝炎や肝硬変で、AFPが上昇し続けるようなら、肝臓ガンへの移行の     可能性がある。肝臓病に人はAFPを定期的にチェックするのが無難だ。
  ただ、肝臓ガンでも高くなったり、逆に肝臓ガン以外の病気で高値になる場     合がある。
         ex慢性肝炎
          肝硬変
          胃ガン
          膵臓ガン
          妊娠で高くなることもある。
     胎児のAFPが母体に移行するからだ。検査は多角度から判断すべきものだ。      (東京医科歯科大学教授・奈良信雄)1996.3.9《日本経済新聞》より」
■腫瘍マーカー-----2種有用
「悪性腫瘍になると、そのガンの特徴的なタンパク質が体内に出現する。ガンの診断の補助や治療後の経過観察に使えるこの種のタンパクが腫瘍マーカーだ。
肝臓の場合には、アルファフェト蛋白、略してAFPとPIVKAⅡという2種類の腫瘍マーカーが有用だ。AFPのフェトというのは胎児という意味。肝臓の細胞が活発に分裂しているとき、胎児期と同じタンパクを作り出す。肝臓ガンであればAFPが増えてくることが多い。ただし、肝硬変の人で肝炎の程度が強ければAFPの数値が高めに出ることがある。
PIVKAⅡはビタミンKの欠乏状態で出現する異常タンパク、黄疸がある時
場合や、抗生物質を使用している時でも数値が高くなるが、それ以外の場合は肝臓ガンを疑ったほうがいい。
AFPはガンの初期段階から異常値が出やすいが、偽陽性も多い。軽い異常値の場合、肝臓ガンである確率はAFPで20%足らず、PIVKAⅡだと50%程度、両方異常なら60%以上。また、正常から異常に変わったり、2回連続して数値が上昇した場合などにはさらに確率は高くなる。超音波エコーや造影のCTなどを駆使して早期発見につとめる必要がある。
肝臓ガンは早期発見すれば、冠動脈に栓をする塞栓術やエタノール注入法などで延命できる可能性があるからだ。(浜六郎)」1999.5.24《日本経済新聞》
   ■C型肝炎で、アルコールを飲む人は、飲まない人よりも早く肝臓ガンになりやす    い。 1995.11.19《朝日新聞》より。
   ■早期移植が有効。
    「肝臓ガンでも早期に見つけて肝臓を移植すれば再発を抑えられ、生存率が高ま     ると、イタリア国立ガン研究所の研究チームが米医学誌『ニューイングランド・ジャーナル     ・オブ・メディシン』(14日付)に発表した。
  直径5cm以下の早期肝臓ガン患者48人に肝臓を移植したら、4年間生存     率は75%で、ガン以外の肝臓病患者の移植成績と大差なかった。心配された     再発は4人(8%)だった。
      移植対象の90%以上はB型やC型の肝炎ウイルスが関係した肝臓ガンの患     者。1996.3.16《朝日新聞》より」
   ■マイクロ波
    「肝臓ガンを、電子レンジなどに使われているマイクロ波で退治する治療が効果を     上げている。ガン細胞にエチルアルコールを注入したり、手術で切除したりす     る従来の治療法には、大きなガンを治療出来なかったり、患者が体力を消耗、     長期入院が必要に綯ったりする難点がそれぞれに有る。これに対してマイクロ     波治療は、治療期間が短く、患者の負担も軽くなるという。治療の際の止血に     問題を残しているが、保健医療の適用対象になったこともあり、肝臓ガンの治     療法として今後、広く行われそうだ
      栃木県南河内町の自治医大消化器科では1993年から『腹腔鏡下マイクロ波凝固     療法』を始めた。井戸健一助教授と川本智章講師によると、肝臓ガン患者の7     割以上、71人にこの方法を用いているという。
    昨春、60歳の肝臓ガンの男性患者が転院してきた。ガンの直径は45mm     と大きく、C型肝炎で肝硬変も併発していた。開腹してガンを切除すれば退院     まで約1ヶ月かかるが、マイクロ波治療で8日間で退院。現在も再発は見られ     ない。
 大阪府守口市、関西医大第三内科(井上恭一教授)の関寿人助教授は、腹腔鏡     を使わない『経皮的マイクロ波凝固治療』を導入。皮膚の上から超音波を当てガン     の位置を探り、針を刺してマイクロ波を照射する。腹腔鏡下の治療が腹に3つの穴     を開けるのに対し、針を1本刺すだけだ。ただ、肝臓に直接超音波を当てる腹     腔鏡下の治療に比べて小さいガンを見つけにくい。1996.5.19《朝日新聞》」
■肝臓ガン再発抑制薬
    「肝臓ガンの再発を防ぐ飲み薬を岐阜大医学部第一内科が開発、有効性を確認し、     米フィラデルフィアで開催中の米国臨床ガン学会で21日発表した。
   肝臓ガンは最初の1つを手術などで完全に除去しても、前ガン状態の細胞が     多い為、次々に新たなガンが発生しやすいことが知られている。
      この薬はビタミンAの誘導体で非環式レチノイドと呼ばれる化合物の一種の     『合成ポリプレン酸』。武藤教授らは、レチノイドの発ガン阻止作用を研究中     に発見した。1995.5.22《日本経済新聞》」
   ■再発に「GPT値」が関連。1997.10.26《朝日新聞》
    「GPTを抑えれば肝ガンになりにくいことが分かってきた(飯野司郎・聖マ     リアンナ医科大学教授)」1999.4.11《朝日新聞》
   ■肝臓ガンの治療
    「肝臓は[沈黙の臓器]と言われるとおり、其の一部が障害を受けても無症状の場     合が多い。肝臓ガンで症状が出るときには相当進行していることがある。
1986年、銀行に勤めるSさん(46)は腹痛を時々覚えるようになったため、     近医で検査を受けたところ、肝臓の右側に直径5cmのガンの影が見つかった。     精密検査の結果、門脈という血管にも病巣が広がり、肝臓の部位にも転移した     進行肝臓ガンであった。
しかし幸いにも肝機能が良かったため、肝臓の右半分を一括切除した。その     後91年と95年にも肝臓に影が出たので再手術とマイクロ波にょる熱凝固療法     を行った。今年3月に無事退職、現在1ヶ月に1回定期検査を受けている。
 Sさんの場合、初回手術時にB型肝炎ウイルスが陽性で再手術時にはC型肝     炎にも新たにかかっていた。
「日本では毎年2万人強の肝臓ガンが発生しているが、その約80%がC型ウ     イルス、約15%がB型ウイルスと関係した肝臓ガンで、残り5%がアルコー     ル性肝障害である。
B型肝炎ウイルスは自分の遺伝子を人の肝ガン細胞の遺伝子に組み込ませて     おり、B型肝炎の状態でガンが発生するため、B型ウイルス関連肝ガンは肝機     能の良い若い人に発生しやすく、発見時すでに進行していることが多い。
一方、C型肝炎の場合は、そのほとんどが肝硬変を経てガンに進む。C型ウ     イルス関連の肝ガンは高齢で、肝機能の悪い人に多く、検査で比較的小さな状     態で発見されるのが特徴だ。
肝臓ガンんは現在多くの治療法があるが、ガンの広がり具合と関連肝炎ウイ     ルスとの関係をもて治療法を選択する。B型関連肝ガンで大きいものはBさん     の初回治療のように肝切除が一番である。一方C型関連肝ガンで小さい時期で     あればBさんの2回目、3回目の治療のように治療選択の幅が広い。
なおC型関連肝ガンはB型に比べて再発し易いが、最近インターフェロンで     ウイルスの除去や肝炎の沈静化をはかり再発を抑える試みがなされ、好成績を     収めつつある。(木下博明・大阪市立大学医学部付属病院長)1998.11.16《日本     経済新聞》
■予防---ウイルス感染の阻止を
「現在日本人の3大死因は、ガン・心臓疾患・脳血管疾患である。ガン死亡のうち肝ガン(肝細胞ガン)は胃ガン・肺ガンに次いで第3位を占める。最近の肝ガン白書によると、1975年頃から肝ガンが急増し続けて、現在年間30000人以上が死亡し、この傾向が今後10年間続くと予測されている。
肝ガンの特徴としてその95%以上がB型~C型肝炎ウイルスの持続的感染者である。ことに最近その80%がC型ウイルスと関連していることが明らかとなった。B型ウイルス関連の肝ガンは45~55歳の男性に多いが、C型ウイルス関連肝ガンは60~70歳で、肝硬変になっている人に多い。またB型肝炎の場合、肝細胞障害の指標となるGOT、GPTの数値が低くてもガンが発症するのに対して、C型肝炎の場合、GOT・GPTが高値を示す活動型病変の状態から発症することが多い。
C型肝炎は江戸時代から存在していたようであるが、全国的に広がったのは第2次世界大戦後のことである。この時代は結核・胃潰瘍などの手術に輸血が行われ、覚醒剤も一時蔓延し、ウイルス感染の機会が多くなった。その後30数年の歳月を経て、次々に発ガンに至ったと考えられる。
肝ガンを予防するにはまず肝炎ウイルス感染を阻止する。医療機関や理美容施設などで血液の付着した器具を完全に滅菌するか、使い捨てに代える。不特定多数者との性行為を控えさせるなど社会的な啓蒙活動を行う。次に40歳以上の人の輸血歴のある人に肝炎ウイルス検査を勧める。C型ウイルス抗体陽性者は肝ガンに最もなりやすいグループなので、定期的検査を呼びかけ、早期発見につとめる。2cm以下の肝ガンは適切な治療を行えば予後が良い。インターフェロン療法は肝ガンの予防に有効なことが明らかになってきたが、この治療にも限界があるため新しい抗ウイルス剤の研究が期待される。肝炎ウイルス感染とそれによる肝ガンは戦後の社会及び医療事情のひずみに起因した国民病とも言える。社会全体が撲滅に努力を払う責務があると考えられる。(木下博明・大阪市立大学医学部付属病院院長)」1999.5.24《日本経済新聞》
■「自滅遺伝子」を酵素で刺激
「長崎大学医学部の研究グループは、肝臓ガンを対象にした新しい遺伝子技術を開発した。どんな細胞でも持っている『自滅遺伝子』を刺激、ガン細胞を殺して治療する。遺伝子を刺激するのに、普段は無害であるが条件が整った時だけ働く薬剤を使うのが特徴。この条件を作り出すのに別の遺伝子を入れる。副作用を小さく治療効果を高くできる期待がある。マウスを使った動物実験ではおよそ7割の肝臓ガンを死滅できた。臨床応用を目指すとともに、乳ガンや甲状腺ガンなど対象を拡大した研究も進めている。
長崎大学医学部付属原爆後遺障害医療研究死せつんの山下俊一教授らの成果。『ガンシクロビル』という抗ウイルス剤を体内で酵素(チミジンリン酸化酵素)の力を借りて「自滅遺伝子」を刺激する物質に変える。
この酵素は通常、人体にはないため遺伝子を外部から導入して細胞に作らせる。酵素の遺伝子をウイルスのベクター(遺伝子の運び役)に組み込んで体に入れ、それからガンシクロビルを投与すると、酵素の働きでガンシクロビルがガン細胞の自滅遺伝子を刺激し、細胞が死ぬ。
酵素の遺伝子がやたらに働かないよう、ガン細胞内の特殊なタンパク質に反応して働くような仕掛けを組み込んでおく。このため正常細胞とガン細胞の区別無く酵素の遺伝子を導入しても、正常細胞内では遺伝子が働かず、薬剤の副作用は最小限に抑えられる。
また酵素の遺伝子には放射線の刺激で活性化する仕掛けも組み込んだ、刺激に必要な放射線量はガンの放射線療法で使う放射線量の1割以下でよ。
免疫機能を欠いたヌードマウスと呼ぶ実験動物の背中に人間の肝臓ガンの細胞を移植し、このガン組織に対して遺伝子治療を試みた。その結果、薬剤と放射線の併用で約7割のガン組織が完全に消失したという。
ウイルスベクターを使う手法は、特許問題や安全性などの解決すべき課題があり、すぐには臨床応用出来ない。」1999.11.12《日経産業新聞》
■肝ガン細胞の自殺
「三共は、肝臓ガンの細胞に自滅現象を引き起こすタンパク質を米アラバマ大と共同開発したと発表。このタンパク質を使えば、正常な細胞を傷つけずにガン細胞だけを自滅させ、治療時の安全性を高められる。」2001.8.2《日本経済新聞》
■西高東低
「このままでは住民が次々肝ガンで倒れてしまう」三重県の人口数千人町の保健担当者は焦りを隠さない。1997年までの5年間に、男性24人、女性7人が死亡した。肝ガンの死亡率は男性で全国平均の3倍、女性も2.5倍。
この町では60年代、肝炎が大流行して騒然となった。同調では93年、住民約900人に初めてC型肝炎の検査をしたところ、3割が陽性だった。地区によっては79人中、7割の56人が陽性と判明した。
感染集中地域に以前、診療所があった。「注射針の使い回しなどの医療行為が感染源となった疑いが強い」と指摘する関係者もいる。
島根県のある町も自体は深刻だ。人工8000人のうち、97年までの5年間に47人が肝ガンで死亡。ここも70年代に肝炎が大流行した。同僚が98年、肝ガンが多い地域の住民220人にc型肝炎の検査を行ったところ、男女とも約4割が感染しており、50歳代では7割以上が感染者。特に50代の女性は8割が感染者だった。
夫婦でC型肝炎に感染した60歳代の男性は、「診療所の医師は、注射針を変えずに予防接種や静脈注射などしていた」と、当時の様子を証言する。
男性は「いつ肝ガンになるかもしれんと覚悟を決めているが、役所がもう少し早く対応していれば、ここまでならなかったのでは?」と無念の口調だ。
肝ガンの都道府県別の死亡率(98年)は、人工10万人当たり30以上だったのは東日本では山梨県だけだが、西日本では大阪・和歌山・広島など17都道府県に及び、「西高東低」の傾向がくっきり浮かび上がっている。
■男性、西日本に集中
「肝ガンは、ほかのがんと違い、地域格差が大きい。三浦宜彦・埼玉県立大教授らが作成した「肝ガン死亡者(男性)の地理的分布マップ」には、西高東低の傾向がくっきり示されている。
1991~95年の5年間に、男性の肝ガン死亡者数が人口比で全国平均を2割以上上回る市町村を選び出した結果、大阪府など大阪湾沿岸、広島県など中国地方の瀬戸内海沿岸、福岡、佐賀両県など北九州地方と、特定地域に集中していた。女性は男性より肝ガンの死亡率が少ないため、地域差は目立っていない。
三浦教授は分布マップは71年から5年ごとに作成し、地域格差の推移を観察しているが、「年代が進むに従って、肝ガン死亡者はますます特定の地域に集中している」と分析する。日本肝臓学会によると、「肝ガン死亡者多発地域は、90~80年代に肝炎が流行した地域とほぼ重なる」
■抑制遺伝子を発見
「生物の背中と腹部の位置関係を決める働きを持つアキシン遺伝子が、肝臓ガンの発生に関与しており、この遺伝子に異常がある肝ガンや大腸ガンの細胞に正常遺伝子を入れると、ガンの増殖が抑制されることを東京大医科学研究所の中村祐輔教授(遺伝医学)と古川洋一助手らが発見した。
研究グループは「アキシンは新たなガン抑制遺伝子だ」としており、癌の遺伝子治療の可能性にもつながる成果。米医学誌ネイチャ・ジェネティクス3月号に発表した。
肝臓ガンの細胞内には、ベータカテニンというタンパク質が蓄積する。アキシン遺伝子の作るタンパク質にはベータカテニンを分解する働きもあり、グループは肝臓ガンの細胞では犀黄ではアキシン遺伝子に異常があることを発見した。
肝臓ガンなどの計6種類の培養細胞に、正常なアキシン遺伝子を導入。6日後に観察すると、どの細胞も増殖が抑制されるか、細胞の自殺であるアポトーシスが起き、アキシン遺伝子がガン治療の新たな手段となる可能性が示された。」2000.3.2《日経産業新聞》
■ウイルス自体に“元凶”
「“信じられない”。肝臓ガンで昨年亡くなった男性(当時57歳)は、癌と診断されたとき、そう漏らしたという。会社の健診で肝臓に異常が見つかったのは、亡くなる3年前。地元の病院で調べたところ、B型肝炎ウイルスによる肝臓ガンと分かった。
肝臓ガンの多くは、発症するまでにかなりの時間がかかる。B型肝炎ウイルスが関与する場合も通常、感染から約30年。まず3~5年の慢性肝炎の時期を経て肝硬変となり、ガンと段階を進む。
ところが、この男性は慢性肝炎さえ発症していなかった。「突然ガンと言われても-----」。そんな思いをよそに、肝臓の腫瘍はみるみる拡大。家族から肝臓の一部をもらう生体肝移植を希望したが、容体が急変、なかわなかった。
●P53の働きを妨害
B型肝炎ウイルスによる肝臓ガンは、感染で起きる炎症が原因とされてきた。炎症で傷ついた細胞が、修復や増殖を繰り返す際に、遺伝子の複製ミスも起こりやすくなり、ガンにつながる遺伝子の異常が起こるという仕組みだ。段階を踏んでガンになる理由も、この仕組みにある。
ところが、この男性のように、実際にはもっと複雑だと分かってきた。「ウイルス自体に、細胞をガン化させる元凶が潜んでいる」。京都大ウイルス研究所の下遠野邦忠教授は。そう語る。元凶とされるのが、このウイルスが作り出す『Xタンパク』だ。
このタンパク質は、細胞が持つ複製システムのスイッチを勝手に入れてしまう。ウイルスは、自ら複製能力を持たないためだ。さらに、こうした異常な状態になった細胞は通常、自らのガン抑制遺伝子[P53]を使って自滅へと向かうが、Xタンパクは、P53にも取り憑いて働きを妨害する。
この状態が数十年続くうちに、偶然、Xタンパクを作る遺伝子が、細胞自身の遺伝情報に入り込むと、細胞は、ガン特有の無秩序な増殖を始め、さらに悪質な遺伝子の異常が重なると、ガンになる。だから元凶なのだと言う。
「これだけでガンが出来るかどうか、不明な点は多い。患者にもいろんな例がある。」(下遠野教授)というが、B型と同じように肝臓ガンに関係するC型肝炎ウイルスでも、似た働きをもつタンパク質が見つかっており、予防や治療のため、発症の仕組み解明は、一層重要性が増している。」
■養子免疫療法
「肝臓は“沈黙の臓器”と呼ばれるほど、自覚症状がなかなか出ない。肝炎ウイルスに感染すると、30年以上の長い年月をかけてじわじわと静かに肝臓をむしばみ、不調に気づいた時にはすでにガンが発生している肝炎患者も多い。
肝ガンの最大の問題点は、再発率の高さにある。たとえ手術でキレイにガン細胞を取り除いても、5年後には80%という高率で再発する。
94年3月に肝ガンの手術を受けた東京・江東区のSさん(60)も、担当医から再発率の高さについて説明を受けた。「手術後の定期検査のたびに、生きた心地がしませんでしたよ」と回想する。手術後6年半が経過した現在、どうやら再発はのがれたとの思いがあるせいか、言葉には安堵の色がにじむ。
S酸は、24歳の時に受けた結核手術での輸血で感染したと見られるC型肝炎患者だった。きっちり30年後の、54歳で肝硬変からガン化した。直径3cmの中ぐらいのガンが2つ。大きいものではなかったので、手術で取ることは決して難しくない。ただし、ガンが1つより、2つある方が再発率が高い。
手術をした国立がんセンター中央病院では、通常の手術に加え、臨床試験として『養子免疫療法』と呼ばれる治療を行った。
免疫は、ガン細胞やウイルスなど人間の体内の“異物”を排除しようとする機能。人間が備える免疫機能を活性化させて病気にうち勝とうとする治療法だ。
肝ガンの養子免疫療法では、あらかじめ患者の血液20mlから侵入者と闘う「Tリンパ球」だけを分離、培養する。1000万個のリンパ球を1000億個にまで増殖させてから、手術後に再び患者の体内に戻す。このリンパ球は肝臓に集まりやすい。
1000倍に増強された、戦闘要員となるTリンパ球が“養子”となって、再発しようと潜んでいるガン細胞をやっつけるのが目的だ。
「Sさんの場合、この治療法が功を奏しましたね」と治療に当たった高山忠利さん(現在、東大肝胆膵外科助教授)は振り返る。
国立がんセンターで、Sさんを含め76人の肝ガン患者に対して養子免疫療法の臨床試験を行ったところ、5年間の再発率は50%台まで下がった。また再発した患者も、再発までの時間が1年以上延び、明かな効果が確認された」


■切除後、インターフェロン併用
「C型肝炎が進行して肝ガンを発症した患者への治療法で、病巣部の切除とインターフェロンの投与を組み合わせる方法が有効であるとの研究結果を、東京大学の研究者が学会報告した。
東大先端科学技術研究所センターの森口尚史助教授らは日米の患者281人の知慮右傾化を調査。癌切除後の再発率を薬などによって年率8%未満に抑えられれば、患者によっては肝臓移植よりも治療効果が高いと、消化器関連の合同学会で発表した。
ウイルスによる肝ガンの再発を抑える方法としてはインターフェロンと他の薬品との併用が高い効果を上げている。来年以降は改良型のインターフェロンが国内で承認される見通しで、「治療法としての現実性がさらに増した」(森口助教授)
日本では肝ガン患者の約7割がC型肝炎から進行したケース。根本治療は生体肝移植などとされ、移植が必要な患者は年間約2300人と推定されている。2002.10.30《日本経済新聞》 。
■診断に威力
「ドイツ系医療機器販売会社のシーメンス旭メディテック(東京品川)は、肝臓ガンの診断・治療に役立つ特殊コンピューター断層撮影装置を発売した。微小な腫瘍を描出できる上位機種のCTと、高精細な立体画像で血管を描出できる血管撮影装置(アンギオ装置)を融合。患者を開腹しないですむ先端医療を手がける医療機関に売り込む。
新装置を使うと、血管にカテーテルを挿入したまま患者を動かさずに、主要部分をCT撮像できる。之により、ガン細胞に栄養を運ぶ血管をふだいでガンを壊死させる「肝動脈塞栓療法」と呼ぶ手法を施せる。2003.5.30《日経産業新聞》
■余命にPIVKA
「国立国際医療センターは日本IBMなどと共同で、血液検査データなどをもとに肝臓ガン患者の余命期間を予測する手法を実用化した。気象条件から売れ筋商品を判別するときに使われている『データマイニング』という解析手法をはじめて医療分野に応用した。
データマイニングは主観を交えず、手持ちの全データを使い互いの関係を調べる。従来は膨大な検査データから無作為にサンプルを抽出し、経験などに基づく仮説を立てて、統計解析でそれを検証する場合が多かった。データの選び方や仮説によっては正しい結果が得られなかった。
今回の解析では、国立病院長崎医療センター治療研究部長らが集めた約77万件のデータを使った。1990年~2002年までに肝疾患で死亡した456例が対照。血液検査結果と病状などの詳細情報を電子化し、日本IBMのデータマイニング用ソフトで解析した。
その結果、検査数値と肝臓ガン患者の余命期間との関係が分かった。たとえば『PIVKA』と呼ばれるタンパク質の異常を示す数値が一手以上だと9割り異常の確率で1年以内に死亡する傾向があった。PIVKAは肝臓ガンと関連が深いとされるが、余命との関係を明らかにしたのは初めて。」2003.8.4《日経産業新聞》
■レチノイド
「2000年にM氏(開業医)は、肝がん摘出手術を受けた。手術は成功したが、80%の確率で再発するといわれた。
再発の予防薬はないとのことだったが、偶然『レチノイド』という薬が副作用もなく再発予防に有効であることを知った。ただ、治験中で一般の患者には使えないという。
1年後、予想通り肝ガンが再発。その後リンパ節遠隔転移も起こし、治療手段がないと告げられた。
すべての肝ガン患者は、いつ再発するか?という不安におびえる毎日を送っており、再発治療を繰り返しながら死亡する患者数は年間3万人以上。
もし、レチノイドをすべての肝ガン患者が服用すれば、年間1万人が救われる可能性がある。にもかかわらず、5年後の今も治験中である。
M氏は患者会を設立した。」2005.8.7《日経》
(癌治療薬早期認可を求める会代表:三浦捷一)
■気泡で血管を
「米ミシガン大学の研究グループは、血管の中に気泡を入れて、ガン細胞を死滅させる治療技術を開発した。
まず液状のフッ素化合物を血管の中に入れてガン細胞の近く誘導する。ついで、ガン細胞に近づいた時に超音波を照射すると、フッ素化合物が気泡となって膨張し、ガン細胞に生じる新生血管をふさぐ。
従来にも新生血管を塞ぐ手法はあったが、正常な細胞も傷つける可能性があった。」2006.8.3《産業》
■再発原因
「理化学研究所などは、人の肝臓ガンで、ガン細胞を生み出す源になっている『がん幹細胞』を見つけた。
理研のユニットリーダーの谷口英樹・横浜市立大学教授らが人の肝ガン4種類で調べた。そのうち2種類から活発に増殖し寿命も長い特殊ながん幹細胞を見つけた。1%以下の割合で含まれ、大多数のがん細胞を生み出す源となっていた。
がん幹細胞だけを取りだしてネズミに移植すると、わずか1000個でもガン細胞とガン幹細胞が混じった腫瘍ができた。一方、ガン幹細胞ではないガン細胞は100万個移植しても腫瘍を作らなかった。
これまでガンは均質な細胞の集まりだと考えられてきたが、研究グループはガンの中にあるガン幹細胞を治療の際に取りこぼすことが再発につながるとみている。
体内にはもともと正常な幹細胞があり、異常が起きるとガン幹細胞に変わると考えられている。」20068/21《日経》
●名医:東京大学付属病院~日本赤十字センターの院長へ
幕内雅敏・・・肝臓ガンの外科医でトップ
プロフェッショナルで紹介
■検査・・高エネ超音波
「米ヂューク大学のグループは、高エネルギーの超音波を使って、肝臓の腫瘍をハッキリと写し出す画像診断技術を開発した。
新技術は、高エネルギーの超音波を生体組織に当てて、その動きを細かく追跡する。9人の患者で12カ所の腫瘍を見つけ、うち7カ所が肝臓だった。
従来の手法よりコントラストが大きく、ガン組織の境界もハッキリ見える。」2008/1/10産業
■数分で判定
「ガンになると体内で増える特定のタンパク質を高精度に検出できる「タンパク質チップ」をオムロンが開発した。病院や診療所でも簡単に使える。
ガンを発症すると血液や尿中に疾患ごとに特定のタンパク質が微妙に増える。開発したチップはガラスと樹脂で出来た基板の上を薄い金で覆い、約100ナノ㍍の微細な溝を作った。金表面には特定のタンパク質と結合する抗体を多数付着させた。実験では肝臓ガンの指標となるタンパク質を高精度に検出できた。」2008/5/26産業
■小さい病巣も検出
「2008年、大阪府成人病センターは、肝臓ガンの切除中に3~5mmぐらいのガンも見つける手法を開発し、日本癌学会で発表。
インドシアニングリーン(色素)という試薬を注射し、赤外線カメラ(浜松ホトニクス製)を当てると色素が光る。CTで見つからなかった5mm以下のガンも、手術中に見つけられる。
ただ、この手法でも、肝臓表面から2cm以上内部にあるガンは検出しにくい」
■リスク
「2009年、厚生労働省研究班は。3/10、高血糖や肥満などメタボリック症候群の関連要因を抱えている人について、肝臓ガンにかかるリスクが2倍以上になると発表。肝ガンは肝炎ウイルスに感染して発症するのが大部分だが、生活習慣に気をつければ発症を回避できる可能性があるという。」




 肝虚(かんきょ)
   ⇒虚労による肝の虚弱、顔色が悪く、目がかすむ症。
  【漢方薬】
    帰茸元(耳が遠く、目が悪く、足が痿弱、腰痛、小便白濁)
    黒元(耳が遠く、目が悪く、足が痿弱、腰痛、小便白濁)
    洪辰丹(五臓・百病の保健薬)
    滋補養栄丸(虚労に気血が不足して、気が短かく、脾胃が弱い)
    四物湯
    和湯
    補肝丸





 肝硬変(かんこうへん)
   ⇒結節形成を伴う広汎な肝線維化で、肝臓は硬度を増す。
   ◎慢性肝疾患の中では、肝硬変は重症で、食道静脈瘤からの大量出血、肝ガン、肝    不全で死亡することが多い。
肝硬変やガンのために肝臓内の血流が妨げられると(門脈圧亢進)と、門脈は全体的に鬱血を起こし血漿が血管壁を透過して腹膜腔に出る。
その結果、腹腔に大量の腹水が貯留することになる。
また、正常ではほとんど機能的意義をもたないが、門脈亢進で鬱血した血液を、肝臓を経由しないで大静脈系へに環流する側副路(バイパス)となる経路が下記の3つがある。
①食堂の下部を通り大静脈へ
②直腸の下部を通り総腸骨静脈へ
③肝臓の下面から臍の周囲の皮静脈を経て上大静脈・下大静脈へ

この3カ所の静脈に大量の血液が流れると、
①食道静脈瘤とその破綻による大出血
②直腸静脈叢の拡張による痔核と痔出血
③臍を中心とした方丈線の静脈の怒張(メズサの頭)を生ずる
   ◎症状:
     手掌紅斑
     クモ状血管腫
     女性化乳房
     バチ指
     白色爪(爪甲全体がすりガラス様に白くなる)
     顔面・手足など日光に曝される部分が、黄疸がなくても、浅黒く汚くなる。
■症状進むと合併症も
●どうして肝硬変になるのですか?
「ウイルス性肝炎やアルコール性肝炎、線維症などが肝硬変に移行します。炎症によって肝臓の細胞が破壊されると、残った細胞が再生して小さな塊ができ、その周りを線維が取り囲む形で結節を作り、肝硬変になります。7~8割はC型肝炎ウイルスが原因で、アルコール性は1割程度です。ウイルスを持っている人が飲酒すると飲酒しない人より約3年早く発症します。」
「慢性肝炎の人は血液検査でGPT(ALT)値が高いのですが、肝硬変になるとGOT値が高くなり、血小板の数値も10万を切ります。肝臓でタンパク質を合成する能力も低下し、アルブミン値なども低くなります。血液検査のほか、超音波やCT検査も実施して肝臓の表面が凸凹していれば、肝硬変です」
●注意すべき症状は?
「体がだるい。疲れやすい。食欲がない。体がかゆいといった症状があったら注意信号です。今まで酒が飲めていたのに飲めなくなった。胸にクモの巣状に細かい血管が出てきた。手のひらが赤い。体が黄色い。尿の色が濃い。お腹がはる。考えがまとまらないなどの症状があれば、重症の肝障害の疑いもあるので、専門医を受診しましょう」
「初期の肝硬変は肝臓が十分に働いているので、元気に仕事も出来ますが、病気が進行すると、腹水や黄疸、肝性脳症、食道静脈瘤などの合併症が出て、治療が必要になります。」
●合併症の治療は?
食道静脈瘤は、内視鏡でコブに硬化剤を入れて完全に固めてしまうことが多い。静脈瘤が破裂するとあっという間に容体が悪くなるので、日本では破裂する前に予防的に硬化療法を実施するケースがほとんどです。内視鏡でコブを縛る傑作術を行うこともあります」
「脳症を予防するにはアンモニアの発生源となるタンパク質が腸管内に溜まらない葉に下剤を飲んでもらい、便秘にならないようにします。アンモニアが血管に吸収されるのを抑える薬も飲んでもらいます。タンパク質摂取も体重1kgあたり0.5~1gに制限します。窒素量が足りなくなる分は、分岐鎖アミノ酸製剤を就寝前と起床時に飲んでもらいます」
「腹水はまず安静にすることです。肝臓と腎臓の血流が増え、尿が出るようになるからです。塩分を制限すると同時に、ナトリウムや水の排泄を良くする為に利尿剤を使います」
●肝硬変自体の治療は?
「アルコールを止めれば、線維化は抑制できます。B型肝炎ウイルスを持っている肝硬変の人に、ラミブジンという薬を与えると治った事例もあります。」(福井博・奈良県立医科大学教授)2004.3.2《日本経済新聞》
検査:
  ヒアルロン酸:
     肝硬変の病態と進行度の判定に良いマーカーとなる。
   ◎診断基準:
    肝硬変症の診断基準は形態学的所見が中心となり、
     病理組織学的に、結節形成
             門脈と中心静脈を結ぶ線維隔壁形成
             小葉構造の改築を肝全体にびまん性に認める。
    臨床的:
      ①慢性の経過をとり、肝細胞機能障害と門脈圧亢進症がみられる。
②所見:クモ状血管腫
          手掌紅斑
          女性化乳房
          食道静脈瘤
          腹壁静脈怒張
          腹水
          肝腫
          脾腫
    臨床検査:
      <1>腹腔鏡による肝表面の肉眼的診断が有用:以下の所見あり。
          結節状表面
          左葉肥大
          右葉萎縮
          脾腫
      <2>タンパク代謝:
         1.血清アルブミン(↓)。
         2.IgG(↑↑)。
         3.γーグロビン(↑)。
         4.A/G(↓↓)。
      <3>脂質代謝
         1.リポタンパクリパーゼ(↓)
         2.LACT(↓)
      <4>ホルモン代謝
         1.女性化乳房。
         2.睾丸萎縮。
      
   ◎種々に分類される。
      <1>アルコール性
      <2>原発性胆汁性肝硬変(PBC)(→原発性胆汁性肝硬変)
      <3>心臓性
      <4>胆汁性
   ◎(原因)
     <1>肝炎ウイルス(B型・C型)
     <2>アルコール

   ◎血小板及び赤血球を増加する薬物。    
    ⇒血小板と肝硬変とは、相関性がある。
     1.阿膠
     2.何首烏
     3.亀板膠
     4.熟地黄
     5.生黄蓍     
     6.桑椹子
     7.大棗
     8.当帰
     9.鹿角膠
■治療に有望物質[エタノールアミン]
    「牛の小腸分泌液から発見。
     牛乳や大豆などの食品にも含まれるリン脂質の一種で、傷ついた肝細胞を再生     させる働きがある。
 肝硬変を起こさせたラットに、エタノールアミンを5週間与えて肝臓の変化を調べた。     この結果、投与しなかったラットが肝不全を症状を見せたのに対し、投与した     場合は肝硬変が治った。肝機能低下の指標(γーGTP)も投与日数が増えるに従     って減少し、改善を見せた。1997.4.1
   ■治療に道
    「兵庫医科大第一外科(岡本英三教授)の研究グループは、肝臓の再生を促す肝細     胞増殖因子(HGF)が、肝細胞の線維化を抑制することをラットの実験で確認、     1日発行の科学誌「ネイチャーメディシン」で発表した。
根治療法がない肝硬変の遺伝子治療につながる画期的な成果で、同グループ     では安全性と大形哺乳動物での効果が証明されれば、今夏にも同大学内の医学     倫理委員会に臨床応用を申請したいとしている。
同グループは金田安史・大阪大学教授が開発した遺伝子導入法で、HGFを     人工の脂質膜に包み込み、細胞融合能力だけが発揮するよう改良したセンダイ     ウイルス(HVJ)と合体させた。
人工的に肝硬変を起こさせたラットの足の筋肉に週1回注射した結果、通常     だと約7週間で肝不全を起こして死亡するのに対し、6~8週間で肝臓の線維     が消失、正常に近い状態に戻った。導入遺伝子によって発病したHGFに加え、     ラットが本来持っている遺伝子も活性化されてHGFが増え、通常より5倍も     HGFが発現していた。HGFは中村敏一・大阪大教授が発見した物質。
同グループの藤元治郎講師は「弱った肝細胞で、肝臓の線維化を進めるTG     F-β-という因子の増加をHGFが抑制することは分かっているが、メカニズ     ムについては今後検討しなければならない。HVJを使ったベクターの安全性     を確認しており、犬を使った実験にも着手した。データーがそろえば、臨床応     用を考えたい」としている。
肝硬変はB型、C型肝炎ウイルスによる慢性肝炎活動型やアルコール性肝障     害、先天性胆道閉塞症から進行する。全国の患者は約20万~30万人。
■抗ウイルス剤が効果
「英製薬大手のグラクソ・ウエルカム社は独自開発した抗ウイルス剤がB型肝炎患者の肝硬変に効果があることを臨床試験で確認したと発表した。米テキサス州で開かれた米国肝臓学会で発表した。
米マイアミ大学のユージーン・ジフ教授らがB型肝炎治療薬「ラミブジン」を2年以上患者に投与した臨床試験の結果、肝硬変を発症していた患者22人中14人で症状の軽減が見られた。さらに51人中26人で肝硬変が発症する前の状態である幹細胞の帯状繊維化をくい止めることが出来た。
これはラミブジンがB型可燃ウイルスによる肝臓の損傷をくい止め、肝臓の組織再生を促すことが出来たことを示しているという」2000.1115《日経産業新聞》
■流動食
「森永乳業の全額出資子会社であるクリニコ(東京・目黒)は、肝硬変など肝疾患を持つ患者向けの流動食を開発した。すでに富山薬科大学などと共同で投与試験を実施した。投与した23人のうち、全員の肝硬変の進行が遅れるという結果を得た。
製品の特徴は、肝硬変の改善には有効だが苦みの元になる『遊離アミノ酸』の配合を最小限度に抑えたこと。」2001.1.25《日経産業新聞》
■投薬で正常化
「肝臓の細胞が線維化し治療が困難とされる肝硬変。線維化を引き起こすのはコラーゲンが原因。肝硬変のラットにコラーゲンの生成を抑える薬を投与して症状が改善させることに新津洋司郎・札幌医大教授らにグループが成功した。
成果は2008年3/31のネイチャー・バイオテクノドジー電子版に発表。
肝硬変は肝炎の慢性化などでコラーゲンが過剰に分泌されて起きる。
新津教授らは、遺伝情報を写し取るRNAの働きでタンパク質合成を抑制する『RNA干渉』という減少に着目し、コラーゲン生成を促す遺伝子の働きを抑えるRNA断片を設計した。これをリポソームという人工膜で包んで、肝臓の中でコラーゲンを作る細胞が取り込みやすいようビタミンAを結合、肝臓内のコラーゲン生成だけを抑制する役を開発した。
肝硬変のラットを使った実験では、薬を投与しなかった60匹が約40日で全滅したのに対し、薬を毎週注射した12匹は生き続け、約5週間で肝臓が正常な状態に回復、副作用もなかった。

  【漢方薬】
    一貫煎
 茵蒿湯
    茵五苓散
    茵四逆湯
    加味逍遥散
甘遂半夏湯
    枳朮湯
    血府逐湯
    柴胡加竜骨牡蛎湯
    柴苓湯
    四逆散
    梔子厚朴湯
    十棗湯
 小建中湯
    逍遥散
    真武湯
    大黄虫丸   
    大柴胡湯
    腸癰湯
    抵当湯
    当帰芍薬散
【宝石療法】
    <1>カーネリアン

■生体肝移植
「費用は2000万円健康保険はきかないので全額自己負担です」
今春、大学病院の説明を受けた中国地方在住の会社員Kさん(54)は、言葉を失った。C型肝炎による重い肝硬変の夫(56)に、自分の肝臓の一部を生体肝移植を決断した直後のことだった。
生体肝移植は1989年以来、症例を重ね、98年には一般の保険扱いとなった。ただ、肝硬変は保険対象が15歳以下の患者に限られている。
病院職員は「肝硬変で年間1万人以上が亡くなっており、移植を保険対象にすると財政が破綻する」と説明。夫の退職金もつぎ込んだKさんは「お金がない人が助からないような保険制度はおかしいい」と憤る。
医療技術の保険適用にあたり厚生労働省は①有効性②安全性③普及性④効率性⑤技術成熟度・・・の観点から総合的に検討しているという。
適用の可否を審議する同省の中央社会保険医療協議会(中医協)では、「生体肝移植への全面適用は、臓器提供は当然との圧力が家族らにかかりかねない」「(要望の強い)不妊治療への保険適用も、女性は必ず子供を産むべきだとの空気を強める」といった慎重論があるという。共通するのは「保険適用の基準が複雑になってきたことだ」と出月康夫・東大名誉教授は指摘する。「技術の進歩が昔ならあきらめていた治療を可能にし、倫理も絡むようになったからだ」
」2002.7.20《日本経済新聞》




 肝機能障害
   ◎肝臓は体内で、最も大きく、最も重く、最も高温の臓器。
      重さはおよそ体重の1/50。男性で1000~1300g、女性で900~1100g。
      1個の肝臓には約2500億個の肝細胞がある。
    <1>肝臓へ入るもの。
      1.門脈からは:胃腸で消化された栄養素を血液にのせて、1分間に1000cc        のベースで肝臓に運び込む。
      2.リンパ管からは:腸で吸収された脂肪を肝臓へ運ぶ。
      3.肝動脈からは:1分間に1500ccの血液が流れ込み、酸素と栄養を補       給する。
    <2>肝臓から出るもの。
      1.栄養素:その人の体に合った500種類以上の栄養素を肝臓で合成し、肝       静脈から全身へ送る。
      2.胆汁:1日500~1000‹。
      3.リンパ。
   ◎肝臓の働き:
    <1>胆汁の分泌:
       胆汁はアルカリ性の消化液で、脂肪の消化吸収を助ける。大便の色は胆汁       の色素に由来する。
<2>解毒作用:
       アルコール、ニコチンをはじめ、体内に入ってきた有毒物質は、肝臓で無       毒化される。たとえば、消化中に作り出されるアンモニアは、そのまま血       液中に混入して体内にめぐると有毒だが、肝臓で無毒な尿素に変わりやが       て体外へ排出される。
    <3>栄養素の合成・分解・貯蔵:
       ①ブドウ糖やアミノ酸をグリコーゲンに変えて肝臓が蓄え、必要に応じて        ブドウ糖やアミノ酸に戻して血液中に放出、血糖量やエネルギー量を調        節する。
       ②ホルモンを生成したり、
       ③常に大量の血液を蓄え循環血液量が不足した時に補う。  ■糖・脂質代謝の仕組み解明
「門脇孝・東京大学教授らのチームは、肝臓内で起きる糖と脂質代謝の仕組みをマウス実験で解明した。成果は2008年7/2、米科学誌「セル・メタボリズム」に掲載。
血糖値が高くなると膵臓からインスリンが放出され、インスリンを受けとった肝臓では脂肪として蓄積して血中の糖濃度を下げる。現在の糖女病治療でも、この仕組みを利用してインスリン投与が行われているが、「同時に脂肪肝を悪化させる問題もある」(門脇教授)
今回の研究で肝臓がインスリンを受けとった後に、2つのタンパク質が連携して血糖を下げることが分かった。1つは細胞から血中に糖が出て行くのを抑え、もう1つは脂肪として肝臓に溜め込もうとする。
空腹時の肝臓では前者が多く発現して働きが強くなり、食後には後者の働きが強くなる。両タンパク質がバランス良く肝臓で働けばいいが、メタボリック症候群では後者の働きのみが強くなる。すると、肝臓に脂肪を蓄積して血糖を下げようとしているにもかかわらず、血中の糖濃度も高いままの状態が続くという。
十分な空腹時間が無いと、肝臓が糖を脂肪として溜め込む機能ばかりが進んでしまうことになる。
細胞の中から糖が血中に出るのを抑制するタンパク質の量を正常に戻す薬が開発できれば、脂肪肝を悪化させない糖尿病薬ができる可能性がある。
 
   ◎肝機能検査には、
   (1)総論
        (目的) (検査項目)
  病因:
      肝炎ウイルス---------------[IgG-HA抗体][IgM-HA抗体]
                  [HBs抗原][HBs抗体][IgG-HBc抗体][IgM-HBc 抗体][HBe抗原][HBe抗体][HBV-DNApolymerase] [HBV-DNA]
[HCV抗体][HCV-RNA]
[HDV抗体]
原発性胆汁性肝硬変------[抗ミトコンドリア抗体]
      代謝性疾患------------------[セルロプラスミン]、[鉄及び鉄結合能]、
                 [α1プロテインインヒビター]
      肝細胞ガン------------------[αフェトプロテイン]、[PIVKA-Ⅱ]
  肝細胞障害:     [GPT][GOT][γGTP][ALP][総胆汁酸][LDH]
  胆汁排泄機能: [総ビリルビン][直接ビリルビン][総胆汁酸][ICG] [BSP]
  タンパク合成機能: [アルブミン][コリンエステラーゼ][プロトロンビ                  ン時間][ヘパプラスチンテスト]
  アミノ酸代謝: [血漿アミノ酸]
  糖代謝: [血糖][グルコール負荷試験][ガラクトース負荷試                  験]
  脂肪代謝: [コレステロール][コレステロールエステル]
  尿素サイクル: [アンモニア][BUN]
  線維化の状態: [Ⅲ型プロコラーゲンペプチド][Ⅳ型コラーゲン]
     間葉系の反応 [γグロブリン][TTT][ZTT]
     門脈-大循環短絡: [ICG][総胆汁酸][血漿アミノ酸][アンモニア][血                 小板]

(各論)
     <1>以下の肝障害を判定するための検査:[HBs抗原][HCV抗体][GPT]
                        [γGTP]
       ①脂肪肝------------------------体重の変化とGPTの組み合わせが敏感に反応
       ②アルコール性肝障害------[γGTP]が最も敏感に反応。
       ③肝炎ウイルスキャリア---肝炎ウイルスマーカー検査が不可欠
       ④潜在性肝疾患---------------[GPT]と[γGTP]の組み合わせが敏感に反応。

<2>使用薬物で肝障害を起こしていないかどうかのチェック:
-------------[GPT]と[γGTP]の組み合わせが敏感に反応。

<3>急性の肝障害:
       ⑤A型肝炎(HA):
             発症時には、IgM-HA抗体が陽性(+)
既往を調べる検査:IgG-HA抗体
             症状が軽快し、GPTが正常化すれば治癒と判定。
⑥B型肝炎(HB):
発症時には、HBs抗原が陽性(+)
             急性では、IgM-HBc抗体価が高い。
             慢性では、IgM-HBc抗体価が低く、IgG-HBc抗体価が高い。
             GPTが2ヶ月以上正常で、HBs抗原が陰性(ー)化すれば治癒。
⑦C型肝炎:
発症してもHCV抗体が陰性(ー)の場合あり。
GPTが6ヶ月以上持続的に正常範囲の場合、治癒とみなす。

     <4>黄疸がある場合:「肝前性」「肝性」「肝後性」に分ける。

(ア)Gilbert症候群:
               間接ビリルビン------------高値
                GPT・直接ビリルビン---正常
LDH---------------------------正常
         (イ)体質性黄疸:(Dubin Johnson 症候群、Rotor症候群)
   間接ビリルビン-------------正常
               GPT・ALP--------------------正常
直接ビリルビン-------------高値
(ウ)肝細胞障害による黄疸:
直接ビリルビン-------------高値
               間接ビリルビン-------------上昇
               GPT-----------------------------高値
               LDT/GPT----------------------低値
(エ)肝内胆汁欝滞or 胆道閉塞性疾患による黄疸:
直接ビリルビン-------------高値
               間接ビリルビン-------------正常
               GPT-----------------------------上昇(軽度~中等度)
ALP-----------------------------高値

     <5>ウイルス性慢性肝炎:
          活動性の判断:[GPT][GOT][γグロブリン]
障害の程度を反映する:[ICG][Ⅳ型コラーゲン]
⑧慢性B型肝炎:
HBe抗原が陽性(+):感染力が強い
            HBe抗原が陰性(ー)で、GPT高値が持続:ウイルスの変異
    肝細胞ガンが発生するので、[AFP]と超音波検査必要。
       ⑨慢性C型肝炎:
            活動型:インターフェロンで30~40%治癒する。
     <6>自己免疫性肝炎:女性に好発。
            肝炎ウイルスマーカー------陰性(ー)
GPT-------------------------------上昇(持続的or反復的)
            γ-グロブリン-----------------高値(2.5g/Œ以上)
以下の検査が必要になる。
               血中自己抗体:LE細胞
                      抗核抗体
抗平滑筋抗体(ASMA)
抗ミトコンドリア抗体(AMA)
               CRP
           赤沈
◎検査の意義(メルクマニュアルp348)
「肝臓は、相互依存性の代謝、分泌、そして防御の機能を担う複雑な器官である。単一の検査のみですべての肝機能を調べることは不可能で、感受性と特異性には限度がある。いくつかのスクリーニング検査には、肝胆道系の異常を発見したり、臨床的に疑われる疾患を鑑別するうえでの基礎となり、さらには肝疾患の重症度を知ることが出来る。多くの検査を行っても、患者の状態改善につながることは比較的少ない」
「自動分析の中で、最も有用なものは、血清ビリルビン、アルカリホスファターゼ、そしてアミノトランスフェラーゼである。コレステロールとLDH(乳酸デヒドロゲナーゼ)はそれほど有用ではない。プロトロンビン時間は、肝細胞疾患の重症度を表す。それ自身で診断が可能な生化学的・血清学的検査はわずかである」
■正常値に個人差大きい
「60代、女性。5年ほど前から、健康診断のγ-GTPの値が正常範囲を超え、50近くあります。今まで、特別な注意を受けたことはなかったのに、今年初めて、肝機能について注意され、大変驚かされました。日頃から健康で、タバコや酒はたしなまず、思い当たる原因もありません。(兵庫県・E子)
γ-GTPは、グルタミールトランスペプチダーゼの略で、胆道系の酵素の1つです。数値は、一般に40国際単位以下が正常とされていますが、個人差が大きく、年齢、性別、飲酒歴で大幅に異なります。食事や運動などの影響は、ほとんどありません。
アルコール性肝障害の診断と常習的に飲酒量が多い人の選別の診断に用い、ALP(アルカリフォスファターゼ)とともに上昇した場合は、胆汁の流れが妨げられていることを示し、肝臓などに重大な問題が起きています。
γ-GTPが異常値を示す疾患には、肝胆閉塞、肝臓ガン、肝炎、肝硬変、アルコール性肝障害、そして薬剤性肝障害があります。
ちなみに、精神安定剤を長期間服用されている方のγ-GTPの基準値は10~100国際単位とされています。健康診断では、血液検査で結果が基準値よりほんの少しでもはずれていたら、要注意と書かれます。
あなたの場合、他の数値は正常のようなので心配ないと思いますが、再検査の必要があるかも知れません。」
   ◎肝障害を引き起こす有害因子(五十音順)
     <1>αーメチルドーパ
     <2>アジュマリン
     <3>エタノール
     <4>四塩化炭素
     <5>化学療法剤
     <6>肝炎ウイルス
     <7>クロルプロマジン
     <8>クロロホルム
     <9>抗生物質
     <10>抗テンカン剤
     <11>毒キノコ(タマゴテングタケetc)
     <12>パラコート
     <13>その他:
       (a)「カリブ海に浮かぶジャマイカ島の住民には肝機能障害をもつものが         多く、肝硬変が多発し、また家畜にも肝障害が多く発生することが知         られていた。この地方には、キク科の[キオンSenecio]、マメ科の[タヌキ         マメCrotaria]などの属やムラサキ科の[ヘリオトロープ属Heliotropium]の         植物が野生しており、住民たちはこれらの植物の葉を「ヤブチャ           (bush- tea)」として飲用していた。」(講談社「天然毒」p16参照)
   ◎検査で異常を示さない肝障害『前肝症候群』
     <1>肝実質には形態学的変化を認めず、肝機能検査の成績は正常範囲であると       いう肝障害。
     <2>症状:全身がだるい
          食欲不振
          右上腹部の不快感を訴える
          疲労しやすい
          根気がない
          イライラする
          顔色がさえない
          皮膚につやがない
          シミが多くなった
          酒に弱くなり早く酔う。
          二日酔いする
     <3>以上のような症状を訴えるばかりで、科学的な方法を駆使してあらゆる検      査をやってみても、どこといって異常を示さない。医学上では病気はない、      ということなのだが、漢方的腹診法をやると、胸脇苦満の腹証を呈している。
(寺師睦宗著「成人病の漢方療法」p110~111参照)
   ■ストレス
      「リストラによる出向で、短期間に肝機能異常者が増加した。調査対象:平       均年齢33才。出向期間平均25ヶ月。48名。       
      (肝臓機能異常者の人数:1名~12名)
      (肥満指数で肥満の人数:13名~25名)
      (ストレスを訴えた者:38名/48名)                      (タバコの本数:14.2~24.4本/1日)
      (アルコールの平均摂取量:140g~298g/週)
   東海大医学部ー岡崎勳教授(地域保険学)の調査。」1995.4.26
   《日本経済新聞》
■薬膳料理
      「牛・豚・鶏のレバー(肝臓)はビタミンと鉄分の宝庫。栄養価と薬膳効果は、      肉より大です。日本では安いですが、内臓の調理方法とおいしさを熟知して      いる中国・西欧では珍重され、肉より高価。台湾・香港やドイツのレバーソ      ーセージ、フランスのフォアグラは、一部の食通には垂涎の品です。
  薬膳では、「以肝補肝」(以臓補臓)と説き、悪性の貧血・生理痛・生理不      順・視力低下・目の充血・夜盲症に効き、美肌に役立つ、とい言います。酒      に弱い人や飲み過ぎる人・肝臓が気になる人には「強肝食」となるレバー料      理が最適です。
       レバーに含まれるビタミンB12と銅は血液を健康にし、ビタミンB15は心      臓の筋力を強化し、ビタミンEはホルモン活動を促します。ビタミンAとB      2の一日に必要な量はレバー2~3切れでOK。しかし、いくら薬膳効果の      すぐれた食材でも食べ過ぎはダメ!ビタミンAの過剰分は体に残り肝臓を疲      れさせ、脱毛・発疹の原因になります。
   レバーを買うコツは、先ず、入荷日を聞くこと。つやが良く、鮮やかな赤      褐色でプリンと弾力のある品を、その日の内に料理するのがベスト。臭み抜      きは牛乳・酒・ワイン・薄い塩水などに晒すよりも、ウーロン茶に3~5分      間漬ける程さん流がおすすめです。
      「肝心かなめ」の肝臓を守るには、ニラ・ほうれんそう・トマトなどビタミ      ンCの多い野菜と共に食べるのが効果的と、「肝に銘じて」ください。程一      彦1996.4.24《朝日新聞》」
■羊膜に肝臓機能を確認
「国立精神・神経センター神経研究所の桜川宣男部長らの研究チームは人間の胎児を包む羊膜の細胞が肝臓細胞の機能を果たすことを確認した。羊膜の細胞を培養血の中で培養したところ、肝臓細胞が分泌するアルブミンを合成していた。また、培養した細胞をマウスの肝臓に移植したところ、ほかの肝臓細胞に混じって定着していた。羊膜が肝臓病の治療のための移植用組織として利用できる可能性を示す成果であるとしている。
桜川部長らは国立小児病院小児医療研究センターの絵野沢伸実験外科研究室室長の研究チームと共同で研究を進めた。インフォームドコンセントを得た上で人間の対峙の羊膜を採取、培養した。
肝臓の主要機能の1つは血清中のタンパク質の50%を占めるアルブミンを合成・分泌すること。羊膜細胞を培養皿の上で培養していくとアルブミンを合成することを確認した。
さらに培養した細胞を注射による門脈から免疫不全にしたマウスの肝臓に注入して移植したところ2週間後には周囲の肝臓細胞と区別無く生着していた。肝臓の中でもアルブミンを合成していることを確認したほか、人間の胎児の肝臓が合成することが分かっているαセトプロテインなどのタンパク質を作っていた。
羊膜は人手が比較的容易な上、移植時に拒絶反応がほとんどないことが知られている。桜川部長のチームはこのほかにもマウスのパーキンソン病の移植細胞を作ることに成功している。」2000.8.18《日経産業新聞》
■1000個で臓器の働き
「2009年、肝臓の細胞は100個集まっても組織的に働かないが、1000個集まれば肝臓の役割を発揮する。東京大学の酒井康行教授らのグループが人の肝細胞を使った実験で明らかにした。
肝細胞を1個から順に数を増やしてガラスの上に張り付け、いくつ集まったときにタンパク質が作られるかを調べた。肝臓が作るタンパク質の1つ。「アルブミン」は肝細胞が1個、10個、100個ではほとんど検出されなかったが、1000個以上集まったときには確認できたという。
肝臓が作り出し、解毒作用に関係する酵素タンパク質が活性化するかどうかでも、肝細胞が1000個以上集まったときに働きが高まることがわかった。
【宝石療法】
    <1>[カーネリアン]
    <2>[ヒッデナイト
    <3>[イエローシトリン]
  【漢方療法】
   <1>急な場合にはゆるめてやる:主薬[甘草]
                  粳米・牛肉・棗・葵を食べさせる。
   <2>酸味を食べる・・・酸味が肝の本来の味。
              麻・狗肉・季・韭を食べさせる。
   <3>肝が弱い・・・[四物湯][清肝湯][補肝丸]
   <4>重いとき・・・[瀉青丸][洗肝散][当帰竜薈丸]
  【漢方薬】
    柴胡桂枝乾姜湯
    柴胡桂枝湯
四逆散
    瀉青丸・・・・・・(慢性に)
 小柴胡湯
    清肝丸・・・・・・(肝経が血虚して怒火がある者)
    洗肝散・・・・・・(慢性に)
    大柴胡湯
    当帰竜薈丸・・・・(肝臓の実熱で脇痛が生じた)
    補肝丸・・・・・・(肝虚を治す)

   ◎GOT・GPT値を下げる薬物(五十音順)。
     (1)黄檗
     (2)甘草
     (3)鶏内金     
     (4)五味子
     (5)柴胡
     (6)山梔子
     (7)水牛角     
     (8)水飛
     (9)大黄
     (10)大青葉
     (11)丹参
     (12)朝鮮
     (13)田基黄
     (14)当帰
     (15)半枝蓮    
     (16)蒲公英
     (17)竜胆草    
     (18)霊芝
     (19)連翹

◎ZTT・TTT値を下げる薬物。
      (1)欝金
      (2)黄蓍
      (3)黄精
      (4)草河車
      (5)丹参     
      (6)当帰
      (7)桃仁
      (8)板蘭根

   ◎アルブミン値を上げ、グロブリン値を下げる薬物。⇒タンパクの合成作用を促進。
      (1)黄蓍
      (2)黄精
      (3)鶏血藤
      (4)甲珠
      (5)山薬
      (6)当帰
      (7)党参     
      (8)白朮

   ◎血小板及び赤血球を増加する薬物。⇒血小板と肝硬変とは、相関性がある。
      (1)阿膠
      (2)何首烏
      (3)亀板膠
      (4)熟地黄
      (5)生黄蓍
      (6)桑椹子
      (7)大棗
      (8)当帰
      (9)鹿角膠   
   ◎肝臓の保護及び肝細胞を再生する薬物。
      (1)黄蓍
      (2)甘草
      (3)枸杞子
      (4)柴胡
      (5)水牛角
      (6)水飛
      (7)生地黄     
      (8)沢瀉
      (9)朝鮮
     (10)当帰
     (11)霊芝
     (12)連翹

   ◎肝臓の腫大を治し、軟化させる薬物。
      (1)夏枯草
      (2)紅花     
      (3)甲珠
      (4)生牡蠣     
      (5)沢蘭葉
      (6)丹参
      (7)桃仁
      (8)鼈甲
      (9)凌霄花
 【臨床例】   
☆35歳、男性。
      「主訴は肩から頸にかけての凝り。口渇は対してないが、よく水を飲むとの      こと。食欲は普通で、肉類を好む。甘いものが好きで、香辛料と酒は以前は      よく摂ったが、肝臓が悪くなってからは控えている。タバコは1日20本程      度。便通は1日1~2回で、小水は7~8回ある。それから暑がりである。      体格は76kgの偉丈夫型であるが、筋肉にしまりがない。栄養は良好で、顔      色は黄色味を帯び、脈はやや弦で、舌に白苔がついている。腹診すると胸脇      苦満があり、臍上で動悸をふれ、下には力がない。いわゆる下不仁であ      る。
この患者は76kgの肥満型で、胸脇苦満があり、一見すると大柴胡湯を与      えたいようなタイプであるが、筋肉にしまりがなく、臍上に動悸があり、そ      のうえ下不仁があるので、小柴胡湯を投与した。これに肝機能を調整する      茵と梔子を加えた。
本方を服用すること7ヶ月、実によく効いてGPTは47→20、GOTは43      →22となった。腹診すると胸脇苦満をわずかに残すのみで、臍上の動悸も      下不仁もとれて腹力がつき、顔色も黄色味が消え健康色になった。」(寺      師睦宗著「成人病の漢方療法」p124~p125)



 肝細胞ガン(HCC)
■病態
肝細胞から発生したガン
■検査
AFP
AFPクレチン分画・・・特異性が高い。
AFP-L3分画は10~15%
PIVKA-Ⅱ
40mAU/ml以上
AFPと相補的にカバーする
特異性が高い
腫瘍が大きいと高値になる
腹部超音波
CT
MRI
肝動脈・門脈造影
腫瘍生検
■薬
「ゼリア新薬工業は2008年、国内で肝臓ガンの一種である肝細胞ガンの治療薬について臨床試験を始める。成功すれば国内初になる。
治験を始める「Zー208」はガン細胞を殺したり、ガン細胞の栄養路になる血管が新しくできるのを抑える。現在は日本新薬が「アムノレイク」名で白血病の治療薬として発売。
肝細胞ガンの治療は外科的切除やラジオ波で患部を焼く方法が中心。外科手術ができない患者(肝機能や心機能が低下した)向けに飲み薬が必要。
幹細胞ガンは5年以内に約7割が再発する
肝臓ガンには他の臓器から転移した転移性と、肝臓で癌が発生した原発性の2種類ある。肝細胞ガンは原発性肝ガンの1つ。





 肝性昏睡
   (参照→傾眠症)
   ◎昏睡度:6タイプ
  【漢方薬】
    至宝丹


 肝性脳症
  heoatic encephalopathy
   ⇒肝不全の部分症状として見られることが多い。
   ◎肝障害による意識障害を中心とした精神神経症状。
    代謝異常にもとづくもので、改善すれば、障害を残さず症状は消失する。
   ◎分類:
     急性肝不全に伴うもの
     慢性肝疾患急性肝障害
     慢性肝疾患で消化管出血で窒素不足
     肝機能が廃絶
     その他


 肝臓肥大
=肝腫大hepatomegaly。
⇒肝胆道疾患や白血病、リンパ腫などで見られる。
   ◎肝臓の腫大を治し、軟化させる薬物。
     1.夏枯草
     2.紅花
     3.甲珠
     4.生牡蠣     
     5.沢蘭葉     
     6.丹参
     7.桃仁
     8.鼈甲
     9.凌霄花
【宝石療法】
    <1>カーネリアン
  【漢方薬】
   茵蒿湯
加味逍遥散
    炙甘草湯
     



 肝膿疱(かんのうほう)
   ⇒肝臓に空洞が出来ている病気。空洞の大きさは小さなものから子供の頭ぐらいま    でいろいろある。中に透明~やや黄色の液体が溜まります、
   【原因】
<1>非寄生虫性
(1)先天性~肝臓の中の胆管が形作られる際に先天的な異常があって、               組織の一部が残り、これがタネになって空洞になる。大               部分がこのタイプ。
            ○症状がなければ特に治療の対象にならない。
            ○バッド・キアリ症候群を合併することがある。
         (2)外傷性
      <2>寄生虫性:エキノコックスという寄生虫が原因。『包虫症』と呼ばれ要            注意。
        『包虫症』=肝臓に膿疱を起こす寄生虫病で経口感染する。単包虫症と              多包虫症がある。単包虫症は東北地方以南に多く、比較的              良好。しかし、北海道でみられる多包虫症は、数年から10              数年にわたって進行、肝不全などに進行することもある。
   【治療】
超音波の映像を見ながら、膿疱中に溜まっている液体を取り除き、カテーテルでエ      タノールを入れて細胞を壊死させる。寄生虫性には、手術で患部を切除。
戸田剛太郎東京慈恵会医大教授(第一内科)1995.10.15《朝日新聞》





 肝膿瘍
■病態
細菌・真菌・赤痢アメーバなどが原因となる
■検査
白血球 
増加
左方移動
アメーバでは好酸球増多を認めることがある
CRP・・・陽性
腹部エコー
穿刺液検査
  【漢方薬】
    闌尾清解湯


 肝斑(かんはん)
⇒30歳以上の女子の顔面の左右対称に生じる淡褐色の色素沈着。
⇒顔面(特に前額・眼周囲・頬・・)に比較的輪郭がはっきりした黒褐色の色素沈    着を生じるもの。
    思春期以後の女性に多く、夏期に悪化しやすい。
      <1>前額部から眼の周囲、頬骨部。
      <2>自覚症状はない。
  【漢方薬】
    黄連解毒湯
 加味逍遥散
    帰調血飲
    桂枝茯苓丸
    梔子柏皮湯
    大黄牡丹皮湯
    大柴胡湯
    桃核承気湯
    当帰芍薬散


 肝不全
   hepatic failure
  ⇒肝機能が高度に障害されたために現れる状態。
    肝性脳症・黄疸・腹水・血液凝固障害・各種ホルモン異常など、様々な程度に入    り混じってみられると共に、腎不全などの他臓器障害をも伴うことが多い。金芳    堂ー内科診断学p480より。
    炙甘草湯
    ■診断に統一基準をつくろう。1996.2.11《朝日新聞》
      「肝不全は普通、血液中の総ビリルビン値やプロトロンビン時間活性値(血      液の凝固能力)などの検査値をもとに診断する。」




 肝レンズ核変性症
   =「Wilson病」


 感情不安定(感情が不安定)
   ⇒感情の起伏が激しい
   ■感情測定
     「脳機能研究所(川崎市、社長・武者利光東京工業大学名誉教授)は、喜びや悲     しみ、疲労感など12種の感情を測定出来るシステムを開発した。
  システムは感情の変化に伴って脳の特定位置でのアルファ波、ベータ波など     の各脳波の大きさが変化することを利用した。脳波は被験者に頭に付けた10     ヶ所の電極で拾い、そのデータを新開発のファジー論理ソフトウエアーで解釈     する。脳波の解析はこれまで、専門家でなければ難しかったが、新システムは     素人でも読みとれるようにした。
  感情や好みを数値化する試みは感性工学と呼ばれる。1996.7.13《日本経済新     聞》」
  【漢方薬】
 茵蒿湯
 温経湯
 加味帰脾湯
 加味逍遥散
 帰脾湯
    荊芥連翹湯
    桂枝茯苓丸
    香蘇散
    柴胡加竜骨牡蛎湯
    柴胡桂枝乾姜湯
    柴胡清肝湯
    柴朴湯
    三黄瀉心湯
    四物湯
    参蘇飲
    大建中湯
    当帰四逆加呉茱萸生姜湯
    当帰芍薬散
    補中益気湯
    六君子湯
    苓桂朮甘湯


 感覚異常
    (参照→しびれ)(→足のしびれ)(→手足のしびれ)
  【漢方薬】
    消風散
    大柴胡湯
    当帰四逆加呉茱萸生姜湯


 感覚異常性大腿神経痛
    (参照→しびれ)
   ⇒骨盤の周りを圧迫することで発症。
   ◎症状:①大腿部の外側のかなり広い範囲でシビレる。
②筋肉の麻痺は起こらない。
   ◎診断:骨盤のちょっと下を指で叩いて、大腿部のシビレている部分に電気が走れ       ば、感覚異常性大腿神経痛です。
   ◎注意:①骨盤内の悪性腫瘍が原因のことがあります。
②きついガードルやジーンズが原因になることがあります。


 感染症 infectious disease
(参照→「0-157」「角膜炎」「サルモネラ」「食中毒」「院内感染」
         「Bウイルス」)
   =「伝染病」
   ⇒ウイルス・クラミジア・リケッチア・細菌・真菌・原虫・スピロヘータ・寄生虫    などの微生物が人体(動物)に侵入して、臓器・組織の中で増殖することを感染    infectionという。
   ■微生物などで発病
    「微生物などの病原体が体の中に侵入して住み着き、増殖して活動を始め、声帯     に何らかの反応を起こしたとき、感染が成立したという。感染の結果として、     人に自覚症状が出たり、実際に困った状態になるのが、発病である。感染によ     って、引き起こされる病気を「感染症」という。病原体が単に住み着いただけ     で何の反応も示さない場合や、発病せず感染が持続している人を保菌者とかキ     ャリアと呼ぶ。
インフルエンザウイルスのように病原体が体に侵入して住み着いたら時間転     移で発病する場合から、、感染してもなかなか発病しない場合などいろいろだ。     発病していても軽く済んで気が付かない場合も多い。
たとえばMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)のように、場合によって     は致命的になるような菌でも、単に住み着くだけの場合もある。今は感染予防     対策が整っているが、以前のB型肝炎ウイルスの母子感染ではウイルスが母か     ら子に感染した。多くの場合当面は発病しないでキャリア状態がしばらく続く。
原因になる病原体が直接的あるいは間接的に(動物や物を介して)人から人     へ伝搬することが多いことから、特に重い症状を起こしたり、感染力の強い感     染症が長い間『伝染病』と呼ばれてきた。この呼び方は伝染病対策と結びつき、     社会防衛の目的のもと個々人の人権が軽視されてきた経過を反省、『感染症』     という呼び名に最近改められた。1999.1.18《日本経済新聞》
   ◎寄生虫による感染症 (→寄生虫)
     <1>「横川吸虫」:
        アユの背ごし、シラウオのおどり食いなどが原因。アユのウロコの下         に付いている。
        人間の小腸に寄生する。
        自覚症状なし。
     <2>「ランブル鞭毛虫」:
        汚水・沢の水などの中。東南アジアで氷菓を食べた人。
     <3>「アニサキス症」:
        症状:激しい腹痛
           下痢しない
           発熱しない。
        130種類以上の魚に付いている。
        魚の内蔵(回遊魚に多い)
        魚が死ぬと、時間と共に身のほうへも移動する。
        60℃以上で死ぬ。
        20℃で、2日以上冷凍。
        酢やアルコールでは死なない。       
   ■世界の新しい感染症(1997厚生省白書から)
     <1>エイズ---------------------------------------91年米国で発見
     <2>エボラ出血熱-----------------------------76年コンゴで発見。
     <3>O-157---------------------------------------82年米国で発見。
<4>牛海綿状脳症-----------------------------86年英国
     <5>C型肝炎------------------------------------89年米国
     <6>腎症候性出血熱---------------------------77年韓国
     <7>サルモネラ・エンテリティディス--88年英国
     <8>クリプトスポリジウム-----------------76年米国
     <9>成人病細胞白血病-----------------------80年日本
     <10>D型肝炎----------------------------------80年イタリア
     <11>ビブリオコレラO139-----------------92年インド
     <12>ブラジル出血熱-------------------------94年ブラジル
     <13>ベネズエラ出血熱----------------------91年ベネズエラ
     <14>レジオネラ症----------------------------76年米国
   ■B群溶連菌(GBS)が増えている。
     「GBSは母親の産道から新生児に感染、生後まもなく髄膜炎なごを起こす」
◎黄疸を伴う感染症:(五十音順)
        ウイルス性肝炎
        胆道感染
        伝染性単核症
        敗血症
        マラリア
        薬剤性黄疸
        ワイル病
   ◎発熱を伴う感染症:(五十音順)
        Gianoti病
        エンテロウイルス感染症
        細菌性心内膜炎
        猩紅熱
        水痘(水ぼうそう)
        炭疸病
        腸チフス
        ツツガムシ病
        手足口病
        デング熱
        伝染性紅斑
        伝染性単球症
        突発性発疹
        敗血症
        はしか(麻疹)
        風疹
   ◎リンパ節腫脹を伴う感染症:(五十音順)   
     全身のリンパ節が腫れる感染症:
        結核
        サイトロメガロウイルス感染症
        デング熱
        伝染性単球症
        トキソプラズマ症
        梅毒(2期)
        HIV感染症
        風疹
        ブルセラ
  麻疹(はしか)
        野兎病
     局所のリンパ節が腫れる感染症:
        咽頭炎
        結核
        細菌性リンパ節炎
        ジフテリア
        性器ヘルペス
        猫ひっかき病
        梅毒(1期)
        風疹
        野兎病        
◎脾腫を伴う感染症:(五十音順)
        オウム病
        感染性心内膜炎
  栗粒結核
        腸チフス
  伝染性単核症
        マラリア
   ■ビタミンEが予防。
     「米農務省の農業研究所は、植物性油脂に多く含まれるビタミンEを適量摂      した高齢者は、感染症に対する免疫力が高くなるという研究成果をまとめた。
      65歳を超えた高齢者に6ヶ月に渡り毎日200mgのビタミンEを摂取してもら      ったところ、B型肝炎のウイルスに対する免疫力が摂取しなかった人に比べ      て抗体の量でも6倍も高かった。
   しかし、800mg摂取では逆に、ビタミンEを摂取しない場合よりも免疫力 が弱まった。1997.5.29《日経産業新聞》
■関節の感染症
「4歳になるS子ちゃんの右足は短く、歩くと右半身が下がるような格好になる。膝から下の長さは左右同じだが、右大腿部は細く短縮している。レントゲン写真では大腿骨の頭である骨頭が右側は消失している。現在は痛みがないが、将来は歩行障害や痛みが現れてくる心配がある。
S子ちゃんは出生時の体重が1850gの未熟児であった。生後まもなく敗血症に罹り集中治療室で治療を受けた。高熱は約2週間続いたが、抗生物質を中心にした治療で一命を取り留めた。しかし元気になりかけた頃、右大腿部の内側が腫れていることに気づき、化膿性股間節炎と診断され、緊急手術を受けた。その後経過を見ていたが、痛い骨の骨頭は発育せずに現在に至った。
整形外科の先生の話では強い化膿性炎症のために骨頭が溶けてしまったと言う。関節に起こる感染症を関節炎、骨の内部に起こる感染症を骨髄炎と呼ぶが、毒性の低い細菌やウイルスによる炎症の多くは後遺障害を残さない。
一方、対に抵抗力が十分ある様な場合には、安静や薬による治療で治すことが出来る場合が多い。しかし、未熟児や抵抗力の弱い乳幼児は全身性の感染症が起きると、骨や関節が犯される化膿性が高く、これらの組織の破壊に至る点で問題は大きい。
感染症は関節では股関節・肩関節・膝関節が、骨では大腿骨・脛骨・上腕骨などに発生することが多い。化学療法の進歩により近年感染症の予後は良好になったが、年齢や全身状態によっては骨・関節に大きな後遺障害を残すことがある。」(坂善豊教・国立小児病院整形外科医長)1999/11/29《日本経済新聞》
   ■ハンタウイルス
    「米疾病対策センター(CDC)の研究者らは、ネズミが媒介し、重症な場合には     呼吸困難に陥って死亡する『ハンタウイルス感染症』が人間から人間へ直接感     染した可能性のある最初の例がアルゼンチンで見つかった、と16日発行の米     新興感染症誌に発表した。
 今後さらに詳しく追跡調査する方針だが、最終的に感染が確認されれば、各     国の厚生担当者や防疫関係者に大きな衝撃を与えそうだ。
 CDCによれば、アルゼンチン南部の3つの町で昨年の9月~12月までに     ハンタウイルス感染症に罹り、11人が死亡した。
  感染ルートを調べたところ、最初に感染した41才の男性に続いてその男性     の母親や主治医、主治医の妻が感染、続いてこの妻を診察した遠隔地の医師ら     が次々と感染したことが判明した。
   最初の感染源はネズミが媒介したと見られるが、その後はネズミが関係した     形跡は全くなく、人間を通じて感染が広まった可能性が強まったと推測した。
 米国では93年以来、162人がkのウイルスに感染、76人が死亡。         日本でも70年代半ばから80年にかけて、全国の大学の実験施設の動物が     汚染され、研究者が死亡するなど大きな問題になった。1997.6.17《日本経済新     聞》
   ■感染症、世界の死因の1/3。
     「世界保健機構(WHO)の年次報告によると、95年に全世界で約5200万人が     死亡、その1/3に当たる約1700万人が感染症で命を落とした。数年前まで多     くの感染症は、抗生物質などでたやすく克服できると考えられていた。しかし、     そんな楽観論は今や完全に消えた。
   一度は制圧されたかに思えたマラリアや結核が世界各地でカムバックしつつ     あり、エイズウイルスの猛威は衰えを見せず、致死率が非常に高いエボラ出血     熱など治療法も分からないような新たな感染症が過去に例のない割合で続々と     出現している。
      死亡者が最も多いのは、いわゆる『かぜ』の440万人。うち99%が途上国     の死者で、そのほとんどは5歳未満の幼児だ。次いで多いのは『結核』と『下     痢』の約300万人。下痢には『Oー157』などの病原性大腸菌も含まれる。さ     らに『マラリア』で200万人が、『B型肝炎』と『麻疹』『エイズ』でも100万     人以上が死亡している。1996.8.19《日本経済新聞》」
■世界で1300万人死亡
「国際赤十字社・赤新月社連盟は28日発表した2000年版「世界災害被害」で、エイズやマラリアなどの感染症による死者が1999年に1300万人に上り、地震やハリケーンなどの自然災害より160倍、多くの人命を奪っていると指摘した」2000.6.29《日本経済新聞》
  ■原因不明の風土病の犯人
    「検出技術の進歩で原因菌が見つかり、それまで原因不明の風土病などとして扱     われてきた病気が改めて新興感染症として注目を集め始めてケースがいくつか     ある。それらはスピロヘータやリケッチアといった人口培養が不可能or困難     な細菌によるものが多い。
      スピロヘータによる病気には、「梅毒」や「回帰熱」がよく知られるが、「ラ     イム病」が新顔として付け加わった。
77年に米国コネチカット州ライム地方で起こった関節炎の集団発生が契機     になって、研究が進み、原因菌であるボレリア(スピロヘータの仲間)が見つ     かった。米国では94年だけで13000人の患者が報告されている。世界中に分     布し、日本でも89年に北海道で自衛隊員の集団発症が話題になった。野生の     ネズミなどが保菌動物で、マダニが媒介する。
リケッチアによる病気では、2種類の「ヒト・エールリッヒ症」と「ネコひ     っかき病」が新たに登場した。
    「ヒト・エールリッヒ症」もダニによって媒介される病気で。第一号は54年に     日本で見つかった「腺熱」である。九州地方に多く見られ、熊本県では「鏡熱」、     宮崎県では「日向熱」と呼ばれていた。最近になって新たに「ヒト単球エール     リッヒ症」と「ヒト顆粒球エールリッヒ症」が米国で見つかった。白血球の一     種である単球又は顆粒球に感染し、その中で増殖する。
      これらは人口培地では増えず、分子生物学的手法で初めて診断可能になった。     患者の血液中にあり、生物ならばすべてが持っている『16SリボゾームRN     A核酸』を増やして得た遺伝子の塩基配列を解析し新種であると決定した。米     国ジョージア州での疫学調査によれば、ヒト単球エールリッヒ症患者は、登山     者が頻繁に罹ることで知られる「ロッキー紅斑熱」より患者数が多いという。     診断法の進歩に世って原因不明熱性疾患とされてきた病気に診断がつくように     なった一例である。
「ネコひっかき病」は、原因として新種の細菌が多数報告されたが、両世界大戦     中に東欧で大流行した「塹壕熱(ざんこうねつ)」の病原体によく似たバルトネ     ラ(リケッチアの仲間)が原因であると確定した。保菌動物のネコは症状が出     ない。ネコノミにも菌がついているが、媒介への関与はまだ分からない。米国     では飼い猫の半分近くが菌を持つとの報告もある。免疫異常があるときは別の     重い病気になる。
日本で再び増加傾向にある「つつが虫病」の病原体リチケッチアの一種であ     る。ツツガムシに咬まれることで起きる急性熱性感染症で、東北地方の日本海     側河川地域で夏に発生する致死率の高い病気として恐れられてきた。届け出件     数が年に数人まで減り一時は消滅が善そうされたが、78年頃から患者数が増     え、死者も出るようになった。今では首都圏でも発生する。最近、野外生活を     した心当たりがあるときはツツガムシに咬まれた痕跡を探すことが重要。早期     診断と早期治療が決めてである。(吉川昌之介・日本歯科大学教授)1997.11.9     《日本経済新聞》 (→ツツガムシ病)
   ■遺伝子診断
    「遺伝子検査可能な対象疾患は生活習慣病まで広がっているが、日常的な診断を     可能にする健康保険適用を受けているのは[肝炎]など感染症の検査だけだ。血     液中の抗体を調べる従来法に比べると、遺伝子検査は病原体の遺伝子を直接と     らえるため確定診断が可能。
感染症の診断は病原体であるウイルスや細菌などの遺伝子DNAの有無をチ     ェックする。患者の血液や細胞からDNAを取り出してポリメラーゼ連鎖反応     (PCR)法でその数を検出可能な量まで増やし、それぞれの病原体に特徴的な     遺伝子の塩基配列から病気を特定する。
対象とする病気は歯肉口内炎を起こす「ヘルペスウイルス」から「C型肝炎」     「結核菌」など幅広い。
国立感染症研究所は最近「デング熱」の早期診断に成功した。感染の疑い     のある患者の血液をPCR法を使って検査、数時間で診断がついた。抗体を用     いた検査では最低でも1週間はかかったという。エイズのように体内で抗体が     出来るのに時間がかかる感染症に対しても有効で、輸血による感染症の回避が     出来るとして厚生省は都道府県の医療機関の輸血部門への導入を検討してい      る。1998.3.10《日経産業新聞》
   ■新種ウイルス85人死亡
    「マレーシアでブタが感染源とされる感染症で住民多数が死亡している事が分か     り、米国疾病対策センター(CDC)は、『日本脳炎』とは別に新種のウイルス     が存在することを確認した。
マレーシアでは昨年10月以降、マレー半島中部の養豚農家を中心に熱病が     流行し、200人以上が感染。使者は最近、ますます増加傾向にあり、4日ま     でに85人が死亡した。隣のシンガポールでもブタの輸入に関係した1人が死     亡している。
マレーシア保健当局はこのほど、「大半のケースは新しく発見されたウイル     スが原因」との見解を発表した。
マレーシアでは、数千人の軍や警察が出動し、養豚場のある集落の消毒作戦     を続けるとともに、住民に防水手袋やゴーグルの着用を促しているが、沈静化     する気配は見えていない。
CDCの調査によると、患者の大半は養豚農家の成人男性。生きたブタと接     触にない患者の家族は発病していないことから、蚊などの昆虫を介した感染や、     人から人への感染力はほとんど無いとみられている。
国立感染症研究所感染症情報センターの岡部信彦・感染症情報室長は「現段     階では、日本からの渡航や旅行を制限する必要はないが、現地で生きたブタと     の接触は避けた方がよい。日本脳炎の流行もあり、渡航者は日本脳炎ワクチン     を接種すべきだ。」と話している。
   ■「ブタ熱病」のウイルスに命名
    「マレーシア保健省は12までに、同国内でブタから感染し住民多数を死亡させ     ている新種の熱病ウイルスに『ニパ・ウイルス』という名前を付けた。最初に     このウイルスが検出されたヌグリセンビラン州の農村名から取った。」
■病原大腸菌で新生児が死亡
「生まれてすぐの赤ちゃんが大腸菌に感染して敗血症を起こし、死亡する例があることが、岡山市で開かれた日本未熟児新生児学会で報告された。
名古屋第一赤十字病院小児医療センターで今年2月、女児に呼吸困難などが起き、出生後17時間で死亡した。女児からは、病原大腸菌[O6]と呼ばれる菌が検出され、死因はこの菌による敗血症とされた。母親からも同じ菌が検出され、母親から感染したとみられた。
同センターでは、1997年から2年間、入院した新生児1184人を大正に病原大腸菌の感染を調べている。このうち約8%に当たる96例から[O6][O18]などの病原大腸菌が検出された。母親からの感染の可能性もある出生3日以内の検出は約30%あった。しかしどの例でも新生児には症状が無かった。
戸苅創・名古屋市立大助教授(小児科)は「母親に症状がなくても子供に感染するころがある。新生児に原因不明の熱や下痢が起きたら、病原大腸菌の可能性も頭に入れて対応する必要がある」と話している。」1999.12.12.《朝日新聞》
■毒素抑制物質
「藤井豊・福井大学助教授と木元久・福井県立大学助教授は、のどの炎症などを引き起こす病原菌である溶血性連鎖球菌(溶連菌)が分泌する毒素の働きを抑えるタンパク質の存在を突き止めた。
感染症は溶連菌が分泌する『ストレプトリジンO(SLO)』と『NADasc』という2つの毒性タンパク質が引き起こす。
SLOが細胞膜を溶かし、その穴からNADascが侵入する。
NADascが細胞がエネルギーをまかなうのに不可欠な補酵素(NAD)を破壊するため、細胞は死んでしまう。
木元助教授らは、溶連菌がNADascを自分の内部で作りながら死なないことに着目し、NADascの働きを妨害する物質の存在を仮定した。抗体を使った実験により、溶連菌内部でこの阻害物質が実際に作られていることを確認した。この阻害物質を『SNI』と命名した。20067/18《産業》


【対策】
    <1>食品購入
      イ)賞味期限の確認。
      ロ)肉汁や魚は個別にビニール袋に入れて分ける。
      ハ)生鮮食品は買い物の最後に購入する。
    <2>保存方法
      イ)食品を直接床に置かない。
      ロ)冷蔵庫に詰めすぎない。70%までに抑える。
      ハ)冷蔵庫を10℃以下。冷凍庫は一20℃を保つ。
    <3>調理
      イ)肉料理
        a)ミンチ肉は、完全に熱を通す必要がある。(80℃以上)
        b)電子レンジは加熱ムラがあるので要注意。
      ロ)生野菜
        a)肉を使ったまな板は使わないこと。
        b)調理の前に手をよく洗う。
        c)逆性せっけんを使う。
      ハ)包丁、まな板は熱湯消毒。
    <4>食事
      イ)食前には、必ず手を洗う。
      ロ)食卓の上に、いつまでも食べ物を放置しない。
    <5>食後
      イ)あやしい食品は、思い切って捨てる。
      ロ)温め直しも、80℃以上。
      ハ)電子レンジは、ムラがあるので、途中で中身をかき混ぜる。
       又は鍋に移して温め直す。  
<6>スリッパをやめる
「家庭は別として、不特定の人がはくスリッパは不潔です」と、堤寛・東海大学医学部助教授(病理学)は指摘する。
共用スリッパは水虫などの菌感染を増やす。足から足ばかりでなく、履くときに手で触るため、手を介して感染を広げる可能性もある。スリッパを重ねると床の汚染物質を足に移す。
土足はたしかに床を汚すし、傷める。しかも、靴に付着した菌が運び込まれる。日本人は何となくスリッパに履き替える方が衛生的と信じ込んできた。
その証拠に、建物内は土足にしたが手術室は内ばき、という病院が圧倒的に多い。外科医や麻酔科医は自分専用の、たまに入る医師らは共用のスリッパやサンダルを履く。床の菌が舞い上がり、患者に感染すると心配する。「床をきちんと掃除していれば感染率も変わらないことがわかり、欧米は手術室も土足です」と堤さん。つまり、スリッパは感染対策上はマイナスということになる。」1999.12.19《朝日新聞》
【参考】
     成田空港検疫所(http://www.narita-airport.or.jp/quarantine)
  海外渡航の健康・医療情報相談
         慶応義塾大医学部 03-3353-1211
    東京慈恵会医大 03-3433-1111
    海外邦人医療基金 03-3593-1001
    渡辺義一氏 045-563-3858(月曜・AM9:00~PM6:00)
                      1996.5.26《朝日新聞》」
  【芳香療法】
    <1>以下の抗ウイルス性・殺菌作用のある精油を、患者の病室と家全体を[エアー     スプレー]することで患者の回復を早めるだけでなく、家族を感染から守りま     す。
       ①ベルガモット
       ②ユーカリ
       ③ラベンダー
④ガーリック
       ⑤ティートリー
    <2>[エアースプレー(airsprays)]:
精油を水に混ぜ、陶製のスプレーで噴霧します。病気の流行期には精油30 ~40滴/200ccをスプレーします。
      又は200ccの水に20滴の精油を加えて、部屋を香らせる。
    <3>ラベンダー畑で働いていた労働者たちは、ペストの感染から逃れました。薬      草園でハーブを扱っていた庭師たちもペストの感染から守られました。また、      フランスのトゥルーズでは、ペストの犠牲者たちの遺体の着衣をぬがせて盗      んでいた盗賊団は、ビネガー・クローブ・セージ・マージョラム・ローズマ      リー・ジュニパー・カンファー・ワームウッド・メドウスイート・ホアハウ      ンド及びアンジェリカの芳香薬剤で、自分たちは病気に罹りませんでした。
■抗菌薬「リネゾリド」
「米大手製薬会社ファルマシアは、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)などによる感染症を治療する抗菌薬『リネゾリド』が、従来の治療薬よりも手術後の皮膚や組織への感染に短時間で効果が出ることを600人近い患者を対象にした臨床試験で確認。
リネゾリドは「ザイボックス」の名で今年4月から米国で販売している。日本では厚生省が承認申請中。2000.9.21《日経産業新聞》
  【食事療法】
    <1>ヨーグルト
    <2>乳酸菌
  【宝石療法】
    <1>マラカイト-------感染の阻止。
【西洋薬】
「ジスロマック」(一般名:アジスロマイシン)ファイザー製薬
   1日1回、3日間服用で 7日間効果持続。
  【漢方薬】
 黄連解毒湯
 葛根湯
    甘露消毒丹
    桂枝湯
    犀角地黄湯
    再造散
    四逆散
    小青竜湯
    清営湯
    清暑益気湯
    大承気湯
    大青竜湯
    胆道排石湯Ⅱ号方
    白虎湯
    麻黄湯
■ハエ体内の抗菌タンパク質
「理化学研究所の名取俊二特別招聘研究員を中心とした研究チームは、ハエの体内にある物質を元に新しい抗菌物質を合成することに成功した。ハエが細菌から身を守るために作っているタンパク質の一種をもとに作った。天然のものに比べて1/4ほどの大きさの分子で、ほぼ同等の効果がある。
名取研究員らが着目したのは、細菌から体を防御するためセンチニクバエが作る『ザーペシンB』という抗菌タンパク質。ハエの体内にあるザーペシンBは40個のアミノ酸が結合してできた筆禍雨滴大きな分子。研究グループはこのなかの抗菌性を発揮する部分だけを残して、9個のアミノ酸からなるタンパク質(ペプチド)を合成した。」2000..4.13《日経産業新聞》





 感染性アナフィラキシー
  【漢方薬】
    防已黄蓍湯


 感染性胃腸炎
■ノロウイルス
「ノロウイルスが原因となる感染性胃腸炎、2006年11/20~26の1週間に1医療機関に訪れた患者数は19.8人となった。ノロウイルスは生ガキのような二枚貝などに含まれている。ウイルスに汚染した貝を食べると移るほか、ウイルスが大量に含まれている感染者の吐いた物や便から感染する。
感染すると、激しい下痢や嘔吐・腹痛を起こす。」




 感染性粉瘤
   ⇒頭・顔・背・外陰部・指趾などに発生する、弾性硬の皮内あるいは皮下腫瘤。
◎時に、壁が破れ周囲に異物反応を起こす。


 感電
  【漢方薬】
    四順清凉飲(カミナリに感電)


 感冒⇒(風邪)common cold⇒を見てください。     

 疳眼(かんがん)
   =小児に発する[むしめ]。

 疳疾(かんしつ)
   =子供の疳症(かんむし)。小児の痩削病。
   ⇒疳というのは、乾という意味で、痩せて血が少ないことをいう。本病は種々の慢    性的疾患によって痩せ衰え、津液が乾枯するもので、古代の小児4大証(痘・麻    ・驚・疳)の1つに上げられている。
      幼児や20才以内の症・・・・「疳」
      20才以上の症・・・・・・・「労」という。
   ◎気血が虚弱し臓腑が傷ついたところから来るもので、面黄して肌痩し、毛髪は焦    枯し、腹は大きく青筋が見え、精神が衰弱するなどの臨床上の特徴がある。
   ◎《小児薬証直訣》
      “疳、皆脾胃病み、津液を亡なうの之れ作す所なり”
【種類】  

1.肝疳 2.心疳 3.脾疳 4.肺疳 5.腎疳
6.蛔疳 7.脊疳 8.脳疳 9.乾疳  10.疳渇
        11.疳瀉  12.疳痢 13.腫脹疳 14.無辜疳 15.丁奚
16.哺露
◎主薬:疳瘡には、五倍子を主薬とすべし《万病回春》

【漢方薬】
■異効散《済世全書》
■黄蓍湯《万病回春》
■疳積餅・・・(五疳のあらゆる積を治す)
■九味柴胡湯《薛立斎十六種》
■下虫疳・・・・(蛔疳を治す)
■玉蟾散・・・・(諸般の疳瘡を治す)
■五疳保童元・・(五臓疳を治す)
■五福花毒丹・・(熱疳で瘡が多く出、また痘瘡の余毒によって口歯からツバや血の臭気が匂い、又夜目が見えない症を治す)
■胡黄連丸・・・(熱疳を治す)
■四君子湯《万病回春》
■使君子丸・・・(冷疳を治す)
■至聖丸・・・・(冷疳を治す)
■十全丸・・・・(丁奚・哺露・無辜疳壊症を治す)
■消疳飲《済世全書》
■消疳丸・・・・(五疳を治す)
■消疳退熱飲《寿世保元》
■消疳湯《万病回春》
■生熟地黄湯《医林集要》
■如聖丸・・・・(冷熱疳を治す)
■乳香丸・・・・(走馬牙関を治す)
■二連丸・・・・(無辜疳を治す)
■補中益気湯《済世全書》
■木香丸・・・・(冷疳を治す)
■木香元・・・・(疳痢を治す)
■竜胆丸・・・・(脳疳を治す)
■竜胆元・・・・(熱疳を治す)
■連胆丸・・・・(五種の乾疳を治す)
■蘆薈丸・・・・(脊疳を治す)
■露星膏・・・・(脊疳を治す)



 間欠性跛行症 
  claudicatio intermittens
=血管硬化性間欠性歩行困難症。
⇒歩行中に患部側の下肢に異常感覚と激痛・緊張感を覚え跛行し歩行困難となるが、すこし休息すれば、痛みは止まり、歩行可能となる。

◎診断:
*腰痛がない
*足の甲の拍動を触感できない。

間欠性跛行を起こす疾患
閉塞性動脈硬化症(ASO)
閉塞性血栓血管炎(TAO)(参照→「バージャー病」)
腰部脊柱管狭窄症

■歩けば自然に血管バイパス発達
「57歳の女性。1年ぐらい前から100mほど歩くと左足の太ももやふくらはぎが痛み、歩けなくなります。少し休むと治りますが、歩き出すと又痛くなります。
●どんな病気なのですか?
病気ではなく閉塞性動脈硬化症による症状の1つです。一定の距離を歩くと、足の裏やふくらはぎ・太もも・臀部などに痛みを感じ、歩行を続けられなくなります。しばらく休むと回復して、歩けるようになります。そして又歩くと痛くなります。この繰り返しが間欠性跛行です。
●なぜ、治ったり又痛くなったりするのですか?
動脈がゆっくりした経過で詰まった場合、周囲の血管が自然に発達して太くなり、バイパスの役割をして血流を確保します。このため座っている時など安静時は痛みは感じません。しかし、歩くと安静時の何倍もの血流が必要になるため、バイパスだけでは十分な血流を確保できず、筋肉が虚血状態に陥って痛みが生じるのです。数分間休むと虚血状態から回復し、歩けるようになります。
●どんな人がなりやすいですか?
閉塞性動脈硬化症の患者は、圧倒的に中高年の男性が多い。患者の約85%が男性です。患者はどんどん増えています。男性が多いのは、ホルモンが関係していると思われますが、ハッキリした理由は分かっていません、
●他に目立った傾向は?
患者の90%以上が喫煙者です。
糖尿病や高脂血症、高血圧も原因としてあげられますが、自分で対応することが出来る危険因子は喫煙です。まず、タバコを辞めることから治療が始まります。
●どこの血流が詰まったら、どこが痛くなるのですか?
動脈が詰まった場所より先の部分が痛みます。脚への血流は大動脈から分かれて、骨盤内を通っていきます。このルートの太もも部分で詰まれば、膝より下が痛みますし、膝下で詰まれば、足の裏が痛むのです。相談者は、太ももやふくらはぎに痛みがあるようですから、動脈が詰まっている場所は骨盤の中かもしれません。
●反対の脚が痛むなる心配は?
閉塞性動脈硬化症は進行性の病気ですから、右脚の動脈も詰まる可能性は十分あります。歩いた場合、症状の進んでいる左脚が先に痛むので、右脚に痛みを感じる前に休息してしまいます。気がつかなくても病気が右足まで進行している恐れはありあmす。
●治療法を教えてください。
抗血小板薬や抗凝固薬、血管拡張薬などを使います。ただ、痛くなるまでは歩くことも大事です。運動することでバイパスが自然に発達し歩行距離が延びます。普通は痛いから歩いてはダメだと思うでしょうが、痛くなったら休めばいいのです。そして、又歩く。これを繰り返してバイパスを発達させることが大切です。手術で、動脈の詰まった部分の前後に人工的にバイパスを通す方法もありますが、よほど重症か日常生活に視床がある場合にしか勧めません。
●注意点を挙げてください。
閉塞性動脈硬化症は、主に脚に症状が出ますが、体中に動脈硬化進んでいる可能性もあります。心臓に症状が出れば狭心症・心筋梗塞になりますし、頭に症状が出れば脳梗塞になります。間欠性跛行は脚が危険信号を送っていると考えてください。早めに血管外科医の診察を受けるとともに、心電図を撮るなど、総合病院でからだ全体のチェックをするのも必要でしょう(宮澤幸久・帝京大学付属病院副院長)2000.5.21《朝日新聞》

【漢方薬】
■桂枝二越婢一湯苓朮附
慢性関節リウマチにもちいられる処方である。下肢動脈硬化による間欠性跛行に有効なことがある。(漢方診療医典)
■当帰四逆加呉茱萸茯苓湯
本方によって間欠性跛行が軽快することがある。多くは女性に用いられるが、男性に有効なこともある(漢方診療医典)
■補陰湯
多くの場合、八味丸で奏功するが、もり効がなければ、本方を用いる(漢方診療医典)
■八味丸
本方を服用していると、1ヵ月もたつと、だんだん長距離の歩行が可能になるが、軽快しても服用を続けることが必要である(漢方診療医典)



間擦疹
⇒鼠径部、わきの下、肛門周囲、臀部の割れ目、女性の乳房の下、乳児の前額部などの、皮膚が擦れ合う部位(間擦部)に出来る皮膚症状。


間質性肺炎
⇒肺胞を構成する上皮細胞、毛細血管など肺胞の壁部分(間質)を主体に炎症が起こっている肺炎。
間質性肺炎は、肺胞の壁(間質)が炎症を起こし繊維化する。
気管支炎などは空気の通り道が炎症を起こす(肺胞性肺炎)。

◎原因:

①肺ガンなどの治療で照射した放射線
②ウイルスの感染
③ニューモシスチス・カリニ原虫の感染
④ブレオマイシンの投与
⑤金製剤の投与。

■喫煙と関係、突発性多い
「先日、激動のジャカルタ市内の大学医学部で数日間会議を開いた。学外は騒然としているのに学内は平穏そのもので、立て看板もなく、日本で見慣れた光景とはかなり違うので地元の教授に尋ねると、「学生の行動は正しい。彼らの目標は政治体制の改革であって大学ではない」との返事が返ってきた。
その話の最中、ガンの化学療法を受けている55歳男性が息苦しさを覚えて緊急入院してきた。医師は型どおり診察しX線写真をとって間質性肺炎を診断、治療に入った。ここでの疾病診断は経験が重視され、非常に迅速に処理されていた。
これに対し日本では、まず血液のガス分析をして、CT(断層撮影)を撮り、証拠固めをしてから確定診断し治療にかかる。同様に化学療法を受けていたKさん(55)が3日前から急に息苦しさを覚えて外来を受診したときもそうだった。血液検査で低酸素血症が見られ、CT上で異常な陰影を証明し間質性肺炎と診断した。ステロイド治療と酸素療法を実施し、症状は10日ほどで改善、無事退院した。
間質性肺炎は肺線維化が進行する病態で急性型と慢性型に分けられる。その中には実に130もの疾患が含まれ、喫煙歴が大いに関係することと、薬剤性・膠原病などが関係するものがあるものの、原因が明らかに出来るものはその内容の1/3に過ぎず、突発性のものが多い。治療法も確立しておらず、ステロイド療法が無効で、急速に死に至ることも少なくない。
厚生省の研究班が挙げる注意すべき症状としては、乾性咳、息切れ、聴診での異常音、血沈促進などで、X線写真でスリガラス様、ハチの巣あるいは風船様の陰影が見られることや、肺活量の減少、肺拡散能障害、低酸素値症の存在 などである。
通常の細菌性肺炎と異なり、熱が無く、白血球数などが増加しないことも特徴といえ、決定的な検査法が無かった。ところが最近、診断に血清中のムチン抗原を特異的に把握できる簡易検査法が開発され、かなり確実な診断法となりそうである。(巽典之・大阪市立大学医学部教授)1998.12.28《日本経済新聞》
■原因不明
「激しい息切れなど普通の肺炎とは異なる症状を示す間質性肺炎。都心部では大気汚染の深刻化で患者数が増えているとも言われる。肺ガン治療薬ゲフィニチブなどの抗ガン剤や漢方薬、リウマチ治療薬などの副作用としても起こる。
●間質性肺炎と一般的な肺炎の違いは?
肺は酸素を取り込む肺胞という小さな組織が多数集まってブドウの房のような形をしています。この肺胞の壁に炎症を起こすのが間質性肺炎。熱と咳が出ますが、タンは少ないのが特徴です。両方の肺で同時に炎症が生じるので、酸素が血液に入りにくくなり、息切れが激しくなります。
一方、細菌が気管支から肺胞に至る空気の通り道に感染して、炎症を起こすのが一般的な肺炎(肺胞性肺炎)です。発熱と咳に加えてタンが出ます。炎症が生じている部分が限られるので息切れはありません。
●肺胞に炎症が起きる原因は?
肺胞壁に何らの変化が生じ、壁の中に白血球の仲間であるリンパ球が多数現れます。リンパ球からサイトカインという物質が放出されると炎症が起きて肺胞壁に線維物質が沈着し、次第に壁が分厚くなり、酸素が通りにくくなります。最後には酸素マスクが必要になります。
●どんな人がこの病気にかかりやすいのですか?
間質性肺炎で外来を訪れる患者さんの50%~80%は、原因不明で特発性と呼ばれています。50歳以上の高齢者に多い。一般の人が注意しなければならないのは過敏性の間質性肺炎です。古い湿った家や加湿器などにはびこるカビにアレルギーを持つ人は、カビを吸い込むことで発病します。
白血病や臓器移植で抵抗力が落ちた人が、サイトロメガロウイルスやカリニ原虫に感染して起きることもあります。漢方薬の小柴胡湯、リウマチ治療薬や抗ガン剤などを使っている人や塵肺の人、膠原病の患者にも見られます。
抗ガン剤はゲフィニチブに限らず、ブレオマイシンやジェムザール、イリノテカンでも副作用として間質性肺炎が報告されています。これらの抗ガン剤同士の併用や、放射線との併用は厳禁です。
●レントゲンで見つかりますか?
レントゲンでは両肺が曇って見えます。高解像度CTを使うと、肺への線維沈着の様子が詳しく分かります。最近は胸を切開せずとも、胸に開けた小さな穴から胸腔鏡という用具を入れて、患部から組織を切り取り、検査できます。
●治療法は?
治療にはリンパ球を抑制するステロイドを使います。軽症の患者さんはステロイドで治りますが、白血病やエイズ、臓器移植を受けて免疫力が落ちている人や、塵肺、特発性の人には効果がありません。ただ、特発性の患者に少量のステロイドと免疫抑制剤を併用すると、延命効果があったという報告があります。ステロイドが効かない人は、肺移植の対象になります。
●日常生活の注意点は?
湿気の多い所に住まないこと。
加湿器はこまめに洗浄する。
薬剤が原因の人は、それを止める。
タバコを吸うと確実に悪くなるので、止めないとダメです。
間質性肺炎が治っても、線維症が残ると自宅で酸素吸入する必要が出てきます。」(川瀬一郎・大阪大学大学院医学系研究科教授)2002.11.19《日本経済新聞》
■検査薬
「間質性肺炎にかかると血中のタンパク質『KL-6』が増える。エーザイの子会社、三光純薬は2008年3/13、間質性肺炎の診断薬を開発」
■SPーD(サーファクタントプロテインD)
「SP-Dは間質性肺炎が起きると体内で量が増える性質を持つ。血液中に含まれるSP-Dというタンパク質を図る技術をヤマサ醤油が開発し、販売する試薬を協和メデックス(協和発酵の子会社)が扱う全自動分析装置「AP-X」や「AP-960」などに使えるようにした。
測定時間は5時間。[ELISA法]と呼ぶ検査方法を利用した。血液を分離して作る血清を試薬にかけ、色調の濃淡を分析器で判定する仕組み。



 癇癪持ち
=癇性・癇症   

【漢方薬】
■荊芥連翹湯
■柴胡桂枝湯
■柴胡清肝湯
■四逆散
■炙甘草湯
■小柴胡湯
■沈香天麻湯
■ 清心温胆湯
■大柴胡湯
■治肝虚内熱方
■釣藤散
■抑肝散

(かん)
=心風と称し、ヒポコンデリー又はヒステリー症状。

子供の癲癇。

 


癇家(かんか)
=癇症のある人。


癇眼(かんがん)
=眼球上竄するもの。

 

癇証(かんしょう)
=癲癇ともいい、卒時に暈倒し、身軟え、咬牙、涎沫を吐し、人事を省みず、後醒めるもの。

*神経過敏にして痙攣性のもの。《古今方彙》

【漢方薬】
■加味二陳湯《万病回春》
■清心温胆湯《医宗金鑑》
■大続命湯《医学入門》
■沈香天麻湯《衛生宝鑑》
■定神至宝湯《寿世保元》


汗疱
  pompholyx
   (異汗症dysidrosis)
⇒手掌・足底に多発する豆つぶ大の水泡。    ◎汗疱状白癬”[夏季増悪・かゆい・真菌証明]と区別すること。

【漢方薬】
■消風散


汗疱状白癬 
  trichophytia pompholyciformis
⇒汗疱状の小水泡が趾腹・足底・足縁に生じ、落屑を伴う足白癬tineapedisの1つ。    

“汗疱”との違いに注意。
【漢方薬】
■越脾湯
■越婢加朮湯



 乾嘔
⇒からえずき。声だけあって物を出さない嘔吐
【漢方薬】
■黄芩湯
■桂枝湯
■桂芍知母湯
■呉茱萸湯
■柴胡桂枝乾姜湯

 

 

 

 


 

乾咳(かんがい)
=かわいた咳
【注意】
<1>ACE阻害剤の副作用。

【漢方薬】
■河車大造丸
■滋陰降火湯
■生脈散
■沙参麦門冬湯
■清燥救肺湯
■桑杏湯
■竹葉石膏湯
■貝母括楼散
■麦味地黄丸
■百合固金湯
■麻杏甘石湯
■養陰清肺湯


 乾霍乱
=霍乱を病み、吐せんとして吐せず、下せんとして下さず、心腹絞痛して脈沈なるもの。


 乾脚気
   =水腫なき脚気。

 

乾血労
⇒閉経後に体力衰え、衰弱した状態

「乾血労」=虚労証候の1つ☆血盛大なる者は、先ず瘀血を消し、次ぎに止血凉血すと。《雑病翼方》  ☆瘀血にして吐するは、必ず先ず胸痛み、血色必ず紫~黒くして塊を成し、脈必ず滞濇なり。此湯に宜し。もし紫黒ことごとく鮮血見るれば即ち「理中湯当帰」之を調う。《雑病翼方》☆吐血等にして、胸内圧迫の感あり、脈実なる証《奥田謙蔵

【漢方薬】
■三物黄芩湯




乾性水泡音
=「ラ音」=ラッセル音(rale)
=分泌物・膿・血液などによって狭められた気管支を空気が通過するときに認められる雑音。従来は湿性・乾性に分けていたが、近年は連続性と断続性に分けている。

【漢方薬】
■滋陰降火湯


乾性肋膜炎
=「乾性胸膜炎」。
⇒微熱が出て、吸気時に乾燥した咳がでて痛む、胸膜疾患の1つ。
胸痛:体位により影響あり。

【漢方薬】
■三物黄芩湯





 乾癬 
  psoriasis    
(参照→尋常性乾癬)
⇒雲母状銀白色の鱗屑が固着した発疹。
「炎症性角化症erythrosquamatous dermatoses」の1つ。
◎四肢や頭部に好発し、豆~貨幣大のろう様の鱗屑を作る。
◎乾癬になっている人は、皮膚表面の死んだ細胞がはげ落ちるよりも、早新細胞が成長し、皮膚は赤みをおびて厚くなり、うろこ状になります。症状がひどくなるとうろこ状の皮膚が全身を覆っています。普通、痛くもかゆくもありませんが、患者は自分が不潔だ、人と違っている、魅力的でないという感情から苦しみ悩みます。

【漢方療法】
老人には当帰飲子が良く効く
壮年には温清飲《大塚敬節》

【芳香療法】
<1>ベルガモット
<2>メマツヨイグサ油

【栄養療法】
<1>亜鉛の摂取(15mg/1日)が効果的です。
<2>ビタミンC、B群、E

【漢方療法】
■茵蔯蒿湯
■温経湯
■温清飲
■黄連阿膠湯
■三物黄芩湯
■梔子豉湯
■消風散
■大黄牡丹皮湯
■桃核承気湯
■当帰飲子
■八味地黄丸
■白虎加人参湯
■白虎加桂枝湯
■麻黄連軺赤小豆湯
■六味丸



 乾嗽
⇒(痰はなく声を出すだけのせき)   
■四物湯

 

乾皮症
⇒魚鱗癬に見られる皮膚の異常な乾燥症。

【芳香療法】
<1>カミルレ
<2>ゼラニウム
<3>ラベンダー
<4>ネロリ



頑癬(がんせん)
(輪郭性湿疹様白癬)trichophytia eczematosa marginata
=いんきんたむし。
⇒大腿内側に皮膚糸状菌が感染したもので、原因菌は猩紅色菌が多い。

《漢方療法》
*痒くて熱のない者:「当帰飲子」
          「十全大補湯荊芥」
*分泌物が多い:「消風散」
*内攻した者:「赤小豆湯」《山脇東洋》。
       「赤小豆湯」《厳氏済生方》
        真武湯反鼻」

【漢方薬】
■越婢加朮湯
■苦参湯
■三物黄芩湯
■小柴胡湯連翹・蒼朮・白蒺藜
■桃核承気湯
■当帰粘痛湯   
■八味地黄丸
■苓桂味甘湯    



 嵌頓ヘルニア

【漢方薬】
■烏頭桂枝湯
■烏頭湯   
■桂枝加芍薬大黄湯(附子)
■芍薬甘草湯
■大烏頭煎
■大建中湯



 冠状動脈硬化症 
   coronary arteriosclerosis
⇒冠状動脈にみられる動脈硬化症。男性に多く、拡張期血圧との関係が深い。又50才以上の肥満との関係も深い。

◎臨床的には、
①心筋梗塞
②狭心症
③心臓性喘息
④心臓瘤
⑤心筋軟化症

⑥肺浮腫などを生じる。

■心臓バイパス手術後の動脈硬化抑制
「米国立心臓・肺・血液研究所は心臓の冠動脈バイパス手術を受けた患者の血中コレステロール値を大幅に下げることで、移植した血管の動脈硬化の危険を低減出来ることを臨床試験で明らかにした。
バイパス手術を受けた約1400人にコレステロール低減薬を異なる用量で投与、4~5年間追跡調査した。移植した血管が動脈硬化を起こす割合は血中コレステロールをやや下げた組で39%、大きく抑えた組みで28%だった。米国では手術を受けた患者の半数は10数年でバイパスが詰まってしまう為、 薬物治療の意義は大きいと見られている。1997.1.30《日経産業新聞》

【漢方薬】
■括楼薤白半夏湯
■失笑散(加人参)

◎毛冬青(冠状動脈の拡張・末梢血管の拡張)
 
     
 

冠不全 
  coronary insufficiency
⇒心筋の酸素欠乏状態。冠状動脈硬化にもとずく病態を意味することが多い。
◎心電図:ST低下、T波平低・逆転を示すことが多い。

【漢方薬】
■括楼薤白白酒湯
■冠心Ⅱ号方
■血府逐瘀湯
■炙甘草湯



 寒瘧
=瘧発する時、頭疼み、身熱し背強ばりて脉浮の者は名づけて寒瘧と曰う。

【漢方薬】
■麻黄羗活湯《医方考》


 

寒性膿瘍
=冷膿瘍cold abscess
⇒急性炎症症状がない膿瘍で、内容物である膿には確実に結核菌が含まれている。冷膿瘍は原病巣に直接侵襲を加える場合を除き、切開排膿してはならない。

【漢方薬】  
■控涎丹
■保元湯

◎「白芥子・肉桂・炮姜・鹿角膠・熟地黄・麻黄・甘草」
◎蒼朮
◎肉桂(血脈を疎通する。百薬を宣導する)   
◎鹿角

 

寒疝(かんせん)
=寒疝と呼んだ病気は、腹が冷えて痛む病気を指したものであるが、後世になると「疝」という病名を設け、これをまた種々に分類して非常に複雑なものになっている。けれども概して言えば、
疝の患者は冷え症であり、冷えることによって症状が増悪する。
疼痛(腹の痛む場所)が移動する。
痛む場所を掌などで按圧していると楽である。
症状に消長があり、発作性に起こる傾向がある。
慢性に経過するが、死の転帰をとることが少ない。《大塚敬節》

◎《金匱要略》では胸痺、心痛、短気病脉證治の次に、“腹満、寒疝、宿食病脉證治”の篇がある《大塚敬節》
=睾丸が冷たく、詰まって固く石のようで、陰茎が立たず、つって痛む。
⇒臍を繞りて痛み、上って心胸に連り下って陰嚢に控え、苦楚忍ぶべからざるもの。
(原因:湿地に座るor寒いときに風冷をがまん)

【漢方薬】
■[禹功散]
■[烏頭桂枝湯]
■[加味五苓散]
■[桂枝加附子湯]
■[三因葱白散]
■[四神丸]
■[青木香元]
■[当帰四逆加呉茱萸生姜湯]《傷寒論》
■[当帰四逆湯]《衛生宝鑑》
■[幡葱散]
■[羊肉湯]


 

寒嗽(かんそう)
⇒咳嗽の1つ。肺が寒に傷られて起こるせき。
(症状)

1.咳をすると胸が詰まるように痛む。      2.声が枯れる。              

3.のどの乾きはない。 
4.冷たい空気を吸うとせきが出る。
5.発熱・悪寒・無汗・煩躁がある。

【漢方薬】
■三拗湯
■小青竜湯
■参蘇飲
■二陳湯
■理中湯 


寒熱
⇒「寒熱」という症は、寒が止まると熱を発し、発するといつでも熱のある症。

 

寒痢(かんり)
⇒腹部が冷えて起こる下痢。便が白っぽい・腹鳴・軽い腹痛があり、裏急後重はない。便の色が鴨溏に似る。

【漢方薬】
■黄連補腸湯(大腸が冷え、青白色の便を下し、長引く)
■五積散
■赤石脂散・・・・・(冷痢の赤白と腸滑)
■人参湯
■不換金正気散
■理中湯
■理中湯訶子・肉豆蔲

 

寒冷過敏症
  (cold sensitiveness)
⇒正常人では異常が認められない程度の寒冷に対し、病的症状を呈する者をいい、
<1>寒冷刺激に対する血管神経の失調。
<2>循環系の障害。
<3>内分泌機能不全などによる代謝障害の結果の寒冷耐性の低下。
<4>血中などに寒冷に対する特異的な反応物質が存在する場合。
1.レイノー症候群
2.高血圧
3.貧血
4.下垂体前葉・副腎皮質・甲状腺の機能不全
5.寒冷で凝固するタンパク質によるクリオグロビン血症
6.不定型自己抗体による後天性溶血貧血
7.特発性寒冷血色素尿症


 寒冷凝集素症 
  cold hemagglutinin disease
⇒溶血性貧血の1つ。
◎マイコプラズマ肺炎に際し、本抗体(IgM抗体)が著しく増加すると、補体が関与し、赤血球破壊が亢進される場合をいう。




 寒冷ジンマシン 
  congelation urticaria

【漢方薬】
■葛根湯
■桂枝湯
■荊防敗毒散    
■桂麻各半湯
■五苓散
■当帰四逆加呉茱萸生姜湯


 寒冷による腹痛

【漢方薬】
■桂枝湯


 寒冷で悪化(増悪)

【漢方薬】
■温経湯
■大防風湯


 完全右脚ブロック
■冠状動脈に注意。
「64歳の女性。心電図の検査で、完全右脚ブロックと診断されました。以前から高血圧で血圧降下剤をもらっています。家事は普通にしていますが、外出は1日1カ所ぐらいにして様子をみています。
<1>聞き慣れない言葉ですが?
「心臓は刺激となる電気的な信号を受け、一定のリズムで動いています。刺激を受けた心筋が興奮し、ぎゅっと収縮して血液を送り出しているのです。この信号はペースメーカー役の洞房結節で作られて心臓全体に伝えられるのですが、右心室への伝達経路である右脚が障害を起こして、信号が伝わらなくなってい る状態をいいます。
<2>どんな症状がありますか?
「60歳以上の人では、完全右脚ブロックが5~6%の人に現れますが、ほとんどは無症状です。肺へ血液を送り出す右心室と、全身に送り出す左心室の収縮のタイミングがほんの少しずれるのですが、右心室は左心室に比べ負担が軽く、少々タイミングがずれても問題ありません。右脚ブロックは冠状動脈硬化と関係する事があります。念のため冠状動脈の異常がないかどうか、斜面を歩きながら血圧や心電図を測る「トレッド・ミル」のような運動負荷検査で確かめた方がいいでしょう。
<3>診断のポントは?
「心室が興奮したときに出る心電図の波の形や持続時間で見分けます。正常なときは、右心室と左心室が同時に興奮するので、波が続く時間が短く鋭い形になります。完全右脚ブロックの場合、右心室には刺激信号が直接伝わらず、左心室経由で信号がやってきます。このため、右心室の興奮が左心室より遅くなり、波の持続時間が長くなったり、形が変わったりします。(河村剛史・兵庫県立健康センター所長)1997.9.21《朝日新聞》


 広東住血線虫
=体長0.2mm。
⇒ネズミとカタツムリ宿主として、ライフサイクルを完成させている。
 もとは、マダガスカルにしか生息していなかった。現在は世界中に拡散。
日本では、1969年、沖縄で発症例。
 線虫の幼虫に感染(感染率10%以上)したネズミが、全国で発見されている。しかも、カタツムリ以外の中間宿主として、マクミリンゴ貝(ジャンボタニシ)が確認されている。
 
人体には、口からと傷口から侵入し、腸壁を破り、髄液に入る。そして脳へ向 かう。ハワイで激しい頭痛を起し、意識不明の後に死亡した患者を、検死解剖して、脳から線虫を発見した。

症状:激しい頭痛を引き起こし、意識不明になる。死亡例あり。

髄液検査で、好酸球の増加を認める。

治療法:治療薬はない。
線虫の寿命が1ヶ月なので、1ヶ月間、症状を抑えると、線虫は体内で死亡し、体外へ排除される。

予防法:

生野菜をなるべく避ける(よく洗うこと)
手をよく洗う
加熱した料理。



眼花(がんか)
⇒目に黒花が見える症で、肝腎ともに弱った症。

【漢方薬】
■胃鑑還晴丸
■益本滋腎丸
■還晴丸[2]・・・(目に五色花が見える症
■芎帰調血飲・・(気血虚損、胃腸虚弱、神経症、貧血めまい、動悸、耳鳴り、腹部軟弱、腰痛、乳汁不足、)
■五胆膏・・・・(眼昏・黒花・内障を治す   
■三花五子丸・・(目に黒花と飛蚊がみえ、瞖障の出る者を
■熟地黄丸・・・(腎が弱くて、黒花)
■椒目丸
■駐景丸
■補腎丸
■明目壮水丸


眼球光彩      
⇒眼球が光って見えることで、
【漢方の望診】
「かぜ」と判断する為の大切なポイント。

【漢方薬】
■半夏厚朴湯




眼球振蘯症(眼振) 
   nystagmus
⇒ニスタグムス
⇒不随に起こる眼球の往復運動。眼振ともいう。
◎原因:
<1>内耳・前庭神経に病変、
<2>脳幹・小脳疾患、などがある。

【漢方薬】
■真武湯
■苓桂朮甘湯


 眼球突出 
  exophthalmos
(参照→Wegener肉芽腫症)
⇒突出の程度は眼球突出計を用いる。

◎眼球突出を起こす疾患:
☆甲状腺機能亢進症
☆海綿静脈洞血症
☆腫瘍
☆動脈瘤
☆高血圧
☆腎炎
☆強度の近視

 



 眼瞼炎
=眼瞼縁炎 marginal blepharits。
<1>ぶどう球菌性眼瞼炎:黄色ブドウ球菌の睫毛根部における感染で、両側性で慢性化。
<2>脂漏性眼瞼炎:青年期に多い。
<3>眼角眼瞼炎:内外眼角部で、Morax-Axenfeld双杆菌の感染。
<4>マイボーム腺炎:瞼板腺(Meibon腺)の慢性炎症。
<5>眼瞼単純ヘルペス
<6>眼部帯状ヘルペス
<7>伝染性軟属腫
<8>眼瞼膿瘍
      (金芳堂ー眼科学p138)

【漢方薬】
■葛根湯
■桂枝茯苓丸
■梔子柏皮湯
■小建中湯
■三黄瀉心湯
■蛇床子散
■桃核承気湯
■八味地黄丸

【宝石療法】
<1>[真珠]
<2>[ルビー]

【臨床例】
☆《井觀醫言》より
「田中衛守の娘、年6才は、眼瞼上下が腫起して、涙や目ヤニが止まなかった。次第にそれが粘稠になって、治ったかと思うと又発し、それを繰り返しているうちに、鼻の傍らのとこおをが高く腫れ上がって、遂に1つの穴があいた。鼻汁のようなものが、ダラダラ流れ出て、痛みもなく、痒くもなく、ただ上衝を覚えるのみであった。
そこで、苓桂朮甘湯川芎大黄を与え、銅緑水を外用した。そして56日毎に竜葵丸を以てこれを攻め、漏孔には毎日左突膏を塗った紙よりを入れて。 1年を超えてやっと治癒した。
眼科の技術に精しい者の話を聞くと、かようなものは手術によってこれを除去すれば、その効が速やかであるという。尤ものことであると思う。」《荒木正胤》
☆《井觀醫言》より
「正木某の娘、年12才。天然痘の後、眼胞腫(眼胞=まぶた)を患って、34年を越えても治らなかった。
指頭をもって目頭の内側を押すと、濁った液が手にしたがって出て、鼻の中からもまた濁った液が出た。後には内訾の下に自然に1つの孔が開いて、そこからも濁った液が流れ出た。
若し、その漏口が閉じ塞がって液が出ないと、眼球には赤脈が起こって、微かに痛み、日の光を恐れた。液が一杯になると、漏孔が自然につぶれて、 赤脈も除くのであった。
かくの如きものが5年であったので、余はこれに葛根加朮附湯を与え、毎日再造散1匁を服用せしめた。時々梅肉丸を以てこれを下し、漏孔には破敵膏を塗った紙を差し入れた。すると濁った液が次第に減じてきたので、次ぎに大黄牡丹皮湯を用いた。
それからは経水が順利するようになって、漏孔の肉が盛り上がり、1年余りを経て全治し、その痕跡すら残らなかった。」《荒木正胤》


 眼瞼下垂
眼瞼下垂(がんけんかすい)とは、先天的理由、後天的理由(眼筋疾患・加齢・コンタクトレンズ装用等)により、上眼瞼(上まぶた)の機能に障害が生じ、瞼が開きづらくなる疾病の一つ。
眼筋疾患による眼瞼下垂は、疲労により、症状が出現する。一日の中で症状の強さが動くため、切開の調整が難しく、通常手術はあまり行われない。軽度の眼瞼下垂の場合、あまり自覚症状がないが、重症化すると、距離感がつかめず、また突然見えない状態になるので、怪我や階段での転倒、自動車事故などが非常に多い疾患である。



 眼瞼ケイレン
⇒まぶたがケイレンする。

◎原因から
<1>症候性眼瞼痙攣:三叉神経が刺激されて反射的に起こる。
<2>特発性眼瞼痙攣:ヒステリーなどから。
<3>顔面神経の痙攣;老人など。

◎ケイレンの種類から
<1>硬直性眼瞼痙攣
<2>間代性眼瞼痙攣
       (南山堂ー医学大辞典)  
■放置すれば失明も
「目の周りの筋肉のきつきがなかなか治らないと思っていたら、次第に瞼が上がらなくなり、ついには目が閉じたままになってしまい、ものを見ることが出来なくなる-----主に中高年の人に見られる『眼瞼ケイレン』。患者数こそ少ないものの、原因は不明であり、放置すれば失明につながるだけに怖い病気の1つだ。
「疲れたときや精神的なストレスが重なったときなど、眼瞼(まぶた)がピクピクと細かくケイレンすることは多くのヒトが経験する。ぐっすり眠るなどして休むとこの症状は消えるが、中には心当たりがないのに、ひくつきやまばたきが頻繁に起きる事がある。
こんな時は眼瞼ケイレンの疑いがあるから、眼科の専門医に相談して適切な治療を受けた方が良い。放って置くと次第に重症化し、ひどい時はまぶたが開かなくなり、本を読むこともテレビを見ることも出来なくなる。いわゆる機能的失明状態になるのだ。

●メージュ症候群
「古くから知られた病気である。眼瞼ケイレンによる閉眼と、下あご筋の異常などを併発し、ちょうど口を大きく開けた仁王様が目をつぶった様な表情になる『メージュ症候群』と呼ばれる病気は、1910年にフランスで報告されている。
原因は不明だが、どのようにして起きるかは分かっている。目の周りにあって目をつぶらせる眼輪筋が不随に収縮するからだ。このため、軽症ではまばたきの増加などですむが、重症では持続的な閉眼状態になる。軽症でも車の運転などに支障がある。
●50~60歳代に多く
「40歳以上、特に50~60歳代の人に見られ、女性の発症率は男性の約2倍という。治療法は抗痙攣薬の服用のほか、眼瞼の神経の圧迫を除いたり、眼輪筋の一部を切除することなどがある。
患者はそれほど多くはない。米国などの例から見て、日本では3500~4000人と推定されている。 ただ「放置したしたままだったり、他の目の病気と間違われている人も合わせると、患者数はもっと多いのではないか」と、眼瞼痙攣に詳しい兵庫医科大学眼科の三村治教授は言う。健康なときの一時的な痙攣と、病気時の痙攣との見分けが困難など、診断が難しい面もあるが、『ドライアイ』と間違えて治療を受けたり、ストレスが原因だろうと精神安定剤を処方されていた例もある。また、診断が付かず、あちこちの医療機関をまわっている患者もいるという。
最近は特効薬も出来ている。10程前に米国の医薬品会社のアラガン社が開発し、世界の59カ国で発売されているA型ボツリヌス毒を主体としてものだ。日本でも昨年春から使用が許可されている。
●毒素、定期的に注射
「この毒素は食中毒の原因になるボツリヌス菌がつくるもので、生物兵器にも使われるほどの強さを持っている。神経と筋肉の接合部を化学的に遮断し筋の脱力をを起こす。極微量を使い、眼瞼の筋肉の収縮を抑えようというのである。「毒をもって病を制する」というところか。
一定の期間をおいて、定期的に6カ所に注射するのだが、効果は劇的という。兵庫医大で診療を受けた人にアンケートをしたところ、90%以上の人が「治療効果に満足している」と答えているという。
「特に早期にボツリヌス菌を始めた人は治癒率が高い」と三村教授。
毒素を使うだけに、供給元のメーカーは、一定の研修を受けた医師を登録する仕組みを採っており、これまで200人を超える眼科医、神経内科医が登録している。また、患者の近くの地域にこうした治療施設があるかどうかをアドバイスするセンターも開設している。
眼瞼痙攣電話情報センター(0120-611094)1998.12.14《日本経済新聞》
■眼科医でさえ「気のせい」
「自分の意思とは関係なく、まぶた(眼瞼)を閉じる発作が頻繁に起きる『眼瞼ケイレン』は“埋もれた難病”の1つと言われる。こういう病気があること自体ほとんど知られておらず、“気のせい”と片づけられることが少なくない。
会社員Aさん(54)は、昨年、自動車を運転中に何度も追突した。まばたきが多いせいで前が見えていないのではないか?と、眼科医を訪ねた。しかし、医師には「そんなバカな話はないでしょう」と相手にしてもらえなかたという。
眼科専門の井上眼科病院(東京都千代田区)で改めて診察を受けて、ようやく眼瞼ケイレンと分かった。
「この病気はまだよく知れれておらず、眼科医にも『気のせい』と片づけられてしまうことがある。軽症ではまばたきが多くなる程度だが、重症になると目を開けていられなくなる」と、若倉雅登・副院長は指摘する。
眼瞼ケイレン患者の正確な統計は見あたらないが、全国に約4000人と言われる。50歳以上が多く、特に女性に目立つ。
井上眼科病院だけでも、この病気の患者は現在、150人を超える。普段の生活実態を知るために、岩倉副院長は今年2~6月に同病院を訪れた患者56人にアンケートを実施した。(複数回答)。
その結果、「他で診てもらったが、そこでは正しい診断をしてくれなかった」と答えた患者が23人いた。「人に会ったり、外出がキライ」という患者が19人。周囲の無理解に苦しんでいることがよく分かる結果だ。
日常生活については、「電柱などにぶつかった」患者が27人。「人にほくぶつかる」が22人。「階段などが怖い」という患者が21人だった。
乗り物については「自転車で走行中、危険を感じた」が24人、「自転車に乗るのをやめた」が14人、「自動車の運転をあきらめた」が9人、などとなっていた。
「この病気の存在が良く知られていないことが、普段の生活をいっそう困難にしている。。『目を開けて歩け』と怒鳴られ、家に閉じこもってしまうケースも少なくない。広く社会に理解してもらうことを患者は望んでいる」と、若倉副院長。
病気の原因は不明で、根本的な治療法もまだ見つかっていないが、ボツリヌス菌の毒素製剤を目の周りに注射してケイレンを抑える治療法が開発され、日本でも1997年から行われるようになった。」

☆自己診断(若倉副院長)
○ほとんど場合、両目で起きる。
○瞬きが増える。
○まぶしと感じる。
○目をつぶった方が楽。
○目を開けていることが出来ない。
○指を使ってまぶたを開けようとしたことがある。
○重症だと、額にシワがよったような特有の表情になる。

■まぶたの筋肉が緊張して目が開けにくくなる病気
以下のまばたきテストで1項目以上にあてはまると疑いがある
・まばたきが多い
・目を開いているのがつらい
・人混みで人や物にぶつかりそうになる
・電柱などにぶつかることがある
・手を使って、目を開けることがある
・片目をつぶってしまう。

 

眼瞼ケイレンに似た病気
▼ドライアイ
▼ミオキミアMyokymia
眼瞼ミオキミア、顔面ミオキミア、眼輪筋ミオキミア、眼輪筋波動症はすべて同じ疾患をさす言葉とお考えください)
眼瞼ミオキミアは疲れたときなどに瞼の一部で、その多くは片方の眼の下側がピクピクと動く症状です。
▼重症筋無力症

(原因)
眼瞼ケイレンとウツ症状との因果関係は不明だが、精神疾患の治療薬の服用が発症のキッカケになることもあるようだ。若倉雅登・井上眼科病院院長は「254人の眼瞼ケイレン患者にヒアリングをしたところ、抗不安薬や睡眠導入薬である「エチゾラム」や「ベンゾジアゼピン系」をそれぞれ約14%、約21%の比率で服用していた。」

【漢方薬】
■真武湯


 眼瞼湿疹
【漢方薬】
■八味地黄丸   
■六味丸


 眼瞼浮腫
眼瞼(まぶた)
⇒眼瞼結膜は眼瞼の内面を覆う部分で、球結膜(conjunctiva blbi)が眼球強膜の前面を覆っている。球結膜が浮腫状になったものを結膜浮腫(chemosis)という。

【漢方薬】
■九味檳榔湯
■苓桂朮甘湯


 眼昏
【漢方薬】
■益気聡明湯・・(老人の労傷、虚損による眼昏、耳鳴り
■加味磁朱丸・・(常服する)
■四物五子元
■蔓菁子丸
■明眼地黄丸・・(老人の冷涙と昏花
■夜光育神丸・・(老人の眼昏
■抑青明目湯・・(婦人の怒気で肝が傷つき、目が暗い症
■呂仏翁方・・・(老人の内障・昏暗



 眼出血
【漢方薬】
■黄連阿膠湯
■芎帰膠艾湯
■桃核承気湯

【宝石療法】
<1>[真珠]
<2>[ブラッドストーン]

    

 眼精疲労   

【漢方薬】
■黄連解毒湯
充血、眼痛、のぼせ、種名、イライラがあり、腹力中等度以上で便秘はない(漢方診療医典)
■加味逍遙散
眼痛、頭痛、めまい、冷えのぼせ、不眠、疲れやすいなそ女性で愁訴の多いもの(漢方診療医典)
■葛根湯
眼痛、充血、肩こりなどあるもの(漢方診療医典)
■桂枝加竜骨牡蛎湯
かすみ目、のぼせ、足の冷え、不眠があり臍上に動悸、腹直筋緊張があるもの(漢方診療医典)
■桂枝茯苓丸
眼痛、充血。赤ら顔、冷えのぼせがあり、臍傍の圧痛(瘀血)があるもの(漢方診療医典)
■柴胡桂枝乾姜湯
■柴胡桂枝湯
■当帰四逆加呉茱萸生姜湯
■当帰芍薬散
■八味地黄丸
かすみ目、羞明、手足の冷え、口渇、腹証で小腹不仁(腎虚)があるもの(漢方診療医典)
■補中益気湯
■苓桂朮甘湯

■1996.11.6 《朝日新聞》
「眼精疲労にはストレスが大きくかかわっている。目のピント合わせは自律神経の働きで、特に意識しなくてもできる。しかし精神的なストレスで自律神経の働きが悪くなると、ピントをうまく調整できなくなって眼精疲労を起こし、吐き気や倦怠感も併発する。その症状がイライラにつながり、さらに症 状を悪化させることもある。
NTT大阪中央健康管理所・堂島健康管理科(大阪市)の中村芳子医長は、眼精疲労を起こしている人たちの目を、コンピュータを使って詳しく調べた。その結果、遠くをぼんやりと見ることが出来ず、絶えず無駄なピント合わせをしている人が多かった。
目の緊張をほぐす目薬などを使ってピントの調節機能が正常になれば、ほとんどの場合は眼精疲労の症状の良くなる。しかし精神的なストレスが原因の場合には効果がない。「仕事に過度にプレッシャーを感じているような場合には、心療内科のカウンセリングを受けてもらうこともある」と中村医長。カウンセリングで眼精疲労だけでなく、胃腸の具合が悪かったのまで治った例もあるという。
目が疲れるからといって、目のことばかり気にかけていても眼精疲労は治らない。心と体の健康状態やバランスをチェックすることが大切だ」
【宝石療法】
<1>[ルビー]


 眼痛
【漢方薬】
■茵蔯蒿湯
■黄連解毒湯
■消風散
■防風通聖散
■苓桂朮甘湯



 眼底出血
網膜出血が大部分。
出血の程度により視力障害が起こり、視野が限定される。大量に出血すると失明して回復も困難になる。
(眼底出血を起こす疾患)
糖尿病性網膜症
高血圧網膜症
血液疾患
膠原病
ベーチェット病
サルコイドーシス
ブドウ膜炎
外傷
後部硝子体剥離
網膜裂孔

 

【漢方薬】
■温清飲
■黄連解毒湯
■血府逐瘀湯
■桂枝茯苓丸
■三黄瀉心湯
高血圧による出血で、のぼせて顔面紅潮し、気分落ち着かず、興奮状を呈しているとき(漢方診療医典)
■七物降下湯
■小建中湯
■真武湯
■桃核承気湯
■八味地黄丸

■物がゆがんで見える
「大手メーカーに勤務するKさん(53)はテニスが趣味。毎週末にはプレーをしているが、時々空振りをするようになった。左目で見るとコートの線がゆがんでいる様に見える。気になって大学病院で検査を受けた。
眼底検査の結果、網膜の静脈が詰まって眼底出血が起きる『網膜静脈閉塞症』と診断された。線がゆがんで見えるのは、網膜が腫れたり出血して表面が凸凹になるからで、この上体を変視症ともいう。
変視症は網膜静脈閉塞症以外に、網膜の下に水がたまる中心性漿液性網膜脈脈絡膜症、網膜の下に血管が侵入して出血する加齢黄斑変性症などがある。
腕の静脈から蛍光色素を注射して眼底写真をとり、網膜の血管の状態を精密に解析して診断する。
網膜静脈閉塞症は動脈硬化の進行に関係しており、中高年に起こりやすい、一部の血管だけが詰まった場合は、様子を見ているうちに自然に出血しなくなることがありまる。だが、網膜の腫れが強い場合には手術やレーザー治療などが必要になります。
Kさんは眼球の後ろに副腎皮質ホルモンを注射する治療を受け、網膜の腫れが引いた。多少のゆがみは残っているが、視力は回復した。(不二門尚・大阪大学大学院医学系研究科教授)2003.7.8《日本経済新聞》



眼底の異常
◎原因:
乳頭浮腫(papilledema):
原因となる疾患:

☆脳腫瘍による頭蓋内圧の亢進
☆髄膜炎
☆脳膿瘍
☆水頭症
☆球後視神経炎
☆クモ膜下出血
              
球後視神経炎(neuritis retrobulbaris):
原因となる疾患:

☆多発性硬化症
☆視束脊髄炎
☆散在性能脊髄炎
☆視神経交叉部クモ膜炎
☆汎発性硬化症

視神経萎縮(atrophia nervi optici):
原因となる疾患:
☆血行障害による萎縮
☆圧迫or牽引による萎縮:動脈瘤
☆水頭症
☆クモ膜炎の癒着
☆炎症性萎縮:多発性硬化症
☆視束脊髄炎
☆脊髄癆



眼疼(がんとう)

=目が痛い
1.眼眥と白眼が疼痛する。昼激しく痛み、陽に属する。
2.目珠と黒眼が疼痛する。夜激しく痛み、陰に属する。

【漢方薬】
■越婢加朮湯・・・(眼球が赤く腫痛)
■夏枯草散[2]・・(目が痛み、冷涙が流れる、陰に属する。)
■救苦湯・・・・(眼が激しい赤腫で、苦痛に耐えられない
■眼疼1号・・・(瞳が痛みに耐えられないとき)
■瀉青丸・・・・・・(目が赤く、便秘)



 眼目
【漢方薬】
■益気聡明湯
■加味荊黄湯《医学入門》
■眼目一方《寿世保元》
■袪風清熱散《寿世保元》
■犀角飲《医学入門》
■滋腎明目湯《万病回春》
■四物竜胆湯《医学入門》
■四明飲《万病回春》
■十全大補湯《薛立斎十六種》
■助陽和血湯《古今方彙》
■神効黄蓍湯《蘭室秘蔵》
■洗肝明目散《万病回春》
■天門冬飲子《医学入門》
■白殭蚕散《医学入門》
■保肝散《万病回春》
■補中益気湯《薛立斎十六種》
■蔓荊子散《医学入門》
■六味丸両麦門冬・五味子《薛立斎十六種》

【鍼灸】
「昭和2年10月21日。患者は東京帝大薬学部主任教授。薬学博士。朝比奈氏。年齢50歳位。栄養不良。顔面蒼白。眼が悪いという。肝臓が前から悪く、眼も悪かった。諸方の医師に罹ったが眼が治らなかったらしい。沢田先生の治療を受けてより著しく経過が良いのである。先生は背部を触診されながら-------
“もう肝臓はようなりました。脾臓と腎臓が治れば肝臓も治って了まいます。実に不思議なものですな。肝臓が治ったら眼も良うなったでしょう”という。
“ええ、大変具合がいいようです”と患者が答える。
この患者の灸穴は[身柱][脾兪][腎兪][次][中][左陽池][曲池][足三里][太谿]」《沢田流聞書鍼灸眞髄》

 



𤸷痺(がんぴ)
=知覚麻痺のこと。


顔面紅潮
  【漢方薬】
■黄連解毒湯
■加味逍遥散
■桂枝茯苓丸
■三黄瀉心湯
■三物黄芩湯
■四逆湯
■清上防風湯・・・・(脂ぎっている)
■大柴胡湯
■調胃承気湯
■猪苓湯
■通脉四逆湯
■女神散
■麦門冬湯
■防風通聖散



 顔面神経痛
  【宝石療法】
    マラカイト




 顔面神経麻痺 facial palsy
    (参照→サルコイドーシス)
⇒中枢性と抹消性があり、

<1>中枢性の顔面神経麻痺は、
①顔面の上部(眼・前額部)は麻痺せず、
②顔面の下半分のみが麻痺する。

<2>抹消性の顔面神経麻痺は、
①前額部の皺がなくなり、
②眼は広く開き(兎眼)、       
③眼を閉じることが不可能又は不十分となり、むりに眼を閉じようとすれば、眼球は上方に回転する(Bell現象)。

④口笛を吹くことができない。

■鏡見ながら顔を動かす訓練
「58歳の女性。顔の左側がおかしくなったので、医者に診てもらったら、顔面麻痺と言われました。それから2ヶ月近くになります。」
●どんな病気ですか?
顔面神経は、脳から内耳道という耳の骨に囲まれた部分を通って枝分かれし、顔に通じています。顔の表情をつくる筋肉を動かすだけでなく、味覚を司ったり、涙や唾液の分泌にも関わったりしています。これが一時的に腫れてマヒし、 <1>目が閉じられなくなる、
<2>額にシワを寄せられない、
<3>口がうまく動かせない
といった症状が現れるのがこの病気です。神経は左右に分かれており、片側のみマヒするのが普通です。表情がおかしくなるのも顔の片側です。
●いろいろあるようですね?
一番多いのが『ベル麻痺』と呼ばれる種類で全体の6~7割を占めています。過労やストレス、風邪、冷たい風に当たることなどがキッカケになると言われ、突然症状が現れ、しばらくして消えていくのが特徴です。原因はよく分かっていませんが、最近になって、口内炎などの原因になる単純ヘルペスが関係しているのではないかと指摘されるようになりました。
●他には?
ウイルスが原因の耳に水ぶくれを起こす『ハント症候群』や、神経の周りの骨節や腫瘍による圧迫、中耳炎、顔のけがなども原因になります。
●どんな治療をするのですか?
ステロイドホルモンの点滴や飲み薬などで神経の腫れを取ります。腫れが続く時期は1~2週間です。その後は血の流れを良くする薬や、ビタミンBなどで神経の開腹を手助けします。骨折や腫瘍が関係しているときは、圧迫を取り除くため、内耳道などの手術をすることもあります。
●後遺症の心配はありませんか?
ベツ麻痺の場合、多くは次第に元に戻ります。ただし、腫れた状態が続いている初期は神経が傷みますので、この間にどれだけ適切な治療が出来るかでその後の具合が違ってきます。神経の大部分が死んでしまうと、顔の筋肉が動かない状態やケイレンが残ってしまうことがあります。また、再生する過程で別の場所の神経が伸びてくることがあり、目を閉じると口が動く、唾液とともに涙も出る、といっった意思通りに体が動かない症状が現れることもあります。
[ハント症候群]
「水ぼうそうの原因ウイルスが水ぼうそうを起こした後に再び活発になり、帯状疱疹の水ぶくれが耳に出来、その前後に顔面神経麻痺が起きる。免疫力が低下したときに起こりやすいと言われ、顔面神経麻痺の治療に加え、抗ウイルス薬などを使う。」2000.7.16《朝日新聞》

【鍼灸】
①「手三里は、顔面神経麻痺の要穴。」《沢田流聞書鍼灸眞髄》
②「筋縮穴(第9椎の下)。筋縮の名の如く、筋の緩まりたるを引き締めるのに効く。」《沢田流聞書鍼灸眞髄》
③「陽陵泉(最も効あり)、肝兪、筋縮、手三里(痛みを伴うとき)、地倉(口角を去る4分の処。これは用いなくてもよし。普通の灸点師がよく用いる。よく効く処である。極めて小さな灸をすえること)」《沢田流聞書鍼灸眞髄》

【漢方薬】
■烏薬順気散
■烏頭桂枝湯
■黄蓍桂枝五物湯
黄蓍桂枝五物湯は、色の白い水太りの婦人の顔面神経麻痺に効がある。またこのような患者には神効黄蓍湯を用いて著効をえたことがある
■香川解毒剤
梅毒が原因のものに用いる。これに桂枝加苓朮附湯を合して用いることがある(漢方診療医典)
■葛根加朮附湯
■葛根湯
発病の初期に用いる。特に感冒ののちに起こったものによい。脈に力があり、筋肉の緊張のよいものを目標にする(漢方診療医典)
■加味八仙湯
本方は万病回春に出ていて、麻痺を治す効がある。発病後2ヵ月たっても開腹しない顔面神経麻痺の患者に、本方を用いて全治させた経験がある。
衆方規矩には、つぎのように本方の薬効を述べている。“按ずるに麻木を治するの主方なり。此湯を用ゆべし、若し軟に痺れる者は血虚なり、一男子上体しびれ、ことに舌しびれ、酒の味を知らず、”(漢方診療医典)
■桂枝加黄蓍湯
■桂枝加朮附湯
■桂枝加苓朮附湯
葛根湯は表の実を目標にするが、本方は表の虚を目標とする。本方を用いる患者は気力の乏しく、冷え症で、脈にも力がない(漢方診療医典)
■桂枝茯苓丸
瘀血による者に用いる。瘀血の腹証を目標にする(漢方診療医典)
■小活絡丹
■小続命湯
■続命湯
急性期を過ぎて病気が長引くもので、麻痺のほかに著しい症状の無いもの(漢方診療医典)
■鎮肝熄風湯    
■当帰芍薬散
■八味順気散
■白朮附子湯
■補陽還五湯
■苓桂朮甘湯





 顔面蒼白
【漢方薬】
■安中散
■帰脾湯
■四君子湯

【宝石療法】
<1>[ルビー]




 顔面播種状栗粒性狼瘡
⇒皮膚結核の一種。
◎顔面の上下眼瞼・鼻根・鼻唇溝に、対称性に栗粒~麻実大の皮疹が散在する。
◎自覚症状、全身症状はない。


 顔面浮腫
⇒顔が腫れる・むくむ。
【漢方薬】
■九味檳榔湯
■桂枝加黄蓍湯
■柴苓湯
■清上防風湯
■八味地黄丸
■麻杏甘石湯
■苓甘姜味辛夏仁湯




癌性腹膜炎
⇒中高年に多い。

◎以下の疾患に続発する。
胃ガン
腸癌
膵ガン

 

◎症状:
腹部膨満感、圧迫感
食欲不振
羸痩
悪液質
腹水(滲出型)