<こ> つらい症状・病名


コクシジオイデス症
=骨を破壊する病気の一種。

#「サンジョアキン谷熱」
「カリフォルニアでは今、コクシジオイデス症が中公中で、カーン群を中心に、その数は1993年には4137人に達した。長期にわたる日照りの後に大雨が続いたために、コクシジオイデス・イミティスという真菌の増殖が原因。

感染者の多くはほとんど何も気づかず、せいぜいインフルエンザに似た症状が現れるくらい。だが免疫系が弱い人には、砂漠リウマチといって、リンパ節や骨・肝臓・脳などの臓器に一連の異常が生じることがあり、2/3は死亡する。

この病気はエイズ患者にとっては致命的な病気となる。



ゴーシェ病
■治療が可能に
「先天性代謝異常症の1つ、ゴーシェ病の治療が日本でも関心を集めている。東京慈恵会医大小児科の衛藤義勝教授と井田博幸講師によると、ゴーシェ病は糖脂質の代謝酵素遺伝子の異常で、上手く分解できなかった物質が肝臓や脾臓などに溜まる。その結果、血液が正常につくれなくなり、骨折なども起きる。

この病気には3つの型があり、神経に障害を起こさない1型が全体の6割を占めている。従来は全く治療法が無かったが、米国のジンザイム社は1990年、人間の胎盤から抽出した酵素を精製、一部を変えた治療薬を開発した。1週間に1度静脈注射すれば、1型はほぼ完治する。難点は一生必要なうえ、薬代が極めて高いこと。日本では96年秋に認可され、焼く40人がこの治療を受けているが、体重10kgの子供で年間2000万円の治療費がかかっている。
1998.2.22《朝日新聞》


コルサコフ症候群
⇒健忘と記銘力障害、失見当識に、作話が加わるもの。
【漢方薬】
■桂枝加竜骨牡蠣湯

■酸棗仁湯

■八味地黄丸



コレステロール値が高い
=LDLコレステロールは、血管の中を栄養を運ぶ船のようなもので、その船を攻撃するのが、活性酸素。そして活性酸素から船を守るのが、ビタミンA・C・Eです。守りきれず壊された船がたまって、動脈硬化や血栓などになります。 

■「コレステロール」って何?
「動物の体を作る脂肪の一種で、脳に多く、また性ホルモンの材料となるなど重要な脂質の1つ。しかし、コレステロールが多すぎると『高コレステロール血症』となり、動脈硬化や脳血栓などが心配になる。日本ではかってコレステロール値がやや低いほどだったが、昭和30年代以降、食事の欧米化からコレステロール値の高い人が増えてきている。」(NHKためしてガッテン参照)

■レムナント様リポタンパクコレステロール
「協和発酵の子会社「協和メデックス」は、動脈硬化の危険因子とされる特殊なコレステロールを約10分で測定できる臨床検査試薬『メタボリードRemL-C』を発売した。汎用の血液自動分析器に対応している。
試薬が測るのは「レムナント様リポタンパクコレステロール」で、血中コレステロールが分解される過程で出来る中間生成物。分解酵素の働きが鈍るとこの生成物の血中濃度が高まり、動脈硬化の発症や悪化を促す。2006.3.2《産業》

■不規則な食事
「脂っこい食事を不規則に摂取する生活を続けると、コレステロールの代謝を担っている肝臓の体内時計が異常となり、同じ食事内容でも規則正しく摂取した場合に比べ、血中コレステロール濃度が大幅に上がる可能性が高いことが分かった。
名古屋大学大学院生命能楽研究科の小田祐昭准教授らがラット実験で確認し、2008年4/5、日本農芸化学会で発表。
研究チームはコレステロールが高くなるよう配合したエサを、6匹づつ2グループの夜行性ラットに与えた。いつでも食べられる状態にしたグループは、夜になって起きたときと明るくなって寝る前の2回エサを食べた。もう一方のグループには、同じ内容と分量のエサを1/4ずつ分け、昼夜を通して6時間ごとに与えた。その結果、昼夜問わずエサを食べることになったラットは、肝臓からのコレステロール放出量が増え、血中濃度が100㍉㍑当たり約200㍉㌘~270㍉㌘と、1.3倍上昇。肝臓でコレステロールが代謝されると胆汁酸として排出されるが、糞に含まれる量も減っていた。
小田准教授は“頭の睡眠リズムは日光の影響が大きいが、身体は食事に合わせようとする。交替制勤務などの場合でも、1日3~4回出来るだけ普段と同じ時間に食事した方がいいのでは?”と話している。」

◎原因となる疾患:
・甲状腺機能低下症
・橋本病

【西洋薬】
「リピトール」山之内製薬
■スタチン系
「スタチン系と総称される薬の仲間を最初に見つけたのは、三共の元研究者で、現在は研究開発型企業のバイオファーム研究所所長を務める遠藤章氏だ。遠藤氏は東北大学農学部卒業後、1957年に三共に入社、66年に米アルバートアインシュタイン医科大学に留学しコレステロールの研究を始めた。
「当時は分子生物学が興隆期で、研究者は核酸や遺伝子の研究に群がった。脂質は人気が無く競争もそれほど激しくない。そこで、脂質をテーマに決めました」
遠藤氏は合成を調整する酵素(HMG-CoA還元酵素)に着目し、帰国後に研究を始めたが、期待の的ではなかった。
「ニューヨークでは大学に近い、イタリア人が多い地域に住んでいたのですが、夜中にサイレンが鳴って救急車が走っていくことがたびたびあった。ほとんどが心筋梗塞患者。米国では多く人が心臓病で亡くなっていた。日本も豊かになれば心臓病が増えると思った」
「68年に帰国したが、三共は抗生物質に力を入れる入れるために中央研究所から発酵研究所を分離した。私は発酵研究所で誰に断ることもなく研究を決めた。実際の着手はチームが出来た71年。2年をかけて約6000株のカビとキノコを調べ、73年8月に青カビからコレステロールを下げる効果があるコンパクチンを見つけた。」
「菌は生存競争のために他の菌を攻撃する物質を出す。核酸を壊すものやタンパク質合成をジャマするものなどいろいろだ。生物にとって必須のコレステロール合成を阻害する物質をだすやつもきっといるに違いないと考えた。
フラスコ中での実験で効果を確認したが、ラットによる実験での評価を中央研究所に依頼したところ、「効果無し」と突き返された。
「報告を聞いた時には血の気が引きました。専門家の判断だから反論も出来なかったのですが、あきらめきれなかった。そこでこっそりラットを飼育して自分で実験し、何故効かないか?を突き止めようとしました。
「そんなとき、研究所に近い国鉄大崎駅近くの飲み屋で偶然、中央研究所の研究者と知り合い意気投合しました。実験で使って「後はつぶしてたべるしかない」というニワトリを彼からもらい受け、これも秘密で実験をやったら、効果が出た。血中コレステロールが50%も下がった。
ニワトリへの投与実験は半分はヤマ勘だが、半分は成算があった。独自に試みたラットの実験で、経口投与のコンパクチンが途中で吸収されずに肝臓に達し、投与後8時間まではコレステロールが減少することを突き止めていた。その後、正常値に戻るのは何故か?
「考えてみれば当たり前のこと。若く健康なラットのコレステロール合成を無理矢理減らせば、生体はそれに応じて合成量を増やす。2つが釣り合った結果、見えるのは量が不変という状態。卵を毎日産むニワトリのメスは血中に過剰なコレステロールがあり、薬の作用が出やすい。
ニワトリだけでは研究所幹部を説得しにくいと考えイヌでも実験し確認した結果、76年6月に新薬として実用化を目指すプロジェクトが社内で発足した。「ところが、77年4月に、毒性試験で問題が生じたとの知らせが入りました。ラットで何らかの異常が出るまで大量投与させる試験ですが、肝臓細胞にみたことのない結晶が現れた。前例のない現象に安全性の専門家は慎重に鳴りました。私は何故そんな結晶が出来るのか調べろといって、ゴネました。
まもなく、遠藤氏はプロジェクトローダー役をハズされた。実用化は難しくなった。
大阪大学の山本講師(現・国立循環器病センター研究所名誉所員)から重い抗コレステロール血症の患者にコンパクチンを試してみたいとの申し出を受ける。77年末に申し出をうけることに決め、私が自分で袋詰めしたコンパクチンを持って届けました。今ではとても考えられないことですが、会社には内証で治験を始めたわけです。
「最初に投与した患者さんは量が多すぎ副作用が出てしまいましたが、効果はハッキリしました。山本先生は投与量を調整し、半年間で10人の重症患者に投与して8人でコレステロールが30%前後下がりました。各地の医師が臨床研究をすすめて良いデータが集まってきました。
遠藤氏は臨床研究が始まった時点で、79年に退社、東京農工大学に移った。しかし、翌年、三共が開発を打ち切ったと知らされる。
「長期投与試験で肝毒性が見つかったとウワサを聞きましたが、大学にいたので理由は聞いていません。もう1つ驚いたことは、米メルクがコンパクチンとよく似たスタチン類のロバスタチンを発見していたのです。三共はメルクと提携、コンパクチンの情報を提供していたのですが、いつの間にか解消したらしい。
メルクは87年にロバスタチンを高コレステロール血症治療薬として発売、三共の続いてコンパクチンを改良した薬を商品化。
またコンパクチンの提供を受け遠藤氏と共同研究した米国のブラウン、ゴールドスタイン博士は85年にコレステロール代謝の研究でノーベル賞を受賞する。」2006.2.15《産業》
遠藤所長が青カビからスタチンを発見。

■気にしすぎず、食事療法と薬を
「20歳の大学生。検診で総コレステロール値が336mgと高いことが分かりました。入試時のストレスで高くなったと思っていましたが、1年たっても250~300で下がりません。痩せている方で中性脂肪も普通。両親は高くありません。肉やアルコールの摂取には気を付けていますが、帰省時に母が注意して作ってくれた食事を摂ると値が上がります。体質でしょうか?
<1>総コレステロール値はどれぐらいが望ましのですか?
総コレステロール値は血液から赤血球・白血球などを取り除いた血清1000ml中に含まれる量で表示されますが、この値は一般に年令とともに上昇します。今年度厚生省が発表した国民栄養調査によると、全国平均の値は男性の場合に[30歳代で190]、[50歳代で200]、女性だと[30歳代で180]、[50歳代で210]です。
 この人は20歳で336ですが?
厚生省の発表では20代のデータは分かりませんが、一般に男女とも平均170~180ぐらいですので、かなり高いですね。また医学的には日本動脈硬化学会が220未満なら正常域という基準を定めていますが、この値と比べても高い方です。しかしどの程度深刻かは、総コレステロール値のうち、HDLコレステロールとLDLコレステロールの値がいくつになっているかが問題で。
<2>HDLとLDLとは?
HDLとは別名[善玉コレステロール]と呼ばれ、細胞内の余分なコレステロールを引き出す働きがあるので、総コレステロール中でこの値が占める割合が高い方が良いのです。日本動脈硬化学会では、HDLコレステロールが40以下だと動脈硬化の危険性があるとしています。しかし高いほどいい訳ではなく、100以上あると[高HDL血症]といってHDLが善玉として働かなくなる場合が有ります。
 一方、LDLは悪玉コレステロールといって学会基準はありませんが、米国ではLDLが130までは正常値、160以上になると動脈硬化のリスクが非常に高くなるとしています。

<3>原因は?
約9割以上の人は遺伝的な体質によると考えられています。しかし遺伝的体質を持った人でも、食事に気を付ければ値を下げることが出来る人と、食事を変えても値に変化がない人もいます。後者は[家族性高コレステロール血症]といい、このタイプの人は約500人に1人くらいしかいません。また、遺伝的体質の他にコレステロールが高くなる原因として、ストレスや運動不足などもあります。

<4>ご両親の総コレステロール値は高くないようですが?
具体的な数値がないので分かりませんが、基準値の220からほんの少し低いだけといった場合も考えられます。また、ご両親は生活環境や食事内容で遺伝的体質が隠されていて、お子さんにだけ出たのかもしれません。
<5>治療法は?
食事療法で3ヶ月~半年以上様子を見て、それで総コレステロール値が190以下に下がらなければ薬を使います。薬は最近では効果が高く副作用もないものが開発されています。またすでに不整脈など心臓に症状が出ている人には、食事療法を3ヶ月ほどやってすぐに薬を使う場合もあります。
<6>食事療法の注意点は?
身長から100を引き0.9を掛けた値が理想体重ですが、
①この体重に30~35Kcalを掛けた値が1日の摂取カロリーの目安です。
②また糖分は全カロリーの55~60%、脂肪分は20~25%、残りの約20%がタンパク質といった取り方をします。脂肪分は動物性1/3、オリーブ油など1/3、サフラワー油やコーン油などが1/3、それにイワシ・サバなど魚類に多く含まれるEPAとDHAを合わせて摂ります。
③またカルシウムやマグネシウムも動脈硬化の予防に有効なので十分に摂るように心がけましょう。(板倉弘重・東大医学部講師)1991.8.4《朝日新聞》

■動物性脂肪も大切(リノール酸油の過信は逆効果)
「コレステロールを増やす犯人と思われている油。ところがリノール酸を含む植物性油は、コレステロール値を下げるという。その効果を実験で確かめて見よう。
男子高校生3人ずつの2グループの同じ献立の食事を7日間食べてもらう。グループの一方の食事はバターだけで調理。もう一方にはリノール酸を含む植物性油だけで調理し、実験の前後で血中コレステロール値の変化を調べた。
リノール酸の効果は実験でもハッキリ表れた。しかし、大切なのはその内容。コレステロールにはよく善玉と呼ばれるHDLと、悪玉と呼ばれるLDLがある。リノール酸はこの善玉も減らしてしまったのだ。
また、バターグループのコレステロール値は、思ったほど上昇しなかった。コレステロールは細胞膜や、ホルモンの材料となる重要な栄養素。そのため、体内でも必要な分を合成できる。バターを食べた体は、「コレステロールは十分」と判断し、合成する量を減らしたからだ。
いずれにしろ、重要な栄養素の脂質は、植物性・動物性それぞれに異なる働きがある。「植物性=ヘルシー」と思いこまず、バランスよく食べることが大切だ。」(NHKためしてガッテン参照)

■コレステロールは少ない方が良いのか?
何かと悪者扱いされるコレステロールだが、人間の体には無くてはならない。正常な成人の体には約140gのコレステロールがあり、その1/4は脳に含まれている。もしコレステロールが全く無いと細胞は死滅してしまうのだ。
では、どれくらいが正常値なのだろう? 心臓病などの危険が急激に増す、1Œ中の血漿中に220mgが正常値とされている。」 (NHKためしてガッテン参照)

■低いと危険
「血液中のコレステロール値が低いと死亡率が高くなることを調査結果を浜崎智仁・富山大学教授、大櫛陽一・東海大学教授が発表した。
過去に実施された5件の疫学調査(約17万3500名)のデーターを再検討。5年後に死亡する危険について比較した。
研究メンバーはは血液中の総コレステロールの濃度によって、4つのグループに分類し、3番目にコレステロール値が高いグループ(160 ~199mg/dl)を基準にして、他のグループと比較検討した。
最もコレステロールが低い(160mg/dl未満)グループと基準グループとを比べて死亡率が(1.6倍/男性)(1.4倍/女性)に上昇。

■コレステロールたっぷりの食事を続けたら?
「おいしいけれどコレステロールたっぷりの肉・ウニ・イクラ。これらを食べ続けたらどうなるかを実験してみた。
「食べ過ぎても急に(3日間)は増えなかった」
コレステロールは食べ物からだけでなく、体内でも、肝臓などで作り出されている。実験でこれだけ、高コレステロール食を摂ったのに、すぐコレステロール値が上がらなかったのは、肝臓などがコレステロールを作るのを止め、体内のコレステロール値を調整したからだ。では、なぜ3日目以降、調節機能が働かなくなったのだろう。この謎を解明したのが「扉理論」(LDLレセプター理論)だ。この実験でコレステロール値が上がってしまったのは、扉が閉じたからなのだ。
[LDLレセプター理論](アメリカ・ブラウン&ゴールド)
血中のコレステロールを車にたとえると、扉が開いている駐車場(細胞)に入るので、車が多少増えてもすぐには渋滞にならない。ところが、駐車場が一杯になり、扉が閉じると、路上(血管内)に車があふれ出し、大渋滞が起きるとする」(NHKためしてガッテン参照)

■オリーブ油はコレステロールの救世主か?
「1日60gのオリーブ油のみを使った食事を1週間続け、実験前と後でコレステロール値を比較してみた。肉は一切食べていない。
実験の結果、オリーブ油は確かにコレステロール値を下げた。しかも善玉は減らさず、悪玉のLDLだけを減らしてくれた。ただ、肉の脂を食べると、コレステロール値が上がってしまうので、食生活を変えずにただオリーブ油を食べても、その効果は期待できない。むしろ食べたコレステロールを排出したり、細胞に取り込む扉を開けるような食べ物が必要なのだ。例えば、魚の脂は細胞内のコレステロールの生成を減らし、扉を開けやすくする。食物繊維は細胞内のコレステロールを排出、また大豆製品は扉の開閉を司る仕組みを刺激してくれる。このような食べ物をメニューに積極的に加えていきたいものだ。」(NHKためしてガッテン参照)
■コレステロール分解アミノ酸→貧血の恐れ(参照:貧血)

■抑制で、心筋梗塞の危険増す
「動脈硬化を招くコレステロールの値が高いと診断された閉経後の女性は、治療でこの値を下げると逆に心筋梗塞の危険性が高まる。閉経後の女性に対する国内の大規模臨床試験の中で、そんな傾向が明らかになった。
男性は値が低い方が危険性も低かった。
コレステロール値抑制に注目する現在の治療法の見直しが迫られそうだ。
臨床試験を行ったのは日本脂質介入試験研究会(代表幹事=板倉弘重・茨城キリス教大学教授)。
コレステロールは血管壁に溜まると心筋梗塞や狭心症などの原因になる。コレステロールを血管壁に運ぶLDL(悪玉)や、壁から除くHDL(善玉)などの種類がある。これらを含んだものを総コレステロール値と呼ぶ。
日本動脈硬化学会は指針で、血清100mlあたりの総コレステロール値が220mg以上で、LDL140mg以上を『高コレステロール血症』、それぞれ200mg未満、120mg未満を『適正』とし、食事指導や薬などによる治療の目安にしている。
臨床試験は1993年~6年間実施した。総コレステロール値220mg以上の約54000人(35~70歳)に、シンバスタチンというこの値を下げる薬を飲んでもらった。女性は閉経後に限った。中間集計で、試験開始以前に心筋梗塞などに罹ったことがない、男性約13000人と女性約29000人のデータを分析した。
<1>女性は、
(1)正常をやや上回る200~219mgの時に心筋梗塞の発病率が最も低かった。その発病率に比べ、
(2)適正域の180~190mgの女性は1.6倍、
(3)179mg以下は2.5倍と高かった。
<2>男性は、値が増えるにつれて発病率も高まり、240mg以上で急上昇した。
日本動脈硬化学会理事の馬淵宏・金沢大学医学部教授(脂質代謝学)は「欧米人はLDLの割合が大きいので、総コレステロール値で判断してもさほどブレがないが、日本人は比較的HDLが多く、欧米の試験と異なる結果になった可能性がある。診断はLDLの値を見るべきだ」と指摘する。2000.7.16《朝日新聞》

■総コレステロール値高い11歳の息子
「11歳の息子の血液検査で、総コレステロール値が366mg/dlと、非常に高い値が出ました。体格は細身です。夫もコレステロール値が高くて薬を飲んでおり、家族性高コレステロール血症と診断されました。今は運動と食事療法をして、HDLの値が低くなってきたら屋kぶつりょうほうwp始めるように言われました。
コレステロールには、体の各部からコレステロールを回収する善玉コレステロール(HDLコレステロール)と、体の各部にコレステロールを供給する悪玉コレステロール(LDLコレステロール)があります。
悪玉が増えると動脈の内側に溜まって動脈硬化になり、狭心症・心筋梗塞・脳梗塞を起こしてきます。
家族性高コレステロール血症とは、常染色体優性遺伝によるもので、両親から病的遺伝子を受け継いだホモタイプと、片方の親からのヘテロタイプがあり、頻度はそれそれ100万人に1人、500人に1人です。
原因はLDL受容体の先天的異常と考えられています。総コレステロール値は、正常児で200未満ですが、ホモタイプで700以上、ヘテロタイプで350くらいです。
症状は、アキレス腱部の黄色く硬いコブが良く見られます。また、心筋梗塞が男性で30歳以降、女性で更年期以降に起こってきます。
治療は適切な運動と食事療法が中心です。過食や、脂肪・コレステロールの多い食品,
甘い物を避けます。一方、食物繊維は多く摂ります。
薬物療法は、LDL値を重要視して行いますが、小児の場合、一定の見解はありません。アメリカの指針によると、10歳以上で、家族に55歳以前の心筋梗塞があり、LDLが130以上の場合、小児に使用可能な薬を投与します。家族歴がある場合は、薬を考えてもらってください。」
■コメ油
「植物油の中で最もコレステロール低下作用の大きい油に加え、原料のコメが遺伝し組み替え作物でないことが注目され。需要が増加している。ボーソー油脂(埼玉県日高市)が最大手・」2002.5.23《日経産業新聞》

■心臓病とコレステロール
「コレステロール値を下げる高脂血症薬を使うと、日本人でも心筋梗塞や狭心症リスクを3割軽減できる、との報告が2005年11月発表された。
細胞膜を構成する脂質の一種であるコレステロールは、増えすぎると血管にたまり動脈硬化を引き起こす。コレステロール値を下げれば心臓病のリスクを軽減できることは欧米では様々な調査で実証済み。だが、日本人の心臓病を発症する場合は欧米の1/3以下と少ない。今回の大規模調査は、1994年~2004年まで続いた。血中の総コレステロール値が1デシ㍑当たり220~270㍉㌘と、軽度から中程度の高脂血症にあたる7832人(うち女性68%)を2つの集団に分け、一方に高脂血症薬メバロチン(プラバスタチン)を1日10~20mg服用してもらい食事療法を併用した。もう一方は食事療法だけにとどめ発症リスクを比較した。
患者の追跡期間は平均5.3ヵ月。食事療法だけだと総コレステロール値は230~240mg前後で推移したのに対し、薬を併用すると220mg前後に低下した。心筋梗塞や狭心症などを発症するリスクは33%減少した。
薬の効果を評価する場合、『治療必要数(NNT)』と呼ぶ指標を使う。1人の冠者で有効性を確認するために、最低何人の患者に薬を投与しなければならないかを示す数値だ。今回の場合では、119人が高脂血症薬を5年続けて服用して、ようやく心臓病患者が1人発生することを防げるということになる。」2006.5.14《日経》

■酸化LDLの診断薬
積水化学工業胃の子会社積水メディカルは、2008年4/28、酸化LDLの診断薬「酸化LDL-エライザ第一」を発売する。検査は酵素免疫測定法を使う。血清と試薬を混ぜた後に、統治を使い濁度を読み取る。
保険適用は申請中





コレラ
⇒コレラ菌の経口感染によって起こ伝染病。食物・水で感染し、24~48時間の潜伏期間がある。
◎原因:
<1>Vibrio cholerae。
<2>経口感染。
<3>潜伏期間:1~3日。

◎症状:
⇒大量の下痢(水様性)、脱水、低カリウム血症、筋の痛みとケイレンを起こす。
<1>米のとぎ汁様の下痢(主症状)。
<2>コレラ様顔貌。
<3>脱水症状(速やかに脱水状態になり、死亡率が高い)。
<4>乏尿。

■1997.10.12《日本経済新聞》(吉川昌之介・日本歯科大学教授)
「コレラ菌には、菌の表面にあるO(オ-)抗原タンパク質の種類により、[O1(オーワン)]と[ノンオーワン]がある。O1菌だけがこれら毒素を作るため、コレラという伝染病を起こす「コレラ菌」として特別に扱われてきた」。
O1菌:生物学性質の違い 

----アジア型(古典型)
  エルトール型

抗原構造の違い-:稲葉型、小川型、彦島型

「コレラ菌は小腸で増え、コレラ毒素を作る。毒素によって小腸細胞から大量の水とカルシウムイオンなどの電解質が流れ出すため、激しい下痢を起こし、極度の脱水状態になる。普通アジア型コレラ菌の方がエルトール型コレラ菌より重い症状を引き起こす。
■国内感染ルート解明へ
「この夏、国内で感染したとみられるコレラ患者が増えていたことが分かった。厚生省のまとめによると、今年1月~9/1までの国内コレラ患者は81人。このうち本人や家族に海外への渡航歴がない人が、全体の40%強の33人に上っているのが今年の特徴になっている。
8月末には東京都内の病院で多臓器不全で死亡した男性からコレラ菌が検出されるなど、国内感染とみられる例は夏に入って急増。7月に7人、8月には22人と、国内感染のほとんどを占めている。」 1997.9.3《日本経済新聞》
■感染の原因
「成田空港検疫所の調査では、コレラ感染の原因になったのは水・氷が約半数で、サラダや新鮮な魚介類・乳製品・切った果物なども多かった。途上国に年間3~4回は出かける喜多悦子・国立国際医療センター派遣協力課長は、「1日分のミネラル水を持ち歩き、丸のままの果物で渇きをいやす」という。1996.5.26《朝日新聞》」
■解説
「世界中のコレラの症例のほとんどは軽いか目立たない。汚染された水や患者の着衣などから菌が大量に供給されない限り、コレラには比較的罹りにくいのである。飲用水の塩素消毒が予防になる。また、細菌の量がよほど多くないかぎり、唾液と胃酸が天与の防壁としてコレラ菌に抵抗する。あらゆるこれら感染者の3/4は全く症状を示さない。だが、何世紀もの間、いみじくもコレラ疫と呼ばれたような激症性コレラのように、患者がひどく汚染された水を飲むなどして何100万もの菌を摂取している場合には、治療を受けなければあっというまに死に至ることがある。
 菌は小腸で増殖して毒素を作りだし、毒素の力を借りて、腸を守っている粘膜層に侵入する。それが引き金になって体液と塩類が何リットルも恐ろしい勢いで大量に流出しはじめる。急に胃痙攣が起こったと思うと、激しい下痢と嘔吐と発熱が続き、そのあいだに毛細血管が破れて皮膚が黒くなる。(ここからフランス語では立ちすくむような恐怖を青い恐怖une peur bluueという)。激しい脱水症状で循環器系が破壊され、1日で死に至る場合もある。
 しかし、体液と電解質が遅れずに患者の体内に戻されれば、回復するのも早い。これほど単純な治療法はありそうもないくらいで、経口or点滴静注で塩類と糖類の水溶液を大量に補給すれば良いのである。
ビブリオ属のほかの菌は、やや軽症の下痢や敗血症、傷口の感染を起こす場合があるが、いずれもコレラ菌ほど恐ろしくはない。例えば、
<1>腸炎ビブリオは、日本でも夏の間の魚介類(たいていはエビ)による食中毒の主因になっている。
<2>アギノリティクスとヴルニフィクスは、温かい海水などの環境で受けた傷から感染する場合がある。後者の菌を呑み込んだりすると敗血症を起こすことがあるが、その危険があるのはほとんどが免疫不全か肝臓病の人である。ヴルニフィクはメキシコ湾岸で採れる生のカキに着いていて、1992年には少なくとも13人の死因となった。
ビブリオ属の菌はすべて、名前の示す通りビブリオ(振動)する小さな尾を持っていて、ものすごい勢いで泳ぎ回る。
(A Field Guide Germs by Wayne Biddle)春日倫子訳より

【宝石療法】
・サファイア

【漢方療法】
■黄連湯

 

コロコロ便
⇒ウサギの糞の様なコロコロした排便で、2タイプがある。

<1>先硬後溏する小建中湯タイプと、
<2>裏急後重する加味逍遥散タイプとがある。

【処方名-50音順】
■小建中湯 

■潤腸丸   

■潤腸湯

■麻子仁丸(大便硬、小便が近い)



ゴム腫 gumma
⇒第3期の臓器梅毒期を特徴づける特異な梅毒性変化で、これはビ慢性の増殖性炎とともに梅毒の2基本的組織表現をなす。

【処方名-50音順】
■紫根牡蠣湯《黴癘新書》

 

コンタクトレンズ障害
■目に傷、気づかず治療が必要。
「34歳の女性。1週間連続装用の使い捨てレンズを使っています。“角膜に細かい傷がある”と言われました。大丈夫でしょうか?(兵庫・N)
「34歳の娘は、コンタクトレンズを16年間使用。目が痛むので眼科を受診したら“このままだと黒目が溶けてしまいます”と言われました。どういうことでしょうか?
●コンタクトレンズで目に傷がつくのですか?
「涙や酸素が不足すると、黒目を被っている角膜の表面に点々と細かな傷がつきます。『点状表層角膜症』といい、コンタクト使用者の5~15%に見られる症状です。
●治るでしょうか?
 「皮膚で言えば、ひっかき傷のような状態ですので、レンズを24時間~48時間程度はずしていれば、自然に治ります。しかし、傷に気づかず使い続けると、角膜の表面が面状にはがれ『角膜びらん』と呼ばれる状態になります。こうなると治療が必要になります。治療は、1週間~1ヶ月間、コンタクトレンズを休み、感染防止のための抗生剤の目薬を点眼します。
細菌やアメーバ原虫が傷にとりつくと『角膜感染症』になり、やっかいです。『失明』につながることも多く、ご相談の方が言われた“黒目が溶ける”状態になります。
アメーバ原虫には薬があまり効かないため、原虫がとりついた角膜表面を手術で数回にわたって削り取ります。又、角膜移植手術が必要となることもあります。
酸素が足りないまま半年か~1年ほど使い続けると、細かな血管が角膜間に侵入し、酸素を供給し始めます。『血管新生』といわれる現象で、角膜のにごりにつながります。
●どうしたら傷を防げますか?
<1>強度の近視や、片目だけ極端に視力が悪い人など、コンタクトレンズでないと十分に視力矯正出来ない場合は、細かな傷のうちに発見することが大切です。
<2>傷の原因が涙不足なら----人工涙液の目薬を使います。
<3>酸素不足なら-----酸素をもっと通すレンズに変えましょう。
<4>10年以上使っている------角膜の水分を眼球内に運ぶポンプの役目をしている角膜内皮細胞が、だんだん減ることがあります。普通は1平方ミリに3000個あります。これが1500個になったら、もうコンタクトレンズは使えません。この細胞は、失ったら元には戻らないので、減り始めたのが分かった時点で、コンタクトレンズを止めるか、より酸素透過性の良いレンズに変えて経過を見ます。内皮細胞の数は内皮の写真をみればすぐ分かります。(切通彰・大手前病院眼科部長)1998.2.22《朝日新聞》
■適正使用が大切
「コンタクトレンズを適正に使用しなかったことが原因で、眼病を発症するケースが相次いでいるとして、厚生省は26日、「医薬品・医療用具等安全性情報」を出し、全国の医療関係者に情報提供するとともに、広く注意を呼びかけた。レンズを装着したまま寝たり、洗浄や保管方法が不適切だったりする例が目立つといい、同省は「使用者は自覚症状がなくても定期的に検査する必要がある」と話している。
同省の研究班が、さあ悪念1年間の日大医学部付属板橋病院の眼科救急外来受診者約2200人について調べたところ、コンタクトレンズによる目の障害を訴えた人は約210人いた。
このうち、1日用の使い捨てレンズを水道水で作った保存液で保管し、繰り返し使用していた患者の場合、目に付いた傷にアカントアメーバが増殖して角膜潰瘍を起こし、角膜移植が必要なほど視力が落ちたという。
眼病を予防するための注意点はレンズの種類などによって異なるものの、同省は定期診断以外の安全対策として
(1)アカントアメーバ汚染を防ぐため、レンズの洗浄、保管は水道水でなく、レンズケア用精製水を使う。
(2)レンズを保存液で長期間保管した場合、細菌が増殖している恐れがあるので適切な処理を行う。
(3)角膜への酸素供給不足による角膜びらんを防ぐため、使い捨てレンズは定められた装用時間を守り、就寝前には外す
などを挙げている。2000.7.27《日本経済新聞》




こむら返り(転筋)
⇒腓腸筋ケイレン
◎こむら返りの分類:
<1>夜間のこむら返り

<2>昼間起こる運動に関係したこむら返り:
運動開始時or運動が終わって非常に疲れたときに起こりやすい。力を入れた場所、ex首・ふともも・背中・腕・肩など至る所で起こり得ます。

<3>妊娠と関連したこむら返り

<4>病気と関連したこむら返り
①肝障害
②人工透析
③末梢神経障害
④運動ニューロン疾患
⑤筋疾患

<5>薬剤性のこむら返り
①β-ブロッカー(高血圧薬)
②抗ガン剤
③H2ブロッカー(抗潰瘍薬)

治療薬:ダントリウム(筋弛緩剤)
    1997.9.7《朝日新聞》

■あまり頻繁でなければ心配無用
「74歳の男性。4年前から月1回ほど、寝ている内にふくらはぎや足の裏の筋肉がつり、痛さで目が覚めます。3年前から健康法でやっている水泳の最中に脚がつったこともあります。いずれも数分たてば自然に治りますが、ちょっと気がかりです。原因、予防法、治療法などお教え下さい。」
答える人は幸原伸夫・京大医学部付属病院助手

<1>「こむら」はふくらはぎのことです。こむら返りは筋クランプともいい筋肉がケイレンして固く収縮して強く痛む症状です。特定の筋肉に集中して起こるのが特徴で、一番起きやすいのは名前の通りふくらはぎです。相談者のように足の裏や首などにもよく起こります。

<2>起きるメカニズムは?
筋肉を動かす脳からの指令は、脊髄から分かれた末梢の運動神経を通り筋肉に伝えられます。これらの流れの1つ1つは運動単位と呼ばれます。運動が引き金となってこの運動単位のどこかが過剰興奮し、こむら返りが起きると推定されています。老化した神経や寝ているときの神経の状態は運動単位の過剰な興奮を引き起こしやすいのでしょう。ありふれた現象ですが詳しいことはよく分かっていません。

<3>検査:①神経の伝導検査
     ②筋電図
     ③腎臓や肝臓の検査
     ④電解質の検査
     ①筋肉の障害がないかどうかの酵素の検査

【針灸】
「皮内針を使う。経穴は「承山」「陽陵泉」

【処方名-50音順】(こむらがえり)
■桂枝加附子湯   

■芍甘黄辛附湯
勿誤薬室方函口訣に“腹中及び手足攣急し、偏痛する者を治す”とある。この方は芍薬甘草湯に大黄附子湯を合した処方で、手足の冷えなどを伴うものによい(漢方診療医典)

■芍薬甘草湯
傷寒論に“脚攣急するに・・・芍薬甘草湯を作りて、之を与う”とあり、また、勿誤薬室方函口訣に、“此の方は脚攣急を治するが主なれども諸家および脚気、両足或いは膝頭痛み、屈伸すべからざる者、そのほか諸急痛に運用すべし”とあるように、こむら返りの第一選択薬である、頓服でふくようしてもいいし、続けて服用しても良い。(漢方診療医典)

■ヨクイニン:
血液透析中のこむら返り、芍薬甘草湯が無効の者に有効。岡山市の幸町記念病院外科で。


(こ)
⇒小腸に熱があって痛み、白いものが出る。

【処方名-50音順】
■肉蓯蓉丸(蠱病を治す)

 

蠱痢(こしゅり)
⇒蠱症痢で黒血を鶏の肝のように下し、切るような痛み。

【処方名-50音順】
■茜根丸

■羚羊角元


恍惚 (こうこつ)
■酸棗仁湯(不眠嗜眠、胸中煩躁、腹部軟弱、多夢、健忘、驚悸、疲労、脈弱、)

 

声がれ(嗄声)
⇒声がれで、喉が破れ、咽門が病む=声嘶(セイセイ)。(嘶=セイ、いななく)

【処方名-50音順】
■響声破笛丸

■駆風解毒湯

■柴胡升麻湯(傷寒咳嗽・声嘶・咽痛)

■潤肺丸(久咳による声嘶・言語不能)

■参蘇飲

■清肺湯

■麦門冬湯(声楽家の声がれ

■八味地黄丸

■半夏厚朴湯

■蜜脂煎(暴失音・声嘶)

■六味丸

【民間療法】
<1>クロマメ。
<2>ダイコン。
<3>ハチク。
<4>アカマツ・カブラ・オオバコ・キキョウ・シロヤマブキ・ジャノヒゲ・セキショウ・ナタマメ・ナツメ・ナメクジ。

 

声が出ない (失音)(失語症)
⇒「声が出にくい」

■発声障害にボツリヌス
「のどの筋肉のケイレンで起きる発声障害を、食中毒の原因となるボツリヌス菌の毒素を極少量注射して緩和する治療が成果を出し始めている。「毒を以て病気を制す」方法で危険を伴うため、まだ正式な治療法としては認められていない。しかし、患者には僧侶や電話交換手など声を出す必要のある人がおり、唯一の治療方法として関心が高まっている。
  この治療技術の臨床試験に取り組んでいるのは帝京大学医学部の小林武夫教授ら。声帯に直接、神経毒の『ボツリヌストキシン』を10億分の1g単位の極少量だけ注射する。
 のどの形態は正常だが、話そうとすると筋肉がケイレンして声を出せない障害に、ケイレンを除く効果があるという。60人に臨床試験し、最も効果の出た場合で3~4ヶ月間ケイレンの抑制機能が続いた。1997.4.12《日本経済新聞》

■ガンで声帯切除
「ガンで声帯を切除した大学教授が、手術前に録音した自分の声をコンピューターで合成して再生するソフトを使って教壇に復帰しようとしている。
2007年12/21、大阪市内の病院で約10人の看護学生を前に行われた模擬講義。このソフトは、あらかじめ録音しておいた音声を組み合わせて、パソコンのキーボードで入力した文章の通りに再生する仕組み。
機械的な合成音しか使えなかった従来のタイプと異なり、録音した人の声質や口調を再現できる。このソフトを開発したのはOKI。」

【漢方療法】
<1>心は声音の主。肺は声音の門。腎は声音の根。

<2>酔って風に当たるところで寝ると失音する。急に言葉が出なくなると:
■[荊蘇湯]

■[人参荊芥散]

■[射干湯]

<3>急に唖になったとき。

■[杏仁(熬)7銭半、桂心末2銭半」混ぜて搗いてスモモ大に作って細綿でくるんで 口に入れて吸う]
■[苦竹葉or橘皮を濃く煎じて頻繁に服用]

<4>風冷で失音したとき。
■「紫蘇葉・荊芥穂各1両」汁を絞って酒に混ぜ、温服]

<5>中風患者の失語傷:

■[小続命湯-附子、+石菖蒲1銭]

<6>咳がひどく失語症:

■[人参清肺散]

■[杏仁煎]

■[蛤蚧丸]

<7>痰が詰まって失語症:

■[芎辛散]

■[玉粉丸]

■[導痰湯+菖蒲・竹茹・人参]
■ [導痰湯+黄芩・黄連]。

<8>虚損・憔悴・気血不足で失語症:

■[天真元を半月飲む]

<9>歌いすぎて失語症:

■[響声破笛丸]    

<10>咽喉痛で瘡となり失語症:

■[通溢散]

■[増損如聖湯]

■[荊芥湯]

■[通関湯]

■[桔梗湯]

■[神効散]

<11>痘瘡後の失語症:■[馮氏天花散]

<12>)産後の失語症:■[茯苓補心湯]

<13>吐瀉・大病後に、声はあってもしゃべられない(失音でなく、腎怯)            

■[補腎地黄元]

<14>老人が急に声が出なくなった:

■[十全大補湯-桂+菖蒲・遠志]

<15>亡血による不語:

■[四物湯+人参・白朮・陳皮・甘草・菖蒲・遠志]

<16>ビックリして唖となる:

■[遠志丸]

■[茯神散]

■[密陀僧散]

 

【処方名-50音順】(声がでにくい)
■訶子散(咳・声が出ない)    

■訶子清音散[1](諸風の失音・中語を治す)

■訶子清音散[2](乾咳嗽・声唖)

■加味固本丸(なめらかにしゃべられない)

■加味上清丸

■桔梗湯(咽喉の腫痛で音声がちぎれる)

■芎辛散(熱痰のせいで失音)

■響声破笛丸(歌いすぎて)

■杏仁煎(咳で失音症)寒痰が詰まり声が出ない)

■玉粉丸(冬、寒痰が詰まって声が出ない)

■金沸草散

■荊芥湯(咽喉腫痛、語声が出ない)

■荊蘇湯(失音傷を治す)

■蛤蚧丸(肺に血が溜まって痛く失音、咳にむせて失音)

■三拗湯2    

■潤肺丸(久咳による声嘶・言語不能)

■小続命湯附子+石菖蒲1銭(中風患者が失語)

■神効散(喉痺で声が出ない)

■清咽利膈湯

■清音散(声音が定かでない)

■増損如聖湯(咽喉腫痛で、語声が出ない)

■通隘散(喉痛・生瘡・声唖)

■通関散(喉痺・腫痛で言語の不能)

■入門大造丸(気血の虚弱、陽茎がしなびる、顔色が黄色い、大病後に声が出ない)

■人参荊芥散(感冒・風寒で言語が出ない、咽乾・鼻涕)

■人参清肺散(痰嗽・咽乾で声が出ない)

■人参平補湯(腎が弱くて声が出ない)

■発声散(咽喉生瘡で声が出ない)

■射干湯(酷寒・酷暑による咳嗽で息も長くできない)

■嘹喨丸リョウリョウガン(失音・声唖)
     (参照→「化学物質過敏症」)



 
声がふるえる
=「声嘶(セイセイ)」
◎主薬:声嘶には、竹瀝・童便を主薬とすべし《万病回春》


声に力がない
(言語無力)
■日本人の美声 探究の旅
「全身の発声機能を生かし、よい発声、正しい発音をするための学問を私は「発声学」と呼んでいる。解剖学にも深く入り込み、邦楽の名手の協力を得ながら、「よい発声とは何か」を自分なりの探ってきた。日本人は日本語で歌うべきだというのが持論であり、そのことを理論と実践の両面で追究してきた。88歳になり、出発から半世紀を超えてなお、探究の旅には終わりがない。
作曲家や邦楽の演奏家、クラシックの声楽家、ジャーナリストらの賛同を得て、日本人の発声、発音を究める任意団体「発声のしくみ研究会」を昭和40年に発足させた。声楽家の藤原義江、友竹正則、音楽学者の小泉文夫、邦楽家の西垣勇蔵各氏らの協力による研究会、シンポジウム、演奏会を今まで50回ほど開催。さらに自分の体験に基づいて声と人体の関係を考察した「声とからだ」などの本も2冊出版した。

「ゲーテの穴」のナゾ
発声への疑問を突き詰めれば突き詰めるほど、人体への興味が増す。親戚の紹介で昭和大学医学部の猪口清一郎博士を訪ね、生理解剖学や人類学の研究を始めたのは還暦を過ぎてから。日本人などモンゴロイド(黄色人種)、ヨーロッパ人などコーカソイド(白色人種)の骨格、器官の違いが発声にどんな違いをもたらすかを探り、日本人に適した発声を科学的に解明したかった。
例えば、コーカソイドは頭蓋、硬口蓋、鼻腔の奥行きが深いため、共鳴のいい、倍音の多い柔軟性のある声が無理なく出る。日本人はこれらの奥行きが浅く、共鳴の点で非常に劣っていると見られがちだ。しかし、モンゴロイドは頬骨の突出が鼻腔の前面に共鳴のポイントを持っていけば、ヨーロッパ人に負けない声が出るはず。こうした考察を実際のレッスンに生かそうと思った。
ある日頭蓋骨の標本を見ていて、上前歯の歯茎の骨に切歯(せっしく)(incisive fossa)という約1cmの穴が開いているのに気づいた。『ゲーテの穴』と呼ばれ、ここをめがけて声を出すといい声になる。「なぜ」と問われても、答えは今までのところ見つからない。おそらく鼻腔につながるだろうから良い声が出るのだということくらいしか分からない。
とにかく日本人に適した方法論を築く過程で、発声に悩んでいるプロの声楽家、音楽教師、音楽学生の数が考えていた以上に多いことが分かった。わずか1回のレッスンのために、北海道や九州から私の家を訪れてくる人がいる。

イタリア流発声ヒント
私は明治44年、横浜の生糸輸出商の家に生まれた。家族がみな邦楽をたしなみ、私も父の小唄を口でまねたりする子供だった。
やがて、ソプラノ歌手になりたいとも夢を抱いた。音楽学校在学中にはもうオペラ合唱団に加わり、プロ活動に入った。働きながら学ぶ過程でイタリア人の声楽教師、アッテリオ・ベレッティと出会う。彼にベルカント唱法の手ほどきを直接受けたことが、「発声」と言うテーマを生涯かけて追究する原点になった。
振り返れば、日本人は明治維新で洋楽を本格的に導入した。この時、日本語とは徹底的に語感の異なるドイツ語を母国語とし、骨格的にも大きな隔たりがある人たちを声楽教師として招いたことが後年、日本人の発声を誤った方向に発展させていったのではないか。ドイツに比べれば、ほとんど国全体が海に囲まれ、母音が置く使われるイタリアの発声法の方が日本人に適しているはず、との思いは当時から抱いていた。
さらに松竹過激学校の声楽専科を経て東宝に移り、新劇やミュージカルに出演。小沢栄太郎氏ら俳優座の創立者の方々と共演したことで、ただ美しい声を出すのではなく、正しく、はっきり発音した日本語で歌うことの大切さに思い至った。
山田耕筰先生の励まし
中学生のころから「山田耕筰童謡百曲集」などを買い求め、日本歌曲の勉強はしていた。プロの声楽家となった私が日本語の発音に関心を持ち、独自に研究しているとの話が伝わると、山田耕筰先生とも面識ができ、色々と意見を伺う機会が増えた。先生が作曲した歌劇「黒船」で芸者お松の役に起用された時は、発声、発音を絶賛して下さった。」(中原多代・声楽家)1999.6.30《日本経済新聞》

【処方名-50音順】
■四君子湯

■十全大補湯

■小建中湯

■当帰芍薬湯(低音・声が細い)

■人参湯

■補中益気湯(口中白沫、食事がまずい)

■六君子湯(食欲不振、心下痞、栄養不良性貧血、消化不良)

■六味丸




呼気が熱い
【処方名-50音順】
■炙甘草湯


呼吸が浅い
【処方名-50音順】
■四君子湯

■補中益気湯



呼吸が異常
⇒種類:

呼吸困難 dyspnea:
「不快にして困難な呼吸、呼吸運動が不快な努力を伴って意識されるもの」。
①吸気性呼吸困難
②呼気性呼吸困難

起座呼吸 orthopnea:
「臥床しているときには呼吸困難が強くなり、座位or後に寄りかかる姿勢をとると楽になるもの」。

片側臥呼吸 trepopnea:
「呼吸困難がある一定の臥位でのみ起こるもの」。

4過呼吸(呼吸亢進) hyperpnea:
「呼吸の深さor呼吸運動の振幅または1回の換気量の増大をいい、深い呼吸であって、呼吸数の増加ではない」。

5多呼吸 polypnea:
「呼吸数と呼吸の深さのいずれもが増加したもの」。

呼吸減退 hypopnea:
「呼吸数に変化なく、深さが減少したもの」。

無呼吸 apnea:
「呼吸運動が一過性に中断されたもの」。
    

8過換気 hyperventilation: (参照→「過換気症候群」)
「代謝の要求以上に換気すること」。

9)周期的呼吸 periodic respiration:
「速く深い呼吸を幾つかした後に、次第に浅くなって、遂に無呼吸になり、再びまた大きく速くなり、これらを繰り返すもの」。
Cheyne-Stokesの呼吸
「はじめに小さい呼吸が起こり、次第に増盛して大きい呼吸となり、かつ努力性の呼吸運動をし、その後徐々に減衰する」
「呼気時に呼吸静止期に移り、吸気で促進期に入る」
疾患:脳出血
   髄膜炎
   頭蓋内圧亢進
   重症心不全
   モルヒネ中毒
   アルコール中毒
   麻酔が深い時
Biotの呼吸
「呼吸数も深さもリズムも不規則」

 

◎疾患による呼吸の変化。

<1>いびきを伴う深い呼吸
   「脳出血」
   「クモ膜下出血」
   「頭蓋内傷害」

<2>徐呼吸
    モルヒネ中毒
    血中CO2貯留(CO2ナルコーシス)
    感電

<3>吸気は深く、呼気が緩慢
    糖尿病性
    尿毒症
    Kussmaul大呼吸

<4>Cheyne-Stokes呼吸:深い遅い呼吸相と、深い早い呼吸相が交互に繰り返し、極端に遅い相で一時呼吸停止を見る。
    脳出血
    髄膜炎
    脳腫瘍
    高血圧
    尿毒症
    中毒
               

 

呼吸窮迫症候群(RDS)
=「呼吸促迫症候群」
「肺胞を拡大してみると、空気の通う肺胞腔と血液の流れる毛細血管とは、厚さ0.5ミクロンに満たない壁で仕切られている。これが『血液空気関門』で、ガス交換、つまり酸素と炭酸ガスの受け渡しの場所である。
関門を作るのは、血管の内皮細胞と肺胞の上皮細胞、そして両者に挟まれたうすいフィルター(基底膜)である。この上皮細胞は「Ⅰ型肺胞上皮細胞」と呼ばれ、極めて薄い膜である。
肺胞は、その表面をぬらす水の表面張力で、シャボン玉がしぼむようにつぶれようとする。それを防ぐために、肺胞には表面活性剤(サーファクタント)が塗られている。1963年ケネディ大統領の第3子がRDSで生後3日後に亡くなったことで関心が高まった。
1980年、小児科医・藤原哲朗は、UCLAから帰国後、秋田大学で、子牛の肺から多量の肺胞サーファクタント(DPPとい一種のリン脂質)を採取し、これを材料に人工のサーファクタントを調整し、これをRDSの子供の気道に注入した。その結果、劇的は快復をみた。
サーファクタントを合成し分泌するのは「Ⅱ型肺胞上皮細胞」で、これは厚ぼったい細胞である。
Ⅱ型肺胞上皮細胞の分泌は側面や基底膜にある小突起が、肺胞壁の伸展受容装置(ストレッチ・レセプター)として働いている。(岩波新書「細胞紳士録」p52~)

◎種類:
成人呼吸促迫症候群(ARDS)

adult respiratory distress sundrome

新生児呼吸促迫症候群(IRDS)

idiopathic respiratory distress sundrome

■画期的療法
「N君は妊娠34週の3つ子の第一子として帝王切開で出生した。出生直後は大きな産声をあげたN君だったが、15分後、小児科医がN君の呼吸状態の変化に気づいた。
皮膚の色が徐々に赤みを失っていき、「うーっ、うーっ」というようなあえぐような声が漏れ始めた。小児科医は、酸素マスクをN君の口元に近づけ、担当の新生児科医に向かって静かにうなずいた。「RDSのようですね」
呼吸窮迫症候群(RDS)は、早産児にみられる呼吸障害で、肺の成熟が十分でないために起こるとされる。肺にはもともと、気管を膨らみやすくする肺サーファクタントという物質がある。出生直後の新生児が、スムーズに呼吸を始まられるのは、この物質のおかげである。呼吸窮迫症候群ではこの肺サーファクタントが十分に肺内で作られず、呼吸困難に陥る。
小児科医と新生児科医は酸素をM君に与えながら様子を観察していたが、徐々に呼吸困難が悪化してくるのを知ると、M君の口から気管の方にチューブを挿入しバッグを使用しながら人工呼吸を開始した。そして、新生児専門施設へ送る手続きをとった。
呼吸窮迫症候群の一般的な治療は、気管内に挿管して人工呼吸器をしようして呼吸を補助し、人口の肺サーファクタントを気管内に注入する。この治療法は、日本で世界に先駆けて確立されたもので、新生児医療における画期的な成果に1つである。(伊藤裕司・国立小児病院新生児科)1998.12.7《日本経済新聞》



呼吸困難 dypsnea
1.浅くて早い呼吸:

拘束性換気障害による。

.深くてゆっくり

閉塞性換気障害・代替性アシドーシス。
    

3.不規則な呼吸

脳血管障害・左心不全など。
    

4.起座呼吸

心疾患の特徴。気管支喘息・肺気腫にもあり。
   

 

◎呼吸困難の原因:

(1)肺性呼吸困難

*せきが著明。

*胸膜痛・チアノーゼを伴う。慢性(ばち指)

(2)心臓性呼吸困難

*心拡大、左心不全

*夜間の発作性呼吸困難。起座呼吸

(3)閉塞性呼吸困難

*気管分岐部より上の閉塞は鼻性、下部では喘鳴。

*咽喉部の炎症・腫瘍

*気管支喘息。縦隔腫瘍

(4)血液性呼吸困難

*安静時の呼吸困難はない・軽い。

*アシドーシス、貧血を認める

*動脈血酸素飽和度の低下を証明する。

(5)神経性呼吸困難

*器質的疾患ないとき、興奮時に呼吸困難をきたし、時々深いため息。

*過換気症候群

(6)運動時呼吸困難
*体重、練習量で。



◎臨床での鑑別:

呼気性呼吸困難insiratory dyspnea

「気管支喘息」発作性の呼吸困難。乾性ラ音。

「細気管支炎」咳き・タン・喘鳴・息切れ・ラ音(乾性・湿性)

「肺気腫」運動時呼吸困難。樽状胸。のち肺性心となる。


吸気性呼吸困難expiratory dyspnea

「扁桃周囲炎」高熱。咽頭痛。嚥下痛。

「喉頭ジフテリア」喉頭部が呼吸性に上下し、頭部を後屈する。

「甲状腺腫」

「縦隔腫瘍」上半身浮腫

「大動脈瘤」圧迫症状

「食道憩室」嚥下困難 

「気管支ガン」無症状

 

☆混合型呼吸困難
 「肺炎」発熱、チアノーゼ、タン(さび色)
 
「間質性肺炎」両側性びまん性。発熱、乾燥咳、       チアノーゼ。バチ指。Velcroラ音。

 「肺ガン」せき・タン・血痰。胸痛。嗄声。

 「肺結核」急速に進行。

 「胸膜炎」胸水

 「気胸」鼓声。突発性の呼吸困難。

 「血胸」外傷。骨節の有無。

 「膿胸」高熱

 「心不全」浮腫。心拡大。

 「血液疾患」貧血。顔面蒼白、頻脈
 「脳疾患」[髄膜炎][脳動脈硬化症][脳腫瘍]意識障害

Chetne-Stokes型呼吸困難。

 「代謝異常」[代謝性アシドーシス][尿毒症]

 「神経性」ヒステリー。神経症。




【処方名-50音順】(呼吸困難)
■括楼薤白白酒湯(胸痛)

■九味檳榔湯(息切れ、胸苦しい、ふくらはぎの緊張、腹が張る・脹痛)

■桂芍知母湯

■控涎丹(痰が多い・胸水・腹水)

■五虎湯(気管支喘息、呼吸困難、小児喘息)

■柴朴湯(咳嗽、喘鳴、呼吸困難、喘息に常服)

■三子養親湯(痰が多い)

■三拗湯

■十棗湯(胸水・腹水)

■小建中湯

■小青竜湯(咳嗽、喘、鼻水、)

■参蚧散(吸気性・喘鳴・咳嗽・元気なし)

■沈香降気湯(吸気性・喘鳴・痰多い)

■神秘湯(激しい喘鳴)

■真武湯

■清暑益気湯

■喘四君子湯(痰が多い・喘鳴・咳嗽)

■蘇子降気湯(吸気性・喘鳴・湿性ラ音・咳嗽・痰多い)

■当帰建中湯(貧血、食欲不振、虚弱体質、腹痛、腰痛<牽引痛>、)

■当帰四逆加呉茱萸生姜湯

■都気丸(吸気性・咳嗽)

■人参養栄湯

■麦門冬湯

■半夏白朮天麻湯

■防風通聖散

■麻黄細辛附子湯(悪寒が強く、のどが痛い、脈沈)

■麻杏甘石湯(乾咳、心臓喘息、咳嗽)    

■射干麻黄湯(吸気性・喘鳴・咳嗽・痰多い)

■木防已湯(浮腫・チアノーゼ・起座呼吸)

■苓甘姜味辛夏仁湯(痰飲浮腫、顔色悪い、くしゃみ、せき、)



呼吸促迫
#《頻呼吸tachypnea》
⇒健常人安静時の呼吸数(16前後)を異常に越えたもの。  

【処方名-50音順】

■甘草湯(急迫症状)

■九味檳榔湯(息切れ、胸苦しい、ふくらはぎの緊張、腹が張る・脹痛)

■滋陰降火湯(呼気が多く、吸気が少ない)

■炙甘草湯(あくびが多い、脈拍多い、)

■辛夷清肺湯

■大承気湯

■麦門冬湯

■八味地黄丸

■麻杏甘石湯   

■木防已湯(起座呼吸)

■苓桂朮甘湯(水分代謝が悪く、冠状動脈の酸素不足)

■六味丸


 呼吸不全
=呼吸不全とは、動脈血ガスが異常な値を示し、そのために生体が正常な機能を営むことが出来ない状態をいう。

◎1980年、厚生省特定疾患「呼吸不全」調査研究班の診断基準
室内気吸入時の動脈血O2 分圧が60 Torr以下となる呼吸障害、またはそれに相当する呼吸障害を呈する異常状態を呼吸不全と診断する。

「呼吸不全はPaO2のみで定義され、Paco2は病型の分類に用いられている。」
①(Pao2<20 Torr):生命の維持が困難。
②(Pao2<40 Torr):口唇・舌・口腔粘膜に中枢性チアノーゼが必発。
但し、重篤な貧血(還元ヘモグロンビン5g<血液100‹)では発症しにくい。
③中枢性チアノーゼが認められない程度の低酸素血症:以下の症状
不穏・頭痛・見当識障害・頻脈。
労作性呼吸困難(慢性の場合)

呼吸不全を動脈血CO2分圧が 45 Torrを越えて異常な高値を呈するものとそうでないものに分類。
高炭酸ガス血症:急性・慢性いずれも以下の症状
(10 Torr 以上の)急激な上昇で:意識障害(何らかの)・
羽ばたき振戦 (30 Torr)で: 昏睡状態・手のぬくもり・脈圧増大を伴う頻脈・縮瞳・背浮腫・
頭痛

慢性呼吸不全とは、呼吸不全の状態が少なくとも1ヶ月持続するもの。



 

口角糜爛症 (口角がびらん)

angular stomatitis。

◎口角部が発赤・ビランし黄白色の苔ないし痂皮を付し、あるいは深い亀裂を生じ周囲に紅暈を伴う。
口唇皮膚に乾燥・落屑あるいは亀裂をみることがある。
    少年男子に多い。
◎原因:
  <1>レンサ球菌
  <2>カンジタ

【処方名-50音順】
■黄連湯

■調胃承気湯

【民間療法】
<1>フユイチゴ


口蓋裂 (こうがいれつ)
■口唇口蓋裂
「5月はじめに生まれた長男。口唇口蓋裂のため、ミルクが鼻に入ってうまく飲めず、体重が増えません。産科の先生に、口蓋裂をふさぐプレートを入れる手術をするように言われました。本当に手術は必要なのでしょうか?
●どういう症状があるのですか?
唇に先天的に裂(切れ目)がある状態を口唇列と言います。これには裂が唇から鼻まで達している場合や、唇の部分にだけある場合などがあります。口の中の上顎部分に裂がある状態を口蓋裂と言います。両者が合併している場合が口唇口蓋裂です。これらの症状をもって生まれてくる赤ちゃんは、日本では500人に1人ぐらいの割合です。
●プレートとは?
口蓋裂があると、鼻と口がつながってミルクが鼻に入ってしまいます。また、うまく飲めないので舌に変な癖がつくこともあります。ホッツ床と呼ばれるプレートで裂をふさいでやると飲みやすくなり、また、舌に癖がつくのを予防できます。
[ホッツ床]
=スイスの歯科矯正医のマーガレット・ホッツさんらが、口蓋裂の治療用に  約30年前に考案したもの。
2000.6.11《朝日新聞》
■鼻軟骨再生
2015年、富士ソフトは鼻軟骨を再生する臨床試験を東京大学や帝京大学、山口県立総合医療センターで始める。
生まれつき頭蓋骨などに障害がる「口唇口蓋裂」の患者向けで、患者の軟骨細胞を培養した素材を移植する手法。
2014年11月に施行した再生医療関連法の早期承認制度を視野に入れ、16年中の承認申請を目指す。
治験は9人の患者で効果や安全性を調べる。
患者の耳から1㌢角の軟骨組織を採取し、細胞培養施設に運んで軟骨細胞を培養して増やす。細胞をコラーゲンと混ぜてスポンジ状のポリ乳酸にしみこませて、鼻筋に移植する。




口渇 (こうかつ)
(参照→口乾)
=口渇はのどが渇いて水を呑むことを欲するものをいう。
口渇は虚証の患者にも実証の患者にもみられる。《大塚敬節》   
◎主薬:発渇には、石膏・知母を主薬とすべし《万病回春》

【処方名-50音順】(こうかつ)
■一貫煎

■胃苓湯

■茵蔯蒿湯     

■茵蔯五苓散

■温清飲

■益胃湯

■越婢加朮湯

■黄芩湯(多飲)

■黄連阿膠湯

■加減復脈湯

■五虎湯

■五苓散

■牛車腎気丸

■柴胡桂枝乾姜湯

■柴苓湯

■左金丸

■三物黄芩湯

■滋陰降火湯

■滋陰至宝湯

■梔子柏皮湯

■炙甘草湯

■瀉心導赤散

■沙参麦門冬湯

■小柴胡湯加桔梗石膏

■小半夏加茯苓湯

■消風散

■升麻葛根湯

■辛夷清肺湯

■清胃散

■清瘟敗毒散

■清上防風湯

■清暑益気湯

■清心蓮子飲

■清肺湯

■清燥救肺湯

■増液承気湯(激しい)

■増液湯

■桑杏湯

■大承気湯

■大青竜湯

■大補陰丸

■竹茹温胆湯

■竹葉石膏湯

■知柏地黄丸

■調胃承気湯(煩躁はない)

■猪苓湯

■猪苓湯合四物湯

■天王補心丹

■天麻釣藤飲

■導赤散

■麦門冬湯

■八正散

■八味地黄丸

■白虎加蒼朮湯

■白虎加人参湯

■白虎湯

■防風通聖散

■麻杏甘石湯

■木防已湯(顔色が黒ずんでいる)

■凉膈散

■六一散

■六味丸

【民間療法】
<1>イタドリ。
<2>モモ。
<3>カキ・キカラスウリ・クサスギカズラ・クズ・サジオモダカ・サルトリイバラ・ジャノヒゲ・ナルコユリ・ハス・ハマゴウ・ミミズ・ヤマモモ。
  




口乾(こうかん)   
⇒口は乾くが、水は飲みたくない。
◎口内が乾燥して唾液が足りなくなるが、呑みたくはなく、ただ口をすすぎたがるものをいう。《大塚敬節》

<1>虚証が多い

<2>真陰内虧で、津液が上がることが出来ない場合がある。

<3>少陽病で、柴胡剤が適用することが多い。

<4>瘀血症状として口乾がみられることがある。

◎病人が眠りから目が覚めると、舌が乾燥して、そのため言葉がうまく出ないものがある。この場合の舌は、乳頭が消えて、赤肌になって乾燥している。こんな患者は水を飲みたくはないが、水で口をすすぐことを欲するものである。これには、黄連解毒湯を用いて良いこともあり、十全大補湯のような地黄剤を用いて良いことがあり、附子理中湯。四逆加人参湯のような附子剤を用いなければならないこともある。また瘀血の1徴候として、こんな状態になるものがあり、桃核承気湯を用いて良いことがある。《大塚敬節》

【処方名-50音順】(こうかん)
■一貫煎

■茵蔯蒿湯

■益胃湯

■黄連解毒湯

■加味逍遥散

■帰地二陳湯

■芎帰調血飲

■桂枝茯苓丸

■犀角地黄湯

■沙参麦門冬湯

■柴陥湯

■酸棗仁湯

■滋陰降火湯

■四逆散

■升麻葛根湯

■真武湯

■清暑益気湯

■朱砂安神丸

【民間療法】
<1>クワ・ヨシ。


口眼喎斜(こうがんかしゃ)    
◎主薬:口眼喎斜には、須く防風、羗活、竹瀝を用いて主とすべし《万病回春》

【処方名-50音順】(口がゆがむ)
■犀角升麻湯

■牽正散

■秦芁升麻湯

■清痰順気湯

■清陽湯

■天仙膏

■不換金丹

■理気袪風散

 

口噤(こうきん)
【処方名-50音順】

■葛根湯

■芎帰調血飲(不語)

■四逆湯

■大承気湯

■人参湯

■附子人参湯

 

口苦(口内が苦くかんじる)
【処方名-50音順】
■茵蔯蒿湯

■茵蔯五苓散

■益胆湯

■黄芩湯

■黄連解毒湯

■加味逍遥散

■柴陥湯(胸脇苦満<著明>、胸痛、胸中苦悶、咳嗽、痰<黄色痰稠>)

■柴胡桂枝乾姜湯

■柴胡桂枝湯

■柴胡清肝湯

■柴苓湯

■四逆散

■瀉心湯

■小柴胡湯

■小柴胡湯加桔梗石膏(食欲不振、高熱、口渇、咽痛、胸脇苦満)

■大柴胡去大黄湯(実証、筋肉質、便秘なし)

■大柴胡湯

■防風通聖散

■竜胆瀉肝湯

■涼膈散


口腔潰瘍(こうくうかいよう) (→口瘡)
=口腔白斑症 oral leukoplakia

【処方名-50音順】
■移熱湯

■黄白散(口瘡・口中の疳瘡)

■黄柏散(口唇が合わされず、飲食も出来ない

■黄連湯[1](口唇の瘡。又は舌が裂け、舌先の出血

■回春凉膈散(三焦の火で口舌瘡)

■換金散(毒熱の口瘡)

■玉芝飲子(胸膈の熱で口舌瘡)

■兼金散(口舌瘡)

■黒参丸

■琥珀犀角膏(咽喉・口舌に瘡)

■柴胡地骨皮湯

■瀉胃湯[1](胃熱で口唇が乾き裂かれ、便秘する)

■瀉黄飲子(風熱が脾経にたまって、唇が乾き、裂けて汁が出る
■芍薬湯[4](口唇に瘡、沢山食べても、お腹が空く者)

■茱萸散(口瘡・咽痛)
■升麻散(心脾の熱で口舌瘡)

如聖散[3](小児が口瘡で乳が飲めない)
■四苓散合導赤散
■青金散(白口瘡が急に悪化)
■青黛散(重舌・咽喉瘡を治す)    
■清熱如聖散(舌下の結核の腫が裂け黄痰が出、又発生する
■濯足法(口舌の生瘡)
■霜塩散(舌に急に大きな腫が出来る者
■乳香散[4](赤口瘡)
■白灰散(繭唇を治す)
■薄荷蜜(舌の上の瘡と、白胎が乾いて、しゃべれない者を
■氷蘗丸(口舌に瘡・栗の出来る者
■赴宴散    
■碧雪(口舌生瘡・舌強・腮種・喉閉)
■硼砂元(口舌瘡・口臭)
■没薬散[2](白口瘡)
■竜石散(口舌の生瘡と咽嗌の腫塞)(嗌=エキ、のど)
■緑袍丸


 口腔乾燥症
    Dry Mouth
⇒唾液腺には異常がないのに、唾液の分泌量が減少する疾患。
 「唾液の分泌量は、平均1500mg/日なのに、乾燥症の患者は500mg/日ぐらいになる。」

◎症状:
*口の中がカラカラになり、1日に何度も水分を摂る
*声がれ
*食べ物が飲み込めない
*口が乾いて夜も眠れない
*味がおかしい
*口の中がザラつく。
*口の中がただれる

◎原因:
*ストレスによる自律神経失調:
*緊張が続く仕事
*食生活の変化:
*食物の欧米化
*軟らかいものを食べて噛む回数が減少した。
*濃い味付け。
*不規則な食生活


 口腔白板
■ガンになる可能性
「舌や歯茎などにこすっても取れない、帯状~まだら模様に白く変化する部分が出来ることがある。口腔白板症といい、将来ガンになる可能性がある。
歯科医院などで見つかることもある。
症状には、違和感や味覚障害などが無く気づきにくい。
舌の側面や下側、舌と下の前歯の間に出来た白板症で、イボ状やただれている場合はガンになる可能性が高い。
ビタミンAの投与が有効なことがある」


 口臭
⇒チェックしましょう:「シェーグレン症候群」
■口臭検知器    
「口臭の問題で悩んでいる人の中で意外に多いのが、実際には口臭がほとんどないのに、「自分は臭い」と思い込んでしまう自己臭症というタイプだ。
東京歯科大の角田正健・助教授(歯周病学)によると、閉経後の女性や、思春期の男女に多く、友人・身内からたまたま「臭い」と言われたのがきっかけで、必要以上に神経質になってしまうパターンが目立つという。
治療で威力を発揮するのは、口臭の主成分の1つ、メチルメルカプタンの濃度を測る「口臭検知器」。これで口臭が少ないことを客観的に理解してもらう。ただ、すでに心の傷を受けている人が多いため、医師側が悩みをよく聞き、じっくり理解させる。
角田さんが、自己臭症の人同士を、何も知らせずに対面させた後、相手も口臭で悩んでいることを知らせると、互いに相手の口臭が気にならなかったことで、自分にも自信が持てるようになったという。1993.2.13《朝日新聞》」
■口臭だけ
「三林浩二・東京医科歯科大学教授らが2006年に試作した口臭センサーは、においの原因物質と反応するタンパク質を利用したもの。センサーには口臭の元となる物質『メチルメルカプタン』に反応するタンパク質を使った。においを瞬時に検出でき、検出出来きる濃度は0.2ppm。
タンパク質の種類を変えると、アルコール臭や魚臭・体臭など様々な匂いを高感度の検出できる。
仕組みは、高分子膜に固定したタンパク質とにおい物質を反応させる、すると微量の酸素を消費する。酸素の濃度変化に反応する『ルテニウム錯体』の変化を光ファイバーで検出する」
【色彩療法】   
<1>レモン色

【民間療法】
<1>ウスバサイシン・ケンポナシ・ザクロ・シソ・ジュズダマ・チャ・ナギナタコウジュ・ナンテン・ムベ。
<2>[ニンニク+黒ゴマ+ハチミツ]

【処方名-50音順】
■黄芩湯
■黄連湯
■甘露飲
■加減甘露飲(胃熱・口臭・口瘡)
■芎芷膏(口気の熱臭)    
■左金丸
■三黄瀉心湯
■清胃散   
■升麻黄連丸(口臭がひどい)
■硼砂元(口臭・口舌瘡)
■大柴胡湯
■竹葉石膏湯
■調胃承気湯
■排膿散及湯(部分的な化膿症)
■半夏瀉心湯(胸元がつかえる、下痢、腹鳴、吐き気)
    

 口唇鬱血性
  【処方名-50音順】
■桂枝茯苓丸
【民間療法】
<1>ニシキギ・ハス・ハマゴウ・ホウセンカ。

 

口唇蒼白
  【処方名-50音順】
■四君子湯
【民間療法】
<1>トウキ・クワ
<2>サンシュユ・シカ・ニンニク・


 口唇ヘルペス
=「燕口瘡」「緊唇」「翦口瘡」「燕瘡」

 

口舌の病気
  【処方名-50音順】
■加減涼膈散《万病回春》
■玄参升麻湯《証治準縄》
■四物湯+白朮・茯苓・麦門冬・五味子・牡丹皮・黄柏・知母《薛立斎十六種》
■清胃瀉火湯《万病回春》
■清熱化痰湯《証治準縄》
■清熱如聖散《万病回春》
■清熱補気湯《証治準縄》
■清熱補血湯《証治準縄》
■二黄湯《万病回春》
■瀉胃湯《医学入門》
■瀉白散《万病回春》
■瀉白湯《医学入門》
■人参理中湯《薛立斎十六種》
■七味白朮散《薛立斎十六種》
■補中益気湯+麦門冬・五味子《薛立斎十六種》
■薏苡湯《医学入門》


 口舌乾燥・口唇乾燥
  【処方名-50音順】
■温経湯(口唇乾燥)
■黄蓍建中湯
■黄連解毒湯
■桂枝加竜骨牡蠣湯
■柴胡桂枝乾姜湯
■三物黄芩湯
■炙甘草湯(口唇の乾燥
■小建中湯(口内乾燥)
■清心蓮子飲
■調胃承気湯
■麦門冬湯
■白虎加人参湯
■六味丸


 口淡(こうたん)
   =胃熱。



 口中出血・口内出血
  【処方名-50音順】
■芎帰膠艾湯

 

口中白沫
=口中に白沫がある。
  【処方名-50音順】
■補中益気湯


 口中不和
⇒口が乾いたり乾燥したり、食べても味が分からないこと。胃気が正常でない、或いは津液が充足していないことを表さす。
⇒食事がまずい、味が良く分からない、口が乾燥する。
  【処方名-50音順】
■補中益気湯


 口中糜爛(こうちゅうびらん)
   ⇒口の中がただれる。
【色彩療法】
    <1>緑色
    <2>青色
    <3>藍色
    <4>すみれ色
【処方名-50音順】
■半夏瀉心湯
■補中益気湯


 口内炎
     (参照→「ベーチェット病」)
◎種類:
<1>カタル性口内炎:刺激によって起きる。
「カタル性の口内炎で、口腔粘膜が一体に発赤腫脹して疼痛を訴え、わずかの刺激で出血し、よだれが多く出るようになった者には、三黄瀉心湯、黄連解毒湯、加減凉膈酸などの黄連・梔子・黄芩などの入った処方を用いる」《大塚敬節》
<2>潰瘍性口内炎:歯肉に出来る。
<3>アフター性口内炎:舌やくちびるの内側に出来る。
<4>アレルギー性口内炎:アスピリンを飲んだり、何かにかぶれて出来る。
<5>壊血性口内炎:ビタミンC不足
<6>白血病性口内炎:白血病の初期にみられる。
<7>鵝口瘡

■繰り返す口内炎
「45歳の主婦。舌の裏側や側面、のどの奥にアフタが出来ます。ときにはえぐ れたようなアフタになり、痛くて食事も満足に出来ません。かかりつけの内科でもらった副腎皮質ホルモンの軟膏を塗ると、一旦は治まりますが再発します。何か思い病気ではないかと心配です。(東京・M)

〇何かの病気でしょうか?
「口の中の粘膜に起きる炎症を広く口内炎と呼びますが、アフタという小さな円形の潰瘍が出来る場合と、他の症状の場合があります。アフタの出来る口内炎については幾つかの種類がありますが、相談内容からは慢性再発性アフタ、いわば普通の口内炎と思われます。

〇慢性再発性アフタとは?
「5人に1人は罹ると言われる程良くある病気です。食事の時、しみて痛いのですが、たいていは1週間ほどで治ります。しかし、厄介なことに再発します。男性よりは女性に多く、喫煙者には少ない傾向があります。

〇別の病気の可能性はありあすか?
「ヘルペスなどウイルスの感染によるウイルス性口内炎では、同時に幾つものアフタが周辺に出来、微熱が出るのが特徴なので、この可能性は無いようですね。注意が必要なのはベーチェット病の初期症状の可能性です。これは粘膜がえぐれた直径1cmほどの大きなアフタが出来るのが特徴で、目や外陰部などの粘膜にも炎症を伴うのが普通です。

〇慢性再発性アフタとベーチェット病の初期症状の区別はどうしますか?
「紛らわしいのが実情です。ベーチェット病は日本に多い難病で、皮膚や粘膜・目など全身の様々な場所に炎症が起きるのが典型的な症状です。ただ、初期には血液検査でも診断が難しく、症状の経過で見極めるしかありません。

〇この人はどうでしょうか?
「炎症が口の中以外にあれば、やや心配です。ベーチェット病の発病のピークは30歳前後とされていますので、相談された方の年齢からは一応外れていますが、「えぐれたようなアフタ」とあるのが気になります。ご心配なら一度、口腔外科の専門医に診てもらうことを勧めます。

〇では慢性再発性アフタの治療は? 
「この方のように、副腎皮質ホルモン(ステロイド)の軟膏を塗ります。皮膚に塗る軟膏とは違い、糊が含まれていますので、唇や舌に塗ってもすぐには落ちません。他に、円形のシールのような貼り薬もあります。アフタを覆ってしまうので、しみて痛むことが少ないようです。これらは少量ずつ使えばステロイドによる副作用の心配はあまりありません。また、非ステロイド性の抗炎症剤を使った貼り薬もあります。1週間ほどで治りますが、ひどい場合には抗炎症剤の飲み薬を出すこともあります。

〇なぜ頻繁に繰り返すのですか?
「原因も含め、まだよく分かっていません。免疫の働きの異常という説や、ベーチェット病と同じように口の中にいる細菌(連鎖球菌)が関係するという説などがあります。私は食事の時に舌や頬を噛んだり、硬い食物や入れ歯で粘膜を引っかけたりして出来る傷が、多分に引き金になっているのではないかと見ています。

〇普段の生活ではどんな事に気をつければいいのでしょうか?
「食事の時、慌てて噛んだりせず、口の中を傷つけないようにして下さい。ビタミンBの補給が良いとも言われますが、これだけではあまり期待できませんので、栄養バランスをとって下さい。疲れたときやストレスが溜まった時に出やすい人もいますので、疲労やお酒の飲み過ぎを避け、規則正しい生活をすることです。(道健一・昭和大学歯学部教授)1999.4.25《朝日新聞》

■甘草やキハダの樹皮
「口内炎が繰り返し出来て困っています。内科の検査では異常なしとのこと。口の中に塗る抗炎症薬をもらっていますがはかばかしくありません。漢方に良い薬はありますか?
口内炎は全身的な病気の症状として出ることもあるが、多くは消化器症状やストレス関連で起こる。このような口内炎には漢方薬が非常によく効くので試みる価値がある。最もよく使われるのが甘草乾姜湯である。
半夏瀉心湯の甘草の量を増やした処方で、甘草には抗炎症・鎮痛作用がある。甘草の独特の甘みが口内炎の痛みをすみやかに鎮静化する。ストレスや不規則な食生活、睡眠リズムの障害とともに出来るもので、胃腸の具合が悪くなると口内炎が出来る。という場合は必ずといって良いほどよく効く。
胃腸は丈夫でむしろ便秘しやすく、イライラして顔がのぼせ、憤懣やるかたない、という時に出来るタイプは黄連解毒湯が良い。
ギャ華奢な体形で物事に驚きやすく、内向的なタイプの人の口内炎には香蘇散を用いるのがよい。
いずれの場合にも、黄柏というキハダの樹皮の生薬末を水に溶いて、口にしばらく含んでいるとさらに効果がある。(花輪寿彦)1999.7.12《日本経済新聞》

【芳香療法】
<1>没薬チンキ

【民間療法】
○アイ・アカネ・アロエ・イブキトラノオ・ウスバサイシン・ウツボグサ・エビスグサ・オウレン・オニユリ・カタツムリ・カミツレ・キハダ・キンミズヒキ・クコ・クララ・ゲンノショウコ・コイ・ゴシュユ・サラシナショウマ・シソ・スイカズラ・センニンソウ・ダイコン・チャ・ツユクサ・テンナンショウ・ナスビ・ナタマメ・ナンテン・ニッケイ・ハス・ハトムギ・ハブ茶・ヒノキ・ヒヨドリジョウゴ・フキ・ホオズキ・ミツバチ・ムクゲ・メギ・ヤマモモ。

【漢方療法】
◎主薬:口舌、瘡を生ずるには、黄連を主薬とすべし《万病回春》
口内炎で疼痛のあまり激しくない者は、たいていは黄連解毒湯+甘草で良い。便秘の傾向があれば三黄瀉心湯または黄連解毒湯+大黄とする。《大塚敬節》

【漢方薬】
■移熱湯
■茵蔯蒿湯     
■温清飲
■黄白散《東醫寶鑑》
■黄柏散《東醫寶鑑》
■黄連解毒湯
■黄連湯[1-1]《傷寒論》
■黄連湯[2]《東醫寶鑑》
■回春凉膈散《東醫寶鑑》
■葛根黄芩黄連湯
■加味逍遥散《内科摘要》
■換金散《東醫寶鑑》
■甘草瀉心湯《傷寒論》

☆私は小学校の4、5年頃から唇・舌・口腔粘膜などに小さい潰瘍が出来て、古いものが治れば、また新しいものが出来て、非常に苦しめられた。このような状態は大人になるまで治らなかった。そこで漢方を研究するようになってから、甘草瀉心湯を呑んだところ、年ごとに潰瘍が出来なくなって、全治した。私は平素胃腸が弱く、いつも鳩尾がつかえ、少し食べすぎると、すぐ下痢するクセがあり、下痢する時は、よく腹がゴロゴロ鳴る。こんな風であったから、胃腸と口内の潰瘍とは関係あるに違いないと思って、心下痞硬と下痢しやすく、腹が鳴るというのを目標にして、甘草瀉心湯を用いたところ、だんだん潰瘍が少なくなって治ってしまった。ところが私の長男も、私と同じように、口腔粘膜、舌などに潰瘍が出来るクセがあったが、長男の場合は、私のように下痢せず、食べ過ぎると、便秘して発熱するクセがある。そこで黄連解毒湯甘草を呑んだところ、これで治ってしまった。《大塚敬節》

●胃腸炎があって心下痞硬、悪心、食欲不振あるいは下痢するなどで、軽度の口内炎に用いる(漢方診療医典)
■甘草湯《傷寒論》
■甘露飲《和剤局方》
■玉芝飲子《東醫寶鑑》
■兼金散《東醫寶鑑》
■黒参丸《東醫寶鑑》
■琥珀犀角膏《東醫寶鑑》
■柴胡地骨皮湯《東醫寶鑑》
■柴胡清肝湯《一貫堂》
■三黄瀉心湯《傷寒論》
 口内炎の初期で、口舌が乾き、水分を欲しがり、便秘の傾向がある者に用いる。便秘の傾向がなければ黄連解毒湯を用いる(漢方診療医典)
■三物黄芩湯《金匱要略》
■皀莢丸
■梔子豉湯《傷寒論》
■四物湯《和剤局方》
■炙甘草湯《傷寒論》
■瀉胃湯[1]《東醫寶鑑》
■瀉黄飲子《東醫寶鑑》
■瀉心導赤散《寿世保元》
■芍薬湯[2]《東醫寶鑑》
■茱萸散《東醫寶鑑》
■升麻散《東醫寶鑑》
■如聖散[1]《東醫寶鑑》
■四苓散+導赤散
■青金散《東醫寶鑑》
■青黛散《雑病源流犀燭》    
■清胃散《李東垣》
■清心蓮子飲《和剤局方》
■清熱如聖散《沈氏尊生湯》
■清熱補気湯《証治準縄》
■清熱補血湯《証治準縄》
■清肺湯《万病回春ー咳嗽編》
■濯足法《東醫寶鑑》
■霜塩散《東醫寶鑑》
■竹葉石膏湯
■調胃承気湯《傷寒論》

●☆カタル性口内炎では、数日間便秘して浣腸しても大便が出ないことがある。本方を用いて便通をつけてやると、治癒に向かうことが多い(漢方診療医典)
■天王補心丹《道蔵・蘭台軌範》
■当帰四逆加呉茱萸生姜湯《傷寒論》
■導赤散[3]《東醫寶鑑》
■半夏瀉心湯《傷寒論》
■半夏苦酒湯《傷寒論》
■乳香散[4]《東醫寶鑑》
■白灰散《東醫寶鑑》
■薄荷蜜《東醫寶鑑》
■氷蘗丸《東醫寶鑑》
■赴宴散《東醫寶鑑》
■碧雪
■硼砂元
■補中益気湯
■没薬散[2]
■竜石散
■涼膈散
☆調胃承気湯を用いる患者よりも、更に一段と炎症が強く、口腔粘膜の発赤腫脹がひどく、顎下のリンパ節も腫れて、疼痛が激しく、発熱、便秘の者に用いる(漢方診療医典)
■緑袍丸

◎細辛:臍に張り付ける。(アフター性)

 

口内出血
  【処方名-50音順】
■芎帰膠艾湯
 

 

交感神経緊張症
  【処方名-50音順】
■桂枝加竜骨牡蠣湯
■炙甘草湯


 交換性眼炎
   sympathetic opthalmia
⇒一眼に穿孔性外傷を受け、毛様体or虹彩orその他のブドウ膜が破壊され、その1~2ヶ月後に両眼にブドウ膜炎が起こること。
  【処方名-50音順】
■桃核承気湯



 交接後出血   
⇒SEXのあとに出血。
  【処方名-50音順】
■大柴胡湯

 

交接後腹痛
  ⇒SEXのあとに腹痛。
  【処方名-50音順】
■桃核承気湯

 

交腸(こうちょう)
⇒尿道より大便が出て、肛門より小便が出る病気。
 尿道直腸瘻・膀胱直腸瘻・膣直腸瘻・直腸腔瘻などでみられる。
  【処方名-50音順】
■五苓散
■四物湯
■補中益気湯


 抗生物質が効かない
■手術後に抗生物質使っても効果なし
「1970年代に米国で研修を受けた医師が言う。“教科書に、日本では新しい抗生物質が出ると数ヶ月で耐性菌が出る、と書かれていた。恥ずかしかったなあ”日本での抗生物質乱用の状況は今も余り変わっていない。
「日本の医師は抗生物質の正しい使い方の訓練を受ける機会が少ないですから」と国立国際医療センターエイズ治療・研究開発センターの青木真・医療情報室長(感染症内科)は指摘する。
空振りが怖くて広範囲の菌に効く抗生物質を使う。その結果、耐性菌が出やすくなる。米国の病院では広い抗生物質の代表セフェム系注射薬を4、5種類しか置かないが、日本のほとんどの病院では20種類もある。米国の感染症専門医資格を持つ青木さんは、前任の聖路加国際病院でセフェム系を一挙に6種類に減らした。
「中途半端な使い方も耐性菌を増やします」。日本では、副作用を抑えるために抗生物質を少な目に使う傾向がある。菌は死なずに耐性を獲得する。
「手術後の患者に感染予防目的で1週間も抗生物質を点滴するのは日本独特の慣習」と青木さん。米国では手術前が主で、手術後は限られたケースにしか抗生物質を使わない。60年代の研究で手術後はほとんど効果がないと証明されているからだ。
患者の皮膚にいる黄色ブドウ球菌や連鎖球菌が、皮膚や組織を切るときにメスで押し込まれる。抗生物質が血中で待ち受けていると菌はすぐに死ぬ。しかし、壊れた組織や血の塊などに菌が潜り込んでしまうと難しい。手術後よりも手術前が大事、と言うわけだ。
国際的に有名な臨床医の薬情報誌「メディカル・レター」は今年8月、最新の指針を載せた。
「皮膚の切開から30分以内に一度、抗菌薬を使う。4時間以上長引く手術か大出血時、あるいは半減期の短い降気若の場合、手術中に追加するのが望ましい。手術後は普通、使う必要はない」
日本医師会は11月初め、生涯教育シリーズの「感染症の診断・治療薬ガイドライン」を発酵。「抗菌薬の使い方」の項目では、手術後の抗生物質の使用について、「逆に感染症を増やし致死率も高くなる」と警告している。筆者の北原光夫・東京都済生会中央病院副院長は「今は私個人の見解だが、一日も早く本物のガイドラインになってほしい」と話す」(田辺功・編集委員)1999.11.28《朝日新聞》


抗利尿ホルモン不適合分泌症候群→「SIADH」



 光視症
⇒目を閉じていても、光がチカチカ見える状態。
◎網膜剥離などで起きる。


光線過敏症
=光過敏症。
=光線過敏性皮膚症 phptpsensitive dermatitis
⇒光線過敏性皮膚に、生理的範囲内の光線が作用して炎症を生じるもの。
◎発症機序:
<1>光毒性(photptoxicity)
<2>光アレルギー性(photoallergen)
(Ⅰ)光線接触皮膚炎:
(1)化粧水(オーデコロン)
(2)香料・香油(ベルガモット油:ベルロック皮膚炎)
(3)果汁(イチジク、セロリ)
(4)色素、タール。
(Ⅱ)体内に摂取したものが原因:
(1)薬剤:
(2)食品:
    ①ソバ
    ②アカザ
    ③アワビの内臓
    ④クロレラ----1977年、東京で発症。

◎光過敏症は、
①ポルフィリン代謝機構が遺伝的に欠損していたり、
②肝障害によってポルフィリン代謝不全があったりした時、
③フィロエリトリンが末梢循環系に蓄積するために起こる。又その他にも
④摂取された光作用物質が消化管から吸収され、血液循環によって皮膚表面近くに運ばれるために直接的に起こる。
(講談社「天然毒」p28~29参照)

◎光過敏症を引き起こす成分:
<1>ヒペリシン:オトギリソウ科植物Hypericum perforatumに含有。
<2>フロクマリン類:以下の植物に含有。
①イチジク Ficus carica
②ヘンルーダ Ruta gravelens
③セイヨウノコギリソウ Achillea millefolium
④セリ科シシウド(Andelaca属)
⑤Ammi属。
<3>[プソラレン]や[ベルガプテン][キサントトキシン]などのフロクマリンは皮膚表面に塗布し、光を照射すると。皮膚表面に紅斑を生じ、色素の沈着を生ぜしめる作用がある。実際にヒツジなどがフロクマリンを含有する牧草によって中毒し皮膚炎、瘙痒、湿疹、腫瘍、壊疽などを伴う症状を示した例がある。

◎光感作作用を示す植物:
[ソバ][トウモロコシ]なども知られ、ベルガモット油、タール、ワセリンなどは経皮的に作用を現すとも言われる。 (講談社「天然毒」p28~29参照)

◎先天的代謝異常と光線過敏症:
ポルフィリン代謝異常:
   晩発性皮膚ポルフィリア
色素脱失:
  白子症
  フェニルケトン尿症
ニコチン酸形成障害:
  Hartnup病
  ヒドロキシキヌレニン尿症
  小人症を伴うトリプトファン尿症
小人症を伴う遺伝性疾患:
  Cockayne症候群
  Bloom症候群
  Rothmund-Thomson症候群

■モデル実験動物
「皮膚系の難病として知られる持続型光線過敏症と日光ジンマシンのモルモットによるモデル実験動物を作ることに、アドバンストスキンリサーチ研究所が成功した。1996.5.9《日経産業新聞》」

■薬がもとで光線過敏症増加
「日光を浴びると皮膚に炎症や水疱が出来る光線過敏症の患者で、医薬品が原因の一つになっている例が増える傾向にあることが、静岡県立総合病院皮膚科の藤田弘医師や浜松医科大の瀧川雅浩教授(皮膚科)らの調査で分かった。
同県内の総合病院にアンケート、23病院から回答を得た。医薬品が関係したと思われる光線過敏症の患者数は1994年の1年間に「5人未満」が5病院、「10以上~20人未満」4病院、「20人以上」3病院だった。患者数が「増えた」という病院が11あり、「変わらない」は7病院、「減った」はゼロだった。
 原因と見られる医薬品では、ニューキノロン系の抗生物質をあげたところが最も多かった。1996.8.25《朝日新聞》」






 睾丸炎
【鍼灸】

「陽池、志室(沢田流の志室は、沢田流京門の下約1寸の処)」《沢田流聞書鍼灸眞髄》

【処方名-50音順】
■桂枝茯苓丸
■五苓散
■小柴胡湯
■大烏頭煎
■大黄牡丹皮湯
■大黄附子湯    
■騰竜湯《本朝経験》
■土瓜根散   
■麻杏甘石湯   
■竜胆瀉肝湯

 

睾丸が腫れる
   (参照→フィラリア症)
=(木腎もくじん)(陰卵偏墜)
1.腫れて痛まないもの。
「卵腫痛まざる者、これ湿也。また木腎と名づく」《育嬰秘訣》
2.睾丸が腫れて痛い木腎。    
3.睾丸の一方が腫れて大きくなり、ひっぱられて痛い(陰卵偏墜)

【処方名-50音順】
茴香案腎湯(左辺が偏墜して、睾丸が鶏鴨卵の大きさになった)
加減香苓散(偏墜気が初めて起きたとき)
活腎丸(痛まない木腎)
金鈴子丸(疝気の偏墜により痛む)
五苓散(痛まない木腎)
茱萸内消元
川練散(外腎が腫大で、麻木・痛硬の木腎を治す)
馬蘭花丸(陰㿉の偏墜と婦人の陰㿉、小児の偏墜に)


睾丸が冷たい・痛い・かゆい    (→疝病)
<1>寒疝=睾丸が冷たく、詰まって固く石のようで、陰茎が立たず、つって痛む。
(原因:湿地に座るor寒いときに風冷をがまん)
処方:[禹功散][加味五苓散][青木香元][幡葱散][当帰四逆湯][羊肉湯][烏頭桂枝湯][三因葱白散][四神丸]
<2>水疝=睾丸が痛み、陰汗が流れる。or腫が水晶のようで痒く、黄水が出、また小腹をなでると水の音がする。
(原因:水・酒の飲み過ぎ、房事の過多)    処方:[禹功散][三花神祐丸][腰子散][秘伝茱萸内消元]
<3>筋疝=陰茎が腫脹し、or破れて膿が出て痛み、極に達するとかゆく、いつもぶら下がって、白いものが小便に着いて出る。
     (原因:房事の労傷)
処方:[瀉心湯][加減柴苓湯][清心蓮子飲][竜胆瀉肝湯]
<4>血疝=黄瓜のようで、小腹の両脇・横骨の両端の約絞のなかにあって、俗称便雍という。
     (原因:房事の労苦)
処方:[玉燭散][桃核承気湯][後元通気散][神聖代鍼散]
<5>気疝=忿怒により気が欝した為に、脹滞したところからなる病気。
処方:[蕩疝丸][幡葱散][気疝散][三茱丸][聚香飲子]
<6>孤疝=寝ると小腹がが入り、立つと小腹から出る。睾丸のなかに入ると狐に似ているので孤疝という。寒湿が陰嚢中に注がれた症。痰病の一種。
処方:[二陳湯+青皮・香附子・蒼朮][二香丸][丁香縫実丸][四妙川縫丸][茴香練実丸]
<7>㿉疝=睾丸が大きくなって、かゆくも・痛くもない、地気の卑湿なところでなる病。女子の陰門の出もそうである。
イ.腸㿉=小腸気:[天台烏薬散][救命通心散][却鈴丸][加味通心飲][蠲痛元][消疝丸][立効散]

 

睾丸女性化症候群
=アンドロジェンを正常男子のように充分分泌する睾丸を持つ男子(性染色XY)であるのに、アンドロジェン受容体タンパク(AR)の欠損か異常のためにアンドロジェン作用が全く発現されない病態。
◎アンドロジェンの作用発現欠損の程度で、完全なものから不完全なものの間に、種々の段階のアンドロジェン不応症が存在する。

◎診断基準(完全型):厚生省
外陰部をはじめ外見、性格は全く女性と同じである。
陰毛、腋毛は無いか、非常に少ない。
無月経、不妊である。
子宮、卵管が欠如し、膣は浅く盲端に終わる。
精巣が腹腔内か鼠径部に存在する。
性染色体はXYである。
性嚢、輸精管、前立腺は欠如する。
血中テストステロン濃度は正常男子と同様に高値を示す。
血中ゴナドトロピンも正常かやや高値である。
10 培養陰部線維芽細胞のアンドロジェンレセプターは欠如するか異常を示す。
陰部以外への線維芽細胞でも検索は可能。
11アンドロジェンの投与に反応しない。
12 家族性に発生する。


 甲状腺ガン
■20~40歳代女性に多い。
「日本人がよく食べる海藻に多量に含まれているヨードの摂取量と甲状腺ガンとの関係が話題になっている。
海藻をあまり食べない低ヨード摂取地域のスイスでは、甲状腺ガンのうち、濾胞ガンや悪性度の高い未分化ガンの割合が多い。
一方、高ヨード摂取地域の日本では、質の良い甲状腺乳頭ガンが80%を占め、特に20~40歳代の女性に多く見られる。
Kさんは42歳の女性。胆石症の診察時に偶然、甲状腺の右側に直径1cm大の腫瘍が見つかった。レントゲン検査で腫瘍に砂状の石灰化像が見られたので、細い針で腫瘍を採取して検査したところ、甲状腺乳頭ガンと診断された。ガンを含めて甲状腺の2/3と周りのリンパ節を切除した。5年後の現在も再発の兆候は見られない。
もともと甲状腺は甲状軟骨(のど仏)下部の気管の左右にへばりついた蝶のような形をした内分泌腺で、種々の物質代謝を促進させる甲状腺ホルモンを分泌する。その重さは約20gと軽く、薄くて軟らかいので普段は全く気がつかない。だが、炎症や腫瘍が出来ると手に触れるようになる。
甲状腺乳頭ガンのおおくはKさんのように他の疾患の診察時にたまたま発見されるか、他の甲状腺疾患の超音波検査やレントゲン検査などで発見される。40歳代までに発症する乳頭ガンは発育が遅い。早期に手術すれば術後10年生存率は、90%と良好だ。
しかし、長期間放置すると悪性度の高い未分化ガンという種類になることがある。もっとも未分化ガンは甲状腺ガン全体の3~4%と少なく、60歳以上の高齢者に多い。」(木下博明・大阪市立大学医学部教授)2000.5.29《日本経済新聞》

◎原因遺伝子:[MEN]
◎黄薬子6~15g煎服。
◎「黄薬子・海藻・昆布・星宿菜・貝母」

■RNAが関与
「米オハイオ州立大学の研究グループは、『マイクロRNA』と呼ぶ微小なRNA(リボ核酸)が甲状腺ガンの発症に関わることを突き止めた。
研究グループは15名の患者の組織を調べた。ガン化している部分では5種類のマイクロRNAが増えていたが、その周囲の一見健康そうに見える部分でも、このうち1種類が増えていた。ガン化の最初の変調である可能性がある。」20061/4《産業》
■判別
「日本医科大学と東京大学の共同チームは、区別が難しい甲状腺ガンと副甲状腺ガンを的確に見分ける手法を開発した。副甲状腺ガンだけを発光させる薬剤を用いる。
18人の患者でテストした。甲状腺は首の気道の前側にある臓器で、日常生活に不可欠なホルモンを分泌している。その裏側に4つある米粒大の臓器が副甲状腺で、甲状腺とは別のホルモンを分泌し血液中のカルシウム量を調節している。
副甲状腺が小さく甲状腺にくっついているため、「ガンがどちらの臓器にあるのか見分けたり、甲状腺摘出の際に副甲状腺を取らずに残したりするのは簡単ではない」と日本医科大学の清水一雄教授は話す。
清水教授らは、特定のガン組織に集まる性質を持った『5アミノレブリン酸』という薬剤を経口投与することにより、病気になった副甲状腺だけを紫外線下で光らせる手法を考案、手術に応用した。」2006.2.27《日経》
■細胞老化で
「2009年、京都大学の高橋智聡研究員とシャムマ・アワド研究員らは、進行ガンを抑え込むシステムが体内にあることを見つけ、4/7のキャンサー・セル(電子版)に発表。
進行ガン患者の多くはガンを抑制する遺伝子が作り出す『Rbたんぱく質』があまり働いていないことに着目。Rbたんぱく質遺伝子を欠いたマウスを作り実験した。
甲状腺の細胞でRbタンパク質が働かないと、ガン細胞と同様に他の細胞も増殖しやすくなったが、同時に増殖抑制作用もある細胞老化も促進された。そこで、Rbタンパク質遺伝子と細胞老化を担っている遺伝子を共に欠いたマウスを作製して、実験した。その結果、高い確率でガンができた。
詳しく調べると、Rbタンパク質が働かないと『N-RaS』という遺伝子が作るタンパク質の成熟スピードが増して、すばやく活性化することが分かった。
N-RaSのタンパク質が通常より約10倍活性化され、老化の関連遺伝子に働きかけていた。
N-RaSはガン関連遺伝子としても知られ、突然変異を起こすと様々な場所でガンを引き起こす。脳下垂体では甲状腺と異なり、正常でもガンを悪化させる。」



 甲状腺眼症
   ■眼球が突出
「銀行で働くTさんは、最近、目がコロコロすることが多く、上を向くと物がダブって見えることに気がついた。家族からは目がパッチリしてきたといわれ、眼科を受診した。
ドライアイと診断され、人工涙液の目薬でしばらく様子を見ていたが、なかなか良くならず、大学病院を受診した。精密検査の結果、甲状腺ホルモン値は正常だが、甲状腺刺激ホルモンの受容体に対する抗体が高かった。頭部の磁気共鳴画像装置(MRI)検査で、目の筋肉が腫れていることが判明、『甲状腺眼症』と診断が付いた。
甲状腺眼症は、甲状腺機能亢進症(バセドウ病)に合併して目が突出してくる病気だ。目の脂肪組織が炎症を起こして腫れるため、眼球突出や、まぶたの腫れが起きる。
また、目を開ける筋肉が緊張するため、まぶたが引き上げられ、目がパッチリする。目を動かす筋肉が腫れて、複視になることもある。
薬の内服で甲状腺ホルモンの値が正常になってから、副腎皮質ホルモンの点滴療法をすると、目の腫れが引くケースもある。(不仁門尚・大阪大学医学部教授)



甲状腺機能亢進症 hyperthyroidism
    (参照→悪性眼球突出症)
脳→甲状腺(働けという命令)→血液中→60兆ある細胞すべてに甲状腺ホルモンが届けられる   

⇒血中甲状腺ホルモンが増加し、代謝が亢進して、暑がりになる
・皮膚はしっとり    
・発汗が著しい
・頻脈
・軽い運動でもドキドキ
・下痢
・イライラして精神的に不安定
・指がふるえる
・筋力低下などの症状が出る。
・コレステロール値が低下する

その原因に、
バセドウ病・機能亢進性腺種・慢性甲状腺炎・泡状奇胎妊娠などがある。

◎徴候:
眼が光沢にみち、表情も豊かで、落ち着きがない。
手は温かく、汗ばんでいる。
眼球突出exophthalmos
Stellwag徴候=眼裂が大きく、瞬目運動が稀なこと。
Möbius徴候=近いところ見る時に瞳孔の調節ができない(輻輳が出来ない)。

◎[甲状腺中毒性ミオパシー]

=機能亢進症の60~80%に、四肢の筋力低下・萎縮がみられる。 

◎甲状腺機能亢進症を引き起こす有害因子
     <1>一酸化炭素
     <2>四エチル鉛
     <3>ジニトロフェノール
     <4>ジニトロクレゾール
     <5>タリウム
     <6>DDT
     <7>ヨウ化物
     <8>ヨウ素
【宝石療法】
     ガネット
  
【処方名-50音順】
■茵蔯蒿湯 
■柴胡加竜骨牡蛎湯
■柴芍竜牡湯
■炙甘草湯
■増液湯
■天王補心丹
■天麻釣藤飲
■柏子養心丸
■六味丸

【西洋医学】
◎動悸に:
(1)Inderal 30~60mg 分3。
(2)Tenormin 50mg 分1。



 甲状腺機能低下症 
  hypothyroidism
(参照→「偽性副甲状腺機能低下症」「粘液水腫」「寒がり」)
出産した20名に1名が発症する。
⇒症状:(働けという命令がこない)
・子供の成長が遅い(背の伸びが阻害される)
・粘液水腫
・難聴
・脱毛
・便秘
・寒さに敏感
・寒がり。
・声が低い
・しゃべりにくい。
・徐脈。    
・月経過多になりやすい。
・皮膚が乾燥(肌がカサカサになる)。
・コレステロール値が高くなる(急に上昇)
・肥満する(食欲が無いのに)
・アキレス腱反射が遅い。
・貧血している者が多い。
・舌が大きくなる巨舌症(macroglossia)が見られることが多い。

◎甲状腺機能低下を引き起こす有害因子。(50音順)
<1>塩素酸塩
<2>コバルト
<3>チオシアネート類
<4>ヨードピリン
<5>臭素系難燃剤

◎甲状腺ホルモン:ヨウ素を含む化合物。セレンはヨウ素の代謝に関係する。
■スプレーヨード剤多用の妊婦--------赤ちゃんに甲状腺障害
「妊産婦は、のどの炎症を抑えるスプレー式のヨード剤の使用に注意をー兵庫県伊丹市、公立学校共済組合近畿中央病院の舟田俊平・小児科医長は、スプレー式のヨード剤を多用していた母親から生まれた赤ちゃんに甲状腺の機能障害が起きた例があったことから、警告している。7日から高松市で開く日本新生児学会で発表する。
昨年末に34歳の母親から生まれた女児の、出生時の血液検査で異常が見つかった。生後12日の再検査で血液中の甲状腺ホルモン濃度が正常の約半分しかなく、甲状腺機能低下症と診断された。
原因が分からず、母親から聞き取り調査したところ、風邪気味だった為、出産の約1ヶ月前から出産後も、スプレー式のヨード剤を1日に何回も使っていたことが分かった。母乳や赤ちゃんの尿中のヨード濃度が正常の2倍以上だったが、ヨード剤の使用を止めさせたところ濃度は徐々に低下し、生後1ヶ月半までに赤ちゃん甲状腺機能は正常に戻った1996.7.4《朝日新聞》」。
■薬で治療
「50歳の女性。甲状腺機能低下と診断され、甲状腺ホルモン剤レボチロキシンナトリウムを飲んでいます。飲み始めて2ヶ月ほどして、右足のかかとに感覚の違いを感じています。副作用でしょうか?」
●どんな病気ですか?
甲状腺は体の様々な機能を調節している器官です。機能が低下する原因として最も多いのが『橋本病』です。本来は体を守るべきリンパ球が、自分の甲状腺を自分ではない外敵と見なして攻撃する自己免疫病で、慢性甲状腺炎ともいいます。炎症ですが、ウイルスや細菌によるものではなく、感染しません。炎症で甲状腺組織が破壊されても予備力によってホルモンがつくられ、多くの場合は支障がないのですが、破壊が進行すると甲状腺機能低下となります。
●女性に多いのですか?
男性よりも女性の方が数倍多く、年齢とともに増えます。4、50代以降の女性では1、2割の人が橋本病と言われますが、治療が必要な機能低下が起こるのは、このうち1割以下です。
●どう診断するのですか?
甲状腺にあるタンパク質に対する抗体の有無を血液で調べます。これが陽性だと、甲状腺に炎症が起こっています。甲状腺の機能は、甲状腺刺激ホルモン(TSH)や甲状腺ホルモンの血液中濃度を調べて診断します。
●どんな症状になりますか?
組織の活動レベルが下がるので、だるさ、寒がり、気力低下、皮膚の乾燥などの症状が出ます。むくみもありますが、押しても元に戻るむくみです。進行すると記憶障害や精神障害も起こり、老人では痴呆症と間違えられることがあります。肝機能も低下するため、肝臓病と間違えられることもあります。
●治療法は?
甲状腺ホルモン剤を飲みます。
●副作用を心配されていますが?
もともと体にあるホルモンを補充するだけなので、服用量が適切であれば副作用はありません。この方の場合も、薬とは関係ないと思います。
●必要な薬の量は年齢とともに増えていくのですか?
薬の量を決めるためには、最初は量を徐々に増やしていきます。血液中のホルモン濃度が正常の範囲に入ったら、その量を続けます。たまに症状が進行する人もいますが、いったん薬の量が決まれば、その量を飲み続ける場合がほとんどです。ただ、この自己免疫病は治ることはないので、薬は一生飲み続け無ければなりません。
●怖い病気ではないのですね?
治らないと言う意味では難病ですが、治療できるので怖い病気ではありません。ただ、いろいろな症状から他の病気に間違われがちです。ノドが腫れると良く言われますが、ほとんど腫れない場合もあり、これだけでは決め手になりません。該当する症状があったら、甲状腺の病気も疑ってください。
●機能低下はなくても、橋本病と分かったら、どんな注意が必要ですか?
年に1回程度、念のため経過を調べることと、ヨードの摂りすぎに注意することです。コンブなど海草類を大量にとると、甲状腺の機能を抑えます。ヨードの入ったうがい薬を毎食後使って、機能低下を起こした例もあります。これらは止めれば元に戻ります。普通に食べている限り、問題はありません。
●若い女性の場合、妊娠や出産への影響を心配する人も多いようですが?
甲状腺機能が低下すると、妊娠しにくく流産しやすくなりますので、機能低下が分かったら、すぐに治療することが大切です。治療さえすれば、出産、授乳も心配ありません。(対馬敏夫・東京女子医科大学教授)2000.9.3《朝日新聞》

【注意】
<1>甲状腺機能が低下している者は「ホースラディッシュ」は禁忌。
【食事療法】
ケルプ    
【色彩療法】
    <1>レモン色
    <2>藍色
    <3>緑色
    <4>紫色
【宝石療法】
     ガーネット
【処方名-50音順】
■実脾飲
■真武湯
■当帰芍薬散加附子(貧血、冷え性<劇>)
■当帰芍薬散(貧血、冷え性、疲れやすい、月経不順、神経症状)

    



 甲状腺腫 
    goiter
⇒甲状腺が大きくなったもの。(甲状腺肥大)
[甲状腺腫死]=甲状腺腫により、気管が圧迫されて呼吸困難・窒息により急死。            20~40才の婦人に多い。

[甲状腺腫心]=甲状腺腫による心臓障害。《クロップ心臓》

◎甲状腺腫を引き起こす病気には
びまん性甲状腺腫:

<1>単純性びまん性甲状腺腫
<2>Basedouw病:
    1.眼球突出
    2.頻脈
    3.発汗・食欲増進・手指振顫
<3>橋本病(慢性甲状腺炎)
     1.嗄声
      2.浮腫
<4>無痛性甲状腺炎(painless thyroiditis)

結節性甲状腺腫:
      <1>甲状腺腺腫
      <2>甲状腺ガン
      <3>亜急性甲状腺炎

■ヨウ素と甲状腺腫
「ヨウ素欠乏症である甲状腺腫は、世界中の海から離れた地域に多発しており、世界でも最も罹患人工が多い欠乏症の一つと考えられる。ヨウ素は海藻に最も多く含まれる。魚介類にもあるが、他の食品には極めて少ない。
ヨウ素はチロキシンとトリヨードチロニンという2種類の甲状腺ホルモンの主要成分である。全身のヨウ素の70~80%は甲状腺に偏在している。ヨウ素が欠乏すると甲状腺ホルモンが作られなくなり、甲状腺が肥大してヨウ素債者が進む。この状態が長く続くと甲状腺腫になる。
ヨウ素の尿中排泄量が1日当たり50マイクログラム(1マイクロ=1/100万)より低くなると甲状腺腫が発生するとされている。サカイの多くの国ではヨウ素欠乏対策を講じている。食塩や油にヨウ素を添加している国もある。しかし、我が国の食生活ではヨウ素が欠乏する心配はまずない。
1964年、北海道の海岸各地で甲状腺腫が多発した。之《丹渓心法》の地域は昆布の産地なのでヨウ素が欠乏しているはずがない。検査の結果、尿中のヨウ素排泄量の平均値は正常量の約150倍で、ヨウ素過剰症であることが分かった。1日に50~80mgのヨウ素を摂取していたと推測される。このようにヨウ素は摂りすぎても不足しても甲状腺腫の原因になるのである。
米戸口栄養評議会ではヨウ素の摂取上限値を1日1mgと設定した。我が国の食生活ではこの数値を上回るケースがしばしば見られるので、許容上限摂取量は1日3mgに設定された。人はヨウ素過剰に対して強い耐性を持っているが、最近でもヨウ素過剰症による甲状腺腫が報告されている。過剰摂取には十分に注意する必要がある。」(糸川嘉則)1999.10.25《日本経済新聞》

【注意】
ダイズ・クルミの多量摂取は、甲状腺腫の発生頻度を高める。
(理由):胆汁と共に消化管内に排泄されるチロキシンの再吸収が阻害されるため。
キャベツ・カリフラワー・ダイコン・チリメンタマナなどの多偏食は甲状腺肥大を誘発する。(参照→「カラシナ」「チオ-オキサゾリシン」)

【宝石療法】
     <1>[ルビー]

【処方名-50音順】
■海藻玉壺湯(単純性甲状腺腫に)
■桂枝茯苓丸
■小建中湯
■当帰芍薬散


 甲虫症
◎生きている昆虫をそのまま丸ごと呑み込むと、腸内でその虫が生きていて、腹痛・下痢などを起こすことがある。<甲虫症>と呼ばれる。
<1>エンマコガネの類
<2>貯殻につく数種の甲虫類



 後弓反張

   ◎玳瑁
   ◎白殭蚕
   ◎羚羊角


 後鼻漏
■治らない
「2年前に風邪を引いてから、鼻水がノドに流れるようになりました。うがいをするしか方法がないと言われました。(群馬・68歳女性)
鼻の粘膜は、常に鼻汁などの分泌物で湿った状態に保たれています。分泌物は鼻の奥から、ノドの方へと、前方の鼻の穴の方へ流れます。分泌物が鼻の穴の方へ多くあふれ出るのが、いわゆる鼻水で、ノドの方へ多く流れるのが「後鼻漏」です。
急性鼻炎やアレルギー性鼻炎、慢性副鼻腔炎の場合に、後鼻漏の症状が出やすくなります。また、鼻や副鼻腔の腫瘍、ノドの炎症がある場合や、頭部に外傷を受けた後にも起こることがあります。
これらの炎症や病気が無い場合でも、高齢になると多くの方に見られるようになります。高齢者は、鼻の穴の内部やノドの粘膜の表面が乾燥し、粘り気の強い粘液がつきやすくなります。特にノドの上部にこうした粘液がつくと、それを後鼻漏として自覚することが多くなります。
治療はまず、もともとの病気を治すことが最優先です。ご質問の内容だけでは、鼻にどんな問題があるのかハッキリ分かりません。耳鼻咽喉科でCTやアレルギー検査などを受けることをおすすめします。
検査を受けても原因が見つからない場合、年齢から見て、疑われる原因に、まず加齢によるものが考えられます。苦痛が大きい場合は、鼻汁の通りを良くする消炎酵素薬、粘液溶解薬などの薬を使います。外来で定期的に分泌物を吸引することもあります。日常生活では、過度に鼻の中を乾燥させないように、うがいやマスクをしたり、加湿器を使ったりなどに注意が必要です。
ノド上部の知覚過敏などの問題がある場合もあります。この場合、鼻水や分泌物の流れは正常なのに、後鼻漏と錯覚してしまいます。
また、軽い副鼻腔炎でも後鼻漏と感じることがあります。」

【処方名-50音順】
■辛夷清肺湯
■防風通聖散


 項背部のこわばり(項背強)
【処方名-50音順】
■葛根湯
■葛根湯加川芎辛夷(首の後がこわばる)
■桂枝加葛根湯(虚証、自汗、項背がこる)   ■桂麻各半湯(項背の痛み、)
■呉茱萸湯(首の後ろがこる、)
■川芎茶調散
■大承気湯
■釣藤散
■人参湯

 

紅汗(こうかん)
◎女子紅汗=代償月経としての鼻血。

 

紅皮症
⇒全身の皮膚が一面に赤くなり、しばしば様々な程度の落屑を伴う状態をいう。
◎原因:

①湿疹
②皮膚炎群
③乾癬
④薬疹
⑤細菌感染
 



 紅肢症
  【処方名-50音順】
■越婢加朮湯


 

肛門周囲炎
  【処方名-50音順】
■桂枝茯苓丸
大黄牡丹皮湯
■托裏消毒散《外科正宗》
■桃核承気湯
■桃花湯
■排膿散及湯
■■薏苡附子敗醤散


 肛門周囲膿瘍
=表在性のものは全身症状が少なく、局所の疼痛腫脹が早く現れる。
深在性のものは始めに悪寒・硬結が出て、しばらくしてから直腸肛門周囲に激痛が現れる。
膿が形成されれば切開排膿した方が痛みは早く去る。
  【処方名-50音順】
■十全大補湯

痔瘻を残して排膿が止まず、貧血して全身衰弱の候あるものに用いる。伯州散を兼用する(漢方診療医典)
■千金内托散
体質虚弱で大黄牡丹皮湯や騰竜湯が用いられず、もしくは排膿後、慢性に経過して痔瘻を残し、稀膿の止まないものに用いる。伯州散を兼用する(漢方診療医典)
■大黄牡丹皮湯
本方は初期に局所の腫脹疼痛が著しく、高熱を発し、便秘していて腫れ・痛みとともに尿閉を起こしているといような緊迫している時に用いされる。
本方で便通がつくと腫脹疼痛がすみやかに去って、切開の必要がないことが多い。大黄と芒硝は各6.0gくらい多い方がよい。
本方は実証で、下部に緊張性の炎症や化膿症があり、腫脹、疼痛、発熱があり、便秘して下腹部に腫瘤または堅塊があり、体力の充実しているときによい。それゆえ、体質の虚弱な者には用いられない。
大塚氏は肛門周囲炎で便閉と尿閉を起こした57歳の男性が、激痛のため眠れず、腹が裂けそうだと苦しみ呻っているのに導尿したあと、本方を用いたところ、3~4回下痢のあと、膿汁を多量に下し、諸症すみやかに軽快したという(漢方診療医典)
■托裏消毒飲
体質虚弱で大黄牡丹皮湯や騰竜湯が用いられず、もしくは排膿後、慢性に経過して痔瘻を残し、稀膿の止まないものに用いる。伯州散を兼用する(漢方診療医典)
■騰竜湯
本方は大黄牡丹皮湯に苡仁、朮、甘草を加えたもので、だいたい同じような場合に使われるが、やや病状が緩慢で、あるいは日数を経過して、慢性に移行する徴候がある場合によい。便通のぐあいによっては、大黄、芒硝を加減する(漢方診療医典)

 

肛門出血    
  【処方名-50音順】
■黄土湯
■黄連解毒湯
■芎帰膠艾湯
■猪苓湯
■桃核承気湯



 肛門掻痒・肛門がかゆい・痛い
  【処方名-50音順】
■黄連解毒湯
■寛腸丸(痔と大便が秘結して痛い)
■枯礬散(五痔と痔痛)
■小青竜湯(咳嗽、喘、鼻水、)
■梔子甘草豉湯    
■梔子柏皮湯(身黄、発熱、腹満なし)
■秦芁羗活湯(痔瘻が塊となって、かゆい)
■秦芁当帰湯(痔瘻で大便が乾いて疼痛)    
■秦芁白朮丸(痔で大便が乾き、硬痛)
■清心丸(痔でかゆい)    
■当帰郁李仁湯(痔瘻で大便が硬く、努肉が出、腸頭に出血・疼痛)
■桃核承気湯(実証、のぼせ、足冷、下腹部痛) 
■七聖丸(肛門の痛み)
    

 

肛門の灼熱感
  【処方名-50音順】
■葛根黄芩黄連湯 
■白頭翁湯


 

剛痙
=痙病の重症。太陽病にして発熱はしているが発汗なく、反って悪寒するもの。
柔痙は単に脳膜炎症状であるが、剛痙は脳脊髄膜炎症状である。
  【処方名-50音順】
■参帰養栄湯《万病回春》



枯草熱(こそうねつ)
⇒現在では「花粉症」と呼ぶ。
主として春から夏に空中に悲惨する花粉によって起こる、アレルギー性鼻炎。
◎症状:①鼻汁
    ②鼻粘膜腫瘍
    ③流涙
    ④眼の発赤とかゆみ。



五更瀉(ごこうしゃ)=五更泄
⇒早朝・明け方に起こる下痢。
=晨泄シンセツ=腎泄ジンセツ=鶏鳴瀉=瀼泄ジョウセツ。

◎五更瀉:たぶん疝に属するものにて、大抵真武湯にて治するなり。《勿誤薬室方函口訣》
◎按ずるに五更瀉は、独り腎虚の一端のみならず、酒積、食積、寒疝、みな此の病を作す。概して温腎を与うはその治に非ず。《雑病翼方》

【処方名-50音順】
■当帰四逆湯
■当帰四逆加呉茱萸生姜湯(手足厥冷<紫色>、腹激痛、胸中煩満、冷汗、頭痛(冷)、腰痛)
■八味地黄丸(腎陽虚、口渇、尿利減少or増加、腰痛、下腹部軟弱・無力、(臍下)腹直筋拘攣、舌湿潤無苔
■平胃散(排便前に痛み、排便後に腹痛が減少。腐敗臭がある)
■六味丸(腎陰虚、口渇、舌乾燥、多尿、小便不利、下腹部軟弱・無力、疲労倦怠、憔悴、羸痩)


 

50肩 stiff and painful shoulder 
■痛みを軽くして運動
  「51歳の夫。左肩が痛むようになり、病院で『50肩』といわれ、塗り薬をもらいました。肩を動かすことを勧められて水泳をしていましたが、別の医師から痛いときは動かさないようにといわれました。15年ほど前、右肩が『四十肩』になった時はいつのまにか良くなったのですが、今回は半年たっても痛みが取れません。
 ●50肩と四十肩は違うものですか?
同じです。課あの関節の痛みと運動障害が主な症状で、40歳ぐらいから増え始めて50代でピークを迎えるので、そう呼ばれます。欧米では「フローズンショルダー」(凍結肩)とも言っています。日本人の2、3割が発症するといわれています。
 ●肩はどんな仕組みをしているのですか?
肩はいろいろな方向に動かせる分だけ、仕組みも複雑です。たとえば、三角巾が上腕骨を情報に引っ張るだけでは腕は上がりません。上腕骨の頭部を帽子状にくるんでいる腱板がこの骨を首側に引っ張る作用が加わって、初めて腕が上がります。
 ●発症の原因は?
問題は老化(変性)です。三角筋も腱板もともに老化しますが、腱板の方が早い。上に引っ張る力の方が首側にひっぱつちからより強くなって上腕骨が上がりすぎ、上部にある肩峰(肩胛骨の外側に張り出した部分)にぶつかるようになります。このため、腱板と腱板と肩峰の間にあってクッションの役目をしている滑液包が炎症を起こし、50肩の症状が出るのです。三角筋と腱板の老化時期のズレが原因なので、両者が正常なヒトはもちろんですが、同時期に老化したヒトも発症しないと考えられます。三角筋の方が先に老化することはまずありません。
 ●症状を教えてください。
一般的には3期に分けられます。最初の2ヶ月ぐらいは肩の違和感や動かすと痛みを感じる「疼痛期」と、痛くてだんだん動かさなくなると関節が硬くなり、高いところに手が届かない、寝間着の腰ヒモが結べないなどの「拘縮期」と、自然に治る「治癒期」に別れます。
 ●どんな治療をするのでしょうか?
<1>疼痛期:湿布や風呂で暖める
<2>拘縮期:運動障害には肩の外側から滑液包にステロイド剤と局所麻酔剤ななどを注入する注射療法があります。夜間痛には痛い方の脇の下に枕をはさんで寝返りしにくくするとよいでしょう。筋肉が硬くなってしまった場合は、コッドマン体操やコンノリー体操といった運動療法が効果的です。
 ●動かした方がいいわけですね?
基本的にはそうです。痛いからと言って動かさないとどんどん硬くなってしまいます。注射・マッサージ・温浴などで、痛みを軽くして動かすのがいいでしょう」(三笠元彦・東京都立大久保病院整形外科部長)2000.2.20《朝日新聞》

【漢方薬】(50肩)
■葛根加朮附湯
■葛根湯
発病の比較的初期で、脈に力がり筋肉の緊張のよい消化器の丈夫な人に用いる。ばあいによっては、苡仁10.0を加えたり、朮4.0を加えたりする(漢方診療医典)
■加味逍遙散+四物湯
夜間、床に入ると、手がだるく痛み、あるいはフトンに入れていると半値津市、フトンから出すと冷えて痛み、手のおきどころがなく、安眠のできないもんものに用いる(漢方診療医典)
■桂枝加葛根湯    
■桂枝加朮附湯
■桂枝茯苓丸
■柴胡桂枝乾姜湯
■柴胡加竜骨牡蛎湯
大柴胡湯を用いるような患者で、神経質で、不眠を訴える者に用いる(漢方診療医典)
■三黄瀉心湯
■芍薬湯
■小建中湯
■清湿化痰湯
■大柴胡湯
胸脇苦満がある肥満体の患者で、便秘の傾向のある者に用いる(漢方診療医典)
■桃核承気湯
■当帰芍薬散
■二朮湯
この処方は万病回春に出ていて、もとは朱丹溪から出ているという。古今方彙をみると、臂痛のところに、“痰飲にて雙臂の痛む者及び手臂の痛む者を治す”とある。数年前、60歳あまりの男子の50肩に葛根湯を用いたところ、食欲がなくなり、反って痛むという。この人は、平素から胃腸が弱く、大便は軟らかいのに快通しないという症状があった。そこで二朮湯を用いたところ、50肩の痛みが急速に良くなり、食欲も出て、大便が快通するようになった。この処方を用いる目標は、痰飲による疼痛であり、痰飲は水毒を意味するから、患者は水毒性体質で、筋肉の緊張が悪い(漢方診療医典)
■人参湯
■白虎加桂枝湯
■防風通聖散
    
    
 

五色痢
⇒痢疾に五色が混じる。
【漢方薬】
■黄連阿膠湯
■香連丸
■絲瓜散
■神効参香散
■神効越桃散
■茱連丸
■秘方養臓湯


五心煩熱
⇒火が中で欝した症。
【漢方薬】
■火欝湯(火欝と五心の煩熱)
■加減小柴胡湯(手のひら・足の裏に熱があってたえられない)
■升陽散火湯(火欝と五心の煩熱)

 

五疸
=漢方の病証名。黄疸、穀疸、酒疸、黒疸、女労疸がある。

【漢方薬】
■一清飲子《医学入門》
■茵蔯姜附湯《衛生宝鑑》
■茵蔯散《万病回春》
■茵蔯四苓湯《医累元戎》
■茵蔯大黄湯《万病回春》
■葛朮湯《医学入門》
■瓜蒂散《古今方彙》
■加減胃苓湯《寿世保元》
■加味茵蔯五苓散《寿世保元》
■加味益気湯《寿世保元》
■加味姜附湯《寿世保元》
■加味解毒湯《寿世保元》
■加味四君子湯《仁斎直指方》
■秦芁因《医学入門》
■腎疸湯《蘭室秘蔵》
■清熱除湿湯《済世全書》
■当帰白朮湯《医学正伝》
■人参養栄湯《三因極一病証方論》
■茯苓梔子茵蔯湯《衛生宝鑑》
■茯苓滲湿湯《寿世保元》



 広汎性血管内凝固
(DIC)Disseminated Intravascular Coagulation
=播種性血管内凝固=汎発性血管内凝固症。
⇒全身の細小血管に血栓が形成された状態となること。
◎血小板や各種の凝固因子が消費されるために出血傾向がみられる。又、微小血栓によって各種の臓器に虚血性の変化を生じる。


 

更年期障害 klimakterische Störungen
(参照→男性更年期障害)
⇒更年期(menopause)にみられる、精神不安・のぼせ・めまい・不安感・肩こり・多汗・偏頭痛・心悸亢進などの症候群。

◎女性の更年期(性成熟期から老年期への移行期)に卵巣ホルモンの分泌が減少し、生殖機能がなくなる。その反面、脳下垂体前葉の性腺刺激ホルモンや副腎皮質刺激ホルモンが増加する。このようにホルモン経のバランスが崩れると、それが間脳の自律神経中枢に影響を与えて、自律神経系の失調を引き起こす。
更年期障害は、ホルモン系のアンバランスと自律神経系の失調状態が絡み合った症候群で、種々の症状を呈する。

◎症状:
<1>自律神経系の症状:
①のぼせ・めまい、顔がほてる。
②肩こり。
③冷え症
④偏頭痛・頭重、頭重。
⑤動悸、息切れ。
⑥多汗・汗をかきやすい。
⑦血圧が不安定。

<2>精神的症状:
①イライラ、不安感、不眠。
②神経過敏
③興奮、ゆううつ。
④注意力の散漫、物忘れ。
⑤恐怖感、嫉妬心。
⑥ヒステリー。

<3>新陳代謝障害の症状:
①脂肪過多:特に腹部とお尻・太ももに脂肪がついて、いわゆる「中年太り」の体型になる。

<4>ホルモンバランスが崩れた症状:
①月経不順になり、遅れ気味になる。
②子宮からの不正出血。
③膣粘膜が萎縮して弾力を失う。
④膣内細菌に対する抵抗力が低下するので、膣炎などを起こしやすくなる。

<5>皮膚の症状:
①ソバカスが増える。
②色が黒くなる。

◎更年期(日本女性は44才~52才)にみられる。




■精神的苦痛----特に夫との関係---------
「10年近くも、のぼせやめまい、肩こり、不眠などで苦しみ、今は心さえも病んでいます。この本の登場人物は私の姿そのものです」「吐き気や偏頭痛、動悸は、私たちの冷めた夫婦関係が拍車をかけていたのかもしれません」
 更年期の実態を夫婦の関係から探ったルポルタージュ『ある夫婦のかたちー[もう一度]と考える妻たち』(三五館)を出して3ヶ月たった今、私の手もとに100 通近い手紙や読者カードが届いている。
閉経をはさむ10年前後、卵巣機能の低下で女性ホルモンが激変して起きる身体の異常は、子供の巣立ちや老親の介護などの時期と重なり合い、精神的に

も肉体的にもつらい更年期障害を引き起こす。
 更年期を巡る医療は、ホルモン補充療法(HRT)や漢方などの治療が脚光を浴び、大学病院などの閉経外来には多くの中高年が詰めかけている。しかし、更年期の症状は医学的治療だけでは取り除けない。その多くは精神的苦痛、とりわけ夫との関係に悩みを抱えているからだ。
「仕事一本やりで家庭を顧みない夫とのセックスは苦痛でした」「30代の夫の浮気に今でもわだかまりがあって・・・」。取材でしばしば耳にした言葉だ。更年期は、今まで四、50代の女性の閉経にまつわる体の問題としてのみとらえられる傾向が強かったが、女性の生き方、特に二十代、三十代からの男女、夫婦の在り方と深くかかわっている。
 ある保健婦が「更年期を過ぎると、女は精神的にも肉体的にも男を捨てる人が増える」と言ったが、的確な分析だろう。たった一人の子育て、夫婦らしい会話もなく、一方的に受け入れるだけのセックス。「二人でいてもたった一人」の結婚生活。三十代の孤独な子育て期を経て、四十代で心が離れ、50代を目前にして、更年期の変化、性交痛などで体も離れ、やがて、更年期の不快な症状が収まると、「心と体の夫捨て」が始まる。
 厚生省の95年の人口動態統計によると、離婚件数は70年に比べるとほぼ倍増。「同居期間20年以上」の熟年夫婦に限ると、5072件から31879件へ、6.3倍も増えている。1996.8.14《日本経済新聞》」
■ホルモン療法
=エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の複合剤を使う
「更年期障害の原因は大きく分けて3つあります。
<1>に50歳前後の卵巣の機能低下と停止です。これで体内の女性ホルモン量が減ってしまいます。
<2>は子供の就職・結婚・夫の定年、対人関係など生活上のストレスです。
<3>に、グチっぽいなど、本人の精神的傾向です。これらがミックスして頭痛・めまい・いろいろな異常を感じる不定愁訴を起こします。
 その治療にホルモン剤を使います。体の中の女性ホルモンの量を45才ぐらいのレベル(血中のエストロゲン濃度が60~75pg/ml)に保つのです。ほてりや発汗は止まり、粘膜の乾きも防げます。イライラや不眠、頭痛まども改善します。さらに骨粗鬆症や動脈硬化の予防にも効果があります。
 女性ホルモン剤の長期投与が、子宮体ガン・乳ガン・卵巣ガンを引き起こすのではないかという疑問が出ていました。米国での調査では、子宮体ガンはエストロゲンだけだと増えますが、プロゲステロンも一緒に投与すると何も与えない場合よりもむしろ減るといいます。卵巣ガンもそれほど問題はないとされています。乳ガンについては、増えるという結果と減るという結果の両方が出ていて結論はついていません。 1997.1.5《朝日新聞》
■大豆タンパク
「米ボーマングレイ医科大のゲレゴリー・バーク博士は、ニュウーオーリンズで開かれた米心臓協会の会合で「女性の更年期障害に豆腐などに含まれている大豆タンパクが有効」と発表した。
体のほてりや寝汗などの更年期障害特有の症状を訴える45~55歳の女性43人を対象に実験した。
6週間にわたり大豆タンパクの粉末20gを食事に入れ、もう6週間は炭水化物の粉末入り食事を食べさせた。
 実験に参加した女性は、大豆タンパクを摂っていた期間は明らかに症状が緩和したと話したという。1996.11.24《朝日新聞》
■更年期専門外来
「女性ホルモン(エストロゲン」の分泌低下が原因で、50歳前後の女性に多いとされる更年期障害。のぼせや関節痛、高脂血症、不眠症、脳梗塞など症状は人によって違い、病院や診療科をたらい回しにされた経験のある患者も多い。
更年期障害のなかには「何となく体がだるい」など、どこで診察を受けたらよいのか、はっきりしない症状もある。しかし、現在の医療体制では、骨粗鬆症などコツに関する症状は整形外科、高脂血症や心筋梗塞などは内科で受診するなど症状ごとに別個の診療科目になる。
患者からすると、複数の診療科目や病院でも受診が必要で、同じ検査を繰り返し受けたり、投薬が重複したりと効率が悪い。特に仕事を持つ女性や、総合病院の少ない地域の患者にとっては、その負担は大きく、不便を強いられている。
福井県松岡市の福井医科大学付属病院では今年1月、更年期障害関連する産婦人科、内科、整形外科の各専門家を1つの外来に配置することを検討。同病院産婦人科外来で試行し、4月から正式に「中高年総合外来」を開設した。
同病院では、初診時に産婦人科医師が問診し、子宮ガン、乳ガンの検診を実施。次に順番に産婦人科医、内科、整形外科の各医師の診察を受ける。
診察終了後、各科の医師が統一カルテを前に、それぞれの立場からみた患者の症状を話し合い、今後の治療方針を決める。産婦人科の女性ホルモン補充両方をベースに、各医師が連帯して総合的に治療にあたるシステムだ。
■ストレスで低年齢化も
  「一般には45~55歳とされる更年期だが、「30代からも相談は寄せられる。仕事や子育てのストレスが重なっているせいだろう。更年期特有の症状に悩む人達は確実に低年齢化している」とメノポーズ(閉経期)を考える会(四谷)代表の三羽良枝さん。
専門家もこうした症状の広がりに警鐘をを鳴らす。「最近の若い女性は無理なダイエットなどからホルモンバランスが乱れがち。更年期障害と同様の症状が前倒しで表れ始めている」と指摘するのは、東京女子医大女性生涯健康センターの井口登美子所長だ。激やせや喫煙、必要以上に締めたり圧迫するファッションがホルモン減少や骨の老化を早めることを認識し、20代、30代から予防を考えるべきだと主張する。
 “更年期は健康な高齢期を迎えるための、心とからだの準備期間”という井口さん。“食べたい、見たいなど自分の『たい』の数を増やし前向きに生きよう。相談しやすい医師を見つけよう。自分の症状や過去の治療歴を書き出して持って行くだけでも、医師は有効な答えをくれるはず”とアドバイスする。」1999.6.7《日本経済新聞》
 ■個人差大きい更年期
「日本人女性特有の平均寿命は世界一長く、84歳近くになった。しかし単に長生きするだけでは、本当の幸せとは言えない。寿命が延びたということは、更年期以後の人生が、それだけ長くなったことを意味している。その期間を、いかに健康に過ごし、充実させるかが、女性1人1人に問われている。
では、女性の更年期障害とはどのようなものなのか。それを理解するために女性のライフサイクルとの関連で考える必要がある。女性が小児から大人に成長していく過程で、最初に起こる重要な出来事は初経(初潮)である。初経年齢は通常11~13歳。その時期から10代後半にかけて思春期を過ごし、やがて性成熟期(生殖期)に移行する。
性成熟期は、妊娠、出産、授乳といった、次の世代を育てるための生殖機能をになう重要な時期だ。この性成熟期のあとに来るのは老年期だが、そこへの移行期に相当するのが、他ならぬ更年期である。月経が無くなる閉経の前後、各5年間ぐらいずつの期間をそう呼んでいる。
月経は初経から閉経に至るまでの期間、約28日間のサイクルで周期的に起こる。卵巣では卵胞が成熟し、排卵を経て黄体が形成される。
一方、子宮では排卵・着床に備えて内膜が増殖するが、妊娠が起こらなければ内膜が剥離し、出血する。この月経周期は、エストロゲン・プロゲステロンなどの女性ホルモンが規則的に分泌されることで、正常に繰り返される。
しかし加齢と共に、卵巣・子宮の機能はやがて衰えていく。通常、50歳を過ぎると卵巣は萎縮し、女性ホルモンを作る機能も衰えてしまう・月経周期に起こる一連の生理的変化を巧みに誘導し、調和させている女性ホルモンが作られなくなる結果、月経も消失する。これが閉経である。
閉経年齢は、日本人女性約4000人を対象にした調査によると、半数近くが50歳ないし51歳。しかし個人差が大きく、早い人は40代の初め、遅い人では60歳近い。従って更年期も一般的には40代後半から50代前半と考えられているが、実際には人によって、かなりずれがあることになる。
女性は更年期にさしかかると、体に変調をきたして、いろいろな症状が起こってくる。例えば、のぼせ、火照り、動悸、発汗、めまいなどで、これらは血管運動神経症状と呼ばれている。また社会環境や家庭環境の変化、体の変調などに伴って、鬱状態に陥ったり、脱力感や無気力、不眠などに悩まされることこも多い。こうした多様な症状が同時に起こることから、ひとまとめに更年期障害と呼んでいる。
更年期障害は閉経という現象と密接に関連しているが、その1つの原因として、中枢神経と卵巣の機能的バランスの乱れが挙げられる。卵巣は、頭部にある視床下部、脳下垂体なその中枢から指令を受けて、女性ホルモンを作り、放出する。しかし中枢は、ただ一方的に指令を出すだけではない。実際に放出された女性ホルモンの量に応じ、卵巣に対する作用を適切に調節する。
つまり、中枢と卵巣は情報のキャッチボールを行いながら、月経周期をコントロールしているわけである。しかし閉経により卵巣機能が低下・消失すると、両者のキャッチボールはうまくいかなくなる。中枢が卵巣に指令を出しても、女性ホルモンが作られなくなつからだ。
卵巣が要求通りに働かなくなると、それを感知した中枢はホルモン産生を促す指令を強化する。しかし卵巣はそれに答えることができず、その結果、中枢からの刺激が一方的にエスカレートすることになる。そして他の身体機能をもコントロールしている中枢がこのように興奮すると、その影響がいろいろな形で表れてくる。
特に、この中枢を介する自律神経の働きのバランスが乱れると、安静時に動悸が起こったり、大量に発汗したり、あるいは体がほてったり、のぼせたりといった症状が起こりやすくなる。言うならば、卵巣を刺激しようとする中枢の働きを、他の機能へも影響したために起こる症状だといえよう。
エストエロゲンが欠乏
更年期障害は更年期に特有な症状なので、通常は閉経から一定期間(5年前後)たてば、症状は落ち着くことが多い。恐らく、その間に中枢と卵巣の相互関係が、閉経後の状態に適応していくのだろう。更年期を乗り切れば問題はおのずと蛔厥しそうなものだが、実はそうではない。
女性ホルモンのエストロゲンは、もちろん子宮・卵巣・乳房といった女性生殖器にとって重要だが、そのほかにも骨や脂質の代謝を調節したり、血管の弾力性や皮膚のみずみずしさを保ったり、膣や尿道粘膜の構造・機能を維持するといった働きがある。
このため、閉経によってエストロゲンが欠乏すると、骨量が急速に減少し骨折を起こしやすくなる骨粗鬆症、コレステロールなどが増える高脂血症、血管の弾力性が低下し血管内腔が狭くなる動脈硬化、皮膚の障害、尿失禁などが起こりやすくなる。
骨粗鬆症は骨がスカスカになり、もろくなる疾患で、いったんこれが起こると骨折の危険性がきわめて高くなる。例えば普通なら考えられないことだが、つまづいて手をついた拍子に手首の骨が折れるといったように、ごく日常的な動作でも骨折してしまう。
骨粗鬆症が進行し骨量が著しく減少すると、骨が体重を支えきれなくなり、腰や背中が曲がったまま伸ばせなくなったりする。骨粗鬆症による大腿骨の骨折は寝たきり状態を引き起こす重要な原因の1つだが、その頻度は女性が同年代の男性に比べて圧倒的に多い。
また、女性は脳卒中や心筋梗塞などの心血管病が、男性に比べて少ないと言われてきた。ところが最近、こうした女性の利点が更年期を境に急速に失われていくことが明らかになった。
一般に老年期には高血圧、高脂血症、動脈硬化が増加するが、エストロゲンの欠乏が、これらの心血管病危険因子の発生を高めるためと考えられている。
尿道の萎縮に伴う尿失禁も深刻な問題である。更年期以後の女性の20~40%は、これに悩まされているのではないかと推測されている。また、美しさを求める女性にとって、皮膚の障害が大問題である。また最近ではエストロゲンの欠乏は痴呆の発症にも関係すると言われている。
ホルモン補充療法
骨粗鬆症・心血管病、あるいは尿失禁を予防・治療する方法が、他に無いわけでない。例えば骨粗鬆症に対しては、カルシトニンや活性型ビタミンDなどの薬があるし、心血管病の危険因子となる高脂血症に対しては、食事療法や脂質低下薬が用いられる。
しかし、これらの治療法が1つの疾患にしか対応できないのに対し、ホルモン補充療法は更年期障害はもとより、骨粗鬆症・心血管病・尿失禁・皮膚障害などにも、同時に効果を発揮する。これはエストロゲン欠乏が、更年期以後の」女性に起こる多様な障害の共通の原因となっているからである。
ホルモン補充療法は、海外の先進国ではかなり普及している。アメリカ・カナダ・オーストラリアなどでは現在、閉経後の女性のおよそ3人に1人、イギリス・ドイツ・フランス・スウェーデンなどのヨーロッパ諸国でも6、7人に1人ぐらいの人が行っている。
しかし、日本での普及率は5、6%と、極めて低い。これは、ホルモン補充療法を行う医療機関が欧米に比べてまだ少ないことの他に、更年期障害を病気として認めない社会風潮、ホルモン補充療法がガンのリスクを高めるという誤解が影響している。
ガンのリスクについたは、エストロゲンを単独で長期間用いると、子宮内膜ガンが増加することが明らかである。しかし、適切な量のエストロゲンを選びプロゲステロンを併用する治療法が開発された今では、子宮ガンに関する懸念は解消したといえる。また長期間のホルモン補充療法で乳ガンが増加するという報告もあるが、これを日本人女性についてはっきりと証明したデータはなく、目下検討が進められている。
ただホルモン補充療法による不規則な出血を嫌う女性もいる。欧米では、そのために治療を中止する人がかなりいるようだ。これは治療の性質上、やむを得ない面もあるが、医師と相談しながら出血をコントロールする処置をとることは可能である。
ホルモン補充療法は、どこの医療機関でも受けられるという治療ではない。しかし、少なくとも更年期外来を設けているような施設なら、相談に乗ってくれるはずである、費用も1日の患者負担が50円程度で、医療コストから見ても優等生といっていいだろう。
ホルモン補充療法が向かない例
使用できない女性:
①子宮ガン・乳ガンの既往or治療中
②重症の肝機能障害がある人
使用を避けた方がいい女性:
①子宮筋腫・良性の乳腺疾患の既往or治療中
②コントロール不良の高血圧症
③糖尿病
④原因不明の不正性器出血がある人。
注意した方がいい女性:
①胆石症
②片頭痛
③ヘビースモーカー
④肥満の人。
(麻生武志・東京医科歯科大学医学部教授)1999.6.19《日本経済新聞》
■症状の程度を自己診断
「女性の体はエストロゲンなどの女性ホルモンによってコントロールされている。ところが、これらを体内で作り、分泌している卵巣は50歳前後で萎縮し、機能を止めてしまう。これが閉経である。女性ホルモンが分泌されなくなるために、体のバランスが崩れる。これが更年期である。
エストロゲンは乳房や子宮の成熟などに関係しているだけではなく、様々な働きをもっている。例えば、血中コレステロール量の調節である。エストロゲンは余分なコレステロールを肝臓から排出するから、女性では高脂血症や動脈硬化が男性に比べて少ない。
ところが、更年期になってエストロゲンの分泌が止まると、この働きが無くなる。更年期以降の女性で高脂血症や動脈硬化のリスクが高まるのは、こうした理由もある。このホルモンは骨の代謝にも関与しているため、閉経後に骨粗鬆症になる人も増えてくる。また一般には、あまり知られていないが、尿道の機能を正常にする働きも持っている。閉経後に尿失禁が増えてくるのみこうした背景がある。
病気に結びつくような体の変化のほか、閉経前後にのぼせやほてり・動悸・息切れ・頭痛・めまい・不眠といった症状に悩む女性も多い。これらはエストロゲンを生産・分泌するように指令を出している脳の視床下部が、機能停止した卵巣にこれまで通り指令を与えるからである。卵巣が指令に答えないために、どんどんぢげきを強めるから、こうした全身症状が出るのである。無気力や憂鬱感といった精神症状が出ることもある。これが更年期障害である。
閉経の年齢は人によってまちまちである。40歳代はじめの人もいれば、50歳代後半の人もいる。更年期障害の現れ方や種類・強さも人によって異なる。
自分の症状がどのようなものかを知るため、更年期の自己健康チェックをしてみるとよい。たいていの病院で行われており、自宅でも出来る。「ほてり」「腰や足の冷え」「寝付きが悪い」「怒りやすい」といった症状の強さを点数化し、その合計で「更年期の問題なし」~「治療の必要あり」まで分類するのである。」(中村雅美・編集委員)2000.7.3《日本経済新聞》

【芳香療法】(更年期障害)
<1>ゼラニウム---ホルモンバランスを調整
<2>バラ---子宮を強壮にし、浄化して月経周期を正常化する。
<3>カミルレ
<4>ベルガモット
<5>ジャスミン
<6>ラベンダー
<7>ネロリ
<8>サンダルウッド
<9>イランイラン
<10>メマツヨイグサ油

【民間療法】
<1>トウキ。
<2>ウコギ。
大豆イソフラボン
プエラリア:乾燥粉末70mg/日
リグナン

【宝石療法】
<1>[ブラウンジャスパー]
<2>[クリスタル]

【漢方薬】(更年期障害)
■茵蔯蒿湯
■温経湯
■温清飲
■温胆湯
■黄連解毒湯
■黄連湯
■加味帰脾湯
■加味四物湯[4]
■加味逍遥散   
■甘麦大棗湯
■帰脾湯
■九味檳榔湯
■桂枝加竜骨牡蠣湯
■桂枝茯苓丸
■香蘇散
■五積散
■黒帰脾湯
■芩心丸
■柴胡加竜骨牡蛎湯
■柴胡桂枝乾姜湯
■柴胡桂枝湯
■三黄瀉心湯
■三物黄芩湯
■四逆散
■四物湯
■子芩丸
■梔子豉湯
■七物降下湯
■小柴胡湯
■逍遥散
■清心蓮子飲
■竹茹温胆湯
■釣藤散
■通導散
■桃核承気湯
■当帰散[4]
■当帰芍薬加附子湯
■当帰芍薬散
■土瓜根散
■二仙湯(更年期高血圧)   
■女神散
■八味地黄丸
■半夏厚朴湯
■奔豚湯
■養心湯
■抑肝散加陳皮半夏
■抑肝散  
■苓甘姜味辛夏仁湯
■苓桂味甘湯

【西洋薬】
「フェミエスト」(ヤクルト):経皮吸収型。週に2回、下腹部に張る。
エストラジオール
■パッチ剤
「ヤクルト本社はホルモン剤事業をテコ入れする。使用時の利便性を高めたパッチ剤更年期障害治療薬の開発を進めるほか、現在販売中の更年期障害治療薬は骨粗鬆症治療薬として適応拡大を目指す。
新薬は腹部に張り付けて皮膚から女性ホルモンを吸収させるパッチ型の光健気衝外治療薬「コンビパッチ」。
この商品は卵胞ホルモンと黄体ホルモンという治療に必要な女性ホルモン2種をパッチ内に入れた製品。更年期障害は閉経前後の女性ホルモンの生成低下により、火照りや発汗などが慢性化する疾病。ホルモンの補給で症状を改善する。
同社は卵胞ホルモンのみのパッチ製品「フェミエスト」を販売中だが、使用時は別に黄体ホルモンを服用する必要があった。
欧米では更年期障害の患者のうち35~50%がホルモン療法を受けているが、乳ガン発症など副作用の懸念を背景に日本では2%にとどまっている。卵胞ホルモンと黄体ホルモンの2種を組み合わせた治療法で、副作用の発送をほぼ抑えられるとされる。」2002.7.5《日経産業新聞》
   



高アンモニア血症
(→「尿素サイクル異常症」)
⇒肝臓のアンモニア分解機能が低下し、血中のアンモニア濃度が上昇する症状。
◎アンモニアが脳に到達するとシビレなど神経障害を引き起こし、昏睡に至ることもある。

■乳児の肝臓病
2017/09/01
国立成育医療研究センター
ES細胞でPMDAに治療申請。
対象は、生まれつき肝臓でアンモニアを分解できない「高アンモニア血症」の赤ちゃん。
ES細胞から育てたアンモニアの分解機能を持つ肝細胞を、赤ちゃんのヘソの緒の血管から肝臓に注入する。
拒絶反応を抑える免疫抑制剤も使う。、





高インスリン血症
=新生児のインスリン値が高いと、胎盤からのブドウ糖の継続的供給が無くなり出生後1~2時間で、血中ブドウ糖が特徴的に急速に低下する。低血糖はブドウ糖水溶液の静脈内注入が不意に途絶えた場合にも起こる。

◎原因:
☆糖尿病母体の児(糖尿病のコントロールの程度に比例する)
☆重症胎児の赤芽球症
☆ベックウイズ-ウィードマン症候群(巨舌、臍帯ヘルニア、低血糖が特徴)

【事例】
「KちゃんはH医大で高インスリン血症による低血糖症と診断され、生後20日目より本剤の治療を受けています。本剤は血糖を下げる膵臓より分泌されているインスリンというホルモンの分泌を抑制する薬です。
高インスリン血症に対して、口から飲んで有効な唯一の薬で、30年程度前から欧米を中心に使われています。
低血糖はグルコースを唯一の栄養源とする脳にとって致命的な病気で、新生児に低血糖が続くと50%の方に後遺症が残ると言われています。
Kちゃんも、すでに身体を後ろにそったり、手足をピクピクさせたり、脳の精密検査で強い異常が確認されています。
今後、血糖をうまくコントロールして乳児が持っている回復力に期待しています。そのため、インスリン分泌を抑える必要があり、本剤は唯一の経口薬です。本剤の効かない高インスリン血症もありますが、幸いにも、Kちゃんは
使用前(血糖[7mg/dl]、IRI[40.9μU/ml]、IRI/血糖[5.84])
服薬開始して(血糖[126mg/dl]、IRI[6.6μU/ml]、IRI/血糖[0.05])
と著明な効果を示しています。ただ副作用として、多毛・高尿酸血症が少し出ています。そのため使用量を開始時の5mg/Kgより2.8mg/Kgに減量しています。」


高カリウム血症
   =「高K血症」
血清カリウム濃度が5.5mEq/L(血漿カリウム濃度5.0)以上。
「全身のカリウム貯蔵の過剰またはカリウムの細胞外への移動が異常になって生じる。」

◎症状:
弛緩性マヒを起こすことがある。
心電図に以下の反応:
<1>慢性腎炎などでK排泄低下が起きるとT波の増高、先鋭化が見られ、テント型T波となる。
<2>さらに高くなると、P波の消失、QRS幅の拡大などが見られる。

【西洋医学】
(1)Calicol 10~20‹  静注。 2~3分で
(2)7%または8.4%Meylon 40  静注‹ 5分以上かける。
(3)Insulin(regular)またはHumalin R10単位+10%Glucose500‹ 1時間以上
(4)KayexatateまたはKalimete50g+30%Sorbitol 200‹。注腸。
(5)血液透析または腹膜透析


高カルシウム血症
  (参照→検査:カルシウム)
=「高Ca血症」
◎症状:
*食欲不振
*吐き気
*不眠
*めまい
*軽度の血圧上昇
*かゆみ
*発疹

原因:

腫瘍細胞から分泌されるサイトカインである[PTHrP]、インターロイキン-Ⅰなどの骨吸収刺激因子が骨芽細胞を刺激し、刺激された骨芽細胞からさらに破骨細胞が骨吸収を促進する。

◎悪性腫瘍では高頻度に高Ca血症を併発する。
◎悪性腫瘍による高Ca血症=MAHC
◎心電図:QTの短縮が著明となる。

【西洋薬】
「ゾメタ」(ノバルティス)

【西洋医学】
◎Ca>14~15mg/Œで症状の顕著なとき、以下の治療を行う。
(1)生理食塩水500‹  1~3時間ごとに
さらにLasix20mg静注 を適宜追加する。
(2)Elcitonin 1回80単位 筋注  2回/日
(3)水溶性Predonine 1回30mg 1回/日  静注。


高ナトリウム血症hypernatremia
=血中のナトリウム濃度の過剰。
【西洋医学】
◎治療:Solita T3 または5%glucose500‹
「高張性脱水の場合は、低張性輸液が主体となる。不足水分量は次の式で推定出来る。
不足水分量=健常時の体重×0.6×(1-健常時のHt/現在のHt)
Htの代わりにNa濃度でもよい。

■免疫異常が
「2010年、自然科学研究機構・基礎生物学研究所の野田昌晴教授、檜山武史助教と東海大学の共同グループは、血液中のナトリウム濃度が高くなってケイレンや意識障害などの症状を起こす「本態性高ナトリウム血症」の発症メカニズムの一端を解明した。
細胞の外のナトリウム濃度の上昇を検知する脳細胞膜のセンサーを、自身の体内の抗体が攻撃してしまう免疫異常が関与していることが分かった。
成果は米科学誌ニューロンに発表
人間の血中ナトリウム濃度は一定レベルに保たれる必要がある、
研究グループは、脳に明確な異常が見つからないにもかかわらず本態性高ナトリウム血症になった6歳の患者を分析。この患者は副腎に腫瘍ができて、脳細胞膜で細胞外のナトリウム濃度上昇を検知するセンサーの役割を果たすタンパク質に対する抗体ができる自己免疫疾患を起こしていた。
このため、センサーやタンパク質を発現している脳の細胞自体が死滅し、そのためにバソプレッシン分泌抑制などがうまくいかなくなり、症状につながっていたと考えられる。



高血圧症 
   hypertension


ACE阻害薬  70年代
アマゾンの毒蛇から見つかった
ヤノマミ族 アフリカアララカヘビ
半分以上が治る・・・昔からあった薬



運動で:
①スロージョギング
アゴを下げて、口を開けて、笑顔で、おしゃべりしながら、腕は振らない、歩幅は小さく
利尿効果、塩分の排泄に、血管をやわらかくする

② 20cmの台を上り下りする
台の上で膝をまっすぐ伸ばす。ニコニコ笑顔で、歌をうたいながら、ゆっくり


   ⇒「声なき殺人者」。
     「高血圧症は脳卒中や心臓病など致命的な合併症を起こす怖い病気。日本人の     患者は2000万人と推定され、そのうち原因が明確でない本態性高血圧が95%     を占める。」

◎子供の高血圧
│子供の高血圧の判定基準│最高血圧 │最低血圧 │
│ 小学校低学年 │120以上│70以上 │
│ 小学校高学年 │130以上│80以上 │
│ 中学校男子 │140以上│ 85以上 │
│ 中学校女子 │135以上│ 80以上 │
│ 高校生(男女) │140以上│ 85以上 │
「高血圧は大人の病気と思っている人も多いカモ知れないが、子供で発病するケースも少なくない。子供の頃から、こまめに血圧を測り注意する必要がある。
●大人と子供の違いは?
高血圧には原因が分からない本態性高血圧と内臓などの病気が原因の二次性高血圧があります。大人で薬物療法が必要な人の大半が本態性高血圧ですが、子供で降圧剤の治療がすぐ必要なのは9割り以上が二次性高血圧です。二次性高血圧を放置すると高血圧性脳症になって激しいケイレンが起き、血液が十分行き渡らないため意識障害に陥ります。心不全や腎不全になることもあります。
子供に本態性高血圧が少ないわけではありません。小中学校で健診すると、0.1%~1%が本態性高血圧です。全国で数万人の子供がいると推定されます。血圧が測る機会がないので、自分が高血圧だと知らないで過ごしている子供が多いのが現実です。
●子供の本態性高血圧は?
子供の本態性高血圧は症状が軽いので、降圧剤を使った治療をすぐに始める必要はほとんどありません。ただ、高血圧は動脈硬化の危険因子で、子供の頃に高血圧だと大人になっても高血圧になりやすいです。血圧が高い人は生活習慣を改めて欲しい。
血圧が高めならサッカーや野球など全身を動かす習慣を身につけると良いでしょう。柔道や相撲などは血圧が上がりやすいので、高血圧の子供には適さないと考えられています。食事は塩分を制限してカリウムの多い野菜や果物・海草を多く摂取します。肥満なら減量することです。
●二次性高血圧には?
8割近くが腎臓に関係する腎性高血圧です。その中で一番多いのは尿路感染症に関係した瘢痕化腎で、糸球体腎炎や腎血管性疾患がこれに続きます。瘢痕化腎は根本的な治療法はありませんが、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬を使えば血圧は下がります。腎動脈が細くなる腎血管性高血圧では、管を入れて風船を膨らませて腎動脈を広げるバルーン療法があります。
●子供の高血圧の早期発見は?
最高血圧が150~200と高い二次性高血圧の子供だけを調査したしたところ、一番多い症状は頭痛でした。ただ頭痛を訴えるのは全体の30%程度で、高血圧を疑わせる症状が非常に少ない。血圧健検診でチェックするしかないでしょう。
●どんな子供が高血圧になりやすいのですか?
肥満や高血圧の家系の子供です。普通の子供は0.1%~1%が本態性高血圧と説明しましたが、肥満の子供の場合は5%が高血圧です。高血圧の家系の子供は細胞中にあるナトリウムをくみ出すポンプの数が少なくポンプの働きも落ちており、細胞内のナトリウム濃度が高い。カルシウムも細胞内で多くなり血管がケイレンし血圧が上がります。
細菌、妊娠週数の割りに小さく生まれた子供ほど将来、高血圧や心筋梗塞になりやすいとの報告が発表されました。3歳児の血圧検診時の体重と出産時の体重をしらべると、小さく生まれて大きく育った子供ほど血圧が高かったのです。胎児期に栄養が不十分だた、腎臓で尿を作るネフロンという構造が減り、食塩感受性高血圧になりやすいと言われています」(内山聖・新潟大学大学院教授)2002.8.13《日本経済新聞》

腎臓と高血圧
「腎臓は細胞外液量を決定する最も重要なイオンであるNa・Clの排泄を調節する器官であり、さらに昇圧物質(レニン)、降圧物質(カリクレイン・プロスタグランジン)を産生し、また腎細動脈が血圧調節の抵抗血管として極めて重要です。」

<1>レニン・アンギオテンシン:→『腎血管性高血圧』
[レニン]腎糸球体輸入細動脈にあるJG(juxtaglomerular)細胞で産生される
*(肝臓で出来るアンギオテンシノーゲンで)
 [アンギオテンシンⅠ]
*(肺にあるアンギオテンシン変換酵素で)
 [アンギオテンシンⅡ]:
①血管平滑筋に作用し収縮させ、血圧を上昇させる。
②副腎皮質に作用しアルドステロン分泌を刺激し、尿細管でのNaの再吸収増加、細胞外液量を増やす。
③直接腎に作用し、糸球体濾過の調節および近位尿細管でのNaの再吸収を調節する。

<2>NaClの排泄障害:→『慢性腎不全』
NaClは腎で排泄されが、この障害で細胞外液量が増加し、さらに血管平滑筋のNa含有量が増えることで末梢血管抵抗性が亢進し、高血圧が発症する。
<3>降圧物質が減少:
降圧物質=プロスタグランジン、カリクレイン
腎実質性の障害が進行して降圧物質の産生が不十分となり発症する。

【時間医学】
「高血圧患者の血圧は昼間は高くても、夜間、休んでいる時には正常になる人が多いのが普通ですが、お年寄りの約40%が、本来は正常値になっているはずの就眠中に血圧が上昇していることが分かってきました」(田村康二著「病気の時刻表」p21)

■脳や心臓に近い血圧
現在、便宜的に幅広く利用されている腕で測る血圧は、心臓付近の大動脈での血圧を必ずしも正確に反映していない。ブライアン・ウィリアムズ教授が率いる英レスター大学のグループはシンガポールのヘルススタッツ・インターナショナルと共同で既存の血圧測定法よりの正確に血圧を読み取れる装置を開発した。
手首にセンサーをつけて脈波を記録し、脈波に関する数学的モデルを用いて「中心大動脈収縮血圧」と呼ぶ心臓近くの血圧を測る。
20118/25www.leicester.ac.uk
http://www2.le.ac.uk/

■体内時計と高血圧
「2009年、不規則な生活は高血圧を招く!。日常の生活リズムの乱れが小浮悦圧を引き起こすメカニズムを京都大学の岡村均教授らのグループが解明。
成果は12/14のネイチャーメディシン(電子版)に発表。
遺伝子組み換え技術で体内時計が働かないマウスを作り、塩分の多い食事を与えた。すると体内に食塩と水を溜め込むホルモンを作る『Hsd3b6』という酵素の活動が活発になり、血圧上昇ホルモンが過剰に働くようになった。その結果、食塩を排出できずに高血圧が引き起こされていることが分かった。
また、この血圧上昇ホルモンの働きを抑える降圧剤を使うと、マウスの血圧が下がることも確認した。」
   ■1978年、WHOによれば、
<1>水銀柱で
  1.最高血圧160以上、
 2.最低血圧95以上のどちらかに当てはまれば「高血圧」。
<2>最高139以下、最低89以下の両方が当てはまれば「正常血圧」。
<3>最高、最低のどちからが2つの基準の間にあるのが「境界域高血圧」。
   ◎1984年、米国高血圧合同委員会による分類:
     正常血圧------------------------拡張期血圧:<85
     収縮期血圧:<140
     高値正常血圧------------------拡張期血圧:85~89
     軽症高血圧---------------------拡張期血圧:90~104
     中等症高血圧------------------拡張期血圧:105~114
     重症高血圧---------------------拡張期血圧:≧115
境界型収縮期高血圧---------拡張期血圧:<90 and
収縮期血圧:140~159 
     収縮期高血圧------------------収縮期血圧:≧160
■1999年、正常値、低めに改訂 (WHO)
「静かなる殺し屋、高血圧。自覚症状がないまま、動脈硬化を進行させの脳卒中や心筋梗塞など命に関わる病気を起こすから、そう呼ばれる。今年、世界保健機構(WHO)と国際高血圧学会は合同で、高血圧の人の治療方針を決めるガイドラインを6年ぶりに改訂し、正常血圧を前より低めに設定した。血圧が低ければ低いほど脳卒中や心筋梗塞で死亡するリクスがより低くなるからだ。
大阪市の内の会社員Aさん(45)は、毎日1回、勤め先の健康相談室で血圧測定器に腕を入れる。開始のボタンを押す、締め付けられた上腕部がゆるむと、数字入りの白い紙が出てくる。“140-90また高くなったなあ”。2年前の健康診断で高血圧を指摘されて以来、血圧測定が日課だ。努力すれば数値は下がり、さぼれば上がる。測定で努力が実感できる。
2つの数字の大きい数字は、心臓が縮んで送り出されたときの血液の圧力で収縮期血圧と呼ばれ、血圧としては最大の値だ。小さい方は拡張期血圧で、最低の値だ。
高血圧の原因として、慢性腎炎など腎臓の病気や甲状腺などの内分泌の病気、心臓や血管の病気などが分かる場合もある。しかし大部分は原因となるはっきりした病気はない『本態性高血圧』というタイプだ。
高血圧の状態と治療を定める標準として、世界保健機構(WHO)と国際高血圧学会は合同で、『高血圧管理のガイドライン』を作っている。
1999年の改訂版によると、正常とされる血圧は、最高血圧130未満で最低血圧85未満だ。これより低い最高血圧120未満で最低血圧80未満が理想的な血圧だ。改訂前は正常血圧が最高血圧140未満で最低血圧90未満だった。旧基準と新基準の間は、高血圧とは言えないが病気のリスクが正常より高い『正常高値』とされた。
正常値が低くなったのは、血圧が低いほど脳卒中や動脈硬化になる率がより低いことが世界各地の調査ではっきりしてきたからだ。WHOは、中年の高血圧患者が最低血圧を長期にわたり5ポイント低下出来れば、脳卒中のリスクは35~40%減るという。
『最高血圧140以上』と『最低血圧90以上』のどちらか一方の条件が当てはまれば高血圧だ。こういう人は日本に2000万人以上とされている。
「血圧を下げる目標が厳しい設定に見えるかもしれませんが、世界的には出来るだけ低い血圧を目標にするようになってきています」とガイドラインづくりに参加した荒川規矩男・福岡大教授は話す。
高血圧の問題は動脈硬化を引き起こすことだ、血管・特に圧力が高い動脈が長期間高血圧にさらされると、硬くなりやすくなる。それが進むと、血管がもろくなり、脳出血を起こすこともある。血が固まりやすくなって血栓を作り脳梗塞を起こすこともある。心臓に栄養を送り込む冠状動脈で硬化が起これば心筋梗塞の危険が高くなる。病気が起こるまでは何の自覚症状もないのに、死に直結する病気のリスクが高まる。
高血圧のほかにも動脈硬化を起こしやすい危険因子がある。高血圧に加え、そういう因子を持つ人はより注意が必要だ。
新ガイドラインは、高齢・心臓血管系の病気の経験・腎臓病・糖尿病・喫煙習慣・肥満・コレステロール値などの危険因子の数と、血圧の値を組み合わせて、リスクを[低][中等][高][超高]に分けた。例えば危険因子が3つあれば140以上159以下の軽症高血圧でも、[高リスク]。リスクの大きさによって薬物療法の開始時期などが異なる。
“血圧の値だけでなく他の危険因子があるか、その程度は、などを調べて治療方針を立てることが大切”と荻原俊男・大阪大教授は話す。」1999.5.23《朝日新聞》
【高血圧症の種類】
     本態性高血圧症:
       「腎疾患などの血圧を亢進させる(二次性)原因疾患がなく、高血圧を呈       するようになったもの。」
     二次性高血圧症(病因)
       <1>腎性高血圧:
          (a)腎実質性高血圧:
             ①急性糸球体腎炎
             ②慢性腎炎
             ③嚢胞腎
④糖尿病性腎症
      ⑤水腎症
⑥腎盂腎炎
(b)腎血管性高血圧:
             ①動脈炎
②血栓
      ③動脈瘤
④アテローム硬化
⑤線維筋性過形成
          (c)レニン産生腫瘍:
       <2>内分泌性高血圧:
          (a)副腎:
             ①クッシング(Cushing)症候群
             ②アルドステロン症
③褐色細胞腫
          (b)甲状腺:
             ①甲状腺機能亢進症
             ②甲状腺機能低下症
          (c)末端肥大症
       <3>心・血管系高血圧:
          (a)大動脈弁閉鎖不全症
          (b)動脈硬化
          (c)大動脈縮窄
          (d)動脈炎
          (e)動静脈瘻
       <4>神経性高血圧:
          (a)脳圧亢進:
             ①脳出血
②脳腫瘍
③脳炎
          (b)脳幹障害
   ◎症状:(寺師陸睦宗著「成人病の漢方療法」p6~参照)
     <1>脳の症状: ①頭痛・頭重
            ②不眠
            ③耳鳴り
            ④肩こり
            ⑤めまい
            ⑥不安感
            ⑦物忘れ・注意散漫
            ⑧手足のシビレ感
<2>心臓の症状 :①心臓肥大
             ②息切れ
             ③脈結滞
             ④動悸
             ⑤心臓部の圧迫感・苦悶感
     <3>腎臓の症状 :①タンパク尿
             ②夜間多尿
             ③下肢の浮腫
     <4>眼の症状 :①眼底出血
            ②視力障害 
   ■なぜ、塩で高血圧になる?
「何となく、高血圧と塩が関係ありそう、と思っていても、その理由まで知らないのでは?
魚や野菜に塩をまぶすと、なかの水分が引き出されるのはご存じだろう。塩には水を吸い寄せる性質があるからだ。鯛のなかでも同じことが起きる。血液中の塩が多いと、血管の細胞が膨張し、血管が狭くなり、その結果血圧が下がるのだ。
さらに、血液中のナトリウム量が多くなると、それを監視している脳から指令が出て、のどの渇きを覚えるはずだ。そこで水を飲むと、その水分で血液の量が増える。大量の血液を体中に送り出すために、心臓が激しく鼓動する必要があり、これも血圧上昇の原因となる。加えてナトリウムが交感神経やホルモンを介し、血管を収縮させ、血圧はますます上がる。」(NHKためしてガッテン)
■カリウム摂取
「日本では心臓が収縮して血液を送り出した時の最高血圧が130未満、心臓が拡張した時の最低血圧を85未満が正常域と見る医師が多く。4人に1人が血が高いことになる。
10年ほど前から、食塩と血圧との関係には個人差があることが知られるようになってきた。食塩を摂取すると血圧が高くなる人(食塩感受性)と、必ずしもそうでない人(食塩非感受性)がいることが分かってきた。
その理由の1つに、遺伝子の違いでナトリウムを体外(尿中)へ排出する能力に差があることが分かってきた。
ナトリウムに代わって指摘されているのがカリウム摂取の重要性だ。東京大学の藤田敏郎教授は、高血圧予防に対するカリウムの役割に注目している。
世界にはオーストラリア先住民やニューギニア高地人のように食塩の摂取量が少ない民族がいる。
その1つ、ブラジルのアマゾン川奥地にすむヤノマモ族が1日に摂る食塩の量は0.5~1gで、日本人の約12gに比べて著しく低い。
ヤノマモ族には高血圧がほとんど見られない。食塩が少ないからだと単純に考えがちだが、藤田さんらが目を付けたのは彼らのカリウム摂取量だ。米国人と比較すると、ナトリウムの摂取量は1/10にすぎないが、カリウム摂取量は3倍も多かった。
また、食塩を摂ると血圧が上がりやすい高血圧の患者にカリウムを補給しながら食塩を与えると、カリウムを摂らない人に比べて最高・最低血圧が両方とも抑えられたと言う。
藤田さんはマグネシウムも血圧上昇抑制には有効。日本では食塩摂取量はなかなか減らないが、その理由の1つに加工食品の普及があるのではないか」と見ている。2000.4.24《日本経済新聞》
■アニマルセラピー
「米バファロー大学の研究グループは、高血圧の人が犬やネコなど身近な動物と触れ合うと、市販の薬を上回る血圧改善効果が得られることを発見した。動物とのつき合いを通じて情緒を安定させ、身体機能を回復させる「アニマルセラピー」に医学的効果を示すデータとして注目を集めそうだ。
48人の高血圧患者を2組に分け、片方の組だけ半年間、犬やネコなどペットと過ごさせた。両方の組にACE阻害剤と呼ぶ血圧硬化剤を投与しストレス試験をしたところ、ペットを飼っていない組は平均で血圧が18ミリ水銀柱上がったのに対し、ペットと過ごした組はその半分程度にとどまったという。」1999.11.30《日経産業新聞》
   

■高血圧体質と遺伝子
「病院など医療機関から業務の一部を受託する臨床検査会社が遺伝子検査分野に相次いで進出している。
エスアールエルと三菱化学ピーシーエルは高血圧の体質を調べる遺伝子検査の受託事業を手掛けている。標的となるのは

<1>[アンジオテンシン変換酵素(ACE)]と呼ばれる血圧を調整するタンパク質だ。
ACEは肺や血管壁などに多く含まれ、昇圧や平滑筋増殖の作用を持つタンパク質を作り出す。つまりACEが血中に多いほど血圧が高い。病院で実施した調査でもACE の濃度が高くなる遺伝的素因を持つ患者ほど、心筋梗塞や狭心症など高血圧の合併症を起こす確率が高いとする報告がある。

<2>[eNOS]
血管の拡張を促す[一酸化窒素合成酵素(eNOS)]に着目した研究もある。東京女子医科大学の川名正敏講師は外来患者を調査した結果、(eNOS)の生産量が少ない遺伝子を持つ患者ほど高血圧になる確率が高かった。

<3>食塩感受性遺伝子
 さらに、食塩を体内に蓄積しやすい食塩感受性遺伝子の発見も報告されている。東京大学医学部の藤田敏郎教授らは食塩摂取で高血圧になるネズミを調べたところ、腎臓の細胞から食塩の蓄積を促していると見られる遺伝子を見いだした。

<4>アンジオテンシノーゲン遺伝子のタイプと減塩食の効果

①T/T型-

-減塩食が有効。心筋梗塞などのリスクが大きい。
人口に占める割合:日本人55% 米国人15%
②T/M型、M/M型-

-減塩食は不要
人口に占める割合:日本人45% 米国人85%
       1998.4.10《日経産業新聞》    
■高血圧の人は年取ってからボケやすい。
「《ジャーナル・オブ・アメリカン・メディカル・アソシエイション》誌1月号に掲載されたオランダのエラスムス大学医学部調査チームの報告によると“ 血圧が10ポイント上昇するたびに、脳内の認識能力が少なくとも7%縮小する”というものである。
通常、年齢が上昇すると、動脈硬化やコレステロールなどで血管が細くなり、血圧が上昇していく。もし若い年齢で血圧が高く、そのまま放っておくとすれば、それだけ認識能力が損なわれ、年を重ねるごとに記憶がなくなっていく度合いが強くなる。Quark1996.3 NO165 P30」
   

■水中運動は血圧に注意
「プールの中で体を動かす運動は、ひざや心臓への負担が少ない利点もあるが、高齢者の場合、血圧はやや高くなりがち。変化に十分注意してほしい」と、川崎医療福祉大(岡山県倉敷市)の小野寺昇教授(健康体育学)が呼びかけている。
血管が水圧を受けると静脈の流れが良くなるので、水中では一般に血圧は下がると考えられてきた。
ところが、22歳前後、38歳前後、55歳前後の3つのグループに水中と陸上で同じ運動をしてもらい、血圧の変化を調べたら意外な結果が出た。
22歳グループ・・・水中の方が血圧が低かった。
38歳グループ・・・陸上と変わらず。
55歳グループ・・・水中の方が血圧が高かった。
「血管が老化で硬くなっていることと関係があるようだ」と小野寺さん。一方、心拍数は3グループとも水中の方が低く、心臓への負担が少ないことが確かめられたという。1996.7.28《朝日新聞》」

■風呂に注意
「熱い風呂に入ると、β-エンドルフィンが分泌され快感である。ところが、42℃の湯に入ると、血圧が激しく上下してしまう。血管が弱っている人や血圧の調節がうまく出来ない人の血圧が激しく変化すると、脳出血や脳梗塞・心筋梗塞の危険がある。」
●ゆるくても長風呂は危険
風呂が危険になるのは、いくつかの理由がある。まず、汗をかくため、血液がドロドロになり、流れにくくなる。さらに平熱での血小板はスムーズに流れやすい形だが、体温が2℃上がるとその一部が偽足というイガイガを出し、血管壁に付着しやすくなるのだ。さらにいつもは血液中にある血小板の塊を溶かす物質が、体温が上がると少なくなるという。
もし偽足を出した血小板同士が塊を作り、しかもそれを溶かす物質が少ないとすれば、血管はいつ詰まっても不思議ではない。深部体温が2℃上がるのは非常に危険な状態なのだ。
そこで健康な3人の若者が温度の違う湯に入浴し、これ以上入っていたくないというまで我慢してもらったところ、熱い風呂では1℃前後しか上がら無かった深部体温が、ぬるめの長風呂では危険な2℃以上も上がってっしまうのだ。
湯がぬるいと体が暖まるまでと考え、どうしても長風呂になりがちだ。逆に熱い風呂だと、長く入っていられないため、深部体温が女うっっしょうする前に出てしまうということになる。

(NHKためしてガッテン)

■血圧を下げる新物質
「高血圧の治療に現在使われてる降圧剤とは違った仕組みで血圧を下げる新しい化合物を成宮周・京都大学医学部教授(薬理学)らと吉富製薬の研究グループが確認、10.30発行の英科学誌ネイチャーで発表した。
血管の太さは、血管を取り巻く平滑筋が収縮したり緩んだりして変化する。緩ませると血管が太くなって血圧が下がる。新しい化合物(Y27632)は、吉富製薬が平滑筋を緩ませる化合物を探すうちに見つけた。
牛の血管を使ってこの化合物に結合する物資を分離したところ、p160ROCKと呼ばれるタンパク質だった。このタンパク質は細胞の中で平滑筋を収縮させる信号を伝える役目もを持っていることが成宮教授の従来の研究で分かっていた。Y27632がこのタンパク質を結合することで、信号の伝達を妨げるため、平滑筋を収縮させる信号が伝わらなくなり、平滑筋を緩ませることが分かった。
生まれつき高血圧になる系統のネズミにY27632を飲ませたところ約3時間後には血圧がほぼ正常にまで下がった。正常な血圧のネズミでは血圧がほとんど下がらず、高血圧に効くことが分かった。1998.11.21《朝日新聞》
 
■糖尿病患者の高血圧
 「米国立衛生研究所(NIH)は、高齢の糖尿病患者の血圧を利尿剤で下がることにより、脳卒中や心筋梗塞などの心臓血管系疾患の危険を約1/3に減らせるとの研究結果をまとめた。
  60歳以上の高血圧患者、約5000人を2群に分け、一方に利尿剤を他方に偽薬を投与して4年半にわたって追跡調査したところ、利尿剤の投与群では心臓血管系疾患にかかる割合が大幅に低く、特に糖尿病患者で差が大きかった。米国では糖尿病患者の死因の3/4を心臓病が占めている。1996.12.25《日経産業新聞》

■ニコニコペースで運動を
「血圧の高いあなた。薬を飲み始める前に、生活を変えてみませんか。劇的に血圧が下がるかもしれません。生活習慣病と呼ばれる高血圧の治療には生活の見直しと改善が欠かせないのです。
運動をして体重を減らしましょう。肥満の解消が高血圧の改善に効きます。肥満度の指標としてボディ・マス・インデックス(BMI)がある。体重(kg)を身長(m)の2乗で割った数字で、22が目標。これより大きい人は1ヶ月に0.5~1kgのペースで目標値を目指せばいい。体重の記録は、起床後、排尿してから測ると安定している。
節酒は血圧を下げるだけでなく、減量にも役立ちます。食事の塩分も減らしましょう。最初は味がないと感じても、たいていの人は慣れます。毎日、ほんの少しずつ努力をすることが大切です。孤独な闘いがつらい人は、周囲の人に協力してもらいましょう。
大阪市の会社員Kさん(45)は2年前の健康診断で最高血圧が170台と分かった。中等症の高血圧だ。当時、体重は78kg、お酒は毎日。医師は“薬もありますが、努力で下がるかも知れません。まず体重を減らす。そのためにはお酒を止めること”
そこで、1ヶ月ほど禁酒。再び飲むようになってからも、週に2回程度で量も減らした。半年後にはベルトの穴が2つ縮まり、体重も8kg減。血圧は120まで下がった。
世界保健機構(WHO)は誰でもできる高血圧対策として、禁煙・体重減少・節酒・塩分制限・バランスのとれた食事・運動・ストレス減らしを勧めている。
しかし、長年の習慣を変えるのはなかなか難しい。長年、高血圧の人を見てきた鐘淵科学工業の保健婦・奥田智子さんは“習慣を変えることは、人生観を変えるようなものですからね”と話す。
そこで、上島弘嗣・滋賀医大教授らは、医師や保健婦が行う生活指導の内容を、出来るだけ具体的にするように工夫している。
たとえば、お酒は日本酒なら1日に1合、ビールなら大瓶1本まで。のどが渇いてビールが飲みたくても麦茶を・アルコール用のグラスを小さいものに替えよう。
減塩の方法は、料理を薄味にする、インスタント食品、漬け物や梅干しは減らす、麺類のつゆは残す。1日の食塩摂取量は、日本人の平均摂取量でである13gの約半分、6gを目標に。さらに、高血圧予防に効くカリウムを多く含むホウレンソウやバナナを摂るようにする。
毎日、食事内容や運動の記録をつけ、時折医師と面談する。自分で記録を付けると続きやすいという。
最高血圧が150台だったMさん(38歳)は、このアドバイスにそって生活し、とくに万歩計をつけて歩くことを心掛けた。15階にある会社には、10階でエレベーターを降りて5階分を歩く。早起きして近所を散歩。お酒を飲まない日を作る。そして生活記録で点検。2ヶ月後に124まで下がった。
本当に効果があるのかと山椒は半信半疑でしたが、違うものですね」とMさん。
「日本人はせっかちだから、何かをしてすぐ下がらないと、薬に頼る。しかし血圧を下げる薬はあるが、高血圧を根本的に治す訳ではない。生活習慣を替えることが重要」と荒川規矩男・福岡大教授は強調する。
とくに荒川教授がすすめるのは軽目の運動だ。「少し早足でうっすら汗をかく程度のウォーキングがちょうどいい。苦しくなる運動はかえって悪い。私はニコニコペースの運動といっています」
目安は脈拍数だ。5分間一定のペースで歩いた後、15秒間の脈拍数を数える。その値が「32から、年齢を8で割った数を引いた数」になればいい。
こういう運動を1日30~60分して、それを週に3~6回。合計の運動時間が180分を超すようにする。慣れると、同じ脈拍数でももっと早く歩くことが出来る。」1999.5.30《朝日新聞》

■生活改善で投薬中止も
「塩分の取りすぎ」と指摘された東京・荒川区の食堂経営者竹友唯夫さん(70)。昨年10月、降圧剤を止める代わりに、1日18g以上摂取していた塩分を7gに抑える減塩を始めた。
「茶がゆ」(塩を入れたほうじ茶で炊いた粥)の食塩をぐっと減らし、おかずも薄味にしなければならなかった。
「夫の好物なので、言われるままに塩をたくさん茶がゆに入れていた」と反省した妻のトシさん(64)も、塩分の計算をしながらの料理に取り組んだ。
お新香や塩ジャケは厳禁。醤油は減塩用に変え、料理の方を小皿にとった醤油に少しつけることで量を抑え、冷や奴には酢をかけた。食べ応えがないが、仕方がない。
塩分量は尿による試験紙で毎日、チェックもした。「7gを守るのは大変。油断すれば、すぐ超えてしまう」と竹友さん。ウドンやパンなど通常塩味を感じさせない食品にも塩分が含まれているからだ。
しかし、減塩開始からわずか3、4日で効果が出た。それまで最大180、最小110だった血圧が、130台、80台へとそれぞれ激減。さらにゆるやかに減少傾向を見せた。
ところが、落ち着いていた血圧が数日に1回、140~150台に跳ね上がることがある。
不審に思って主治医の東京女子医大第2病院内科講師の渡辺尚彦さん(46)が尋ねると、「刺身に醤油をつけるとうまくて、つい」白状。減塩に耐えきれず、時折、おかずにたっぷり醤油をつけたり、食塩をなめていたのだ。
禁煙と同様、減塩も続けるのは難しい。「が、きちんと減塩しないと元の食生活に戻りかねない」と懸念した渡辺さんは、“ショック療法”として、徹底的に塩分を取らない生活を提案。2週間にわたり、さらに過酷な1日4gを指示した。
4gとなると、塩分はほとんど取らない覚悟が必要だ。茶がゆに全く塩を入れない。
「こりゃダメや」と挫折しかけたが、試験紙で4g以下と確認することを励みに頑張った。渡辺さんも昼食時や帰宅時に竹友さんのお店に顔を出しては「調子は?」と“監視”した。
この効果で血圧は最大100台、最小60台で、しっかり安定。それ以降、7gの減塩生活を続けている。
「よく患者から『降圧薬は一生飲まねばならないか』と質問されるが、竹友さんのように生活改善で、投薬量を減らしたり、中止できる人もいる」
こう話す渡辺さんは血圧低下の7カ条を説く。

【血圧低下の7カ条】
「け」:決してタバコは吸いません。
「つ」:強い血管を作りましょう。
     (タンパク質やカルシウムを多めに)
「あ」:熱い風呂には入りません。寒い思いはいたしません。
(42℃以上での入浴は血圧を上げる。冬はトイレを暖かく、寒いと排泄時に血圧が上がる)
「つ」:常に気分をリラックス(ストレスは血圧を上げる)
「て」:適度な塩分、たっぷり野菜。
「い」:いつでも歩いて出かけましょう。
「か」:快眠、快便、腹8分。
見事に高血圧を克服した竹友さんは最近、同世代が脳卒中を起こした知らせをよく聞く。そんなとき、以前の茶がゆの塩分量を思い出してゾッとする。
「減塩しなければ、今頃自分も脳卒中になっていたかもしれない」----と。

■減塩の効果は?
「高血圧の人20人に、苦しい減塩生活を耐えてもらったが、平均血圧が10%以上下がったのは8人。残りの12人の人は下がらなかった。では、減塩は必ずしも効果がないのだろうか?
確かに半数以上の人の血圧は下がらなかったが、ある被験者の1日の血圧変化を見て欲しい。注目は夜間の血圧が大きく下がっている点。高血圧のパターンのなかでも夜間に高くなるのは危険が大きい。高血圧の人の血管は傷んでいることが多いが、夜間には血圧が下がれば血管を休ませ、傷んだ部分を修復することも出来る。減塩の結果、夜間の血圧が下がることが多く、血管を休ませる意味でも効果は大きいのだ。
●塩に対する感受性があった
減塩しても、血圧が下がらない人がいたのは次の通りだ。
体に取り込まれた塩は血液や老廃物と一緒に、腎臓で処理される。腎臓では体を維持するのに必要な塩をより分けて体の戻し、他の老廃物を尿として排出する。この塩をより分ける能力が高い人と、低い人がいるらしい。前者を「食塩感受性あり」といい、余分な塩もどんどん体に取り込むため、血中の塩分が多くなり、その結果、血圧に影響してしまう。一方、能力の低い人は、塩を体から排出してしまう。つまり、減塩前も血中の塩分は多くなく、減塩しても血圧にはほとんど影響しなかったのだ。とはいえ、このタイプの人も塩を取りすぎていると、腎臓に負担がかかり、やがては塩が捨てられなくなる怖れがある。実際、食塩感受性の無かった人が、年月と共に「食塩感受性あり」に変わることも多いそうだ。(NHKためしてガッテン)
■飲むと血圧はどうなる?
「学生に酒を飲ませながら血圧を測定してみた。飲み始めは予想通り、グンと血圧が上がる。これはアセトアルデヒドが心臓の動悸を高めるからだ。ところが、1時間後、平常時より血圧が下がってしまったのである。アセトアルデヒドには、時間が経つと血管を拡張させる働きがあるからだ。飲んだとき、体がほてるのはこれが原因だ。この状態で温度が低い場所に出ると、驚いた血管が収縮し、血圧が急上昇。之は非常に危険で、脳卒中や心筋梗塞を引き起こしかねない。必ず、上着をはおって出よう。
なお、お酒と高血圧の関係はよく言われるが、少量を飲み続けている人の血圧は低いというデータもある。ただし、このデータは欧米人のものなので、そのまま日本人に当てはまるがどうかは微妙だ」(NHKためしてガッテン)

■飲酒は高カロリー
「高血圧の人にとって、肥満とアルコールは最も避けなければいけない食習慣です。これらの改善は、塩分制限よりも血圧を下げる効果が期待できるでしょう。カロリー制限・アルコール制限も併せて行うと、より効果は大きくなります。
ビール大ビン1本のアルコールは28gで、カロリーはご飯1杯強と同じぐらいです。アルコールを飲んだ後、お茶漬けや麺類を食べるのは、典型的な高カロリー、高塩食となり、高血圧の方には最もおすすめできない食事パターンです。」(広田孝子・辻学園栄養専門学校教授)

■漬け物に-GABA-添加
「フジッコは、血圧上昇抑制などの効果がある健康栄養成分「GABA」の生成法を開発したと発表した。特別な乳酸菌を使って発芽玄米や米ぬかを培養して生成する。」2002.5.30《日経産業新聞》

■食事療法
「健康診断で「血圧が高い」と言われたら、、まず食事を見直すことが治療の第一歩。心筋梗塞や脳卒中になるリスクを減らすためにも、「普段から食事に気を配ることが大切」と東京大学大学院の藤田敏郎教授はアドバイスする。
●食事療法を始める血圧値の目安は?
「高血圧の人のほか、最高血圧が130~140または最低血圧が85~90という正常ではあるものの高い値の人は将来、高血圧になる確率が高いので食事療法を始めた方がいいでしょう。
●具体的には
太っている人はカロリー制限することです、塩分摂取を減らして、カリウムやマグネシウムの多い野菜・果物・海産物・乳製品を摂ることも大切です」
●塩の摂取量は?
「高血圧の人は7g以下にするよう日本のガイドラインは求めています。
食塩の摂取量を減らすことは大変なことですが、両親のどちらかが高血圧の人や、肥満の人は56%以上の確率で高血圧になるので、減塩に是非取り組んでほしい。肥満で高血圧になっている人は、塩分を控えてカロリー制限すれば、7~8割が治ってしまいます。人にもよりますが、1日の摂取カロリーを1200~1400kcalに抑えると、高血圧は治ることが多い。」
●減塩しても効果が無い人もいると聞きましたが?
「塩をたくさん摂っても血圧が上がらない食塩非感受性の人は、別の原因で高血圧になっている可能性が高いので、減塩しても効果がありません。ただ、血圧を下げる薬を飲んでいる人は食塩非感受性の人でも減塩すれば薬の効きがよくなります。」
●カリウムはなぜ高血圧に効果があるのですか?
塩を腎臓から尿中に排出させる効果があるからです。高血圧の予防だけでなく、脳卒中を防ぐ効果もあるといわれています。ただ、高血圧の人の中には100人に1人の割合で腎臓の悪い人がいます。腎臓の悪い人がカリウムの多い食事をとると、高カリウム血症になり危険なので、病院などで腎臓に異常がないかどうかしらべてください。トウフや海産物などマグネシウムの多く含む食品をとることもお勧めします2002.7.16《日本経済新聞》

■高血圧性脳出血
「朝からどうも気分がすぐれない。」

「何となく普段の自分ではないように感じていた」
「仕事をはじめてしばらくしたら、突然飛行機で急降下したような感覚に襲われ、いすに座っていられなくなった。後のことは良く覚えていない。気が付いたらベッドの上で3日後だった


■高血圧を引き起こす有害因子:
<1>鉛
<2>タリウム
<3>二硫化炭素
<4>コーチゾン
<5>ニコチン
<6>エピネフリン
<7>麦角
<8>全身振動
<9>熱射病
<10>騒音
<11>カドミウム

■仮面高血圧
「都内在住のAさん(73)は、健康診断で上の血圧(収縮期)が160なので、1年前から降圧剤を飲み始めた。そのおかげで、140ぐらいまで落ち着いた。
しかし、心肥大が見つかったので、家庭用血圧計を使って自宅で朝夕の2回、血後を測ってみた。すると、降圧剤を飲む直前の朝は160~180ぐらいまで上昇していた。病院での測定では朝方の高血圧が見抜けなかった。
Aさんのように病院の検査では正常でも、自宅や職場で血圧を測ると高い数値になる状態を『仮面高血圧』という。
仮面高血圧の人は高血圧の治療をしている人に比べて心筋梗塞などの心血管疾患を起こす頻度が約3倍になるとの海外データもある。
東京都健康長寿医療センターでは、60才以上の男女134人を対象に24時間血圧測定を実施した。
 仮面高血圧であることが分かった・・・・・約2割。
 病院と24時間測定の両方で高血圧だった・・・2割
 普段は正常値だが病院で測ると高い(白衣高血圧)・・・3割
24時間血圧測定は、医師の指導に沿って病院などから専用装置を借りる。病院で測る血圧よりも脳卒中などのリスクを予測しやすい。
2009年1月、日本高血圧学会は、高血圧の治療ガイドラインを改訂した。これまで高齢者は多少高くてもかまわないとされていたが、上の血圧が140、下の血圧(拡張期)が90の手前でも、適度な運動や食事改善で血圧を下げるようにするのがよいと言うことになった。また、朝晩など自宅で測る血圧を重要視する様にもなった。
斉藤郁夫・慶應義塾大学保健管理センター所長は“血圧は若者でも高齢者でもとにかく低い方がいい”と強調する。」

■腎動脈狭窄症
「腎臓につながる血管の動脈硬化。腎臓に血液を起こりこむ血管に動脈硬化が生じて入り口が狭くなり高血圧を引き起こす。放っておくと腎臓が萎縮し、人工透析が必要になるケースもある。
動脈硬化は血管が曲がる場所で起きやすい。腎動脈もよくできる場所だ”(吉田雅幸・東京医科歯科大学教授)
腎臓の細い血管の集まりである糸球体に入る血液量が減るため、腎臓の細胞が“全身の血圧が下がったから血液量が減った”と勘違いし、レニンという物質を出し始める。すると全身の血圧が上がる。
レニンを阻害するように作用して血圧を下げる薬もあるが、腎臓に流れる血液量が減ったままでは腎臓は萎縮してしまう。そこで、狭窄部分にステントを入れ、狭くなった部分を押し広げる手術が注目されている。
狭心症や心筋梗塞などにステントはよく使われているが、腎動脈専用のステントも登場した。直径2mm未満と細く、脚のほかに腕の血管からも挿入できる。」

【芳香療法】
注意:以下の精油は使用不可です。
*セージ(Salvia oficinalis)
*ヒソップ(Hyssopus oficinalis)
*タイム(Thymus vulgaris)
*ローズマリー(Rosmarinus oficinalis)
 

以下の精油でマッサージします。
<1>ラベンダー
<2>マージョラム
<3>イランイラン

以下の精油を内服します。
<1>ガーリック
<2>フェンネル
<3>ジュニパー
<4>レモン

【色彩療法】
    <1>レモン色
    <2>紫色
    <3>赤紫色
    <4>藍色

【民間療法】
<1>クワ。
<2>タラノキ。
<3>ヨモギ。
<4>アオギリ・アカザ・アカマツ・アスナロ・イチイ・イワタバコ・ウツボグサ・ウラジロガシ・エンジュ・オオツズラフジ・カイコ・カキ・カギカズラ・カキドウシ・カワラヨモギ・キランソウ・クワ・シイタケ・ソクズ・ダイコンソウ・トウモロコシ・ドクダミ・ナズナ・ニワトコ・ニンニク・ヒトツバ・ボタン・マタタビ・ミゾソバ・ヤツデ・ヤブコウジ・ヤマゴボウ・ヤマモモ。
<5>[エビスグサ+ドクダミ]
[ブナハリタケ]

■ペプチド
「ペプチドには様々な働きを持つものがあるが、血圧上昇を抑えるペプチドにはイワシ・カツオ・牛乳など動物由来のものが多いが、日本新薬は酒粕から新たに抽出した。月桂冠と共同開発、1kg\15000」

■血管広げる作用
「カゴメ総合研究所は[山椒][月桂樹][柿葉]などに、血管を拡張し血圧を下げる効果があることを確認した。具体的に作用物質は特定できていないが、血管の内皮細胞に働くことで血管が広がるという。代表的な血管拡張剤(パパベリン)に比べても、山椒と月桂樹には強い拡張作用が認められた。
130種類の野菜類の凍結乾燥粉末を2時間、熱水に浸して抽出したものを試料とした。モルモットから摘出した血管を血管収縮物質を使ってあらかじめ収縮させておき、濃度1%の溶液を注入した時の変化を見た。
この結果、

山椒や月桂樹、柿葉、オクラ、茶などの拡張作用があるのが分かった。特に、山椒と月桂樹はパパベリンの9割程度の高い効果があった。

▽オクラと茶ではいったん収縮を示した後に、拡張作用が見られた。

血管拡張には、

①血管の平滑筋細胞が緩むよう直接働くタイプと、②まず内皮細胞に作用し、内皮から出た一酸化窒素の働きで平滑筋が緩む間接型の2つのタイプがある。
今回調べた山椒などは間接型だが、「どの物質が拡張作用をもたらしているのかはまだ分からない」と話しており、今後は物質の特定を急ぐ。2001.3.23《日経産業新聞》→「塩酸パパベリン」

【栄養療法】
<1>ビタミンC
<2>亜鉛
<3>機内食は予約の時に申し込めば、低カロリー食・減塩食・低コレステロール食が可能。追加料金は不要。
<4>γ-アミノ酪酸
  

【針灸】
<1>「腋窩横紋の端と肩胛棘とをつなぐ線の中点を沢田流臑兪とする。この臑兪穴は、先生(沢田健)が血圧の高低を触診される要穴である。この穴は鍼灸孔穴類聚によると、後廻旋上膊動脈・腋神経及び橈骨神経が分布しており、その主治は、発汗・熱病後の余熱・脳充血・肩及び肘の関節炎或いは四肢の神経麻痺を治するというのであるが、沢田先生はこの穴を診て血圧の高低を知ると同時に、之をその治穴として応用し、又後頭部の充血・不充血をも診知される。此の穴が凝っているときは、必ず後頭部が凝っているのであり、之に灸すればそれが取れるのである。“今の医者は血圧は測ることだけは出来るが、血圧の高いのを治すことは出来ぬ。すべてが此の調子で、理屈と実際がちっとも一致せぬ。そんな実際に役に立たぬような理屈の研究がいくら盛んになったって、何になるものですか。理屈などで物が解決つくものですか”と先生は云われた。」《沢田流聞書鍼灸眞髄》
<2>「天穴」《沢田流聞書鍼灸眞髄》
<3>足三里
  

【参考】
<1>肥満と塩分に注意。
<2>軽い運動は血圧を下げるが、激しい運動は血圧を上げる。
<3>アルコールは要注意:
日本酒2合(360cc)相当のアルコールを毎日飲み続けると血圧を上げる。

■正しい測定
「家庭で正しく血圧を測定する方法は「まず、上腕で測る血圧計を使ってください。手首や指で測る血圧計もありますが、今もところ、使ってはいけないことになっています。たとえば、手を下げて手首血圧計で測ると、心臓の位置で測ったときに比べて血圧値が20程度高くなってしまうからです。手首や指で測る血圧は上腕で測る血圧に比べて値が異なり、ばらつきます」
「血圧は朝と夜の測ります。朝は食前、起床後1時間以内に胚女御、座ってから1分~2分安静にして測定します。高血圧の薬を飲んでいる人は、薬を飲む前に測ることが重要です。薬効が持続しているかどうか捕らえることが出来るからです。夜は寝る前に測ってください」
「測定回数は朝、夜ともに1回で結構です。患者さんは複数回測定して医師には最も低い値を報告する傾向があるので、これを除くため、1回でもよいと言っているのです。複数回測るときは、全部医師に報告してください」2002.7.9《日本経済新聞》
■食塩1日7g以下(新指針)
「日本高血圧学会は、1日にとる食塩を7g以下とするなど、生活習慣の改善の具体例を挙げた「高血圧治療」ガイドライン2000年版」をまとめた。1990年に厚生省と日本医師会が「高血圧診療のてびき」を作っているものの、その後治療の考え方が大きく変わったからだ。
血圧が低ければ低いほど脳出血や心筋梗塞の危険率が低いという研究結果が相次ぎ、血圧の目標値は世界的に下がった。世界保健機関(WHO)が99年に出した指針は正常域を「最高血圧130未満かつ最低血圧85未満」としている。
高血圧学会のガイドラインはこの考え方を取り入れ、日本人を対象とした研究結果を盛り込んだ。生活習慣の改善が重要として実施しやすいよう具体的に示したのが特徴だ。
食塩量のほか、1日に飲むアルコールは、男性では日本酒なら1合以下とした。適正体重を維持し、コレステロールをとるのを控えることや運動、禁煙を勧めている。」20008.20《朝日新聞》
          
■配合剤
ベーリンガーは血圧降下剤に利尿剤を加えた配合剤の承認申請した。「ミカルディス」と利尿剤の「ヒドロクロロチアジド」の配合剤。

■副作用少ない新型降圧剤(ARB:アンジオテンシンⅡ受容体拮抗剤)
「降圧剤市場の国内勢力図が激変している。武田薬品工業や万有製薬の『アンジオンシンⅡ拮抗剤(ARB)』という副作用が少ない新タイプが台頭。他社もゾクゾクと同タイプの新薬を発売する計画だ。
『カルシウム拮抗剤』が低価格を武器に高いシェアを持っていたが、その差は縮小しつつある。



■新旧薬、死亡率に差無し
「米国立衛生研究所(NIH)の一部門である米国立心肺血液研究所(NHILB)は高血圧治療薬の比較臨床試験結果をまとめた。
古いタイプの利尿薬と新しいタイプの薬の治療効果を比較。心臓動脈疾患による死亡率や死亡に至らない心筋梗塞の発生率で差がなかった。
臨床試験開始は1994年。約42000人の患者を4群に分け、利尿薬クロルタリドンとカルシウム拮抗薬アムロジピン、ACE阻害薬リシノプリル、α遮断薬ドキサゾシンをそれぞれ投与、効果を調べた。
その結果、ドキサゾンは治療効果が低く試験を取りやめたが、他の3剤では主要指標に有意差がなかった。二次的指標ではACE阻害薬を投与した患者群の脳卒中の発生率が高かった。カルシウム拮抗薬で懸念されていた消化管出血やガン発生には差がなかった。
今回の結果を受け、東京大学の藤田敏郎教授は「古いタイプの利尿薬でも治療効果は高く、薬価も安い。もっと使われるべき」と指摘している。2002.12.20《日経産業新聞》
■二次性高血圧
「東京都に住むKさん(40)は2003年4月、急に激しい頭痛や動悸に襲われ、近所の診療所に行った。血圧が高く、降圧剤を飲み始めたがなかなか下がらない。Kさんは肥満体質でもなく、これまでどちらかというと低血圧気味だった。不思議に思って専門医を受診した。すると『原発性アルドステロン症』という耳慣れない病名を告げられた。腎臓の上にある副腎に出来た塊の腺腫を手術で取り除けば血圧は下がるという。
 原発性アルドステロン症は副腎に出来た腺腫の影響でアルドステロンというホルモンが過剰に分泌されるために高血圧を引き起こす。ホルモンの分泌量異常に伴う高血圧はホルモンの種類で異なる。
 コルチゾール・・・・・・「クッシング症候群」
 カテコールアミン・・・「褐色細胞種」
などに分けられる。いずれも腺腫を除去すると治る。両方の副腎が腫れる特発性アルドステロン症は手術できないため、特定の薬で治療することが多い。
 高血圧は早めに改善しないと血管や臓器に負担がかかり、心筋梗塞や脳梗塞など多くの病気につながりやすい。高血圧の方の9割が「本態性高血圧」と呼ばれる原因がよく分からないタイプだが、残りの約1割がホルモン異常など原因が特定できる「二次性高血圧」です。
 35歳以下の高血圧の4割程度が二次性高血圧です。若い人で高血圧の場合、生活習慣が問題と思いこむ前に他の原因を疑うことも必要だ。
 二次性高血圧ではホルモン分泌の異常のほか、腎臓機能の悪化から血圧が上がるタイプも多い。中でも診断がつきやすいのが腎臓に入る血管が狭くなることで起きる腎血管性高血圧。血管を広げる手術などを受ければほぼ治るという。このほか腎臓自体がダメージを受けて腎炎などが起きている場合も血圧が上がることが多い。2003.10.21《日本経済新聞》
■合併症
「高血圧を長い間放置すると、脳卒中や心筋梗塞などの合併症が起きる。」
 

【処方名-50音順】 (高血圧)
■一貫煎
■温清飲
■黄土湯
■黄連阿膠湯
■黄連解毒湯
上気して、顔が赤く、のぼせ症で、気分がイライラして落ち着かず、衂血が出たり、眼底出血を起こしたりするものによい。また頭痛、めまい、耳なり、不眠なども目標になる。便秘のものには、これに大黄を加えて良い。腹証上では、心下痞または心下痞硬の状はあるが、胸脇苦満や腹直筋の緊張をみとめないのが普通である。(漢方診療医典)
■葛根湯
■加味逍遥散
■救逆湯
■九味檳榔湯
■桂枝甘草竜骨牡蛎湯
■桂枝茯苓丸
■杞菊地黄丸
■牛車腎気丸
■柴胡加竜骨牡蛎湯
胸脇苦満があって、上腹部が膨満し、動悸、めまい、不眠などを訴え、神経過敏で、興奮しやすく、興奮しやすく、感情のたかぶる傾向のものを目標とする。便秘の傾向がなければ大黄を去って用いる(漢方診療医典)
■柴芍竜牡湯   
■三黄瀉心湯
■酸棗仁湯   
■四逆散
■四物湯
■梔子豉湯
■七物降下湯
昭和27年に大塚敬節氏が創作した処方。
その頃、大塚氏は高血圧症で、最低血圧が高く、眼底出血が反復し、下肢のしびれ、疲労倦怠、頭痛、衂血、盗汗などに苦しめられたが、この処方を用いるようになって軽快した。その後、高血圧が慢性化して、最低血圧の高いもの、腎炎または腎硬化症のある高血圧患者に用いて効のあることを知った(漢方診療医典)
■炙甘草湯
■潤腸湯
■小建中湯
■真武湯
■疎経活血湯
■大柴胡湯
肥満型の体質で、肉のしまりがよく、便秘の傾向があり、腹診状、胸脇苦満、心下痞硬のあるものを目標とする。このような患者は、よく肩こりを訴え、頭が重いという。大黄は人によって加減して、毎日、大便が快通するようにする。
この処方には、特に血圧を下げる薬は入っていないが、連続して服用していると、胸脇苦満が減じ、上腹部の緊張がとれて、気分が軽くなり、血圧も安定する(漢方診療医典)
■大承気湯
■大青竜湯
■知柏地黄丸
■釣藤散
早朝の頭痛、耳なり、気分のうっ塞、記憶力の減退などを目標に、脳動脈硬化のある高血圧患者に用いる(漢方診療医典)
■鎮肝熄風湯
■通導散
■天王補心丹
■天麻釣藤飲
■桃核承気湯
■当帰芍薬散
■当帰竜薈丸
■二仙湯
■柏子養心丸
■八味地黄丸
腎硬化症や慢性腎炎のあるもの、間欠性跛行症などのある高血圧患者に用いられ、夜間の多尿、口渇、手足の煩熱、腰以下の脱力感、腰部の疼痛、下肢の浮腫などを目標とする。(漢方診療医典)
■麦門冬湯
■半夏白朮天麻湯
胃腸が弱く、気力に乏しく、血色すぐれず、冷え症で、心下部に振水音を認め、頭痛、めまい、悪心などある者に用いる(漢方診療医典)
■防風通聖散
肥満体で体力の充実した者に用いる。腹部は膨満しているが、胸脇苦満は著明でなく、俗に言う「太鼓腹」で、便秘の傾向がある。(漢方診療医典)
■抑肝散
■竜胆瀉肝湯  
■苓桂朮甘湯
■苓桂味甘湯
■羚羊角釣藤湯
■六味丸
   

■大規模臨床試験→「EBM」
「協和発酵は山口大学など全国6大学・機関と共同で、4月から高血圧治療薬を使った国内最大規模の臨床研究を開始する。3000人の患者を対象に、既存の複数の高血圧役を併用した場合の効果や副作用を調べEBMに役立てる。
医師主導の臨床研究は、メーカーが承認取得のため薬事法に基づいて実施し厚労省に報告する臨床試験とは異なる。」2003.3.18《日経産業新聞》

■西洋薬と併用で時間をずらす必要も
 「67歳、女性。高血圧症と胃潰瘍でニフェジピンや抗潰瘍薬を服用しています。体がだるいので漢方薬を希望したところ、漢方薬にはグレープフルーツのような成分が入っているかも知れないから服まないほうが良いと言われました。どういう意味でしょうか?」
「漢方薬と西洋薬の相互作用に対する情報が増えている。質問者の場合、ニフェ ジピンを併用すると、ニフェジピンの代謝に影響し結果的にニフェジピンの降圧剤とし ての効果が増強される。という医薬品情報からの注意であろう。
漢方薬のなかの『枳実』『陳皮』などの中にあるフラボノイド類は、グレー プフルーツと同様に作用するのでアルシウム拮抗剤と同時に服用するのは望ま しくない。
又、胃潰瘍治療薬は胃内をアルカリ性に傾けるので、『麻黄』や『附子』な どを含む漢方薬を同時に服用すると漢方薬のアルカロイド成分の吸収率が高ま る可能性がある。
漢方薬と西洋薬は同時に服用すると吸収や代謝に関する相互作用が起こりうるものがある。そこで、例えば漢方薬は食間に、西洋薬は食後に、または1時 間ぐらいあけて服用するなど、消化管で漢方薬と西洋薬が直接かち合わないよ うに服用するよう指導している。(花輪寿彦)1999.2.1《日本経済新聞》
 

【治験】
☆男性(74歳)
「血圧が常に180ぐらいあり、朝起きたときだるい。」
「痩せているが、栄養状態良好、顔色もよい。学生時代から胃弱で胃アトニー、食事は野菜が主で、肉類はあまり食べない。酒は少々、タバコは吸わない、脈弱く、軟便、排尿は5~6/1日、夜間排尿1回。腹診すると臍下丹田に力がない、測ると血圧は(210-104)。
腎虚と判断して七物降下湯を与える。34日間後に、血圧(170-90)となり、1年間続服すると(150-90)となり、2年後(130-80)と安定。患者は体のだるさがとれ、夜間排尿もなくなり、楽になったと言う。」




 mEqとは何か。
mEq(ミリエクイバレント)
 食塩(NaCl)のような電解質は水に溶解したときには、Na(+イオン)とCl(-イオン)が同じ重量で反応するのではなく、同じ当量(エクイバレント)で反応する。イオンには原子量があり、原子価がある。Naの原子量は23、原子価は1価、Clは原子量35.5で原子価は1価であって、食塩は23gのNa(+イオン)と35.5gのCl(-イオン)が結合して58.5gの食塩(NaCl)が出来るのである。g当量で表すには体内では量が少なくすぎるので1,000分の1の単位、すなわちmg当量(mEq)で表すのが一般的で、最も適した量がミリエクイバレント/リッタ-(mEq/l)である、すなわち、この値は1リッタ-中の溶質のmg数を原子量で割って、これに原子価を掛けたものである。K(カリウム)の場合は原子量は39.09、原子価は1価であるので、そのように計算してNa/K比をだしたもので、測定された濃度同士の比、すなわちmg/mgではなく、mEq/mEqの比である。




高血圧性脳症  
   hypertensive encephalopathy    
⇒急激な血圧上昇(拡張期血圧130mmHg以上)・頭痛・悪心・嘔吐・ケイレン発作・意識障害などの症状。
 
【漢方療法】(高血圧性脳症)
■鎮肝熄風湯




高山病 mountain sickness
   Altitude sickness(高所病)
⇒気圧の低い所(=高い所・前線通過の所)に行くと起こる、いろいろの病的症状。
「頭痛」「吐き気」「めまい」が主症状。

その原因は脳の中の血管に水分が浸透することで起きるとされている

海抜2000mを超えると高山病になる可能性が出てくる。個人差があって1200mでも危ないことがある。
【症状】(50音順)
1.息切れ
2.運動機能の失調
3.嘔吐
4.記憶力減退
5.興奮状態
6.呼吸困難
7.思考力減退
8.失神(気を失う)
9.臭覚の異常
10.精神鈍麻
11.視覚の異常
12.食欲不振
13.頭痛
14.脱力感
15.聴覚の異常
16.チアノーゼ
17.動悸
18.ねむけ(睡気)
19.吐き気
20.疲労感(易疲労感)
21.不快感
22.味覚の異常
23.めまい

【原因と対策】
「酸素の分圧が低いために起こる窒息症状の一種と言われるが、酸素欠乏時に起こる過呼吸による二次的な血液及び組織のCO2欠乏症もこれに関係すると言われる。故に高地に登るとき、単に酸素吸入だけをさせるよりは、これに少量のCO2を加えることがこの症状を軽減させりのに役立つ。高地に登る速度もこの症状の発現に大いに関係がある。ある高地にしばらく(2~3週間)滞在しては又登るというようにすると、通常は危険と思われる高さでも十分生活しうる。

これは赤血球の新生・心臓の拍出量の増加によってO2不足が起こらないからである。
 気圧130mmHg(12000~13000m)以上の所では肺胞内の酸素分圧は130~145(水蒸気圧)-20(CO2分圧)=65(mmHg)以下となるから、加圧した酸素を吸入しないと危険である。 南山堂「医学大辞典」P659参照。

■怖い高山病・ケイレン
「税理士一行が立山三山縦走中に遭難した1989.10.8は、前夜に台風が日本南岸を通過、朝は台風一過の快晴だった。

【高山病の初期症状と対策】

(大森薫雄・神奈川県立厚木病院長)
[1]2500以上で数時間以上経過し、
[2]頭痛(軽いコトモアル)
[3]以上と次に上げる4項目のうちの1つ。
1.睡眠障害
2.めまい・ふらつき
3.食欲不振・吐き気・吐く
4.疲労・脱力感

(よく伴う症状)
1.胸のドキドキ・息切れ
2.せき
3.いくら息を吸っても胸がスッキリしない
4.まぶたが腫れる
5.手が握りにくい

【主な危険信号】
<1>激しい頭痛。
<2>吐く。
<3>激しい咳、夜せきが続く。
<4>尿量減少。
<5>足のむくみ。
<6>発熱。
<7>下痢。
<8>まっすぐ歩けない。
<9>息苦しい。
<10>くちびるが紫色。

【対策】
*出来れば高度を下げる(決して登らない)。
*停滞し、温かくして休養。
*水をたくさん飲む。
*尿をどんどん出す。
*深呼吸(酸素の補給)。
     1996.5.20《朝日新聞》より」

【ハーブ】

高山病はアンデスではソロチェ(soroche)と呼んでいる。
☆なぜ脱力するのか
「高山病は高度変化によるのではなく、空気中の酸素含有量の変化によって起こるものです。高所にいけば、酸素は徐々に少なくなります。約2500mでの大気中の酸素は海面での半分になります。
 

高山病(高所病)の特徴は脱水です。高所においては、液体は血液から身体組織に移行します。その血液が濃厚になると、栄養及び酸素の効果的な配分を妨げ、有毒廃棄物の除去を悪化させます。その結果、頭痛・疲労などの不快感や、また激しい渇きをもたらします。そのため、高山病を軽くし、また避ける1つの方法は、登り始める前に多量の無アルコール飲料を飲み、登山中に液体を摂取し続けることです。

アンデスでは調理した野菜スープを摂取します。
又アンデスでは1カップのマテ・デ・コカ(mate de coca)すなわちコカティーを飲みます。コアカテョーはペルー及びボリビアでは合法的ですが、アメリカでは違います。それはコカ(coca,Erythroxylum coca)の葉がコカイン(cocaine)の原料であるからです。コカインはコカを高度に加工した誘導体であり、コカティーはそのわずかを含んでいます。がしかし興奮薬として働くには十分であり、多くのペルー人が私たちがコーヒーを飲むようにコカティーを飲みます。」

☆役立つハーブ
■「チョウジcloves」チョウジノキ(Clove)の乾燥つぼみ
■「ニンニク」
*オイゲノールを含有

■ 「レイシ」(Reishi,Ganoderma lucidum)
「アジアの山中に住む人々は、ペルー人がコカの葉を用いるような方法でこのキノコを用います。科学的な諸報告によると、チベット(Tibet)において3日以上にわたって15000フィート(約4600m)以上に登った中国人作業員に対して、レイシ(霊芝)は彼らの高山病の症状を有効に軽減しました。これは霊芝が体内酸素消費を増加するという理論に基づいています」
■「イチョウ」(Ginkgo,Ginkgo biloba)
「このハーブは、体内血液を、特に脳内において増加します。動物実験においてイチョウ抽出物を与えられたラットは脳内血液を明確に増加し、低酸素による影響に耐性を示しました。」




 高所恐怖症 Akrophobie
【処方名-50音順】
■柴胡加竜骨牡蛎湯



高次脳機能障害
=主に脳の損傷によって起こされる様々な神経心理学的症状。
症状は多岐にわたり、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などの認知障害等で脳の損傷部位によって特徴が出る。

損傷が軽度の場合には核磁気共鳴画像法(MRI)でも確認できない場合がありポジトロン断層法(PET)という特別な機械でなければ正確な診断は出来ないと思われる

その障害は外からでも分かりにくく自覚症状も薄いため隠れた障害と言われている。

国(厚生労働省)が平成13年度から本格的に研究に取り組んでいる『高次脳機能障害』は、行政的に定義されたものといえる。これについては少し説明が必要である。 脳血管障害(いわゆる脳卒中)や、交通事故による脳外傷後に身体障害となる場合がある。身体障害が後遺障害として残る場合と、時間の経過とともに軽快していく場合がある。しかし、身体障害が軽度もしくはほとんど見られない場合でも、脳の機能に障害が生じている場合がある。それが前述の認知障害、つまり行動に現れる障害であるため、職場に戻ってから、問題が明らかになるというケースがある。つまり、日常生活、社会生活への適応に困難を有する人々がいるにも関わらず、これらについては診断、リハビリテーション、生活支援等の手法が確立していないため早急な検討が必要なことが明らかとなった。

交通事故による高次脳機能障害については、他の公的制度に先駆けて、自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)が平成13年から交通事故被害として認定するシステムを構築している。自賠責保険により、交通事故によって生じた高次脳機能障害として認定されれば、損害賠償の対象として保険金が支払われることとなる。




高脂血症 
   hyperlipemia
=空腹時に測定した血清コレステロール値[220mg/Œ]、血清トリグリセライド値 [150mg/Œ]のいずれか、または双方を超えるものをいう。

◎原発性高脂血症:以下の疾患や薬剤を使わないのに高脂血症を示すもの。
(疾患):
Ⅰ型糖尿病
甲状腺機能低下症、
Cushing症候群、
神経性食思不振症
糖尿病、
ネフローゼ症候群、
閉塞性黄疸、
原発性胆汁性肝硬変、
末端肥大症
慢性腎不全で腎透析時、
モノクロナールガンモパティー
リポディストロフィー
(使用薬剤):
アルコール飲用
エストロジェン製剤(経口避妊薬を含む)
降圧剤(一部のもの)
抗うつ薬
抗神経薬
副腎皮質ホルモン

◎原発性高脂血症の分類:
<1>原発性高カイロミクロン血症
(イ)家族性リポ蛋白リパーゼ(LPL)欠損症
(ロ)アポリポ蛋白CⅡ欠損症
(ハ)原発性V型高脂血症
(ニ)その他の原因不明の高カイロミクロン血症
<2>原発性高コレステロール血症
(イ)家族性高コレステロール血症
(ロ)家族性複合型高脂血症
(ハ)特発性高コレステロール血症
<3>内因性高トリグリセライド血症
(イ)家族性Ⅳ型高脂血症
(ロ)特発性高トリグリセライド血症
<4>家族性Ⅲ型高脂血症
<5>原発性高HDL-コレステロール血症
    
■高脂血症治療薬の副作用
<1>横紋筋融解症:
「血液検査で[CPK]値が上昇し、筋肉痛・皮膚の痛みなどの自覚症状。」
■高脂血症とタバコ
「多くの日本人の血中コレステロール濃度は、健康診断で基準範囲内にあるが、その平均値は年々高くなっている。」と防衛医科大学で循環器疾患に取り組んできた中村治雄三越厚生事業団常務理事はこう語っている。
食生活が糖質中心から高脂肪へと移行し、運動不足といった長年のツケが、知らないうちに我々の体をむしばんでいるのである。「このままでは近い将来、心疾患の人がたくさん出てくる」と指摘する。
中村さんが危惧しているのは高脂血症の人の増加だ。血中にあるコレステロールなど脂肪の量が高くなった状態を指すが、これは動脈硬化と密接に関連している。血中の総コレステロールの値が高くなるのが動脈硬化の危険因子の1つで、冠動脈疾患など心臓病の引き金になることは良く知られている。
日本動脈硬化学会のガイドラインによれば、コレステロールに着目した高脂血症(高コレステロール血症)の診断基準は次のようなものだ。
適正な範囲は、血中総コレステロールが血液100‹当たり200mg未満で、これが220mg以上あれば高コレステロール血症である。この間の100‹当たり200~219mgが境界領域で。いわば高コレステロール血症の予備軍ということになる。近年はこうした人が増えて来ている。
高脂血症の背景には血中の脂肪の増減を調節する酵素やタンパク質を作る遺伝子などに異常が見つかるケースがある。このほか高脂肪食や運動不足なども大きく関係している。禁煙注目されてきているのがタバコである。喫煙の習慣は血中のHDL(高比重リポタンパク)という善玉のコレステロールを減らすというのである。
コレステロールそのものは体に必要で、いたずらに忌避されるものではない。ただ、コレステロールは単独ではなく、リポタンパクに結合して体内のあちこちに運ばれるので、結合する相手のリポタンパクが高比重のものであれば良いが、低比重(LDL)だと心疾患などの危険が高まる。
すなわち、HDLの低下、言い換えると、LDLの増加が心疾患のリスク要因だというわけだ。いくつかの報告によると、喫煙はこのHDLを減少させる。特に毎日20本以上吸う人では、明らかにHDL値が下がるという。
厚生省の調査などでは、喫煙者の中で1日20本以上タバコを吸う人の割合は男性で約70%、女性で約30%。男性では40歳代をピークに高齢者は喫煙本数が減る傾向にあるが、女性は各年齢層ともほぼ同じ割合である。
最近は20歳代の女性の喫煙が目に付く。」(中村雅美)1999.12.13《日本経済新聞》
■スタチンの効果確認
「病気は苦しいもの、あるいは痛いものというのが通り相場だ。しかし、自覚症状が無くても放っておくと重大な症状に至る“病気”もある。血液中のコレステロール量などが高くなる高脂血症はその代表的なものだろう。
血中のコレステロール量が多すぎると、いろいろと悪さをする。血管を詰まらせる動脈硬化が最もよく知られている。特に心臓を養う冠動脈が細くなって起きる虚血性心疾患は深刻だ。これを含めた心臓病は、欧米では死亡原因のトップである。日本でも食生活の変化などで今後、増加すると懸念されている。コレステロール値を管理するには食生活・運動・休養のいわゆる一次予防が最も有効だ。それでもあまり効果が出ない場合やコレステロール値が一定以上になっている時は、薬でこの値を下げるのが効果的だ。
この薬はHMG(ヒドロキシメチルグルタリル)-CoA還元酵素阻害剤、通称“スタチン”と呼ばれる。コレステロールは体内でHMG-CoAという物質を経由して合成される。この合成過程を止めるのがスタチンである。現在何種類かのスタチン系薬剤が使われている。
スタチンが本当にコレステロール値を下げるのか?。これまでにも世界中で多くの大規模臨床試験が行われてきた。血中のコレステロール値が一定以上で、冠動脈疾患などが診られない病気予備軍の人を対象に、スタチンを服用し続けた場合とそうでない場合とを比較するのである。
最も有名なのは、スコットランドで行われたWOS試験である。総コレステロール値が平均で血液100mlあたり272mgの男性6600人弱に対し、スタチンを平均4.9年間服用してもらったのである。
WOS試験を総括した英国グラスゴー大学のジェームス・シェパード教授が先頃来日した。教授はスタチンによって「血中コレステロール値が下がり、心筋梗塞や冠動脈疾患による死亡の危険が31%低下した」とその効果を力説した。スウェーデンや英国などで行われた大規模試験でもスタチンが冠動脈疾患が見つかった人の症状の進行を抑えることが確認されている。
日本でもいくつかの大規模試験が行われている。その1つとして食事療法と組み合わせたスタチンの効果を確認する大規模試験が始まりつつある。総コレステロール値が血液100mlあたり220~270mgの壮年以降の人を対象に、5年間追跡調査する。
今年1月の時点で試験登録者は8183人。このうち女性が5548人と圧倒的に多い。これまでの大規模試験は男性が中心だったが、この試験で女性に対する効果が分かるかもしれない」(中村雅美・編集委員)2000.2.21《日本経済新聞》
■新製品が続々
「来年憩い温清飲、高脂血症治療薬でコレステロール低下作用の強い新薬が相次ぎ登場する。塩野義製薬と英系アストラゼネカが共同開発したスタチン系治療薬「クレストール」はその筆頭格。悪玉コレステロール値を低下させる作用の強さが特徴だ。
既存品では山之内製薬の「リピトール」のコレステロール低下作用の定評があるが、臨床試験での効き目はそれ以上という。日本では今春に承認を申請する。
三共は興和と日産化学工業から販売権を得た「NK-104」を2002年度中にも発売する予定。10月に特許切れになる「メバロチン」よりコレステロール抑制効果が強い。
独バイエルは各国で販売していた、「バイコール」を昨年8月に、筋力低下の副作用問題で自主回収。武田製薬も同成分の「セルタ」も日本で自主回収した。2002.8.20《日経産業新聞》
■「ヘキサコサン酸」→「生活習慣病」参照
【西洋薬】
「リピトール」:世界中で発売。
【副作用】
◎血漿脂質を増加させる薬物:
エタノール
クロルプロマジン
経口避妊薬(エストロゲン-プロゲストゲン型)
成長ホルモン
チオウラシル
ビタミンD
副腎コルチコステロイド
◎血漿脂質を減少させる薬物:
L-アスパラギナーゼ
アスピリン
p-アミノサリチル酸
グルカゴン
クロルテトラサイクリン
コルヒチン
スルフィンビラゾン
デキストラン
トリフルペリドール
フェニンジオン
フェンフルラミン


■治療薬
「脳梗塞で入院した患者のうち、4人に1人が高脂血症を発症していた。薬を使って血液中に含まれるコレステロールなど脂質の濃度を下げると脳梗塞の再発予防につながるというデータが海外で出ている。
脂肪の多い食事や運動不足で高脂血症の患者が増えている。高脂血症になると血管の波部の中に脂質が入ってきて、おかゆのようにドロドロになって動脈硬化ができやすくなります。頸動脈に動脈硬化が起きると、アテローム血栓性脳梗塞を起こす原因に成ります。
脳梗塞で高脂血症を合併しているのは、脂肪の多い食事をしている若者に多い。
動脈硬化は超音波(エコー)を首に当てることで血管の壁の厚みを調べることができます。高脂血症が長期間続くと動脈硬化になって血管の壁が徐々に厚くなり、脳梗塞瘀を起こすリスクが高まります。
海外では、2006年アトルバスタチンという高脂血症薬を飲むと、飲まなかった人たちより5年間で濃厚素行の発症リスクが約20%低下したという。」






 高尿酸血症 
⇒血液中の尿酸濃度が高い。
<1>尿酸:
a)体内の肝臓、骨髄。筋肉などで作られ、分解されずに腎臓・消化管から排泄される。
b)大人の男性で、1200mg作られ、ほぼ半分が1日で入れ替わる。
c)尿酸値が7.0を超えると、尿酸ナトリウムとなって結晶化する。
<2>痛風は結晶化した尿酸トリウムを排泄しようとして免疫機構が過剰に反応し、炎症を起こした病気。
<3>環境要因が主な原因。
a)アルコールの飲み過ぎ
b)動物の内臓などのプリン体の多い食事。
<4>糖尿病、高血圧、高脂血症、動脈硬化など誘因する。
   


高熱
   ◎発熱性疾患の場合でも38℃~39℃の発熱に限られていることが多く、40℃    以上の高熱を引き起こす疾患はほぼ限られている。
   ◎高熱を引き起こす感染症:
      <1>グラム陰性桿菌敗血症
      <2>腎盂腎炎
      <3>ウイルス性脳炎
      <4>腸チフス
      <5>マラリア
   ◎高熱を引き起こす非感染症:
      <1>脳出血(特に脳幹部)
      <2>熱射病
      <3>悪性症候群
         1.麻酔薬
         2.鎮静薬などにより
        (金芳堂ー内科診断学p234) 
■消えた薬
「昨年1月、東京都中央区の聖路加国際病院に高熱の男性(49)が入院した。3つの心臓弁に黄色ブドウ球菌が感染した重症の心内膜炎だった。米国のガイドラインでは、抗生物質クロキサシリン(注射薬)が第一選択枝だ。この菌による心内膜炎や髄膜炎にはもっとも有効と証明されている。
日本ではいくつかの製品が発売されたが、唯一残っていた「メトシリンS」(明治製薬)も1998年秋に市場からすっかり姿を消した。古川敬一・内科医長は代替薬の抗生物質セファゾリンを使ったが、手に負えない。【組み合わせ】範囲の菌を殺す新しい抗生物質は有効性が不確かなうえ、副作用や耐性菌の心配もある。
明治製薬の病院担当者に頼み込み、全国の問屋に残っていたメトシリンSを集めてもらった。6週間の大量投与でようやく救命に成功した。昨年11月の日本化学療法学会東日本支部総会で三浦龍志医師(内科)が経過を詳しく報告、「黄色ブドウ球菌の重症感染症にクロキサシリンは不可欠だ」と訴えた。
なぜ、メトシリンSは消えたのか?「いくつもの代替薬が出て、使用量が激減した。先生方にも納得していただいた」と明治製薬の福井利一・薬品企画管理部長は説明する。
97年に田辺製薬がいったん販売中止を決めた麻酔薬が、学会の反対で継続となった。それ以降、企業があらかじめ日本医師会を通じて各学会の了承を取り付けるルールができた。メトシリンSの中止には当初、3学会が難色を示したが、明治製薬は使用病院が極端に少なくなった状況を各学会に説明し、了承してもらった。無菌の注射薬の品質保持には一定生産量が必要という。
「それにしても。薬とジュースの値段が同じではつらい」と福井さん。日本の薬価制度では、薬の値段は徐々に下がっていく。メトシリンSは承認された65年当時、注射用小瓶1本が237円だった。それが136円まで下がった。
91年には梅毒に劇的に効く注射薬が姿を消している。古川さんは「いいと分かっている薬が使えなくなる。そんなおかしなことを続けていては取り返しがつかない事態になります」とはなす。2000.2.20《朝日新聞》
【民間療法】
     <1>ミミズ。
  
【処方名-50音順】(高熱)
■安宮牛黄丸
■黄竜湯
■黄連解毒湯
■牛黄清心丸
■加減復脈湯(発熱疾患の後期・衰弱)    
葛根黄芩黄連湯
■犀角地黄湯
■紫雪丹
■小柴胡湯(抗生物質を使用しても下がらない高熱)
■小柴胡湯加桔梗石膏(食欲不振、高熱、口渇、咽痛、胸脇苦満)
■新加黄竜湯
■清瘟敗毒散
■清営湯
■清暑益気湯
■増液承気湯(高熱・脱水)
■大承気湯
■大陥胸湯
■竹葉石膏湯
■調胃承気湯(発熱、悪寒なし、口舌乾燥、腹痛<圧痛>、腹満<微>、自汗)
■白虎湯
■白虎加人参湯(高熱で煩渇、息切れ)
■礞石滾痰丸
■羚羊角釣藤湯

【臨床例】
☆不食・高熱を治す
「某上人、悪寒発熱、四肢困倦し、熱は日に彌々(イヨイヨ)盛る。心胸煩躁し、已にして食を絶す。厠に坐さざること十余日。之を按ずれば、腹皮攣急して物あり、柱の如し。黄骨より、鳩尾に達す。乃ち大承気湯(10銭)をつくりて之を飲む。芍薬甘草湯(10銭)を以て雑進(=交互に服用)す。五日、三日 に僅かに一行す。久之して大いに快利し、諸證頓に退く。」《建珠録》

☆「山中米蔵の妻、40余才。発熱悪寒がして、身体の節々が疼み、食欲不振であった。ある医者に治を托して、病勢が俄に進み、来たって余の診断を乞うた。診すると、以上のような状態の他に、胸脇の苦満があり、咳嗽があって、涎沫を吐し、自汗があって煩渇し、心下が結実し、之を押してみると疼みがある。高熱が昼夜持続し、脈は実して数し、舌は黒胎であった。大便は秘結し、うわごとを言い、人事不省であった。そこで、余は大承気湯を与えた。すると、大小便が日々に通じて諸症が大いに減退した。ただ咳嗽があって煩悶し、口渇があるので、竹葉石膏湯を与えた。すると、ある日、苦酸水を吐したので、鷓胡菜湯を2、3日用いると、回虫が数条出て、腹痛も酸水を吐することも止んだ。そこで再び竹葉石膏湯を与え、承気丸を兼用し、20日ばかりで癒えた。」《尾台榕堂》


高フォスファターゼ症
=先天代謝異常の1つ。
⇒アルカリ・フォスファターゼ値が高い。
   ◎病因:機序不明
   ◎症状:
      ケイレン
      知能障害
      病的骨折
      微熱

高リン血症
=「高リン酸血症」
「高リン血症は腎不全で透析を受けている患者に多く、血中のリン濃度が高くなりカルシウムとのバランスが崩れ、骨がもろくなるなどの症状を起こす。」
高リン血症になる頻度が最も高いのは腎不全です。
「腎機能の低下に伴い、リン酸塩の排泄が低下するために起きる。この場合高リン血症・ビタミンDの活性化障害から、Caは低値となる。」
■臨床試験
「中外製薬とキリンビールは、共同で開発を進めている、高リン酸血漿治療薬[PB-94]の第三相臨床試験(フェーズ3)を国内で開始した。透析を受けている腎臓病患者向けの薬として共同で商品化する。
PB-94は米医薬ベンチャーのジェルテックス(マサチューセッツ州)が元になる成分を開発した高分子(ポリマー)薬剤。食事と一緒に内服する錠剤で、体内に吸収されることなく消化管で食物中のリンを吸着する。リン吸着後はそのまま体外へ排出される」2000.9.27《日経産業新聞》
■ホスレノール
「2009年3/11、バイエル薬品は発売した高リン血症薬。ホスレノールは腸管の中で食物のリン酸と結びつくことで、消化管内でリンが吸収されない状態をつくり、そのまま体外へ排泄する仕組み。
カルシウムを含まないリン吸着剤。」



高齢出産
■60歳で出産
「英国ウェールズで農場を所有するエリザベス・バトルさんが60歳で男児を出産していたことが15日、明らかになった。生後8週間で、健康に育っている
ギネスブックによると、世界最高齢の出産記録は63歳だが、この場合は排卵誘発剤を使用しており、自然の形での妊娠、出産ではバトルさんが世界最高齢だと言う。1998.1.16《朝日新聞》


膠原病
(参照→「全身性エリテマトーデス」)
⇒組織結合識の膠原組織に炎症性変性を起こし、そのために血管を含めて全身の諸臓器ごとに皮膚・関節・骨を中心に、系統的広範囲に病変が発生する慢性・炎症性疾患群。
◎臨床的特徴: 関節痛・皮疹・筋痛など。
*白血球数:不変~減少
*赤沈:異常高値

◎初期症状と検査すべき項目
*関節炎→[炎症マーカー][RF][ANA][血清たんぱく定量]
*関節痛→[炎症マーカー][RF][ANA][血清たんぱく定量]
*血小板減少→[ANA][血算][血清たんぱく定量][肝機能]
*結節性紅斑→[炎症マーカー][IgE][ツ反応][ANA][RF][ANCA]
*抗核抗体陽性→[ANA][血清たんぱく定量][検尿]
*抗梅毒血清反応偽陽性→[ANA][血清たんぱく定量][検尿]
*高γグロブリン血症→[炎症マーカー][RF][ANA][血清たんぱく定量][肝機能]
*口腔内アフタ→[ANA][血算][血清たんぱく定量]
*口腔内潰瘍→[ANA][血算][血清たんぱく定量]
*口腔内乾燥→[RF][ANA][血清たんぱく定量][血算][検尿]
*光線過敏症→[ANA][血算][肝機能][呼吸機能検査]
*タンパク尿→[ANA][血清たんぱく定量][腎機能]
*白血球減少→[ANA][血算][血清たんぱく定量][肝機能]
*皮膚紅斑→[ANA][血算][肝機能][呼吸機能検査]
*皮膚硬化→[ANA][血算][肝機能][呼吸機能検査]
*皮膚静脈炎→[炎症マーカー][血算][ANA][凝固能][抗カルジオリビン抗体]
*皮膚浮腫→[検尿][ANA][腎機能][炎症マーカー]
*リウマトイド因子陽性→[RF][ANA][IgG-RF][血清たんぱく定量][肝機能]
*レイノー現象→[RF][ANA][血清たんぱく定量][抗カルジオリビン抗体]

◎検査:
免疫検査:
<1>自己抗体の検査:
   [リウマトイド因子][抗核抗体][抗細胞質抗体]
<2>血清タンパク定量:
[免疫グロブリン][補体][免疫複合体]
<3>サイトカイン:
[IL1~13][TNF][IFN][TGF-β][PDGF][IL-2R]
<4>リンパ球表面マーカー:
Tcell系:[CD4][CD8]
Bcell系:[CD19][CD20]
<5>HLA検査:
クラスⅠ~Ⅲ抗原
<6>細胞機能検査:
   [芽球化試験][抗体産生能][好中球機能]

炎症マーカー:
<1>血沈
<2>急性炎症性蛋白
<3>血清鉄、フェリチン
<4>血清タンパク分画

臓器障害検査:
<1>血算:
[白血球数][赤血球数][血小板数][血液像]
<2>肝機能:
[GOT][GPT][γ-GTP][ALP]
<3>腎機能:
[検尿][BUN][Cr][UA]
<4>骨関節破壊:
[血清ヒアルロン酸][ピリジノリン][オステオカルシン]
<5>筋肉破壊:
[CK][アルドラーゼ][ミオシン]
<6>唾液腺障害:
  アミラーゼとそのアイソザイム

◎種類:

①リウマチ熱------------------------幼小児
②慢性関節リウマチ---------------女性
③全身性エリテマトーデス------若い女性
④多発性筋炎-----------------主として男性。
⑤結節性動脈周囲炎
⑥側頭動脈炎----------------老年者
⑦亜急性甲状腺炎---------主として女性。

◎膠原病を疑った場合、抗核抗体の最初のスクリーニングは、
①蛍光抗体法による抗核抗体(FANA)で行い、これで斑紋型を示した時に、
②PHA法による抗ENA抗体を検査する。これが陽性の時、
③DID法(二重免疫拡散法)による検査を行う。

◎種類:
進行性全身性硬化症 progressive systemic sclerosis[Goetz1945](PSS)
進行性強皮症 progressive scleroderma
    1型:レイノー症状と強指症
    2型:末端硬化症
   3型:びまん性強皮症

限局性強皮症 sclerodermia circumscripya
1.斑状強皮症[モルフェア]
2.帯状強皮症

成年性浮腫性硬化症 scleroedema adultorum [Buschke 1900]

新生児皮膚硬化症 sclerema neonatorum [Soltmann 1899]

皮膚筋炎 dermatomysitis [Unverricht 1891]

エリテマトーデス[紅斑性狼瘡] erythematodes (LE)
(A)慢性円板状エリテマトーデス (DLE)
(B)急性エリテマトーデス (SLE)
 ①凍瘡状狼瘡
 ②自己免疫性環状紅斑
 ③深在性エリテマトーデス
 ④無疹型
 ⑤新生児エリテマトーデス
 ⑥Urticarial vasculitis
overlap(重なり合い)
混合性結合組織病 mixed connective disease [Sharp 1972](MCTD)
シェーグレン症候群(→シェーグレン症候群)
リウマチ熱 rheumatic fever の皮膚症状
リウマチ性関節炎 rheumatoid arthritis の皮膚症状
播種性好酸球膠原病
  New Minor Dermatology by Kenichi Uyeno,M.D. P217~230参照。  

◎膠原病発症のきっかけ
・ウイルス・細菌
・薬物
・紫外線(主に日光)照射
・美容形成
・外傷・外科的手術
・ストレス
・寒冷
・妊娠及び出産

・加齢
・ホルモン
・栄養状態

■日光避けよ
「日光、特に紫外線が当たることで新たに膠原病になったり、落ち着いていた膠原病が悪くなったりすることがある。膠原病は自分自身の細胞を傷つける免疫反応が生体内で生じる自己免疫性疾患に分類され、全身性エリテマトーデスと皮膚炎がある。
全身性エリテマトーデスは顔に出来るチョウの形をした発疹、関節痛。タンパク尿などを伴う腎炎など多彩な症状が見られる。ケイレンや意識障害などの神経症状を伴うこともある。
この病気の発症や再発に日光がキッカケになることは良く知られている。これは紫外線を浴びることでデオキシリボ核酸(DNA)に構造上の変化が起き、変化したDNAを攻撃する免疫反応が生じやすくなるためである。
皮膚筋炎は皮膚と筋肉に主に障害が起きる。子供では血管に炎症が起こるのが、この病気の本体と考えられている。成人に比べて様々な症状が出るのが特徴だ。
<1>皮膚ではまぶたに出来る青紫色の発疹と手の指に出る赤い発疹が特徴的である。
<2>筋肉では力が入らない症状が普通は左右同時に体の中心部に近い部位で起きる。
<3>肺炎を併発することもある。
日光にあたることでこうした皮膚症状が悪化したり、落ち着いていた全身症状が再燃したりすることがある。このため、全身性エリテマトーデスや皮膚筋炎の子供には、日光に出来るだけ当たらないように指導する。具体的には海水浴や日中の外出は控える。やむを得ず外出するときは二校になるべくあたらないような衣類を身につけ、露出部には日焼け止めクリームを塗るなどである。(小林信一・国立小児病院感染リウマチ科)」2000.7.31《日本経済新聞》

【漢方薬】(全身性エリテマトーデス)
■麻黄湯(頭痛、発熱、悪寒、身体疼痛、関節がいたい)

   

好塩基球増加
◎原因:
骨髄増殖性疾患:慢性骨髄性白血病
        骨髄線維症
炎症性腸疾患:Crohn病
その他:粘液水腫
    放射線照射



好酸球減少
◎原因:
・ストレス
・感染症(腸チフスで消失する)
・内分泌疾患(クッシング症候群)
・薬物投与:コーチゾン投与時
ACTH
         エピネフリン


 好酸球増加
◎原因:
寄生虫:回虫・十二指腸虫・フィラリア
アレルギー疾患:気管支喘息
        ジンマシン
        薬剤アレルギー
膠原病:多発性動脈炎
皮膚疾患:天疱瘡
     多形滲出性紅斑
血液疾患:好酸球性白血病
     慢性骨髄性白血病
      Hodgkin病
      非Hodgkinリンパ腫
      家族性好酸球増加症
その他:放射線照射
    好酸球肺浸潤症候群



好酸球増多性肺浸潤症候群
=「PIE症候群」
⇒寄生虫、真菌、薬剤、化学物質が原因とされ、これらに対する一種のアレルギー反応。
◎好酸球増多と肺の浸潤性陰影が認められ、咳嗽・発熱がみられることが多い。
◎経過が長引くと喘息・血管炎などを合併することもある。



好中球減少症
■効能追加
「大日本住友製薬は抗菌薬「メロペン」を細菌感染で起こる事がある『好中球減少症』の効能追加を申請した。
好中球は白血球の一種で、減少すると免疫力が落ち、生命の危機に陥る恐れがある。好中球が減る原因は細菌やウイルスの感染、アレルギー疾患など。
■治療薬
2013年、協和発酵キリンは、白血球の一種である好中球減少症を治療するバイオ医薬品「持続型G-CSF製剤」(一般名:ペグフィルグラムチム)の製造販売の承認申請した。
抗がん剤の副作用により好中球が減少し、感染症にかかりやすくなる患者に投与する。タンパク質にポリエチレングリコールをくっつけ、体内で長く効く様にした



 好中球増加
◎原因:
感染症:細菌性・化膿性疾患
出血:急性の大量出血で
溶血発作
薬物投与:
その他:心筋梗塞
    脳出血
    内分泌疾患:クッシング症候群
          褐色細胞腫
     火傷
     手術後
     運動後
  
   


項背拘急
=「項背強」「項背強急」
⇒項背がこわばる・項背がこる。

【処方名-50音順】(項背拘急)
■葛根湯
■葛根加朮附湯
■桂枝加葛根湯(虚証、自汗、項背がこる)  
■呉茱萸湯
■十棗湯
■大承気湯
■釣藤散    

■人参湯

   

 

項軟   
⇒天柱骨が逆さになる症。[健骨散][生筋散]
<1>小児が風邪で頭がまわらず、頭を前にたれ、また後にのけぞる。
         [天柱元][五加皮散]
<2>風熱項軟:[涼肝元]

【処方名-50音順】(項軟)
■健骨散(天柱骨が逆さになる)
■五加皮散(小児が風邪で頭がまわらず、頭を前にたれ、また後にのけぞる)
■生筋散(天柱骨が逆さになる)
■天柱元(小児が風邪で頭がまわらず、頭を前にたれ、また後にのけぞる)


虹彩炎
【処方名-50音順】(虹彩炎)
■葛根湯(陽実証、頭痛、発熱、無汗、項背のこわばり、脈浮緊・数)
■三黄瀉心湯
■梔子柏皮湯(身黄、発熱、腹満なし)   
■大柴胡湯(虹彩毛様体炎)
■白虎加桂枝湯
■白虎加人参湯(激しい口渇、口舌乾燥、尿利頻数、大便硬、煩躁)


紅肢症
【処方名-50音順】(紅肢症)
■越婢加朮湯(自汗、浮腫、小便不利、鼻の先端が黄色い、皮膚知覚異常、手足疼痛、腰脚無力、肉極)


紅痛症
=皮膚の温度が上がると、痛み起こる皮膚病を紅痛症と言います。
皮膚の温度が32~36℃ぐらいに達すると、激しい痛みを伴います。
痛みは、激しい(焼けるような)灼熱感と刺痛が特徴。

◎発症部位:両足(最も多い)、両手。
  初めは指だけですが、徐々に手のひら・足の裏全体に広がる。

■発作時に氷で冷やして
「70代、男性。毎冬、ホームコタツに入ると足の裏全体がチクチク痛み、薬を塗っても治りません(大阪府・H)
「皮膚の温度が上がると、焼けるような痛みが起こる皮膚病を紅痛症と言います。皮膚の温度が32度から36度ぐらいに達すると、激しい痛みを生じます。
 最も多いのは両足ですが、両手に起こることもあります。初めは指だけですが、間もなく手のひら、足の裏全体に広がります。激しい灼熱感と刺すような痛みが特徴です。

動脈が血栓や硬化で詰まった場合や末梢神経の炎症でも同じ症状が起こることが有りますが、この場合は、足の皮膚の温度が上がらず、逆に冷たいので簡単に区別できます。

「他の重篤な病気に併発して起こる場合(続発性)は元の病気を治療せねば成りません。例えば[多血症](赤血球の増える病気)や[全身性エリテマトーデス](膠原病の1つ)に合併して生じることもあります。
 

原発性の場合は発作がゆっくり起こり、次第にその頻度や強さが募ってきて長年続きます。なぜか分かりませんが、急に治ることもあります。
「発作時に氷で冷やすのが最も手軽な方法ですが、アセチルサリチル酸(アスピリン)の内服が最も有効です。アスピリンは血小板が固まるのを防ぎ、プロスタグランジンが体内で作られるのを抑えるから効くのだろうと言われていま      す。

【処方名-50音順】(紅痛症)
■梔子豉湯


紅斑
(参照→ベーチェット病)
⇒皮膚の末梢血管と充血によって生じる可逆的な赤い斑。
【処方名-50音順】(紅斑)
■桂枝茯苓丸
■桂枝二越婢一湯
■梔子豉湯
■大青竜湯
■桃核承気湯(実証、のぼせ、足冷、下腹部痛)



後頭部の凝り
【鍼灸】
「次髎は膀胱経だから後頭部の凝りと関する。後頭部の天柱のあたりの凝っているのに次髎へ鍼すると立ちどころにとれる。経絡は妙不思議なものである。後頭部の一側が凝っている場合、よく次髎に灸ツボが狂っていたのに原因することがある。

沢田健先生は次髎の鍼にてよく後頭部の凝りを取っていられた。」《沢田流聞書鍼灸眞髄》
「臑兪穴」


興奮しやすい
  【処方名-50音順】(興奮しやすい
■黄連解毒湯
■甘麦大棗湯
■桂枝加竜骨牡蠣湯
■三黄瀉心湯   
■桃核承気湯(実証、のぼせ、足冷、下腹部痛)
■抑肝散(神経過敏、恐がり、高血圧)


喉頭炎 
   laryngitis
⇒喉頭の急性の炎症。
声帯が喉頭にあるので、声枯れ・失声が合併症として起こります。
【芳香療法】
    <1>安息香チンキ
    <2>ラベンダー
    <3>サンダルウッド
    <4>タイム
【色彩療法】
    <1>青緑色(急性)
    <2>すみれ色(急性)
    <3>レモン色(慢性)
    <4>青色(慢性)
  【宝石療法】
     アンバー


【処方名-50音順】(喉頭炎)
■桔梗湯(咳嗽、喀痰、舌苔微黄)
■荊芥連翹湯
■半夏厚朴湯


喉頭結核
【処方名-50音順】(喉頭結核)
■芎帰膠艾湯
■麦門冬湯(咳嗽<ケイレン性>、顔面紅潮、咽喉不利、痰出しにくい、皮膚枯燥、心下痞、脈浮弱)
■半夏苦酒湯

喉頭ガン
【喉頭】=食道と気管との交差点である咽頭の奥にあり、気管のはじまる部分。

甲状・輪状・喉頭蓋の3つの軟骨が枠組みを作り、中に配置された声帯などを、さまざまな筋肉や靱帯が連絡する。本来の役目は発生であり、又、空気の通り道として、きわめて重要な働きをしている。

自己診断リスト:以下の症状が2週間以上続く。

早期喉頭ガンに見られる症状:
 ○声がれが続く。
 ○首のあたりが腫れてきた。
 ○時々、タンに黒い血のすじや塊が混じる。

頻度は少ないが、要注意な症状:
 ○カゼを引いてもいないのに、鼻づまりになる。
 ○食べ物を呑み込むときに、痛みを感じる。
 ○首筋にグリグリしたシコリがある。

進行ガンor他の疾患も考えられる症状:
  ○呼吸時に、ゼイゼイ音がして、息苦しい。
  

【処方名-50音順】(喉頭ガン)
■半夏苦酒湯

 

喉痺(こうひ)    
=喉痛・喉閉(こうへい)
=喉中閉塞して通ぜざること。扁桃炎等。
  
<1>咽喉に瘡が出来て声が出ない:[秘伝降気湯-陳皮+黄芩]
<2>咽喉失音:[通隘散][増損如聖湯][荊芥湯][通関湯][桔梗湯][神効散]
<3>喉閉生瘡による失音:紫石を使う。
<4>流行性喉痺:「鴨膂・胆礬」作末し半銭を喉中に吹き入れる。
<5>喉痺:「胆礬・石緑」作末し薄荷汁に醋を混ぜ、鶏の毛につけて喉内に入れる。 [吹喉散][引痰真捷法][去涎方]
  

【処方名-50音順】(喉痺)
■一字散(急喉痺・纒喉風・咽喉閉塞・水穀不下・関牙緊急・人事不省)
■引痰真捷法(喉痺)
■加減薄荷煎元(風熱と咽喉腫痛)
■加味四物湯[7](喉痺・喉痛・喉瘡)
■甘桔湯(咽痛)
■桔梗湯(咽喉のしゅつで音声がちぎれる)
■王鑰匙(急喉閉・纒喉風)
■王屑無憂散(骨子などが咽喉につかえて降りない)
■去涎方(喉痺)
■金鎖匙(急喉閉・纒喉風)
■金消丸(咽喉が腫れる)
■荊黄湯(風熱で咽喉が痛む)
■荊芥湯(咽喉腫痛・声が出ない)
■鶏内全散(喉閉・単蛾・隻蛾)    
■解毒雄黄元(喉閉・口噤)
■絳雪散(咽喉に熱痛・腫塞)
■牛黄凉膈元(咽喉腫痛・口舌生瘡・頬の赤腫)
■牛蒡子湯(咽喉腫痛・牙関緊急)
■滋陰清火湯《寿世保元》
■七宝散(喉閉・単蛾・隻蛾)
■消火補陰湯(喉痛・喉閉)
■上清元(咽喉腫痛と口舌生瘡)
■神効散(喉痺で声が出ない)
■吹喉散[1](咽喉腫閉塞)    
■青竜胆(咽喉閉塞・腫痛、単蛾・蛾)
■清咽膈散(乳蛾・喉閉)
■清涼散(咽喉腫痛)
■増損如聖散(咽喉腫で声が出ない)
■奪命散(急喉閉)
■治喉痺生瘡方(喉痺・乳蛾腫痛・生瘡潰爛)
■胆礬散(咽喉痺・腫塞)
■通隘散(喉痛・生瘡・声唖)
■通関散(喉痺腫痛で、言語の不能)
■二仙散(急喉閉・纒喉風の危急)
■白礬散(急喉閉・纒喉風)
■巴豆烟(喉閉の危急を治す)
■発声散(咽痛生瘡で声がでない)
■備急丹(咽喉閉)
■必用方甘桔湯(風熱で咽喉腫痛、喉痺に特効)
■氷梅丸(十八種の喉痺に効き、喉風腫痛を治す)
■仏手散(風熱による咽喉腫痛)
■利隔湯(咽喉生瘡)
■竜脳膏[2](喉痺腫痛)
■竜脳川芎丸(咽喉の諸病を治す)
■竜脳破毒散(急・慢・喉閉と腫塞不通)


哮喘(こうぜん)
=咳出て、喘し、胸中火の如く、気逆涎潮し、大息呻吟し、声は鋸を曳く如く、鼻は清涕を流し、心下蹋塞し、巨里の動奔馬の如きもの。喘息のこと。 ◎「哮」:主に呼吸が気急し、喉間に声(痰鳴)がある。声響をいう。
 哮病:[紫金丹]
◎「喘」:主に呼吸促迫をさす。気息のこと。   
◎哮喘甚だしき者は沈香を与えて効あり、木香も亦可なり。仲景専ら厚朴杏子を用いる。此れ癖気無き者の治に係る。今の世に在っては則ち多く癖気に属す。故に沈香・木香奏功するなり《勿誤薬室方函口訣》

【処方名-50音順】(哮喘)
■均気八仙散《寿世保元》
■三白丸(吼気を治す)
■紫金丹(哮喘で寝られないで、3年間も呻吟している)    
■清金丸(哮喘の症)
■千緡湯《医学入門》
■奪命丹(喘嗽でいびきをかき、上気する症)
■治喘一方《後藤艮山》
■定喘湯(哮喘の特効薬)
■兜鈴丸(喘促でいびきをかき、眠れない)
■立定散(哮吼)


哮吼
=呼吸が急促して喉に音が響く一種の症象である。
「哮吼」:呼吸せわしく、喉中に響声あるもの。
  

【処方名-50音順】(哮吼)
■解表二陳湯(哮吼)
■五虎二陳湯(哮吼で喘急し、痰が多い)
■蘇沈九宝湯《済世全書》
■定喘湯《万病回春》
■立定散


穀瘕(コクカ)
⇒体痩せ、腹膨れ、発熱口乾、小便赤く、或いは渋り、脈沈緊なる者。  《勿誤薬室方函口訣》



硬膜下血腫
=脳内で脳を保持している静脈(架橋静脈)が破れて出血。
■頭を打つ
「硬膜下血腫は頭を何かにぶつけて頭蓋骨の内側にある硬膜の下に血が溜まる病気。激しいスポーツで頭をぶつけたり鴨居に頭をぶつけて起きる。
【慢性硬膜下血腫】
Aさんは頭が締め付けられているように痛んで目が覚める日が1週間ぐらい続いた。日中は痛まないが、咳をしたり力むと痛む。さらに階段の上がろうとすると脚がつっかるようになってきた。
CT検査の結果、慢性硬膜血腫と診断され、局所麻酔で頭にたまった血を吸引する手術を受けた。原因は1ヵ月ぐらい前に、酔って壁に頭をぶつけたことらしい。
頭をぶつけると、脳そのもの自体は傷つかないが、脳から出ている静脈が切れる。そして頭蓋骨の内側を覆う硬膜の下に出血した血が溜まって脳を圧迫する。そのため以下の症状が出てくる
・頭痛
・手足のマヒ
・軽度のもの忘れ
認知症は脳梗塞に似た症状が出てくるがCTやMRIで区別が出来る。
酒好きの高齢男性は要注意・・・高齢になると血管がもろくなり、脳が萎縮して出血しやすい。70才以上の発症率は7倍ちかい。脳梗塞の予防に抗血小板剤を服用している人や酒好きほどリスクが高まる。
手術・・「穿頭術」
頭蓋骨に直径1.5cnの穴を開け、細いゴム製チューブを入れ、溜まった血液を吸引し、生理食塩水で洗い流す。術後1週間ぐらいで退院できる。穿頭術で9割以上が完治する。
【急性硬膜下血腫】
原因:交通事故
ボクシング
ラグビー
柔道
などで頭を強打したときに起き、年齢に関係ない。救命できるかは時間との勝負になる。頭を打った直後から頭痛がしたり意識を失ったりする。手術は開頭手術が一般的。発症から3時間以内で3/4が助かるが、4時間以上経過すると、9割が死亡する。」2005.10.4《日経》
    

膏淋
膏淋:小便が濁ること膏に似て、油の様に浮いて固まる。
   ■「海金砂散」
   ■「香児散」
   ■「秋石元」
   ■「麻角霜丸」



黒色便
  【処方名-50音順】
■茵蔯蒿湯(発黄、舌黄苔、二便不利、口渇、心胸不安、上腹部膨満感(軽)、
■桂枝茯苓丸
■桃核承気湯(実証、のぼせ、足冷、下腹部痛)



黒色肉腫malanosarcoma
  【処方名-50音順】
■紫根牡蠣湯《黴癘新書》


黒色表皮腫
=クビや脇の下、股間に黒くザラザラしたブツブツがたくさんできた。そんな症状があったら、早期の胃ガンが隠れている可能性がある。
黒色表皮腫と呼ばれ、不定形の黒褐色の発疹が皮膚のこすれやすい部分に出る。1つひとつは米粒大以下。触れると硬く盛り上がっていておろし金のような感触だ。痛みやカユミが生じることもあるが、何も感じない人の方が多い。
良性型、
悪性型、
仮性型の黒色表皮腫に大別されます。
黒色表皮腫の最大の原因は「胃ガン」だ。胃の腺ガンが出すタンパク質が引き起こす。糖尿病やある種の先天性疾患が原因のこともあるが数は少なく、中高年の場合は真っ先に胃ガンが疑われる。
X線などでは見えない小さなガンでも、黒色表皮腫はできる。






黒内障
   amaursis
⇒元来は視力が全く消失した状態を言ったが、現在は著しい検眼鏡的or他覚的所見が無いのに失明する場合に限定している。
<1>先天黒内障 amaurisi congenita
<2>尿毒性黒内障
<3>ヒステリー性黒内障
<4>家族性黒内障性痴呆
<5>その他 球後視神経炎・外傷後に症状が出ることがある。

【処方名-50音順】(黒内障)
■三黄瀉心湯
■桃核承気湯
■防已黄蓍湯
■補中益気湯


黒皮症
  【処方名-50音順】
■黄連解毒湯
■梔子柏皮湯
■白虎加桂枝湯
■木防已湯

 

黒斑
【処方名-50音順】
■桂枝茯苓丸

腰が痛い
■腰痛の代表的な原因
「椎間板の中心にある髄核が、外に押し出され、神経などを圧迫して痛みを起こす病気だ。髄核を囲む繊維輪に、なんらかの原因で、亀裂が生まれるのが引き金になる。
 大阪医科大の永田裕人・講師(整形外科)によると、重いものを持ち上げるなどにより、急に起こることは少なく、長期間、無理な姿勢や、運動を繰り返すことで、少しずつ繊維輪が傷ついた結果だという。
髄核の飛び出し方によって、症状の軽重は大まかに3つに分けることが出来る。
<1>最も軽いのは、押し出された髄核が繊維輪内にとどまっている状態。
<2>次に、髄核が靱帯にまで達し、靱帯を隆起させて間接的に神経を圧迫する状態。
<3>最も重いのが、この靱帯を突き破って髄核が直接、神経を圧迫している状態だ。1996.9.3《朝日新聞》」

■新しい治療法ー経皮的髄核摘出法。
「本当に重症のヘルニアは、手術に頼らざるを得ないが、経皮的な方法で、従来の背中を切る手術の割合はかなり減らせるはずだ」と永田講師。
これは、背中から細いストロー状のパイプを、椎間板に差込、そのパイプの穴から専用器具で髄核をつまみ出す方法。髄核を取った後は、空洞になり、内圧も下がるので、神経への圧迫が低下するのをねらった方法。保険医療の対象にもなっているという。
また、今のところ、保険医療の対象外だが、同大学では約5年前、髄核部分の内圧を下げるのを目的に、レーザーの熱エネルギーで髄核を発散させる方法を開発、治療に使っている。
いずれも、局所麻酔で済み、2日程度で退院出来るという。
この他パパイヤから抽出した、タンパク質分解酵素・キモパインを使って、髄核に含まれる水分を保つ物質を溶かし、圧力を下げる治療法もある。1996.9.4     《朝日新聞》」"




腰が硬直
  【処方名-50音順】
■九味檳榔湯

(息切れ、胸苦しい、ふくらはぎの緊張、腹が張る・脹痛)




 腰がだるい
   =腰が重い
【処方名-50音順】
■八味地黄丸
■六味丸



 腰が冷える
【処方名-50音順】
■温経湯



 孤疝
=寝ると小腹がが入り、立つと小腹から出る。

睾丸のなかに入ると狐に似ているので孤疝という。寒湿が陰嚢中に注がれた症。痰病の一種。

処方

■[二陳湯+青皮・香附子・蒼朮]

■[二香丸]

■[丁香縫実丸]
      

■[四妙川縫丸]

■[茴香練実丸]


鼓腸(こちょう)meteorism (tympanities)
⇒腹部で気体が貯留するもの。
◎消化管内の気体は通常一定(約100‹)に保たれている。

気体が出来る理由:
<1>嚥下される空気(70%):
    神経症・ヒステリー・呑気症で増える。
<2>血液より移行してくるもの(20%)
<3>腸内細菌の作用で腐敗。発酵して(10%)
<4>その他:
 (a)気体の通過障害:
    腸閉塞、腸管運動の低下、腸麻酔
 (b)腸管内の気体の吸収障害:
    腸粘膜の炎症、循環障害、換気障害
 (c)腸管外の腹腔内気体貯留:
     消化管穿孔による遊離ガス
     人工気腹
     腸管嚢腫様気腫の破裂

気体を排泄する経路:
<1>血液へ移行する者(90%)
<2>排ガス
<3>ゲップ

◎(鼓腸)腹部が太鼓のように腫れて大きくなる、皮膚の色が萎え黄ばむ、脉絡が表面に現れることを特徴とする病症である。《古今方彙》
    腸の風気腫。腹の脹る病。
  
【漢方療法】  
鼓腸の末症に用いるなり:行湿補気養血湯《万病回春》

【処方名-50音順】(鼓腸)

■一物瓜蒂湯
■已椒藶黄丸
■寛中養胃湯《万病回春》
■枳実分消湯《寿世保元》
■強中湯《厳氏済生方》
■啓峻湯《張氏医通》
■下瘀血湯
■行湿補気養血湯《万病回春》
■香砂和中湯《寿世保元》
■香朴湯《万病回春》
■厚朴生姜半夏甘草人参湯
■広茂潰堅湯《蘭室秘蔵》
■四逆湯
■五子十皮湯《済世全書》
■消蠱湯《済世全書》
■旋覆代赭湯
■壮原湯《赤水玄珠》
■大黄牡丹皮湯
■大正気散《医学入門》
■大半夏湯《三因極一病証方論》
■中満分消湯《蘭室秘蔵》
■人参芎帰湯《医門法律》
■当帰芍薬散
■半夏瀉心湯
■分気紫蘇飲《医学入門》
■分消湯《万病回春》
■分心気飲《万病回春》
■平肝飲子《医学入門》
■補気健中湯《厳氏済生方》
■木香順気湯《医学発明》
■六君子湯《寿世保元》
■和栄順気湯《万病回春》

【臨床例】
☆《井觀醫言》より
「60余歳の一士人が鼓脹を患うこと1年にもなろうとした頃、余《尾台榕堂》に治療を請うて来た。これを診ると、腹皮は鼓のように張って、臍は突出し、四肢は痩せ衰えて、あたかも乾かした蛙のようであった。
胸骨や背骨が露出して眼や手掌、手の甲などは皆浮腫を現していた。飲食は少しも進まず、脈は微数で、全く無力であった。 病人が云うに、すでに治療の限りを尽くしたが、全然効果がないので、もう薬は服用したくない。若し針を刺して少しでも腹の脹ったのが減るならば、死んでも憾みはないと。
そこで余は言った。病がこのように烈しく、体力が衰えているから、針を刺すことは無益であると。けれども病人もその家人も針をすることを懇請して止まなかったので、臍のところに芫菁膏を貼り、包帯をしておいた。翌日の夜になると臍孔が腐潰して、水がしみ出していたので、1人が病人の背中を支え、2人が盥(カン=たらい)でこれを承ける用意をして包帯を取り去ると、粘った水が迸り出て、あたかも瓶の水をあけるようであった。水が出ること実に1斗余りで、脹満は一時に無くなった。腹の皮は殆ど背骨にひっつく有様であった。しかし、気息は全く奄々として絶えんばかりであったので、万能膏を以て臍孔を封じ。床上に仰臥せしめて茯苓四逆湯を与えた。
すると気息がようやく回復して、飲食が少しく進んだが、精神は遂に盛んにならず、10日を経て鬼籍に入った。
今にして思えば、水を取ったことも、畢竟は無益なことであった。」《荒木正胤》
☆《井觀醫言》より
「宮川藩の北側文助の妻は、鼓脹を患うこと半年余りであった。治を余に乞うたのでこれを診ると、腹部は膨満して起坐することも出来なかった。両脇下もまた脹満していて、病人が自ら云うに、拳のような塊が3つもあって、それが上下に動揺すると。
余が腹診してこれを押してみたが、腹満があまりに甚だしいので、その塊りに全く触れることが出来なかった。飲食は進まず、顔色は沈んで重く、両便は快利せず、脈は芤細で、経水は来らぬこと1年余りであるという。
そこで余はこれに大承気湯を与え、真武湯を兼用した。両便が快利し、脹満が日々に減退し、50余日を服して、やや起歩することが出来るようになった。そこで余は毛見川西可という者に、腹と背中を按摩させて薬を続けさせたところ、脹満が更に減じ、服薬半年余りで全治することが出来た。」《荒木正胤》
    

蠱脹
=腹部鼓脹して呼吸困難し衝心硬痛するもの。
【処方名-50音順】
■消蠱湯《済世全書》

 

克山病(こくざんびょう)
■セレン欠乏・ウイルス要因
「1935年頃、中国東北部の克山県に原因不明の心筋疾患が多発し、克山病と名付けられた。原因は一酸化炭素中毒であろうと考えられていた。1979年に中国の克山病検討委員会はこの疾患は一酸化炭素中毒ではなくセレン欠乏症であるという見解を示した。セレンは過酸化脂質を分解する酵素のグルタチオン・ペルオキシダーゼにも含まれる必須の微量元素である。最近、日本でも厚生省がセレンの栄養所要量を決めたばかりだ。
中国の克山病が発生する地域では土壌や食物中のセレン濃度が低く、セレン欠乏が発生したという。この地方の住民の血液中セレン濃度も低かった。
そこで、流行地域の住民にセレンを与えるという栄養政策がとられ、克山病の有病率や死亡率が減少したことが報告されている。しかし、この疾患についてはセレン欠乏だけでは説明出来ないとする意見もしばしば出されていた。
最近個の疾患の原因について新しい展開がみられた。まず、動物の体内などにいるコクサッキーウイルスをセレン欠乏マウスに与えると心筋障害が発生した。次にこのマウスから分離したウイルスを正常マウスに接種したところ、心筋障害が発生した。この結果はウイルスがセレン欠乏のマウスの体内を通るとウイルスの遺伝子に変化が起こり、毒性が強くなったと考えられる。実際、心筋障害の発病に関係すると考えられるリボ核酸(RNA)に変化が認められている。
栄養の欠乏が遺伝子の構造を変化させているという驚くべき報告であり、克山病もセレン欠乏にウイルス感染が加わって発病したものと推測される。[エイズウイルス][肝炎ウイルス][インフルエンザウイルス]などでも同様な現象が起これば重大な問題となる。」(糸川嘉則)1999.11.1《日本経済新聞》


 骨を破壊する病気
「ブラストミセス病」
「コクシジオイデス症」
「パラコクシジオイデス症」

■ガビ
「地球上に動物が出現して以来、無数の動物が生まれ、死んでいった。死体は直ちに他の微生物によって分解されていく。滋養に富んだ肉・内臓・血液などはアットいう間に分解されるが、分解されにくいものもある。
皮膚や毛・ツメ・角などの角質もその1つだが、水虫菌のような角質を好んで食べる角質分解菌が処理する。では最も分解が難しいと思われる骨はどのように処理されているのだろうか?
数年前からそんな疑問が頭をよぎりはじめ、自然界における骨分解を調べ始めた。教科書などでは骨は酸性の環境下で熔解し風雨や地震などの物理的作用で岩石が小石になるように分解されていくと記載されている。私はそのほかに、カビが分解に関わっているのではないかと考えた。
真菌(カビ)症の専門書を見ると、カビが骨を溶かしているレントゲン写真が掲載されている。カビが骨を破壊する病気としては、米国にみられる『ブラストミセス病』や『コクシジオイデス症』などがある。
それぞれ原因となる「ブラストミセス・デルマチチジス」や「コクシジオイデス・イミチス」などのカビが、内臓とともに頭蓋骨・脊椎・手足や指の骨などを熔解していく。
南米にみられる『パラコクシジオイデス症』も原因となる「パラコクシジオイデス・ブラジリエンシス」が骨を破壊しているケースが多い。黒色真菌症の原因で皮膚や皮下組織をむしばむ「フォンデカイア・ペドロソイ」も、全身の感染を起こすと骨を破壊する。
こうしたカビのなかには自然界の骨分解に関わり自然浄化に役立っているのではないかと考え、実験した。マウスの四肢の骨を骨膜を付けたまま取り出し、栄養成分を全く含まない寒天培地に置き、エクソフィアラ・スピニフェラやコクシジオイデス・イミチスなどを接種した。25℃で3ヶ月間培養すると、カビが骨の最も硬い部分にまで侵入していくのが観察された。私は骨分解にカビが関わっていることを世界で初めて報告した。(宮治誠・千葉大学教授)2002.10.20《日本経済新聞》


■骨の形成
「2008年、東北大学の鈴木治教授らのグループは、骨の形成を促す能力が従来の約1.7倍となる人工骨の候補材料を開発し、動物実験で性能を確認した。
開発した材料は低結晶性リン酸オクタカルシウム(OCP)。この材料は骨の成分であるヒドロキシアパタイトの前駆物質であることが知られている。また、骨を作る骨芽細胞を活性化する作用があるとされる。
鈴木教授らはOCPに含まれるリンとカルシウムの組成を調整して一部をアモルファス(非晶質)にすると骨形成能力が高まることを見いだした。開発した低結晶性OCPをラットの骨に埋め込んだ56日後の骨の組織を採りだし、新たに形成された骨を調べたところ、従来のOCPより約1.7倍多かった。
人工骨は、骨の腫瘍を摘出し骨を失った患者へ移植されている。」



 骨ガン
■温熱療法
東京工業大学の田中順三教授と阿部正紀教授らは、[肝臓ガン]や[骨のガン]などの治療に活用できる粒子を開発した。外側が骨の成分と同じアパタイト、内側が酸化鉄あkらなる。酸化鉄を温熱療法に活用できるほか、多孔質のアパタイトから抗ガン剤を放出できるようにする。2008年から動物実験に着手し、3年後の実用化を目指す
物質・材料研究機構も開発に加わった。開発した粒子は直径が1~2マイクロ㍍。中心部にマグネタイトという酸化鉄の磁性材料があり、外側を酸化鉄の水酸化物であるレピドロサイト、さらにその外側を骨の主成分である多孔質アパタイトで覆う三層構造になっている。ガン治療に用いのは酸化鉄とアパタイトで、レピドクロサイトはこれらをつなぐ役割をもつ。
現在は粒子を合成した段階で、来年度より動物実験を開始する。ガンの部分に粒子を投与。体の外からラジオ波を照射すると酸化鉄の温度が上がってガン細胞を死滅させるという。あらかじめ多孔質アパタイトに抗ガン剤を染み込ませておけば、温度上昇で薬を徐々に放出できる複合効果も期待できる。
酸化鉄だけを温熱療法を使った場合には巨大化などで体に悪影響が出る可能性がある。

■脊椎ガン
専門医:富田勝郎・金沢大学付属病院長
1989年、脊椎ガンの女子中学生とその家族の同意を得て、初めて行った手術は21時間かけ無事成功した。その後も一例一例、未知のジャンルを切り開いてきた。
糸のこぎり状のワイヤ(T-Saw)のアイデア
ガンの転移巣にある脊椎骨にワイヤを通し、内側から外側に向けて切り出し、脊髄を避け脊椎ガンを丸ごと取り出す。取り除いた空間には人工骨や自家骨を挿入、脊椎を金属ロッドで再び構築する『脊椎がん全摘術』が完成した。
100例を越えた実績から2003年国から「高度先進医療」の承認を受けた。



骨関節症  osteoarthritis
⇒健康な老人に徐々に発症。
◎初め機能障害があり、続いて、運動時に関節が痛む。
◎特徴:
 腰椎・股・膝関節に好発。
 関節に炎症はない。
 慢性関節リウマチ・痛風に合併することあり。



骨セメントで副作用
■股関節手術のの接着剤である「骨セメント」を使用した患者が、副作用とみられる急激な血圧低下で死亡した問題で、最初に注意を喚起した92年9月からこれまでに、同様の症状で13人が死亡していたことが30日、厚生省の調べで分かった1998.3.31《日本経済新聞》



骨形成不全症
⇒先天代謝異常の1つ。常染色体性優性遺伝。
◎病因:コラーゲンの代謝異常。
◎症状:
 先天性:胎児(死亡、生まれつき骨折)
 遅発型:青色強膜
      難聴
      歯牙異常


骨結核
【処方名-50音順】
■十全大補湯


 


骨蒸(こつじょう)
=骨蒸とは、熱の内に強く骨を蒸す如き形状に見ゆる故に名づく。

《外台秘要方》に専ら出ず。《遵生八牋》に焼骨労と云う、同病なり。《勿誤薬室方函口訣》
◎労瘵に同じ。

=蒸病の一つ。ひどい骨蒸になると
 声が枯れ、
 のどが痛み、
 顔色は黒くしなび、
 直視すると玉の汗をかき、
 喘は弱く気は促し、
 皮膚はしなび、
 唇がひっくり返る。
   

◎漢方

「腎虚労傷」----六味丸、滋陰降下湯
「血鬱」--------治婦人骨蒸云々方《官邸便方》

【処方名-50音順】(骨蒸)
■解労散
■加減逍遥散
■黄蓍湯
■五蒸丸(骨蒸で熱があって脈が少なく、口が乾き煩躁する)
■五蒸湯[2](骨蒸で熱があって脈が少なく、口が乾き煩躁する)
■地骨皮散(骨蒸の熱を治す)
■柴胡桂枝乾姜湯+黄蓍・鼈甲
■柴胡散
■柴前梅連散(骨蒸労熱が治らないとき)
■四物湯(貧血、皮膚枯燥、動悸<臍上>、神経症状、腹部軟弱、脈沈弱)
■逍遥散
■秦芁鼈甲湯
■秦芁扶羸湯
■清骨散(五心に熱があって労瘵と骨蒸になろうとするとき)
■団魚散(骨蒸による熱と咳嗽を治す)
■地仙散(骨蒸の肌熱と一切の虚煩を治す)
■治婦人骨蒸云々方《官邸便方》
■人参散
■人参清肌散(虚労・骨蒸・潮熱・無汗を治す)
■麦煎散(骨蒸により顔色が黄色く痩せ、口臭を放ち肌に熱があって寝汗が出る)
■鼈甲散
■補天丸[2](陰虚骨蒸に発熱し痩せる)


骨髄異形性症候群 
(MDS)(myelodysplastic syndorome)
=「不応性貧血」「前白血病」ともいう。

◎特徴:
①血球減少症
②正~過形成骨髄
③血球形態異常を特徴とし、無効造血状態から急性白血病への転化が予想される病態。
      

「無効造血」=骨髄の中で造血細胞に異常があり、血球として血液中に放出される前に壊れる状態をいう。
再生不良性貧血と同様に白血球、赤血球、血小板が全部減ります。
再生不良性貧血と違うところは、骨髄の中では細胞が減らないということです。

◎分類:
<1>不応性貧血
<2>鉄芽球性貧血(後天性獲得性):
  赤芽球核のまわりに鉄が沈着しヘモグロビン合成が障害される。
<3>白血病芽球の増加を伴う不応性貧血:
  白血病芽球がわずかに(5~20%)骨髄に現れる。
<4>白血病になりかかっている不応性貧血:
  もっと芽球の割合が増えた状態。
<5>慢性骨髄単球性白血病

◎感染や出血を起こしやすく、注意が必要です。




骨髄移植
(参照→「移植片対病」)
■骨髄移植のときに白血球減少を抑える「GーCSF製剤」の副作用とみられる急性呼吸窮迫症候群で4人が死亡。1998.3.31《日本経済新聞》

■新手法
「関西医科大学の池原進・移植センター長らは29日、白血病や先天性免疫不全症の患者らの治療に利用されている骨髄移植の新手法を開発したと発表した。提供された骨髄細胞を処理せずにそのまま患者の骨髄に注射する方法で、これまでにネズミを使った実験で硬化と安全性を確認した。1年以内に海外で臨床試験を始めたい考えだが、もし人間に適用できれば、提供者と患者の白血球の型(HLA)を合わせる必要がないため、移植の機会が大幅に広がりそうだ。」2000.6.30《日本経済新聞》
「関西医科大学の池原進教授は、3/1、白血病などの治療に使われている骨髄移植の新手法をサルの実験で成功させた。新手法は型を問わずに移植が出来る。
放射線を当てて白血球を作れなくしたサルの骨髄に別のサルから採取した骨髄を注入した。提供側のサリの局所麻酔をかけた腕の骨2カ所に針を刺し、片方から食塩水を流し込み、他方から骨髄液を回収した。腰骨に何度も針を刺す現在の方法に比べ、免疫拒絶に関係する細胞が混ざりにくいうえ、提供者も負担が小さい。移植後約10日で、提供側の骨髄に由来する白血球が増え始め、21日後に正常に近い数に達した」2003.3.1《日本経済新聞》

■ドナー負担軽く
「骨髄提供者の負担を減らし、患者への副作用も起こりにくい骨髄移植の新方法を関西医科大学の池原進教授らが開発した。従来の方法では提供者に全身麻酔をして腰の骨を多数針で刺す必要がある。新方法はまだ動物実験段階だが、ヒトに使えれば局所麻酔で2カ所刺すだけで済むという。
従来は提供者に全身麻酔をかけ、腰の骨を何度も針で刺して少しずつ吸い出した骨髄を、患者の静脈に注射していた。新しい方法は大腿骨の2カ所を針で刺したまま、一方から生理食塩水を流し、反対側から押し出された骨髄を一度で採取。これをそのまま患者の骨髄に直接注射する。池原教授らはこれまでマウスで安全性を確認し、昨年7月からサルでの実験を続けている。
池原教授によると、従来の方法では周囲の血液にあるリンパ球が多く混ざってしまい、そのリンパ球が患者の体を他人と見なして攻撃する『移植片対宿主病(GVH病)』を起こしやすかった。また、患者には事前に放射線を当てて造血幹細胞の多くを殺すが、生き残った細胞が移植された細胞を拒絶する恐れもある。
新方法では、(1)骨髄液を押しだして取るため、リンパ球が混じりにくい。(2)提供者の造血幹細胞を手助けする細胞を一緒に移植できるので寝付きやすい環境ができ、造血や免疫の機能の回復が早い--------などの長所がある。」2000.6.30《朝日新聞》


骨髄炎 ラOsteomyelitis
=骨膜炎 ラPeriostitis
【骨髄炎】⇒骨髄の炎症であるが骨髄だけでなく骨質・骨膜も侵される。
【骨膜炎】⇒外骨膜の炎症の総称。

【処方名-50音順】(骨髄炎)
■越婢加朮湯
■大黄牡丹皮湯
■防已黄蓍湯(上半身、足がむくむ)

 


骨髄腫
(参照→「骨の腫瘍」「サリドマイド」)

サリドマイド
「かってサリドマイド児の惨禍を招き、製造中止に追い込まれた睡眠剤「サリドマイド」が、骨髄のガン、骨髄腫に有効であることが分かり、治療薬として使用するため、『日本骨髄腫患者の会』が窓口となって6日までにブラジルから輸入した。
サリドマイドは1950年代~60年代前半にかけ、睡眠・鎮静・つわりの薬として販売された。しかし、妊婦が使用した場合、手足などが欠損するサリドマイド児が多数生まれたことで社会問題化。我が国では62年、出荷停止された。
その後の海外での薬効研究で、ガン細胞の栄養補給路となる腫瘍血管の形成抑制や、骨髄移植後の拒絶反応を抑える効果が判明した。倍・アーカンソーがん研究所では、他に治療法のない末期の骨髄腫患者にサリドマイドを投与したところ、骨髄細胞から出る異常なタンパク質の量が、半数以下に改善した割合は25%、約1/3の患者は病状が改善した。
このためFDA(米食品医薬品局)は98年10月、サリドマイドを骨髄腫の治療薬として承認。他のガンやハンセン病、エイズなどにも使われている。」


骨髄性プロトポルフィリア
⇒ポルフィリン代謝異常症の1つ。常染色体性優性遺伝。
◎症状:
  無効造血像
 光線過敏症


骨髄増殖性腫瘍
■発症の仕組み
2011年、滋賀県立成人病センターの入野保臨床検査部主任技師長、内海貴彦血液腫瘍内科科長、同センター研究所の木下和生専門研究員らのチームは、血液がんの一種である骨髄性増殖性腫瘍の発症メカニズムを解明した、
成果は米科学誌プロスワン(電子版)に掲載
骨髄増殖性腫瘍では頻繁に、血液の元となる骨髄内の細胞にある遺伝子「JAK2」の変異が見つかる。チームはこの遺伝子中617番目にあるアミノ酸がバリンからフェニルアニンに置き換わると、細胞内で「PU、1」というタンパク質を増やす信号を出すことを確認。
PU、1は骨髄増殖性腫瘍患者に多く、動物実験では血液腫瘍の原因になることが知られている。


骨折
   ◎チェック:「低フォスファターゼ症」
■骨折固定材を開発
「京都大学生体医療工学研究センターの研究グループは、骨折部位の固定に使う新医療用材料を開発した。ゆっくり分解し体内に吸収される性質を備える。実用化されれば従来の金属製固定材と違って回復後の除去手術が扶養になる。     

動物実験で効果を確認できた。
 ポリ乳酸という材料を使って編んだリボン状の材料で、筏義人教授らが開発、富田直秀助教授らが足の骨が損傷したネズミに使用、骨がつながって回復することを確認した1997.2.15《日本経済新聞》
   
■衝撃波で手術並み成果
「神奈川県内の高校3年生で、サッカー部員のAさん(17)は、昨年5月頃から、練習中に左手首が痛むようになった。ゴールキーパーを務めるが、痛みでボールをキャッチできない3ヶ月しても良くならず、整形外科医院を訪れた。
検査で、手首にある舟状骨と呼ばれる船形をした小さな骨が折れ、骨がくっつかないままになっていることが分かった。治療には骨盤の骨を移植し、ネジで止める手術が必要だと言う。「捻挫かなと思っていたのに、手術と入院が必要と聞いてがっくり来ました」とAさん。
手術を受けるために、紹介された湘南鎌倉総合病院を訪れると、整形外科医長の岩田修さん(37)から、手術の代わりに『体外衝撃波治療』という新しい治療法を説明された。「入院も必要ない」と聞き、受けることにした。
手首には10個以上の骨が寄せ集まっている。舟状骨の骨折は、転んで手をつくなど手首を後ろにそらす形で衝撃が加わったときなどに起きやすく、手首の骨折では最も多い。
Aさんの場合は、ボールを受けた際の衝撃で傷めたらしい。骨折に気づかず放置していたため、骨が折れたままの状態で固定せず、関節のように動く『偽関節』と言われる状態になっていた。骨折の中でも治りくいとされる。
超音波で伝わる衝撃波は、筋肉や脂肪は通過するが、骨には力が加わり、骨組織の出血や破壊を引き起こす。これが骨を作る細胞の働きを刺激し、新しい骨が出来るのを促すとされる。90年代に入りヨーロッパで使われ始め、日本では97年から効果などを調べる臨床試験が行われている。
治療は局所麻酔をした上で、衝撃波活性装置のアームの下に患部を置き、電圧と照射回数を調節して照射する。Aさんの治療は15分ほどで終わり、照射後3ヶ月間、ギプスで固定した。
同病院ではこれまでに、てくびの舟状骨の偽関節患者7人に衝撃波を行い、うち5人は治癒した。これは手術をした場合の成績とほぼ同じだ。」

■手首の骨折
「横須賀北部共済病院は、体内で患者自身の骨と置き換わる特殊な人工骨を使って手首の骨折を治す新療法を開発。
ギプスの代わりに特殊な器具を併用するので、回復した後で手首の関節が動かしにくくなる後遺症もほとんど残らない。」
『創外固定』と呼ぶ治療法で患部を大きく開かないのでギプスは不要、後遺症もほとんど残らない。
創外固定は骨折の治療だけでなく、外傷やガンなどで骨を切除した患者の手足を伸ばす『延長術』としても利用されている。伸ばしたい骨をわざと切断し、それぞれの部分に細いワイヤをかけて創外固定器につなぐ。ワイヤを少し引っぱると、切断面にすき間が出来、これを埋めようと骨のもとになる組織が作られる。1日に1~2㍉㌘すき間を広げて目標の長さまで伸ばす。
以下の病院で脚の延長術(イリザロフ法)が受けられる
筑波大学付属病院
独協医科大学大学付属越谷病院
帝京大学医学付属病院
日本医科大学付属病院
神奈川県立こども医療センター
金沢大学医学部付属病院
京都府立医科大学付属病院
滋賀県立小児保健医療センター
徳島大学病院
長崎友愛病院

■骨の吸収
「慶応義塾大学の須田年生教授らは、骨の新陳代謝のうち、骨の吸収が起きる仕組みを解明した。特殊なタンパク質の働きによって骨を吸収する細胞が融合、巨大な細胞を作り、骨を吸収していくことを突き止めた。
骨の中では、骨を作る細胞と骨を吸収する細胞が協調して働き、新陳代謝が起きている。須田教授らは、骨を吸収する破骨細胞が効率的に働くためには『DC-STAMP』と呼ぶタンパク質が重要であることを見つけた。
遺伝子を操作してこのタンパク質を持たないマウスを作り確認。通常、破骨細胞は骨の中で集まって巨大な細胞を作って効率的に細胞を吸収するが、このマウスでは細胞が集まらず、吸収効率も下がった。
破骨細胞が過剰に働いて骨の新陳代謝のバランスが崩れると、骨粗鬆症などを発症する。」2005.12.9《産業》

■人工骨
「大阪大学医学系研究科の吉川秀樹教授らは、患者自身の肝細胞を入れた人工骨を利用した骨の再生医療技術を開発。
患者自身の骨髄から間葉系幹細胞を注射で採取。この細胞を特殊な培地で培養し、骨の元となる前骨芽細胞に成長させる。その前骨芽細胞を多孔質のリン酸カルシウム(ハイドロキシアパタイト)製の人工骨に振りかけて培養を続けると、人工骨の中で細胞が骨に成長する。これを患者の骨の欠損部分に埋め込む。」2006年1/12《産業》

■強度が変えられる人工骨
「上智大学と明治大学のグループは体の部位や年齢に合わせて強度を調整できる人工骨材を開発。使用後は時間とともに分解されて骨と同化する性質を持っており、再手術で取り出す必要がない。
現在はチタンやセラミックなどを使っているため、役割を終えた後に取り出す再手術が必要だった。
研究グループは生分解性ブラスチックなどに使うポリ乳酸(PLA)と、PLAに似た構造のポリグリコール酸を配合して作った。骨の主成分となる多孔質アパタイトのPLAとポリグリコール酸を加え、1週間、130℃で加熱する。
PLAとポリグリコール酸の配合比率によって骨の強度を変えられる。」
■注射薬で再生
「国立病院機構宇都宮病院の田中孝昭臨床研究部長は骨の再生効果を高めた骨折治療用の注射薬を開発した。顆粒状の人工骨に細胞の成長を促す成長因子薬などを混ぜ合わせてあり、動物実験で効果を確認した。現在臨床試験中。
この注射薬は骨折や骨腫瘍の手術などで削り取られた骨の欠損部を埋めるために使う。手術などでできた骨の穴に充填して使う。
白いペスト状で、市販されている直径1~3mmの顆粒状の人工骨に、成長因子薬の「フィブラストスプレー」・ヒアルロン酸を加えた。
人工骨はスポンジ状の細かい穴が開いており、その穴に血管や細胞が入り込んで新しい骨ができるが、成長因子薬が細胞や血管を作るのを促して、骨の再生を速める。

■腰椎骨折とカルシウム
「2008年6/26、厚生労働省研究班(主任研究者・津金昌一郎・国立がんセンター予防研究部長)は、カルシウム不足の女性は腰椎を骨折するリスクが最大で2.1倍高めるという疫学調査を発表。
腰椎骨折すると、腰が曲がり、痛みを感じるようになる。」

■骨の質を正確に判定
「中野貴由・大阪大学教授は、骨の強さやもろさを正確に調べる装置を開発した。骨の主成分であるアパタイトの結晶が並ぶ方向を解析し、骨質を診断する。
骨はコラーゲン線維とナノ㍍サイズのアパタイト結晶が結合した構造。結晶は一定の方向に規則正しく並ぶことで、強度を維持している
骨の再生治療では、治ったようにみえて強度が足りない事があるが、新しい装置で正確に状況を評価できる。」

■再生医療
「2008年、神戸大学の黒田良祐講師と先端医療振興財団・先端医療センターは、骨折した後に骨がうまく元に戻らない『偽関節』の患者を対象とした臨床研究を始める。
骨や血管のもととなる患者本人の細胞を骨折部分に注入して骨をくっつける。偽関節は骨折した後に手術やギブスで固定しても、折れた骨がくっつかない症状。骨折患者の5~10%に見られ、再手術しても改善しないケースが多い。
超音波で刺激して骨をくっつける治療法などがあるが、より効果の高い治療法が求められている」
■人工骨で欠損部を再生
「2012年、医療機器開発のMMT(大阪市)は、患者の骨髄から採った間葉系幹細胞を人工骨に注入して骨の再生を促す先進医療の実用化に乗り出す。
事故や病気で大きく骨が欠けた場合、現在は本人の骨を移植するのが主流。
同社の技術を使えば、部位にもよるが、早ければ3ヵ月ほどで欠損部を再生できる。
大阪大学と共同で動物実験に着手。
MMTは内部に多数の穴を持つ気孔構造の人工骨を販売している。この人工骨を足場に骨や神経など様々な組織に分化できる間葉系幹細胞を培養すると、骨の組織が形成されることを確認、

【色彩療法】(骨接ぎ後に)
    <1>オレンジ色
    <2>レモン色
    <3>青色


骨槽風
=下顎骨潰瘍。   

【処方名-50音順】
■茵蔯散
■桂枝加朮烏湯(久瘡収まらない者)
■涼膈散(初起)


骨疽
=附骨疽⇒骨壊疽。

【処方名-50音順】
■黄蓍建中湯





骨粗鬆症  osteopoiklosis   
=「骨多孔症」
⇒骨の吸収は正常に近いが、骨の添加が不十分なために骨梁が粗になり、海綿様の多孔性の骨組織となった状態。

◎骨折を起こしやすい。
◎使用される医薬品:世界市場の1/2が日本。
<1>カルシウム剤
<2>活性型ビタミンD3:

   イ)1α型
   ロ)1.25水酸化型
<3>カルシトニン筋注:

    イ)エルカトニン
     ロ)サケカルシトニン
     ハ)ブタカルシトニン
<4>ビタミンK2
<5>イブリフラボン
<6>女性ホルモン
<7>ビスフォスフォネート:体内の酵素で分解されない人工物質。  
   

■インターロイキン6[IL6]が、体内で骨を破壊する「破骨細胞」の働きを活性化する。

■診断より正確に
「骨粗鬆症は高齢の女性に多く、少しぶつけた程度でも骨折してしまう。患者数は500万人とも言われ、寝たきりになるきっかけとなることも多い。
骨は体の新陳代謝の中で日々壊され新たに形成される課程を繰り返しており、高齢になると骨の量が減ること自体は病気とはいえない。分解と形成のバ ランスが崩れ通常より骨からカルシウムが溶けだし骨の量が減って骨折しやすくなってしまうのが骨粗鬆症だ。
カルシウムは人間の成長とともに増加するが、30代以後になると徐々に減る。特に閉経後の女性はカルシウムを骨につなぎ止めているホルモンが激減してしまう。若い人でも無理なダイエットを重ねると体調が崩れ骨粗鬆症予備軍になることがある。
日本骨代謝学会では昨年10月、骨粗鬆症の診断基準を改め他の病気と明確に区別出来るようにした。診断にあたっては背骨のレントゲン写真を診断状で重視、レントゲン写真で骨の状況をよく確かめるべきとし、その後、必要に応じて骨量測定装置で腰の骨などを測定診断をする。
 従来、腰骨の量が20~40代の人の平均値から20%異常減ると骨粗鬆症としていたのを、
<1>平均値から30%異常減った場合を「骨粗鬆症」、
<2>平均値から20~30%減を「骨量減少症」

「骨量減少症」=深刻ではないが要注意な状況。
 

これまで内科・婦人科などで診断の基準にバラツキがあり、骨量測定だけで骨粗鬆症と診断しがちだった現状を改めた。腰痛で来院した人に対して骨量測定から骨粗鬆症と診断、腰痛の原因を同症だけに限定してしまう場合も考えられた。改訂の結果、診断が正確になっただけでなく、骨粗鬆症の診断を受けるケースが減り患者に無用な不安を与えないですむ。
 治療薬の研究も進んでいる。現在はカルシウムを補うカルシウム製剤の他、骨からカルシウムが抜けるのを抑制するエストロゲン(女性ホルモン)、骨にカルシウムを運ぶカルチトニン(ホルモンの一種)、ビタミンDなどがある。
徳島文理大学の勝沼信彦教授は、骨内のコラーゲンというタンパク質の分解を抑える物質を開発した。『コラーゲン』はカルシウムを骨の中に留める役割を担うが『カプテシンL』という酵素によって分解される。
 勝沼教授らは、酵素の分子構造をもとに、カプテシンL抑制効果がある3種類の物質を作った。

カルシウム所要量は

*米国では:1日1100mmg。
*閉経後の女性・・・ 1500mmg。       * 65以上の男性・・・ 1500mmg。
     1996.6.15《日本経済新聞》より」

■牛乳の「キニノーゲン」「HMG」=骨芽細胞の働きを活発にする。
「キニノーゲン」:血管内で血圧を下げる働き。
「HMG」=細胞中で遺伝子であるDNAの転写を促す。

■大豆の「イソフラボン」。
「フジッコは25日、大豆に含まれる成分「イソフラボン」が骨粗鬆症の予防に効果が有ることを確認したと発表した。女性ホルモンに似た構造を持ち、カルシウムが骨から溶け出すのを抑えて骨の密度を保つという。25日京都で始まった日本栄養・食糧学会で3件の研究結果を発表する予定。
イソフラボンは[大豆][クズ根]に含まれ、生理活性作用を持つ炭水化物。     

大豆の場合、種子の胚芽に多く含まれ、通常の調理では基本骨格は損なわれない。[前立腺ガン][乳ガン]予防への効果も注目されている。
カルシウム流出の測定は、[ピリジノリン]という物質の量で間接的に測る。尿中に含まれるイソフラボンの量が多いほどピリジノリンが少ない。
 骨粗鬆症予防効果は、豆腐を食べる習慣のある沖縄からハワイ島へ移住した日系一世、日系二世の200例を対象に、骨密度と食生活に関する調査を実施して確認したという。京都大学の家森幸夫教授との共同研究。1996.4.26《日経産業新聞》」

■骨の老化
「私(大阪大学人間科学部教授・柏木哲夫)は38歳の時、忘れられない経験をした。1つは骨折である。歩行中、くぼみに足を取られ、捻挫のようになった。少し痛んだが、勤め先の病院へ行き、勤務を始めたが、次第に痛みが増し足の甲が腫れ、軽い内出血もあったので、整形外科医の勧めでレントゲン撮影をすると、足の甲の中足骨が折れていた。
整形外科医は骨の老化現象だという。38歳で老化現象とは信じられないと思ったが、彼は「骨の老化は35歳から始まる」と事も無げに言った。
    1996.7.27《日本経済新聞》」

■どんな人が骨粗鬆症になりやすいか?
<1>まず、やせ過ぎの人は、骨への負担が少ないので鍛えられず、骨量も少ない。「過度のダイエットで痩せすぎて、生理不順にもなり、骨粗鬆症になる例がある」と横浜市立大医学部の水口弘司教授は話す。
<2>運動不足によって筋肉が発達していない人も、骨は鍛えられない。
<3>胃腸が丈夫でない人も、食物からのカルシウムの吸収が悪いので不足になりがち
<4>喫煙・飲酒の習慣がある人も、カルシウムの吸収が少ない。
<5>「遺伝的な要素もあると考えられている。近親者に骨粗鬆症の人がいれば、注意が必要だ」と大阪市立大医学部の森井浩世教授。
1996.8.21《朝日新聞》

■骨塩量より丈夫さが重要
「骨まで愛して」とまで歌われる骨は、中年以降、ホルモンの減少とともに痩せていく。減り方が極端だと骨粗鬆症かもしれない。ほとんどが女性だ。
「一時期、骨粗鬆症から骨折、寝たきりとすべての女性が進むかのように受け止められた。実際は一部の人が骨粗鬆症になり、その一部が骨折し、寝たきりになるのはそのまた一部なんですが」。昨年、日本骨代謝学会で骨粗鬆症の診断基準づくりに尽力した井上哲朗・浜松医大教授(整形外科学)は苦笑する。
カルシウムやリンなど

骨の中の無機成分が<骨塩>だ。骨粗鬆症への注目は、骨塩量(骨密度)測定装置の進化と関連している。X線写真の濃淡から骨の萎縮を読み取っていた20ほど年前までは、定量的な研究は難しかった。今は2種類のX線を当て、X線の吸収の仕方から骨塩量を1%の誤差で求める方法が主流になった。
 しかし、整形外科医を中心に、骨塩量の減少を安易に骨粗鬆症に結びつけてしまう風潮への批判も根強い。骨代謝学会の基準では、他の病気が原因でないと確かめることを最初に掲げている。
 その上で骨塩量が若年成人女性の基準値に対して2割ほど減っていれば「骨量減少」、加えて骨折があるか、骨塩量の減少が3割に達していれば「骨粗鬆症」と規定した。基準値は測定法で微妙に違うが、おおむね1平方cm当たり     1g強。透写なので単位面積当たりの「平面密度」なのが特徴だ。
 井上さんは「重要なのは骨の丈夫さ。骨の微細構造など、骨塩量だけでは表し切れない質の研究が進んでいる」という。1996.10.20《朝日新聞》

■骨折予防物質
「米カリフォルニア大学サンフランシスコ校などの研究グループは、骨粗鬆症の高齢女性の大腿骨などの骨折予防に、骨粗鬆症治療薬のアレンドロネートが有効であることを臨床試験で確かめた。
  骨粗鬆症で脊椎を骨折した経験のある約2000人の女性を対象に、アレンドロネートを与えたグループと与えなかったグループで腰の骨折を比較した。その結果、アレンドロネートの投与によって腰の骨折を予防できた他、脊椎の別の部分の骨折や手首の骨折も減らせることが確認出来た。1996.12.12《日経産業新聞》

「骨粗鬆症患者の腰痛の大部分は筋肉やスジ・椎間板などの痛みで、背骨の骨折による痛みは少ない。それも2週間ほど寝ればまず良くなり、厄介でない部類に入る。
●逆方向の骨の老化も
「骨が軟らかめになる骨粗鬆症タイプの他に、骨の老化には逆方向の『骨が硬めになる』型もある。骨が増えすぎる傾向の老化で、骨にトゲや突起ができる[変形性脊椎症]、神経が通る管が狭くなる[脊柱管狭窄症]、脊髄マヒの原因の[後靱帯骨化症]などが目立つ。これらの病気こそ腰痛・神経痛・マヒなど症状が激しくて手術も多く、後がやっかいでよく中高年を悩ませる。
「患者として変形性脊椎症か骨粗鬆症かを選べと言われたら、程度にもよりますが、私なら骨粗鬆症を選びます」とkさんは言った。
  1997.1.5《朝日新聞》

■太もも筋力ー日米で差
「日本人は欧米の白人にくらべ、骨粗鬆症も寝はきりにつながる太もも付け根も骨折も少ない。どちらも半分かそれ以下に留まる。「痩せてきゃしゃな女性」が危ないのに、きゃしゃな体形が多い日本人になぜ少ないのか。
 中島育昌・山梨医大講講(整形外科)らが米国研究者らと、日米の老人ホームで、寝たきりなどの事故につながる転倒を追究した。各80人前後の老人を半年間綿密に追い、転倒を記録して田尾力などのデータと突きあわせた。
 結果は、日本の転倒が米国の1/4しかなかった。また、太ももの筋力測定で日本人が3割弱も強かった。しかも、米国ではこの筋力が弱い人ほど転倒が多かったのに、日本人では転倒と筋力はほとんど関係なかった。
これとは別に、折茂肇・大蔵省東京病院長や鈴木隆雄・東京都老人総合研究所疫学部長らが、太もも付け根の骨折患者約250人と、似た条件の非骨折者約500人との生活を比べた。すると、ベッドで寝る人は布団より1.95倍も骨折しやすいと出た。
 これらの結果から鈴木さんは、布団で寝起きをして布団を上げ下ろしし、畳に座り、和風トイレにしゃがむといったわずかの積み重ねが、長年月にわたって下半身を鍛えると推定した。
 いす・ベッドより多少やっかいだが、骨や筋肉の鍛錬だけでなく、機敏さやバランス感覚まで培うのではないか。それが中島さんらの日米調査の差になり、日本の老人は筋力が衰えても転びにくい結果に結びついたのではないか。
もろん原因はこれだけではない。欧米人は足が長くて転びやすく、太もも付け根の骨が長くて折れやすいことなども響きそうだ。飲む薬が一因になった可能性もある。「基本は生活の文化的背景」と中島さんも力説した。
  鈴木さんらの統計で、牛乳をよく飲む老人の骨折が必ずしも少なくなかった。牛乳はカルシウムの宝庫で骨増加の決め手とされる。だが、老人で牛乳をよく飲む人たちは全体の生活が洋式で、下半身の鍛錬が欠けたのではないかと鈴木さんは分析した。
  また、日本茶が骨粗鬆症を防止し、コーヒー多飲が促進するという数字も、生活背景が考えられるかもしれない。1997.2.3《朝日新聞》

■1万歩く
「関口秀隆・三条総合病院整形外科医長らが、「運動で中高年女性の骨量減少を防げるか?」を調べた。見てきたように、骨量だけが骨粗鬆症や太もも付け根の骨折に関連する訳ではないが、よく運動すれば転倒・骨折も防げる。この場合は、骨量がその指標になるだろう。
  50~70歳の女性60人に、従来より歩数を2割増やすよう指導した。当時平均7400歩で、4000歩ちょっとの人もいた。2年後は平均8600歩と15%増え、最低でも6000歩近くなった。この間、平均骨量は5%増えた。
  一方、似た条件で、指導しなかった女性の骨は2年で11%減った。「統計的に意味のある差です」と関口さん。骨質うや筋肉も強くなり、転倒を防ぐ機敏性も増す。これを考えると差はさらに広がるだろう。
  ただ、最初から1万歩を超えていた人は、歩数がもう増えなかった。「普通の人では1万歩が日常生活上の最終目標のようです」と関口さんは言う。
さて、もっと頑張れば骨はさらに丈夫になるか?。井上勝也・筑波大教授や石川みち子・長野看護大助教授らが徘徊老人の骨を調べた研究が参考になりそうだ。逆説的だが、徘徊が運動に役立ち、健康に貢献しているのではないかと調べた研究だ。
  食事を除くと一日中歩き回る「終日徘徊老人」が時にいる。こんな老人4人の歩数を測った。平均25000歩、普通老人の5割増の速度で、歩幅も大きく、日に12kmも歩いていた。普通老人は平均4000歩、1.1kmだった。
骨量を測ると、2万歩以下の徘徊群は正常だった。しかし3万歩(10km)以上歩く老人は、そろって骨量減少が重度だった。普通老人の骨量減少はにま初期か軽度だった。全員、食事にほぼ差はなかった。
 例数が少ないので確かではないが、2万数千歩で効果が逆転し、以降は急速に骨量が減っていく可能性があると井上さんは指摘した。
 猛練習を続ける運動選手で時に骨量減少が問題になる。また、東京都国立市の読者から「2万歩は歩こうと頑張っていたら足が痛くなり、診察で足の指の疲労骨折と分かった」と反省のお便りが届いた。
結論。まずこまめに歩いて歩数2割増をめざそう。それ以上は個人で適量に差があるから、「体の具合が良いか?」で判断しつつ、1万歩前後まで増やすと良いのではないか。でも現在のデータでは2万歩以上はちと考えものだ。1997.2.17《朝日新聞》

■カルシウムを十分に------摂取過剰の恐れなし
「カルシウム博士として知られる藤田拓男・葛城病院長(岸和田市)は、東大や神戸大の教授時代からカルシウムを熱心に研究し、カルシウム不足が『高血圧』や『動脈硬化』『糖尿病の合併症』、ある種の免疫病、『ガン』などに関係する可能性を説いてきた。骨粗鬆症はむろんカルシウム不足が重要な要因の一つだという。
 カルシウムには不思議な性質があると藤田さんは説く。『尿路結石』はカルシウムが主成分だが、結石が出来た人は実はカルシウム不足のことが多く、カルシウム補給で結石の発生が止まったりする。この原因は、骨がカルシウムの貯蔵庫であることに起因する。体に不足するとカルシウムが骨から抜け出す。
『閉経』による女性ホルモン減少で骨量が減ると、同時にカルシウムが血管に沈着して動脈硬化が進むという研究もある。「いずれにせよカルシウムは十分にとらねば」と藤田さん。
 骨粗鬆症の対策は、見てきたように種々の考え方があるが、「カルシウムを食べよう」には異論が聞かれない。火山灰地で軟水の日本は、食品にカルシウムが少ない。健康全体の面からも積極的に摂取したほうがよさそうだ。
 カルシウムは過剰摂取の害がまずないと分かったことも、摂取を促す要因だ。権威ある米国立保健研究所(NIH)が94年、「1日に1500mgまでは弊害の報告がない」「4000mgまでは吸収率が低下して体が調節する」と閉経後の女性(女性ホルモン使用者を除く)や老人に1500mg摂取を勧めた。
「小さい日本人でも2000mgまでは大丈夫でしょう」と森井浩世・大阪市立大教授が言う。日本の平均摂取量は550mgに達しない。1000mgを越すと便秘気味になる人がいるが、食品でそこまでまず摂取出来ない。実際上、どんどん食べてよいだろう。
 藤田さんはカルシウムの豊富な食品群を5つに挙げた。
①牛乳・乳製品。(チーズ・ヨーグルト・アイスクリーム)
②魚。(骨ごと食べる小魚・シラス干し・骨ごと煮た缶詰)
③海藻。(コンブ・ワカメ・ヒジキ)
④大豆製品。(豆腐・納豆)
⑤野菜。(カラシナ・キャベツ・コマツナ)

吸収の仕組みが複雑で、注意がいろいろ言われるが、この注意は研究の進展で変化する。

「魚は乳製品より吸収率が悪いと言われましたが、最近ではそうでもないという説が出ています。いちいち気にするより楽しく食べること。胃液がたくさん出てカルシウム吸収が進みます」と藤田さんは力説した。
「摂取が必要なのは閉経後の女性だけではない。「若い女性で、ダイエットや外食で極端なカルシウム不足の人がいる。50年後が恐ろしい」と、黒川清・東海大医学部長や藤田さんが心配している。1997.2.24《朝日新聞》

■新しい診断法 1997.11.13《日経産業新聞》
骨の成長に関係する血液中の微量なタンパク質を測定する方法。
破骨細胞に注目。
 骨からカルシウムの減少を促す破骨細胞の働きを調べる。破骨細胞は破骨細胞形成抑制因子(OCIF)というタンパク質で機能が調整されている。
 カルシトニンに注目。
 骨の成長を促す「カルシトニン」というホルモン。甲状腺が分泌してカルシウムの減少を抑え骨の成長を促す働きがある

■骨塩量測定、診断価値高く
    「経営者のKさんは、奥さん(55)が最近ゴルフの腕前を上げてきたのが悔しくてたまらない。ある日彼女が腰痛を訴え、ゴルフ仲間の医師に診てもらった。医師は骨粗鬆症をチェックするため、骨塩量を測り、尿・血液検査をした後、注射をし、薬を処方した。痛みは取れたが骨粗鬆が治ったかどうか定かでない。Kさんいわく

「薬で骨が増えるのやろか」

「骨粗鬆症といえば女性の病気なの」。     素朴な質問である。
骨粗鬆症とは、①骨量の低下、②骨組織の微細構造の変化、③骨折の危険性の増大の3つを満たす病態である。60歳以上の女性で30%以上、70歳以上の男性の15%がこの状態で、患者数は高脂血症や循環器障害に次いで多いとされる。
 この状態になりやすいケースとしては、
①子供を多く産んだ閉経後
②初潮年齢が遅い
③背が高く痩せ型。
④酒・アルコールを多飲、ミルクを飲まない。
⑤1日の歩行時間が4時間以内。
⑥母親と本人に骨折歴がある。

頻度は以下の順である。
<1>閉経型(Ⅰ型)
<2>老人性(Ⅱ型)
<3>薬物性
<4>内分泌異常性

「Ⅰ型は経閉後の女性でホルモン調節の生理的変調のため骨吸収が骨形成より盛んになり骨が破壊される骨代謝亢進型と呼ばれ、医師はホルモン補充療法としてエストロゲン製剤などを処方する。腰痛にはカルニチンが良く効く。
  「これに対し、Ⅱ型は老化のために腸からカルシウムが吸収されなくなり、腎臓・肝臓でのビタミンDの活性化が抑制され極度に低下する骨代謝低下型で、男女とも出現する。カルシウムや活性ビタミンDの他、骨代謝を刺激するビタミンK2が処方される。
ただ、いずれの療法も残念ながら、若い人の骨に戻るような改善は期待できない。
「検査はX線などによる骨量測定と、血液・尿検査があるが、診断価値の高いのは骨塩量測定である。尿・血液検査は骨代謝検索には役立つものの、検査値の日内変動・検査精度、そして日常診療での利用しやすさを考えると決定的でない。この生活習慣病への臨床検査と治療法の開発は現在進行形である。(巽典之・大阪市立大学医学部教授)1998.11.30《日本経済新聞》

■アルコールで骨弱く
「東邦大学の研究グループは、長期にわたって多量のアルコールをを飲み続けると、骨が弱くなる現象を動物実験で確かめた。ネズミに酒を飲ませ続けると骨に障害が出た。疫学調査でも過度の飲酒で骨が傷むことが知られており、アルコール摂取は肝臓や腎臓の機能を弱めるだけでなく、骨粗鬆症の危険なども高めることになると研究グループは警告している。
東邦大の大本美彌子・元教授と今井常彦講師らは、人間に換算して1日540‹の日本酒をネズミに472日間飲ませ続け、酒を飲まなかったネズミと骨を比較した。その結果、酒浸りのネズミの大腿骨の幅は禁酒ネズミに比べて約7%減少して細くなり、骨の外側にあたる骨皮質の幅も約14.5%減って薄くなっていた。骨の内部の密度も低下した。」1999.526《日経産業新聞》

■促進物質を発見
「東京医科歯科大学の野田正樹教授と米ラトガースト大学(ニュージャージ州)の研究チームは、骨にわずかに含まれる『オステオポンチン』というタンパク質の働きを抑えると、高齢者の骨がもろくなる骨粗鬆症を抑制できることを動物実験で見つけた。女性が閉経後に急速に骨が弱くなるのを防止する薬につながる可能性があるという。
研究成果は米科学アカデミー紀要の最新号に発表した。骨粗鬆症は男女とも高齢になると進むが、患者の8割以上は女性。これは、55歳ぐらいの閉経後に骨が激減する閉経後骨粗鬆症が起きるため。オステオポンチンはこの現象を促進している。
研究チームはオステオポンチンを作る遺伝子が働かないように遺伝子を操作したマウスを使って実験。卵巣を切除して人工的に閉経状態にしたが結果、普通の名臼は骨の量が60%減少したのに対し、オステオポンチンを作れないマウスは10%しか減少しなかった
生体内物質で骨の減少を促進することが分かったのは今回が初で、この働きを阻害する薬を開発すれば治療が期待できる。血液中の濃度を測れば早期の診断、予防に役立ちそう。研究チームは骨を減らす破骨細胞が骨とくっついたり、カルシウムを溶かしたりするのにオステオポンチンが関係していると見ている。」1999.7.10《日本経済新聞》


■副作用を予防
「産業医科大学の岡田洋右講師、田中良哉教授らのグループは、関節リウマチや膠原病などのクスリの副作用で起きる骨粗鬆症について、一般の骨粗鬆薬を同時に併用すれば予防できることを突き止めた。成果は2005年10/13の日本骨粗鬆症学会で発表。
リウマチなどの治療にステロイド薬が使われることが多い。ステロイドの大量投与によって骨がもろくなる骨粗鬆症はなりやすいが、骨密度の低下が進んでいない患者でも腰椎を骨折するという特徴がある。
研究グループは一般の骨粗鬆症に使われるビスフォスフォネート製剤を、ステロイドと同時に服用する手法を考え、膠原病患者61名で臨床した。その結果、骨量減少がほぼ完全に抑えられた。治療開始後18ヵ月後でも骨折した事例は無かった。」2005.10.10《日経》

■酵素が関係
「東京大学の小野寺節教授らのグループは2006年10/31、骨が形成されるときに不可欠な働きをする酵素を、マウスを使った実験で突き止めた。この酵素を作れないように遺伝子改変したマウスで実験し、骨の形成に異常が見られた。11/3の米科学誌ジャーナル・オブ・バイオロジアkル・ケミストリーに掲載。
研究グループは、ガン細胞の周囲にある血管を溶かしてガンの転移を促進させることで知られる酵素『マトリックス・メタプロデアーゼ2(MMP2)』に着目。この酵素を持たないマウスを作り、骨形成の様子を詳しく調べた。
酵素を持たないマウスでは、正常なマウスと比べて頭蓋骨の骨密度が向上していたり、それ以外の部分で逆に骨密度が低下するなどの異常が確認できた。MMP2は骨の細胞に栄養分を供給する経路である「骨細管」の形成に関わっており、骨細管がうまく作れないことで、骨の形成にも異常が現れたと考えられる 200611/1《産業》


■カロリー制限で
「カロリー制限をして体重を落とすと骨密度が減少する。それに対して、運動で体重が減少しても骨密度には変化がないことが、米ワシントン大学の研究グループの調査で分かった。
ダイエットなどで食事制限すると、骨粗鬆症になりやすいという。
女性30人と男子江18人(平均年齢57歳)をAグループ(カロリー制限をした食事のグループ)とBグループ(カロリー制限しないで運動するグループ)に分けて調査。
Aグループは1年後に体重が平均8.3kg減少し、骨密度も平均2.2%減少していた。
Bグループは体重が6.7kg減少し、骨密度に変化はなかった。」200612/13《産業》

■脳内に骨量調節物質
「東京医科歯科大学の竹田秀・特任教授らのチームは、骨量を調節する物質を脳内で見つけた。骨を作る骨芽細胞を抑える作用があり、その量などを調節すれば骨粗鬆症の治療薬につながる。
成果は2007年9/16付けのネイチャー・メディシンに掲載。
脳内にあるペプチドの一種で、食欲を抑制する機能がある『ニューロジンU』(NMU)に着目した。
人工的に作ったNMUが無いマウスは骨量が増加し、そこへNMUを脳内に注入すると1ヶ月で2割減少した。
NMUは骨芽細胞には直接作用しない。そのため脳内の他の物質に作用して骨芽細胞を刺激していると見られる。
またNMUは食欲を抑制する物質としても知られている。

【色彩療法】
    <1>オレンジ色
    <2>レモン色
    <3>赤紫色
    <4>黄色

【漢方薬】
■温経湯
瘀血所見があり、冷え症で、下肢に膨満感があったり、下肢が引きつれたりして、掌には煩熱があり、口唇が乾燥するものに用いる(漢方診療医典)
■桂枝茯苓丸
体格中等度以上で、瘀血の所見があり、のぼせがある者に(漢方診療医典)
■十全大補湯
虚証で疲れやすく、貧血の傾向が強く、食欲不振、体重減少を認め、皮膚が乾燥するものに用いる(漢方診療医典)
■当帰芍薬散
冷え症で、貧血の傾向があり、筋肉は軟弱ぎみで、女性的であり、疲労しやすいものに用いる(漢方診療医典)
■八味丸料
過半死の疲労脱力、多尿、頻尿、尿利減少、腰痛などを目標に用いる。地黄が胃にさわることがあり、胃腸が丈夫なものに用いられる。四肢のしびれを伴うときは牛膝、車前子を加えて牛車腎気丸として用いる(漢方診療医典)

【栄養療法】
大豆イソフラボン
*女性ホルモンと同じ様に破骨細胞の働きを抑える。
*納豆・豆腐・味噌・きなこに多い。
ビタミンD
*カルシウムの吸収を良くして、骨芽細胞の働きを活発にする。
*魚・バター・牛乳・卵に多い。
ビタミンK
*破骨細胞の働きを抑え、骨芽細胞を活発にする。
*納豆・こまつに多い。
亜鉛
*骨を丈夫にする・子供の発育に欠かせない。
*豚肉・牡蛎・ウナギ・牛肉に多い。



■検査・・・血中酵素を測定
「大日本住友製薬に診断薬子会社「DSファーマバイオメディカル」は2008年5/28、試薬キット「オステオリンクス『TRAP-5b』」を発売。
骨の代謝にかかわる破骨細胞から分泌される『骨型酒石酸抵抗性酸性フォスファターゼ』(TRAP-5b)の血中濃度を測定する。骨粗鬆症や一部のがんで骨転移診断や治療経過観察に有効。
日東紡がTRAP-5bを測定する方法を確立、DSガーマと共同開発した。TRAP-5bは血中濃度の変動が小さく、食事の影響も少ない。腎機能低下にも影響を受けないため、人工透析患者にも使える。

骨軟骨腫
=「外骨腫」(参照→「外骨腫」)

骨肉腫
■遺伝子治療
「免疫の働きを補う物質の遺伝子を導入して、骨に出来るガン「骨肉腫」を治療する動物実験に、岐阜大医学部の小財健一郎・助教授の研究グループが成功、28日発表した。有効な治療法の無かった骨肉腫に新たな遺伝子治療の道を開く成果と期待される。
研究グループは、免疫細胞にガンを攻撃するよう命令する免疫賦活物質「インターロイキン2」の遺伝子をウイルスの遺伝子に組み込んで、マウスの骨肉腫に導入した。その結果、免疫系が活性化し、患部の他、転移した杯のガン細胞も90%以上を除去することに成功した。
骨肉腫は、小児を中心に、ひざの骨にガン細胞が増殖する固形ガンの一種。30%以上の患者が肺に転移する。」

■サマリウムが有効
「米メイヨークリニックの研究グループは10代に多く見られる骨のガンである骨肉腫の治療に放射性元素サマリウムが有効であることを突き止めた。骨肉腫に対しては、20年前までは手足の切断しか手だてがなかった。
30人の患者のうち24人で治療効果があり、癌が完全に消えた患者も2人いた。サマリウムは骨の腫瘍にだけ作用するので痛上位の化学療法と異なり副作用も少ないという。」2002.2.13《日経産業新聞》




骨盤狭窄
【処方名-50音順】(骨盤狭窄)
■加味芎帰湯《万病回春》



骨盤臓器脱
=膀胱や子宮・直腸などの骨盤内の臓器が膣から下がってくるもの。
「50~70代の女性に多い病気で、お風呂に入っている時に、膣内に何かがあるごとく感じて気づくことが多い。
原因は、臓器を支える骨盤底の筋肉や組織が弱ること。下がってきた臓器に押されて尿管がくびれ、尿が流れにくくなり、頻尿や残尿感が起きたり、腎臓が腫れる水腎症の原因になることもある。

【症状】
*膣内に丸いものが触れる
*お腹の中が下がった感じになる
*風呂で陰部を洗うと、指に何か当たる感じがする。
*残尿感がある。
*尿もれしていたが、この頃は無くなった。
*イスに座ると、陰部のあたりで何かが押し込まれる感覚がある
* 股(また)の間に何かが挟まったような感じがある。

【治療】
*ペッサーリングと呼ぶ膣内に器具を入れる手術
*女性ホルモンの投与
*体操


骨盤内炎症
  【処方名-50音順】
■桂枝茯苓丸
■腸癰湯
■桃核承気湯


骨盤内血腫
⇒骨盤内の鬱血症候群。

【血腫 hematoma】=出血により1ヶ所に相当の量の血液が溜まっていること。

【処方名-50音順】(骨盤内血腫)
■芎帰調血飲
■腸癰湯
■桃核承気湯(実証、のぼせ、足冷、下腹部痛)
■当帰芍薬散(貧血、冷え性、疲れやすい、月経不順、神経症状)


 

骨盤腹膜炎
【処方名-50音順】(骨盤腹膜炎)
■加味逍遥散
■芎帰調血飲
■桂枝茯苓丸
■大黄牡丹皮湯
■腸癰湯(腹痛<圧痛>、便秘なし、舌苔黄、舌質紅、皮膚乾燥、脈数)
■桃核承気湯(実証、のぼせ、足冷、下腹部痛)
■当帰建中湯(貧血、食欲不振、虚弱体質、腹痛、腰痛<牽引痛>)
■当帰四逆加呉茱萸生姜湯
■当帰芍薬散(貧血、冷え性、疲れやすい、月経不順、神経症状)
■白虎加人参湯(激しい口渇、口舌乾燥、尿利頻数、大便硬、煩躁)
■竜胆瀉肝湯



固定ジンマシン Urticaria perstans
⇒多くは昆虫の刺傷に基づく限局性の浮腫と発作性の激しい痒みを伴うジンマシン様疾患。
【処方名-50音順】
■消風散



子供がぐずる
テレビのゴースト(砂嵐)画面を見せると、泣きやむ。



子供をいじめる
■子供虐待する親
子供の虐待が我が国でも深刻な問題になりつつある。確かに最近になって私の診察室でも、虐待の問題を抱えて訪れる人が増えている。その中には虐待を止められない親が、思いあぐねて受診する場合もある。
5歳の男の子を持つ30代前半の母親である。彼女が訴える主な症状は、地域での対人関係に端を発した不安と憂鬱であった。数回の面接を経たある日、話題が子供のことに及んだ。そのとき、彼女は「私、どうしてもこの子を好きになれないんです」と語った。子供が自分の意に反した行動をとると、訳の分からない感情に襲われ躾の域を超えて頬をたたいたり、血がにじむまで腕をつねったりすることがあると声を詰まらせながら話し始めた。
「腹を痛めた子にどうしてと思うかもしれませんが、腹を痛めた子だからこそ止められないんです」「愛情が無いわけではないと思うんですけど、好きになれない。嫌なものがいっぱい詰まった生き物に感じることすらある」と言う。
彼女の生い立ちは、必ずしも恵まれたものではなかった。父は無愛想で怒りっぽく、すぐに母や子供たちに手をああげる人であった。母は父の前ではひたすら耐えていた。このような両親に愛された思い出はなく、いつもおどおどして自分に自信がなかった。
優しさが取り柄と思って選んだ夫は自分勝手で頼りなかった。子育てには無関心で子供が高熱を出した時も、仕事のつき合いだからと夜遅く酒の臭いをさせながら帰宅したという。
虐待するものは自らも虐待された経験を持つことが多いという報告がある。愛された経験を持たない人は、子供にどう愛情を注いでいいか分からない。彼女なりの精一杯の努力が子供に伝わらなかった時、そこには怒りが生じる。
彼女が言う「子供に詰まっている嫌なもの」とは、彼女が受け入れることが出来なかった。子供の頃の両親との関係や体験であろう。自分に自信がもてない彼女自身かもしれない。傷ついた子供を抱えられない彼女が、自らの子供を傷つけているとも言えるだろう。子供に対する虐待は、彼女自身の心を再び傷つけるものである。
傷つく者と傷つける者の錯綜した関係に留意することなしには虐待の問題を本当に解決することは困難である。その後の面接で、彼女は自分の両親との関係を見つめ直し、心の中でそれを受け入れつつある。彼女の心の傷が癒えるには、まだしばらく時間がかかるだろう。だが子供を傷つけることは、もはやない」(横山知行・疼痒英和女学院大学助教授)1999.10.25《日本経済新聞》

■6年で5倍に急増(6932件)
「98年度に全国の児童相談所に寄せられた児童虐待に関する相談が過去最多を記録したことが1日、厚生省のまとめで分かった。」1999.11.2《日本経済新聞》

■胃の破裂・窒息・硬膜下出血
「児童相談所が関与しながら虐待で児童が死亡したケースが1998年度は全国で8件あり、相談所が関与していないケースも含めると、計41人の子供が虐待で命を落としていることが17日、厚生省の調査で分かった。相談所関与後の死亡例は15件だった前年度の半分近くに減ったものの、関与しなかった虐待死も含めて初めて集計した同省では「しんこくな事態。重く受け止めている」と話している。」

■発覚まで6年
「東京都江東区で小児科医院をひらく坂井聖二さん(50)は数年前、児童福祉司からの依頼で6歳のAちゃんを診察した。
服を脱がせてみて、キズやアザの多さに「これほど、ひどいとは」と思わず顔をしかめた。最近受けたと見られる青いアザ、治りかけて黄色みがかった古いアザ。全身にくまなく染みついている。おどおどし、元気さが全くなく、視線が宙をさまよう。体も小さい。知的障害あり、問いかけに十分な答えが出来なかった。
「これは虐待だ」。後日、児童相談所から届いたAちゃんの病歴を見た坂井さんの想像は確信に変わった。
・生後5ヶ月  硬膜下血腫
・生後10ヶ月    右上腕骨折
・生後2歳6ヶ月  硬膜下血腫
・生後6歳     自宅で前歯を折る
2度記された硬膜下血腫は脳を覆っている硬膜部分に血の塊が出来るのもので、手足のマヒ、意識障害などを引き起こす。固いもので思いっきり頭を叩くといった強い外傷を受けないと出来ない。
坂井さんは、子ども虐待対策に取り組む社会福祉法人「子どもの虐待防止センター」(東京・世田谷区)の理事も務める。月4、5回は疑わしい被害児を診察したり、医師や児童相談所の相談にのっている。
Aちゃんは、以前のケガのリハビリで入院中、病院のソーシャルワーカーが、体のあざから、虐待を直感。児童相談所に通報した。
「硬膜下血腫が2度も起こるのは、事故でもない限りあり得ない。アザの多さからも大人に強く殴られているに違いない」と坂井さん。親による虐待と判断。知的障害は虐待によると見られる硬膜下血腫の後遺症だった。
Aちゃんは、大手企業のエリートビジネスマンで不在がちな父。専業主婦の母と兄の4人兄弟。母親は児童福祉司に対し、「気がついたらケガをしていた」「兄がやった」「自分で転んだ」と二転三転する言い訳に終始。挙げ句の果てに「知的障害の子どもの言うことを信じるのか!」と怒鳴った。
全国に174個所ある児童相談所への児童虐待に関する相談や通報は、98年度6932件。8年前の6倍以上に急増している。警視庁によると、虐待と見られる死者は昨年45人に上った。最近も「しつけ」と称してスタンガンや熱湯を浴びせたり、数ヶ月もまともな食事を与えなかったりして死なせるなどの事件が後を絶たない。
つい数年前までは
「遠い国の話」と思われたが、今はどんな家庭にも起こりうる児童虐待。「通報だれるのは、氷山の一角に過ぎない。虐待はエスカレートしがちで、致死率も高い。精神疾患が潜む場合もある。だが、親も医療関係者も認識が低い」と坂井さんは嘆く。
Aちゃんに障害を負わせた元凶は虐待を繰り返した親だが、さらに状況を悪くしたのが、過去の医師の対応だった。」

■通報怠った入院先の医師
「親から頭を強く殴られたことが原因と見られる硬膜下血腫で、知的障害まで背負った6歳のAちゃん。「虐待を受けて障害児にまでなってしまった背景には、大学病院の医師の怠慢があった」と、子どもの虐待防止センター理事で小児科医の坂井聖二さん(50)は指摘する。
Aちゃんは、生後5ヶ月と2歳半の時、2度の硬膜下血腫を含めて同じ大学病院に4度も入院している。だが、この病院の脳外科医や小児科医は、虐待を疑ったものの児童相談所へ通報するという考えは全くなかったようだ。治療は施すがまた親元へ帰すことで虐待を繰り返させてしまった。
その後、別の病院のソーシャルワーカーが虐待を疑い、担当医に説明を求めたところ、「親からの文句に反論する自身がなく、虐待との確信が持てなかった」と弁明した。
このような医師は少なくない。98年度に虐待の疑いで児童相談所が相談・通報を受けた6937件のうち、医療機関からは395件(6%)だけだった。
また関東弁護士会連合会が96年9月、関東、中部地方11都道府県の50床以上の総合病院小児科に行ったアンケートでは、回答のあった241病院のうち、161病院で虐待児の診療経験があったが、18病院(11%)はどこにも連絡しなかった。
その理由は「虐待の確信がない」「他科に回したのでうやむやになった」「保護者に指導している」と、加害者である大人から引き離し、子どもの保護が優先することを理解していない回答もあった。
坂井さんによると、虐待を見過ごす医師には2つのタイプがある。知識が無く診断できない医師と、「親といざこざを起こすのが面倒」と関わり合いをもとうとしない“怠慢医”だ。「知識がないならば学べばいい。患部だけ診て、虐待に関心を持たない医師が多すぎる」と嘆く。
身体的虐待を疑うことは特別難しいものではない。硬膜下血腫のような専門知識の必要な状態も疾患もあるが、通常ではできない骨折、皮膚の外傷、ヤケド、アザ、脱毛などは、医療関係者でなくても常識で判断できる。それを通報に結びつけるかが問われる。

■異常を自覚“助け”求める
「自分が殴った6歳の長男がおびえながら泣く姿に、40歳代のA子さんは我に返った。高齢出産の一粒種。この子が誰より大説なのに。いったい自分はどうなってしまうのかーー。
A子さんの虐待が始まったのは、長男が1歳過ぎの頃。歩き始めるようになると、思い通りに行動してくれず、イライラが募った。はじめは軽くお尻を叩く程度だったが、次第にほうきの柄で頭を殴ったりけ飛ばしたりーーー。
反面、ファーストフードは絶対に与えないなど、栄養や健康に神経質すぎるほど気遣う。
自ら異常を感じ、児童相談所に“助け”を求めた。
児童相談所はA子さんの気持ちが安定するまで長男を養護施設で分離すべきだと判断。治療を望んだA子さんを、防衛医大精神科講師の佐野信也さん(44)が受け持った。
2週間に1回程度、面談を続ける中で、A子さんは過去をうち明けていった。父親はアルコール依存症で、母はしつけに厳しく、殴られることもたびたび。年の割にしっかりし、小学生の時から家事を手伝うなど、感情を抑えて生きてきた。
「私、いつも頼りにされていて、いい子にならなきゃと自分に言い聞かせていた。本当は親に愛されたかったーーー」
子どもをもうけたものの、相手とも別れた。小さい頃の記憶が染みつき、甘える子どもにどう接したらいいか分からない。
かわいいとは思っても厳しく突き放してしまう。これが虐待につながっていた。
A子さんが受けた治療法は『内省的精神療法』と呼ばれる。「過去を振り返る中で、押し殺されたような感情がよみがえり、新しい人間関係の中に自分の居場所を見つけられるようになる」と佐野さんは説明する。
A子さんは長男と3ヶ月離れて生活した後、現在は一緒に暮らす。通院は続けているが、自分の行為を客観的に見つめられるようになった。
今秋施行される児童虐待防止法は、都道府県に対し、虐待してしまう親への「指導」(カウンセリング)を義務づけた。

■心のキズ、遊びで克服
「関西地方に住むB君(22)は短期アルバイトをしながら、夜間大学に通う。友人にも隠していることがある。死に別れたわけではないのに、3歳から両親の顔を見ていないことだ。
乳児期から鼻緒屋に暴力を振るわれ、カッターナイフを突きつけられたり、切られたりの虐待を受けた。自宅を訪問した保健婦から児童相談所に通報があり、3歳で養護施設に移された。
そこで、虐待を受けた子どもの心のケアに遊びを用いた心理療法『プレイセラピー』を実践している大阪大助教授の西沢哲さん(42)(児童心理学)と出会った。
2週間に1度、西沢さんの療法を受けていたB君。ある日、赤ちゃんの人形を手にし、木の棒を押しつけて「あんたなんかいらない」と繰り返しつぶやいた。棒をカッターに見立てて、母が自分にしたように、人形を切り刻むまねをしていた。
「お母さんはなぜこんなことをするのかな」と西沢さんが問いかけると、B君は「お母さんはお父さんと仲が良くないから、赤ちゃんをいじめちゃうのかなあ」。人形を通すことで自分の体験を分析してみせたB君。それまでは自分が悪い子だから虐待を受けたと思いこんでいた。」




言葉が出ない
■難聴、言葉の遅れに
「Mちゃんは2歳7ヶ月になるが意味のある話が出来ず、しゃべりたそうにするが、言葉が出ない。“スプーンを持ってきて”“ゴミを捨てて”などの指示には従うので、精神や運動の発達に遅れはなさそう。以前に小児科の先生に相談したが、言葉の発達は個人差があるから経過をみましょうと言われていた。
  後ろから名前を呼んだり鈴を鳴らしたりしても振り向かないので、外来でいろいろな音に対する反応を調べた。条件詮索反応という乳幼児のための聴力検査では、地下鉄の騒音に匹敵する90アンペアという大きな音にやっと反応が得られた。子供を眠らせて頭に電極を置き、音への反応をみる聴性脳幹反応検査でもやはり90アンペアまで反応がなかった。
この2つの検査の結果、言語の遅れの原因が難聴であるとようやく判明した。補聴器をつけて言語の訓練を開始すると、Mちゃんは次第に音に気付くようになり、まんま、ばば、あいあいなどの言語が出るようになった。
難聴の程度が重い時に言語が出ない。軽い時はある程度言語が発達するが、発音がはっきりしない。二語文にならないといった症状で難聴が分かる。Mちゃんは親の動作を察して行動していたが、これも難聴による言語の遅れの特徴である。」(川城信子・国立小児病院耳鼻咽喉科医長)1997.10.20《日本経済新聞》

【処方名-50音順】(言葉が出ない)
■遠志丸(ビックリして言葉が出ない)
■三黄瀉心湯
■茯神散(驚いて)
■密陀僧散(驚気が入心してとなって言葉が出ない)



恐がり
【処方名-50音順】(恐がり)
■加味逍遥散)
■抑肝散
■抑肝散加陳皮半夏


痼毒
=慢性の病毒。


痼冷(これい)
=痼とは長患いの意味である。寒気が長い間身体のある1つの経絡、臓腑に潜伏し、局部的な寒症を形成して、長期に渡り治癒しないことを指す。

例えば、臍や腹部が冷えて痛む、きれいな涎を吐く、関節が強ばって引きつって痛い、四肢が温まらないなどである。
多くは、脾胃が虚弱、内に寒飲があり、寒湿による長期の脾証のある患者に見られる。
⇒痼久した症。

臓腑の中に寒が止まって散らない症を沈寒といい、積もった冷が散らない症を痼という。

【処方名-50音順】(痼冷)
■加減白通湯(沈寒痼冷、臍腹冷痛、大便自利、足脛の寒逆を治す)
■加味理中湯《万病回春》(痼冷の積寒)
金液丹(久寒と痼冷、吐利が長引き身体が冷え、脈微)
■固腸湯《万病回春》
■三建湯《和剤局方》
■至聖来復丹
■十補湯《済世全書》
■四柱散
■衝寒散
■代灸塗臍膏
■附子理中湯
■霊砂(すべての虚による痼冷・逆厥に特効)


孤惑(こわく)
孤惑は虫症をいい、大病後に胃腸が空虚し、三虫が食べるのを求めて人の五臓を食べるようになるが、咽喉を食べると惑になって唖になり、肛門を食べると孤になる。   

⇒病勢

(イ)四肢が重い、
(ロ)黙々として眠い、
(ハ)ご飯の匂いすら嫌になる、
(ニ)舌白く、歯は黒く、
(ホ)顔色は赤・白・黒に変化する。
    

【処方名-50音順】(孤惑)
■黄連犀角湯
■苦参湯
■三黄瀉心湯
■桃仁湯
■雄黄鋭散(下部の惑瘡を治す)


混合性結合組織病(MCTD)mixed connective tissue disecue
⇒1972年、Sharpらによって提唱された症候群。

◎特徴:
①SLE、PSS、PM/DMを思わせる臨床所見がoverlapしている。
②血清中の抗nRNP抗体-----高値陽性。


昏睡 coma
⇒意識が完全に消失した状態、刺激しても全く反応しない状態。
★一過性に短時間意識がなくなるのは、「失神」。

◎昏睡の深さ:痛覚刺激を与えて判断。
◎昏睡の性質:

*呼吸の臭気------腐敗果実臭(糖尿病性)
*尿臭(尿毒症)
*アルコール臭

◎昏睡時の体温:
<1>高体温性昏睡:感染症
         頭蓋内傷害
         熱射病
<2>低体温性昏睡:アルコール
         睡眠剤中毒
         末梢循環性虚脱
         寒冷性昏睡
◎昏睡時の血圧:
<1>高血圧を示す:高血圧性脳症
         尿毒症
<2>低血圧を示す:糖尿病性昏睡
         内臓出血
         粘液水腫
         Addison病
         アルコール中毒
         睡眠剤の中毒
◎昏睡と顔の表情:
<1>顔面蒼白:内臓出血
       脳軟化症
       尿毒症
       高血圧性脳症
<2>顔面紅潮:脳出血
       アルコール中毒
       糖尿病性昏睡
       高熱性疾患
<3>桃色:一酸化炭素中毒
<4>黄色:肝性昏睡
<5>黒色:Addison病
<6>皮膚発疹(チフス・発疹チフス・痘瘡)
<7>色素沈着
<8>チアノーゼ
         

昏倒(こんとう)
【処方名-50音順】(昏倒)
■呉茱萸湯
■三黄瀉心湯
■小青竜湯

 

昏迷(こんめい)
⇒心が乱れまようこと。精神作用及び随意運動が阻害された状態。
◎「昏睡」よりも程度の軽い意識障害。
⇒意識障害があり、刺激すると目覚めたり、痛みから逃げようとする状態。

【処方名-50音順】(

【処方名-50音順】(昏迷)
■芎帰調血飲



跟痛(こんつう)
⇒かかとの痛み。

【処方名-

 

音順】(かかとが痛い)
■四物湯
■芍薬甘草湯
■大黄附子湯
■八味地黄丸料
■六味丸