<つ> つらい症状・病名


【病状つ】

ツツガムシ病
=リケッチア症の1つ。発疹を伴う感染症。
⇒ツツガムシ病は古くから秋田県雄物川、山形県最上川、新潟県信濃川の流域の多発する風土病で、病因はツツガムシの幼虫が媒介するリケッチアである。患者数は1980年ごろから再び増え始め年間1000人近くになっている。
<1>東日本: フトゲツツガムシ。
山菜採りと栗拾いの頃

<2>西日本:タテツツガムシ
ミカン狩りの頃に好発。

◎症状:

ツツガムシに刺されると黒いかさぶたができるが、発熱・頭痛・関節痛などの症状が現れるまでに1~2週間の潜伏期間があるので、風邪やアレルギー疾患と間違われやすい。発見が遅れて命取りになることもある。

頭痛
発熱:高熱が出る
結膜充血
リンパ節腫張
・ダニに刺された部位の紅暈を伴う黒色痂皮と所属するリンパ節が腫れる。
発疹
・3~9病日の直径5mm前後の紅色の斑状丘疹。

◎検査:
血清反応(間接免疫蛍光法)でR.tsutsubamushiの抗体を証明。

◎予防:河原や野山などに入るときには、帽子をかぶり、肌を露出させないようにすること。




疲れやすい(つかれやすい)
(参照→「疲労倦怠」「易疲労」。
チェックしましょう:「大動脈症候群

[TATT]---食事と運動療法で改善
「情報処理会社のKさんは32歳。バリバリ働くことで顧客と社内の信頼を集めていた。しかし風邪で1週間ほど会社を休んでからは、何となく疲れがとれない。いろいろ検査をしても異常が見られない。こういう時に医者は患者と同様「さて困った」と悩むことになる。
Kさんの血中ビタミン量を測ってもらうと、「全体にビタミン量が少ない」
ではビタミン欠乏症ということになるのかと釈然としない。この話をカナダ在住のF先生に話すと、曰く、「それはTATTだ」と。「それは何?」と聞き返すと「Tired-All-The-Time-Syndrome(常時疲労症候群)」だ。知らないの。これは慢性疲労症候群とは違って適切な食事、規則正しい生活、適度な運動で回復するよ」とさんざん。少なくとも私の持っている内科の医学書には出てない病名である。

【食養生】

ブロッコリーはカルシウムが多くて抗ガン・抗出血作用、
キャベツはエストロゲン合成調節作用があって乳ガンに効く。
カボチャはビタミンAが豊富で皮膚疾患に役立つ。
イチゴはフラボノイドが多くて抗炎症作用がある。
☆チキンスープは風邪や血糖調節・食欲不振や不眠症に有効。
☆オイルサーディンは軽症糖尿病に、そして
サケは関節炎や更年期障害に有効だという。
      
●「疲れ」に3タイプ
「68歳女性。最近、ひどく「疲れやすい」と感じます。いくつかの病院で検査してもらいましたが、どこでも「異常なし」とのこと。年のせいなのでしょうか?
漢方では生体の機能低下を漢方独特の目で把握し、常に全身状態の改善・生活の質の向上をめざす。質問者のように疲れやすい場合、肩凝り、腰痛、胃腸の調子など全身の種々の自覚症状なども総合的にとらえられる。

加齢につれて起こる疲れには3つのタイプがある。

①まずエネルギーを補給するシステムの老化で、胃腸の弱い人に当てはまる。

このタイプには

「補中益気湯」、

「黄蓍建中湯」、

「真武湯」などを用いる。

②2つ目は胃腸は丈夫でも体内の老廃物を排泄するシステムの老化。高血圧・動脈硬化・骨粗鬆症などに見られる。「八味地黄丸」がその代表である。

③3つ目は平たく言って「枯れてくるタイプ」。皮膚が乾燥して艶が無くなり、脱毛や爪がもろくなるなどの症状が顕著に現れる。

「十全大補湯」や

「人参養栄湯」などを用いる。(花輪寿彦・北里研究所東洋医学総合研究所所長)1998.1.26《日本経済新聞》

〇伸び盛りだから、ご用心
「疲れやすい・頭やお腹が痛い・めまいがするet.

思春期の子供たちは体の様々な不調をよく訴える。「やる気が足りない」「そういう時期だから」と放っておかれることが多いようだが鉄分不足の貧血や自律神経失調が引き起こす障害などが隠れている例が少なくない。学校や家庭で思い当たる節があれば、「思春期病」と考えて対応し、治療した方がよいと専門家は指摘している。
東京都立母子保健院の北島晴夫・小児科医長は、昨年3月までいた慈恵医科大学柏原病院の思春期外来を訪れた患者薬550人について、不定愁訴の原因を分析した。患者の1/3ほどは、近くの医師にかかっても良くならないため来院したという。
最も多いのが「生活のリズムの崩れで半数を占め、貧血とその予備軍を含む「鉄欠乏症」が続く。立ちくらみが特徴的な「起立性調節障害」なども10%あった。
見逃されやすいのが鉄欠乏症だ。学校検診では、瞼の裏の視診で貧血の有無を調べるようになっているが、これで分かるのは重症の貧血で、軽い貧血や貧血に至らない鉄欠乏は採血しないと分からない。
体格がグングン大きくなる思春期は、体の中でエネルギーの生産や酸素の運搬に関わる鉄分の需要が増える。そこへ偏った食習慣や生理が加わると、鉄分は不足する。最近は運動部の選手にも鉄欠乏症が目立つという。
バレーボール部の選手だった中学2年生の女子は、疲れやすく、練習についてゆけなくなり、朝起きるのがつらくなった。集中力も欠け、イライラしがち。血液検査では貧血に至らない程度の鉄欠乏と分かった。鉄分の錠剤を飲み続けたら、1ヶ月で元気を回復した。激しい運動で鉄分が失われていたらしい。


起立性調節障害も見逃されやすい。自律神経失調症の1つで、体格が大きくなるのに神経や血管などの成長が追いつけないために起きる。立ち上がったときに下半身の血管が収縮して血液を上に送り返す働きがうまくいかず、頭や体の中心部の血液が減って立ちくらみを起こす。動悸や息切れがしたり、朝なかなか起きられず午前中は調子が悪かったりする。
片道1時間半の電車通学をしていた中学生の男子が、5月の連休明けから顔色がさえなくなり頭痛を訴えるようになった。授業に集中出来ず、よく居眠りをする。起立性調節障害と診断され、体を活動的にする交感神経を刺激する薬を飲んでもらい、早起きに努力した結果、少しずつ良くなった。
北島さんは「思春期特有のアンバランスな体に起きる病気を『思春期病』と、まわりの大人たちは理解して欲しい」と話す。診療したケースや大人側の対処法をこのほど出版した「思春期ブルー」(二見書房)で紹介している。
日本医科大学小児科の前田美穂講師によると、思春期の貧血の頻度は、男子で1、2%だが、女子では8~10%。貧血の予備軍が男子が5%、女では20~30%にものぼると見られている。「予防するには生活リズムを整え、食事で鉄分をしっかり補い、無理なダイエットをしないこと」と話している。
また、日本大学名誉教授の大国真彦・表参道眼科小児科クリニック院長は、起立性調整障害の頻度は30%ほどで、治療が必要な例は2、3%とみている。之が原因で学校へ行けなくなる子供が登校拒否と間違われる例が多いという。
「寝起きが悪くて遅刻が多ければ、怠け癖なのかどうか、よく見てほしい。起立性調整障害は顔色が悪いのが特徴で、朝礼の時立ちくらみがしたり、午前中ぼんやりしていたりする。早く治療すればおおかたは改善する」と大国さんは話している。1999.12.11《朝日新聞》


【漢方療法】(疲れやすい)
<1>脾胃虚弱による疲労倦怠感。

①貧血冷え性、胃が重苦しい、下痢軟便

■[六君子湯]     

②虚弱体質、腹痛、動悸、手足が冷える

■[小建中湯]

病後orアトニー体質。        

食欲不振、夏やせ、脱肛

■[補中益気湯] 

④皮膚に艶が無く、やせて貧血、衰弱激しい

■[十全大補湯]

<2>肝腎に問題
①体格ガッチリ、胸脇・胃部につかえ、精力減退 

■[大柴胡湯]
②胸脇重苦しい、熱感さむけが交互にあり、食欲ない

■[小柴胡湯]
③衰弱、口中がかわき、動悸、微熱、ねあせ   

■[柴胡桂枝乾姜湯]

<3>腎虚による
①貧血冷え性、小便回数多い、頭痛、肩こり   

■[当帰芍薬散]
②だるい、夜間多尿、口渇、腰痛、排尿異常   

■-[八味地黄丸]

 

全身が疲れる
イ)胃腸が弱い、食欲がない:
1)下痢気味、食後に眠くなる          

■[補中益気湯]
2)下痢気味、ひざの力が抜ける         

■[清暑益気湯]
3)下痢しない、顔色悪い、貧血ぎみ       

■[十全大補湯]

ロ)胃腸は普通。めまい、冷え性、肩こり     

■[当帰芍薬散]
   

◎手足がだるく疲れる
イ)手足がほてる
1)寝起きがだるい、貧血ぎみ、胃弱       

■-[小建中湯]
2)下腹部が軟弱、夜間排尿、口渇        

■-[八味地黄丸]
ロ)手足が冷える、ツバが多い、下痢ぎみ     

■-[人参湯]

 

【漢方薬】(疲れやすい)
■茵蔯四逆湯
■温経湯
■温脾湯
■黄蓍建中湯
■甘麦大棗湯
■帰脾湯
■桂枝加竜骨牡蠣湯
■牛車腎気丸
■固本丸
■四君子湯
■十全大補湯
■小建中湯
■小柴胡湯
■逍遥散
■参蚧散
■参蘇飲
■真武湯
■清心蓮子飲
■喘四君子湯
■竹茹温胆湯
■釣藤散
■当帰建中湯
■当帰芍薬散
■当帰湯
■当帰補血湯
■独活寄生湯
■二陳湯
■人参養栄湯
■麦門冬湯
■八味地黄丸
■八珍湯
■半夏白朮天麻湯
■白虎加人参湯
■茯苓飲
■防已黄蓍湯
■保元湯
■補中益気湯
■補肺湯
■抑肝散
■抑肝散加陳皮半夏
■六君子湯
■苓桂朮甘湯
■六味丸

【民間療法】
<1>ガガイモ。
<2>ニワトリ。
<3>ニンニク。
<4>ヤマノイモ。
<5>イカリソウ・クサスギカズラ・ソテツ・チョウセンニンジン・トチバニンジン・ナタマメ・ナルコユリ・ネギ。
  
   
   






 つかれ目
【原因】
栄養失調
遠視
黄斑出血
黄斑変性症
眼底動脈瘤
急性水腫
虚血性視神経症
近視
血管新生黄斑症
頸動脈循環不全
頸椎異常
視神経萎縮
弱視
増殖性網膜症
中心性漿液性脈絡網膜症
低血圧
糖尿病性網膜症
白内障
貧血
網膜静脈血栓症
網脈中心性静脈閉塞症
網膜中心性動脈閉塞症
むち打ち症
乱視
緑内障

【漢方療法】
<1>つかれ目一般(通治薬)-          

■-苓桂朮甘湯
増殖性網膜症などの血管新生を抑える。
出血を止め、血流を改善する。
         
<2>糖尿をチェックしましょう。
<3>血圧をチェックしましょう。

  

【漢方処方】(疲れ目)
■益気聡明湯:①視力低下

■越婢加朮湯:
①翼状片
②涙が出過ぎる

■黄蓍建中湯:①虚弱児に用いる
■葛根湯

(a)さかまつげ:+[葛根湯+当帰+附子]
(b)ただれ目:+[葛根湯+朮+大黄]
(c)目やにで目が開かない:+[葛根湯+大黄]
(d)涙がひどく出る:[葛根湯+朮+附子]
(e)視力低下:+[葛根湯+桔梗+反鼻]

 

■桂枝茯苓丸: ①冷えのぼせ
■柴胡加竜骨牡蛎湯:①いらいらする
■)胡桂枝乾姜湯:①目に力が入らない
■三黄瀉心湯:
   ①のぼせる
   ②不安感
   ③興奮
   ④出血            
■滋腎明目湯:①視力低下
■十全大補湯:

視力低下で、血虚⇒[十全大補湯沈香・白豆蔲・附子]
■小建中湯:
①虚弱体質
②腹痛することがある。
■小柴胡湯: ①食欲不振
■真武湯:
    ①めまい
    ②かすみ目
■大承気湯:
■大青竜湯:
     ①角膜潰瘍
■桃核承気湯:
     ①白内障
     ②瘀血による
■当帰芍薬散:
■八味地黄丸:
     ①白内障、緑内障
     ②体力・気力が衰えた者。
     ③網膜剥離、
■補中益気湯:
■防風通聖散:




つば
(1)脾の液で、脾が熱するとツバが流れる。
(2)唾は腎の液。大病後にツバをよく吐くのは、胃に寒がある為。

◎ツバがたまる:
<1>回虫のために、唾液がたまる:
■理中安蛔湯
■烏梅丸
■大建中湯
■椒梅瀉心湯
■甘草粉蜜湯

<2>欝により、唾液がたまる:
■大柴胡湯

<3>腎虚から
■八味丸料


【漢方薬】(つばがたまる)
■二陳湯
■二陳湯白芨・白芍薬・升麻(土炒)・芩連・梔子・神麹・麦芽・乾生姜(いつも清水を吐き、冷たいツバが下から上に吹き上がる)
■人参湯(ツバ・よだれが多い)
■附子人参湯(薄い唾が出る)
■理中丸(大病後につばをよく吐く)


 

つばを吐く
   =生唾を吐く
【漢方薬】
■救逆湯
■呉茱萸湯


 

つわり
   =悪阻=(妊娠嘔吐)
【漢方薬】
■茵蔯五苓散

■乾姜人参半夏丸(激しいつわり、疲労で衰弱)

■橘皮湯

■桂枝湯
■香砂六君子湯
 「橘皮・半夏・竹茹各5両、生姜・茯苓各4両、麦門冬・人参各3両」(胃熱気逆嘔吐を治す)

■胡黄連一味(丸薬として、《済世薬室》)

■呉茱萸湯

■五苓散

■梔子乾姜湯

■生姜半夏湯

■小半夏加茯苓湯(軽いつわり、吐き気、動悸、めまい)

■旋覆代赭湯

■大黄甘草湯(嘔吐、便秘)

■丁香柿蒂湯

■当帰芍薬散(貧血、冷え性、疲れやすい、月経不順、神経症状)

■当帰芍薬散小半夏加茯苓湯

■人参湯(激しいつわり)

■半夏厚朴湯

■半夏瀉心湯

■茯苓飲合半夏厚朴湯
  

【民間療法】
★カリン:生のカリンの実2個、すり下ろし、2倍量の水を加え、10分間煮る。冷ましてチョコ1杯ぐらいを日に3~4回。
嘔吐を止める。
★ショウガ:薄く切って、口にふくむ。むかつきを抑える。
<1>カラスビシャク。
<2>クマ。
<3>ビヨウヤナギ。
<4>ダイコン・ナベズミ。
<5>[カラスビシャクヒネショウガ]


 

椎間板ヘルニア
⇒外傷により椎間板が後方に脱出する為に起きる。
◎腰痛や坐骨神経痛の原因になる。
「椎間板」=椎体を結合し、緩衝体の役割をする軟骨。

◎腰痛の代表的な原因
「椎間板の中心にある髄核が、外に押し出され、神経などを圧迫して痛みを起こす病気だ。髄核を囲む繊維輪に、なんらかの原因で、亀裂が生まれるのが引き金になる。
大阪医科大の永田裕人・講師(整形外科)によると、重いものを持ち上げるなどにより、急に起こることは少なく、長期間、無理な姿勢や、運動を繰り返すことで、少しずつ繊維輪が傷ついた結果だという。

髄核の飛び出し方によって、症状の軽重は大まかに3つに分けることが出来る。

<1>最も軽いのは、押し出された髄核が繊維輪内にとどまっている状態。
<2>次に、髄核が靱帯にまで達し、靱帯を隆起させて間接的に神経を圧迫する状態。
<3>最も重いのが、この靱帯を突き破って髄核が直接、神経を圧迫している状態だ。1996.9.3《朝日新聞》」

◎新しい治療法

(経皮的髄核摘出法)
「本当に重症のヘルニアは、手術に頼らざるを得ないが、経皮的な方法で、従来の背中を切る手術の割合はかなり減らせるはずだ」と永田講師。
 これは、背中から細いストロー状のパイプを、椎間板に差込、そのパイプの穴から専用器具で髄核をつまみ出す方法。髄核を取った後は、空洞になり、内圧も下がるので、神経への圧迫が低下するのをねらった方法。保険医療の対象にもなっているという。
 また、今のところ、保険医療の対象外だが、同大学では約5年前、髄核部分の内圧を下げるのを目的に、レーザーの熱エネルギーで髄核を発散させる方法を開発、治療に使っている。
 いずれも、局所麻酔で済み、2日程度で退院出来るという。
この他パパイヤから抽出した、タンパク質分解酵素・キモパインを使って、髄核に含まれる水分を保つ物質を溶かし、圧力を下げる治療法もある。1996.9.4     《朝日新聞》」

 

◎首の椎間板ヘルニア
「56歳の父が頸椎の椎間板ヘルニアになって5年になります。最近、手のシビレがきつくなり、箸が持ちにくいなど動きも鈍くなっています。ヘルニアは3ヶ所あるそうです。どういう病気なのか、手術の方法や、手術後にしびれやこわばりが取れるかどうか教えて下さい。
◇椎間板ヘルニアとは?
背骨を構成している硬い椎骨の間に、椎間板という円い板状の軟骨がはさまっています。柔らかい椎間板があることで背骨を曲げることが出来るのです。椎間板が椎骨の間から突き出したのが椎間板ヘルニアです。背骨には神経の幹線である脊髄が通っていますし、手足に至る神経も出ています。突き出した部分が神経を圧迫すると痛みやしびれを起こします。たとえば、腰の椎間板ヘルニアだと腰痛を起こします。
 ◇この方は首が悪いようです。
まず頸椎から出ている神経は腕などに行っていますから、ヘルニアによって肩が凝る・腕が痛い・首が痛い・手がしびれる・手の動きがぎこちない・字が書きにくいなどの症状が出ます。また、頸椎の中を通っている脊髄が圧迫されると、脚がしびれる・歩きにくい・排尿がしにくいなどの症状も出ます。
◇どのように診断しますか?
 大きな病院にある磁気共鳴断層撮影(MRI)の装置を使えば、椎間板が突き出しているかどうかを調べることが出来ます。
◇どんな人がなりやすいですか?
頸椎の椎間板ヘルニアを起こしやすいのは、40、50代の方です。首に負担をかけていると起きやすくなるので、若い頃からの生活習慣も影響します。イスに座ってうたた寝をしていると、首に負担がかかります。寝違いも首には良くありません。
◇痛い時やしびれる時にはどうすればいいですか?
まず、ベッドなどに寝てみて下さい。頭の重さで圧迫されているために椎間板が突き出すので、横になれば痛みが軽くなります。首を引っ張る「牽引」を病院で受けて楽になる人もいます。
◇治るものでしょうか?
自然に治る人もいます。突き出した部分が元のところに吸収されて神経の圧迫がとれ、痛みが治るわけです。しかし、5年間も症状が続くと、自然に治る のを期待するのは無理でしょう。
◇手術はどのようにしますか?
首の側からする方法と、後ろ側からする方法とがあります。前からする方法は、問題を起こしている椎間板を取り除いて、代わりに患者さん自身の腰の骨を少し切り取って移植します。問題点は、椎間板の上下の二つの頸椎の動きが固定されてしまうことです。何ヵ所もの椎間板を手術すると首の動きが悪くなるので、普通は3ヶ所までしか出来ません。後ろから手術する方法は、椎骨の後ろ側の部分を切って広げ、神経が通る空間を広げます。椎間板は突き出たまま残し、神経を後ろに逃がして圧迫を避けるわけです。(山野慶樹・大阪市立大医学部教授)1997.2.9《朝日新聞》

◎9割は「絶対安静」で改善
「2ヶ月前から腰痛がひどくなり、近所の医院で椎間板ヘルニアと診断されたシステムエンジニアAさん(44)は、自宅に近い東海大病院整形外科(神奈川県伊勢原市)を受診した。
医院では背骨を伸ばす骨盤牽引を受け、消炎鎮痛剤も服用したが、ひどくなる一方、「前屈みになることが出来ず、背中はカチカチ。右足のふくらはぎの外側も痛かった」。
椎間板は、背骨をクッションのようにつなぐ軟骨組織。体重を支え、背骨の動きを補助する機能を持つ。
「皮の厚い温泉饅頭を想像してください」。Aさんを診察した持田譲治助教授は、椎間板をかんじゅうに例える。軟らかいあんこに当たる髄核が、線維輪という厚い皮に囲まれている。物理的ストレスで、まんじゅうの一部が出っ張ったり、あんこが皮を破って外に出たりするのが椎間板ヘルニアだ。
症状が進むと、まんじゅうの外側にある後縦靱帯に亀裂が出来ることもある。MRI検査の結果、Aさんには第4と第5の腰椎間に巨大なヘルニアがあり、後縦靱帯の亀裂も疑われた。
「手術覚悟」だったが、持田助教授の指示は、「徹底的に安静を」という保存的治療だった。「椎間板ヘルニアというと、すぐ手術と思う人がいるようですが、実際は9割以上が手術無しで治ります」。尿の出が悪い場合や、筋力が著しく低下している時は、重要な神経がかなり傷んでいる可能性があるため、すぐに手術が必要だが、Aさんは、足腰の痛みだけだった。
●トイレ以外動かない
「ヘルニアは椎間板内の圧力が高まって起こる。このため、圧力が高まらないように、重いものを持ったり、長時間座り続けたりしないことが重要になる。職場では1日中坐りっぱなしだったAさんは、消炎鎮痛剤を服用しながら1週間休みをとり、「トイレ以外は動かない」ことを厳守。職場復帰後も、しばらく勤務時間を短縮し、無理をしないように気をつけた。
当初は痛みのため仰向けに寝ると60度ぐらいしか上がらなかった右足も、2ヶ月後に直角に上げられるようになり、痛みも消えた。何よりAさんが驚いたのは、4ヶ月後のMRI検査で、ヘルニアが半分の大きさに縮小していたことだ。
保存的治療には、消炎鎮痛剤などの薬物療法のほか、赤外線や低周波などで患部を温める温熱療法、骨盤牽引や筋力強化を行う理学療法などがある。
後縦靱帯が破れるほどの椎間板ヘルニアでも、保存的治療で回復することは臨床的には知られていた。ヘルニアそのものがなくなるのではなく、徐々に神経周辺の炎症が引くことで改善すると考えられていたが、MRIの普及で、一部のヘルニアが消えていくことが分かった。Aさんのような例は、東海大病院でも92年以来14人。「保存治療で治癒したした人達の約1割は、完全とは癒えないまでも、ヘルニアが小さくなっていた」と持田助教授。
若い人に多く見られるが、高齢者でも怒る。ヘルニアが縮小する理由は、よく分かっていないが、髄核が外に出ると、周囲の組織がこれを異物として排除するためという説もある。
「最初の1週間にきちんと保存的治療をするかどうかで、その後の経過が決まる。寝るとき膝の下に枕を入れるだけでも、椎間板への負担を減らすことが出来る。保存的治療は何もしないことではない」

〇レーザー照射治療

〇減圧法でヘルニア改善
「椎間板ヘルニアは、背骨をつなぐクッション役をする軟骨の椎間板が、物理的なストレスなどをきっかけに外に出る病気だ。
数年来、腰と脚の痛みに悩まされてきた大阪市のフリーターAさん(23)は97年、大阪医大病院整形外科(高槻市)で、MRI(磁気共鳴映像法)などによる検査の結果、第4、第5腰椎間の椎間板ヘルニアと診断された。
ヘルニアになると、椎間板の変形で下肢に行く神経が圧迫されるため、強い腰痛や坐骨神経痛、足のシビレなどが出る。「長時間坐ることはおろか、ここ半年は痛みが気になって寝付けないほどでした」と訴えるAさんに、診察した小坂理也医師は『経皮的レーザー椎間板減圧法』と呼ばれる治療を提案した。
 椎間板ヘルニアの手術で最も一般的なのは、腰部を4~5cm切開し、筋肉や神経を避けながら、飛び出した部分を取るヘルニア手術だ。しかし神経を避けると言っても、時には神経に触れて癒着を起こしたり、手術の出血で血腫ができたりして、新たな腰痛を起こしたりすることがある。
これに対し、小坂医師の実施している減圧法は、腰部の2mmほどの穴から直径1.5mmの管を患部の椎間板に刺し入れ、ここにレーザーファイバーを通し、レーザーを20~30分ほど照射するものだ。
ヘルニアは、椎間板内の圧力が高まって、中心部にあるゼリー状の髄核が外に出た状態だ。
髄核は水分が多く、レーザーで蒸散させることで、切らなくても椎間板内の圧力を弱める効果が期待できる。
「通常のヘルニア摘出術に比べて、体への侵襲もストレスもずっと少ない。安静や薬物、理学療法を組み合わせた保存的治療がダメだった場合、手術しか残っていなかったが、その中間にもう1つ選択肢が出来ると思う」と小坂医師は説明する。
92年以来、43人に実施し、24人は痛みが改善して通常の生活に戻れた。残りの19人のうち、11人は多少痛みが残るがそれ以上の手術には至らず、残る8 人は効果が無く、通常のヘルニア手術を受けた。
Aさんは、検査を含めて約3週間入院。約2ヶ月後には、長時間座れるようになり、苦痛無く、歩けるようになった。
実績ある病院で慎重に
もっとも、レーザー治療は、まだ歴史が10年と浅い上、神経組織の近くで200℃近い熱エネルギーを照射するものだけに、その内容を十分納得した上で受ける必要があると、小坂医師は強調する。
実施に当たっては、以下の基準を設けている。。
神経が通る脊柱の管が狭くなったりしていない。
椎間板の後方にある後縦靱帯が破れていない。
3ヶ月以上の保存治療を受けても改善しない
椎間板ヘルニアの手術をこれまで受けたことがない。
レーザー椎間板減圧法は現在、健康保険の対象となっていない。ただ、先端医療の研究機関として厚生省の承認を受けた大阪医大・金沢医大・杏林大などの施設では、高度先進医療として、検査・入院費などには保険が利き、治療費は自費となる。Aさんは、治療費の\160000と、入院費の3割負担相当の\180000を支払った。
「海外の報告や、他の施設でレーザー照射を受けた人たちの中には、手術後の椎間板炎や脊椎骨の骨壊死などが報告されている。実績のある病院で、厳密な適応のもとで行われるべきだ」と小坂医師は話している。


■原因
「椎間板の変性はサイトカインという物質によって促進されることが明らかになった。また、『TGF』というタンパク質が少なくなると、椎間板の変性を防ぐ物質が減って破壊が進む可能性があることも分かってきた。
椎間板が傷み出すのは髄核細胞の炎症が引き金になっている。髄核細胞を移植して椎間板を再生する治療法を持田譲治・東海大学医学部教授が開発。」

【漢方薬】
■当帰四逆加呉茱萸生姜湯)
■二朮湯(しびれ、運動障害、五十肩)

◎治療薬
「生化学工業は2007年に、日米で臨床試験に入る。椎間板は背骨と背骨の間にある軟骨組織で、衝撃を吸収クッションの役割がある。強い力が繰り返しかかることで、椎間板の中にある髄核と呼ばれるゼリー状物質が外にはみ出てしまうのが椎間板ヘルニア。髄核が神経を圧迫すると、激しい痛みが起きる。
同社が開発したのは、コンドロイチナーゼABCというバクテリアから作る酵素が主成分。この酵素は髄核の主要成分を分解する。髄核に注射し髄核を減らして神経を圧迫しないようにする効果が期待できる。
日本で患者に対する安全性試験の初期試験を終了。」

◎酵素注入療法

日本初の椎間板ヘルニア治療薬「ヘルコニア」(生化学工業)の有効成分は髄捔に含まれる保水成分を分解する「コンドりアーゼ」という酵素を使う。手術は必要なく、1回の注射でOK。

 

 


痛風 (つうふう)gout
(→高尿酸血症)
尿がアルカリ性になると尿酸は排泄されやすい

⇒尿酸の生成と排泄の均衡が破れ、尿酸の血中濃度が異常に増加し、血中に溶けきれずに析出、結晶となって足の関節に溜まり炎症を起こす病気。
「原発性痛風は遺伝的素因で起こり、高尿酸血症、急性・慢性の痛風性関節炎、痛風結節(tophi)を主症状とし、血球の多量崩壊を示す疾患、ある種の薬剤(サイアザイドなど)投与で続発性に発症することもある。(金芳堂 ー内科診断学)P578]

gout⇒尿酸の生成と排泄の均衡が破れ、尿酸の血中濃度が異常に増加する。急性発作にはcolchicineが特効。

◎骨をえぐるような痛み。
肥満・・・→腎臓から尿酸に排泄が低下する
食べすぎ・・・・たくさん食べる人が多い。
アルコール・・・必ず尿酸値が上がる
激しい運動・・・ 有酸素運動ならOK

炎症が無いときの尿酸値も大切
◎【臨床検査】
<1>血中尿酸:高値
<2>尿酸排泄量:減少
<3>WBC:増加
<4>α2ーグロブリン:増加
<5>CRP:( )
1996.5.29NHK(河野典夫・大阪大学教授)

<1>核酸(DNA.RNA)が死滅したものと、細胞のエネルギー(ATP)消費から『AMP』が作られ、それが尿酸に変化する。尿酸は1日に約750ml作られる。AMP=アデニル酸。

<2>高尿酸血症
[尿酸処理が悪い]
1.摂取する水分量が少ない。
2.汗だ出過ぎる→尿が減る。
3.肥満→尿酸の排泄が低下。

[尿酸を作りすぎる]
1.食事
2.運動
3.アルコール

<3>ライフスタイルが原因
1.水分が不足
2.発汗
3.肥満
4.激しい運動…運動時間ではなく、強さに関係する。
5.多量の飲酒…1~2時間後に、尿酸値がUP。アルコールに強い人ほど、尿酸値が上昇。
6.プリン体の食べ過ぎ…内臓・背の青い魚・エビなどに多い。食べても良いが、食べ過ぎない。

◎健康な人の激しい運動(2~3分)後、ウイスキーをダブル・・2倍上昇。

<4>痛風防止の5箇条
1.尿を1日2000cc以上出す。
 普通の人=1000~1500cc/日
 尿量減少=500cc以下/日
2.肥満を防止する。
3.アルコールは、ほどほどに。日本酒1日1合が目安。
4.適度な運動。ゆっくりした運動。
5.バランスの良い食事。--プリン体が入っていてもかまわない。

◎症状:痛風患者の急性の激しい痛みの関節炎発作を痛風発作という。
<1>骨をえぐるような痛み。
<2>足の親指が多い。親指以外には、アキレス腱、足指の付け根、ひざ、足の甲など。
<3>患部が赤く腫れる。

◎尿酸が体内に溜まる原因:
<1>体内で尿酸が出来過ぎる場合。
<2>出来た尿酸の排出が不十分。

◎尿酸値を引き上げる要因:
<1>飲酒
①アルコールは尿酸値を上げるだけでなく、排泄機能を低下させる作用があるので、2倍のダメージがある。
②さらに運動後にアルコールを飲むと尿酸値は急激に上昇する。
③ビールはプリン体が多いため、さらに悪条件が重なる。
<2>肉中心の食生活。
<3>肥満。
<4>ストレス。

◎合併症
<1>尿酸結石(腎石)
<2>糖尿病
<3>肥満症
<4>高血圧症
<5>動脈硬化症
<6>尿毒症

◎診断基準:米国リウマチ学会痛風診断基準、1977)
<1>尿酸塩結晶が間接液中に存在すること。
<2>痛風結節の証明。
<3>以下の項目のうち6項目以上を満たすこと。
  (イ)1回以上の急性関節炎の既往があること。
  (ロ)24時間以内に炎症がピークに達する。
  (ハ)単関節炎である。
  (ニ)関節の発赤がある。
  (ホ)母趾基関節の疼痛または腫脹がある。
  (ヘ)片側の母趾基関節の病変である。
  (ト)片側の足根関節の病変である。
  (チ)痛風結節(確診または疑診)がある。
  (ヌ)血清尿酸値の上昇がある。
  (ル)X線上の非対称性腫脹がある。
  (オ)発作の完全な寛解がある。

■尿酸値を高める薬は、薬剤性痛風を起こす
「痛風は血液中の尿酸が増えると起こる病気で、結合組織や軟骨・皮膚・関節などに尿酸塩が沈着すると痛み発作や結節を生じる。古典的な痛風に比べ、薬剤性の痛風には若干の特徴がある。
<1>普通の痛風は男性がかかりやすく、足指の関節が侵されやすいのに対し、
<2>薬剤性の痛風は女性に多く、手指の関節に現れやすい。
 血液の尿酸値を高める薬なら、どれも痛風の原因となるが、一番有名なのは、[サイアザイド系利尿剤]によるものだ。利尿剤使用中の高血圧患者は、悲使用者に比べて、約2倍痛風になるやすい。
臓器移植後や免疫性の病気の治療に使われる[シクロスポリン]、白血病などの治療に使われる細胞毒性の薬も腎臓での尿酸排泄を抑えたり、腎不全を起こすことによって尿酸値を高くし、痛風を引き起こす。
 予防は、水分を十分に取り、尿酸を下げる薬を使用することである。逆説的な現象として、痛風の治療薬、つまり尿酸を下げる薬が、かえって痛風発作を引き起こすことがある。これは組織中に沈着していた尿酸が薬によって急激に溶出してくる為だと解釈されており、治療開始期にみられることが多い。
 抗結核薬の[ピラジナミド]や[エタンブトール]、潰瘍治療薬の[オメプラゾール]も尿酸値を高める。(別府宏圀)1997.1.11《日本経済新聞》

■副作用で6人死亡
「痛風治療薬「ベンズブロマロン」(商品名:ユリノームなど)を投与された患者8人が、急激に肝臓の機能が低下する激症肝炎を起こし、うち6人が死亡したことが分かり、厚生省は23日、製造元の鳥居薬品など10社に対し、医療機関向けに緊急安全情報を出して注意喚起するよう指示した。投与開始前に肝臓検査を実施し、肝障害がないことを確認することを求め、肝障害のある患者には使用禁止とした。」2000.2.23《日本経済新聞》
■尿酸排泄促進薬に注意
「痛風薬で激症肝炎、6人死亡」----今年2月23日、ニュースに横浜市の会社員Bさんは驚いた。服用している尿酸排泄促進薬『ベンズブロマロン』について、厚生省が緊急安全性対策を発表したのだ。
「最近3年間で、この薬を服用した8人が肝機能が急激に低下する激症肝炎になり、6人が死んだ」「服用と発症の因果関係が否定できないため、食欲不振や全身の倦怠感など異常があれば服薬中止を」「初めて飲む前には肝障害の有無を調べ、障害あれば飲まない。飲み始めて半年は肝機能検査を」といった内容だった。
ベンズブロマロンは79年の発売以降、効果がすぐれて副作用が少ないため、全国で30万人が使っている。


■発泡酒
「発泡酒が生活習慣病の痛風を緩和するかもしれない。血液中の尿酸の量が多くなり、関節などに結晶などが出来て痛む。放置すると腎臓障害などを引き起こす恐ろしい病気だ。プリン体と呼ばれる物質を多く含む食物の摂りすぎが一因とされる。プリン体の分解により過剰になった尿酸がつくられるからだ。
プリン体の多い食物に大麦がある。その大麦を発芽させた麦芽を主原料として醸造するビールは、他のアルコール飲料に比べプリン体の含有量が著しく多い。アルコール自体も尿酸の生成を促すため、医師は痛風患者に対してビールを控えるように必ず指導する。
一方、発泡酒は麦芽の使用率が低く、プリン体の含有量が少ない。帝京大学の藤森新・医学部教授らが今年2月に学会発表したデータによると、100ml中のプリン体
・普通のビール----4.35~6.18mg
・発泡酒-------------2.83~3.82mg    2000.6.19《日本経済新聞》

■風が吹いても痛い
「食事の多くが外食や市販弁当。週に3、4日は飲み屋へ。川崎市の会社員Aさんはそんな偏った食生活を反省している。2月に結婚したばかりのAさんを痛風が襲った。左足親指の付け根が痛み始め、一晩で赤く腫れ上がり、ペンチでひねられたような強烈な痛み。地元の病院で鎮痛薬をもらい、どうにか5日後に鎮まった。
「夜も眠れない。まさに風が吹いても痛い感じでした」
痛風は、体内の代謝で生じる老廃物の尿酸が、足などの関節にたまり、痛風発作と呼ばれる炎症を起こして激しく痛む。血液中の尿酸が増えすぎる高尿酸血症が原因で、遺伝・肥満・飲酒・ストレスなどが尿酸を増やす要因となる。ただし女性はホルモンの働きで尿酸が少なく、患者の大半は男性だ。
根本的な治療法はないが、薬で発作の再発は防げる。放置したままでいると、尿酸が体内に沈着し合併症を起こす。尿路結石・皮下にコブを作る痛風結節・腎臓病が多い。薬が開発される以前は、腎機能の低下で亡くなる痛風患者が多かった。」

■10kg減量で尿酸値安定
「痛風や高尿酸血症になる原因の1つが肥満。体重が増えると尿酸値が上がり、体重が減ると下がる傾向がある。減量が課題の患者は少なくない。
埼玉県に住むTさん(53)は、一昨年8月、左足親指の付け根に痛風発作が起きた。発作は抗炎症薬を飲んで1週間程度で治まったが、「痛風を甘く考えると大変なことになる」と不安を感じて、当時、都立墨東病医院リウマチ科部長だった内田詔爾さん(55)を受診。「生活を改善して、やせましょう」と、きっぱち指示された。
身長177cmで、体重80kgを超えていた。食通で肉中心の食事と、歩いて10分の距離でもタクシーに乗る運動不足がたたり、30歳代から太りはじめ、40歳代には尿酸値が8mg台。高脂血症や肝機能も良くなく、健康診断で「生活習慣病の巣」と指摘されていた。
「一度に体重を減らそうとすると失敗する。1ヶ月1kgを目標に緩やかに続けるのがコツ」と内田さんはアドバイス。Tさんは、痛風や肥満に関する本を5、6冊買い込んで学習した。
「続けるのが大切なので、食事は厳密なカロリー計算で制限することは避けて、野菜のおいしさを味わうつもりで食べた。ウォーキングも、今まで知らなかった寺や公園などを知る楽しみにしました」とTさん。
楽しみながらの減量が功奏して、半年後には体重が71kgまで落ちた。尿酸値も6程度に安定。」

■痛みが消えても高尿酸血症
「万力で締め付けたようだ・・・・・。ある日突然、足の親指などが腫れ上がり激しい痛みをもたらす痛風。発作にばかり目を向けてはいけない。痛みは数日内で治まるが、痛風の原因となる尿酸値が高い状態(高尿酸血症)を放置すると腎障害など多くの合併症を引き起こす。
80歳の男性Hさんは30年前、痛風の発作を経験した。「いまだに激痛が忘れられず、赤紫にふくれた親指、歩けなかった様子などを思い出す」。その後はきちんと治療を続け発作の再発は無いという。
痛風患者は国内で30万~60万人。中高年の男性に多いが、最近は20~30歳代と若い人の発症が珍しくなくなってきた。尿酸のもとになる物質を多く含む欧米型の食生活の浸透、運動不足などの生活習慣の変化が主因とみられ、1960年代以降、患者数は増加傾向にある。
痛風が怖いのは発作の痛みではなく、背後にある高尿酸血症。尿酸値が高い状態は、腎不全や尿路結石だけでなく脳卒中や心筋梗塞など全身の病気の原因となるからだ。こうした高尿酸血症の患者は潜在的には数百万人に上るとみられている。
専門医や研究者で組織する日本痛風・核酸代謝学会は今月末、高尿酸血症と痛風の治療ガイドラインを発行する。
ガイドラインは、「痛風により関節の痛みという目立つ症状だけでなく、高尿酸血症に注目・尿酸値が血液1デシリトル(1/10)当たり7.0mg以上を高尿酸血症と明確に定義した」
ガイドラインは学会事務局(03-3597-9394)に申し込めば誰でも購入できる。
尿酸は尿を通じて排泄されるので、水分を十分に摂取して尿量を維持することも大切だ。2002.7.16《日本経済新聞》

■突然の激痛
「肥満気味で精力的に働くAさん(46)は、2日ほど前から気分がすぐれず、風邪と思っていた。それが昨晩、突然足の親指の付け根に強烈な痛みを感じ、一晩中眠れなかった。引き裂けるような痛みで、布団に触れるだけでも痛い。
痛風は体の中の尿酸が増え、手足の関節や周辺の組織に尿酸結晶が沈着して痛みを引き起こす病。
繰り返し起こる手足の関節炎が主な症状だが、皮下組織に結節や尿路結石を起こすこともある
40歳の男性に多く、遺伝的素因もあると言われている。
発作的な激痛が無いときは[関節リウマチ][変形性関節症]との鑑別が必要。潰瘍化した巨大な痛風結節は悪性腫瘍と間違いやすい。
発作時には消炎鎮痛薬で疼痛を抑える。
肉などのプリン体が多く含まれている食べ物を制限すべきと言われていたが、かならずしも重要ではない。」
■尿酸値
「痛風の発作は血液中の尿酸が関節付近で結晶化し、それが剥がれ落ちるのをキッカケに起こる。尿酸結晶に白血球(なかでも好中球)が殺到して激しい炎症を引き起こすのが痛みと腫れの原因だ。
結晶が剥がれる現象は尿酸値の高さに加えて、その変化とも密接な関係がある。尿酸値が低い(ex:6mg)でも発作が起きるのは、高尿酸血症の人が急に運動をしたり、食生活を変化させることで尿酸値が下がり始める際に結晶が剥がれやすくなる。
基本的なメカニズム(尿酸の結晶化→好中球の殺到→発作)は、以前から知られていたが、細胞内のどのような働きが尿酸血結晶を「異物」と認識し炎症につながるのか?体内で尿酸を運搬している物質の存在が明らかになったのは2000年以降の成果。

 

【芳香療法】(痛風を改善する)
<1>精油で冷湿布:

サイプレス
フェンネル
ジュニパー
レモン:酸の過剰を中和する作用がある。
    

<2>マッサージ:安息香
        カミルレ
        ラベンダー
        ローズマリー
<3>食生活上のアドバイス

【色彩療法】
<1>レモン色
<2>赤紫色
<3>緋色

【ハーブ】(痛風を改善する)
●「セロリ」(Celery)    (GreenPharmacyp239)
「セロリ抽出物が尿酸の排出に役立つであろうことを知って、私はアロプリノールに代えて毎日セロリ種子抽出物を2~4錠摂り始めました。その結果、6ヶ月間一度も発作なく過ごせました。1週間後、その抽出物の代わりに1日当たり、セロリ4茎を食べました。」

●「シソ」(Chiso)
「尿酸合成の予防に役立つキサンチン酸化酵素(xanthine oxidase[XO])阻害物質として知られる4種の化合物をかなり高濃度で含有。」

●「カンゾウ」(Licorice)
「シソと同様に、数種のキサンチン酸化酵素阻害物質を含んでいますが、かなり低濃度です。」

●「ターメリック」(Turmeric)
「ターメリックの化合物の1つクルクミン(curcumin)は、体内のプラスタグランジン類(prostaglandins)と呼ばれている疼痛に関する物質の合成を阻害します。この機構はアスピリン(aspirin)及びイブプロフェン(ibuprofen)の疼痛軽減作用と同様です。しかし、その作用はさらに弱いものです。それ故、体内コルチゾン(cortisone)を放出するように副腎を刺激するには高用量のクルクミンが必要です」

●「アボガド」(Avocado,Persea americana)
「抗炎症作用を持つハーブです。アマゾン地域では、アボガドが痛風の治療に有用であると信じられていますが、科学的証明はありません。」

●「キャッツクロウ」(Cat's claw)
「痛風発作中に飲んだところ、2粒~6粒ではダメで、10粒で処方薬と同じくらい効果があった」

●「チェリー」(Cherry)
「多くの人が1日に缶入りor 新鮮チェリー類を8オンス(約227g)食べると、痛風発作から逃れると主張する。たとえば、私の友人はブラッックベリー類(black berries)を食べると、痛風から逃れると主張する。」

●「デビルズクロウ」(Devil's claw,Harpagophytum procumbens)
「いくつかの報告は、このハーブが尿酸レベルを下げ、また抗炎症作用を持ちます。」

●「エンバク」(Oat,Avena sativa)
「エンバクの緑葉先端部から作られるティーは、血液中の尿酸レベルを下げる利尿作用があります。
「オリーブ」(Olive,Olea europea)
「利尿薬として利用されてきました。日本の研究者が3週間にわたって1日当たりオリーブの葉のティーを約4カップ摂取すると、血中尿酸レベルを下げ、尿中の尿酸レベルを上げて、10~15%まで日々の排尿量を増加することを示しました。」

●「パイナップル」
「パイナップルはタンパク質(protei)の分解に役立つ酵素ブロメライン(bromelain)を含有。自然療法家はしばしば炎症及び腫脹を軽減するためにブロメラインを推奨します。」

●「スティンギングネットル」(Stinging nettle)
「アヒルの尿酸排出を増加する」

●「ヤナギ」(Willow)
「ヤナギ樹皮はアスピリンの成分であるサリチル酸塩(salicylates)を含有しているので、ハーブアスピリンに相当します。ヤナギ樹皮は疼痛及び炎症の緩和に役立ちます。さらに、サリチル酸塩が尿酸レベルを下げるという報告があります。熱湯1カップに小さじ2杯のヤナギ樹皮を入れ、20分間浸ける。」

【食事療法】

・レモンジュース

【民間療法】(痛風を改善する)
〇アカマツ:浴用料
〇アサガオの種子:作末し服用。
〇ウシの歯・眼球の黒焼き:作末し(3~6g/1日)服用。著効。
〇オトギリソウ
〇ダイコン:
〇トウガラシ   
〇トネリコの樹皮:尿酸の排出に著効。
1)樹皮を採取し、渋皮が去って1日1~3gをコップ1杯の水に浸け、その緑色の滲出液を飲む。1日3回空腹時。
2)秦皮(6g)を300ccの水で150ccまで煎じ服用。
〇ナツメ
〇ナルコユリ
〇ヒヨドリジョウゴ
〇ホオズキ
〇マタタビ:実(15g)orつる(20g)を450ccの水で煎じ、食前30分~1時間に、3回。著効。
〇ワラビ
  

【漢方薬】(痛風に)
■烏頭湯
■越婢加朮湯
■舒筋立安散
■四妙散
■芍薬甘草湯
■大柴胡湯
■大柴胡湯+桂枝茯苓丸
■大柴胡湯+桃核承気湯
■防已黄蓍湯+薏苡仁
■防風通聖散
■防風通聖散+桂枝茯苓丸
■防風通聖散+通導散
■防風通聖散+独活+羗活+牛膝+枳殻
■霊仙除痛湯《万病回春》
  

【臨床例】
☆57歳、男性。
「患者は付添人の肩につかまり、びっこを引きながら入ってきた。診ると、親指の付け根が倍以上に腫れて、暗紫色を呈している。
病歴を聞くと、4年前より右足の親指の付け根当たりが痛み、鎮痛剤で一進一退であったが、今年の8/2、痛みのため歩行出来なくなった。コルヒチンを用いたが、経過が良くない。そこで9/9、東京医科大学整形外科に入院して1ヶ月間痛風の治療を受けたが効果がないので、10/7退院したとの由。尿酸は[9mm]でアンチュウサンを飲むと[6.5~7mm]になると言う。
退院して5日目、知人の紹介で漢方治療を受ける為に来院した。
右足の痛みのほかに、頸から肩にかけて凝りがひどく、頭痛と頭重があり、右の耳鳴り、腰の痛みを訴える。それに口渇が強くて、よく湯水を飲み、寒がりである。
食事は辛いもの、塩気のものが好きで、甘いものは摂らない。タバコは30本/1日、酒は5~6合飲む程度であったが現在は中止している。便秘がちで、小水は日中8~10回、夜は1回程度。
体格はがっちりしたタイプで、栄養、顔色ともに良好、脈はやや弦、舌には少し白苔がついている。腹診すると、強い胸脇苦満の症状を認める。
腹証により、大柴胡湯加石膏を20日分与えた。便秘があるため大黄を1.5gとし、口渇があるため石膏を加えた。
10/27来院。胸脇苦満が少しとれ、便は1日1回となり、小水は日中4~5回、夜1回で、湯水も飲まなくなった。
11/2来院。肩こりがとれてあんまを呼ぶ必要がなくなったと言うが、足の痛みは取れない。そこで足の痛みに用いる当帰拈痛湯を10日分与えた。
11/21来院。足の痛みは依然として良くならない。ここで当帰拈痛湯を与えるべき症状でないと考え、腹証により最初の大柴胡湯に戻り、これに鎮痛作用のある麻黄を加えて、15日分与えた。
12/12来院。足の痛みがどうしても止まらないと訴える。そこで初診にかえり詳しく腹診した。すると胸脇苦満の他に下腹部に強い抵抗と圧痛を認めた。「これだ!」このフル血が足の痛みに関係していたのだと、一大発見した気持ち。「病気は目立たないところで、その秘密をあかす」と言うが、足の痛みの秘密は下腹部にあったのだ。
腹証により、大柴胡湯合桃核承気湯加紅花薏苡仁を投薬、14日分づつ2回与えた。紅花はフル血(血液代謝障害の老廃物)を取り去るため、薏苡仁は痛みをとるために加えた。
年を越して1/9、患者はニコニコしながら来院。足の痛みも腫れもひき、非常によくなったと喜ぶ。東京医大の先生が足の腫れが元通りになったことに驚かれ、漢方の先生に小水を出す薬を用いたらどうかと言われた、と患者が申し出た。小水の薬(桃核承気湯)は入っていると言って、同方を63日間投薬した。
3/20来院。尿酸は[3mm]になり、東京医大の先生がびっくりされたとの由。その後、予防として60日ほど服薬、いまでは痛かった右足を片足にして立っても痛くないほどに全快した。」
(寺師睦宗著「成人病の漢方療法」p192~p195)



痛風 (つうふう)
⇒漢方医学における病名。現代の慢性関節リウマチに当たる。
=痺証の一種のこと。手足の小関節炎。ロイマチス。節々の痛。
(痛風 gout)とは違う。
⇒痛風は痛痺と相似し、身体のある場所に激痛が発生し、疼痛箇所は皮膚が青色を呈し、物が触れると灼熱感を覚える。
◎「痺」=閉塞があって通じないこと。
痺痛=痺症=四肢の筋肉や関節or体躯に疼痛・しびれを起こす病症である。
   

【病因】
<1>湿気の多いところに生活している。
<2>力仕事のあと雨にぬれたなど、虚に乗じて風寒湿の三気が体内に侵入し、経絡の間に滞留して、気血が流通出来ないために起こる。
   

【症状】
<1>筋肉や関節の疼痛とだるさ。
<2>痛みが移動したり、しなかったり。
<3>しびれて感覚が無くなる。

【臨床上の名称】
<1>行痺
<2>痛痺=風寒湿のうち寒気が勝っているが痛痺で、「痛風」或いは「歴節風」とも呼ばれ、その症状は痛みが激しく、熱はそれほど高くなく、あるいは全身が痛み、昼はおさまって夜は激しく、手足が引きつれて屈伸が自由にならない。
<3>着痺
(中国漢方「漢方医学概論」p341)

【漢方薬】(つうふう)
■烏頭湯《金匱要略》

■加減虎骨散(痛みが昼夜止まらない)

■加味五積散《万病回春》

■活絡丹(一切の痛風、筋脈の拘攣・沈痛)

■活絡湯《医学入門》

■甘草附子湯《傷寒論》

■羗活湯《万病回春》

■羗活湯《医林集要》

■桂枝附子湯

■桂芍知母湯《金匱要略》

■解表消磨湯《万病回春》

■虎骨散(百節がしびれ、あちこち痛む)

■五霊丸(風冷で気血が閉じ、麻木・疼痛)

■犀角湯《医学入門》

■四妙散(痛風が走注する)

■麝香元(疼痛が遊走し、虫が歩くようで、夜激しい)

■消風散《寿世保元》

■舒筋立安参《万病回春》

■四物湯-川芎+黄芩・黄柏・白朮・蒼朮・陳皮・牛膝・甘草《朱丹渓》

■神痛飲(歴節風)

■清湿化痰湯《万病回春》

■蒼朮復煎湯(風・湿・熱の疼痛、)

■潜行散(腰以下の湿熱・走痛、血虚・陰火・痛風を治す)

■捉虎丹(一切の痛風で・麻木、寒湿脚気)

■疎経活血湯《万病回春》(下腹部瘀血、しびれ、四肢疼痛<遊走性>、水毒)

■疎風活血湯(四肢と関節が刺痛・赤く腫れる)

■大羗活湯(風・湿が攻搏して肢節が疼痛、屈伸出来ない)

■大柴胡湯(実証、筋肉質、胸脇苦満、心下部緊張、便秘)

■大防風湯(疲労倦怠、末梢神経障害

■趁痛散(調血行血して)

■痛散《医学入門》

■通風一方《万病回春》

■定痛散(風毒が皮膚と骨髄の間を攻注、あちこち痛み、夜激しく、筋脈が拘攣し屈伸出来ない)

■当帰散(寒湿痛風)

■独活寄生湯《和剤局方》

■二妙散(湿熱・痛風・筋骨の疼痛)

■乳香黒虎丹(すべての風寒湿による骨節・全身の疼痛)

■拈痛散(痛風を熨烙する)

■半夏芩朮湯(湿痰流注・肩臂痛)

■防已黄蓍湯(上半身、足がむくむ)

■防風天麻湯(風・湿の麻痺で走注疼痛、or偏枯、or暴)

■防風通聖散(赤ら顔、便秘、尿濃い、腹部緊満、腹部膨満感、舌苔黄厚膩、舌質紅)

■麻黄赤芍湯《医学入門》

■麻黄湯

■竜虎丹(痛風が走注して麻木、半身疼痛)

■霊仙除痛飲《万病回春》(肢節が疼痛)

■六味丸料柴胡・山梔子《薛立斎十六種》

◎使用薬物
<1>蒼朮・南星・川芎・白芷・当帰・酒芩
<2>病が上にあれば:羗活・威霊仙・桂枝・桔梗

<3>病が下にあれば:牛膝・黄柏・木通・防已

【民間療法】
<1>ウシ。
<2>アカマツ・アサガオ・イブキボウフウ・オオバコ・サンキライ・ダイコン・トウガラシ・ナツメ・ナルコユリ・ヒヨドリジョウゴ・ホオズキ・マタタビ・ワラビ。
<3>[アケビニワトコ]
<4>[ムベカンゾウ]
<5>[メハジキスイカヅラ]






爪(ツメ) nail
⇒爪の成長は全身状態によって著しく影響を受ける。
爪は1日に0.1mmぐらい伸びる。
   

◎正常な爪:
爪は透明に近く、爪床のピンク色がすけて見え、爪が爪床と連絡する付近に、半月状の境界線がみえる。これの長さは爪の成長の速さを表す。

◎横にスジが入る:
☆一時的にでも爪の成長を阻害することが起これば:爪上に横に走る境界線が出来、やや陥入する。

☆重い感染症などで起きやすい。
☆ 白い横線は栄養不足や肝臓障害でアルブミン(タンパク質の一種)が不足している可能性がある。
   

◎縦に亀裂する:
栄養状態の不良。重症の貧血などで見られる。

◎縦ジワ:爪の老化で、40代から増えてくる。

◎横みぞが出来る:甘皮部分を削ってしまうとまっすぐに爪が出来ない。

◎縦に黒いスジ
ほくろの場合や、メラノーマのこともある。
   

◎スプーン爪(匙形爪)spoon nail:
*重症貧血
*Plummer-Vinson症候群
* 貧血や甲状腺異常が隠れているかもしれない。
   

◎爪の下に点状の小出血斑がある:
細菌性心内膜炎による血栓を疑うこと。
   

◎白色爪leukonychia:
*爪の成長が不完全で爪全体が白くなる。空気が入っている。
*ネフローゼなどでみられる。
   

◎ばち指clubbed finger:

*心臓や肺の病気で低酸素状態が続くと、太鼓のバチのようにツメ先が丸くふくらむ
*指趾の末端が丸くふくれて、爪が円味を帯びてその上にのっかっている感じのもの。
*多くはチアノーゼを伴う。
*以下の疾患でなることがある:
・先天性心疾患(チアノーゼ型)
・慢性気管支炎
・気管支拡張症
・肺気腫
・肝硬変
・ネフローゼ症候群
・肺膿瘍
・細菌性心内膜炎
・慢性下痢

■数年前から爪に黒ずみ
「20歳代女性。数年前から親指のツメが黒ずんで消えません。どのような治療法があるでしょうか?(S子)」

「ツメが黒ずむ原因で一番多いのはツメの下の出血です。ツメを物に挟んだり打ったりした外傷によって起こります。特に高齢者は毛細血管がもろくなっているので、痛くない程度の外傷でツメの下に出血することがあります。
出血したときは赤味がありますが、間もなく黒ずんできます。そして次第に色が薄くなって、数ヶ月で消えます。
数年前から一面に黒いとのことですから、ツメの下にホクロかアザがある可能性の方が大きいと思います。タテに黒い線が出きる事が多く、一面に黒いのは珍しい例です。ツメを抜いて、その下のツメ床やツメを作るツメ母に異常があるかどうか調べねばなりません。
青色母斑というアザは生まれつきだけでなく、20歳を過ぎてからも出来ることがあり、色素細胞(皮膚の色素メラニンをつくる細胞)が真皮内で増えたものです。色素細胞は通常、表皮の最下層に入り、そこでメラニンを作りますので、垢(アカ)となって落ちていくのですが、真皮内にとどまった色素細胞が女性ホルモンの影響で色を作り始めると、真皮内に色が溜まって濃くなってくるのです。
まれに悪化することもあるので、ツメ母やツメ床の検査を受けられるのがいいと思います。
  

【漢方薬】
■葛根湯+麻杏薏甘湯:「31才女性。手と足の爪が茶褐色で、光沢無く萎縮してガサガサの者に2週間で治った《大塚敬節》」
■通導散(暗赤色)


爪がもろい
【漢方薬】
■温清飲
■四物湯(爪の色も悪い)


爪がそり反る
=スプーン爪(匙形爪)spoon nail:
・重症貧血
・Plummer-Vinson症候群
  

【漢方薬】
■炙甘草湯
■大建中湯





爪水虫(ツメ水虫)
■つめの水虫
「44歳の女性。半年前から急に手足の爪が茶色っぽくなり、厚く変形して痛むようになりました。水虫と言われ、塗り薬を塗っても変形は進んでいます。別の2カ所の病院でも同じ診断でした。飲み薬をもらい痛みは治りましたが、治る気配が見えず不安です(大阪・F)

◎つめも水虫になるのですか?
水虫はカビの仲間の白癬菌などが皮膚に住み着いて起こります。菌が増える条件は、①菌がいること、②湿気があること、③靴や手袋で圧迫があること。条件さえ整えば足の裏以外にも発生します。水虫にかかったツメは変色し、厚くなるのが特徴です。白癬菌などと同じ真菌の一種のカンジダが住み着いた場合は、ツメの下の皮膚から剥がれてくる症状が見られます。

◎痛みがあるのですか?
ツメの表面から菌が感染した場合は白く変色する程度ですが、指先から入り込むとツメが黄色~茶褐色になり、厚くなって内側が痛みます。厚みが増すことでツメが変形し、丸まってツメの端が指に食い込む『陥入づめ』を起こすこともあります。足の裏など皮膚に出来る場合と違い、カユミはありません。

◎どんな薬を使うのですか?
白癬菌などを殺す抗真菌剤を使います。最初は塗り薬で様子を見ることがありますが、ツメは硬くて薬がしみ込みにくいため、効果があるのは1~2割です。菌がツメの内部に及んでいる場合、普通、飲み薬を使います。ツメの根元に効いて新しく生えてくるツメに菌が広がらないようにします。最近は毎日でなく、週1回や、月のうち1週間だけ続けて飲めばいいものもあります。ただし、白癬菌と違う菌が原因だと、薬が効きにくいこともあります。

◎なかなか治らないようですが?
ツメの伸びる速さを考えて見て下さい。

早い人で1日0.09mm、遅い人で0.02mmです。すでに感染してしまった部分が生え終わるのを待たなければならないので、順調にいっても治るまで1年かかります。治療の効果があると、感染した古いツメと根元のきれいなツメの違いが分かるようになります。はっきりするのは治療開始から約2ヶ月後です。不安になって病院を転々とされるのもわかりますが、他の水虫に比べて治りにくいので、「効果がない」とあきらめないで根気よく続けることが必要です。
薬以外の治療法は?
近赤外線レーザーを使った治療を勧めます。薬と併用し、週2回ほど、ツメの付け根部分の6カ所にレーザー光を15秒ずつ当てます。菌を直接殺すのではないのですが、指先の血行が良くなるために効果があるようで、採用する病院も増えています。これも生え替わるまでの1年間、病院に通うことになり、根気のいる治療に変わりはありません。
水虫の治療だけでいいのか心配されているようです。他の病気の疑いはないのですか?
他の病気で似た症状が現れることもありますが、医師なら区別はつきます。ツメの一部を採って顕微鏡で調べれば、水虫かどうか確定出来ます。ツメ水虫はあちこち同時に出ることもあります。他に症状がなければ別の病気を心配する必要はありません。実際にツメの変形で来院する人の多くは水虫です。
注意することはありますか?
どこに出来る水虫にしても菌が増える条件を作らないことが大切で、足の水虫の人と足ふきマットを共有しないなどの配慮が必要です。ツメの場合は長時間ふやける状態を作らないようにすること。一度治っても再発することがあるので、普段からツメをきれいにしておくよう心掛けてください。」(庄司昭信・大阪回生病院皮膚科部長)
白癬菌
糸状菌の一種。皮膚表面の角質層にあるケラチンというタンパク質を栄養にして増える。足の裏、指の間、手のひら、ツメなどにつくと「水虫」と呼ばれる。他の場所だと呼び名が違い。股では「いんきんたむし」、顔や胴体だと「ぜにたむし」、頭皮なら「しらくも」。1999.7.4《朝日新聞》

【西洋薬】経口抗真菌剤
「イトリゾール」(ヤンセン協和)患者負担\9000/月
「グリセオフルビン」(日本化薬/三和/三共)1960年代から
「ラミシール」(ノバルティス)1997年から
「半年程度で完治に近い状態に持っていくことができるほか、グリセオフルビンに比べ安全性も高い。患者負担\2400/月」